雲河都市研究院
■ 2020年後半、中国の輸出は急回復
新型コロナパンデミックは、2020年の世界貿易に大きな影響を及ぼした。世界の輸出総額は、前年比-7.2%もの大幅なマイナス成長に陥った。コロナ禍によるロックダウンや米中貿易摩擦の激化の中で、中国の輸出産業も大きな打撃を被った。
そうした流れの中で2020年前半には中国の輸出額が落ち込んだが、後半には力強い回復を見せた。その結果、世界貿易が落ち込む中にあって中国の輸出額はドルベースで前年比3.6%増を実現した。
図1で2020年の国・地域別輸出額ランキングを見ると、中国は圧倒的な第1位である。同トップ10は順に、中国、アメリカ、ドイツ、オランダ、日本、香港、韓国、イタリア、フランス、ベルギーとなった。なかでも中国と香港だけが輸出額のプラス成長を成し遂げた。東京経済大学の周牧之教授は、「これは、中国におけるグローバルサプライチェーン型産業集積の強靭さとゼロコロナ政策の成功を象徴する成長である」と評した。
その結果、第1位の中国と第6位の香港の輸出額合計が、世界の17.8%のシェアを占め、アメリカの2.2倍の規模に相当するまでに至った。
図1 2020年国・地域別輸出額ランキングトップ30
■ 2020年、中国で最も製造業輻射力が高かった都市は?
〈中国都市総合発展指標〉に基づき、雲河都市研究院は中国全297地級市(地区級市、日本の都道府県に相当)以上の都市をカバーする「中国都市製造業輻射力」を毎年モニタリングしている。輻射力とは都市の広域影響力の評価指標である。製造業輻射力は都市における工業製品の移出と輸出そして、製造業の従業者数を評価したものである。
〈中国都市総合発展指標2020〉で見た「中国都市製造業輻射力2020」ランキングのトップ10都市は、深圳、蘇州、東莞、上海、寧波、仏山、成都、広州、無錫、杭州となった。この10都市のうち、蘇州、東莞、無錫の3都市の輸出額が若干マイナス成長だったのに対して、その他の都市は輸出増を実現した。これら製造業スーパーシティの輸出力の強靭さが際立った。
周牧之教授は「これらトップ10都市のうち、深圳、蘇州、東莞、寧波、仏山、無錫の6都市は改革開放前、殆ど工業の蓄積を持たず行政の中心都市でもない小さな町であった。とりわけ深圳は、都市ですらない村であった。これらの町を製造業スーパーシティに仕立てたのは、グローバルサプライチェーンの躍動であった」と指摘する。
図2 2020年中国都市製造業輻射力ランキングトップ30都市
■ 製造業スーパーシティに集中する輸出総額
図3が示すように、「2020年中国都市製造業輻射力」のトップ5都市が中国全体の輸出総額に占める割合は32.5%、トップ10都市は44.2%、さらにトップ30都市の割合は71.7%にも達している。周牧之教授は「中国の輸出産業はこれら製造業スーパーシティに高度に集中している」と述べている。
図3 2020年中国都市における輸出総額の集中度
■ 深水港の重要性
「2020年中国都市製造業輻射力」のトップ10都市は成都を除き、すべて大型コンテナ港を利用できる立地優位性を誇る。周牧之教授は「コンテナ輸送は、グローバルサプライチェーンを支える基盤である。このような結果は、グローバルサプライチェーンにおける深水港の重要性を窺わせる」と解説する。
雲河都市研究院が、中国全297都市の製造業輻射力と都市交通中枢機能との相関関係を分析した結果、図4で見られるように製造業輻射力とコンテナ港との利便性との相関係数は最も高く、0.65という「強い相関関係」を示した。製造業輻射力と鉄道利便性、空港利便性との間の相関係数は、それぞれ0.62、0.48であった。この相関関係分析は周牧之教授の解説を裏付ける。
図4 2020年中国都市製造業輻射力と都市交通中枢機能との相関関係分析
■ 三大メガロポリスが輸出エンジン
メガロポリスの視点から見ると、京津冀、長江デルタ、珠江デルタの三大メガロポリスが中国全土の貨物輸出総額に占める割合は、それぞれ5.4%、36.6%、23.1%となっている。三大メガロポリスの合計が全国の65.1%を占めている。
周牧之教授は「三大メガロポリスでもとりわけ、長江デルタ、珠江デルタは中国輸出工業発展のエンジンで、グローバルサプライチェーンの中核エリアである」と断言する。
図5 2020年中国都市製造業輻射力ランキングトップ30都市分析図
日本語版『【ランキング】中国で最も輸出力の高い都市はどこか?〜2020年中国都市製造業輻射力ランキング』(チャイナネット・2022年9月22日掲載)