【ランキング】ゼロコロナ政策で感染拡大を封じ込んだ中国の都市力 〜2020年中国都市新型コロナウイルス新規感染者数ランキング

雲河都市研究院

 2020年は新型コロナウイルス・パンデミックにより世界の風景が一変した。ロックダウン、緊急事態宣言、ソーシャルディスタンス、リモートワーク、遠隔授業など、これまで想像もつかなかった日常が続いた。

 こうした状況下、中国は徹底的なゼロコロナ政策を採った。これに対して、欧米および日本など諸国ではウイズコロナ政策を採ってきた。東京経済大学の周牧之教授は、2020年11月11日に『ゼロ・COVID-19感染者政策 Vs. ウイズ・COVID-19政策』というレポートの中国語版(以下「11月周レポート」と略称)を公表した。「11月周レポート」最大の特徴は、感染抑制効果と経済成長の双方から検証し、ゼロコロナ政策とウイズコロナ政策における国際比較研究を行ったことである。このレポートは、後に日本語版、英語版も公表され、多くの内外メディアに転載された。詳しくは、同レポートをベースにまとめた『【論文】ゼロ・COVID-19感染者政策 Vs ウイズ・COVID-19政策』を参照されたい。

「11月周レポート」の中国語、英語、日本語版


■ 2020年世界で新型コロナウイルスの人的被害が最も多かった国は?


 図1は、人口で平準化した各国の新型コロナウイルス被害状況を示したグラフである。2020年末まで百万人当たりの新型コロナウイルス累積感染者数および累積死亡者数を国別にプロットし、各国の新型コロナウイルスによる被害を表している。同図では、2020年名目GDP規模の上位30カ国・地域に二重丸をつけ、色分けして地域区分している。グラフの右上に位置する程、人口当たりの感染者数が多く、死亡者数が多い。

 同図から分かるように2020年、欧米地域はアジア地域と比べて新型コロナウイルス被害が突出している。同図が対数ベースのグラフであることからすれば、その差は甚大である。

 国別で、人口当たりの感染者数および死亡者数が多かったのは、ベルギー、イギリス、イタリア、スペイン、アメリカ等欧米諸国であった。

 2020年末迄の累積の感染者数および死亡者数で最も被害が大きかった国は、人口規模の大きいアメリカ、ブラジル、インドであった。

 一方、名目GDP規模の上位30カ国・地域の中で、新型コロナウイルス被害が最も小さかったのは上位から順に台湾、タイ、中国であった。

 2020年アジア地域では、中国だけでなく台湾、韓国などもゼロコロナ政策を採った。ゼロコロナ政策が、欧米諸国との被害差を生んだ大きな理由と考えられる。とくに感染蔓延初期で甚大な被害を出した中国が、人口大国でありながらここまで新型コロナウイルスの被害を食い止めたのはゼロコロナ政策が奏功した故である。

図1  国別百万人当たりの累積感染者数及び累積死亡者数
(2020年末まで)

■ ロックダウンで武漢は早期収束


 2020年1月23日に、中国政府は新しい感染症の爆発を封じ込めるために湖北省の省都武漢を始め3都市をロックダウンした。このニュースは世界を震撼させた。翌1月24日に、湖北省全域が緊急対応(Emergency response)レベルを1級にした。緊急対応レベルとは認定された感染症エリアに対するロックダウンを含む措置の度合いを規定するもので、1級とは、休業、休講を要請し、交通を遮断し、極力移動と接触を避ける措置である。その後緊急対応1級措置は中国全土に及んだ。

 武漢のみならず新型コロナウイルスで世界中の数多くの大都市で、医療崩壊危機が起こった。3月11日にWHOが同ウイルスの脅威に対してパンデミック宣言をした。

 武漢ロックダウン3カ月後の4月20日、周牧之教授は「新型コロナパンデミック:なぜ大都市医療能力はこれほど脆弱に?」と題したレポートの中国語版(以下「4月周レポート」と略称)を発表、武漢で何が起こり、どのような対策が取られたかについて世界に先駆けて検証した。「4月周レポート」の英語版と日本語版も相次ぎ公表され、多くの内外メディアに転載された。

「4月周レポート」の中国語、英語、日本語版

 「4月周レポート」は、医療資源の豊富な武漢市が、なぜ新型コロナウイルスでたちまち医療崩壊に陥ったのかに着目した。さらに、新型コロナウイルスによる医療崩壊の三大原因として、①医療現場がパニックに陥った、②院内感染による医療従事者の大幅減員、③病床不足という仮説を立て、その原因を検証した。

 「4月周レポート」は中国政府が武漢の状況を打開するために取り組んだ対策についても検証した。まず武漢の医療従事者大幅不足を解消するため、中国は全土から武漢へ救援医療従事者を迅速に派遣した。ロックダウン翌日に上海からの救援医療チームが到着した。全土から駆けつけた医療従事者の総数は4万2,000人にまで達した。

 この措置は、武漢の医療崩壊の食い止めに繋がった。しかし、医療従事者の大規模な動員は、日本をはじめ各国ではほとんど実施できなかった。実際は、感染拡大地域に迅速かつ有効な救援活動を施せるか否かが、新型コロナウイルス制圧を占う一つの鍵になる。

 次に、病床不足への対策として中国が取り組んだのは、患者を重症者と軽症者とに分けることであった。医療リソースが重症者に中心的に振り向けられた。重軽症者分離収容措置は、後に他の国でも参照されている。

 さらに、ハイスピードで重症者向けと軽症者向けの仮設病院を建設した。こうした措置は、SARSの経験が活かされた。

 たった10日という短期間で、重症者向け仮設病院が建設され使用が開始された。その3日後、二つ目の重症者向け仮設病院が稼働した。両病院で病床数は計2,600床に達し、一気に重症患者の治療キャパシティが上がった。また、武漢は体育館などを16カ所の軽症者収容病院へと改装し、2月3日から順次患者を受け入れ、1万3,000床の抗菌抗ウイルスレベルの高い病床を素早く提供し、軽症患者の分離収容を実現させた。

 図2は、武漢のロックダウン期間に同市の新規感染者数及び死亡者数を日々記録したものである。未知のウイルスのオーバーシュートに遭遇し、医療崩壊など大変な困難を経てロックダウンの約3週間後にようやく新規感染者数がピークアウトした。ロックダウン56日後の3月18日には新規感染者数がゼロになった。その後3月23日に新規感染者が一人出たのを最後に、4月8日のロックダウン解除まで16日間新規感染者はゼロが続いた。武漢は77日間のロックダウンで新型コロナウイルスのオーバーシュートを鎮圧した。

 2020年武漢の感染者数は、51,042人、死亡者数は3,869人、致死率は7.6%に至った。「4月周レポート」は、初期の混乱が武漢の高い致死率を生じさせたと結論付けた。

図2 武漢ロックダウン期間における新規感染者数・死亡者数

出典:中国湖北省衛生健康委員会HPなどにより雲河都市研究院作成。

■ 状況に即して中国で行動制限を調整


 中国政府は、状況に即して行動制限のレベルの調整を図った。甘粛省は、武漢より一カ月以上も早く2020年2月21日に「公衆衛生上の緊急事態対応レベル」を3級に引き下げた。

 6月13日には、中国全土のすべての地域が「公衆衛生上の緊急事態対応レベル」3級になった。中国は世界に先駆けて日常生活を取り戻すことに成功した。

 その後、感染事例が発生した地域には、再度、緊急事態対応レベルを引き上げる措置も行っている。例えば、2020年6月16日には、北京で感染クラスターが発生し、同市の「公衆衛生上の緊急事態対応レベル」を3級から2級に引き上げて対応、1カ月後の7月20日に3級に引き下げた。

図3 2020年中国新型コロナウイルス新規感染者数・死亡者数の日別推移

出典:中国湖北省衛生健康委員会HPなどにより雲河都市研究院作成。

■ 2020年中国で新型コロナウイルス新規感染者数が最も多かった都市は?


 新型コロナウイルス感染抑制を優先する中国は、まず武漢を始めとするホットスポットを迅速に抑え込み、さらに全国にも強い行動制限をかけた。その後状況が沈静化した地域で制限を順次緩和した。再び感染事例が発生すると、同地域に行動制限をかけ、モグラ叩きのように感染を局所に封じ込めて全国への拡大を阻止した。

 〈中国都市総合発展指標2020〉は、中国各都市の新型コロナウイルス新規感染者数(海外輸入感染症例と無症状例を除く)をモニタリングし、評価した。

 図4が示すように、2020年に最も新型コロナウイルス感染者数が多かった10都市は、武漢とその周辺に集中した。同10都市は、武漢、孝感、黄岡、荊州、鄂州、随州、襄陽、黄石、宜昌、荊門で、すべて湖北省の都市であった。また、図5が示すように、同年の新規感染者数は、武漢市1都市に中国の62.8%、最も多かった10都市が中国の80.8%、同30都市が中国の90.1%を占めた。中国新規感染者数の82.5%が、湖北省全12都市に集中した。

 感染者数が湖北省に集中したことについて、周牧之教授は、「迅速なロックダウン措置とゼロコロナ政策で流行を早期に収束させ、全国での蔓延を食い止めた。結果、湖北省以外の都市では、局地的に感染者が時折出るものの感染爆発はなく、生産活動や市民生活は早期に回復した」と分析する。

 最も感染者数が多かった11位から30位都市の中には、中国GDP規模トップ10都市である上海、北京、深圳、広州、成都、重慶、杭州のほか、ハルビン、長沙、南昌、合肥、ウルムチ、寧波、温州などの省都や地域経済の中心都市が含まれた。これについて、周牧之教授は、「これらの中心都市が膨大な人口を抱えているだけでなく、域外との活発な交流が行われている故である」と話す。

図4 2020年中国都市新型コロナウイルス新規感染者数が
最も多かった
10都市分析図

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

図5 2020年中国都市新型コロナウイルス新規感染者数が
最も多かった30都市

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。
注:「新規感染者数」に海外輸入感染症例と無症状例は含まない。

図5 2020年中国都市における新型コロナウイルス新規感染者数の集中度

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

■ ゼロコロナ政策で経済をいち早く回復


 新型コロナウイルスパンデミックは、世界経済に大きく影を落とした。2020年の世界経済の成長率は2018年の6.3%、2019年の1.6%から、一気に-2.6%とマイナス成長に転じた。

 図7が示すように、2020年国別名目GDPランキングトップ10は、アメリカ、中国、日本、ドイツ、イギリス、インド、フランス、イタリア、カナダ、韓国と続く。世界名目GDPの67.7%を占めるこれら10カ国が、中国を除き、軒並みマイナス成長に陥った。逆風の中で中国が3.6 %の成長率を実現したのは、ゼロコロナ政策によるものが大きい。

 2020年の中国GDP規模の上位30都市のうち武漢だけが−4.7%成長であったが他の都市はすべてプラス成長を実現した(詳しくは、『【ランキング】2020年中国都市GDPランキング』を参照)。これについて、周牧之教授は、「ゼロコロナ政策の有効性と中国主要都市の強靭さが中国の経済成長を支えた」と分析する。

図6 2020年国・地域別名目GDPランキングトップ30

出典:IMFデータベースより雲河都市研究院作成。

■ ゼロコロナ政策・中国モデルの特徴と課題


 3年にわたる新型コロナウイルス禍の中で、現在でもゼロコロナ政策を継続しているのは、中国のみである。本レポートでは「中国モデル」とも言える中国のゼロコロナ政策の特徴を以下の6つにまとめた。

(1)感染症対策の法整備及びマニュアル化

 感染症蔓延に苦しんだ歴史を持つ中国には、感染症に対してある種の大陸的なロジック、あるいは危機感がある。そのためSARSの経験を活かし、ウイルスによるパンデミックに備え、感染症対策の法整備及びマニュアル化を進めた。これが、新型コロナウイルスに対抗する上で、極めて大きな役割を果たした。この点を最も評価すべきである。

(2)感染症対策優先のスピード感

 中国は、感染症対策の法整備及びマニュアル化があるおかげで、感染症対策を優先的且つスピーディに実行できた。ロックダウンなど行動規制による市民生活や経済活動への影響は大きかったものの、結果として市民生活を逸早く取り戻し、ウイズコロナ政策を採った国と比べ、経済パフォーマンスも良かった。

(3)妥協しないゼロコロナへの追及

 中国は、地域ごとに感染者ゼロ目標を徹底したことにより、新型コロナウイルス封じ込めに成功した。

(4)全国総動員体制

 武漢などロックダウンが施された地域には、全国から医療従事者が大量に送り込まれ医療体制が迅速に拡充されることで、医療崩壊を食い止め、多くの人命を救った。

(5)テクノロジーの積極的活用

 中国ではスマホアプリ等に代表されるようにITテクノロジーを積極的に活用した。こうした取り組みは、感染抑制に貢献しただけでなく、IT産業の活性化にも寄与した。

(6)漢方医学の積極的活用

 中国は新型コロナウイルスの予防と治療に漢方医学を積極的に活用した。西洋医学と異なるアプローチでの取り組みは大きな成果を上げただけでなく、漢方医学の重要性の再認識につながった。

 一方、中国の新型コロナウイルス対策においても多くの課題は残されている。例えば、無症状を含む感染者を素早く見つけて隔離する「動態清零(ダイナミック・ゼロ)」と呼ばれる手法で、一旦感染者が出れば地域全員にPCR検査をかける。現状では、そのスクリーニングの頻度は高く、人々への負担が大きい。また、前述の分析で院内感染が武漢での感染爆発の大きな要因と指摘したように、大勢の人々を集めるスクリーニングは検査場における二次感染の懸念がある。

 また、ロックダウンエリアへの支援物資の供給にも問題がある。支援物資が居住地域まで届きながら、住民の自宅にまで効率よく届かない状況が、武漢、上海など至るところで発生した。

 さらに一部の地方ではロックダウンあるいはそれに近い行動制限措置を過剰に実施し、大きな混乱をもたらした。

 周牧之教授は、「いずれにせよ、感染者が出た地域における高い緊張感が経済活動や市民生活に多大な負担をかけていることは言うまでもない。こうした負担を軽減させる工夫が求められる」と話す。


中国都市ランキング−中国都市総合発展指標

【ランキング】鉄鋼大国中国の生産拠点都市はどこか? 〜2020年中国都市鉄鋼産業輻射力ランキング

雲河都市研究院

■ 世界最大の生産量を誇る中国鉄鋼産業


 世界の鉄鋼産業も新型コロナウイルスパンデミックの影響を受けている。世界粗鋼生産量成長率は、2018年が5.3%、2019年が2.7%だったことに対して、2020年は0.3%にまで減速した。幸い、2021年に世界粗鋼生産量成長率は3.7%に回復し、世界粗鋼生産量も1980年以降、最大規模となった。

 現在、世界の鉄鋼生産をリードしているのは中国である。図1が示すように、2021年国・地域別粗鋼生産量ランキングをみると、トップの中国の存在が圧倒的である。中国の粗鋼生産量はいまや約10.3億トンにも達している。これは、世界粗鋼生産量の約52.9%に当たり、2〜30位の国・地域の合計値の約1.2倍に達している。東京経済大学の周牧之教授は、「かつて「鉄は国家なり」という格言があり、鉄鋼産業が国力を表していたが、時代は変われども中国の圧倒的な粗鋼生産量は、現在の中国における経済規模とその活力を如実に表している」と述べている。

図1 2021年国・地域別粗鋼生産量ランキング

出典:世界鉄鋼協会(WSA)データベースより雲河都市研究院作成。

■ WTO加盟以降、急成長を遂げた中国鉄鋼産業


 図2より、1980〜2021年の世界および中国の粗鋼生産量推移をみると、中国の鉄鋼産業は、改革開放以降、とくにWTOに加盟した2001年以降、急成長を遂げたことがわかる。鋼材は不動産、インフラ建設、自動車、家電等の多分野で用いられる。高度成長を遂げた中国は、鋼材需要が爆発的に増えている。

 1980年、粗鋼生産量の第1位は旧ソ連で、2位が日本、3位が米国であった。旧ソ連、日本、米国の世界シェアは、それぞれ20.7%、15.5%、14.2%で、この3国が世界の半分の粗鋼を生産していた。一方、5位の中国の世界シェアは、僅か5.2%に過ぎなかった。

 1992年になるとソ連崩壊も影響し、日本がはじめて粗鋼生産量の世界第1位となり、中国は米国に次ぐ3位に入った。日本、米国、中国の世界シェアは、各々13.6%、11.7%、11.2%となった。

 1996年には中国が日本を抜き、粗鋼生産量の世界第1位に躍り出た。順位は中国、日本、米国と続き、世界シェアはそれぞれ13.5%、13.2%、12.7%となった。以降、今日まで中国は粗鋼生産量において1位の座を保ち続けている。

 WTOに加盟した2001年、中国の世界シェアは17.8%だった。その10年後の2011年には、中国の同シェアは45.6%へと大きく伸び、2021年には、52.9%にまで及んだ。

図2 1980〜2021年世界および中国の粗鋼生産量推移

出典:世界鉄鋼協会(WSA)データベースより雲河都市研究院作成。

■ 世界をリードする中国鉄鋼メーカー


 図3より、2021年における世界鉄鋼メーカー粗鋼生産量ランキングをみると、トップ30にランクインした中国企業は半数の15企業(26位の台湾系・中国鋼鉄を含む)を数える。中国企業15社の粗鋼生産量世界シェアは、25.7%にも達している。

 巨大市場は巨大企業を生み出す。世界トップの宝武鋼鉄集団(China Baowu Group)は、2位のアルセロール・ミッタル(ArcelorMittal)の生産量の1.5倍の規模を誇り、1社で世界粗鋼生産量の6.1%を占める驚異的な存在である。

 周牧之教授は、「宝武鋼鉄集団の前身のひとつは宝山製鉄で、改革開放のシンボル的プロジェクトとして新日鉄などの技術を導入し造られた」と解説する。

図3 2021年世界鉄鋼メーカー粗鋼生産量ランキング

出典:世界鉄鋼協会(WSA)データベースより雲河都市研究院作成。

■ 鉄鉱石輸入大国


 圧倒的な粗鋼生産量を誇る中国は、海外から製鉄の主原料の鉄鉱石と石炭(原料炭)を大量に輸入している。

 周牧之教授は、「中国は鉄鉱石の産出国であるものの、その品質、生産量ともにオーストラリアやブラジルには及ばない。改革開放までは中国の鉄鋼産業は、ほとんど国内資源を頼っていた。宝山製鉄所は中国で初めて海外鉄鉱石利用を前提とした製鉄所であった。故に、建設当時はこの点で理解されず一時期、建設中断に追い込まれたこともあった」と振り返る。

 図4より、2019年の国・地域別鉄鉱石生産量ランキングをみると、オーストラリアが圧倒的で、その世界シェアは37.4%にまで達している。中国は3位で、世界シェアは14.4%である。

図4 2019年国・地域別鉄鉱石生産量ランキング

出典:アメリカ地質調査所(USGS)データベースより雲河都市研究院作成。

 図5より、2020年の国・地域別鉄鉱石輸入額ランキングをみると、中国は第1位であり、2位以下を引き離し、圧倒的である。中国の鉄鉱石輸入額は、世界の73.4%を占め、その規模は2位日本〜30位フィンランドの合計額の約3倍である。中国は毎年約11億トンの鉄鉱石を輸入し、その約7割がオーストラリア、2割がブラジルからである。

 周牧之教授は、「オーストラリアやブラジルからの品質の高い鉄鉱石の輸入により、中国鉄鋼産業は質量共に支えられ急速に発展している」と強調している。

図5 2020年国・地域別鉄鉱石輸入額ランキング

出典:国連貿易開発会議(UNCTAD)データベースより雲河都市研究院作成。

■ 中国で最も鉄鋼産業輻射力が高い都市は?


 〈中国都市総合発展指標〉に基づき、雲河都市研究院は中国全297地級市(地区級市、日本の都道府県に相当)以上の都市をカバーする「中国都市鉄鋼産業輻射力」をモニタリングしている。輻射力とは特定産業における都市の広域影響力を評価する指標である。鉄鋼産業輻射力は都市における同産業の従業員・企業集積状況や企業資本・競争力を評価した。「2020年中国都市鉄鋼産業輻射力」は、2019年から2020年にかけて中国各都市で公表された「第4回全国経済センサス」をも参照し算出した。

 図6より、〈中国都市総合発展指標2020〉で見た「2020年中国都市鉄鋼産業輻射力」ランキングの上位10都市は、唐山、邯鄲、天津、蘇州、無錫、済南、常州、本渓、包頭、武漢となった。特に、トップの唐山の輻射力は抜きん出ている。同ランキングの上位11〜30都市は、太原、馬鞍山、安陽、上海、中衛、嘉峪関、攀枝花、日照、新余、営口、ウルムチ、石家荘、南京、運城、廊坊、柳州、玉溪、許昌、漳州、仏山である。これらの都市には中国主要鉄鋼メーカの本社や主力工場が立地している。

図6 2020年中国都市鉄鋼産業輻射力ランキング

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

■ まだ道半ばの臨海・臨江立地


 図7より、「2020年中国都市鉄鋼産業輻射力」ランキングトップ30都市の地理的分布をみると、2つの立地パターンが見られる。沿海部や長江流域にある輸入鉄鉱石利用を前提とした臨海・臨江立地と、内陸部の国産鉄鉱石利用を前提とした資源立地である。

 周牧之教授は、「中国はいま世界最大の鉄鉱石輸入国になったものの、宝山製鉄所建設から始まった中国の輸入鉄鉱石利用を前提とした鉄鋼産業の臨海・臨江立地は、まだ道半ばである。中国鉄鉱産業の一層の高度化が実現するにはこうした臨海・臨江立地への集約が不可欠である」と解説する。

図7 2020年中国都市鉄鋼産業輻射力ランキングトップ30都市分析図

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

■ 進む集中集約


 「2020年中国都市鉄鋼産業輻射力」ランキングを分析することで、鉄鋼産業における特定都市への集中集約が浮かび上がる。

 図8が示すように、鉄鋼産業従業者数において、同ランキングのトップ5都市が全国に占める割合は23.1%、トップ10都市は34.3%、トップ30都市は58.4%に達している。

図8 2020年中国都市における鉄鋼産業従業者の集中度

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

 図9が示すように、鉄鋼産業営業収入において、「2020年中国都市鉄鋼産業輻射力」ランキングのトップ5都市が全国に占める割合は26.2%、トップ10都市は38.1%、トップ30都市は63.5%に達している。

 周牧之教授は、「従業者数と比べ、営業収入におけるトップ都市の集中度がさらに高いことが、トップの都市に収益力の高い大企業が多く集積していることを窺わせる」と解説する。

図9 2020年中国都市における鉄鋼産業営業収入の集中度

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

■ 大気汚染改善への挑戦


 鉄鋼産業は、二酸化炭素やPM2.5の大量排出という大気汚染の課題を抱えている。「2020年中国都市鉄鋼産業輻射力」ランキングのトップ3都市の唐山、邯鄲、天津は、いずれも大気汚染に苦しんでいる。

 同ランキング第1位の唐山は、2015年の「PM2.5指数」は137.5μg/㎥で、全国平均値77μg/㎥の2倍弱だった。日本のPM2.5大気環境基準が年平均値15μg/㎥以下であることからすると、その汚染度合いの深刻さが伺える。同第2位の邯鄲は、2015年の「PM2.5指数」が175.1μg/㎥で、唐山以上に深刻であった。3位の天津も、同年「PM2.5指数」は129.2μg/㎥であった。

 幸い、近年厳しい環境対策が奏功し、2020年に唐山の「PM2.5指数」は37.3μg/㎥まで改善し、全国平均値33.3μg/㎥と比較しても、わずかに超えたところまで来た。同年、邯鄲と天津両市の「PM2.5指数」も、各々56.2μg/㎥、47.6μg/㎥へと大幅に改善した。

 一方、二酸化炭素排出量についてみると、課題解決への道程はまだ遠い。唐山、邯鄲、天津3都市について、〈中国都市総合発展指標〉で2010年と2019年の二酸化炭素排出量を比較すると、唐山は約3.4倍、邯鄲は約2.6倍、天津は約3.8倍も二酸化炭素排出量が増加した。

 周牧之教授は、「これまで乱立していた中国の鉄鋼メーカーは今後、より高い品質、より高い効率、より高い環境対策の三大軸で再編し、産業の高度化を進めるだろう」と展望している。


中国都市ランキング−中国都市総合発展指標

【ランキング】自動車大国中国の生産拠点都市はどこか? 〜2020年中国都市自動車産業輻射力ランキング

雲河都市研究院

■ 世界最大の生産量を誇る中国自動車産業


 新型コロナウイルスパンデミックにより、世界の自動車産業も大きな打撃を受けている。2020年の世界自動車生産台数は前年比-15.8%の約7,762万台にまで落ち込んだ。2021年には、生産台数ピークを迎えた2017年の82.4%に当たる約8,015万台にまで回復した。

 現在、世界の自動車製造業の中心に位置するのは中国である。図1より、2021年国・地域別自動車生産台数ランキングをみると、トップは圧倒的に中国であり、その生産台数は2,608万台にまで及んだ。これは、世界生産台数の約32.5%に当たり、2位アメリカの約3.1倍の規模である。中国の自動車生産台数は、いまや2〜5位のアメリカ、日本、インド、韓国の合計よりも多い。

図1 2021年国・地域別自動車生産台数ランキング

出典:国際自動車工業連合会(OICA)データベースより雲河都市研究院作成。
注:インドは一部メーカーの生産台数が含まれていない、ドイツ・フランス・アルゼンチンは乗用車・小型商用車のみ、ハンガリーは乗用車のみ。

■ WTO加盟以降、急成長を遂げた中国自動車産業


 図2より、2000〜2021年の主要国別自動車生産台数推移をみると、中国の自動車産業は、WTOに加盟した2001年以降、急成長を遂げたことがわかる。自動車産業は中国の高度経済成長を支える主要なエンジンのひとつとなっている。2008年にはアメリカを抜き世界第2位に、翌年の2009年にはリーマン・ショックで世界の自動車生産台数が落ち込む中、中国は日本を抜いて世界トップに躍り出し、以降は独走を続けている。 

 一方、日本は2006年にアメリカを抜き世界第1位の座を奪い取ったが、2009年に中国に抜かれ、2011年にはアメリカに抜かれて世界3位に転落し、以降は中国及びアメリカとの差が拡大している。

図2 20002021年主要国別自動車生産台数推移

出典:国際自動車工業連合会(OICA)データベースより雲河都市研究院作成。
注:インドは一部メーカーの生産台数が含まれていない、ドイツ・フランスは乗用車・小型商用車のみ。

■ 新型コロナウイルスパンデミックでも拡大した中国の自動車輸出


 新型コロナウイルスパンデミックは、グローバルサプライチェーンに大打撃を与え、世界の自動車輸出もその例外ではない。図3より、2020年国・地域別自動車輸出額ランキングをみると、上位30国・地域のうち、中国、スロバキアを除く28国・地域はすべてマイナス成長であり、多くの国・地域が2桁台のマイナス成長に陥った。世界全体の自動車輸出は-14.7%成長である中、中国の自動車輸出は3.4%のプラス成長を遂げた。

 中国は生産台数が巨大な一方、自動車輸出額ランキングではまだ世界5位に留まる。これに対して東京経済大学の周牧之教授は、「中国で生産された自動車は多くが現状では国内で消費されているが、巨大マーケットに支えられ、やがて世界最大の自動車輸出大国になる」と予測している。

図3 2020年国・地域別自動車輸出額ランキング

出典:国連貿易開発会議(UNCTAD)データベースより雲河都市研究院作成。

■ 自動車市場を支える二大巨頭


 図4より、2019年の国・地域別自動車保有台数ランキングをみると、前述した周牧之教授の予測の根拠が分かる。同ランキングの1位と2位はアメリカと中国であり、3位の日本を突き放し、圧倒的な保有台数を誇っている。米中2国が保有する自動車台数は世界を走る自動車の約35%を占め、その規模は3位日本〜13位ポーランドが保有する自動車合計台数とほぼ同規模である。世界の自動車産業は、米中2大巨頭の市場によって支えられている。

図4 2019年国・地域別自動車保有台数ランキング

出典:国際自動車工業連合会(OICA)データベースより雲河都市研究院作成。

■ 他国の車を大量に飲み込むアメリカ自動車市場


 図5より、2020年国・地域別自動車輸入額ランキングをみると、トップのアメリカは他国を抜きん出ていることがわかる。アメリカは、世界の自動車輸入額の約20%のシェアを有し、2位のドイツのおよそ2.1倍の規模である。アメリカは、自動車生産は世界2位でありながら、ドイツや日本等からなお大量に自動車を輸入している。

 同ランキング2位のドイツは、世界最大の自動車輸出大国であると同時に、大量の自動車を輸入している。

 中国は、世界自動車輸入市場で3位だが、自動車の輸出額がすでに輸入額を超え、自動車の純輸出国になった。

 世界自動車輸入市場で15位の日本は、世界2位の自動車輸出額をたたき出している。自動車は依然として日本の最大の輸出産業である。

図5 2020年国・地域別自動車輸入額ランキング

出典:国連貿易開発会議(UNCTAD)データベースより雲河都市研究院作成。

■ 中国経済の基幹産業にまで発展を遂げた自動車産業


 図6より、2019年国・地域別自動車産業付加価値ランキングをみると、トップの中国は他国を抜きん出ている。中国は、世界の自動車産業付加価値の約28.1%のシェアを有し、2位のアメリカとはおよそ2倍の差を付けている。WTO加盟以降飛躍する中国の自動車産業は自国の経済基盤を支える基幹産業にまで発展し、世界の自動車産業をリードする存在になっている。

図6 2019年国・地域別自動車産業付加価値ランキング

出典:アメリカ国立科学財団(NSF)データベースより雲河都市研究院作成。

■ 2020年、中国で最も自動車産業輻射力が高かった都市は?


 〈中国都市総合発展指標〉に基づき、雲河都市研究院は中国全297地級市(地区級市、日本の都道府県に相当)以上の都市をカバーする「中国都市自動車産業輻射力」をモニタリングしている。輻射力とは特定産業における都市の広域影響力を評価する指標である。自動車産業輻射力は都市における自動車産業の従業員・企業集積状況や企業資本・競争力を評価したものである。「2020年中国都市自動車産業輻射力」は、2019年から2020年にかけて中国各都市で公表された「第4回全国経済センサス(第四次全国経済普査)」をベースに算出した。

 〈中国都市総合発展指標2020〉で見た「2020年中国都市自動車産業輻射力」ランキングの上位10都市は、上海、長春、重慶、広州、武漢、蘇州、北京、十堰、天津、襄陽となった。特に、トップ3都市の上海、長春、重慶の輻射力は抜きん出ている。同ランキングの上位11〜30都市は、瀋陽、柳州、無錫、成都、南京、蕪湖、寧波、南昌、常州、杭州、揚州、長沙、深圳、済南、温州、西安、青島、仏山、合肥、鎮江である。これらの都市には中国自動車メーカの本社機能や主要工場が立地している。

図7 2020年中国都市自動車産業輻射力ランキング

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

 中国の自動車産業の発展は、1950年代に遡る。1953年、旧ソ連の技術支援により現在の第一汽車が設立されたのを皮切りに、中国各地に多くの自動車メーカーが続々と設立された。改革開放以降は、数多くの海外自動車メーカーが中国に進出し、中国での急激なモータリゼーションと共鳴するように製造拠点を次々と設立した。国内市場の急成長、海外メーカーとの協力及び競争の下で中国の国産メーカーも急成長した。

 図8より、2021年時点で中国の自動車メーカーは大きく国有企業系、民営企業系に分けられ、中国各地に立地している。中国政府の自動車産業振興計画では、第一汽車、上海汽車、東風汽車、長安汽車の「四大」と、北京汽車、広州汽車、奇瑞汽車、中国重汽の「四小」という位置づけがある。

図8 中国の主な自動車メーカー

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

 図9より、「2020年中国都市自動車産業輻射力」ランキングトップ30都市の分布をみると、東は上海から西は重慶・成都まで、長江流域に産業集積している。周牧之教授は、「これは、中国建国以来、政府が長江流域に製造業の産業立地を推進した結果である」と解説する。日本では耳慣れない地方都市が自動車産業拠点としてランキング上位に入った理由は、このような歴史的厚みに由来している。

図9 2020年中国都市自動車産業輻射力ランキングトップ30都市分析図

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

■ 自動車産業拠点都市に進む集中集約


 「2020年中国都市自動車産業輻射力」ランキングを分析することで、自動車産業における特定都市への集中集約が浮かび上がる。

 図10が示すように、自動車産業従業者数において、「2020年中国都市自動車産業輻射力」ランキングのトップ5都市が全国に占める割合は24.7%、トップ10都市は39.5%、トップ30都市は70.6%を占めている。

図10 2020年中国都市における自動車産業従業者の集中度

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

 図11が示すように、自動車産業企業数において、「2020年中国都市自動車産業輻射力」ランキングのトップ5都市が全国に占める割合は13%、トップ10都市は25%、トップ30都市は63.7%に達している。従業者数と比較して企業の集中度が低くなることは、ランキングトップの都市に大企業が多く集積していることを意味する。

図11 2020年中国都市における自動車産業企業の集中度

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

 図12が示すように、自動車産業営業収入において、「2020年中国都市自動車産業輻射力」ランキングのトップ5都市が全国に占める割合は36.3%、トップ10都市は51.3%、トップ30都市は81.1%を占めている。これらのデータも、ランキングトップの都市に収益力の高い大企業が多く集積していることを裏付ける。

図12 2020年中国都市における自動車産業営業収入の集中度

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

■ EVで大変革を迎える中国の自動車産業


 近年、環境問題が世界的な課題となる中で、電気自動車(EV)が注目を集めている。自動車大国となった中国では、猛烈な勢いでEVの普及と生産に官民一体となって取り組んでいる。

 2021年、世界のEV販売台数は前年比108%増の650万台であり、国別では中国が約294万台でダントツ1位となり、世界シェアの45%を占めた。

 図13が示すように、世界におけるメーカー別EV販売台数ランキングの1位はテスラで、販売台数は約93.6万台、2位の比亜迪(BYD)は前年比220%増の約59.4万台を販売した。メーカー別ランキング上位20位までの販売台数の合計は476.3万台となり、世界市場全体の73.3%を占めた。

 この上位20位以内に入った中国メーカーは、BYD、上汽通用五菱汽車、上海汽車、長城汽車、広州汽車、奇瑞汽車、小鵬汽車、長安汽車の8社だった。テスラも上海に巨大な生産基地を置いているため、これら8社とテスラを合計すると、実に世界全体のEVのうち、およそ4割が中国で製造されている。これに対して日本はトヨタが16位に食い込んだ。

 2021年の中国におけるEV輸出台数は、前年比約3倍の約50万台となり、ドイツやアメリカを上回り世界最大となった。中国EVは車載電池など関連部品の産業集積が進み、コスト競争力を高めた新興メーカーが欧州等で販売を伸ばしている。日本でも中国メーカーのEV販売が始まっている。

 米国の時価総額調査会社カンパニーズマーケットキャップの資料によると、2022年6月24日現在で中国自動車メーカーBYDの時価総額は1378億ドルとなり、米テスラの同7636億ドル、トヨタの同2191億ドルに次ぐ世界3位の自動車メーカーとなっている。BYDにこれほどの値打ちが付いたのは同社のEVメーカーとしての、そしてEV用バッテリーの優勢が評価されたことによる。

 周牧之教授は、「中国はEVで世界自動車市場を席巻することになる」と展望している。

図13 2021年世界でのメーカー別EV販売台数ランキング

出典:三菱自動車ホームページなどにより雲河都市研究院作成。

中国都市ランキング−中国都市総合発展指標

【ランキング】映画大国中国で最も映画好きな都市はどこか? 〜2020年中国都市映画館・劇場消費指数ランキング

雲河都市研究院

■ 中国映画マーケットが世界第1位に


 新型コロナウイルスパンデミックで最も打撃を受けた分野の1つは映画興行であった。中国では、2020年の映画興行収入が前年比68.2%も急落した。だが幸いなことに、中国では新型コロナウイルスの蔓延を迅速に制圧したことで、映画市場は急速に回復した。

 一方、これまで世界最大の興行収入を誇ってきた北米(米国+カナダ)は、新型コロナウイルスの流行を効果的に抑えることができず、2020年には映画興行収入が前年比80.7%も急減した。その結果、中国の映画市場が、映画興行収入で世界トップに躍り出た。

 2021年の春節(旧正月)、昨年同期間のロックダウンに取って代わり、中国の映画興行収入は78.2億元(約1,564億円、1元=20円で計算)に達し、同期間の新記録を樹立した。また、世界の単一市場での1日当たり映画興行収入、週末映画興行収入などでも記録を塗り替えた。中国の映画市場は今、勢いよく回復している。

■ 2020年、中国で最も映画興行収入が多かった都市は?


 〈中国都市総合発展指標〉に基づき、雲河都市研究院は中国全297地級市(地区級市、日本の都道府県に相当)以上の都市をカバーする「中国都市映画館・劇場消費指数」を毎年モニタリングしている。

 2020年、中国全国297都市のうち、「2020年中国都市映画館・劇場消費指数ランキング」の上位10都市は、上海、北京、深圳、広州、成都、重慶、杭州、武漢、蘇州、西安となっている。これら中国で最も映画興行収入が多かった都市は、9位の蘇州を除き、すべて直轄市、省都、計画単列市からなる中心都市である。同ランキングの上位11〜30都市は、第11位から第30位の都市は、鄭州、南京、長沙、東莞、天津、仏山、寧波、合肥、無錫、瀋陽、昆明、青島、温州、南通、南昌、長春、石家荘、ハルビン、済南、南寧となっているが、これらもほとんどが中心都市である。

 東京経済大学の周牧之教授は、「中国の映画興行は若者が集まる中心都市や製造業スーパーシティに集中している」と述べる。

図1 2020年中国都市映画館・劇場消費指数ランキングトップ30都市

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

■ 中心都市に集約する映画館・劇場市場


 「2020年中国都市映画館・劇場消費指数」を構成するデータを分析することで、前述した周牧之教授が言う映画館・劇場市場の特定都市集中の実態が見えてくる。

 映画館・劇場数について、「2020年中国都市映画館・劇場消費指数」ランキングのトップ5都市が全国に占める割合は12.6%、トップ10都市は21.0%、トップ30都市は39.3%となっている。つまり、上位10都市に全国の映画館・劇場の5分の1以上が立地し、297都市の10分の1に過ぎない上位30都市に、40%弱が立地している。

図2 2020年中国都市における映画館・劇場の集中度

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

 映画館・劇場観客者数について、「2020年中国都市映画館・劇場消費指数」ランキングのトップ5都市が全国に占める割合は17.9%、トップ10都市は28.9%、トップ30都市は51.3%を占めている。つまり、上位10都市に全国の映画館・劇場観客者数の3分の1近くが集中し、上位30都市に半分以上が集中している。映画館・劇場数と比較して、観客者数の特定都市への集中度は、より顕著となっている。

図3 2020年中国都市における映画館・劇場観客者数の集中度

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

 映画館・劇場興行収入について、「2020年中国都市映画館・劇場消費指数」ランキングのトップ5都市が全国に占める割合は21.1%、トップ10都市は32.1%、トップ30都市は53.9%を占めている。つまり、上位10都市に全国の映画館・劇場観客者数の3分の1以上が集中し、上位30都市に半分以上が集中している。

 周牧之教授は、「映画館・劇場消費指数ランキングのトップ30都市には、観客数が集中しているため、興行収入パフォーマンスは他の都市よりはるかに高い」と解説している。

図4 2020年中国都市における映画館・劇場興行収入の集中度

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

 「2020年中国都市映画館・劇場消費指数」からは、さらに次のような都市と映画興行の関係が見えてくる。

 中国で映画興行収入の最多都市:映画興行収入の上位10都市は、上海、北京、深圳、広州、成都、重慶、杭州、武漢、西安、蘇州である。

 中国で映画鑑賞者数の最多都市:映画鑑賞者数が多い上位10都市は、上海、北京、成都、広州、深圳、重慶、武漢、杭州、西安、蘇州である。

 中国で最も映画好きな都市:一人当たりの映画館での鑑賞回数が多い上位10都市は、深圳、珠海、海口、杭州、南京、長沙、武漢、広州、上海、西安である。

 中国で最も映画におカネを掛ける都市:一人当たりの映画興行収入の上位10都市は、深圳、北京、上海、杭州、珠海、広州、南京、海口、長沙、ラサである。

 特に注目すべきは、中国では新型コロナウイルスパンデミック下も、スクリーン数や映画館数が減るどころか増えていたことである。中国のスクリーン数は、2005年の2,668枚から2020年には75,581枚へと、28倍にもなった。

 2019年10月から2021年5月にかけて、全国297都市のうち、203都市で、映画館の数が増加した。その中で、映画館数が最も増えた上位10都市は、成都、蘇州、広州、武漢、鄭州、常州、保定、北京、杭州、石家荘となっている。逆に、映画館数が減った都市も38あり、減少数が多いのは四平、台州、九江の3都市であった。

 その結果、中国全土の映画館はこの期間に826館も純増した。

図5 2020年中国で最も映画好きな都市ランキングトップ30都市
(一人当たり映画館での鑑賞回数)

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

図6 2020年中国で最も映画におカネを掛ける都市ランキングトップ30都市
(一人当たり映画興行収入)

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

■ 新型コロナウイルスパンデミック下のOTT大躍進


 新型コロナウイルスパンデミックによるロックダウンで、2020年中国春節の映画市場は崩壊した。だが、この衝撃は、映画上映における“革命”を引き起こした。当初、春節に公開が予定されていたコメディ映画『囧媽(Lost in Russia)』は、突然の新型コロナショックを受け、春節の封切りが見送られた。ところが、中国のIT企業であるバイトダンス(TikTokの親会社)がいち早く同映画の上映権を6億3,000万元(約107億円)で購入し、劇場公開されるはずだった2020年1月25日(旧正月の初日)に傘下のアプリで無料配信を行った。

 映画としての『囧媽』は、劇場での興行収益は実現できなかったものの、バイトダンス傘下の「今日頭条(Toutiao)」、「抖音(Douyin:TikTokの中国国内版)」、「西瓜視頻(Xigua Video)」、「抖音火山版(DouyinHuoshan Version)」の4つのアプリで、3日間で延べ1億8千万人以上が視聴し、6億回以上の再生回数を達成した。結果として、バイトダンスは『囧媽』により自社傘下アプリに膨大なアクセスを得られた。。

図7 急変する映画配信モデル

 映画やドラマの映像をインターネット上のプラットフォームで配信するモデルはOTT(Over The Top)と呼ばれる。代表的なOTTプラットフォームとして、海外では「Netflix」、「Amazon Prime」、「Disney+」、「Hulu」、「HBO Max」などが挙げられる。中国では「iQIYI(愛奇芸)」、「テンセントビデオ(騰訊視頻)」、「Youku(優酷))などがある。

 バイトダンスは、斬新な映画上映モデルを打ち立てた。製作費2億1,700万元(約36.9億円)の『囧媽』は、劇場公開をスキップし、OTTで直接配信された最初の大作となった。

 周牧之教授は、「非常事態にあって迅速に映画『囧媽』の上映モデルをOTTへと切り替えたのは、中国ネット企業のビジネスモデルの突破力を表している。

 その後、ディズニーが2億ドル(約220億円)を投じて制作した超大作『ムーラン』も、劇場公開がないままOTTで直接配信されたことで、大きな話題を呼んだ。『ムーラン』は、2020年9月4日からディズニーのOTTプラットフォーム「Disney+」で配信され、2019年11月にオープンしたばかりの同プラットフォームに膨大なアクセス数をもたらした。

 2020年12月4日、ワーナー・ブラザースは、2021年に公開される全17作品を米国の映画館とOTTプラットフォーム「HBO Max」で同時配信することを発表した。これは映画ビジネスのゲームチェンジを決定付けた。

 2020年4月に公開予定だった『007/ノータイム・トゥー・ダイ』も2億5,000万ドル(約275億円)制作費のメガフィルムとして公開が待たれていた。新型コロナウイルス禍で劇場公開が幾度も延期される中、2021年5月26日、突如アマゾン・ドット・コムが、007シリーズを制作した映画会社MGM(メトロ・ゴールドウィン・メイヤー)を90億ドル(9800億円)の巨額で買収すると発表した。アマゾンは傘下にOTTプラットフォーム「Amazon Prime」(会員数2億人以上)を持つだけに、『007/ノータイム・トゥー・ダイ』がいつどのように公開されるのか、話題を呼んでいる。

 コストのかかる超大作も、OTTと劇場の同時公開、あるいはOTTでの直接配信という時代に突入し、映画公開におけるOTT戦略は、興行成績を左右するだけでなく、映画製作会社の命運も左右する大きなファクターとなっている。

 「IT産業が発達している中国でOTTと劇場との協働が映画産業をさらに盛り上げていく」と周牧之教授は予測する。

図8 2020年全世界新型コロナウイルス累計感染者数

■ 中国映画市場が国産映画を世界の興行ランキングの上位に押し上げる


 2020年は、中国映画の興行成績が非常に目を引く年であった。「Box Office Mojo」によると、2020年の世界興行ランキングで中国映画『八佰(The Eight Hundred)』が首位を獲得した。また、同ランキングのトップ10には、第4位にチャン・イーモウ監督の新作『我和我的家郷(My People, My Homeland)』、第8位に中国アニメ映画『姜子牙(Legend of Deification)』、第9位にヒューマンドラマ『送你一朶小紅花(A Little Red Flower)』の中国4作品がランクインした。また、歴史大作『金剛川(JingangChuan)』も第14位と好成績を収めた。中国映画市場の力強い回復により、多くの中国映画が世界の興行収入ランキングの上位にランクインした。

 2005年以来、中国における映画興行収入に占める国産映画の割合は50%から60%の間で推移していたが、2020年には一気に83.7%まで上昇した。

 この20年、中国の映画興行収入は急増している。2005年の20億5,000万元(約349億円)から2019年の642億7,000万元(約1兆926億円)まで、映画の興行収入はこの間に31倍となっている。新型コロナウイルスが効果的に抑制されたことで、中国の映画興行収入は2021年にはさらに上昇すると期待される。

 周牧之教授は「世界最大の興行市場の支えで、中国制作映画は輝かしい時代を迎える」と展望する。

図9 2020年中国都市映画館・劇場消費指数ランキングトップ30都市分析図

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

中国都市ランキング−中国都市総合発展指標

【ランキング】中国IT産業スーパーシティはどこか?〜2020年中国都市IT産業輻射力ランキング

雲河都市研究院

■ IT産業が牽引する21世紀


 IT産業は21世紀のリーディング産業である。世界経済を牽引するだけでなくグローバリゼーションや社会の変革を推し進めている。

 世界の企業時価総額のトップ10社を業種別に分析すると、1989年と2020年の二時点における産業構造の変革が確認できる。

 東京経済大学の周牧之教授は、「平成の幕開けの1989年当時、世界の企業時価総額トップ10企業に、IT・通信企業はNTTとIBMの2社しか入っていなかった。これに対して、2020年の同トップ10企業には、IT的な側面が極めて強いテスラをIT企業として捉えるとすれば、なんと8社も含まれる。且つこれらの企業すべてが世界を舞台とするグローバル企業である」と解説する。

 世界の企業時価総額ランキングを国別に分析することで、さらに地政学上でのパワーシフトが確認できる。

 周牧之教授は、「1989年世界の企業時価総額トップ10企業には、1位のNTTをはじめ日本企業が7社も入った。日本経済のバブルを象徴した結果であった。且つ、ランクインした日本の7企業は、NTT、そして日本興業銀行、住友銀行、富士銀行、第一勧業銀行、三菱銀行の5つの金融機関と、東京電力のすべてが国民経済を基盤としていた。しかし、2020年になるとトップ10に日本企業がなくなり、代わりにテンセントとアリババという中国のIT企業が入った」と語る。

 日本企業の低迷ぶりは企業時価総額ランキングトップ50に尺度を拡大すれば更に明らかである。1989年同トップ50企業には日本企業が32社も入っていた。しかし2020年になると日本企業は40位のトヨタ自動車しかこのトップ50には残っていない。

 周牧之教授は、「こうした構造的な変化はIT革命とグローバリゼーションへの対応を反映するものである」と断言している。

■ 中国で最もIT産業輻射力が高かった都市は?


 中国都市総合発展指標〉に基づき、雲河都市研究院は中国全297地級市(地区級市、日本の都道府県に相当)以上の都市をカバーする「中国都市IT産業輻射力」を毎年モニタリングしている。輻射力とは広域影響力の評価指標である。IT産業輻射力は都市におけるIT企業の集積状況や企業力、そして、IT産業の従業者数を評価したものである。

 2020年は、IT業界にとって大発展の年であった。デジタル感染症対策、在宅勤務、オンライン授業、遠隔医療、オンライン会議、オンラインショッピングなどが当たり前になり、新型コロナウイルス禍で産業や生活のあらゆる分野におけるデジタル化が一気に進んだ。

 〈中国都市総合発展指標2020〉で見た「中国都市IT産業輻射力2020」ランキングのトップ10都市は、北京、上海、深圳、杭州、広州、成都、南京、重慶、福州、武漢となった。これら中国のIT産業スーパーシティは、すべて直轄市、省都、計画単列市からなる中心都市である。同ランキングの上位11〜30都市もほとんどが中心都市である。

図1 2020年中国都市IT産業輻射力ランキングトップ30都市

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

■ 中心都市に集中集約が進むIT産業


 「中国都市IT産業輻射力2020」ランキングを分析することで、特定都市におけるIT産業の凄まじい集中度がわかる。IT産業従業者数において、「中国都市IT産業輻射力2020」ランキングのトップ5都市が全国に占める割合は41.9%、トップ10都市は58.3%、トップ30都市は76.4%を占めている。

図3 2020年中国都市におけるIT産業従業者の集中度

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

 メインボード(香港、上海、深圳)に上場するIT企業数において、「中国都市IT産業輻射力2020」ランキングのトップ5都市が全国に占める割合は67.1%、トップ10都市は77.6%、トップ30都市は92.3%にも達している。IT産業従業者と比較して、IT上場企業の特定都市への集中度は、より顕著となっている。

図3 2020年中国都市におけるメインボード上場IT企業の集中度

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

 中小企業ボードに上場するIT企業数において、「中国都市IT産業輻射力2020」ランキングのトップ5都市が全国に占める割合は51.4%、トップ10都市は62.5%、トップ30都市は77.8%を占めている。

 創業板に上場するIT企業数においては、「中国都市IT産業輻射力2020」ランキングのトップ5都市が全国に占める割合は66.9%、トップ10都市は75.3%、トップ30都市は89.1%を占めている。

 周牧之教授は、「大手にしろ中小にしろスタートアップにしろ、IT企業は中心都市に極めて集中集約している」と言う。

図4 2020年中国都市における中小企業ボード上場IT企業の集中度

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

図5 2020年中国都市における創業板上場IT企業の集中度

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

■ IT産業 vs 製造業


 「中国都市IT産業輻射力2020」と「中国都市製造業輻射力2020」を比べてみると、IT産業の都市への集約パターンは製造業とは異なることが分かる。

 2020年中国都市製造業輻射力トップ10は、深圳、蘇州、東莞、上海、寧波、仏山、成都、広州、無錫、杭州である。これらの都市は、成都を除きすべてが沿海部の都市であり、中心都市ではない都市も多く食い込んだ。

 これに対して、2020年中国都市IT産業輻射力の場合はトップ10の都市は、すべて中心都市である。且つ首位の北京を始め、成都、南京、重慶、武漢といった内陸都市が半数を占める。

 周牧之教授は、「これらIT産業スーパーシティと、製造業スーパーシティの性格が異なるのは、IT産業と製造業の繁栄の条件が異なる故である。中国の製造業スーパーシティが今後IT産業スーパーシティへと脱皮できるかは大きな試練である」と述べる。

 これについては深圳の変貌ぶりが象徴的である。製造業輻射力で第1位にある同市は、IT産業輻射力でも3位まで上り詰めた。深圳にはアメリカの対中制裁で有名になった企業が多く拠点を構えている。例えば、通信機器のZTEとファーウェイ、そしてウィチャットの親会社のテンセント、ドローンの世界トップシェアを持つDJIである。これらは全て深圳発のITベンチャー企業である。これら企業の群生は、深圳が「世界の工場」たる製造業スーパーシティから、IT産業スーパーシティへと脱皮していることを示している。

 周牧之教授は、「中国の製造業はITの力を借りて更なる変化を遂げていく」と展望する。

図6  2020年中国都市IT産業輻射力ランキング分析図

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

中国都市ランキング−中国都市総合発展指標

【ランキング】中国で最も輸出力の高い都市はどこか? 〜2020年中国都市製造業輻射力ランキング

雲河都市研究院

■ 2020年後半、中国の輸出は急回復


 新型コロナパンデミックは、2020年の世界貿易に大きな影響を及ぼした。世界の輸出総額は、前年比-7.2%もの大幅なマイナス成長に陥った。コロナ禍によるロックダウンや米中貿易摩擦の激化の中で、中国の輸出産業も大きな打撃を被った。

 そうした流れの中で2020年前半には中国の輸出額が落ち込んだが、後半には力強い回復を見せた。その結果、世界貿易が落ち込む中にあって中国の輸出額はドルベースで前年比3.6%増を実現した。

 図1で2020年の国・地域別輸出額ランキングを見ると、中国は圧倒的な第1位である。同トップ10は順に、中国、アメリカ、ドイツ、オランダ、日本、香港、韓国、イタリア、フランス、ベルギーとなった。なかでも中国と香港だけが輸出額のプラス成長を成し遂げた。東京経済大学の周牧之教授は、「これは、中国におけるグローバルサプライチェーン型産業集積の強靭さとゼロコロナ政策の成功を象徴する成長である」と評した。

 その結果、第1位の中国と第6位の香港の輸出額合計が、世界の17.8%のシェアを占め、アメリカの2.2倍の規模に相当するまでに至った。

図1 2020年国・地域別輸出額ランキングトップ30

出典:UNCTADデータベースより雲河都市研究院作成

■ 2020年、中国で最も製造業輻射力が高かった都市は?


 〈中国都市総合発展指標〉に基づき、雲河都市研究院は中国全297地級市(地区級市、日本の都道府県に相当)以上の都市をカバーする「中国都市製造業輻射力」を毎年モニタリングしている。輻射力とは都市の広域影響力の評価指標である。製造業輻射力は都市における工業製品の移出と輸出そして、製造業の従業者数を評価したものである。

 〈中国都市総合発展指標2020〉で見た「中国都市製造業輻射力2020」ランキングのトップ10都市は、深圳、蘇州、東莞、上海、寧波、仏山、成都、広州、無錫、杭州となった。この10都市のうち、蘇州、東莞、無錫の3都市の輸出額が若干マイナス成長だったのに対して、その他の都市は輸出増を実現した。これら製造業スーパーシティの輸出力の強靭さが際立った。

 周牧之教授は「これらトップ10都市のうち、深圳、蘇州、東莞、寧波、仏山、無錫の6都市は改革開放前、殆ど工業の蓄積を持たず行政の中心都市でもない小さな町であった。とりわけ深圳は、都市ですらない村であった。これらの町を製造業スーパーシティに仕立てたのは、グローバルサプライチェーンの躍動であった」と指摘する。

図2 2020年中国都市製造業輻射力ランキングトップ30都市

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

■ 製造業スーパーシティに集中する輸出総額


 図3が示すように、「2020年中国都市製造業輻射力」のトップ5都市が中国全体の輸出総額に占める割合は32.5%、トップ10都市は44.2%、さらにトップ30都市の割合は71.7%にも達している。周牧之教授は「中国の輸出産業はこれら製造業スーパーシティに高度に集中している」と述べている。

図3 2020年中国都市における輸出総額の集中度

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

■ 深水港の重要性


 「2020年中国都市製造業輻射力」のトップ10都市は成都を除き、すべて大型コンテナ港を利用できる立地優位性を誇る。周牧之教授は「コンテナ輸送は、グローバルサプライチェーンを支える基盤である。このような結果は、グローバルサプライチェーンにおける深水港の重要性を窺わせる」と解説する。

 雲河都市研究院が、中国全297都市の製造業輻射力と都市交通中枢機能との相関関係を分析した結果、図4で見られるように製造業輻射力とコンテナ港との利便性との相関係数は最も高く、0.65という「強い相関関係」を示した。製造業輻射力と鉄道利便性、空港利便性との間の相関係数は、それぞれ0.62、0.48であった。この相関関係分析は周牧之教授の解説を裏付ける。

図4 2020年中国都市製造業輻射力と都市交通中枢機能との相関関係分析


出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

■ 三大メガロポリスが輸出エンジン


 メガロポリスの視点から見ると、京津冀、長江デルタ、珠江デルタの三大メガロポリスが中国全土の貨物輸出総額に占める割合は、それぞれ5.4%、36.6%、23.1%となっている。三大メガロポリスの合計が全国の65.1%を占めている。

 周牧之教授は「三大メガロポリスでもとりわけ、長江デルタ、珠江デルタは中国輸出工業発展のエンジンで、グローバルサプライチェーンの中核エリアである」と断言する。

図5 2020年中国都市製造業輻射力ランキングトップ30都市分析図

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

中国都市ランキング−中国都市総合発展指標

【ランキング】世界で最も港湾コンテナ取扱量が多い都市はどこか? 〜2020年中国都市コンテナ港利便性ランキング

雲河都市研究院

■ 2020年世界で最もコンテナ輸送を行なった国は?


 新型コロナパンデミックでサプライチェーンと海運は世界的に大きな混乱を生じ、現在に至ってなお収まってはいない。その影響で2020年世界のコンテナ取扱量は-1.2%減であった。これに対して、中国はゼロ・コロナ政策が奏功し、社会活動がいち早く正常に戻ったことでコンテナ取扱量も1.2%成長を実現させた。

図1 2020年世界における国・地域コンテナ取扱量ランキングトップ30

出典:UNCTADデータベースより雲河都市研究院作成。

 図1が示すように、2020年の国・地域別港湾コンテナ取扱量ランキングで見ると中国は圧倒的な第1位である。同トップ10は順に、中国(大陸)、アメリカ、シンガポール、韓国、マレーシア、日本、アラブ首長国連邦、トルコ、ドイツ、中国香港となった。

 図2が示すように、これら10カ国・地域の港湾コンテナ取扱量の世界シェアは59.8%に達し、さらに同ランキング上位30カ国・地域を見ると、そのシェアは86.5%に達している。つまり、この30カ国・地域は世界のコンテナ取扱量の9割弱を担い、グローバルサプライチェーンが最も活発に作動している。

 とりわけ中国(大陸)は、世界港湾コンテナ取扱量におけるシェアが30.1%に達し、群を抜いている。第1位の中国と10位の香港を合わせたコンテナ取扱量は、2位から12位(香港を除く)のアメリカ、シンガポール、韓国、マレーシア、日本、アラブ首長国連邦、トルコ、ドイツ、スペイン、インドの10カ国合計を上回る。東京経済大学の周牧之教授は「この数字は中国がグローバルサプライチェーンの中核的な存在である実態を捉えている」と分析する。

図2 2020年世界における港湾コンテナ取扱量の集中度

出典:UNCTADデータベースより雲河都市研究院作成

■ 2020年世界で最も港湾コンテナ取扱量が多かった都市は?


 図3で港湾コンテナ取扱量を都市別に見てみると、世界における2020年の都市港湾コンテナ取扱量ランキングのトップ30には、アジアの都市が21も含まれている。特に中国は、香港、高雄を含み12都市もランキングされている。周牧之教授は「アジアの時代を彷彿とさせる順位である」と語る。

 同ランキングのトップ10に絞ってみると、順に上海、シンガポール、寧波―舟山、深圳、広州、青島、釜山、天津、香港、ロッテルダムとなり、トップ10都市のうち、中国は香港を含み7都市(寧波と舟山をひとつにカウント)がランクインしている。コンテナ輸送における中国の圧倒的なパワーが浮かび上がる。

 同ランキングトップ30の中で、中国以外には唯一アメリカが複数の都市をランクインさせている。それは17位のロサンゼルス、19位のロングビーチ、20位のニューヨーク―ニュージャージーである。なお、日本は21位の京浜港(東京―横浜―川崎をひとつにカウント)だけがランクインした。

図3 2020年世界における都市港湾コンテナ取扱量ランキング

出典:World Shipping Council、〈中国都市総合発展指標〉データベースより雲河都市研究院作成

■ 2020年中国で最もコンテナ港利便性が高かった都市は?


 グローバリゼーションが加速する中、サプライチェーンの根幹である港湾機能は、国や都市にとって極めて重要な機能である。〈中国都市総合発展指標〉では、港湾機能を評価する「コンテナ港利便性」を採用し、毎年各都市でモニタリングを実施している。

 「コンテナ港利便性」は、都市における港湾へのアクセスおよび港湾処理機能を指数化した指標であり、都市中心部から港湾までの直線距離やコンテナ取扱量等のデータを合成し、独自に利便性を算出している。

 図4が示すように、「2020年中国都市コンテナ港利便性」のトップ10都市は、順に、上海、深圳、寧波、青島、天津、広州、廈門、日照、蘇州、舟山となり、第1位の上海の突出ぶりが著しい。

 2020年には、上記トップ30都市で唯一、大連のコンテナ取扱量がマイナス成長に陥った。新型コロナウイルス禍で、中国の大多数の港湾都市がコンテナ取扱量のプラス成長を実現させた背景には、製造業輸出力の強靭さが窺える。

図4 2020年中国都市コンテナ港利便性ランキングトップ30都市

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

■ 特定の港湾都市に集中するコンテナ輸送


 図5が示すように、「2020年中国都市コンテナ港利便性」のトップ5都市が中国全体の港湾コンテナ取扱量に占める割合は52.1%、同トップ10都市は70.1%、さらに同トップ30都市の割合は89.0%にも達している。中国のコンテナ輸送が特定の港湾都市に高度に集中している実態が浮き彫りになった。

図5 2020年中国都市における港湾コンテナ取扱量の集中度

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

 図6は「2020年中国都市コンテナ港利便性」を地図化したものであり、港湾ごとにすべての都市に対して計算を行った結果から、トップ10都市の結果を可視化している。矢印の色、長さ、太さは利便性の大きさを示し、値が大きくなるほど矢印の色が赤く、太くなり、値が小さくなるほど色が青く、細くなるようグラフィック処理した。

 周牧之教授は、「可視化した都市コンテナ港利便性の地図を見ると、中国のコンテナ輸送、そして世界のコンテナ輸送が如何に長江デルタ、珠江デルタの両メガロポリスに集中しているかが分かる。その背後にはグローバルサプライチェーンの巨大な産業集積がある」と解説する。

図6 2020年中国都市コンテナ港利便性ランキングトップ10都市分析図

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

日本語版『【ランキング】世界で最も港湾コンテナ取扱量が多い都市はどこか? 〜2020年中国都市コンテナ港利便性ランキング 』(チャイナネット・2022年7月12日掲載)


中国都市ランキング−中国都市総合発展指標

【ランキング】中国で最も空港利便性が高い都市はどこか?〜2020年中国都市空港利便性ランキング

雲河都市研究院

■ 2020年中国の航空輸送は旅客が激減、貨物は微減


 2020年、新型コロナウイルス禍で打撃を最も受けた業界のひとつは、航空輸送である。特に、長引く国際旅行規制の影響により、中国の航空旅客数は2019年より36.6%も減少した。幸い、中国は新型コロナウイルスの流行を逸早く制圧し、国内航空輸送量は早期に回復したため、欧米各国や日本などと比べ、航空旅客数減少幅は比較的小さかった。

 航空旅客数に比べ、2020年中国の航空貨物取扱量は6%減にとどまった。これはコロナ禍でも物流が活発に行われ、製造業サプライチェーンも迅速に回復したことを示している。

■ 中国で最も空港利便性が高かった都市は?


 交通ハブ機能は、都市にとって極めて重要な機能であり、他の中枢機能を強化・増幅する基盤となる。〈中国都市総合発展指標〉では、空港機能を評価する「空港利便性」を採用し、例年各都市でモニタリングを実施している。

 「空港利便性」は、その都市における空港のアクセスおよび空港処理機能を指数化した指標であり、都市中心部から空港までの直線距離、空港旅客数、空港貨物取扱量、年間フライト数、遅延率、滑走路距離等のデータを合成し、独自に利便性を算出している。

 「2020年中国都市空港利便性ランキング」上位10都市は、上海、北京、広州、深圳、成都、重慶、昆明、西安、杭州、廈門であり、いずれも中心都市である。同上位10都市の順位は、2019年度から不動であった。

■ 中国都市空港利便性ランキングトップ30都市


 「2020年中国都市空港利便性ランキング」の11位から30位都市は、鄭州、南京、海口、貴陽、長沙、青島、天津、三亜、瀋陽、武漢、ウルムチ、ハルビン、大連、済南、南昌、太原、寧波、フフホト、蘭州、南寧であり、海南島のリゾート地・三亜を除き、すべて中心都市であった。東京経済大学の周牧之教授は「コロナ禍の影響により国際旅行が中断され、国内旅行が中心となり、観光名所を抱える鄭州、貴陽、長沙、三亜等の都市が順位を上げた」と見ている。

図1 2020年中国都市空港利便性ランキングトップ30都市

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

■ 中心都市に空港機能が集中


 「2020年中国都市空港利便性ランキング」のトップ5都市が全国空港旅客数に占めるシェアは28.1%に、トップ10都市は45.5%に、トップ30都市は77.4%にも達している。中国の航空旅客輸送は中心都市に集中している。

図2 2020年中国都市における空港旅客数の集中度

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

 一方、「2020年中国都市空港利便性ランキング」のトップ5都市が全国空港貨物取扱量に占めるシェアは56.8%に、トップ10都市は70.6%に、さらにトップ30都市は91.7%にも達している。このうち、深圳、杭州、鄭州、南京、長沙、済南、南昌の7都市では、空港貨物取扱量が2019年より増加した。周牧之教授は、「航空旅客輸送と比較して、航空貨物が中心都市に集中する傾向がさらに顕著だ」と指摘している。

図3 2020年中国都市における空港貨物取扱量の集中度

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

IT産業の発展に空港利便性は不可欠


 雲河都市研究院は中国の全297地級市以上の都市の空港利便性、コンテナ港利便性、鉄道利便性といった交通中枢機能と、製造業輻射力とIT産業輻射力の相関関係を分析した。図4で示すように、製造業輻射力との相関関係が最も深いのはコンテナ港利便性である。その相関係数は、0.65に達し、「強い相関関係」を示している。それに対して、製造業輻射力と空港利便性との相関関係は弱く、その相関係数は0.48しかなかった。

 製造業輻射力と真逆に、IT産業輻射力と空港利便性との相関関係が強く、その相関係数は0.65に達している。

 周牧之教授は、「航空輸送はグローバルサプライチェーンの重要な基盤であると同時に、人の流れを支える基盤でもある。交流経済の代表格のIT産業の発展は、航空輸送の支え無しには成り立たない」と分析している。

図4 2020年中国都市空港利便性と都市各産業輻射力との相関関係分析

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

メガロポリスも内陸拠点都市も空港利便性が重要


 図5は「空港利便性」を地図化したものであり、ひとつの空港からすべての都市に対して計算を行った結果を、トップ10都市について可視化した。矢印の色、長さ、太さは利便性の大きさを示し、値が大きくなるほど矢印の色が赤く、太くなり、値が小さくなるほど色が青く、細くなるようグラフィック処理した。

 周牧之教授は、「中国の航空輸送は、京津冀(北京・天津・河北)、長江デルタ、珠江デルタの三大メガロポリスにかなり集中していると同時に、成都、重慶、昆明、西安など内陸の拠点都市の発展を支える最も重要な交通基盤となっている」と解説する。

図5 2020年中国都市空港利便性ランキングトップ10都市分析図

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

中国都市ランキング−中国都市総合発展指標

【ランキング】中国で最も経済規模の大きい都市はどこか? 〜2020年中国都市GDPランキング

雲河都市研究院

■ 世界経済のマイナス成長の中、中国は2.3%成長を実現


 新型コロナウイルスパンデミックは、世界経済に大きく影を落とした。世界経済の成長率は2018年の6.3%、2019年の1.6%から、2020年には-2.7%とマイナス成長に転じた。

 図1が示すように、2020年国・地域別GDPランキングトップ10は、アメリカ、中国、日本、ドイツ、イギリス、インド、フランス、イタリア、カナダ、韓国と続く。コロナショックで、トップ10の国々は軒並みマイナス成長に陥った。その中で唯一中国はプラス成長し、3.1 %の成長率を実現した。

 東京経済大学の周牧之教授は、「逆風の中、中国がプラス成長を維持できたのは、ゼロコロナ政策の成功とグローバルサプライチェーン型産業集積の強靭さ故である」と分析している。

図1 2020年国・地域別GDPランキング

出典:国連データベースより雲河都市研究院作成。

 図2が示すように、世界の経済規模は1990年から2020年までに、3.7倍に拡大した。この間、米国のGDPも3.5倍に拡大した。過去30年間、世界経済に占めるアメリカの割合は大きく変化していない。2020年は米国が24.5%の世界シェアを維持した。

 一方、中国は、2001年のWTO加盟を機に世界経済における存在感が急速に増してきた。2020年の中国GDP 規模は、1990年の37.3倍にまで達した。世界経済に占める中国のシェアも、1990年は1.7%に過ぎなかったが、2020年は17.3%にまで拡大した。

 長期にわたる中国の高度成長により、世界経済におけるアメリカと中国の二大巨頭態勢が確立した。米中両国を合わせた経済規模は、2020年の世界経済の41.7%にも達した。日本はGDPランキング世界3位であるものの、世界経済に占める割合はわずか5.9%に過ぎない。米中の経済規模は、3位の日本から24位のスウェーデンまでの22カ国・地域の経済規模の合計に匹敵するほどである。

図2 1990〜2020年世界GDP推移

出典:国連データベースより雲河都市研究院作成。

■ 一国経済規模に匹敵するまでに至った中国の都市力


 2020年中国都市GDPランキングにおいて、順に上海、北京、深圳、広州、重慶がトップ5を飾った。この5都市の経済規模は他都市を大きく引き離している。6位から10位の都市は、順に蘇州、成都、杭州、武漢、南京の5都市であった。

 中国では北京、上海、重慶、天津の四大直轄市が人口規模、面積そして中枢機能と産業集積などにおいて他都市と比較して格別である。しかし、グローバルサプライチェーンの展開をベースにした沿海部都市の発展は著しい。深圳、広州の経済規模はすでに重慶、天津を超え、北京、上海と並び、中国で「一線都市」と呼ばれるようになった。

 四つの「一線都市」の経済力は、どれほどなのか?2020年上海の経済規模は世界の国別GDPランキング24位のスウェーデンを超えた。北京は同25位のベルギーを、深圳は同31位のアルゼンチンを、広州は同33位のノルウェーを超えた。

 周牧之教授は、「いまや中国の都市は一国の経済力に匹敵するまで成長した」と語る。

■ 中心都市と製造業スーパーシティという二つの大きな存在


 中国では都市の逆転劇が激しく起こっている。中でも、一漁村から出発した深圳が、過去20年間でその経済規模を17倍へと膨れ上がらせ、GDPランキング3位を不動としたのに対し、直轄市の天津はトップ10から脱落したことが象徴的である。

 GDPランキングは中国全297地級市(地区級市、日本の都道府県に相当)以上の都市をカバーする。このなかでは四大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる36「中心都市」の存在感が際立つ。GDPランキングトップ10には9中心都市、トップ30には19中心都市がランクインし、中心都市の優位性も明らかとなった。まさにこの36中心都市が改革開放以来の中国社会経済の発展を主導したことが見て取れる。

 GDPランキング30のもう一つ大きな存在は、製造業スーパーシティである。トップ30には蘇州、無錫、仏山、泉州、南通、東莞、煙台、常州、徐州、唐山、温州といった11の非中心都市がランクインした。とくに蘇州はトップ10の6位に食い込んだ。この11都市は、すべて沿海部に属する製造業スーパーシティである。

 周牧之教授は、「改革開放以降、中国の急速な工業化を牽引してきたこれらの製造業スーパーシティは、グローバルサプライチェーンのハブとなっている」と指摘している。

図3 2020年中国都市GDPランキングトップ30都市

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

■ 殆どのトップ30都市が経済成長を実現


 2020年、新型コロナウイルスパンデミックの中、世界の主要国がマイナス経済成長に陥ったにもかかわらず、中国はゼロ・コロナ政策により2.3%の経済成長を遂げた。

 2020年GDPランキングトップ30都市のうち、武漢だけが−4.7%成長であったが他の都市はすべてプラス成長を実現した。主要都市の強靭さが中国経済成長を支えた。

■ GDPランキングトップ30都市は中国経済の半分弱を稼ぐ


 GDPの集中度でみると、2020年のGDP規模は、トップ5都市が全国の15.0%、トップ10都市が全国の23.3%、トップ30都市が全国の43.0%を占めている。これは、中国297都市のうち、上位10%の都市に富の半分弱が集中していることを意味する。

図4 2020年中国都市におけるGDPの集中度

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

■ 三大メガロポリスの存在感は顕著


 2020年GDPランキングトップ30の地理的な分布には三つの特徴がある。

 ひとつは前述のように、四大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる中心都市の優位が顕著である。

 二つ目は京津冀(北京・天津・河北)、長江デルタ、珠江デルタの三大メガロポリスに集中している。

 2020年GDPランキングトップ30には京津冀メガロポリスから2位の北京、11位の天津、28位の唐山がつけた。

 長江デルタメガロポリスから1位の上海、6位の蘇州、8位の杭州、10位の南京、12位の寧波、14位の無錫、20位の合肥、21位の南通、26位の常州、27位の徐州、30位の温州がランクインした。

 珠江デルタメガロポリスから3位の深圳、4位の広州、17位の仏山、24位の東莞がランクインした。

 三大メガロポリスから18都市がGDPランキングトップ30に入り、その存在感を誇示している。

 周牧之教授は、「これは、製造業スーパーシティが三大メガロポリスに集中することの結果である。特に長江デルタ、珠江デルタ両メガロポリスには世界最強のグローバルサプライチェーン型産業集積が展開している」と解説する。

■ 南強北弱構造が深刻に


 2020年GDPランキングトップ30の地理的分布の三つ目の特徴は、南強北弱構造が一層明らかになったことである。

 GDPランキングトップ10には北部の都市では首都北京しか残っていない。とくに重化学工業力を誇示していた東北3省の衰退ぶりは凄まじく、いまや大連だけがかろうじて29位に入り、瀋陽、長春、ハルビンといった省都はことごとくトップ30から脱落した。

 対照的に、南部とくにその沿海地域の躍進ぶりは華々しい。

 周牧之教授は、「深刻さを増す南強北弱構造が中国の国土発展バランスを悩ませる大きな課題となっている」と述べている。

図5 2020年中国都市GDPランキングトップ30都市分析図

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

中国都市ランキング−中国都市総合発展指標