【ランキング】メガシティの時代:中国都市総合発展指標2021ランキング

雲河都市研究院

 雲河都市研究院は、中国における地級市以上の297都市(日本の都道府県に相当)を対象とした〈中国都市総合発展指標2021〉の総合ランキングを発表した。北京が6年連続トップ、上海が2位、深圳が3位となった。


 中国共産党中央財経領導小組弁公室元副主任、全国人民政治協商会議常務委員の楊偉民氏は、「私にとって親しみ深い中国都市総合発展指標が約束通り再び公表された。この指標は、誕生以来、常に新しい発見をもたらしてくれる。今回、中国都市総合発展指標2021では、都市規模別、地域別の分析が追加された。総合指標、そして経済・環境・社会的評価を用いて、都市を規模や地域ごとに分類、比較研究し、新たな知見をもたらしている。京津冀(北京・天津・河北)、長江デルタ、珠江デルタ、成渝(成都・重慶)などの地域におけるメガシティから中小都市に至るパフォーマンスが可視化されたことで、第20回中国共産党大会(2022年10月に開催)が打ち出した、メガシティと特大都市の、発展モデルの転換を加速させる政策の背景にある深い思考が窺える」と称賛した。

1.先進的なマルチモーダル指標で都市を「五感」で評価


 中国都市総合発展指標(以下、〈指標〉)は、中国の297都市を対象とし、環境、社会、経済の3つの側面(大項目)から都市のパフォーマンスを評価したものである。〈指標〉の構造は、各大項目の下に3つの中項目があり、各中項目の下に3つの小項目が設けた「3×3×3構造」になっており、各小項目は複数の指標で構成されている。これらの指標は、882のデータセットから構成されており、その31%が統計データ、35%が衛星リモートセンシングデータ、34%がインターネットビッグデータから構成されている。この意味で、指標は、異分野のデータ資源を活用し、五感で都市を高度に感知・判断できる先進的なマルチモーダル指標システムである。

 深圳市元副市長、香港中文大学(深圳)理事の唐傑氏は、「今回の〈指標〉は前年度と比較すると、総合ランキングのトップ10都市は安定しており、杭州は8位から6位に順位を上げた。中国都市勢力図では、成都、杭州、南京、重慶、蘇州が新一級の都市として安定し、北京、上海、深圳といった一級都市に追いつく勢いを強めている。〈指標〉の特徴として、経済規模、経済構造、経済効率、ビジネス環境、広域インフラ、輻射能力など9つの小項目指標が都市の経済を評価している。また、自然生態、汚染負荷、環境努力、交通ネットワークなど9つの小項目指標が都市の環境を評価している。加えて、居住環境、生活サービス、文化施設、人的交流など9つの小項目指標が社会発展を評価している。都市発展を総合的に評価するこの27の「小項目指標」は、中国都市の量的成長から質の高い発展への移行を、定量的に評価するバロメータである」と指摘する。

 指標2021総合ランキングのトップ10都市は順に、北京、上海、深圳、広州、成都、杭州、重慶、南京、蘇州、天津となっている。これら10都市は、長江デルタメガロポリスに4都市、珠江デルタメガロポリスに2都市、京津冀メガロポリスに2都市、成渝メガロポリスに2都市と、4つのメガロポリスにまたがっている。

 総合ランキング第11位から第30位は順に、武漢、西安、廈門、寧波、長沙、青島、東莞、福州、鄭州、無錫、仏山、昆明、珠海、合肥、済南、瀋陽、南昌、海口、三亜、貴陽の都市である。

 総合ランキング上位30都市のうち、24都市が「中心都市」に属している。中心都市とは4直轄市、5計画単列市、27省都・自治区首府から成る36都市である。つまり、総合ランキングの上位30位以内に7割近くの中心都市が入っており、中心都市の総合力の高さが伺える。

図1 〈中国都市総合発展指標2021〉総合ランキング トップ100都市

2.メガシティと特大都市が中国の都市発展をリード


 都市規模と発展水準の関係分析を可視化するために、指標2021では、箱ひげ図と蜂群図を重ね合わせ、タイプごとに都市の偏差値分布とその差異を比較した。

 これに対して、中国国家発展改革委員会発展戦略和計画司元一級巡視員、中国駐日本国大使館元公使参事官の明暁東氏は、「〈指標2021〉のこの試みは画期的だ。これによって、各種指標のランキングに、箱ひげ図が重ねられ、異なるタイプ都市の分布と差異が可視化された。2021年中国都市全体の発展状況が非常に正確に示されている。読者に中国都市の実力をより立体的かつ直観的に印象づける。これ自体が、一つの重要なイノベーションである」とコメントしている。

 指標2021では、都市を人口規模に応じて、人口1000万人以上の「メガシティ」、500万人以上1000万人未満の「特大都市」、300万人以上500万人未満の「第Ⅰ種大都市」、100万人以上300万人未満の「第Ⅱ種大都市」、100万人未満の「中小都市」と分類している。 この分類は、「都市規模分類基準の変更に関する中国国務院通達」の都市分類と同じだが、「通達」では「都市部人口」を用いているのに対し、〈指標〉では「常住人口」を用いている。

 直近で実施された中国第7回国勢調査のデータを用いて297の地級市以上都市を分類すると、メガシティは17都市、特大城市は73都市、第Ⅰ種大都市は107都市、第Ⅱ種大都市は79都市、中小都市は21都市となる。

 17メガシティの常住人口は2億7千万人に達し、日本総人口の2倍以上に相当する。メガシティと特大都市を合わせると90都市で、総人口は7億8,000万人に達し、これはアメリカ総人口の2倍に相当する。これについて、東京経済大学の周牧之教授は、「中国人口の半分以上がこれらの都市に住んでおり、メガシティ化、大都市化は、中国ですでに現実のものとなっている」と指摘している。

 箱ひげ図中の横線は、サンプルの中央値、箱の上辺は上位四分位点(75%)、箱の下辺は下位四分位点(25%)、箱本体は50%のサンプル分布を示している。蜂群図は、個々のサンプル分布をプロットした図である。箱ひげ図と蜂群図を重ね合わせることで、サンプルのポジションと全体の分布の双方を示せる。

 指標では、評価方法に偏差値を用い、全国での各指標における各都市のパフォーマンスを測っている。これによって、各指標で用いられる異なる単位を、偏差値という統一的な尺度で総合的に比較することが出来た。各都市における偏差値の中央値は、図2に見られるように、メガシティのみ全国平均を上回っている。環境、経済、社会の三大項目の偏差値を積み重ねた総合評価の全国平均値は、150である。図2で示すように、各タイプ都市の中で、唯一メガシティの中央値が全国平均値を超えた。

 周牧之教授は「メガシティは、疑いなく中国都市発展のエンジンとなっている。但し、メガシティの中でもその評価は芳しくない都市もある。例えば、临沂の総合評価偏差値は全国の平均値を下回った。また石家荘の総合ランキングは全国第46位である。これに対して、石家荘より180万人も人口の少ない南京は、人口規模では特大都市でありながら、総合ランキングでは第7位に輝いている」と解説する。

 これは、指標が「環境」「社会」「経済」の総合評価であることに起因している。人口規模と環境、社会、経済の三大項目との相関を分析すると、人口規模は「環境」との相関が弱く、「社会」との相関がやや強く、「経済」との相関が最も強いことがわかる。つまり、人口規模が大きい経済パフォーマンスの良い都市でも、「環境」の得点が低い場合は、総合ランキングの順位を引き下げることがある。

図2 〈中国都市総合発展指標2021〉総合ランキング 人口分類別分析

出典:雲河都市研究院〈中国都市総合発展指標2021〉より作成。

3.地域発展で先行する華東地域と華南地域


 中国は国土が広大であり、気候や地理的条件、社会発展の状況も地域によって大きく異なる。指標2021では、華北、東北、華東、華中、華南、西南、西北といった7地域の都市パフォーマンスを比較分析している。

 各地域の都市の数と人口規模を比較すると、華北は33都市で人口1.64億人、全国に占める人口シェアは11.6%である。東北は34都市で0.96億人、同6.8%である。華東は77都市で4.25億人、同30.1%と全国で最大規模の人口を抱えている。華中は42都市で人口2.14億人、同15.1%、華南は39都市で人口1.82億人、同12.9%、西南は39都市で1.71億人、同12.1%である。西北は33都市で0.79億人、同5.6%と全国で最少となっている。中国人口分布は地理的に偏在し、その重心は、沿海部と長江沿いに集中している。

 さらに、各地域の流動人口を見ると、華北は-371.3万人、東北は-400.1万人、華東は1645.9万人、華中は-126.6万人、華南は1685.0万人、西南は-974.5万人、西北は-1007.5万人で、各地域から華東、華南への人口移動が著しい。この人口移動は中国の人口分布の偏在をさらに顕著にしている。

図3 〈中国都市総合発展指標2021〉総合ランキング 地区別分析

出典:雲河都市研究院〈中国都市総合発展指標2021〉より作成。

 図3に示すように、中央値が全国平均の150を超える地域はない。東北地域は、中央値が最も低く、その中心都市4都市はいずれも総合順位が高くないと同時に、一般都市のほとんどもその低い中央値周辺に集まっている。それに対して西北地域は、総合ランキング12位の西安が同地域の中央値を引き上げている。

 総合ランキングトップの北京と同10位の天津はスコアを伸ばしたことで、華北地域の中央値が東北・西北地域の中央値より高くなっている。

 華中地域も武漢、長沙、鄭州の3つの中心都市の牽引力に頼るところが大きい。一般都市の中では宜昌だけが総合偏差値で全国平均を上回っている。

 中央値が最も高い華東地域は事情が異なる。上海に代表される中心都市だけではなく、蘇州、無錫に代表される一部の一般都市の成績も非常に優れていることから、箱ひげ図の箱のサイズが大きく、中心都市と一般都市が一体となって中央値を引き上げている。華南地域も同様で、中心都市である深圳や広州の牽引力が強いと同時に、東莞や仏山といった非中心都市の存在感も目を引く。この2つの地域では、すでに一部の一般都市が中国都市発展の最前列に並んだ。


【日本語版】
チャイナネット「メガシティの時代:中国都市総合発展指標2021ランキング」(2023年3月29日)

【中国語版】
中国網「超大城市时代:中国城市综合发展指标2021排行榜」(2023年2月21日)

【英語版】
China.org.cn「The era of megacities: China Integrated City Index releases 2021 rankings」(2023年3月14日)

中国国務院新聞弁公室(SCIO)「The era of megacities: China Integrated City Index releases 2021 rankings」(2023年3月14日)

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