【専門家レビュー】〈中国都市総合発展指標2020〉から見た新型コロナパンデミック下の中国都市発展/明暁東・中国駐日本国大使館元公使参事官

明暁東

中国国家発展改革委員会発展戦略和計画司元一級巡視員、中国駐日本国大使館元公使参事官


〈中国都市総合発展指標2020〉英語版 2022年1月7日付中国国務院新聞弁公室HPで発表

 2021年12月28日、雲河都市研究院が〈中国都市総合発展指標2020〉を発表した。2020年を振り返ると、世界を席巻する新型コロナウイルスパンデミックや世界経済の深刻な不況などの影響に直面しながらも、中国は都市の強靭性を盾に新型コロナ蔓延の予防・制圧と、経済社会発展の両面で、大きな成果を上げた。中国都市総合発展指標2020〉は、地級市およびそれ以上の都市(日本の都道府県に相当)の297都市における感染症対策と経済回復の実績を、多角的なデータで客観的に評価した。同指標で新型コロナウイルパンデミック前後の都市のパフォーマンスを比較すると、以下のような知見が得られる。


1.トップランナー構成は安定


 〈中国都市総合発展指標2020〉の総合ランキングでは、都市の発展を環境・社会・経済の3つの側面から分析・評価している。2020年の総合ランキングでは、トップ10から11位に転落した武漢とトップ10に入った蘇州を除き、トップ30都市は2019年とほぼ変わらない。

   これら30都市は、中国GDPの43%をも創出し、中国の経済成長を牽引するトップランナーである。新型コロナウイルスショックにより、中国経済は“一時停止”したものの、トップランナーとしてのこれら30都市に大きな浮き沈みはなく、成長を維持し、中国発展のエンジンとして重要な役割を果たした。


2.都市環境が引き続き改善


 〈中国都市総合発展指標2020〉環境大項目ランキングは、都市の自然生態、環境品質、空間構造を評価している。2020年の環境大項目ランキングでは、2019年と比較してトップ30の構成に大きな変化は見られない。ナクチュは33位から22位に、泉州は35位から28位に、中山は36位から29位に上昇し、蘇州、宝山、三明は30位以内から外れた。

   カーボンピークアウトとカーボンニュートラルという国家目標を達成するべく、各都市は新型コロナの影響を克服しながら、産業構造の調整、空間構造の最適化、グリーンエコノミーの推進に取り組んでいる。そのため、ランキング上位の都市はいつ下位都市に抜かれてもおかしくない状況にある。都市の環境改善への努力は、中国全土の生態環境改善に直に寄与している。


3.都市ガバナンスは着実に向上


 〈中国都市総合発展指標2020〉社会大項目ランキングは、都市のステータス・ガバナンス、伝承・交流、都市生活を評価している。新型コロナウイルスパンデミックにより、都市のガバナンスは厳しい挑戦に立たされた。2020年の社会大項目ランキングでは、2019年と比較してトップ30の構成に大きな変化は見られない。珠海は23位から31位に下がり、南昌は33位から25位に上昇してトップ30入りを果たした。コロナ禍で最も厳しい試練に晒された武漢は9位から16位に下がった。

   新型コロナパンデミック初期、各都市はロックダウン対策を講じ、一時的な影響を受けたものの、都市住民の生活はいち早く正常化した。新型コロナ禍にあって、都市運営で一時的に厳しい措置が余儀なくされたものの、新型コロナを制圧したことでこうした措置は短期間で解除され、都市の生活クオリティ、文化娯楽に深刻な影響は及ぼさなかった。


4.都市経済は順調に回復


 〈中国都市総合発展指標2020〉経済大項目ランキングは、都市の経済規模だけでなく、経済構造や効率性も評価している。2020年経済大項目ランキングで、トップ30にランクインした都市は、2019年と比較してほぼ変わりはない。珠海だけが30位から32位に下がり、温州は31位から28位に上昇した。

   中国の都市は新型コロナウイルスパンデミックの影響を克服し、安定した経済成長を維持している。中国経済はすでに構造高度化の局面にあり、新型コロナ禍はこのプロセスを加速した。中国の発展フレームワークは国内循環を主軸とし、国内外の「双循環」が相互に促進する段階に至り、都市は新たな発展段階における構造高度化を進めている。

   さらに〈中国都市総合発展指標2020〉のいくつかの具体的な指標データからは、以下のような知見が得られる。


5.都市のレジリエンス(回復力)を存分に発揮


   2020年中国各都市の新型コロナウイルス新規感染者数(海外輸入感染症例と無症状例を除く)において、最も感染者数が多かった10都市は、初期に新型コロナウイルスパンデミックに見舞われた武漢とその周辺に集中した。且つ中国全土新規感染者数の80.8%はこの10都市に集中した。中国は、およそ1カ月余りでこれら都市での感染拡大を抑え、約2カ月で1日当たりの新規感染者数を1桁にとどめ、約3カ月でゼロ・コロナ状態にした。

   最も感染者数が多かった11位から20位都市の中には、全国におけるGDP規模トップ10都市である上海、北京、深圳、広州、成都、重慶、杭州のほか、ハルビン、長沙、南昌、合肥、ウルムチ、寧波、温州、蚌埠、南陽などの省都や地域経済の中心都市が含まれた。なかには何度もウイルスに襲われた都市もあった。

   最も感染者数が多かった1位から20位の都市の医療リソースを、「中国都市医療輻射力2020」で見ると、北京、成都、上海、広州、杭州、武漢の6都市が同輻射力トップ10に入り世界の大都市にも匹敵する医療機関や医療従事者の厚みを持っている。

   しかし、恵まれない都市も多い。最も感染者数が多かった1位から20位の中で、湖北省に属する12都市を見ると、武漢を除く11都市は医療リソースが少ない。例えば孝感、黄岡、随州、信陽、南陽の5都市は「中国都市医療輻射力2020」で200位以降だった。荊州、鄂州、襄陽、黄石、荊門、咸寧の6都市は100位~200位にあった。 

   こうした状況に鑑み、中国では全国で医療派遣が実施された。医療輻射力の強い都市が弱い都市を支援し、すべての都市に科学的な予防と医療を実施できるリソースを迅速に行き届かせた。よって、いち早く生産活動の再開を実現し、市民生活を取り戻した。

   中国は、感染症制御と経済復興を両立させ、新型コロナウイルスパンデミック以来、主要国で初めて経済成長を実現した。中国の都市の強靭な回復力と活力を見せつけた。

6.陸空海輸送はコロナ対策と経済回復を保障


 「中国都市空港旅客取扱量2020」と「中国都市航空貨物取扱量2020」のランキングを見ると、空港旅客取扱量と航空貨物取扱量のトップ10都市はほぼ一致している。これら10都市は、中国の空港旅客取扱量の45%、航空貨物取扱量の72.8%を占め、中国における航空輸送の主要拠点都市となっている。

   「中国都市港湾コンテナ取扱量2020」トップ10都市は、上海、寧波、深圳、広州、青島、天津、廈門、蘇州、営口、大連であり、この10都市で中国港湾コンテナ取扱量の70.8%を占めている。新型コロナウイルス感染拡大期には、ロックダウンにより一時生産がストップしたことがあったものの、各主要都市では、陸空海輸送を駆使し、緊急物資輸送を円滑に実施した。

   中国交通運輸部(省)のデータによると、2020年の中国港湾貨物取扱量は145億5000万トンに達し、前年比4.3%増となった。国際貿易および産業サプライチェーンの安定化を保障した。

7.デジタルエコノミーが急成長


 「中国都市IT輻射力2020」ランキングのトップ 10 都市は、北京、上海、深圳、杭州、広州、成都、南京、福州、武漢、廈門である。いずれも中国で最も経済的に発展した都市であり、多くの上場IT企業及び従業員を有し、ITインフラが充実している。新型コロナウイルスパンデミックにより行動が制限された時期もあったが、新鋭のITインフラと豊富なIT人材を活用し、中国でオンラインショッピング、在宅勤務、オンライン会議、クラウド展示会などが急速に普及した。都市のデジタル経済は大きく成長し、産業経済のDX化が加速した。

   新型コロナ禍でも、ECは小売消費を押し上げ、越境ECは対外貿易を安定させた。中国国家統計局によると、2020年中国ネット通販売上高は11兆7, 601億元に達し、前年比10.9%増となった。このうち、物品のネット通販売上高は9兆7,590億元で14.8%増となり、中国の社会消費財小売総額の24.9%を占め、前年同期比4.2ポイントもアップした。

   中国税関総署のデータによると、2020年における中国の越境EC輸出入は31.1%増加した。なかでも輸出が1兆1,200億元で40.1%増、輸入が5,700億元で16.5%増となった。新型コロナパンデミックが国際貿易を揺さぶる中、越境ECは貿易を安定化させる重要な力になってきている。

本稿英語版2022年1月11日付中国国務院新聞弁公室HPで発表

日本語版『〈中国都市総合発展指標2020〉から見た新型コロナパンデミック下の中国都市発展』(チャイナネット・2022年3月3日掲載)

中国語版『明晓东:从《中国城市综合发展指标2020》看疫情中城市发展』(中国网・2021年12月31日掲載)

英語版『City development amid COVID-19 from the perspective of China Integrated City Index 2020』(China.org.cn・2022年1月11日掲載、中国国務院新聞弁公室HP・2022年1月11日掲載)