【刊行によせて】〈中国都市ランキング〉に寄せて/趙啓正・中国国務院新聞弁公室元主任


趙 啓正
中国国務院新聞弁公室元主任、中国人民大学新聞学院院長


 

編集ノート:中国国家発展委員会発展戦略和計画司と雲河都市研究院が合同で主催した「中国都市総合発展指標2018シンポジウム」が2018年12月27日、北京で行われた。趙啓正氏は祝辞を寄せ、〈中国都市総合発展指標〉を高く評価した。祝辞は、同指標の研究開発の意義を称え、今後の方向性についても示唆した。本書では趙啓正氏の祝辞を序言として掲載する。


 周牧之教授をはじめとする都市発展研究に携わる学者の皆さんへ:

 私は周牧之教授から2018年10月、『中国都市総合発展指標2017』を東京で手渡された。周牧之、陳亜軍そして徐林各氏の序言およびメインレポートを丹念に読んだ。都市発展における著者の「現代的」理念とフロンティア性に富んだ学識に感銘を受けた。〈中国都市総合発展指標〉は都市を理解し、マネジメントするための理念、コンセプト、フレームワークを提供したと、私は確信している。

 私はこの一冊が、中国の各都市の市長をはじめとする政策担当者にとって非常に有用な参考書となると思う。1990年代には私自身、上海市副市長を務め、浦東新区の主任及び書記を兼務し、浦東新区開発の重責を負っていた。残念なことに当時は、同「指標」のような良い参考書はなかった。

 今日、人間の成長は数多くの指標によって表される。私たちが人間ドックを受ける際には、少なくとも数十の指標を用いる。今なら一般市民にとって馴染み深い健康指標も、30年前の中国では我々自身はもとより医師でさえ、それについて知識を持たなかった。つまり、自分の体を「科学的に管理」しようがなかった。
 30年前、中国人の平均寿命は70歳に至らなかった。それが今は、80歳に近づいている。健康指標の功績は大きい。

 同様に、数十年前、私たちは都市という「大きな体」を、どのような指標で測るかについてあまり意識していなかった。ただごく単純に政治、経済、文化などのマクロ的視点で、都市発展の計画を制定した。今振り返れば一種粗雑で、独断的ですらあった。

 今日、もし都市について緻密な計画と管理とで臨もうとすれば、まず都市に対しての明晰な理念と研究が必要である。そのための、総合的な指標による分析が欠かせない。従って、中国の都市発展には〈中国都市総合発展指標〉が提供する理念、合理性そして総合分析のフレームワークが貴重である。このような指標の精密なデータをもとに、研究を重ね、都市をどうマネジメントしていくかを模索するべきである。これは時代の要請である。

 雲河都市研究院に関わる学者、研究者は今後も、多くの重要な事柄に取り組み、成就させていくと信じている。例えば、現代的な都市学を打ち立て、都市研究に科学的なフレームワークを提供し、世に受け入れられるような基本コンセプト、用語、研究アプローチなどを提起する。また各都市の市長に役立つような手引きや書籍を継続して出版し、論文やオピニオンを世に出していく。毎年、「都市発展フォーラム」を主催し、全国の市長や関係者を招聘し、都市発展の新しい見解について議論し、中国都市発展への道筋を探求し続ける。

 目下、メガロポリスはすでに中国都市化の主体となっている。長江デルタ、珠江デルタ、京津冀の三大メガロポリスについてその輻射力の重要性が、共通認識となっている。中国でのメガロポリス研究にとっては、海外メガロポリスの経験が重要となる。例えば、アメリカのニューヨーク、ボストン、ワシントンといった大西洋沿岸メガロポリス。シカゴ、デトロイト、トロント、モントリオールの北米五大湖メガロポリス。日本の東京、名古屋、大阪の東海道メガロポリス。ヨーロッパのパリ、アムステルダムの西北部メガロポリス。イギリスのロンドン、マンチェスターの中南部メガロポリス。国内外のメガロポリスの比較研究は、メガロポリス発展のメカニズムへの認識を深める。国際シンクタンクとしての雲河都市研究院はこの点、大いにその力を発揮させるだろう。

 上海市長を務めた汪道涵氏は生前、私にこう言ったことがある。「私は長年、長江デルタおよび長江流域の協調発展委員会の主席を務めていた。しかし残念なのはそのエリアの連携発展が緩慢であったことだ」と。

 私が考えるに、その原因の一つは、当時、各地の経済発展が主に政府主導によって進められた点にある。メガロポリス化は市場メカニズムをベースとした原動力を必要とする。もっとも当時は、中国の市場経済のパワーがまだそれほど大きくはなかった。そのため、メガロポリスをどう発展させるかについて、雲河都市研究院に関係する皆さんには多くの研究貢献が期待されている。

 上海を例にすると、中国指導部は最近次の見解を示した。「上海が対外開放においてさらなる重要な役割を果たすための、中央政府の決定:第一、浦東の中国(上海)自由貿易試験区のエリアを拡大すること。その目的は、上海が投資と貿易の自由化と利便性を推し進め、全国での複製と推進が可能となる経験を積み重ねること。二、上海証券取引所にハイテク新興企業向けの新たな株式市場「科創板」を設置する。この目的は、上海国際金融センターと科学技術イノベーションセンターの建設を推し進めることにある。三、上海を始めとする「長江デルタ地域の一体化」を国家戦略へと格上げする。その目的は新発展理念を着実なものとし、現代的な経済システムを構築し、改革を更に推進し、対外開放を一層進めることにある。同時に、「一帯一路」建設、京津冀の連携発展、長江ベルト経済発展、粤港澳大港湾区建設と併せ、中国改革開放の空間構造を完成させる」。

 これまで数多くの中央政府の政策にも、上海の任務が挙げられてきた。

 たとえば、2016年6月に公布された中国国家発展改革委員会の「長江デルタメガロポリス発展計画」は、「長江流域メガロポリスを発展させ、上海を世界都市へ」と述べている。

 また更に2017年12月には「国務院による上海都市総合計画への返答」が「上海をイノベーション都市、文化都市、生態都市、卓越した世界都市にし、また現代化国際大都市へと作り上げるよう努力せよ」と要請した。

 上海はこのように多くの任務を抱え、北京、広州、深圳などの都市も同様に、たくさんのことを成し遂げなければならない。こうした重責は市長、学者、そしてシンクタンクが担うものである。

 雲河都市研究院の絶え間なき新しい貢献に期待するとともに、〈中国都市総合発展指標〉が更に世に広がり、都市建設に関わる人々に歓迎されるものとなることを願ってやまない。


プロフィール

趙 啓正 (Zhao Qizheng)

 1940年生まれ。1963年中国科学技術大学核物理学科卒業後、科学技術研究及び設計の仕事に20年間従事する。
 1984年から、上海市共産党委員会組織部長、上海市副市長、浦東新区管理委員会初代主任を歴任。1998年から2005年まで中国国務院(政府)新聞弁公室主任。2005年から2013年まで全国政治協商会議外事委員会副主任・主任。2009年からは全国政治協商会議の第11回二次、三次、四次および五次会議においてスポークスマンを務めた。
 現在、中国人民大学新聞学院院長、南開大学浜海開発研究院院長。

 主な著作に『向世界説明中国(上・下)』、『江辺対話:一位無神論者和一位基督徒者的友好交流』、『浦東逻輯:浦東開発和経済全球化』、『在同一世界—面対外国人101題』、『対話:中国模式』、『公共外交与跨文化交流』、『跨国対話:公共外交的智慧』、『跨国経営公共外交十講』、『直面媒体20年』など多数。以上の中には複数の外国語による翻訳書が多数含まれる。

(『環境・社会・経済 中国都市ランキング 2018―大都市圏発展戦略』に収録