広州市

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粤港澳大湾区発展計画綱要の策定

 中国政府は現在推進中の粤港澳大湾区(広東省・香港・マカオのビックベイエリア)構想の発展計画綱要を2019年2月に発表した。中国で初めて香港、マカオを国の地域発展計画の中に組み入れた。同計画は2035年までの長期計画で、対象都市は、香港・マカオの2特別行政区と広東省の9都市(広州、深圳、珠海、仏山、恵州、東莞、中山、江門、肇慶)、計11都市である。

 ビックベイエリアの総面積は5.6万平方キロメートルで、ニューヨーク、サンフランシスコ、東京大都市圏の3つの都市圏を合わせた面積よりも大きい。2019年ベイエリアのGDP総額は11.6兆元(約174兆円)に達し、その経済力はすでにニューヨーク・ベイエリアに匹敵する。

 ビックベイエリアは世界的な製造業拠点として、中国で最も開放的で活気あふれる地域である。産業の発展が加速する中、人口集積も進み、現在の総人口は7,000万人を超えている。

 同計画における広州、深圳、香港、マカオの4つの中心都市の位置づけはそれぞれ異なっている。なかでも広州は、「国際経済センター」、「総合交通ハブ」、「科学技術・教育・文化センター」として役割づけられている。

 世界最大のベイエリア構想がどのように実現していくか、その舵取りは今まさに始まったばかりである。

(2018年度日本語版・トップ10都市分析)


開放感溢れる貿易都市

 広東省の省都である広州市は、広東省の東南部、珠江デルタの北側に位置する。北京市、上海市、深圳市に続く第4の経済規模を誇る都市である。広州は2000年以上にわたり交易の中心地として繁栄してきた。特に明朝と清朝で数百年にわたり中国の対外貿易の唯一の窓口であった。新中国建国後、厳しい国際環境の中で1957年から開かれた広州交易会(中国輸出商品交易会)は一時、中国の輸出の半分までを稼いでいた。

 広州市のGDPは1.67兆元(約28.4兆円)に達し、前年比8.3%の伸びを実現した。常住人口は約1,308万人、戸籍人口は約842万人、流動人口は約465万人である。改革開放後、広州は外部から多くの人口を受け入れてきた。

 日系企業をはじめとする外国企業の進出も多く、外国人は約8.2万人(2017年末)が居留し、定住している外国人も5.1万人にのぼる。短期滞在の外国人は約50万人にも達している。2016年10月時点での在留邦人(登録ベース)は7,551人であった。

(2016年度日本語版・トップ10都市分析)


広仏都市圏の形成

 〈中国都市総合発展指標2018〉総合ランキングで第4位の広州市と第23位の仏山市は、隣り合っている。しかも、そのDIDエリアはかなり絡み合っている。行政区画的には異なっていてもDID的につながりのある点で、東京都と千葉、神奈川、埼玉各県との関係に似ている。

 広東省の中心都市として発展してきた広州と、製造業を中心に成長してきた仏山の一体化は実際に進んでいる。

 周牧之教授は、早くから広州と仏山を1つの都市圏として整備していくべきだと提唱していた。しかし、つい最近まで中国では都市圏の概念もなく、そういった政策もなかった。

 2019年2月19日、中国国家発展改革委員会が「現代化都市圏の育成発展に関する指導的意見」を公布し、初めて都市圏政策を打ち出した。これを追い風に、広州と仏山は行政区域を超えた1つの都市圏として形成されていくであろう。

 広州と仏山を広仏都市圏として捉えた場合、その面積は11,232平方キロメートルで、およそ東京大都市圏(一都三県)の0.8倍程度の大きさになる。その経済規模は約3.3兆元(約49.5兆円)となり、上海、北京を超え、中国で第1位となる。また、常住人口規模も約1,438万人となり、第1位の上海には及ばないものの、北京を超えて第2位に躍り上がる。

(2018年度日本語版・トップ10都市分析)

一大国際コンベンションシティ

 広州は、2000年以上もの間、国際交易の中心地であり続けた。明朝から清朝の数百年間、広州は中国唯一の対外貿易窓口であった。新中国になり、国際関係の緊張のなか1957年から開催が始まった「広州交易会(中国輸出入商品交易会)」では、当時中国の輸出の半分を稼ぎ出すこともあった。

 広州市は今も中国でコンベンション経済が最も活発な都市の1つである。〈中国都市総合発展指標2018〉によると広州は「社会」大項目の「国際会議」、「コンベンション産業発展指数」ともに全国第3位の成績を誇っている。

 コンベンション産業は、様々なコンテンツを網羅した高収益の交流経済である。会議、イベント、展示会、フェスティバルは、直接的かつ間接的な利益を都市にもたらす。国際見本市連盟によると2018年、世界で開催された見本市やショーなどの行事は、約3万2000に上り、来場者数は3億300万人にも達した。

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、2020年の「広州交易会」は6月15日にオンライン開催した。人対人の面と向かった商談が不可能となった状況下、オンラインによる開催へと形を変えた。ハイテクを駆使し、仮想現実(VR)で展示して世界各地から閲覧できたことで、出展者を維持した。こうした新しい試みは、広州の新たな交流経済の展開にもつながるだろう。

(2018年度日本語版・トップ10都市分析)


建設が進む「広州国際総合交通ターミナル」

 広州は長きにわたり中国の主要な交通拠点であり続けた。〈中国都市総合発展指標2017〉でも陸・海・空の交通がともに全国トップクラスの成績を誇っている。

 鉄道・道路で広州は、「鉄道利便性」「道路輸送指数」ともに全国第1位であり、鉄道の利用客数は年間1.4億人を超える。その中でも広州南駅の利用客数は年間約5,600万人で、鉄道の発着便数は全国第1位である。

 港湾は「コンテナ港利便性」が全国第3位、「コンテナ取扱量」が年間1,885万TEU(20フィートコンテナ1個を単位としたコンテナ数量)で全国第4位である。

 中央政府も広州を中国の重要な総合交通ターミナルと位置付けている。中国の国家戦略「一帯一路」では広州を国際貨物輸送の中枢とし、2016年に公示された「第13次五カ年計画」の綱要で、広州を北京、上海とともに国際的な総合交通ターミナルと位置付けている。

 以上の背景もあり、広州は2017年に公表した「2040年広州市交通発展戦略計画」の目玉として「国際総合交通ターミナル」の建設を挙げている。交通ターミナルが完成した暁には、貨物の合計取扱量は2020年に年間580万トン、2025年には1,870万トン、2035年には2,590万トンになると推計している。広州は粤港澳大湾区の鉄道輸送の最大の中枢として、中欧や東南アジア向けの一大交通拠点になることも見込まれている。

(2017年度日本語版・トップ10都市分析)

広州で加速するEV化

 広東省の都市は大気汚染の被害は比較的軽く、同省における2017年のPM2.5の年平均値は1 m3当たり32 µg(マイクログラム)で、先進国の年平均値である10−15 µgに比べると大きな差があったものの、中国の国家基準の35 µgを下回った。

 〈中国都市総合発展指標2017〉では、2017年PM2.5の年平均値は、広州は34 µgで全国第70位、深圳は26.1 µgで全国第26位だった。北京などの北方都市と比べかなり好成績であった。

 省政府は、2035年までに省内全域の年平均値を25 µg以下とすることを目標に掲げている。

 大気汚染の改善に向け、広州市でEVバス(電気バス)の導入が加速している。広州市政府は2018年に投入・更新されるバスはすべてEVバスを採用し、2018年末までに1万台以上のEVバスを普及させ、公共バスを100%EV化させることを目標としている。また、タクシーについても新規導入および更新される車両のうち70%以上をEVとし、毎年5%ずつ比率を高めていくという。

(2017年度日本語版・トップ10都市分析)

広州で進む中国初のビジネス機専用空港計画

 2018年4月、広州白雲国際空港の第二ターミナルが供用を開始した。新ターミナルは航空会社計16社が乗り入れ、総面積は65.9万 m2(羽田国際空港の約2.8倍)、カウンター数は339カ所、年間旅客数は4,500万人を見込んでいる。広州白雲国際空港は2017年に年間6,584万人の利用客があり、北京首都国際空港、上海浦東国際空港に続き中国第3位のハブ空港となっている。郵便貨物取扱量は165万トンでこちらも全国第3位である。〈中国都市総合発展指標2017〉でも広州の「空港利便性」は全国第3位である。

 市の計画では、2022年までにさらに第三ターミナルを建設し、2本の滑走路を新設し、2025年には利用旅客数が1億人に達すると見込んでおり、世界的なハブ空港を目指す。

 また、広州市は中国はじめてのビジネス機専用空港建設も計画している。

 巨大処理能力を持つ「粤港澳大湾区」の交通中枢として、広州市は新たなステージに突入している。

(2017年度日本語版・トップ10都市分析)



珠江デルタメガロポリスの中枢都市

 広東省の省都、広州市は珠江デルタメガロポリスにおける中枢都市であり、陸空海交通のハブ都市でもある。2017年、広州白雲国際空港の年間利用者数は約6,500万人を超え、北京首都国際空港と上海浦東国際空港に次いで、年間利用者数が6,000万人を超える国内3カ所目のハブ空港となった。2018年には第2ターミナルがオープン予定で、年間利用者数は8,000万人まで引き上がるとされている。

 2017年の広州港のコンテナ取扱量も2,000万TEUを超え、世界の港湾別コンテナ取扱個数ランキングで第7位となった。

 さらに本指標での高速鉄道を含めた「高速鉄道便数」項目においては、広州は中国全国では堂々第1位であった。

 市内交通におけるインフラ整備も進んできた。2017年末、新たに地下鉄が4路線開通し、市全体の地下鉄営業距離は合わせて400kmに達した。この距離は中国で第3位、世界でも第10位に相当する。年間の合計地下鉄乗車人数は28億人にのぼり、1日の平均利用者数は1,000万人の大台を突破した。

 省都としての広州市は、文化、生活、教育などにおいて周辺地域にその機能を提供している。珠江デルタメガロポリスの二大中枢都市、広州市と深圳市の本指標におけるこれら領域の「輻射力」を比較すると、広州市の優位性が明らかになる。たとえば「医療輻射力」は広州市が第3位、深圳市が第39位、「高等教育輻射力」は広州市が第7位、深圳市が第288位、「文化・スポーツ・娯楽輻射力」は広州市が第3位、深圳市が第7位と、いずれも広州市の方が大きく上回っている。

(2016年度日本語版・トップ10都市分析)

巨大経済圏構想「粤港澳大湾区」

 いま珠江デルタ一帯を巻き込んだ大型経済構想が進んでいる。2017年7月、中国政府がかねてから構想を練っていた「大湾区(広東・香港・マカオ大湾区)」計画について草案が完成したと報じられた。「粤港澳大湾区」は広州市や深圳市をはじめとする広東省9市と、香港、マカオの2つの特別行政区を1つの経済圏として発展させる一大ベイエリア構想である。11都市の人口は約6,795万人で中国全体の5%未満、面積も約5.6万km2で同1%に満たないものの、2017年の合計GDPは10兆元を突破する。2030年までには同地域のGDPが現在の3倍以上になると予想されている。実現すれば、ニューヨーク、サンフランシスコ、東京といった世界有数の湾岸地域を上回り、世界最大の経済規模をもつ巨大なベイエリア経済圏が生まれることになる。

(2016年度日本語版・トップ10都市分析)