成都市

CICI2016:第11位  |  CICI2017:第10位  |  CICI2018:第8位

CICI2019:第7位


西部大開発の拠点都市

 成都は〈中国都市総合発展指標2016〉総合ランキングのトップ10に入れなかったが、〈中国都市総合発展指標2017〉において、めでたく総合ランキングのトップ10入りを果たした。〈中国都市総合発展指標2018〉では8位、〈中国都市総合発展指標2019〉では7位と、年々、順位が上昇している。

 四川省の中心に位置する省都・成都は、2300年の歴史を持ち、古くから「天府の国」と呼ばれ、中国十大古都の一つに数えられている。同市の面積は約1.2万 km2で新潟県とほぼ同じ大きさである。四川盆地西部に位置し、自然資源に恵まれ、四川省の政治、経済、文化、教育の中心地である。現在は「西部大開発」の主要な拠点都市とされ、「一帯一路」や「長江経済ベルト」など国家戦略の重要な拠点としても期待されている。日本では、四川料理の本場、パンダの生息地、「三国志」の蜀漢の都として知られている。

 成都の常住人口は約1,443万人で全国第5位の規模を誇る。四川省は「農民工(出稼ぎ労働者)」の主要な流出地である。四川省の地級市18都市中、実に16都市が「人口流出都市」であり、その流出人口規模は合計約1,100万人以上にのぼる。これに対して、成都は全国第10位の「人口流入都市」であり、現在約215万人もの非戸籍人口を外部から受け入れている。成都のGDPも四川省のGDPのおよそ4割を占めており、同省の経済・人口ともに成都に一極集中している。四川省の将来は成都が担っていると言っても過言ではない。


都市ブランド構築アクションプラン「三城三都」

 2017年に発表された成都のアクションプラン「三城三都」が総仕上げの段階に入っている。「三城」とは文化都市、観光都市、スポーツ産業都市を指す。「三都」とは、グルメ都市、音楽都市、コンベンション都市である。成都は「三城三都」を目指し、ソフトパワーを向上させる。アクションプラン期間は2018年から2020年までの3年間としている。

 成都のグルメといえば中国四大料理の「四川料理」であり、これは日本でもなじみが深い。成都は四川料理の発祥地であり、ユネスコに「アジア初めてのグルメ都市」と称されたほどの美食の街である。〈中国都市総合発展指標2018〉によると、「経済」の指標「レストラン・ホテル輻射力」において全国第3位を誇っている。また、四川料理以外にもマクドナルド、ケンタッキー、ピザハット、スターバックス、ハーゲンダッツなど海外の飲食チェーン店も多く、同指標の「海外飲食チェーン指数」でも全国第10位にランクインした。

 成都は時間が止まったような、ゆったりとした都市である。喫茶店でお茶を飲みながら雑談や麻雀を楽しむ光景がいたるところで見られる。喫茶店は1万軒を超え、スターバックスの数も中西部地区で一番多い。

(2018年度日本語版・トップ10都市分析)

スポーツ産業都市

 上記「三城」の1つ、スポーツ産業も好調だ。〈中国都市総合発展指標2018〉によると、「経済」の指標「文化・スポーツ・娯楽輻射力」の順位は昨年度に比べ1位上昇し、全国で第3位にランクインした。成都のスポーツ産業は、5年連続で20%以上の成長を維持し、2019年に同産業の規模は700億元(約1.1兆円)を超えた。

 同市では、スポーツ産業の発展を加速させるために、「成都サッカー改革発展実施計画」、「成都万人フィットネス実施計画(2016−2020年)」などの政策を相次いで発表し、資金提供、選手の育成、国内有名スポーツ企業の誘致など、様々な施策を打ち出している。

 また、「成都スポーツ産業活性化発展計画(2020−2025年)」では、同市のスポーツ産業の規模をさらに現行の倍以上の1,500億元(約2.3兆円)へと目標を定めた。

 成都に限らず、中国人のスポーツやフィットネスに対する意識は大幅に向上してきた。スポーツ産業は、都市経済はもちろん、都市の魅力やライフクオリティ向上の面でもその重要性を増していくだろう。

(2018年度日本語版・トップ10都市分析)

西南地域のコンベンション都市

 「三城三都」のうち、「三都」の1つはコンベンション都市だ。〈中国都市総合発展指標2018〉によると、成都は、「社会」の指標「国際会議」ランキングが全国第5位で前年度より4位も順位を上げた。同項目の指標「コンベンション産業発展指数」」ランキングは、全国第5位で前年度から3位順位を上げている。この躍進ぶりが目覚ましいのは恐らく「三城三都」政策の効果であろう。

 成都は2022 年までに、大きなコンベンションイベント、国際大会を数多く計画し、関連収入1,200 億元(約1.8兆円)を目標に努力している。

(2018年度日本語版・トップ10都市分析)


成都ハイテク産業開発区(成都市高新区)

 「西部大開発」の拠点都市である重慶、成都では、市内に国家級のハイテク産業開発区や経済技術開発区などが置かれ、中央政府関係部門からのさまざまなサポートにより重点的に産業が集積されている。重慶は従来から自動車、石油化学、重電などの重厚長大型産業が集中している。これに対して成都には電子産業、製薬・バイオ産業、IT関連産業などが集積している。

 「成都ハイテク産業開発区」が1988年に発足し、1991年には国家級開発区に認定された。同開発区は成都市の西部と南部に位置する二つの地域からなり、総面積は130 km2(山の手線内の面積の約2倍)で、そのうち南部地域が87 km2、西部地域が43 km2である。南部地域には金融、ソフトウェア開発、BPO関連のサービスを提供する企業が集積し、西部地域はエレクトロニクス産業、バイオ医学産業、IT関連産業などの企業が進出している。同開発区の域内総生産はすでに成都市の約30%を占めている。

 同開発区に支えられた成都の発展は、本指標でその成果を見ることができる。〈中国都市総合発展指標2017〉では、「科学技術輻射力」は全国第5位、「IT産業輻射力」は第6位、「創業板・新三板上場企業指数」は第7位、「特許取得数指数」は第9位となっている。また、インフラ整備では「空港利便性」は全国第4位、「鉄道利便性」は第12位となっている。さらに同市は「固定資産投資規模指数」は全国第4位、「実行ベース外資導入額」第5位のような活発な投資が行われ、内陸経済活性化を主導する成都の躍進ぶりがうかがえる。

(2017年度日本語版・トップ10都市分析)

一大消費都市としての成都

 成都は歴史的に消費が盛んな都市である。「宵越しの金は持たない」という成都人気質は、本指標にも顕著に表れている。〈中国都市総合発展指標2017〉では成都の「平均賃金」は全国第20位であり、決して突出した状況ではないにもかかわらず、「映画館消費指数」は全国第7位、「卸売・小売輻射力」に至っては全国第3位である。また、「美食の都」と評されるような豊かな食の文化と消費力が合わさった結果、「トップクラスレストラン指数」は全国第6位、「飲食・ホテル輻射力」は全国第7位となっている。成都人はファッションにも大変敏感と言われており、2010年前後に世界から成都に進出してきた高級ブランドにも貪欲に飛びつき、「海外高級ブランド指数」では天津を抜いて全国第3位に躍り出た。

 豊かな土地にゆったりと過ごす価値観を持つ成都の人々は、蓄えることより消費を好む社会を築いていった。この旺盛な消費市場を狙って、外資のサービス産業の進出が相次いでいる。

(2017年度日本語版・トップ10都市分析)