CICI2016:第10位 | CICI2017:第11位 | CICI2018:第9位
CICI2019:第10位
中部地域の最大都市
武漢市は湖北省の省都である。中国中部地域の最大都市であり、工業、科学、教育の重要な拠点都市でもある。総面積は約8,569km2で広島県とほぼ同じ面積である。
武漢市は世界でも水資源が最も豊富な都市のひとつであり、水域面積は全市の面積の4分の1を占めている。武漢市の水域面積は2,217.6km2(琵琶湖の面積の約3.3倍)、水域の面積カバー率は26.1%である。
武漢市は中国東西軸の長江と、南北軸の陸上大動脈が交差する場所に位置している。故に、交通のハブ機能が発達している。本指標の「空港利便性」項目では全国第25位、航空旅客数は第12位である。「高速鉄道便数」は全国第13位で、「準高速鉄道便数」は第2位であった。
2004年から2014年までの10年間、武漢市のGDPは年平均13.2%の成長率を実現し、GDPは約1.01兆元(約17兆円)で、1人当たりのGDPは97,403元(約166万円)となった。面積は湖北省の5.6%にすぎないものの、同省全体のGDPの約38.7%を占めている。同省内における貿易額、実行ベース外資導入額のシェアはさらに高くそれぞれ64.8%、69.7%に達している。
(2016年度日本語版・トップ10都市分析)
新型コロナで最初に医療崩壊を経験した大都市
武漢は新型コロナウイルスの試練に世界で最初に向き合った都市であった。武漢は27カ所の三甲病院(最高等級病院)を持ち、医師約4万人、看護師5.4万人と医療機関病床9.5万床を擁する。〈中国都市総合発展指標2018〉での「経済」の指標「医療輻射力」ランキングで全国第7位の都市である。しかしながら、武漢のこの豊富な医療能力が新型コロナウイルスの打撃により、一瞬で崩壊した。
よくも悪くも中国の医療リソースは中心都市に高度に集中している。武漢は1千人当たりの医師数は4.9人で全国の水準を大きく上回る。武漢と同様、医療の人的リソースが大都市に偏る傾向はアメリカや日本でも顕著だ。ニューヨーク州の1千人当たりの医師数は4.6人にも達している。東京都は人口1千人当たりの医師数が3.3人で、これは武漢より少なく、ニューヨークと同水準にある。
しかし、武漢、ニューヨークの豊かな医療リソースをもってしても、新型コロナウイルスのオーバーシュートによる医療崩壊は防ぎきれなかった。2020年5月11日までは、中国の新型コロナウイルス感染死者数累計の83.3%が武漢に集中していた。その多くが医療機関への集中的な駆け込みによる集団感染や医療崩壊による犠牲者だと考えられている。
2020年4月8日、武漢市では2カ月半にわたった都市封鎖(ロックダウン)が解除され、武漢市民は1月23日以来、ようやく市外へ出られることが可能となり、日常が徐々に市内に戻りつつある。
新型コロナウイルス禍と最初に対峙した都市が、医療リソースの豊富な武漢だったのは、ある意味、不幸中の幸いかもしれない。武漢における教訓は、新型コロナウイルス感染症に関する数多くの研究論文として昇華され、世界中でかつてない勢いで「知の共有」が進んでいる。
(2018年度日本語版・トップ10都市分析)
全土から集まった医療支援
新型コロナウイルスのオーバーシュートが発生した当時、武漢に中国全土から多くの支援が集まった。
病床数の不足については、国の支援で、新型コロナウイルスの専門治療設備の整う「火神山病院」と「雷神山病院」という重症患者専門病院を10日間で建設し、前者で1,000床、後者で1,600床の病床を確保した。このほかに、武漢は体育館16カ所を軽症者収容病院に改装し、素早く1.3万床を確保し、軽症患者の分離収容を実現させた。これによって先端医療リソースを重症患者に集中させ、病床不足は解消された。
オーバーシュートにより感染者数は爆発的に増大し、多くの医療スタッフも院内感染に巻き込まれ戦力を失っていった。よって医療従事者の大幅な不足状況が発生した。これに対処するため中国全土から大勢の医療従事者が応援に駆けつけ、その数は4.2万人にも達した。
こうした措置が武漢の医療崩壊の食い止めに繋がった。感染地域に迅速かつ有効な救援活動を施せるか否かが、新型ウイルスを封じ込める鍵となる。しかし、すべての国がこうした力を備えているわけではない。ニューヨーク、東京の状況からすると、医療リソースがかなり整う先進国でさえ、救援動員はなかなか難しい。医療リソースが稀少かつ十分な医療救援能力を持たない国にとっては、グローバルな救援力をどう組織し受け入れるかが、喫緊の解決課題となっている。
(2018年度日本語版・トップ10都市分析)
青山長江大橋の建設
武漢は、長江と漢江によって「武昌」「漢口」「漢陽」という3つの地域(武漢三鎮)に分けられるが、その間を多くの橋がつなぎ、大都市の大動脈として機能している。1957年10月、全国で初めて長江の両岸をつないだのは武漢長江大橋であった。2020年末に開通する予定の青山長江大橋は、武漢ではその11本目となる。
〈中国都市総合発展指標2018〉によると、武漢は「環境」の「固定資産投資規模指数」ランキング全国第5位である。都市インフラに積極的に投資してきた武漢は、橋の建設が進んだ。橋の数が増えるごとに都市の一体化も進んだ。「橋の武漢」と称されるように、橋の景観は武漢に多彩な表情をもたらしている。
(2018年度日本語版・トップ10都市分析)
人口引き留め政策
人口面でも武漢市は湖北省で一極集中の状況にある。武漢市は常住人口を約1,034万人抱え、これは中国中部地域6省の省都のなかで最も多い。本指標の「人口流動」項目では、湖北省内12都市のうち10都市がマイナスで、つまり他の都市へ人口が流出している。これに対して武漢市は、流動人口が約207万人の大幅プラスになっており、全国においても第10位の人口流入都市である。
一方、武漢市政府の発表では、同市は89の大学、95の科学研究所、130万人弱の大学生を抱えていながら、大卒者のうち同地に残る者は5分の1にも満たない。そこで、2017年、武漢市政府は向こう5年間で大卒者100万人を同市内に引き留めるプロジェクトを発表した。同市の大卒者は市場価格を2割下回る価格で住宅を購入できるか、あるいは市場価格を2割下回る価格で住宅を借りられる制度を設けた。また、最低年収の設定、就職の斡旋、起業のサポートなど「大卒者に最も友好的な都市」へ向けたさまざまな政策を打ち出している。経済のグローバル化と知識集約型産業が進展していくなかで、中国の各都市間の人材の育成と獲得競争が激しくなっている。
(2016年度日本語版・トップ10都市分析)
中国で最も高いビル「武漢緑地中心」を建設
世界中で超高層ビルの建設ラッシュが起こっており、それをリードしているのが中国である。なかでも、最も注目されているのが、2011年から建設が進む「武漢緑地中心(Wuhan Greenland Center)」である。竣工予定は2019年で、完成すると高さ636m、地上125階・地下6階の規模で、延床建築面積は約30万m2、総投資額は300億元(約5,078億円)以上になるという。現在、世界一高いビルはドバイで建設された「ブルジュ・ハリファ」(高さ828m)であり、「武漢緑地中心」が完成すると世界第2位のビルになり、「上海中心」(高さ632m)を抜く中国で最も高いビルとなる。
世界の建築専門家らが編集する「高層ビル・都市居住評議会(CTBUH)」のレポートによると、2016年に世界で建設された超高層ビル(高さ200m以上)は128棟であったが、そのうち84棟が中国に建設され、中国は9年連続で超高層ビルの竣工面積が最も多い国となった。また、2016年末時点で、中国全土の超高層ビル数は485棟に達し、2000年時点の49棟から10倍近くに増えた。
(2016年度日本語版・トップ10都市分析)