【刊行によせて】周南:現代化都市圏を育成、新型都市化を推進

周 南

中国国家発展改革委員会発展戦略和計画司副司長


 中国の改革開放が始まってすでに40年過ぎた。この40年の成就の一つは、疑いなく都市化である。40年の間に、中国の都市化率は17.9%から、59.8%へ大幅に上昇した。都市人口も1.7億人から8.1億人にまで一気に増えた。都市建成区面積は7,438平キロメートルから5.6万平方キロメートルにまで拡大した。しかし近年、都市が両極化する趨勢も表れてきた。〈中国都市総合発展指標2018〉では、順調に発展する都市を確認することができると同時に、“大都市病”、そして人口流出による“収縮都市”もうかがえる。これは、従来拡張志向で突っ走った都市発展モデルが、最早通用しなくなったことの現れである。

 先進諸国ではロンドン、パリ、ニューヨーク、東京などを代表とする、周辺の地域を含んだ都市圏が形成されて久しい。それは、高度に集積する人口が、中心都市における各種のコストを押し上げ、一部の産業と都市機能が行政区画を超えて外へと押し広がり、中心都市と組み合わさって発展した圏域である。数多くの先進国が、都市圏の発展を促すための計画や法案を制定した。例えばイギリスは早くも1940年代から大ロンドン計画に着手し、21世紀になっても、その第4回目の空間発展戦略計画を制定した。日本は1956年から5度にわたり首都圏基本計画を制定した。政策に導かれ、これら都市圏は、グローバル経済における最も効率のよい、イノベーション活力に満ちた地域となっている。中国の都市化も、高速の発展からクオリティ重視の発展へシフトする中、都市圏の形成を促していくのは一種の必然である。

 2019年2月、中国国務院(政府)の同意のもと、中国国家発展改革委員会は「現代化都市圏育成発展に関する指導的意見」(以下「意見」)を公布した。「意見」は、都市圏の発展が問題意識を鮮明にし、中心都市と周辺との連携発展を重視し、新しい体制づくりに着手し、インフラ整備の一体化を図り、産業の分業を進め、市場の統一を促し、生態環境の連携保護などに取り組むことを求めた。

 「意見」はまた、2022年までにインフラ整備の一体化レベルを大幅に向上させ、生産要素の流通を阻害する障壁を基本的に取り除き、都市機能を補完し合う空間構成を明確にし、環境と調和した住みやすい都市圏の建設を目標とする。2035年には国際的に影響力をもつ都市圏をいくつか作り上げると明記した。

 都市圏の育成には、域内インフラの整備が前提である。「意見」は、メガロポリス内部のメガシティあるいは輻射機能をもつ大都市を中心に、1時間の通勤圏を基本範囲とする都市空間を都市圏として定義した。

 通勤は都市圏の主な特徴の一つで、交通インフラが通勤の前提条件となる。中国では高速道路、高速鉄道、橋梁などの整備が世界でも注目されている。しかし、都市圏における交通網の整備はまだ多くの問題を抱えている。例えば、行政エリアを超える通勤鉄道の整備が遅れている。都市境界にまたがる道路整備も、途切れるなどの問題が多発している。都市圏建設には交通という要を捉え、都市圏交通網の連結性を強化するため、行政エリアを超えた計画、建設、管理の一体化を進めることが大切である。

 都市圏の育成には、域内の分担が肝心である。現在、中国では都市圏の中心都市と周辺との社会経済連携は緊密さに欠けている。2017年、深圳中心部と周辺との人口流動規模は、1日平均12万人回でしかない。しかもこれは中国の都市圏の中では最大規模である。これに対して、東京都市圏内の三県が東京都に通勤する人数は1日平均86万人に達している。

 中国の大部分の都市圏において中心都市と周辺との間は、相互投資規模が50億人民元にも達していない。その原因は、中国では中心都市と周辺との間で分業が進まず、地方の保護主義のもとで、労働力、資本、科学技術などの流動を制約する障壁が多いことにある。

 都市圏建設においては、地方の保護主義を改め、統一市場の妨げを除去することが必要である。他方、都市圏内で中心都市と周辺のそれぞれの特色を鮮明に打ち出し、分業分担を推し進めていくべきである。都市圏育成においては、教育、医療などの公共サービスの均質化も図らなければならない。中国では、行政エリアによって公共サービスの差異が大きい。複数の行政エリアを含む都市圏においては、圏域内の公共サービスの均質化が大きな課題となる。

 都市圏建設は、生態圏の建設でもある。圏域内の地域が共同で環境保護の計画、法案を編成し、グリーンネットを構築し、生態環境の連携保護に取り組み、その品質を高めていくことだ。

 都市圏には、エリアとして、都市と農村双方が存在する。人口としては、都市戸籍と農村戸籍の人々双方が存在している。圏内の、都市と農村の連携発展を図り、また都市戸籍と農村戸籍との人々の間で公共サービスなどにおける差異をなくしていくことが欠かせない。

 都市圏の育成は新型都市化建設の新しい課題である。理論から実践まで探求し続けなければならない。政府の後押しが必要となるが、あくまで市場の主導で進めるべきである。海外の経験に照らせば、都市圏の形成には数十年の時間がかかる。中国でも焦らず時間をかけて、努力を重ねていくことが肝要である。

 中国の地域発展は不均衡で、都市圏の発展段階の差異も大きい。どのような都市が都市圏発展の条件を兼ね備えているのか。都市圏の発展はどのような特色が活かされるべきなのか。これらについては、中国都市総合発展指標の中で答えが見つかるだろう。


プロフィール

周 南 (Zhou Nan)

 1962年生まれ。中国国家発展改革委員会にて、「第8次五カ年計画」以来5度にわたり五カ年計画の編成に直接携わった。近年、農村戸籍人口の市民化推進、またメガロポリスおよび都市圏建設、都市と農村の融合発展などの政策を担当している。『国家新型都市化報告』(2017年版、2018年版)編纂。

(『環境・社会・経済 中国都市ランキング 2018―大都市圏発展戦略』に収録