Ozone: a powerful weapon to combat COVID-19 outbreak
周牧之 東京経済大学教授
ZHOU Muzhi Professor of Tokyo Keizai University
2019年12月から、中国の南で重症急性呼吸器症候群(SARS)に似た感染症の流行が取り沙汰されるようになった。湖北省では年明けて2020年1月23日、同感染症を封じ込めるため省都の武漢を始め3都市がロックダウン(都市封鎖)された。その後、湖北省のほぼ全域がロックダウンとなり、中国全土においても多くの都市が封鎖された。中国国務院は2月8日、記者会見で同感染症を「新型コロナウイルス肺炎(NCP:Novel coronavirus pneumonia)と称した。2月11日には、WHOが同感染症をCOVID-19と命名した。
筆者は1月中旬から新型コロナウイルス対策の打つ手となるオゾン研究に取り組んだ。2月18日に「这个“神器”能绝杀新冠病毒」をテーマとしたレポート(以下「2月周レポート」と略称する)を発表[1]、オゾンの謎を解き明かして疫病流行の収束メカニズムを探り、新型コロナウイルス対策にオゾンを利用するよう提唱した。中国の大手ネットメディアである中国網での「2月周レポート」の発表は、瞬く間に多くのメディアに転載され、新型コロナウイルス対策におけるオゾン利用に一役買うこととなった。「2月周レポート」の発表は3月11日のWHOによるパンデミック宣言より3週間早かった。
2月26日には「2月周レポート」の英語版が「Ozone: a powerful weapon to combat COVID-19 outbreak」のテーマで中国網英語版(China.org.cn)にて発表された[2]。そしてその日本語版も3月19日、「オゾンパワーで新型コロナウイルス撲滅を」と題して中国網日本語版(チャイナネット)で公表された[3]。
「2月周レポート」はメディアの性質上、注釈などの制限があったため、本論文では、この「2月周レポート」をベースに注釈を加え、最新情報をアップデートし、同レポートの仮説をさらに掘り下げて検証する。
1.地球における命の守護神
新型コロナウイルスが武漢で爆発的に発生して以来、筆者は中国の遠大科技集団(BROAD Group)総裁、張躍氏とオゾンを利用した殺菌消毒について議論を重ねてきた[4]。張躍氏はオゾン利用による殺菌消毒を提唱する先駆者の一人である。しかし世間の反響はこれまで芳しくなかった。筆者も、オゾン利用に関する国内外専門家へのヒヤリングや関連資料の調査を通じて、オゾンについての人々の警戒心を強く感じた。オゾンに関する誤解を取り除き、コロナ禍という緊急事態に、オゾンの積極利用を進めて事態の打開をはかるため、オゾンの極めて解りにくい特性に関して、総合的な整理を試みた。
地球大気圏約0~10数kmの最低層は対流圏と呼ばれ、そこでの温度と高度の関係は上冷下熱である。対流圏の上部には約10数~50kmの成層圏がある。成層圏では温度と高度との関係が対流圏と相反して上熱下冷である。濃度約10~20ppmのオゾン層はこの成層圏にある。
オゾン層は地球上の生命にとっては掛け替えのない存在である。紫外線の地球上生物に危害を加える部分を、オゾン層は吸収する[5]。よって、有害な紫外線による生物細胞の遺伝子の破壊を、オゾン層は押し止め、地球上の生命に生存条件を与えている。
オゾン層の濃度が現在のレベルに達した時期と、地球上の生命が海から上陸した時期はほぼ一致している[6]。言い換えれば、オゾン層がまだ希薄な時期、有害な紫外線を避けるため生命は海の中に潜伏せざるを得なかった。オゾン層の濃度の向上を待ってようやく陸に上がることができた。
オゾン層の保護がなければ、地球上には微生物一つすら存在不可能であったということになる。もちろん今日の豊かな生命の繁栄もあり得なかった。
しかし、人類の産業活動によって大量に排出されたフロンガスや揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compounds)などが、オゾン層を破壊し[7]、人類の免疫システムを弱め、皮膚ガンや白内障などの発病率を高める被害を及ぼした[8]。オゾンホールは地球温暖化と並び、いまや地球環境問題となっている[9]。オゾン層の破壊問題は同時に、オゾンが一般大衆の視野に入るきっかけともなった。
オゾン層はその地球生物を保護する性質に鑑み、“アース・ガーディアン”と呼ばれる。
オゾンは、三つの酸素原子から構成され、酸素の同素体であり、特殊な匂いがする[10]。オゾンは主に太陽の紫外線が酸素分子を二つの酸素原子に分裂させ、その酸素原子がさらに酸素と結合することで作られている。
紫外線によって作られたオゾンは、高濃度のオゾン層となり天然のバリアとして、地球上の生物を太陽光にある有害な紫外線の攻撃から守り、地球生命の繁栄をもたらしている。実に面白い関係である。
2.天上のGood Ozone,地上のBad Ozone?
オゾンは高い空の成層圏にあるだけではなく、対流圏たる我々の周囲にも存在している。酸素分子は低空で多く、高空では少ない。これに対して、酸素原子は低空で少なく、高空に多い。ゆえに、酸素分子と酸素原子がともにある成層圏に、オゾン層が高濃度で作られている。相反して地面と、オゾン層より高い場所のオゾン濃度は薄い。つまり、大気中のオゾン濃度は地面から約10kmのところより高くなり、成層圏のオゾン層で最大値となる。さらにその上空に行くと、オゾン濃度はまた急激に下がる。
対流層のオゾン濃度は一般的に0.02〜0.1ppmである。この自然界のオゾン濃度は人類を含む大型生物には無害である。しかし、高い濃度のオゾンは人に不快感を与え、目や呼吸器官などの粘膜組織を刺激することもある。よって、アメリカ食品医薬品局(FDA)は室内環境基準のオゾン最大濃度を0.05ppmに規定している[11]。日本産業衛生学会は産業環境基準のオゾン許容濃度を0.1ppmと規定する[12]。中国衛生部(省)もオゾンの安全濃度を0.1ppmと規定している[13]。
以上のように高濃度オゾンに対する警戒感は元よりあった。加えてオゾンの悪名を轟かせたのは、光化学スモッグ汚染である。光化学スモッグは、目や呼吸器官の粘膜組織に刺激を与え、目の痛み、頭痛、咳、喘息などの健康被害を引き起こす。また植物の成長を抑制し農作物の減産をもたらす。酸性雨の原因ともなっている。
光化学スモッグの中には一次汚染物質と二次汚染物質が混在する。一次汚染物質とは窒素酸化物 (NOx)や揮発性有機化合物(VOC)などである。一次汚染物質に紫外線が照射されることによって「二次汚染物質」にされたオゾンが発生する。光化学スモッグにおけるオゾン成分は80〜90%までにも達するが故に、光化学スモッグ汚染イコールオゾン汚染だ、と世間は捉えがちである。
産業革命以来、大量のNOx排出により対流圏のオゾンが増加した[14]。過去100年、対流圏のオゾン全量は4倍になった[15]。とくに近年、中国を始めとする東アジアでの急速な工業化と都市化に伴い、NOxなど光化学スモッグ生成物質排出量は激増し、対流圏のオゾン増加傾向を加速させている。
対流圏のオゾン量は成層圏の10分の1に過ぎないが、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)に次ぐ第3の地球温暖化ガスとなっている。温暖化ガスになったことで、オゾンのイメージはさらに悪化した。
こうした様々な理由により、世間では“対流圏のオゾンは生物に有害な汚染物質である”との認識が広がった。ゆえにオゾンは“天上のGood Ozone,地上のBad Ozone”とも言われている。日本では対流圏オゾンの地球規模の越境汚染に対するモニタリングが、重要な課題となっている。
本論文で明確にしたいのは、光化学スモッグのオゾン濃度が、対流圏の自然界での正常な濃度ではなく、人的活動の汚染排出でもたらされた非自然的な高濃度であることだ。さらに光化学スモッグのオゾンにはNOxやVOCなど有害物質が多く含まれている。これもまた自然界の澄み切ったオゾンとは全く異なっている。
オゾン濃度は季節と地域によって高低の差異が生じるが[16]、一般的には対流圏自然界のオゾンが人体に害を及ぼすことはない。自然界のオゾンは無害であるばかりかむしろ有益である。例えば雷の高圧放電では、空気中の酸素を分裂させ、オゾンを作る。高濃度のオゾンは空気を浄化するために、雷の後、往々にして空気はより清々しいものとなる。また、晴天の海岸や森林はオゾンの濃度が高いため空気は一層清らかである。自然界のオゾンと光化学スモッグとの違いを区別しなければならない。
対流圏のオゾンも、人類生存の守護神である。ただ我々は長い間その恩恵に対する研究と認識を欠いていた。
対流圏自然界のオゾン濃度は、大型生物に無害であるものの、微生物にとってはスーパーキラーとなる。強い酸化力を持つオゾンは、自然界の微生物の繁殖を抑制し、地球生態バランスを保ってきた。しかし、これまで地球という生命体の中で微生物を抑制するオゾンの役割は十分には重視されてこなかった[17]。
その理由の一つは、一般的に低濃度のオゾンには殺菌作用があまり無いと考えられてきたからである。しかし、実際は、一定の暴露時間をかければ極めて低濃度のオゾンも十分な殺菌消毒力を持つことが確認できている[18]。
低濃度オゾンによる殺菌消毒効果の認識に基づき、筆者は、「自然界の低濃度オゾンが地球上の細菌やウイルスといった微生物の過度な繁殖と拡散を防いできた」と仮説する(以下「仮説1」と略称する)。
オゾンはまた、自然界においては有害有機物を分解する。さらに、オゾンは動植物に季節の変化を知らせるシグナルであるとも考えられる。
オゾンのこうした大切な役割から見ると、成層圏のオゾンはもちろん、対流圏のオゾンが無ければ、地球は人類の生存さえあり得ない環境であった。
実際、オゾンは“天上のGood Ozone,地上のGood Ozone”である。人類がもたらした汚染廃棄物こそが、地上のオゾンを“Bad Ozone”に仕立て上げたのである。
3.“神の手”の仮説:オゾンは疫病を駆逐する?
2002年冬から2003年春にかけて、SARSの大流行が社会的な大パニックを引き起こした。しかし2003年の5月〜6月になるとSARSは消え去った。
SARSだけではなく、インフルエンザなど飛沫感染のウイルスのほとんどが秋冬に爆発し、春夏には消滅する。季節ごとにハッキリとした消長パターンが見られる。まさに見えざる“神の手”がこれらの病毒を駆逐しているが如くである。
世界中の研究者の多くがこれまでウイルスと温度、或いはウイルスと湿度との相関関係を追ってきた[19]。しかし、これらの研究では、ウイルスと気温変化との関係が未だはっきり説明できていない。インフルエンザを例に取れば、一般的に、低温、低湿の環境ではウイルスが比較的長時間活性を保ち、温度と湿度の上昇に従いその活性が抑制されると考えられている。しかし、実験では、湿度を上げることによってインフルエンザウイルスの消滅度が上がったことが確認できた[20]。自然界での温度変化の幅はインフルエンザのウイルスにはあまり影響がなかった。実際、赤道付近では気温が最高であるにもかかわらず、インフルエンザウイルスがむしろ年中蔓延している[21]。
筆者は、上記「自然界の低濃度オゾンが地球上の細菌やウイルスといった微生物の過度な繁殖と拡散を防いできた」との「仮説1」に基づき、さらに「2月周レポート」では「酸化力を持つオゾンこそが、真の“神の手”である」と仮説を立てた(以下「仮説2」と略称する)。
オゾン濃度は季節により変化する特性を持つ。しかも秋冬が低く、春夏に高い。気象庁のオゾン観測情報によると、オゾン全量[22]は2月から5月の間に、札幌、筑波、鹿児島、那覇と、北から南まで順にピークを迎える。北へ行けば行くほどそのピークの時期は早く訪れる。南ではピークが遅くなる[23]。
地域によってオゾンの濃度も違っている。同じ気象庁の観測情報によるとオゾン全量ピーク時の濃度は北へ行けば行くほど高い。逆に、南では濃度が低くなる。オゾン全量は緯度の変化でその分布も明らかに変化している。赤道近くではオゾン量が最も少なく、南北両半球とも中・高緯度域で多く、緯度60°付近の北方地域で最も多い。また、オゾン量は中緯度では北半球が南半球に比べて多く、とくに日本上空は多い[24]。
本来、紫外線が強いほど酸素分子の分解スピードは早い。赤道付近は太陽の照射が最大であり、オゾンは最も産出し易いはずである。しかし、オゾン濃度の変化をもたらす要素は多く、そのメカニズムも極めて複雑である。紫外線が強いほどオゾンは作り易くなると同時に、オゾン自体の分解も進む。また、オゾンの分解スピードは温度とも関係がある。温度が高いほどその分解スピードは早まる[25]。さらに、地球規模の大気環流も無視できない。その土地で作られたオゾンが他地域に運ばれることもあり得る。
対流圏オゾンの大半は成層圏のオゾン層から来ている。同時に植物の光合作用が生むオゾンの量や、雷で作られるオゾン量、人類の産業活動が排出するNOxとVOCの量、そして火山噴火によるオゾン破壊なども対流圏のオゾン濃度に影響を与える。
要するに、酸素分子と原子の奇妙な集合離散によって左右されるオゾン濃度は、秋冬が低く春夏に高いリズムを持つ。また、温度が高いほど、オゾンの分解速度は早まる。さらに、湿度も重要で、湿度はオゾンのウイルスを不活化するパワーを高める。乾燥状態ではオゾンのウイルス不活化力は劇的に落ちる[26]。
よって筆者は大胆に「オゾンこそが、真の“神の手”である」「仮説2」を立てた。つまり季節が冬から暖かくなるにつれ、オゾン濃度は高まり、空気の湿度も増すと同時に、オゾンは“神の手”となって疫病を駆逐する。
さらにこの仮説を厳密に説き明かすと、ウイルスを抑える主力は季節変化の中で高まるオゾンであり、上昇する温度と湿度はこれの威力をさらに高める。オゾン、温度、湿度の三者は相まってウイルスという病魔を駆逐する。勿論、紫外線も微生物の一大キラーであり、室外の細菌病毒を死滅させる重要なファクターである。
新型コロナウイルスの大流行によるパンデミックはいつ収束するのか。これがいま、世界の最大の関心事となっている。経済活動の復興や、社会の緊張緩和はこれにかかっている。もし、「仮説2」が成立すれば、今回の新型コロナウイルスもSARSやインフルエンザと同様、季節の変化によるオゾン濃度の向上によって消え去ると、「2月周レポート」は希望的観測をした。
しかし、夏が過ぎたいまも、新型コロナウイルスは未だ我々を苦しめ続けている。これは恐らく、新型コロナウイルスがSARSと比べ、オゾン濃度が上がる前に地球規模に蔓延したことと関係しているのではないか。但し、実際中国や日本の状況で見ると夏に入ってから新型コロナウイルスの猛威は大分衰えた。自然界のオゾン濃度の高まりが一役買ったことは間違いないだろう。
「2月周レポート」では、大胆な仮説は精密な立証を必要とするとして、上記の仮説に対して学者、専門家に様々な角度から検証及び批評を呼びかけた。
4.有人空間でのオゾン利用へ
オゾンは自然界の病毒の駆逐者であるばかりでなく、近代以来、人類にもその強い酸化力を活かし、消毒、殺菌、除臭、解毒、漂白などの分野で広く活用されてきた。
オゾンは、今回の地球規模でのコロナウイルスとの戦いの中でも活かされるべきである。しかもオゾンには以下の三つの特性がある。
①死角無く充満:オゾン発生機などから作られたオゾンは、室内に充満し、空間のすべてに行き届く。その消毒殺菌の死角は無い。これに対して、紫外線殺菌は直射であるため死角が生じる。
②有害残留物が無い:オゾンはその酸化力を持って細菌と病毒を消滅させる。有害の残留物は残さない。相反して現在広く使用されている化学消毒剤は人体そのものに有害であるばかりでなく、有害残留物による二次汚染も引き起こす。中国での疫病対策の中で、すでに消毒剤の濫用による深刻な問題がもたらされた。
③利便性:オゾンの生成原理は簡易で、オゾン生産装置の製造は難しくない。また、オゾン発生機のサイズは大小様々あり、個室にも大型空間にも対応できる。設置が簡単なためバス、鉄道、船舶、航空機などにも設置が可能である。
オゾンの殺菌消毒効果は、オゾン自体の濃度だけでなく環境の温度、湿度そして暴露時間とも関係する。さらに、ウイルスの種類とも一定の関係を持つ。
新型コロナウイルスに有効か否かについては、「2月周レポート」の時点では、直接の実験は未だ無いものの、下記の類似の実験で推測した。
2003年、北京工業大学教授で中国オゾン産業連合会技術委員会の専門家、李澤琳教授が中国国家P3実験室で行ったオゾンによるSARSウイルスの不活化実験結果によると、オゾンはSARSウイルスに対して強い不活化効果があり、総合死滅率が99.22%に達した(以下「李実験」と略称する)[27]。今回の新型コロナウイルスは、SARSウイルスと同様にコロナウイルスに属している。新型コロナウイルスのゲノム序列の80%はSARSウイルスと一致しているという[28]。よって、「2月周レポート」ではオゾンが新型コロナウイルスに対しても相当の除染力を持つことが推理できた。
自然界でのオゾンの殺菌消毒パワーに関する上記の仮説や、「李実験」の結果などを踏まえ、「2月周レポート」は、「自然界と同じレベルの低濃度のオゾンであっても新型コロナウイルスに対して相当の不活化力を持つ」との仮説を立てた(以下「仮説3」と略称する)。この仮説に基づき、「2月周レポート」では、オゾンは新型コロナウイルスを駆逐し、空気を浄化させ得るとし、広く有人空間で使用するよう提唱した。
ウイルスに対して、オゾンは非常に優れた除染消毒のパワーを持つが、個人差はあるものの一定の濃度に達した場合に人々に不快感を与え、また、粘膜系統に刺激を与えることもある。そのため、これまで、主に無人の空間で使用されている。これに対して、「仮説3」に基づく低濃度オゾンによる有人環境での利用が、病院、職場、公共空間、公共交通機関、住宅の室内に行き渡れば、ウイルス対策にとって大きな福音になると言えよう。
コンクリートジャングルの大都市では、そもそもオゾン濃度は低い[29]。人が集まる室内ではなおさらそうである。コロナウイルスが世界的に蔓延している現在、有人空間でのオゾン利用こそ究極の「3密問題」[30]解消対策である。
5.新型コロナウイルス対策におけるオゾン利用と課題
深刻な病床不足を解消するために、武漢は国の支援で迅速に専門治療設備の整う火神山病院と雷神山病院といった重症患者専門病院を建設し、前者で1,000床、後者で1,600床の病床を確保した。このほかに、武漢は体育館を16カ所の軽症者収容の「方艙病院」へと改装し、素早く1万3,000床の抗菌抗ウイルスレベルの高い病床を提供し、軽症患者の分離収容を実現させた。
遠大科技集団は火神山病院、雷神山病院、そして方艙病院をはじめ武漢の多くの病院にオゾン発生機能付き空気清浄機を寄付した[31]。特記すべきは、武漢青山方艙病院、武漢楠姆方艙病院に、オゾン発生機能付き空気清浄機を大量に寄付し、病院を開業すると同時に稼働させたことである。体育館などを改装して作られた方艙病院は、大部屋に大勢の患者と医療従事者を集中させているため、院内感染の危険性が極めて高かった。しかし、上記の二つの方艙病院の医療従事者に感染者は出なかった[32]。オゾンが大きな役割を果たしたと思われる。
新型コロナウイルス感染拡大の初期、同ウイルスの性質への認識を欠き、マスク、防護服、隔離病棟などの資材不足がこれに重なり、医療従事者は高い感染リスクに晒された。これにより武漢では現場の医療人員の感染による減員状態が大量に起こった。そのために中国全土から大勢の医療従事者が武漢を含む湖北省へ駆けつけた。救援に当たった医療従事者は最終的に4万2,000人に達した。幸いにしてこれら応援医療従事者の中から感染者は出なかった。オゾンによる殺菌作用により院内感染が防げられたことが一役かったと思われる。
オゾン利用の普及にとって最大の課題は、オゾンに対する正しい理解を広めることである。
2020年3月8日、遠大科技集団は韓国から、オゾン消毒殺菌機能を持つ空気清浄機付きコロナウイルス対策用救急病院の建設を依頼された。その後、遠大の中国工場で作られた緊急病院は、韓国の現地へ運ばれて組み立てられ、4月6日には使用可能となった。しかし、韓国の現場ではオゾン使用に抵抗が強く、結局空気清浄機に付属のオゾン発生機能をOFFすることとなった。こうしたことから伺えるように、オゾンの活用へのハードルはまだ高く、人々にオゾンの安全性を説明する努力が欠かせない。
9月1日、東京・上野旅館組合の要請を受けて筆者は、台東区上野区民館にて「武漢に学ぶ 今私たちに出来ること」と題した講演会を行った[33]。ホテルやレストランの経営者に対して、オゾンの知識及び新型コロナウイルス対策における活用の可能性について話した。講演会終了後、45枚のアンケートを回収した。「オゾンについて理解を深められたか」の設問に対して、40人が「はい」と答えた。オゾン利用についても説明努力すれば理解が得られるとの感触が得られた。新型コロナウイルスパンデミックが作り上げた緊迫感はオゾンに関する偏見を払拭し、有人環境でのオゾン利用という新しい技術進路を開拓する好機として捉えられよう。
6.低濃度オゾンで新型コロナウイルス不活化を確認
「2月周レポート」発表から約3カ月後の2020年5月14日に、公立大学法人奈良県立医科大学は、同大学の矢野寿一教授(微生物感染症学)、笠原敬センター長(感染症センター)とMBTコンソーシアム(感染症部会会員企業:クオールホールディングス株式会社、三友商事株式会社、株式会 社タムラテコ、丸三製薬バイオテック株式会社)との研究グループが、世界で初めてオゾンガス曝露による新型コロナウイルスの不活化を確認した(以下「矢野・笠原実験」と略称する)と公表した[34]。
「矢野・笠原実験」は、「2月周レポート」で出された三つの仮説の前提である「オゾンが新型コロナウイルスを不活化できる」とのエビデンスを提供した。但し、「矢野・笠原実験」に使われたオゾン濃度は、6ppmと1ppmと高く、無人状況でのオゾン利用を想定している。
「2月周レポート」の発表から半年後の2020年8月26日に、学校法人藤田医科大学は、同大学の村田貴之教授(ウイルス・寄生虫学)らの研究グループが、低濃度(0.05 ppmまたは0.1ppm)のオゾンガスでも新型コロナウイルスに対して除染効果があるということを、世界に先駆けて実験的に明らかにした(以下「村田実験」と略称する)と、リリースした[35]。
「村田実験」は、自然界と同じレベル濃度のオゾンであっても新型コロナウイルスに対して相当の不活化力を持つという「2月周レポート」の「仮説3」にとって貴重なエビデンスである。
さらに「村田実験」は、湿度が上がれば、オゾンの新型コロナウイルスに対する除染効果が向上する実験結果を出したことから、「2月周論文」の「仮説2」で、湿度の向上がオゾンによるウイルス不活化力を高めるとした説に、新型コロナウイルスでのエビデンスを提供した。
こうした貴重なエビデンスが揃ったことは、有人環境でのオゾン利用による新型コロナウイルス対策に、大きな後押しとなった。
7.高精度かつ安価なオゾンセンサーの開発がカギ
しかし、有人環境でのオゾン利用による新型コロナウイルス対策の、本格利用には、もう一つの決め手が必要である。それは、低いレベルのオゾン濃度をコントロールするセンサーである。
自然界に近い濃度のオゾンを室内に取り入れる場合、人々に不快感を与えることはない。しかし新型コロナウイルスに一定の不活化力を持ちながら、なお人体に影響を及ぼさないよう室内のオゾンの濃度を、例えば「村田実験」同様の0.05ppm〜0.1ppm[36]のレベルに維持させるのは、困難である。オゾンは極めて不安定な性質を持つために、一定の濃度にコントロールするには常に濃度を高精度に測る必要がある。問題は目下、低い濃度のオゾンを高精度に測定するオゾンセンサーが大変高価なことである[37]。高精度のオゾンセンサーが容易に使えないため、安くて低濃度オゾンをコントロールできる普及型のオゾン発生機は未だ世に出ていない。
もし安価でオゾン濃度を安全にコントロールできれば、オゾン利用は容易に世間に受け入れられ、有人空間におけるオゾン利用も一気に進むであろう。精度を高く保ちながらなお安価なオゾンセンサーの開発に、喫緊の課題として取り組むべきである。もちろん、新型コロナウイルスの脅威に晒されている今現在、安くて正確なセンサーが無くても、さまざまな工夫でオゾンの室内利用を広めていくことが急務である。
オゾンと微生物との関係は、地球生命体の絶妙なバランスを表している。もしオゾン層の保護が無ければ、ウイルスや細菌などの微生物は存在しえなかった。他方、オゾンの強い酸化力もウイルスの天敵である。人類は未だオゾンに対する認識が不十分である。筆者はオゾンに対する偏見と過度な警戒心を捨て、オゾンにまつわる数々の謎を解き明かし、オゾンの特性を十分に理解し、活かしていくべきであると考える。とりわけこの新型コロナウイルスとの戦いの中では、オゾンの力を十分に発揮させていくことが急務である。
[1] 周牧之「这个“神器”能绝杀新冠病毒」、中国網(China.com.cn)、2020年2月18日(http://opinion.china.com.cn/opinion_84_217684.html)。
[2] Zhou Muzhi, “Ozone: a powerful weapon to combat COVID-19 outbreak” In China.org.cn, 26 February 2020(http://www.china.org.cn/opinion/2020-02/26/content_75747237.htm)。
[3] 周牧之「オゾンパワーで新型コロナウイルス撲滅を」、In Japanese.China.org.cn、2020年3月19日(http://japanese.china.org.cn/business/txt/2020-03/19/content_75834590_2.htm)。
[4] 張躍氏は1988年に遠大科技集団(BROAD Group)を創業し、同社を世界最大手の非電力エアコンメーカーに育て上げた中国を代表とする企業家。2020年1月中旬から筆者が同氏とオゾンに関する議論をオンラインで日夜重ねてきた。
[5] 紫外線は波長によりUV-A(315~400nm)、UV-B(280~315nm)、UV-C (<280nm)に区分され、特に生物に強い害を与えるUV-Bの大部分とUV-Cのすべてがオゾン層によって吸収される。
[6] いまから約28億年前、地球上に原始的な植物(ランソウ類)が発生し光合成が始まった。光合成により大気中の酸素濃度が増加し、今から約4億年前にオゾン層が形成され、生物は水の保護なしで陸上生活ができるようになった。これについて詳しくは、秋元肇「フロンガスと成層圏オゾン」、日本化学会『化学と教育』、36巻6号、1988年12月20日、pp.554-557を参照。
[7] 「人間活動によって塩素原子や臭素原子を含有するオゾン層破壊物質が排出されているこれらの物質の多くは、非常に安定して反応性がなく、雨や海水にも溶解しないため、大気中の寿命が極めて長く、下層の対流圏大気中に蓄積する(大気中寿命の短いものは一部が大気中に蓄積する)。これらは非常にゆっくりではあるが大気の運動を通じて成層圏に輸送され、そこでオゾン層で遮蔽されない短波長の太陽紫外線によって分解され、反応性の高い物質に変換される。生じた反応性物質が、成層圏オゾンを連鎖反応により破壊する」。「第2部 特定物質等の大気中濃度」、環境省『平成30年度オゾン層等の監視結果に関する年次報告書』、2019年8月、p91より抜粋。
[8] 「一般的に、紫外線は波長が短いほど生物に対する有害作用が大きいが、UV-Cは大気圏上部の酸素分子及び成層圏のオゾンによって完全に吸収されてしまうため、オゾン量が多少減少しても地表面には到達せず、生物に対して問題にはならない。また、UV-A の照射量はオゾン量の変化の影響をほとんど受けない。UV-B については、最近の知見によれば、成層圏オゾンが1%減少した場合、特定の太陽高度角(23度)において、約1.5%増加するという結果が得られている。UV-B は、核酸などの重要な生体物質に損傷をもたらし、皮膚の老化や皮膚がん発症率の増加、さらに白内障発症率の増加、免疫抑制など人の健康に影響を与えるほか、陸域、水圏生態系に悪影響を及ぼすことが懸念される」。「第3部 太陽紫外線の状況」、環境省前掲報告書、p.139より抜粋。
[9] 米カリフォルニア大学ローランド教授とモリーナ博士により1974年、クロロフルオロカーボン(CFC)がオゾン層を破壊すると初めて指摘された。これを機にオゾン層保護の取組が進められ、1985 年には「オゾン層保護のためのウィーン条約」が、1987年には「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」が採択され、主要なオゾン層破壊物質の生産量・消費量が期限を定めて削減されてきた。2016年にはオゾン層破壊物質でないものの高い温室効果を有する代替フロン(HFC)が、段階的削減の対象物質に追加される改正が合意された。改正議定書は 2019年1月1日に発効した。オゾン層保護対策に関する国際的取り組みの経緯について詳しくは、「第4部 巻末資料 1-3. 国際的なオゾン層保護対策」、環境省前掲報告書、pp.188-192を参照。
[10] オゾン( ozone)は、3つの酸素原子からなる酸素の同素体で、分子式はO3。沸点は−111.9℃で、酸化力が強く、常温では特有の臭いを持つ無色の気体である。
[11] FDA以外にも、アメリカ政府は、オゾン暴露の基準または推奨濃度を定めている。アメリカ連邦環境保護庁(USEPA)のホームページに各基準をまとめた表が掲載されている。これについて詳しくは、「Ozone Generators that are Sold as Air Cleaners」、アメリカ連邦環境保護庁(USEPA)HP(https://www.epa.gov/indoor-air-quality-iaq/ozone-generators-are-sold-air-cleaners、最終閲覧日:2020年9月7日)を参照。
[12] オゾン許容濃度の勧告年度は1963年と古く、以来改定されていない。詳しくは、「許容濃度等の勧告」、日本産業衛生学会『産業衛生学雑誌』、61巻5号、2019年5月12日、p.172を参照。
[13] 中国国家衛生部(省)『臭氧発生器安全与衛生標准』、2011年12月30日。
[14] 産業革命以来の対流圏オゾンの増加は、特に南半球に比べて北半球の方が遙かに大きく、対流圏オゾンは北半球ではCH4を凌駕する第2の温室効果気体と成り得るまで増加してきたと報告されている。これについて詳しくは、秋元肇「気候変化と大気環境」、大気環境学会『大気環境学会誌』、44巻6号、2009年12月10日、p.398を参照。
[15] 過去100年間のうちにオゾン濃度が約10 ppbvから、約45ppbvまで増加しているとの報告がある。詳しくは、Alain Marenco, Hervé Gouget, Philippe Nédélec, Jean-Pierre Pagés, Fernand Karcher,“Evidence of a long-term in- crease in tropospheric ozone from Pic du Midi data series: Consequences: Positive radiative forcing”, in Journal of Geophysical Research , Vol.99, 20 Aug 1994, pp.16617-16632を参照。
[16] 太陽紫外線照射の変化やオゾンの大気中輸送メカニズムなどが原因で、緯度・経度や季節によってオゾン量は違う。これについて詳しくは、 環境省前掲報告書「第1部 オゾン層の状況」、pp9-13を参照。
[17] 対流圏自然界のオゾンに関してその役割をポジティブに捉える学術論文や論説は希少である。学術的ではないがエコデザイン株式会社HP(https://www.ecodesign-labo.jp/ozone/ozone/、最終閲覧日:2020年9月6日)に対流圏オゾンに関するポジティブな解説があり貴重である。
[18] 0.025ppm低濃度オゾン暴露によって、浮遊ウイルスの除去効果が認められた報告がある。これについて詳しくは、中室克彦、岡上晃、津田浩司「小型低濃度オゾン発生器による浮遊ウイルスの除去効果」、日本医療・環境オゾン学会『日本医療・環境オゾン学会会報』、22巻3号、2015年8月、pp.73-77を参照。また、ホウレンソウ、レタス、イチゴなどの野菜について、低濃度オゾンによる殺菌・防カビ効果が報告されている。これについて詳しくは、池田彰、河相好孝、江崎謙治、中山繁樹「低濃度オゾンによる低温貯蔵時の野菜の殺菌」、日本生物環境工学会『植物工場学会誌』、10巻4号、1998年12月1日、pp.237-242を参照。
[19] インフルエンザウイルスの流行と季節の関係は相対湿度よりも絶対湿度が相関するとの報告がある。詳しくは、庄司眞「季節とインフルエンザの流行」、国立保健医療科学院『公衆衛生研究』、Vol.48(4)、1999年12月、pp.282-290を参照。また、インフルエンザウイルスの感染率や生存率についての実験結果から、絶対湿度が低いとき、インフルエンザウイルスの生存期間は延長し、感染率が上昇するとの報告もある。詳しくは、Jeffrey Shaman, Melvin Kohn,“Absolute humidity modulates influenza survival, transmission, and seasonality”, in Proc Natl Acad Sci USA, Vol.106, 10 Mar 2009, pp.3243-3248を参照。
[20] オゾンは湿度の影響を受けやすく、低湿度環境下で除染効果率(除染能)が低下するとの報告がある。詳しくは、Miei Sakurai, Ryoji Takahashi, Sakae Fukunaga, Shigefumi Shiomi, Koji Kazuma, Hideharu Shintani,“Several Factors Affecting Ozone Gas Sterilization”,in Biocontrol Science, Vol.8(2), 10 Jun 2003, pp.69-76を参照。
[21] インフルエンザは「北半球では12-3月、南半球では6-9月頃に流行がピークとなる。赤道周辺では明瞭なピークを形成せず、通年性に発生する」、川名明彦「インフルエンザ(季節性)」(2019年7月23日)、日本感染症学会HP(http://www.kansensho.or.jp/ref/d04.html、最終閲覧日:2020年9月6日)。
[22] オゾン全量とは、地表から大気上端までの鉛直気柱に含まれるすべてのオゾンを積算した総量のことで、単位のm atm-cm(ミリアトムセンチメートル)は、その総量を仮に0℃、1気圧の地表に集めたときの厚さを表す。
[23] 気象庁オゾン観測点のデータについて詳しくは、「オゾン層に関するデータ」、気象庁HP(https://www.data.jma.go.jp/gmd/env/ozonehp/info_ozone.html、最終閲覧日:2020年9月7日)を参照。
[24] オゾン量の地球規模の分布について詳しくは、「第1部 オゾン層の状況」、環境省前掲報告書、p.11を参照。
[25] オゾンの半減期は、温度の他に、相対湿度、気流にも依存すると報告されている。詳しくは、「気体オゾンの自己分解速度実測値」、関西オゾン技術研究会『技術ノート』、No.17、2012年7月8日、pp.1-4を参照。
[26] オゾンガスを用いた室内環境除染について、相対湿度の上昇に伴い殺滅対象となるウイルスの死滅率が高まるという報告がある。詳しくは、佐藤浩、渡辺洋二、宮田博規「オゾンによる実験動物ウイルスの不活化」、日本実験動物学会『Experimental Animals』39巻2号、1990年4月1日、pp.223-229を参照。
[27] 李澤琳教授が行ったオゾンによるSARSウイルスの不活化実験について詳しくは、『北京日報』、2003年11月6日付記事を参照。
[28]「新型コロナウイルスの遺伝子はSARSコロナウイルスの遺伝子と相同性が高い(約80%程度)」、松浦善治、神谷亘「新型コロナウイルス感染症について」(2020年2月10日)、日本ウイルス学会HP(http://jsv.umin.jp/news/news200210.html、最終閲覧日:2020年9月6日)。
[29] オゾン濃度は季節性があり、また、高度、気象、観測点近くの地形によって大きく左右されることが報告されている。マウナロワ(ハワイ)、アロサ(スイス)、ロンドン、東京のオゾン濃度比較を行い、マウナロワやアロサに比べ、ロンドン、東京のオゾン濃度が低いことを示した調査報告がある。なお、都市部においては、自動車排気ガスのなどの影響により局部的にオゾン濃度が高い地域が発生する。これについて詳しくは、川村清「大気オゾンの生成機構, 地表面のオゾン濃度とその測定方法」、日本ゴム協会『日本ゴム協会誌』、40巻4号、1967年4月15日、pp.262-269を参照。
[30] 「3つの密(3密)」とは2020年3月、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大期に集団感染防止のため厚生労働省クラスター対策班が掲げた標語。密閉・密集・密接を避けることを、日本政府は新型コロナウイルス感染拡大の予防策として掲げた。
[31] 武漢青山方艙病院と武漢楠姆方艙病院に、寄付および購入された遠大科技集団のオゾン発生機能付き空気清浄機は合わせてTB100(オゾン発生能力1g/h/台)が22台、TA2000(オゾン発生能力7g/h/台)が35台、TD5000(オゾン発生能力14g/h/台)が12台であった。
[32] 遠大科技集団の担当責任者へのヒアリングによる。
[33] 上野旅館組合の渡辺定利組合長は、コロナ禍でホテル業界が集客困難という大打撃を受けている中で、オゾンによる新型コロナウイルス対策に活路を見出したいとして筆者に協力を求めた。2020年9月1日の講演会はこの流れの一環として開催された。講演会の様子は同9月20日『台東区民新聞』1面参照。その後ホテル業界関係者へのオゾン普及の講演会は3度に渡って開かれた。
[34] 「矢野・笠原実験」について詳しくは、奈良県立医科大学プレスリリース(http://www.naramed-u.ac.jp/university/kenkyu-sangakukan/oshirase/r2nendo/documents/press_2.pdf 、最終閲覧日:2020年9月6日)を参照。
[35] 「村田実験」について詳しくは、奈良県立医科大学プレスリリース(https://www.fujita-hu.ac.jp/news/j93sdv0000007394.html、最終閲覧日:2020年9月6日)を参照。
[36] 「村田実験」がオゾンの濃度を0.05ppm〜0.1ppmとしたのは、恐らく日本産業衛生学会が産業環境基準のオゾン許容濃度を0.1ppmと規定しているのを意識してのことであろう。Withコロナ時代に鑑み、オゾンの新型コロナウイルスに対する不活化力を一層高めるため、こうした基準もある程度緩和することが肝要であろう。
[37] アメリカの2B Technologies社のオゾンセンサーは精度が高いものの、高価である。例えば、同社製品の紫外線吸収式オゾンモニターPOM、紫外線吸収式オゾン計 Model 106-Hの日本販売価格は、各々1,120,000 円と960,000 円である。オゾン利用の普及には適さない価格となっている。
周牧之「オゾン利用で新型コロナウイルス対策を」、『東京経大学会誌 経済学』 307号、2020年12月2日