【レポート】オゾンパワーで新型コロナウイルス撲滅を

1. 地球における命の守護神

 新型コロナウイルスが中国武漢で爆発的に発生して以来、筆者は遠大科技集団(BROAD Group)の張躍総裁とオゾンを利用した殺菌について日夜電話議論を重ねてきた。張躍氏はオゾン利用による殺菌を提唱する先駆者である。しかし実際の反響はこれまで芳しくなかった。オゾン利用に関する国内外専門家との交流や関連資料調査で、筆者もオゾンについての人々の警戒心を強く感じてきた。オゾンに関する誤解を取り除き、この緊急事態に、オゾンの積極利用を進めるべきとして、オゾンの極めて解りにくい特性に関して系統的な整理を試みた。

 地球大気圏約0~10kmの最低層は対流圏と呼ばれ、そこでの温度と高度の関係は上冷下熱である。対流圏の上部に約10~50kmの成層圏がある。成層圏では温度と高度との関係が対流圏と相反して上熱下冷である。濃度約10~20ppmのオゾン層はこの成層圏にある。オゾン層は紫外線の地球上生物に危害を加える部分を吸収する。よって、有害な紫外線による生物細胞の遺伝子の破壊を押し止め、地球上の生命に生存条件を与えている。

 オゾン層の濃度が現在のレベルに達した時期と地球上の生命が海から上陸した時期はほぼ一致している。言い換えれば、オゾン層がまだ希薄な時期、生命は海の中に潜伏せざるを得なかった。オゾン層の濃度の向上を待ってようやく陸に上がることができた。

 オゾン層の保護がなければ、地球上には細菌一つすら存在不可能であったということになる。もちろん今日の豊かな生命の繁栄もあり得なかった。

 しかし、人類の産業活動によって大量に排出されたフロンガスや揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compounds)などによるオゾン層への破壊は、人類の免疫システムを弱め、皮膚ガンや白内障などの発病率を高める被害をもたらした。オゾンホールは地球温暖化と並び、いまや地球環境問題となっている。オゾン層破壊問題は同時に、オゾンを一般大衆の視野に入れるきっかけともなった。オゾン層はその地球生物を保護する性質に鑑み、“アース・ガーディアン”と呼ばれる。

 オゾンは、三つの酸素原子から構成され、酸素の同素体であり、特殊な匂いがする。オゾンは主に太陽の紫外線が酸素分子を二つの酸素原子に分裂させ、その酸素原子がさらに酸素と結合することで作られている。

 高濃度のオゾン層は天然のバリアとなり、地球上の生物を太陽光にある有害な紫外線の攻撃から守り、地球生命の繁栄をもたらしている。

 

2. 天上のGood Ozone,地上のBad Ozone?

 オゾンは高い空の成層圏にあるだけではなく、我々の周囲にも存在している。酸素分子は低空で多く、高空では少ない。これに対して、酸素原子は低空で少なく高空に多い。ゆえに、酸素分子と酸素原子がともにある成層圏に、オゾン層が高濃度で作られている。相反して地面と、オゾン層より高い場所のオゾン濃度は薄い。つまり、大気中のオゾン濃度は地面から約10kmのところより高くなり、成層圏のオゾン層で最大値となる。さらにその上空に行くと、オゾン濃度はまた急激に下がる。

 対流層のオゾン濃度は一般的に0.02~0.06ppmである。この自然界のオゾン濃度は人類を含む大型生物には無害である。しかし、高い濃度のオゾンは人に不快感を与え、目や呼吸器官などの粘膜組織を刺激することもある。よって、アメリカ食品医薬品局(FDA)は室内環境基準のオゾン最大濃度を0.05ppmに規定している。日本産業衛生学会は産業環境基準のオゾン許容濃度を0.1ppmと規定する。中国衛生省もオゾンの安全濃度を0.1ppmと規定している。

 以上のように高濃度オゾンに対する警戒感は元よりあった。加えてオゾンの悪名を轟かせたのは、光化学スモッグ汚染である。光化学スモッグとは、窒素酸化物 (NOx)や揮発性有機化合物(VOC)などの一次汚染物質と、それらに紫外線が照射されることによって発生するオゾンという二次汚染物質からなる。NOxとVOCなどが光化学スモッグをもたらす主な生成物質であるが、光化学スモッグの中のオゾン成分は、80〜90%までにも達する。ゆえに光化学スモッグ汚染イコールオゾン汚染だと世間は捉えがちである。

 光化学スモッグは、目や呼吸器官の粘膜組織に刺激を与え、目の痛み、頭痛、咳、喘息などの健康被害を引き起こす。また植物の成長を抑制し農作物の減産をもたらす。酸性雨の原因ともなっている。

 産業革命以来、大量のNOx排出により対流圏のオゾンが増加した。過去100年、対流圏のオゾン全量は4倍になった。とくに近年、中国を始めとする東アジアでの急速な工業化と都市化に伴い、NOxなど光化学スモッグ生成物質排出量は激増し、対流圏のオゾン増加傾向を加速させている。

 対流圏のオゾン量は成層圏の10分の1に過ぎないが、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH₄)に次ぐ第3の地球温暖化ガスとなっている。

 こうした様々な理由により、世間では“対流圏のオゾンは生物に有害な汚染物質である”との認識が広がった。ゆえにオゾンは“天上のGood Ozone,地上のBad Ozone”とも言われている。日本では対流圏オゾンの地球規模の越境汚染に対するモニタリングが重要な課題となっている。

 ここではっきりさせたいのは、光化学スモッグのオゾン濃度は対流圏の自然界での正常な濃度ではなく、人的活動の汚染排出でもたらされた非自然的な高濃度であることだ。さらに光化学スモッグのオゾンにはNOxやVOCなど有害物質が多く含まれている。これもまた自然界の澄み切ったオゾンとは全く異なっている。

 自然界のオゾン濃度は季節と地域によって差異が生じるが、一般的に人体には害を及ぼさない。自然界のオゾンは無害であるばかりかむしろ有益である。自然界のオゾンと光化学スモッグとの違いを区別しなければならない。例えば雷の高圧放電では、空気中の酸素を分裂させ、オゾンを作る。高濃度のオゾンは空気を浄化するために、雷の後、往々にして空気はより清々しいものとなる。また、晴天の海岸や森林はオゾンの濃度が高いため空気は一層清らかである。

 対流圏のオゾンも、人類生存の守護神である。ただ我々は長い間その恩恵に対する研究と認識を欠いていた。

 自然界のオゾン濃度は、大型生物に無害であるものの、微生物にとってはスーパーキラーとなる。強い酸化力を持つオゾンは、自然界の微生物の繁殖を抑制し、地球生態バランスを保ってきた。しかし、これまで地球という生命体の中で微生物を抑制するオゾンの役割は十分には重視されてこなかった。

 その理由の一つは、一般的に低濃度のオゾンには殺菌作用があまり無いと考えられてきたからである。しかし、実際は、一定の暴露時間をかければ低濃度のオゾンも十分な殺菌消毒力を持つ。つまり、自然界の低濃度オゾンが地球上の細菌やウイルスといった微生物の過度な繁殖と拡散を防いできたと言えよう。

 また、オゾンは自然界においては有害有機物を分解する。さらに、オゾンは動植物に季節の変化を知らせるシグナルであるとも考えられる。要するに、対流層のオゾンが無ければ地球は、人類の生存さえあり得ない環境であった。

 実際、オゾンは“天上のGood Ozone,地上のGood Ozone”である。人類がもたらした汚染廃棄物はオゾンを“Bad Ozone”に仕立て上げた。

 

3.“神の手”の仮説:オゾンは疫病を駆逐する?

 2002年冬から2003年春にかけて、SARSの大流行が社会的な大パニックを引き起こした。しかし5、6月になるとSARSは突然に姿を消した。SARSだけではなく、インフルエンザなど飛沫感染のウイルスのほとんどが秋冬に爆発し、春夏には消滅する。見えざる神の手がこれらの病毒を駆逐しているが如くである。

 世界中の研究者の多くがこれまでウイルスと温度、或いはウイルスと湿度との相関関係を追ってきた。しかし、これらの研究では、ウイルスと気温変化との関係がはっきり説明できなかった。インフルエンザを例に取れば、一般的に、低温、低湿の環境ではウイルスが比較的長時間活性を保ち、温度と湿度の上昇に従いその活性が抑制されると考えられている。しかし、実験で証明されたのは、ある程度の温度変化はインフルエンザのウイルスにはあまり影響がなかった。むしろ、湿度をあげることによって同ウイルスの消滅度が上がった。また、赤道付近では気温が最高であるにもかかわらず、インフルエンザウイルスがむしろ年中蔓延している。

 筆者は、酸化力を持つオゾンこそが、真の神の手であると仮説を立てた。

 オゾン濃度は季節により変化する特性を持つ。しかも秋冬が低く春夏に高い。気象庁のオゾン観測情報によると、北から南、札幌、筑波、鹿児島、那覇でオゾン全量は2月から5月の間にピークを迎える。北へ行けば行くほどそのピークの時期は早く訪れる。南ではピークが遅くなる。

 地域によってオゾンの濃度も違っている。同じ気象庁の観測情報によるとオゾン全量ピーク時の濃度は北へ行けば行くほど高い。逆に、南では濃度が低くなる。オゾン量は緯度の変化でその分布も明らかに変化している。赤道近くではオゾン量が最も低く、緯度60°付近の北方地域で最も高い。

 本来、紫外線が強いほど酸素分子の分解スピードは早い。赤道付近は太陽の照射が最大であり、オゾンは最も産出し易いはずである。しかし、オゾン濃度の変化をもたらす要素は多く、そのメカニズムも極めて複雑である。紫外線が強いほどオゾンは作り易くなると同時に、オゾン自体の分解も進む。また、オゾンの分解スピードは温度とも関係がある。温度が高いほどその分解スピードは早まる。さらに、地球規模の大気環流も無視できない。その土地で作られたオゾンが他地域に運ばれることもあり得る。

 対流圏オゾンの大半は成層圏のオゾン層から来ている。同時に植物の光合作用が生むオゾンの量や、人類の産業活動が排出するNOxとVOCの量なども対流圏のオゾン濃度に影響を与える。

 要するに、酸素分子と原子の奇妙な集合離散によって左右されるオゾン濃度は、秋冬が低く春夏に高いリズムを持つ。また、温度が高いほど、オゾンの分解速度は早まる。さらに、湿度も重要である。乾燥状態ではオゾンの殺菌力は劇的に落ちる。

 よって筆者は大胆な予測を以下の仮説を立てた。季節が冬から暖かくなるにつれ、オゾン濃度は高まり、空気の湿度も増すと同時に、オゾンは神の手となって疫病を駆逐する。

 さらにこの仮説を厳密に言うと、殺菌消毒の主力は季節変化の中で高まるオゾンであり、温度と湿度はこれの威力を高める。オゾン、温度、湿度の三者は相まって病魔を駆逐する。勿論、紫外線も微生物の一大キラーであり、室外の細菌病毒を死滅させる重要なファクターである。

 コロナウイルスの大流行によるパンデミックはいつ収束するのかがいま、世界の最大の関心事となっている。経済活動の復興や、社会の緊張の緩和はこれにかかっている。もちろん、目下世界的な株価の大暴落や東京オリンピック開催などの問題もこれに左右されている。もし、上記の仮説が成立すれば、今回の新型コロナウイルスもSARSやインフルエンザと同様、季節の変化によるオゾン濃度の向上によって消え去る。そうであれば現在、コロナウイルス危機の中で苦しむ人々の一つの希望となると同時に、パンデミック対策と復興対策の目処も立てられるだろう。

 大胆な仮説は精密な立証を必要とする。学者専門家の方々にぜひ様々な角度から検証と批判を仰ぎたい。

 

4. 有人空間でのオゾン利用へ

 オゾンは自然界の病毒の駆逐者であるばかりでなく、近代以来、人類もその強い酸化力を活かし、消毒、殺菌、除臭、解毒、漂白などの分野で広く活用してきた。
 ゆえにオゾンは、今回の地球規模でのコロナウイルスとの戦いの中でも活かされるべきである。しかもオゾンには以下の三つの特性がある。

 ①死角無く充満:オゾン発生機などから作られたオゾンは、室内に充満し、空間のすべてに行き届く。その消毒殺菌の死角は無い。これに対して、紫外線殺菌は直射であるため死角が生じる。

 ②有害残留物無し:オゾンはその酸化力を持って細菌と病毒を消滅させる。有毒な残留物は残さない。相反して現在広く使用されている化学消毒剤は人体そのものに有害であるばかりでなく、有害残留物による二次汚染も引き起こす。中国での疫病対策の中で、すでに消毒水の濫用による問題が深刻化している。日本でも十分な注意が必要である。

 ③利便性:オゾンの生成原理が簡易で、オゾン生産装置の製造は難しくない。また、オゾン発生機のサイズは大小様々あり、個室にも大型空間にも対応できる。設置が簡単なためバス、鉄道、船舶、航空機などにも設置が可能である。

 オゾンの消毒殺菌効果は、オゾン自体の濃度だけでなく環境の温度、湿度そして暴露時間とも関係する。さらに、ウイルスの種類とも一定の関係を持つ。新型コロナウイルスに有効か否かについては、直接の実験は未だ無いものの、類似の実験はある。

 中国の李澤琳教授が国家P3実験室で行ったオゾンによるSARSウイルスの殺菌実験結果によると、オゾンはSARSウイルスに対して強い殺菌効果があり、総合死滅率が99.22%に達した。今回の新型コロナウイルスは、SARSウイルスと同様にコロナウイルスに属している。新型コロナウイルスのゲノム序列の80%はSARSウイルスと一致しているという。因って、オゾンは新型コロナウイルスに対して相当の殺菌力を持つことが推理できるであろう。

 オゾンは非常に優れた殺菌消毒のパワーを持つが、個人差はあるものの一定の濃度に達した場合に人々に不快感を与え、また、粘膜系統に刺激を与えることもある。そのため、目下、主に無人の空間で使用されている。

 もし、広く有人空間で使用できれば、オゾンは新型コロナウイルスを駆逐し、空気を浄化させ得る。そうなれば、病院、職場、公共空間、公共交通機関、住宅の室内に到るまで、大きな福音となる。

 これを可能とするには、オゾン濃度のコントロールが必要である。自然界に近い濃度のオゾンを室内に取り入れられれば、人々に不快感を与えることはない。しかし、オゾンは極めて不安定な性質を持ち、一定の濃度にコントロールするには常に濃度を観測する必要がある。問題は、現在濃度観測のセンサーが極めて高価なことである。オゾン濃度センサーが容易に使えないため、オゾン濃度のコントロールは未だ一般的に実現できていない。

 もし廉価でオゾン濃度を安全にコントロールできれば、オゾン利用は容易に世間に受け入れられ、有人空間におけるオゾン利用も進むであろう。よってオゾン濃度センサーのコストの大幅削減を一大課題として取り組むべきである。

 コンクリートジャングルの大都市では、そもそもオゾン濃度は低い。人が集まる室内ではなおさらそうである。コロナウイルスが世界的に蔓延している現在、室内のオゾン濃度基準を上げ、有人空間でのオゾンによる殺菌消毒利用を模索すべきであろう。幸いにして張躍氏は、オゾン生成機能を持つ遠大産の静電空気浄化機を、コロナウイルス対策のために建てられた中国武漢の救急病院である火神山ICU病棟と方艙病院にすでに寄付した。院内感染の防止に役立ったと好評を得ている。最近、遠大グループは韓国からも、オゾン消毒殺菌機能を持つ空気清浄機付きのコロナウイルス対策用救急病院建設を依頼された。

 オゾンと微生物との関係は地球生命体の絶妙なバランスを表している。もしオゾン層の保護が無ければ、ウイルスや細菌などの微生物は存在しなかった。他方、オゾンの強い酸化力もウイルスの天敵である。人類は未だオゾンに対する認識が不十分である。筆者はオゾンに対する偏見と過度な警戒心を捨て、オゾンにまつわる数々の謎を解き明かし、オゾンの特性を十分に理解し、活かしていくべきであると考える。とりわけこの新型コロナウイルスとの戦いの中では、オゾンの力を十分に発揮させていく必要がある。

 

中国網日本語版(チャイナネット)2020年3月19日