【刊行によせて】中国の発展は都市化のクオリティ向上で/徐林・中米グリーンファンド会長


徐 林
中米グリーンファンド会長、元中国城市和小城鎮改革発展センター主任、元中国国家発展改革委員会発展計画司司長


 都市化は、過去40年における中国経済社会高速発展の原動力の一つである。なぜなら都市化の本質は構造改革であり、都市と地域の制約を超え、人口の流動性と再配置が促されるからである。改革開放以来、中国は人類史上最もハイスピードな都市化を経験した。40年間で、中国の都市化率は年平均1%ポイント向上してきた。その結果、現在、都市化率は57.4%に達し、都市の常住人口は7.9億人に膨れ上がった。

 2017年に開催した中国共産党第19回全国代表大会は、中国がすでに高度成長からハイクオリティな発展にシフトする段階にあると宣言した。ハイクオリティな発展には、ハイクオリティな都市化と都市発展が必要である。その意味では今後なお、都市化は中国のさらなる発展の重要なエンジンとなる。

1.問題と挑戦

 中国の急速な都市化の中で、軽視できない問題も数多く累積している。

(1)数多くの都市常住人口が市民化されず、都市内部で二元構造が発生

 目下、中国では農村から都市へ移動した人口が約2.7億人に達し、また戸籍の移動を伴わない都市間移動の人口も8,000万人以上いる。問題なのは、戸籍制度が障害となり、こうした人々が居住都市で市民待遇を受けられず、単なる労働力として利用され、社会的に公平な福祉の待遇を受けられないまま差別されていることである。彼らは事実上、中国の都市発展に多大な犠牲を強いられている。都市繁栄の背後には、こうした人々の辛酸、犠牲、そして諦めがある。非戸籍住民にとって都市には市民感覚が持てず、生活の安定感を欠いている。

(2)拡がる都市空間の非効率利用

 中国の多くの都市では、数多くの工業園区、新区そしてニューシティが計画されている。過剰な開発がゴーストタウン、旧市街地の空洞化などの問題をもたらしている。これまで「土地の都市化が人口の都市化」より進んだことで、都市の土地利用率を低下させてきた。こうした傾向をもたらした地方財政における土地売買への依存などについて真剣に改革していく必要がある。

(3)過剰なインフラ整備

 野心的な都市計画は往々にして過大なインフラ投資を生む。過剰なインフラ整備は、現在、中国の地方政府の債務負担を増大させる大きな要因となっている。

(4)都市の開放性と寛容性の欠如

 中国では大規模人口のマネージメントに対する憂慮から、都市の人口規模が大きくなればなるほど開放性と寛容性が低くなる現象がある。このような開放性と寛容性を犠牲にするような都市のマネージメントは、都市の活力と創造力を弱めている。

(5)都市計画における先見性の欠如

 中国では都市計画における先見性が欠如している。人口予測は過小であったり過大であったりする場合が多く、都市建設はそれに翻弄されている。背後には、都市発展のメカニズムに対する理解のなさがある。

(6)産業構造転換の遅れ

 中国では、計画経済時代に作り上げられた工業都市と資源開発型都市が多数ある。これらの都市では産業構造の転換が遅れ、産業力の低下に伴い、人口が外部へと流出し、衰退の危機にさらされている。

2.方向性と施策

 中国の都市化と都市発展のクオリティの向上をはかるには、下記の方向性と施策が必要だ。

(1)農村からの移動人口の市民化

 中国共産党第19回全国代表大会では、農村からの移動人口の市民化の加速を明確に求めた。すべての都市がこの施策に基づき、すでに都市で安定して就業し暮らしている農村からの移動人口に対し、都市戸籍登録をするかしないかを自主的に選ぶ権利を与えるべきである。

 人口流動が主として経済の遅れた地域から経済発展地域へと進むことから、移動人口の市民化は、中国経済の空間分布と人口の空間分布の最適化をはかることから始まる。ゆえに数多くの農村人口が都市に移動し、多彩な現代文明の薫陶を受け、子女の教育条件が改善されれば、中国人口の質的向上と現代化とに大いに役立つであろう。

(2)都市産業の強化

 都市は絶えまない産業高度化を通して持続発展を可能とする。ただし、これは政府が直接産業に投資することを意味するものではない。政府がなすべきことは、インフラ整備や人材育成を含むビジネス環境の整備である。

(3)都市マネージメントの改善

 都市社会は市民社会である。この意味では、都市マネージメントに住民参画を促すべきである。これは都市の開放性と寛容性そして吸引力の根源となる。現在、世界で最も活力があり、イノベーティブな都市はすべて開放的で寛容性のある都市である。中国も例外ではない。なぜイノベーティブな人材と企業が深圳に集積するかというと、深圳が移民都市であり、中国の他の都市と比べて、より開放性と寛容性を備えているからである。

(4)メガロポリス主体の都市空間作り

 メガロポリスを主体とした大中小都市を協調発展させる都市空間作りを進めるべきである。そのために都市計画の理念、制度、方法の改革を加速しなければならない。メガロポリスのフレームワークの中で、個々の都市の経済産業、インフラ整備、生態保護、社会生活などを総合的にとらえ、最適化を図るべきである。

(5)新たな都市インフラ整備融資制度

 都市インフラ整備は膨大な投資を必要とする。現在、中国の多くの都市ではインフラ整備における融資困難と、都市の債務リスクの双方を抱えている。その原因の一つは、都市インフラ建設の規模が過大で、投資規模と債務規模を拡大したことにある。もう一つは、有効な投融資メカニズムの欠如である。ゆえに、都市インフラ整備における新しい投融資制度の開発が必須である。

(6)都市建築の品質向上

 中国は40年間で都市化率を40%引き上げた。各都市で建築物が雨後の筍のように立ち並んでいる。世界でも例を見ない巨大な建設ラッシュが中国で起こっている。しかし現在、建築物の品質問題も露呈している。ゆえに中国は都市建築の品質向上を急がなければならない。建築設計と工事標準を迅速に改め、建築物の耐久年数を上げ、低炭素かつ省エネを標準とすべきである。

3.〈中国都市総合発展指標〉の意義

 上述したように、都市化と都市発展のクオリティは極めて総合的な概念である。この問題に取り掛かるにあたり、私たち中国国家発展改革委員会発展計画司は東京経済大学の周牧之教授が率いる雲河都市研究院と協力し、〈中国都市総合発展指標〉を開発した。中国の地級市以上の297都市を統一された指標システムによって評価し、総合的に都市発展クオリティをはかることができた。

 もちろん、指標体系自身も都市評価を通じて議論し改善し続けるべきであろう。最も大切なのは、こうした評価の継続である。それによって、都市の発展クオリティを年毎にシステマティックに観測できると同時に、時間軸に沿って都市発展の歴史も記録できる。


プロフィール

徐 林Xu Lin

 1962年生まれ。南開大学大学院卒業後、中国国家計画委員会長期計画司に入省。アメリカン大学、シンガポール国立大学、ハーバード・ケネディスクールに留学した。中国国家発展改革委員会財政金融司司長、同発展計画司司長を歴任。2018年より現職。
 中国「五カ年計画」の策定担当部門長を務め、地域発展計画と国家新型都市化計画、国家産業政策および財政金融関連の重要改革法案の策定に参加、ならびに資本市場とくに債券市場の管理監督法案策定にも携わった。また、中国証券監督管理委員会発行審査委員会の委員に三度選ばれた。中国の世界貿易機関加盟にあたって産業政策と工業助成の交渉に参加した。

 編書:『環境・社会・経済 中国都市ランキング—中国都市総合発展指標』(2018年、NTT出版、周牧之と共編著)、『中国城市総合発展指標2016』(2016年、人民出版社〔中国〕、周牧之と共編著)。

(『環境・社会・経済 中国都市ランキング 2017―中心都市発展戦略』に収録