【レポート】世界の二酸化炭素排出構造と中国の課題

周牧之 東京経済大学教授

編者ノート:二酸化炭素(CO2)排出量の急増による地球温暖化は、世界各地で異常気象災害を頻繁に引き起こしている。地球規模の気候変動はもはや人類共通の課題となっている。このような背景から、2021年4月22日開催の気候変動サミット(Leaders’ Summit on Climate)に出席した40カ国・地域の首脳がこぞって、2030年までのCO2排出量削減目標を明確に示した。

 中国は、今回のサミットで、「CO2排出量のピークアウトとカーボンニュートラルを生態文明建設の全体計画に組み込む」と宣言した。中国はすでに2020年9月22日の国連総会で「CO2排出量を2030年までにピークアウトさせ、2060年までにカーボンニュートラルを達成するよう努力する」と誓った。

 現在、世界のCO2排出構造はどのようになっているのだろうか?CO2排出量に影響を与える主な要因は何か?各国が直面している課題とは?これらの問題について、周牧之東京経済大学教授が、CO2排出量上位30カ国のデータを分析し、論説した。


 21世紀最初の20年間は人類史上CO2排出量が最も増えた時代である。世界のCO2排出量を、3つに分けて考えると、①1979年までに積み上げた排出量は現在の54%と約半分に相当する。②1980〜1999年の20年間での増加分は現在の15.3%に相当する。③2000〜2019年の20年間での増加分は現在の30.7%を占めている。つまり、今日世界のCO2排出量の半分弱が1980年以降に増えたのである。さらに特筆すべきは、21世紀最初の20年間で増加したCO2排出量は、1980〜1999年の20年間に増加した分量と比べさらに2倍になったことである。21世紀におけるCO2排出量の急増ぶりは凄まじい。

1.  世界におけるCO2排出構造


 現在、CO2排出量が明確に把握できる79カ国・地域を概観すると、そのCO2排出量合計は世界の96.7%を占めている。

 2000〜2019年の20年間に、上記79カ国・地域のうち、アメリカ、イギリス、ドイツ、ウクライナ、日本、イタリア、フランス、ギリシャ、ベネズエラ、スペイン、チェコ、オランダ、デンマーク、ウズベキスタン、ルーマニア、フィンランド、ベルギー、スウェーデン、ポルトガル、ハンガリー、スロバキア、アイルランド、スイス、ブルガリア 、スロベニア、クロアチア、北マケドニア、ノルウェーの計28カ国がCO2排出量を削減している。これらの国々は、先進諸国と、経済的衰退に喘ぐ諸国の2つのグループに概ね大別できる。

 一方、その他51カ国は、この期間にCO2排出量が拡大し続けてきた。この51カ国の大半は発展途上国で、とくに中国を筆頭とした新興工業国のCO2排出量の増加は著しい。特に注目すべきは、これらの国のCO2排出量の増加規模が、前述の28カ国のCO2排出量の削減量よりもはるかに大きいことである。28カ国のCO2排出量削減量は51カ国のCO2排出量増加分のうち、僅か15.7%に過ぎない。つまり、この期間の世界CO2排出量を急増させたのは、発展途上国で急速に進む工業化と都市化であった。 

 今日の世界CO2排出構造には、以下の3つの特徴が挙げられる。

 1つ目は、CO2排出量を減らしている国と、いまだに排出量を増やし続けている国に二分できることである。

 2つ目は、世界CO2排出量が上位国に集中していることである。2019年では、中国、アメリカ、インド、ロシア、日本といったCO2排出量の上位5カ国が、世界CO2排出量の実に58.3%を占めている。つまり、世界CO2排出量の6割近くが、排出量上位5カ国で占められている。もう少し順位を拡大すると、排出量上位10カ国で世界CO2排出量の67.7%、排出量上位30カ国で同87%を占めていることがわかる。気候変動サミットにおいて、第2位のアメリカと第5位の日本は、2030年までにCO2排出量をそれぞれ50〜52%(2005年比)、46%(2013年比)削減すると約束した。両国のチャレンジングな目標は、劇薬としてエネルギー・産業構造の高度化を推し進めるであろう。

 3つ目は、世界CO2排出量シェア28.8%の中国が断トツトップに立っていることである。2019年の中国CO2排出量は、第2位から第5位までのアメリカ、インド、ロシア、日本の4カ国の合計値にほぼ匹敵する。そのため、中国が国連総会で「2060年までにカーボンニュートラルを達成するよう努力する」と表明したことは、意義が大きいと同時に、大変なチャレンジでもある。

2.CO2排出量に関わる6大要素


 CO2排出量を考える上で欠かせない基本的な要素は6つある。

 1つ目は「エネルギー消費量当たりCO2排出量」で、「エネルギー炭素集約度」とも呼ばれる。この指標は、一次エネルギー源の品質と効率に関連している。例えば、現在、石炭が一次エネルギーの主役である中国のようなエネルギー構造では、エネルギー消費量当たりCO2排出量が多い。今後、火力発電の一次エネルギーを石炭から天然ガスに転換することや、風力、太陽光、水力などの再生可能エネルギーの割合が増えること、また原子力発電の発展などにより、エネルギー消費量当たりCO2排出量は減少していくと考えられる。

 2つ目は「GDP当たりエネルギー消費量」で、「エネルギー効率」とも呼ばれる。工業化の初期においてはこの指標は悪化するが、工業化の進展に伴う産業構造の変化、低効率生産能力の淘汰、技術の向上などにより、エネルギー効率は好転する。したがって、長期的には、一国のGDP当たりエネルギー消費量の曲線は、工業化の初期には急上昇し、工業化が順調に進めば、いずれ減少傾向を迎えることになる。

 3つ目は「GDP当たりCO2排出量」で、「炭素強度」とも呼ばれる。この指標は、一国の経済とCO2排出量の関係を示す重要な指標である。エネルギー消費量当たりCO2排出量とGDP当たりエネルギー消費量の相互作用により、炭素強度のレベルが決まる。

 4つ目は、経済発展の度合いを測る「一人当たりGDP」である。経済発展が、産業活動を拡大し、衣食住および交通など生活パターンの近代化をもたらす。よって、一人当たりエネルギー消費量が増加し、それに相まってCO2排出量も増加する。

 5つ目の大きな要因は「人口の規模と構造」である。人口が多くなるほど経済規模も大きくなり結果としてCO2排出量も多くなる。また、人口構造がエネルギー消費に与える影響も無視できない。

 6つ目は「一人当たりCO2排出量」で、上記5つの要素の相互作用の結果が最終的にこの指標に反映される。実際、これは一国におけるCO2排出量をはかる最も重要な指標である。一人当たりCO2排出量の変曲点がCO2排出量の本当の意味でのピークアウトとなる。

 一般的に、社会経済が一定の発展水準に達すると、エネルギー当たりCO2排出量(エネルギー炭素集約度)とGDP当たりエネルギー消費量(エネルギー効率)の変曲点が先に現れ、一人当たりCO2排出量のピークアウトはその後になる。その意味では、CO2排出量の本当のターニングポイントは、一人当たりCO2排出量が持続的に減少し始めたときだと捉えるべきである。

3.中国の成果と課題


 WTO加盟後、中国経済は、輸出と都市化という2つのエンジンを原動力に大きく発展した。2000年から2019年の間に、中国の輸出規模は10倍、アーバンエリア(建築用地やインフラ用地として一定の基準を満たす都市型用地の面積)は2.9倍、そして実質GDPは5.2倍になった。

 高い経済成長により、2000年に2,151米ドルだった中国の一人当たり実質GDPは、2019年には9,986米ドルと4.6倍になった。大規模な産業発展、急速な都市化、巨大な人口の生活パターンの近代化により、エネルギー消費量が急速に増加し、それが中国のCO2排出量増加の基本的な原因となっている。

 幸い、中国ではエネルギー当たりCO2排出量(エネルギー炭素集約度)、GDP当たりエネルギー消費量(エネルギー効率)、GDP当たりCO2排出量(炭素強度)のいずれもがすでに変曲点に達し、明確な減少傾向を示している。エネルギー当たりCO2排出量では、中国は2000年に比べて2019年に1割減少した。この間、実質GDP当たりエネルギー消費量とGDP当たりCO2排出量はともに4割も減少した。これらは、中国が近年、省エネの奨励、クリーンエネルギーの開発に多大な努力を払ってきた結果である。中国が推進する循環低炭素型の発展は、すでに一定の成果を上げている。

 しかし中国の一人当たりCO2排出量は、2000年から2019年の間に2.6倍になった。エネルギー当たりCO2排出量、GDP当たりエネルギー消費量、炭素強度のいずれもピークアウトしたが、一人当たりCO2排出量はまだ変曲点に達していない。一人当たりCO2排出量の変曲点にどう早く到達させるかが、「2030年までにCO2排出量のピークアウトに努め、2060年までにカーボンニュートラルを目指す」公約を達成する鍵となる。

4.CO2排出量上位30カ国・地域の分析


 CO2排出量上位30カ国は、世界のCO2排出量の90%近くを占めるだけでなく、世界の人口の69%、GDPの84%を生み出している。さらに、この30カ国は、2000年から2019年の世界のCO2排出量の増加分の92.7%をもたらしている。そのため、まずはこの30カ国のCO2排出状況を徹底的に分析する必要がある。

  (1)CO2排出量の増減

 2000年から2019年にかけて、世界のCO2排出量は4割増加している。しかし、CO2排出量上位30カ国は、アメリカ、日本、ドイツ、イギリス、イタリア、フランス、スペインの欧米主要7カ国ではCO2排出量が減少した。そのうち、イギリスは3割、ドイツ、イタリア、フランスは2割、アメリカ、日本、スペインは1割のCO2排出量削減を実現した。

 他方、中国やインドを筆頭に、CO2排出量が増加している国が23カ国もある。しかも、これらの国のCO2排出量の増加は、上記7カ国の削減効果をはるかに上回った。7カ国のCO2排出量の削減は、23カ国のCO2排出量の増加分の僅か13.2%にしかなっていない。結果、世界のCO2排出量は急増した。

 この間、中国とインドのCO2排出量はそれぞれ2.9倍、2.6倍にも膨らんだ。中国は、2005年にアメリカを抜いて世界最大のCO2排出国となった。インドも、日本とロシアを抜いて世界第3位のCO2排出国となった。CO2排出量では、ベトナムは6.1倍と増加スピードが最も速く、世界第22位のCO2排出国となった。

  (2)一次エネルギー消費量の増減

 2000年から2019年にかけて、世界の一次エネルギー消費量は48%増加した。中でも中国の一次エネルギー消費量は3.3倍となり、この期間で一次エネルギー消費量が最も拡大した国であった。2009年に中国は一次エネルギー消費量でアメリカを抜いて世界第1位となった。インドの一次エネルギー消費量も2.6倍となり、世界第3位の一次エネルギー消費国となった。一次エネルギー消費量が5.5倍になったベトナムは、この期間の増加スピードが最も速く、一次エネルギー消費量で第22位だった。

 逆に、この期間に一次エネルギー消費を削減させた国は世界で22カ国存在する。そのうち、一次エネルギーの削減量が大きい順に、日本、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、アメリカの6カ国である。これらの国は、すべて先進国でCO2排出量上位30カ国に含まれる。特筆すべきはアメリカがこの期間、実質GDPの45.4%増を実現させたと同時に、一次エネルギー消費削減を達成した。すなわち、先進諸国の省エネとCO2排出削減への取り組みは見事に実を結んだ。

  (3)エネルギー消費量当たりCO2排出量(エネルギー炭素集約度)の増減

 2000年から2019年にかけて、世界のCO2排出量上位30カ国・地域は、インド、日本、インドネシア、南アフリカ、ベトナム、カザフスタンを除き、エネルギー消費量当たりCO2排出量が減少した。このうち、イギリスとタイは2割、中国、アメリカ、ロシア、ドイツ、イラン、サウジアラビア、カナダ、ブラジル、オーストラリア、トルコ、イタリア、ポーランド、フランス、アラブ首長国連邦、台湾(中国)、スペイン、シンガポールはエネルギー消費量当たりCO2排出量を1割削減した。

 アメリカでは、クリントン大統領の時代から再生エネルギーの開発とCO2排出量削減のための政策を打ち出し、その後大統領の交代により何度か浮き沈みはあったものの、エネルギーミックスの高度化が図られている。2017年にアメリカ西部の11州では、総電力量の42%もが再生可能エネルギーで賄われている。対照的に、同国では石炭火力は衰退し続けている。特筆すべきは、カーター大統領時代に始まった小規模天然ガス火力発電を開発する政策によって、2002年には小規模天然ガス火力発電がアメリカの電源構成で最大のシェアを占めるまでになった。

 先進国の中で日本は、2011年の福島第一原子力発電所事故により全国の原子力発電所が停止したため、火力発電に傾斜しなければならなかった。特に電源構成における石炭火力の占める割合が30.1%(2019年)にまで高まったため、エネルギー消費量当たりCO2排出量が増加した。

 発展途上国では、石炭火力発電は重要な電源となっている。例えば、東南アジアでは、電源構成に占める石炭火力発電の割合が46%となっている。

 現在、如何にして迅速に石炭火力発電から他のクリーンエネルギー発電に移行させていくかが、カーボンニュートラを実現させる最重要課題の1つである。2021年4月21日、アントニオ・グテーレス国連事務総長が日本経済新聞に寄稿し、2030年までに先進国は石炭火力発電を完全に停止し、2040年までにその他の国も石炭火力発電を完全に停止する必要があると提唱した。

 中国の電源構成は石炭火力発電に大きく依存している。中国のエネルギー消費量当たりCO2排出量は減少しているものの、一次エネルギー消費構造に占める石炭の割合は依然として57.7%と極めて高い。エネルギー構造の高度化が求められる。

 2021年4月22日に開催された「気候サミット」では、中国は「石炭発電プロジェクトを厳格に抑え、第14次5カ年計画期間中には石炭消費量の増加を厳格に抑制し、第15次5カ年計画期間中には確実に削減していく」と公約した。これは、中国が一次エネルギー構造の高度化を加速させることを意味する。 

 上記30カ国・地域のエネルギー消費量当たりCO2排出量の分析で、技術進歩、設備投資、エネルギーミックスの高度化により、ほとんどの国でエネルギー消費量当たりCO2排出量が減少し続けていることが浮かび上がる。しかし、日本のように原子力発電所の事故によりエネルギーミックスが急激に悪化したことや、インド、インドネシア、ベトナムのように急激な工業化によるエネルギー消費量当たりCO2排出量が増大した例もある。

  (4)GDP当たりエネルギー消費量(エネルギー効率)の増減

 2000年から2019年の間に、世界のCO2排出量上位30カ国・地域は、イラン、サウジアラビア、ブラジル、タイ、ベトナム、アラブ首長国連邦を除き、GDP当たりエネルギー消費量が減少した。中でも、中国、ロシア、イギリス、ポーランドが4割、アメリカ、日本、ドイツ、韓国、フランス、台湾(中国)、カザフスタンが3割、インド、インドネシア、カナダ、南アフリカ、オーストラリア、イタリア、スペイン、マレーシアが2割、メキシコ、トルコ、シンガポール、エジプト、パキスタンは1割、GDP当たりエネルギー消費量を減少させた。

 このように、大半の国では、技術進歩、設備投資、エネルギーミックスの高度化により、エネルギー効率が向上している。その結果、世界のGDP当たりエネルギー消費量は、2000年から2019年の間に2割も大幅に減少した。もちろん、アメリカの制裁により経済状況が悪化したイランや、急速な工業化によりエネルギー効率が悪化したベトナムなど、例外はある。GDP当たりエネルギー消費量は、イランでは5割、ベトナムでは6割増加した。

  (5)GDP当たりCO2排出量(炭素強度)の増減

 2000年から2019年の間に、世界のCO2排出量上位30カ国・地域は、イラン、サウジアラビア、ベトナム、アラブ首長国連邦を除き、実質GDP当たりCO2排出量は減少している。中でも、実質GDP当たりCO2排出量を5割削減したイギリスとポーランドは、炭素強度の減少幅が最も大きい。また、中国は炭素強度を4割と大幅に削減した。同様に、アメリカ、ロシア、ドイツ、フランス、台湾(中国)も、4割の炭素強度削減を実現させた。韓国、カナダ、オーストラリア、イタリア、スペイン、カザフスタンは3割減、インド、日本、南アフリカ、トルコ、マレーシア、シンガポール、エジプトは2割減、インドネシア、メキシコ、タイ、パキスタンは1割減となった。

 しかし炭素強度が増加した国は4カ国ある。サウジアラビアとアラブ首長国連邦は1割、イランは4割、ベトナムは8割、実質GDP当たりCO2排出量が増加した。

 主要なCO2排出国の炭素強度が大幅に低下した結果、2000年から2019年の間に、世界の実質GDP当たりCO2排出量は18.1%減少した。

 中国は炭素強度を下げる努力で大きな成果を上げており、現在の炭素強度はインドの76.1%、ロシアの64.9%、ベトナムの60.3%である。しかし、先進国と比較すると未だ大きな隔たりがあり、現在、中国の炭素強度は、アメリカと日本の水準の2.8倍、ドイツの3.6倍、イギリスの5.5倍、フランスの6倍となっている。そのため、第14次5カ年計画では、「GDP当たりCO2排出量の抑制に重点を置き、それを補完する形で二酸化炭素排出総量の抑制を行う」としている。いかにして炭素強度を急速に低減させ、低炭素発展モデルを実現させるかが、極めて大きな挑戦である。

5.CO2排出量上位30カ国地域におけるCO2排出量のピークアウト分析


 本レポートでは、CO2排出量ピークアウトの分析において、単年度の異常値による混乱を避けるため、「移動平均」の概念を導入し、「移動平均線」によるCO2排出量のピークアウト分析を行っている。移動平均とは、一定期間のデータを平均化し、その平均値を時間軸で結んだ移動平均線によってトレンドを分析する手法である。

 本稿では、5年間の移動平均値を算出し、1980年から2019年の間で、各国の一人当たりCO2とCO2排出量という2つの主要指標を分析する。これにより変曲点やトレンドをより正確に判断し、CO2排出量や省エネ・CO2排出削減における各国のパフォーマンスを評価する。

 (1)一人当たりCO2排出量のピークアウト分析

 一人当たりCO2排出量の移動平均線の分析から、CO2排出量上位30カ国・地域のうち、アメリカ、ロシア、日本、ドイツ、サウジアラビア、カナダ、南アフリカ、メキシコ、ブラジル、オーストラリア、イギリス、イタリア、ポーランド、フランス、スペイン、マレーシア、エジプトなど17カ国がすでにピークアウトし、一人当たりCO2排出量が継続的に減少する傾向にある。

 しかし、中国、インド、イラン、韓国、インドネシア、トルコ、タイ、ベトナム、アラブ首長国連邦、台湾(中国)、カザフスタン、シンガポール、パキスタンなどの13カ国・地域では、一人当たりCO2排出量がまだ増加傾向にある。

 世界全体で見ると、一人当たりCO2排出量は2011年にピークを迎え、その後は減少傾向にある。世界の一人当たりCO2排出量が減少しているのは、第一に、先進国での排出削減努力が功を奏していることによる。

 2000年から2019年の間に、イギリスは一人当たりCO2排出量を4割、アメリカ、イタリア、フランス、アラブ首長国連邦は3割、ドイツとスペインは2割、日本、カナダ、オーストラリアは1割削減した。主要先進国では、省エネ・CO2排出削減に目覚ましい成果を上げている。

 しかし、中国に代表される新興工業国では、工業化、都市化、生活様式の高度化に伴うエネルギー消費量の増加により、CO2排出量が拡大している。この間、一人当たりCO2排出量は、中国では2.6倍、インドでは2倍、ベトナムでは5倍になった。カザフスタンは9割、インドネシアは8割、イランは7割、タイは6割、トルコ、マレーシア、シンガポールは4割、韓国、サウジアラビア、エジプト、パキスタンは3割、ブラジルは2割、ロシアと台湾(中国)は1割、一人当たりCO2排出量が増加した。新興工業国・地域の多くは、一人当たりCO2排出量を増加させ続けた。

  特に、現在の中国の一人当たりCO2排出量は、すでにイギリスやフランスを上回っていることは注目に値する。中国は一人当たりCO2排出量の早期ピークアウトを政策目標と据えるべきであろう。

 (2)CO2排出量のピークアウト分析

 CO2排出量上位30カ国・地域のCO2排出量の移動平均線を分析したところ、アメリカ、ロシア、日本、ドイツ、南アフリカ、メキシコ、ブラジル、イギリス、イタリア、ポーランド、フランス、スペインなど12カ国が、すでにピークアウトし、CO2排出量が減少傾向にあることが明らかとなった。

  一人当たりCO2排出量がピークアウトした17カ国と比較すると、サウジアラビア、カナダ、オーストラリア、マレーシア、エジプトなど5カ国はその中に含まれていない。つまりこの5カ国は、一人当たりCO2排出量はピークアウトしたものの、CO2排出量はまだピークアウトしていない。その主な理由は、人口の大幅な増加によるものと考えられる。2000年から2019年の間に、サウジアラビアは7割、カナダは2割、オーストラリアは3割、マレーシアは4割、エジプトは5割の人口増加となった。人口の大幅な増加は、CO2排出量のピークアウトを遅らせる。

 同じ状況はアメリカでも見られ、同国の人口は2000年から2019年の間に4,735万人増加しており、大量の人口増によって2つのピークアウトにラグが生じている。アメリカは、一人当たりのCO2排出量が2000年にピークアウトしたのに対し、CO2排出量が2007年になってようやくピークを越えた。

 現在、中国のCO2排出量の増大ぶりは鈍化しているものの、まだピークアウトしていない。中国政府は2030年までにCO2排出量をピークアウトする目標を掲げている。目下、各地域、各企業は削減に向かってアクションプラン策定を急いでいる。

6.中国とアメリカはグローバリゼーションの最大の推進者と受益者


 21世紀、世界はグローバリゼーションの新たな段階に入った。地球規模で貿易、投資、技術取引、人的交流が飛躍的に拡大している。輸出を例にとれば、2019年の世界の総輸出量を3分割すると、①1979年の輸出規模は現在の10.8%に過ぎない。②1980〜1999年の輸出純成長分だけで1979年当時の2倍以上になり、現在の総輸出量の23.2%に当たる。③2000〜2019年の輸出はさらに爆発的に伸び、この期間の増加分は現在の総輸出額の66%に当たる。つまり、今日の世界の輸出総額の70%は、21世紀に入ってから増えたものである。 富のメカニズムが国民経済からグローバル経済へと急速に移行していることは明らかである。

 グローバル化が富を爆発的に増加させた。2000年から2019年にかけて、世界の実質GDPは74.5%も増加した。この間、中国の実質GDPは5.2倍となり、世界の経済成長に最も貢献した国となった。他方その間、実質GDPを45.4%拡大させたアメリカは、成長率から見れば、世界平均を下回ったものの、その母数は巨大であるため、富の増大は著しかった。

 結果、この期間の世界の実質GDP増加分の半分近い49.6%が中国とアメリカによってもたらされた。そのうち、中国は32.2%、アメリカは17.4%で、GDP増加分のシェアで世界第1位と第2位を占めている。第3位から第10位までは、順にインド5.4%、イギリス2.4%、韓国2.3%、ドイツ2.1%、ロシア1.9%、インドネシアと日本1.8%、ブラジル1.7%となっている。第3位以降の国の割合は、中国やアメリカに比べて如何に小さいかがわかる。

 21世紀初頭、グローバリゼーションを推し進め、人類史上類を見ない富の大爆発時代を作ったのは、中国とアメリカの分業と協力だったと言えよう。中国とアメリカは、グローバリゼーションの最大の推進者であり、最大の受益者でもある。

 この間の経済成長と二酸化炭素排出量の関係はどうか。実質GDP成長率とCO2排出量増加率を見ると、CO2排出量の多い上位30カ国・地域は3つのグループに分類できる。

 第1のグループは、実質GDPの成長率が低く、CO2排出量の伸びがマイナスの国で、アメリカ、日本、ドイツ、イギリス、イタリア、フランス、スペインなど先進7カ国が属している。

 第2のグループは、経済成長率が中低速で、CO2排出量の増加が少ない国・地域である。このグループには、ロシア、イラン、韓国、サウジアラビア、カナダ、南アフリカ、メキシコ、ブラジル、オーストラリア、トルコ、ポーランド、タイ、アラブ首長国連邦、台湾(中国)、マレーシア、シンガポール、エジプト、パキスタンの18カ国・地域が含まれる。

 第3のグループは、経済成長が中高速で、CO2排出量が急激に増加している国である。インド、インドネシア、ベトナム、カザフスタンのアジア4カ国が含まれる。特にベトナムのCO2排出量の増加ぶりが際立っている。

 第4グループは、世界でも類を見ない高い経済成長率を持続的に達成している中国である。そのCO2排出量の伸び率は第3グループの平均レベルとほぼ同様である。

 

図 実質GDP成長率とCO2排出量増加率(2000-2019年)

 以上の分析から、21世紀の最初の20年間は、イノベーションとグローバリゼーションに推し進められ、世界の富が爆発的に増大した時代であったことがわかる。大分業によって大発展を遂げ、CO2も大排出した人類史上極めて特殊な時期であった。

 これまで築き上げた繁栄を守るため、次の時代、人類は地球規模で協力し、大幅な省エネ・CO2排出削減を進め、グリーン循環経済成長を実現し、気候変動に対処していく必要がある。

 2021年4月、解振華中国気候変動事務特使とアメリカのジョン・ケリー大統領気候問題特使が上海で気候変動問題に関する会談を行った。会談後に発表された共同声明で、中国とアメリカは互いに協力し、他国とも手を携え、気候変動問題に対処することを約束し、パリ協定の実施を強調した。

 国際エネルギー機関(IEA)は、2021年の世界のCO2排出量が昨年に比べて4.8%増加すると予想している。CO2排出量の増加圧力は依然として厳しい。グローバリゼーションの最大の推進者であり、その最大の受益者でもある中国とアメリカは、グリーン循環経済成長の牽引者となる義務を負う。


日本語版『世界の二酸化炭素排出構造と中国の課題』(チャイナネット・2021年5月19日)

中国語版『全球碳排放格局和中国的挑战』(中国網・2021年4月26日)

英語版『Global CO2 emissions and China’s challenges』(China Net・2021年5月8日、中国国務院新聞弁公室・2021年5月8日、China Daily・2021年5月9日)