貴陽市は、「中国中心都市&都市圏発展指数2020」の総合第29位にランクインした。同市は2019年度より2つ順位を下げている。
〈中国中心都市&都市圏発展指数〉は、〈中国都市総合発展指標〉の派生指数として、4大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる36の中心都市の評価に特化したものである。同指数は、これら中心都市を、全国297の地級市以上の都市の中で評価し、10大項目と30の小項目、116組の指標からなる。包括的かつ詳細に、中国中心都市の高品質発展を総合評価するシステムである。
貴州省の省都である貴陽市は、同省の政治、経済、文化、科学、教育の中心地であると同時に、中国南西部における交通の要衝である。同市は、名峰・貴山の南側に位置することから「貴陽」と名づけられた(古代中国では、山の北は「陰」、 南は「陽」と言う)。かつて、同市は竹が豊富に産出され、古代中国の五絃の楽器「筑」の産地として有名だったことから、略して「筑」とも称されている。また、緑が豊富で風光明媚な土地柄から「森の都」とも呼称され、中国初の「国家森林都市」にも指定されている。
2021年現在、同市の総面積は8,034平方キロメートルを有し(兵庫県と同程度)、GDPは約4,312億元(約8.6兆円、1元=20円換算)で、中国の都市の中で52位となっている。2020年末の常住人口は約599万人に至り、全国では65位の位置につけている。一方、常住人口成長率は3.4%と、全国18位に位置し、近年、中心都市の中でも人口増が著しい都市である。
同市は、亜熱帯モンスーン気候に属し、海抜約1100メートルの山間盆地に位置することから、1年を通じて気候は温暖、年間平均気温は15.3度である。夏の平均気温は23.2℃、最高気温は平均25~28℃、最も暑い7月下旬でも平均気温は23.7℃に過ぎず、最高気温が30℃を超える日数は少ない。避暑地として最高な気候を有することから、2006年政府から中国初の「避暑の都」に指定されている。
同市は、気候の快適性もさる事ながら、観光都市としても著名である。市内の殆どをカルスト地形が占めることから、非常に豊富な観光資源も有している。「紅楓湖」、「開陽峡谷生態公園」など、山、川、峡谷、湖、洞窟、滝、原始林などを特色とした高原特有の雄大な自然景観が、次々と人々を感動に誘う。また、市内には名跡も多く、「陽明洞」、「青岩古鎮」、「息烽集中営旧址」、「甲秀楼」や「黔霊山」、「青岩古鎮」、「香紙溝」などはいずれも古代中国文化の趣を漂わせている。多彩な少数民族の風情も内外の観光客にとっては魅力的である。同市の「国内旅行客数」は全国4位とトップクラスの成績を稼ぎ出している。
同市は、中国南西部における陸上交通の要衝として、本指標の大項目「広域中枢機能」は全国16位であり、そのうち、「航空輸送」は全国15位、「陸路輸送」は全国10位である。
近年、貴陽市は、デジタル経済における最先端の都市として脚光を浴びている。現在、同市には、アップルやテンセントを始めとして、国内外のビッグテック企業のデータセンターが相次いで建設されている。
貴陽市、ないしは貴州省は、中国の中でも山地が特に多い地域であり、地盤の安定性から地震が極めて少ない地域である。また、標高が高く、年間を通じて冷涼な気候なため、サーバー冷却コスト削減につながる。また、水資源が豊富なため、水力発電による電気代が安価である。このように、同市は、データセンターの設置に極めて適した環境を有する地理的優位性を備えている。
2014年に貴陽と安順にまたがる貴安新区が国家級新区に指定され、2015年には、中国唯一の「ビッグデータ先導試験区」として認定されている。
同市は、鉱物採掘と観光が中心的な産業であったが、ビッグデータ産業を主流とする発展にかじを切っている。今では、ビッグデータ都市の代名詞となるまでに成長を見せ、最新の「IT産業輻射力」は全国19位にまで躍進している。深圳のようなデジタルバレー都市としての発展を遂げるか、今後の貴陽市の動きは要注目である。
中国中心都市&都市圏発展指数2020
中国中心都市&都市圏発展指数2019
中国中心都市&都市圏発展指数2018
中国中心都市指数2017