【論文】増え続ける世界そして中国の人口をどう養うか?(Ⅱ)

How to feed the growing world and Chinese population?

周牧之 東京経済大学教授

■ 編集ノート: 
 誰が中国を養うのか?論文の後半は、中国が巨大な人口を如何に養ってきたか、また世界最大の食糧輸入大国としての中国が何処から何を輸入しているのか、について、周牧之東京経済大学教授が解き明かす。さらに『中国都市総合発展指標』のデータシステムを活用し、衛星データのGIS解析を駆使して、中国における都市レベルの食糧生産に関する実態を分析する。中国の農業生産性が最も高い地域はどこか。そして中国は将来、食糧問題にどう取り組むべきか。

(※論文前半はこちら)


1.『誰が中国を養うのか』の衝撃


 1995年にアメリカの学者レスター・ブラウンが著書『誰が中国を養うのか』[1]を発表した。同氏は、13億人口を持つ中国の食糧供給能力、そして世界の食糧供給網に及ぼす潜在的な影響に対して強い危機感を示した。

 ブラウン氏の主張に煽られ、当時の朱鎔基首相が急進的な食糧生産拡大政策を進めた[2]。しかし、その後中国の主食である小麦とコメの供給力が国内で満たされ、ブラウン氏の予言は当たらなかった。むしろ、食糧増産政策による過度な開墾が環境問題を引き起こした。その後、中国政府は傾斜面など一部の耕地を森林に戻す「退耕還林」政策[3]を採り、朱鎔基農業政策を修正した。

 図1では、1961年を起点とし、今日までの中国の人口、穀物耕地面積、穀物生産量、そして平均単位面積穀物生産量の推移を整理した。同図が示すように、中国の穀物生産量は人口増以上に増えてきた。この間、中国人口は約2.2倍になったのに対し、中国の穀物生産量は約5.9倍となった。しかし穀物耕地面積は僅か12%しか増えていない。つまり、中国で穀物生産量を伸ばした最大の要因は、耕地の拡大ではなかった。

 中国での穀物生産量増大の最大の要因は、単収(単位面積当たりの穀物収穫量)の伸びであった。中国も開墾による耕地の拡大よりは「緑の革命」で食糧供給力を伸ばした。さらに注目すべきは、この間、耕地単位面積当たりの穀物収穫量は、世界平均が3.1倍になったのに対して、中国は同5.3倍になった。言い換えれば、中国は「緑の革命」の優等生として土地の生産性を劇的に向上させた。

図1 中国人口、穀物生産量、穀物耕地面積、単収の推移(1961〜2021年)

出所:国連食糧農業機関(FAO)、オックスフォード大学Our World in Dataデータセットより作成。

 もっともその間、中国の経済発展に伴い、中国の一人当たりカロリー供給量も顕著に増加した。図2では1947年から2018年までの中国一人当たりの一日カロリー供給量(年)を示した。現在一人当たり一日カロリー供給量は食糧難の1960年当時に比べて、2.3倍となった。

 世界の8%の耕地と6%の淡水資源で18%の人口を養えたのは、中国の農業生産性の向上に因るものであった。

 中国の穀物生産性の向上は、中国の食糧供給を安定させ、小麦、コメといった主食の国際価格の安定化にも寄与した。

図2 中国一人当たりの一日カロリー供給量(1947〜2018年)

出所:国連食糧農業機関(FAO)、オックスフォード大学Our World in Dataデータセットより作成。

2.なぜ中国は大豆とトウモロコシの一大バイヤーに


 中国が小麦とコメといった主食で自給自足であるのに対し、大豆とトウモロコシなど飼料穀物に関しては国際市場に依存している。

 図3は、2022年中国の主要穀物輸入量を示している。同図から中国の穀物輸入においては主に大豆、トウモロコシ、高粱といった飼料穀物が主体であることを確認できる。2022年、これら3種の穀物が中国の穀物輸入全体に占める割合は89.7%に達した。

図 3 中国の主要穀物輸入量(2022年)

出所:国連貿易開発会議(UNCTAD)データセットより作成。

 改革開放後、中国で肉の消費量は急激に上がり続けた。図4が示すように、2020年、中国の年間一人当たりの肉の消費量は62キロに達した。世界平均の同42.3キロをはるかに超え、肉食の比重が高いアメリカの同126.7キロには及ばないものの、日本の同54キロを超えている。中国の膨大な人口規模に鑑み、肉の消費量を支える畜産業の大発展が欠かせない。

図4 国・地域別一人当たり食肉消費と一人当たりGDP(2020年)

出所:オックスフォード大学「Our World in Data」データセットより引用、加筆。

 図5は、1979年から2022年までの中国の食肉生産量を表している。1979年改革開放直後の1,062万トンから今日2022年の9,328万トンまで大きく伸びた。

 食肉生産に使用される飼料穀物の成分として、特にトウモロコシと大豆が重要である。中国食肉生産の大きな伸びを支えたのが飼料穀物の海外調達であった。

図 5 中国の食肉生産量 (1979~2022年)

出所:中国国家統計局データセットより作成。

 図6は2022年世界地域別大豆輸入量を示している。同図で中国が78.9%のシェアを持つ世界最大のバイヤーであることが確認できる。中国の大豆輸入の59.7%はブラジルからであり、32.4%がアメリカからである。

 図7は2022年世界地域別トウモロコシ輸入量を示している。同図で中国が37.8%のシェアを持つ世界最大のバイヤーであることが確認できる。中国のトウモロコシ輸入の72.1%はアメリカからであり、25.5%がウクライナからである。

 飼料穀物の最大のバイヤーとして世界穀物貿易に依存する中国にとって、安定的な供給先の確保が重要である。その重要性は米中貿易摩擦や、ロシアによるウクライナ侵攻によって更に強まっている。

図 6 世界地域別大豆輸入量(2022年)

注:HSコード[4]は1201。
出所:国連「UN Comtrade」データセットより作成。

図 7 世界地域別トウモロコシ輸入量

注:トウモロコシのHSコードは1005。
出所:国連「UN Comtrade」データセットより作成。

3.中国穀物生産の都市別実態分析


 中国の国土の中で、経済活動が行われる主なエリアは地級市[5](日本の都道府県に相当)以上の297都市[6]から成る。これらの都市は中国の人口の94.7%、GDPの96.6%を占めている。中国における食糧生産構造を知るには、都市レベルでの実態把握が必要である。本論は、『中国都市総合発展指標』のデータシステムを活用し、衛星データのGIS解析を駆使して、中国における都市レベルの食糧生産に関する実態分析に挑む。『中国都市総合発展指標』は、雲河都市研究院と中国国家発展改革委員会発展戦略和計画司(局)が共同開発した都市評価指標である。2016年以来毎年、内外で発表してきた。同指標は、環境・社会・経済という3つの軸(大項目)で中国の都市発展を総合的に評価している。評価対象は、中国297地級市以上都市の全てをカバーし、評価基礎データは882個に及ぶ[7]

(1)耕地面積

 図8は、『中国都市総合発展指標』がGISを活用して算出した「耕地面積」[8]のランキングである。上位10都市はチチハル、重慶、ハルビン、ジャムス、綏化、フルンボイル、黒河、通遼、長春、南陽である。また、11位から30位にかけての都市は白城、松原、信陽、臨沂、鶏西、双鴨山、赤峰、駐馬店、塩城、四平、濰坊、大慶、滄州、滁州、吉林、牡丹江、荊州、周口、遵義、菏沢となっている。

 上記トップ10都市の耕地面積は全国の15.4%を、トップ30都市は同31.4%を占めている。つまり297都市の10分の1に当たるトップ30都市は、中国耕地面積の3分の1弱を占める。これら都市は主に黒竜江省、吉林省、内モンゴル自治区、山東省、河北省、河南省、安徽省、江蘇省といった東北・華北の平原地帯に位置している。これらの地域は、小麦の主要な生産地として、食糧供給の基盤となっている[9]。これに対して長江以南は、重慶と遵義の2都市のみがトップ30入りした。そもそも直轄市である重慶の行政エリアは桁違いに大きい。

図8 中国都市耕地面積ランキング トップ30都市

出所:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標』データセットより作成。

(2)穀物生産量

 図9は、中国都市の「穀物生産量」ランキングトップ30を示している。トップ10都市は、ハルビン、チチハル、長春、綏化、ジャムス、重慶、周口、通遼市、駐馬店、菏沢となる。次いで11位から30位にかけては、徳州、商丘、南陽、塩城、松原、赤峰、フルンボイル、鶏西、信陽、双鴨山、聊城、保定、邯鄲、阜陽、黒河、白城、亳州、徐州、石家荘、淮安という順序となる。

 上記トップ10都市の穀物生産量は全国の15.3%を、トップ30都市は同32.9%を占めている。つまり297都市の10分の1に当たるトップ30都市は、中国穀物生産量の3分の1を占める。これら都市は耕地面積トップ30同様、主に東北・華北の平原地帯に位置している。耕地面積トップ30と比べて、穀物生産量トップ30には江蘇省と安徽省の都市が増えたことが目立つ。これに対して、南の都市は、重慶のみになった。

図 9 中国都市穀物総生産量ランキング  トップ30都市

出所:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標』データセットより作成。

(3)耕地生産性

  しかし耕地面積当たりの第一産業のGDPでランキング分析を行うと、様相が一転する。図10は中国都市の耕地面積当たり第一次産業GDPで示した耕地生産性ランキングである。トップ10都市は三明、竜岩、福州、寧徳、舟山、汕頭、南平、漳州、楽山、麗水の順に並ぶ。11位から30位までの都市は、茂名、莆田、潮州、長沙、株洲、三亜、台州、肇慶、海口、巴中、儋州、萍郷、杭州、紹興、寧波、黄山、掲陽、泉州、広州、仏山である。

 このトップ30都市はすべて長江以南にある。名を連ねる福建省、浙江省、広東省、湖南省、海南省、四川省を中心とした南部の都市が上位にある背景として、これらの地域の温暖かつ湿潤な気候が考えられる。穀物生産はコメが中心で、さらに茶、果物、タバコ、野菜など付加価値の高い農産品生産が盛んである。また、これらの地域は北方と比べて耕地面積が小さい。豊かで資金力があるため農業生産に資金と手間を投じる傾向が強い。結果、耕地の生産性は高まる。ランキングではさらに福州、長沙、杭州、紹興、寧波、泉州、広州、仏山といった大都市の名が目立つ。これは、大都市近郊農業の優位性を示している。

図10 中国都市耕地生産性ランキング トップ30都市

出所:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標』データセットより作成。

(4)穀物生産輻射力

 本論はさらに、穀物生産に関連する都市の広域的影響力を分析するため、「穀物生産輻射力」[10]を用いた。図11は、中国都市穀物生産輻射力ランキングトップ30を示す。上位10都市は順にジャムス、チチハル、綏化、ハルビン、長春、通遼、松原、双鴨山、鶏西、周口であり、11〜30位にはフルンボイル、徳州、駐馬店、黒河、白城、赤峰、塩城、菏沢、商丘、四平、大慶、聊城、信陽、鉄嶺、滁州、鶴崗、淮安、亳州、南陽、吉林が続く。

 中国都市穀物生産輻射力ランキングトップ30にも、主に東北・華北の平原地帯の都市が中心であり、且つすべて長江以北の都市である。

 「中国都市穀物生産輻射力」と「中国都市穀物生産量」、「中国都市耕地面積」について相関分析[11]を行ったところ、相関係数は各々0.7、0.6に達した。つまり都市穀物生産輻射力は、穀物生産量と耕地面積と相関関係を持つ。

 一方、「中国都市穀物生産輻射力」と「中国都市耕地生産性」について相関分析を行ったところ、その相関係数は-0.3であった。つまり、穀物生産輻射力が高い都市は、必ずしも土地生産性は高くない。これは小麦生産を中心とする北方の穀物生産地域の収入水準が低いことを示している。北方と比べ、中国南方地域では耕地面積は狭いものの、その収入水準は高い。

図11 中国都市穀物生産輻射力ランキング トップ30都市

出所:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標』データセットより作成。

4.中国穀物供給の安定化を図るには


 上記の分析が明らかにしたのは、穀物生産量を増やすには耕地の拡大よりも農業生産性を高める方が効果的だということである。中国は「緑の革命」の優等生として小麦とコメのほぼ100%の自給を成し遂げた。しかし、過度な化学肥料と農薬使用で、土壌汚染や健康被害などの問題も引き起こした。また、農業収入の南北格差が依然として大きい。今後、農業生産に、より高い投資を注ぎ、技術とインフラレベルの向上で、生産量と品質そして収入の向上を継続して計ることが欠かせない。とくに農業生産性において南北格差が顕著であるため北方地域における農業生産性の向上が肝要である。

 一方、大豆、トウモロコシといった飼料穀物の対外依存構造は、そう簡単に変えることはできない。そのためには安定した輸入先の確保が不可欠である

図12 ユーラシアランドブリッジ構想

出所:周牧之『現代版「絹の道」、構想推進を―欧州から日本まで資源の開発・輸送で協力―』日本経済新聞、1999年4月1日。

 1990年代末、筆者は、ユーラシア大陸における広域インフラ整備構想を考案した。同構想はカスピ海から中国沿岸部に至るガス・石油パイプライン、鉄道、高速道路、光ファイバー網の整備を含み「現代版シルクロード」とも形容された。主な目的は、中国そして東アジアの発展に必要とされるエネルギー資源や食糧の安定供給を図り、来るべき世界の需給ひっ迫を緩和することであった[12]

図13 ユーラシアランドブリッジ構想(英訳版)

出所:Zhou Muzhi, Eurasian Land Bridge carries great promise, The Nikkei Weekly, 1999年5月17日.

 同構想の核心は輸出先の安定した供給能力の開発を前提とした「開発輸入」というコンセプトである。それは、冷戦後のユーラシア大陸における石油や天然ガス資源と、膨大な穀倉地帯の潜在的な可能性に鑑み、国際共同参画を前提とし、その開発と輸出入のインフラ整備を進め、中国及び東アジアのエネルギー及び食糧の安定供給を計るものであった。当時、中国はエネルギーも食糧も輸出国であったが、将来的に一大輸入国に転じると予測していた。

 同構想の国際協力において江沢民政権と小渕恵三政権の間に一時、日中両国の同意が得られたものの、その後日本の参加は見送られた。しかし同構想の予測が見事に当たり、中国はエネルギーそして食糧の一大輸出国に転じた。中国から中央アジア方面へのパイプラインの建設も着々と進んでいる。

 「開発輸入」のコンセプトは、その後中国が提唱する「一帯一路」[13]政策にも取り入れられた。中国が進める「開発輸入」は世界の農産物貿易の拡大と安定に大きく寄与するであろう。


[1] 米国民間シンクタンク・地球政策研究所元所長のレスター・R・ブラウン(Brown)氏が1994年に『ワールド・ウォッチ』誌で論文「誰が中国を養うのか」を発表した。1995年に論文名と同名の著書を発表した。Lester R. Brown, Who Will Feed China? W. W. Norton & Company, Inc., 1995を参照。

[2] 当時中国の朱鎔基首相は中国の食糧安全保障を確保するために、「‘米袋’省長責任制」、「食糧無制限買付け政策」、「食糧リスクファンドの超過備蓄への補填措置」などの制度や政策を急進的に展開した。これらの政策は中国の食糧生産能力の向上と食糧安全保障の強化に寄与したものの、過度な開墾が環境問題も引き起こした。

[3] 「退耕還林」とは、中国の環境保護および土地管理政策の一環として実施された「農地を森に戻す」政策である。同政策は1999年に開始され、一部の耕地に適さない農地を森林や草地に戻すことで、過度な開墾によってもたらされた環境問題を緩和するものであった。中国政府の発表によると1999年から2008年まで、全国で合計2,687万ヘクタール(4億300万畝)の農地が森林に戻された。

[4] HSコード(Harmonized System Code)は、国際的に統一された商品の分類・識別システムである。このコードは、6桁の数字で構成され、世界各国の税関や統計機関で使用されている。HSコードは、世界関税機構(WCO)によって管理され、定期的に見直されている。

[5] 現在、中国の地方政府には省・自治区・直轄市・特別行政区といった「省級政府」と、地区級、県級、郷鎮級という4つの階層に分かれる「地方政府」がある。都市の中にも、北京、上海のような「直轄市」、南京、広州、ラサのような「省都・自治区首府」があり、蘇州、無錫のような「地級市(地区級市)」、昆山、江陰のような「県級市」もある。なお、地級市は市と称するものの、都市部と周辺の農村部を含む比較的大きな行政単位であり、人口や面積規模は、日本の市より都道府県に近い。

[6] 地級市以上の297都市は、4つの直轄市、27の省都・自治区首府、5つの計画単列市と262地級市から成る。

[7]『中国都市総合発展指標』は2016年以来毎年、中国都市ランキングを内外で発表してきた。同指標は環境・社会・経済という3つの軸(大項目)で中国の都市発展を総合的に評価している。同指標の構造は、各大項目の下に3つの中項目があり、各中項目の下に3つの小項目を設けた「3×3×3構造」で、各小項目は複数の指標で構成される。これらの指標は、合計882の基礎データから成り、内訳は31%が統計データ、35%が衛星リモートセンシングデータ、34%がインターネットビッグデータである。その意味で、同指標は、異分野のデータ資源を活用し、「五感」で都市を高度に知覚・判断できる先進的なマルチモーダル指標システムである。現在、中国語(『中国城市総合発展指標』人民出版社)、日本語(『中国都市ランキング』NTT出版)、英語版(『China Integrated City Index』Pace University Press)が書籍として出版されている。『中国都市総合発展指標』について詳しくは、周牧之ら編著『環境・経済・社会 中国都市ランキング2018―〈大都市圏発展戦略〉』、NTT出版、2020年10月10日を参照。

[8] 『中国都市総合発展指標』の耕地面積は、「Copernicus Climate Change Service」の「Land cover classification gridded maps」データセットを用いて算出した。このデータセットは、FAOの土地利用区分22分類に基づいて構成され、解像度は300メートルメッシュである。データセットから「耕地」分類のメッシュデータを、GISを用いて中国各都市の耕地面積を集計した。

[9] 中国の小麦生産の限界緯度は、主に「秦嶺-淮河線」によって示されている。秦嶺-淮河線は中国の自然地理の分界線で、北方の寒冷な気候と南方の温暖な気候に分けている。地域的には、秦嶺-淮河線は秦嶺(Qin Mountains)と淮河(Huai River)によって形成される。秦嶺-淮河線の北側が小麦栽培地域で、南側は主に水稲が栽培されている。

[10] 『中国都市総合発展指標』で使用する「輻射力」とは広域影響力の評価指標であり、都市のある業種の周辺へのサービス移出・移入量を、当該業種従業者数と全国の当該業種従業者数の関係、および当該業種に関連する主なデータを用いて複合的に計算した指標である。穀物生産輻射力は穀物生産量も加味した。

[11] 相関分析とは、二つまたはそれ以上の変数間の関係の強さと方向を評価する統計的手法である。この分析は、変数間の相関係数を計算して行い、相関係数は-1から1の範囲の値を取る。相関係数が1に近い場合、変数間に強い正の関係があることを示し、-1に近い場合は強い負の関係を示し、0は変数間に関係がないことを示す。一般的に、相関係数は、0.9~1が「完全相関」、0.8~0.9が「極度に強い相関」、0.7~0.8が「強い相関」、0.5~0.7が「相関がある」、0.2~0.5が「弱い相関」、0.0~0.2が「無相関」であると考えられる。

[12] 同構想について、1999年4月1日に日本経済新聞の経済教室欄に筆者の署名文『現代版「絹の道」、構想推進を―欧州から日本まで資源の開発・輸送で協力―』を参照。

[13] 一帯一路(Belt and Road Initiative, BRI)は、中国が推進する広域経済圏構想である。同構想は、古代のシルクロードを現代の経済回廊に再構築し、陸上の「シルクロード経済帯」と海上の「21世紀海上シルクロード」を通じて、中国と他の参加国間の貿易と投資を促進し、地域経済の発展を支援することを目的としている。


 本論は東京経済大学個人研究助成費(研究番号21-15)を受けて研究を進めた成果である。

(本論文では栗本賢一、甄雪華、趙建の三氏がデータ整理と図表作成に携わった)


 本論文は、周牧之論文『増え続ける世界そして中国の人口をどう養うか?』より抜粋したものである。『東京経大学会誌 経済学』、321号、2024年。