【レポート】発展原動力の二極化、中国の都市発展の大きなトレンドに 〜中国都市GDP・DID人口・IT輻射力・他12指標ランキング〜

 

 中国経済発展の空間構造に大きな変化が生じており、都市の発展で明確な集中と分化の現象が起きている。各種の機能が上位都市に集中する傾向が日増しに顕著になっている上、高度な機能の集中度がますます高まっている。これに応じて、都市間の分化も目立つようになり、いわゆる「発展原動力の二極化」が明らかになってきた。

 雲河都市研究院は中国都市総合発展指標2018を使って、12種類のデータに関する上位30都市ランキングを発表。全国298都市(地級以上)のパフォーマンスをもとに、複数の重要指標と機能の集中度を分析し、「発展原動力の二極化」を解説した。

 


1. GDPランキング上位30都市

 中国国内のGDPランキング上位10都市は順に、上海、北京、深圳、広州、重慶、天津、蘇州、成都、武漢、杭州で、この10都市の合計GDPが全体に占める割合は23.6%に達する。上位30都市の合計GDPは全体の43.5%を占めている。つまり、上位10%の都市が全国4割以上のGDPを生み出しており、中国経済の発展がGDPランキング上位30都市に高く依存していることが明らかとなった。

 

2. DID人口ランキング上位30都市

 密度は都市問題を議論する際の重要なキーワードだ。中国都市総合発展指標では、1㎢あたり5000人以上の地区をDID(Densely Inhabited District:人口集中地区)と呼び、人口密度に関する正確かつ効果的な分析を行っている。
 DID人口ランキング上位10都市は上海、北京、広州、深圳、天津、重慶、成都、武漢、東莞、温州で、この10都市のDID総人口が全体に占める割合は22.8%に達する。上位30都市のDID総人口は全体の43.2%を占めている。つまり、DID人口ランキング上位10%の都市には、全国4割以上のDID人口が集中していることになる。
 注目点は、中国298都市(地級以上)のGDPとDID人口の相関関係を分析した結果、両者に強い相関関係がみられ、相関係数が0.93の高水準に達し、「完全な相関関係」を示したことだ。さらに、GDPとDID人口という二指標のランキング上位30都市のうち26都市が重複した(順位は一部異なる)。これらは、DID人口の重要性を示しており、今後の中国の都市発展ではDID人口の規模と質に注目しなければならない。

 

3. メインボード上場企業ランキング上位30都市

 上海、深圳、香港の三大メインボードの上場企業数ランキング上位3都市は上海、北京、深圳で、この3都市のメインボード上場企業総数が全体に占める割合は39.6%に達する。上位30都市のメインボード上場企業総数は全体の69.7%を占めている。つまり、メインボード上場企業ランキング上位10%の都市に全国7割近いメインボード上場企業が集中している。
 メインボード上場企業が大都市、特に中心都市に集中する状況がますます顕著となった。

4. フォーチュン500中国企業ランキング上位30都市

 30年前の1989年に、フォーブスが発表するフォーチュン500にランクインした中国企業はわずか3社だった。2018年にランクインした中国企業は105社に大幅に増え、米国企業の126社に迫った。注目点は、中国企業3社がトップ10にランクインしたことだ。
 フォーチュン500の中国企業の本拠があるのは中国の28都市で、うち66.7%が北京、上海、深圳の3都市に集中している。一般的なメインボード上場企業に比べ、フォーチュン500に躍り出た中国企業は、全国的な中心都市に集まる傾向が強い。
 メインボード上場企業数ランキング上位30都市とフォーチュン500中国企業ランキング上位30都市を分析すると、中国の最も優良な企業の本社も、いわゆる経済的な中枢管理機能を北京、上海、深圳に代表される上位中心都市に集約している。

5. 製造業輻射力ランキング上位30都市

 製造業輻射力(周辺影響力)ランキング上位10都市は深圳、上海、東莞、蘇州、佛山、広州、寧波、天津、杭州、厦門(アモイ)で、この10都市はいずれも大型コンテナを利用しやすい港湾があるという優位性を持ち、10都市の貨物輸出総額が全体に占める割合は48.2%に達する。上位30都市の貨物輸出総額は全体の74.9%を占めている。つまり、中国では現在、製造業輻射力が大きい10%の都市から全国4分の3に当たる貨物が輸出されている。

6. IT産業輻射力ランキング上位30都市

 IT産業輻射力ランキング上位10都市は北京、上海、深圳、成都、杭州、南京、広州、福州、済南、西安で、この10都市のIT就業者総数、メインボードITセクター上場企業数、中小企業ボードITセクター上場企業数、創業板ITセクター上場企業数が全体に占める割合はそれぞれ52.8%、76.1%、60%、81%に達する。上位30都市のIT就業者総数、メインボードITセクター上場企業数、中小企業ボードITセクター上場企業数、創業板ITセクター上場企業数は全体の68%、94%、78.2%、91.2%を占める。中国のIT産業がIT産業輻射力ランキング上位都市に集中する状況が顕著となっている。
 現在、中国の多くの都市がIT産業を重点産業として発展させているが、実際には、IT産業は北京、上海、深圳、成都、杭州、南京、広州といった都市に集中し、特定の都市に集中及び収れんする傾向が製造業よりも強い。こうした意味で言うと、IT産業の発展を目指す都市は、IT産業の発展に必要な条件を研究・分析しなければならない。

7. 高等教育輻射力ランキング上位30都市

 高等教育輻射力ランキング上位10都市は北京、上海、武漢、南京、西安、広州、長沙、成都、天津、哈爾浜(ハルビン)で、この10都市の211プロジェクト対象大学と985プロジェクト対象大学総数、一般大学・専門学校の在校生総数が全体に占める割合は69.3%、26.0%に達する。上位30都市の211及び985大学総数、一般大学・専門学校の在校生総数は全体の92.8%、57.1%を占めている。現在、中国の高等教育資源、特にハイクオリティな高等教育資源が高等教育輻射力ランキング上位都市に集中している状況が明かとなった。

8. 科学技術輻射力ランキング上位30都市

 科学技術輻射力ランキング上位10都市は北京、上海、深圳、成都、広州、杭州、西安、天津、蘇州、南京で、この10都市のR&D(研究開発)人材資源総量、特許取得件数が全体に占める割合は36.3%、33.2%に達する。上位30都市のR&D人材資源総量、特許取得件数は全体の59.8%、62.6%を占めている。現在、中国の科学技術資源が科学技術輻射力ランキング上位都市に集中する状況が顕著となっている。

9. 文化・スポーツ・娯楽輻射力ランキング上位30都市

 文化・スポーツ・娯楽輻射力ランキング上位10都市は北京、上海、成都、広州、深圳、武漢、杭州、南京、西安、鄭州で、この10都市の映画興行収入総額、延べ観客数が全体に占める割合は34%、30.6%に達する。上位30都市の映画興行収入総額、延べ観客数は全体の57.7%、54.6%を占めている。
 現在、中国では文化・スポーツ・娯楽資源だけでなく、興行収入に代表される文化・スポーツ・娯楽消費が文化・スポーツ・娯楽輻射力ランキング上位都市に集中する状況が顕著となっている。

10. 飲食・ホテル輻射力ランキング上位30都市

 飲食・ホテル輻射力ランキング上位10都市は上海、北京、成都、広州、深圳、杭州、蘇州、三亜、西安、厦門で、この10都市の五つ星ホテル軒数、国際トップクラスレストラン軒数が全体に占める割合は35.7%、77.1%に達する。上位30都市の五つ星ホテル軒数と国際トップクラスレストラン軒数は全体の61.1%、91.8%を占めている。中国の高級飲食店とホテルが飲食・ホテル輻射力ランキング上位都市に集中する状況が顕著となっている。
 雲河都市研究院は中国都市総合発展指標2018を使って、IT産業輻射力と飲食・ホテル輻射力に関する分析を行った。その結果、両者の相関係数は0.9に上り、両者の間に「完全な相関関係」があることが明らかとなった。交流経済の典型であるIT産業では、高所得で見識が広い経営者たちは「食事をすることが好き」であり、「食事をすること」は間違いなく彼らが「交流する」重要なシーンとなっている。
 北京、上海、深圳、成都、杭州、南京、広州はIT産業輻射力が最も強い上位7都市で、これらの都市は中国で美食の街となっている。今や食事は、都市の交流経済が発展するために軽視できない「重要な生産力」だ。
 しかし、製造業輻射力と飲食・ホテル輻射力の相関係数はわずか0.68にとどまる。IT産業に比べ、製造業従事者は美食に対する感度が低いことが示された。

11. コンテナ港利便性ランキング上位30都市

 コンテナ港利便性ランキング上位10都市は上海、深圳、寧波、広州、青島、天津、厦門、大連、蘇州、営口で、この10都市の港湾コンテナ取扱総量が全体に占める割合は82%に達する。上位30都市の港湾コンテナ取扱量は全体の97.8%を占めている。言い換えると、中国では現在、コンテナ港利便性ランキング上位10%が港湾コンテナ取扱量のほぼ全てを独占している。
 雲河都市研究院が中国都市総合発展指標2018を使って、中国298都市(地級以上)の貨物輸出額と港湾コンテナ取扱量の相関を分析した結果、両者の密接な相関が明らかとなり、相関係数が0.81の高水準に達し、「非常に強い相関関係」が示された。また、製造業輻射力とコンテナ港利便性という二指標のランキング上位30都市のうち24都市が重複した(順位は一部異なる)。このことから、製造業特に輸出工業が良い条件を備える港湾に高く依存していることが明らかとなった。今後も引き続き、中国の製造業、特に輸出工業は良い条件を備える港湾がある都市へと向かい、集中が進む見通しだ。
 工業発展と港湾条件の関係をはっきりと認識することは、中国の将来的な工業分布に極めて重要な意義を持つ。中国は、至る所で工業化を進めた過去のやり方について真剣に議論し、内陸で分散式に工業化を進めた非合理性と低効率を見直すことで、工業のハイクオリティな発展を目指す必要がある。

12. 空港利便性ランキング上位30都市

 空港利便性ランキング上位10都市は上海、北京、広州、深圳、成都、昆明、重慶、杭州、西安、厦門で、この10都市の乗降客数と貨物・郵便取扱量が全体に占める割合は49.9%、73.5%に達する。上位30都市の乗降客数と貨物・郵便取扱量は全体の81.3%、92.9%を占めている。中国では現在、航空運輸による人の移動と物流の大部分が、空港利便性ランキング上位10%の都市に集中している現状が明かとなった。
 雲河都市研究院は中国都市総合発展指標2018を使って、中国298都市(地級以上)のIT産業輻射力と空港利便性の相関を分析した。その結果、両者の密接な相関が明らかとなり、相関係数は0.82の高水準に達し、「非常に強い相関関係」が示され、製造業輻射力とコンテナ港湾利便性の相関関係よりも強い。IT産業輻射力と空港利便性という二指標のランキング上位30都市のうち21都市が重複している(順位は一部異なる)。これらから、交流経済の代表産業となるIT産業の発展は、便利な条件を備える空港に高く依存していることが分かった。今後も引き続き、IT産業は良い条件を備える空港がある都市へと向かい、集中が進む見通しだ。


 現在の中国は、経済総量とDID人口総量はもちろん、各種の機能が少数の大都市、超大都市、大都市群に集中しつつある。その上、ハイエンドな機能がますます発揮され、上位都市に集中する現象が加速している。この流れはさらに強まる見通しだ。これらを踏まえ、各種の中心機能が集まる大都市、超大都市、大都市群の経済構造と空間構造をどのように改善するかが、中国の目指すハイクオリティな発展にとって極めて重要となる。


「中国網日本語版(チャイナネット)」 2020年1月2日

【レポート】〈中国都市総合発展指標〉から3大メガロポリスを徹底比較

 中国経済の勢いのある成長は、世界経済成長の構造の変化と中国の改革開放による巨大な活力が合わさって生まれたものである。世界経済を繋ぐ大舞台として、珠江デルタ、長江デルタ、北京・天津・河北の3大都市群は中国経済成長の原動力となり、中国で最も国際的かつ代表的な都市群でもある。中米貿易戦と国内経済の構造大調整がある中、3大都市群の影響力は高まっている。

 雲河都市研究院は中国都市総合発展指標2018の12種類のデータを利用し、3大都市群の優位性を解説した。

 


1. GDP

 中国経済における3大都市群の存在感はより顕著となっている。北京・天津・河北、長江デルタ、珠江デルタの3大都市群の対GDP比はそれぞれ8.6%、19.8%、9.0%に、計37.4%に達する。3大都市群は中国経済成長の構造を支えている。
 全国地級以上298都市GDPランキング上位30都市から3大都市群のそれぞれの優位性が見て取れる。
 北京・天津・河北大都市群の2都市がGDPランキング上位30都市に入り、北京が2位、天津が6位につける。
 長江デルタ大都市群の9都市がGDPランキング上位30都市に入り、上海が1位、蘇州が7位、杭州が10位、南京が11位、無錫が13位、寧波が15位、南通が19位、合肥が25位、常州が28位につけ、輝きを見せている。
 珠江デルタ大都市群の4都市がGDPランキング上位30都市に入り、深センが3位、広州が4位、仏山が17位、東莞が21位につける。
 3大都市群から15都市がGDPランキング上位30都市に入り、天下の半分を占めると言える。

 

2. DID人口

 密度は都市問題を討論する重要な指標の1つで、中国都市総合発展指標は1平方キロメートルあたり5000人以上の地域をDID(Densely Inhabited District:人口高密集地区)と定義し、人口密度を正確かつ有効的に分析する。
 3大都市群には全国の34.4%のDID人口が集中している。北京・天津・河北、長江デルタ、珠江デルタの3大都市群の全国DID人口に占める割合はそれぞれ7.9%、17.1%、9.3%に達する。
 全国地級以上298都市DID人口ランキング上位30都市から3大都市群のそれぞれの優位性が見て取れる。
 北京・天津・河北大都市群の2都市がDID人口ランキングの上位30都市に入り、北京が2位、天津が5位につける。
 長江デルタ大都市群の7都市がDID人口ランキングの上位30都市に入り、上海が1位、蘇州が11位、杭州が13位、南京が14位、寧波が20位、合肥が25位、無錫が28位につける。
 珠江デルタ大都市群の4都市がDID人口ランキングの上位30都市に入り、広州が3位、深センが4位、東莞が9位、仏山が15位につける。
 3大都市群から13都市がDID人口ランキングの上位30都市に入ったが、DID人口の割合を見ると、3大都市群の間に大きな差がある。珠江デルタ大都市群のDID人口比率は67.0%に達し、全国のDID人口比率31.9%を大幅に上回る。長江デルタ大都市群は46.6%、北京・天津・河北大都市群はわずか37.8%。

 

3. メインボード上場企業

 3大都市群には全国の半数以上のメインボード(上海、深セン、香港の3大メインボード)上場企業が集まっている。北京・天津・河北、長江デルタ、珠江デルタが全国のメインボード上場企業数に占める割合はそれぞれ15.9%、28%、10.3%、計54.2%に達する。
 全国地級以上298都市メインボード上場企業数ランキング上位30都市から3大都市群のそれぞれの優位性が示された。
 北京・天津・河北大都市群の2都市がメインボード上場企業数ランキングの上位30都市に入り、北京が2位、天津が8位につける。
 長江デルタ大都市群の7都市がメインボード上場企業数ランキングの上位30都市に入り、上海が1位、南京と杭州が同率4位、寧波が9位、合肥が13位、蘇州が21位、無錫が24位につける。
 珠江デルタ大都市群からは2都市のみがメインボード上場企業数ランキングの上位30都市に入り、深センが3位、広州が7位につける。同地区の世に名を知られる東莞や仏山などの製造業都市は「工場経済」のレベルで止まっている。
 3大都市群から11都市がメインボード上場企業数ランキングの上位30都市に入り、中でも上海、北京、深センは全国のメインボード上場企業の31.3%を有する。

 

4. フォーチュントップ500中国企業

 3大都市群には全国の80%のフォーチュントップ500中国企業が集まっている。北京・天津・河北、長江デルタ、珠江デルタの3大都市群が全国のフォーチュントップ500中国企業数に占める割合はそれぞれ54.3%、14.3%、11.4%に達する。
 全国地級以上298都市フォーチュントップ500中国企業ランキング上位30都市から3大都市群のそれぞれの優位性が見て取れる。
 北京・天津・河北大都市群の3都市がフォーチュントップ500中国企業ランキングの上位30都市に入り、北京が1位、天津と石家荘が同率11位につける。
 長江デルタ大都市群の4都市がフォーチュントップ500中国企業ランキングの上位30都市に入り、上海が2位、杭州が4位、南京と蘇州が同率7位につける。
 珠江デルタ大都市群の3都市がフォーチュントップ500中国企業ランキングの上位30都市に入り、深センが3位、広州が4位、仏山が7位につける。
 3大都市群から10都市がフォーチュントップ500中国企業ランキングの上位30都市に入り、中でも北京の地位は際立ち、全国の52.4%のフォーチュントップ500中国企業を有する。

 

5. 製造業輻射力

 3大都市群には全国の貨物輸出額の67.8%が集まっている。北京・天津・河北、長江デルタ、珠江デルタの3大都市群が全国貨物輸出総額に占める割合はそれぞれ6.2%、32.7%、28.8%に達する。3大都市群、特に長江デルタと珠江デルタは中国の輸出業発展を支え、名実相伴う「世界の工場」である。
 輻射力は都市のある機能の外部利用度を表す指数で、中国都市総合発展指標は影響力をもとに都市の各産業の対外サービス能力を正確かつ有効的に分析する。
 全国地級以上298都市製造業輻射力ランキング上位30都市から3大都市群のそれぞれの優位性が見て取れる。
 北京・天津・河北大都市群の2都市が製造業輻射力ランキングの上位30都市に入り、天津が8位、北京が17位につける。
 長江デルタ大都市群の11都市が製造業輻射力ランキングの上位30都市に入り、上海が2位、蘇州が4位、寧波が7位、杭州が9位、無錫が14位、嘉興が20位、南京が21位、金華が23位、紹興が24位、常州が26位、南通が29位につけ、勢いがあると言える。
 珠江デルタ大都市群全9都市の中の8都市が製造業輻射力ランキングの上位30都市に入り、深センが1位、東莞が3位、仏山が5位、広州が6位、恵州が11位、中山が13位、珠海が19位、江門が30位につけ、威力を発揮している。
 3大都市群から21都市が製造業輻射力ランキングの上位30都市に入った。2008~2018年、中国の輸出規模は10倍になり、世界最大の輸出大国に躍進した。製造業サプライチェーンの世界拡張という取引経済大爆発の中で、3大都市群は正真正銘の最大の勝ち組である。

 

6. IT産業輻射力

 3大都市群には全国のIT業メインボード上場企業の71.8%とIT業従事者の50.7%が集まっている。
 北京・天津・河北、長江デルタ、珠江デルタの3大都市群が全国のIT業メインボード上場企業に占める割合はそれぞれ32.5 %、24.8%、14.5%に達する。
 北京・天津・河北、長江デルタ、珠江デルタの3大都市群が全国のIT業従事者数に占める割合はそれぞれ20.9%、19.5%、10.2%に達する。
 全国地級以上298都市IT産業輻射力ランキング上位30都市から3大都市群のそれぞれの優位性が見て取れる。
 北京・天津・河北大都市群からは北京だけが1位でIT産業輻射力ランキングの上位30都市に入った。
 長江デルタ大都市群の6都市がIT産業輻射力ランキングの上位30都市に入り、上海が2位、杭州が5位、南京が6位、蘇州が15位、合肥が21位、無錫が24位につける。
 珠江デルタ大都市群の3都市がIT産業輻射力ランキングの上位30都市に入り、深センが3位、広州が7位、珠海が20位につける。
 3大都市群から10都市がIT産業輻射力ランキングの上位30都市に入ったが、製造業輻射力の高い都市の多くがIT産業輻射力ランキングの上位30都市に入らなかった点に注目したい。

 

7. 高等教育輻射力

 3大都市群には全国の211 & 985大学の51.6%と一般大学・専門学校の28.2%の在校生が集まっている。
 北京・天津・河北、長江デルタ、珠江デルタの3大都市群が全国の211 & 985大学数に占める割合はそれぞれ26.8%、20.9%、3.9%に達する。
 北京・天津・河北、長江デルタ、珠江デルタの3大都市群が全国の一般大学・専門学校在校生総数に占める割合はそれぞれ8.3%、14.0%、5.9%に達する。
 全国地級以上298都市高等教育輻射力ランキング上位30都市から3大都市群のそれぞれの優位性が見て取れる。
 北京・天津・河北大都市群の3都市が高等教育輻射力ランキングの上位30都市に入り、北京が1位、天津が9位、石家荘が29位につける。
 長江デルタ大都市群の5都市が高等教育輻射力ランキングの上位30都市に入り、上海が2位、南京が4位、合肥が12位、杭州が14位、蘇州が30位につける。
 珠江デルタ大都市群からは広州だけが6位で高等教育輻射力ランキングの上位30都市に入った。
 3大都市群から9都市が高等教育輻射力ランキングの上位30都市に入り、珠江デルタ大都市群の高等教育輻射力は比較的低い。

 

8. 科学技術輻射力

 3大都市群には全国のR&D(研究開発)人材資源の53.3%と特許取得件数の55.6%が集まっている。
 北京・天津・河北、長江デルタ、珠江デルタの3大都市群が全国のR&D人材資源総量に占める割合はそれぞれ12.2%、28.5%、12.7%に達する。
 北京・天津・河北、長江デルタ、珠江デルタの3大都市群が全国の特許取得件数に占める割合はそれぞれ10.3%、30.9%、14.4%に達する。
 全国地級以上298都市科学技術輻射力ランキング上位30都市から3大都市群のそれぞれの優位性が見て取れる。
 北京・天津・河北大都市群の2都市が科学技術輻射力ランキングの上位30都市に入り、北京が1位、天津が8位につける。
 長江デルタ大都市群の11都市が科学技術輻射力ランキングの上位30都市に入り、上海が2位、杭州が6位、蘇州が9位、南京が10位、寧波が12位、無錫が14位、合肥が17位、紹興が20位、南通が21位、嘉興が27位、常州が30位につける。
 珠江デルタ大都市群の5都市が科学技術輻射力ランキングの上位30都市に入り、深センが3位、広州が5位、仏山が16位、東莞が18位、中山が24位につける。
 3大都市群から18都市が科学技術輻射力ランキングの上位30都市に入った。

 

9. 文化・スポーツ・娯楽輻射力

 3大都市群には全国の映画興行収入の45.9%と観客数の43.3%が集まっている。
 北京・天津・河北、長江デルタ、珠江デルタの3大都市群が全国の映画興行収入に占める割合はそれぞれ9.6%、23.6%、12.8%に達する。
 北京・天津・河北、長江デルタ、珠江デルタの3大都市群が全国の観客数に占める割合はそれぞれ8.5%、22.8%、11.9%に達する。
 全国地級以上298都市文化・スポーツ・娯楽輻射力ランキング上位30都市から3大都市群のそれぞれの優位性が見て取れる。
 北京・天津・河北大都市群の2都市が文化・スポーツ・娯楽輻射力ランキングの上位30都市に入り、北京が1位、天津が13位につける。
 長江デルタ大都市群の7都市が文化・スポーツ・娯楽輻射力ランキングの上位30都市に入り、上海が2位、杭州が7位、南京が8位、蘇州が14位、合肥が17位、寧波が25位、無錫が26位につける。
 珠江デルタ大都市群の4都市が文化・スポーツ・娯楽輻射力ランキングの上位30都市に入り、広州が4位、深センが5位、東莞が20位、仏山が23位につける。
 3大都市群から13都市が文化・スポーツ・娯楽輻射力ランキングの上位30都市に入った。

 

10. 飲食・ホテル輻射力

 3大都市群には全国の5つ星ホテルの51.7%と全国の国際トップクラスレストランの72.9%が集まっている。
 北京・天津・河北、長江デルタ、珠江デルタの3大都市群が全国の5つ星ホテル軒数に占める割合はそれぞれ11.4%、29.5%、10.9%に達する。
 北京・天津・河北、長江デルタ、珠江デルタの3大都市群が全国の国際トップクラスレストラン軒数に占める割合はそれぞれ20.0%、37.5%、15.4%に達する。
 全国地級以上298都市飲食・ホテル輻射力ランキング上位30都市から3大都市群のそれぞれの優位性が見て取れる。
 北京・天津・河北大都市群の2都市が飲食・ホテル輻射力ランキングの上位30都市に入り、北京が2位、天津が16位につける。
 長江デルタ大都市群の8都市が飲食・ホテル輻射力ランキングの上位30都市に入り、上海が1位、杭州が6位、蘇州が7位、南京が11位、寧波が14位、舟山が18位、無錫が26位、合肥が29位につける。
 珠江デルタ大都市群の4都市が飲食・ホテル輻射力ランキングの上位30都市に入り、広州が4位、深センが5位、珠海が20位、東莞が27位につける。
 3大都市群から14都市が飲食・ホテル輻射力ランキングの上位30都市に入った。

 

11. コンテナ港利便性

 3大都市群には全国の港のコンテナ取扱量の69.5%が集まっている。北京・天津・河北、長江デルタ、珠江デルタの3大都市群が全国の港のコンテナ取扱量に占める割合はそれぞれ8.3 %、35.2%、26%に達する。
 全国地級以上298都市コンテナ港利便性ランキング上位30都市から3大都市群のそれぞれの優位性が見て取れる。
 北京・天津・河北大都市群の2都市がコンテナ港利便性ランキングの上位30都市に入り、天津が6位、唐山が28位につける。
 長江デルタ大都市群の11都市がコンテナ港利便性ランキングの上位30都市に入り、上海が1位、寧波が3位、蘇州が9位、舟山が12位、南京が15位、南通が17位、嘉興が20位、無錫が23位、湖州が26位、常州が29位、紹興が30位につけ、港湾都市が林立していると言える。
 珠江デルタ大都市群全9都市の中の8都市がコンテナ港利便性ランキングの上位30都市に入り、深センが2位、広州が4位、東莞が13位、仏山が14位、中山が18位、珠海が21位、江門が25位、恵州が27位につけ、大量の帆が立っている。
 3大都市群から21都市がコンテナ港利便性ランキングの上位30都市に入った。港湾の優位性は3大都市群の発展を支え、中でも製造業の発展の重要な柱であることは間違いない。

 

12. 空港利便性

 3大都市群には全国の空港旅客数の41.5%と空港貨物取扱量の67.8%が集まっている。
 北京・天津・河北、長江デルタ、珠江デルタの3大都市群が全国の空港旅客数に占める割合はそれぞれ11.9%、18.7%、10.9%に達する。
 北京・天津・河北、長江デルタ、珠江デルタの3大都市群が全国の空港貨物取扱量に占める割合はそれぞれ14.7%、34.6%、18.5%に達する。
 全国地級以上298都市空港利便性ランキング上位30都市から3大都市群のそれぞれの優位性が見て取れる。
 北京・天津・河北大都市群の2都市が空港利便性ランキングの上位30都市に入り、北京が2位、天津が13位につける。
 長江デルタ大都市群の3都市が空港利便性ランキングの上位30都市に入り、上海が1位、杭州が8位、南京が12位につける。
 珠江デルタ大都市群の3都市が空港利便性ランキングの上位30都市に入り、広州が3位、深センが4位、珠海が27位、につける。
 3大都市群から8都市が空港利便性ランキングの上位30都市に入った。特に北京、上海、広州、深センの4大国際航空ターミナルは3大都市群を中国で航空輸送が最も便利な地域にし、大都市群の交流経済の発展の重要な支えとなっている。

 


3大都市群に含まれる都市

 北京・天津・河北大都市群の10都市:北京、天津、石家荘、保定、唐山、秦皇島、張家口、承徳、滄州、廊坊

 長江デルタ大都市群の26都市:上海、南京、杭州、蘇州、合肥、無錫、寧波、常州、嘉興、南通、塩城、揚州、鎮江、泰州、湖州、紹興、金華、舟山、台州、蕪湖、馬鞍山、銅陵、安慶、滁州、池州、宣城。

 珠江デルタ大都市群の9都市:広州、深セン、東莞、仏山、珠海、中山、江門、恵州、肇慶。


中国網日本語版(チャイナネット)」 2019年12月31日

【ランキング】「中国中心都市&都市圏発展指数2018」が発表

雲河都市研究院

中国中心都市&都市圏発展指数2018 総合ランキング

 シンクタンクの雲河都市研究院が作成した中国中心都市&都市圏発展指数2018がこのほど、北京市で発表された。総合ランキングのトップ3は北京、上海、深圳、第4位から第10位は順に広州、天津、成都、杭州、重慶、南京、武漢となった。

  同指数の大きな特徴は、中国の4大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市の計36都市を「中心都市」として、全国298の地級市以上の都市間で評価した点にある。同指標の分析によると、これら36の「中心都市」は全国GDP規模の39.7%、貨物輸出・輸入の55.2%、特許取得数の48.7%を占め、全国の常住人口の25%、DID人口の41.4%、メインボード上場企業の71.6%、全国の981&211高等教育機関=トップ大学の94.8%、5つ星ホテルの58.1%、三甲病院(最高等級病院)の54.1%を有している。


 中国中心都市&都市圏発展指数2018は都市地位、都市圏実力、輻射能力、広域中枢機能、開放交流、ビジネス環境、イノベーション・起業、生態環境、生活品質、文化教育の10大項目と30の小項目からなり、包括的かつ詳細に、中心都市の都市圏発展を指数で診断し、中国中心都市の高品質発展を促す総合評価である。

中国中心都市&都市圏発展指数構造図

都市地位大項目 


 都市地位大項目ランキングのトップ3は、北京、上海、広州。第4位から第10位は順に天津、重慶、南京、杭州、成都、深圳、武漢。 都市地位大項目は行政機能、メガロポリス、“一帯一路”の3つの小項目指標を設置。行政機能の小項目においては、首都、直轄市、省都の行政機能が高得点となった。長江デルタ、珠江デルタ、京津冀(北京・天津・河北)の3大メガロポリスの都市は、大項目指標において点数が高い。“一帯一路”の小項目では、貿易投資および海外との往来が良好な都市が、上位を占めた。

都市地位ランキング概略図(総合ランキング中心都市トップ20)

都市圏実力大項目 


 都市圏実力大項目ランキンングトップ3は北京、上海、深圳。第4位から第10位は順に広州、天津、重慶、杭州、武漢、成都、南京。都市圏実力大項目は経済規模、都市圏品質、企業集積の3つの小項目指標を設置。面積も人口も規模も特大な4大直轄市が、経済規模のトップ4を占めた。北京、上海、深圳は企業集積小項目で圧倒的優位に立ち、順にトップ3を飾った。上海、深圳、北京は都市圏品質小項目でもトップ3となった。

都市圏実力ランキング概略図(総合ランキング中心都市トップ20)

輻射能力大項目


 輻射能力大項目ランキングトップ3は北京、上海、深圳。第4位から第10位は順に成都、広州、杭州、南京、西安、武漢、天津。

 輻射能力大項目は製造業・IT産業輻射力、金融・科学技術・高等教育輻射力、生活文化サービス輻射力の3つの小項目の指標を設置。北京は3つの小項目の第1位をすべて独占した。上海は金融・科学技術・高等教育輻射力と生活文化サービス輻射力の2つの小項目で第2位、深圳は製造業・IT産業輻射力で第2位だった。広州と成都はそれぞれ金融・科学技術・高等教育輻射力と生活文化サービス輻射力で第3位につけた。

 
輻射能力ランキング概略図(総合ランキング中心都市トップ20)

広域中枢機能大項目 


 広域中枢機能大項目ランキングトップ3は上海、広州、深圳。北京は第4位につけ、第5位から第10位は順に天津、寧波、青島、武漢、廈門、成都。広域中枢機能大項目は水路輸送、航空輸送、陸路輸送の3つの小項目指標を設置。上海、深圳、寧波、広州をはじめとする臨海都市が水路輸送の上位を占めた。上海、北京、広州の3都市は航空輸送でトップ3となった。陸路輸送トップ3は広州、武漢、北京。

 
広域中枢機能概略図(総合ランキング中心都市トップ20)

開放交流大項目


 開放交流大項目ランキングトップ10は上海、北京、深圳、天津、広州、重慶、杭州、成都、青島、寧波。  開放交流大項目は国際貿易、国際投資、交流業績の3つの小項目指標を設置。国際貿易トップ3は上海、深圳、北京。国際投資トップ3は天津、上海、北京。交流業績トップ3は上海、北京、広州だった。

開放交流ランキング概略図(総合ランキング中心都市トップ20)

ビジネス環境大項目 


 ビジネス環境大項目ランキングトップ3は上海、北京、広州。第4位から第10位は順に深圳、成都、天津、南京、廈門、重慶、武漢。  ビジネス環境大項目は園区支援、ビジネス支援、都市交通の3つの小項目指標を設置。園区支援トップ3は上海、深圳、廈門。ビジネス支援トップ3は北京、上海、広州。都市交通トップ3は上海、北京、広州だった。

ビジネス環境ランキング概略図(総合ランキング中心都市トップ20)

イノベーション・起業大項目


 イノベーション・起業大項目トップ3は北京、深圳、上海。第4位から第10位は順に広州、杭州、天津、南京、成都、武漢、重慶。イノベーション・起業大項目は研究集積、イノベーション・起業活力、政策支援の3つの小項目指標を設置。研究集積トップ3は北京、上海、深圳。イノベーション・起業活力トップ3は深圳、北京、上海。政策支援トップ3は北京、上海、重慶で、直轄市が政策支援で高評価を得た。

イノベーション・起業ランキング概略図(総合ランキング中心都市トップ20)

生態環境大項目


 生態環境大項目トップ3は上海、北京、深圳。第4位から第10位は順に広州、天津、重慶、廈門、杭州、成都、武漢。  生態環境大項目は資源環境品質、環境努力、資源効率の3つの小項目指標を設置。環境努力トップ3は北京、上海、重慶。資源効率トップ3は上海、深圳、北京で、同3都市はDID人口の規模が大きく密度が高いだけでなく、企業の本社も集積している。しかし、資源環境品質では中国中心都市&都市圏発展指数の対象36都市からは海口と廈門だけが全国トップ20に入り各々第13位と第19位であった。その他の都市は及ばなかった。

生態環境ランキング概略図(総合ランキング中心都市トップ20)

生活品質大項目


 市民と密接に関わる生活品質大項目ランキングは、北京、上海、広州がトップ3、深圳は意外にも第10位へと順位を落とした。第4位から第9位は順に天津、杭州、成都、南京、重慶、武漢。深圳が第10位まで順位を下げたのは、主に医療福祉、住みやすさの2つの小項目が足を引っ張ったためである。住みやすさ小項目のトップ3は上海、蘇州、成都。生活消費水準小項目トップ3は北京、上海、広州。医療福祉小項目トップ3も北京、上海、広州であった。

生活品質ランキング概略図(総合ランキング中心都市トップ20)

文化教育大項目 


 文化教育大項目ランキングでも深圳はいまひとつ振るわず、トップ10から外れた。トップ3は北京、上海、広州。第4位から第10位は順に南京、武漢、成都、天津、西安、重慶、杭州。文化教育大項目は文化娯楽、人材育成、文化パフォーマンスの3つの小項目指標を設置。中でも深圳は人材育成で全国第11位につけたが、文化パフォーマンスでは第73位と落ち込んだ。

文化教育ランキング概略図(総合ランキング中心都市トップ20)

 中国中心都市&都市圏発展指数は、その分析により中心都市の発展状況を各方面から観測・判断し、中心都市の都市圏発展に有益な方向性を提示する。同指数の開発を指揮した東京経済大学の周牧之教授は記者に対し、「全国298の地級市以上の都市の分析研究は、中国の高度な都市機能が中心都市に集中し、かつ高機能であるほど集約度が高いことを示した。中心都市をコアとする都市圏の育成と発展こそが、国際競争での中国の都市の勝敗を決める」と話している。

「中国網日本語版(チャイナネット)」 2019年8月20日


【シンポジウム】「開放と革新 中国都市高品質発展」シンポジウム、北京で開催

 中国インターネットニュースセンター(中国網)と雲河都市研究院による「開放と革新 中国都市高品質発展」シンポジウムが2019年6月11日、北京市で開催された。国務院新聞弁公室元主任の趙啓正氏、全国政協常務委員、経済委員会副主任の楊偉民氏、国家発展改革委員会発展戦略計画司副司長の周南氏らが出席し、スピーチを行った。中国網編集長の王暁輝氏がシンポジウムを主宰。雲河都市研究院長の周牧之氏が、「中国中心都市&都市圏発展指数2018」を発表した。

 国家発展改革委員会は今年2月19日に「現代化都市圏の育成・発展に関する指導意見」(以下「同意見」)を発表した。同意見は、現代化都市圏の建設は新型都市化を推進する重要な手段であり、人口及び経済の空間構造の改善を促し、効果的な投資と潜在的な消費の需要を引き出し、内在的な発展の動力を強化すると指摘した。現代化都市圏の育成を手がかりとし都市の発展品質を高め、高品質の都市化により中国経済の高品質発展を促進することは、現在の中国経済にとって重大な意義を持つ。来賓はこのテーマをめぐり優れたスピーチを行い、白熱した議論を展開した。

 

 国務院新聞弁公室元主任の趙啓正氏
国務院新聞弁公室元主任の趙啓正氏

 国務院新聞弁公室の元主任の趙啓正氏は主旨演説で、20年以上前に上海浦東新区の開発建設に参与した際の経験と体験を語った。趙啓正氏は、浦東の開発当初、「地球儀の縁に立ち浦東の開発を考える」という理念を持っていたと話した。具体的には、開発目標の設定時に浦東の上海における立場、上海の世界経済構造における立場を考える必要があった。趙啓正氏は、「機能計画と形態計画を含む我々の計画を、十分に高い国際レベルにする必要がある。我々は世界の資金と技術を吸収するだけでなく、世界の経済の知恵も吸収しなければいけない」と述べた。また趙啓正氏によると、浦東の開発は経済開発だけでなく、社会開発でもあり、社会の全面的進歩を追求する必要がある。新区は計画実行において、厳格な土地管理、投資密度と効果に重視するなどの措置を採用した。また、「勤政廉政」も重要な投資環境であり、新区において一流の党組織が一流の開発を牽引した。趙啓正氏は、「浦東新区の開発の経験を総括すると、目に見え手で触れられるGDP、税収、輸出入額などのハード面の成果より、経済成長、社会進歩、都市インフラ建設、国家間協力、政府の職能移転、人材育成などの思考と経験の方が貴重」だと話した。

 

全国政協常務委員、経済委員会副主任の楊偉民氏
全国政協常務委員、経済委員会副主任の楊偉民氏

 楊偉民氏は「空間的発展理念を樹立し、都市化の高品質発展を推進する」と題した基調演説の中で、次のように指摘した。工業化の高品質発展と都市化の高品質発展は、経済高品質発展を促す2大任務だ。互いに関連し、互いに促進し、どちらも不可欠だ。都市化の高品質発展の意義は、都市の経済・人口・自然環境のバランスの取れた発展の実現にある。その上で重要になるのは「空間均衡発展」という理念を樹立することだ。これはつまり一定の空間内で、「経済発展、人の全面的な発展、持続可能な発展」という3つの発展のバランスを取ることだ。富が増え、すべての人に公平に分配され、自然再生を維持する。都市化の高品質発展については、戸籍の規制をさらに緩和し、農村建設用地財産権制度を改善し、住宅用地の供給を拡大できる。都市圏を範囲とし、計画、要素流動、インフラ、生態環境、観光、エネルギー、ビッグデータなどの一体化を実現する。また「一枚の青写真」で最後まで推進できる空間計画を策定する。

 

国家発展改革委員会発展戦略計画司副司長の周南氏
国家発展改革委員会発展戦略計画司副司長の周南氏

 周南氏は「メカニズムの革新、現代化都市圏の育成・発展」と題した特別報告の中で、都市圏の概念は何の根拠もなく生じたわけではなく、国際的な経験と国内の実験の結果を合わせ形成された「客観的な法則」であると表明した。同意見は、2035年までに現代化都市圏の構造がさらに成熟し、世界的な影響力を持つ都市圏を形成するとした。周氏は次のように指摘した。現代化都市圏の育成・発展で必要になるのは、インフラ一体化の推進の加速、都市間の分業と協力の強化、統一的な市場の建設の加速、公共サービスの共同建設・共有の推進の加速、生態環境の共同保護・ガバナンスの強化、都市部・農村部融合発展の実現だ。公共サービスの共同建設・共有、生態環境の共同保護・ガバナンスは、現代化都市圏の成熟度を示す重要なものさしだ。政府は都市圏内の社会保障及び公共サービス一体化・均等化の推進を加速し、公共サービス及びインフラの量・構造・配置を調整することで人口増に伴う効果的な需要に適応し、高品質の公共サービス資源の共有により都市圏内の人口移動をけん引するべきだ。

 

東京経済大学教授、雲河都市研究院長の周牧之氏
東京経済大学教授、雲河都市研究院長の周牧之氏

 周牧之氏はシンポジウムにて、雲河都市研究院による中国中心都市&都市圏発展指数2018を発表した。同報告書は科学的な指標体系により中国の地級以上298都市の「身体検査」を行った。かつ都市の地位、都市圏の実力、影響力、広域ハブ、開放・交流、文化教育、ビジネス環境、革新・創業、生態資源環境、生活の質など10のメイン項目と30のサブ項目から順位を確定した。

 同報告書の総合ランキングのうち、北京市、上海市、深セン市がトップ3を占めた。4−10位は広州市、天津市、成都市、杭州市、重慶市、南京市、武漢市。

 経済規模、都市圏の品質、企業集約などで形成された都市圏の実力ランキングを見ると、北京市、上海市、深セン市がトップ3を占めている。4−10位は広州市、天津市、重慶市、杭州市、武漢市、成都市、南京市。製造業、IT産業、金融、科学技術、高等教育、生活文化サービスなどの影響力のランキングを見ると、やはり北京市、上海市、深セン市がトップ3を占めており、成都市が4位につけている。5−10位は広州市、杭州市、南京市、西安市、武漢市、天津市。

 貨物貿易、実行ベース外資導入額、域外観光客、国際会議などの指標からなる開放・交流項目のランキングを見ると、上海市が首位で、北京市と深セン市が後に続いている。4−8位は天津市、広州市、重慶市、杭州市、成都市。青島市と寧波市がトップ10入りしている。ビジネス環境のランキングを見ると、上海市、北京市、広州市が優れており、アモイ市が8位につけている。生態資源環境のランキングを見ると、上海市が北京市を抑え1位で、3位は深セン市。革新・創業のトップ3は北京市、深セン市、上海市。

 周牧之氏は同報告書について、次のように説明した。都市圏政策の要義は、過度に高い人口密度を下げ、人口集中地区(DID)を強化し、中心都市と周辺中小都市の相互発展構造の形成を推進し、都市圏の影響力を拡大することにある。特に国際交流の場としての能力を強化し、世界の都市による大規模な交流と競走の時代により良く参与する。

 

 長江デルタG60科学技術イノベーション回廊連席会議弁公室常務副主任の陸峰氏はシンポジウムにて、同回廊の模索と実践について紹介した。ドイツ、フランス、メキシコ、バングラデシュなどの外国からの出席者は、中国の都市発展の勢いに関する印象を語った。朝陽区長補佐の馮文氏は、中国は古都保護など海外の先進的な経験に学ぶ必要があり、中国の都市建設及び発展の道も世界にその参考事例を提供したと述べた。

 

中国網編集長の王暁輝氏
中国網編集長の王暁輝氏がシンポジウムの司会者を担当。

「中国網日本語版(チャイナネット)」 2019年6月12日


【シンポジウム】「交流経済」×「地域循環共生圏」が新たな時代を創り出す

岡本英男学長と森本英香環境事務次官
開会挨拶する岡本英男学長と森本英香環境事務次官

NOTE:年間訪日外国人数が2018年に初めて3000万人を超え、そこで培われる交流交易は日本の地域活性化の可能性をも広げている。地球規模では、温暖化を主原因とする災害の発生が相次ぎ、循環型社会の構築が人類共通の緊急課題となって久しい。創立120周年を迎えた東京経済大学は2019年1月26日、「交流経済」×「地域循環共生圏」—都市発展のニューパラダイム−と題したシンポジウムを東京・国分寺の同大学キャンパスで開催した。


 楊偉民中国人民政治協商会議常務委員を始めとする中国の政策実務担当者らを招き、日本の中央官庁、地方行政責任者、有識者らと意見を交わした。環境・経済・社会の統合的向上を目指す新しい成長モデルについて、それぞれの立場から今後の多様な方向性が示された。学生、市民、研究者ら約200人が熱心に聴講した。

 冒頭、岡本英男東京経済大学学長が開会挨拶し、同大学創設者で実業家の大倉喜八郎が孫文の支援者として辛亥革命を助けたエピソードに触れ、同大学と中国との深い結びつきを紹介。日中両国の発展にとってプラスになる事業を今後も進め「狭い学問、学内だけに閉じ込もらず行政官そして民間企業とも広く連携したい」と表明した。

 森本英香環境事務次官は、地球温暖化、保護主義、情報化・グローバル化を今の時代の3大不安定要因とし、新しい安定を見出す必要性を述べた上で「地域の資源、文化、人材を活かした交流が必要だ。日中双方の有識者の交流で新しい視点、アイディア、そして未来が生まれる」とシンポジウムの議論に期待した。

 

楊偉民氏と中井徳太郎氏
基調講演をする楊偉民氏と中井徳太郎氏 

 基調講演では、八年ぶりに来日した楊氏が、「巨大な中国、多様性のある中国における空間発展」をテーマに、中国政府が推進する「生態文明」の概念と、今後の発展の道筋について説明した。「中国は、空間の特徴と生態バランスにおける各地域の役割に配慮し、均一的発展モデルを取りやめ、発展すべきところは発展、保護すべきところは保護する考えで“主体功能区”政策に取り組んでいる」と紹介し、中国の目指す空間構造について展望した。

 中井徳太郎環境省総合環境政策統括官は、昨年4月に閣議決定した第5次環境基本計画が、環境だけでなく経済、社会を含め統合的に課題解決を図るビジョンだと説明。具体的には、「自然の恵み、森里川海を見つめ直し、地域の住民、自治体政府、金融、建設など各業界が協力して新技術を活用し、豊かな食、水、空気を確保する。そうした地域資源利用により地産地消を進め、さらに他地域とも連携することがビジネスにもつながる。草の根の国民運動として広げることで、コミュニテイが出来、災害に強いエコシステムが成り立ち、高齢化にも対応できる」と力説した。

 「交流経済」をテーマとしたセッション1では、司会の周牧之同大学経済学部教授が、自ら責任者として開発し日中両国で出版した中国都市総合発展指標(日本語版は「中国都市ランキング」)を使い、1980年代以降今日までの日本、中国そして世界で、大都市に人口が急激に集中した現象を分析。グローバリゼーションと交流交易経済に最も適した場所として成長を謳歌しているのが、日本では東京大都市圏、中国では長江デルタ、珠江デルタ、京津冀の三大メガロポリスだと指摘した。 

 

周牧之教授
問題提起する周牧之教授

 また、周教授は日本と中国で経済成長を実現させた要因が共に「輸出及び都市化の進展」であったとした上で、従来の製造業に代わってリーディング産業として台頭したIT業界を事例に解説。中国では、香港、上海、深圳の三つのメインボードに上場するIT関連企業の94%が、TOPランキング30都市に集中して立地している。都市のIT輻射力は、空港、海外旅行客数、国際会議数はもちろん、科学技術、ホテル・飲食、高等教育などの輻射力との相関係数が高く、グローバル化を進め、人材、資金、生活レベルを不断に高める都市に集中する。日本のIT業界もほぼ同じ様相を見せている。「日本と比べて中国の都市は、市街地の面積が拡大しても都市人口はさほど増えていない。またCO2排出量が膨らみ、環境を著しく悪化させた点で、ロークオリティ成長であった」とし、環境、経済、社会が共に発展するハイクオリティな成長を目指すための方向性について問題提起した。

 これを受けて、前田泰宏中小企業庁次長は、一人ひとりが我が事として環境問題を捉える事が重要であるとし、「日本人も中国人も現在最もお金を払うのはストレス解消への投資だ。自らの生きる環境を改善する事こそが生きる意欲に繋がり、またSDGsの実現に繋がる」と呼びかけた。街づくりの改善で人の往来を増やしたイタリア・ベネチアや東京・谷中の取り組みを事例に、「観光客ら訪問人口の回転率を増やす事で、人口減による経済の落ち込みも補える。交流経済の質の向上が欠かせない」と述べた。

 次いで元IMF理事の小手川大助キャノングローバル戦略研究所研究主幹が、世界でいま海外観光客の最も多い都市はフランスのパリで、その数が年間8000万人である事に比べると、「日本の3000万人はまだ少ない。人口から見ても中国や他の新興国にはまだ圧倒的な成長の余力と市場がある」と述べた。健康食品事業に携わった自らの経験を紹介しながら、「新たな時代の経済成長には新しい製品作りや、それに伴う海外との共同投資、共同研究の拡がりが必須だ」とし、来日時の一人当たり観光消費額がいま最も多いロシアなどへの日本ビザ発給の緩和で、海外との交流交易が一層進展するよう期待した。

 元中国国家統計局長の邱暁華マカオ都市大学経済研究所所長は、中国経済が生産主導から消費主導へ移向する新常態にあ るとし、「中国経済の最も大きな変化は、中間層の拡大による消費動向の変化だ」と説明した。健康、娯楽、文化など新しい需要の拡大が経済を牽引していくに当たり、対外的には一層開放し、国内的には「製品開発などの分野で研究及び経営努力を奨励すべきだ」と述べた。

 続いて、周教授が指標データを使い、西暦2000年以降の東京大都市圏と北京の都市のパフォーマンスを比較した。北京は東京と比べて都市面積が1.2倍、人口が6割、一人当たりGDPは同半分まで追いついたものの、一人当たりCO2排出量は同2.1倍、単位当たりエネルギー消費が同4.7倍に及んだ現状を提示。環境への配慮が都市づくりの今日の最重要課題であるとした上で、さらに東京が、海外観光客数で北京の5.6倍、国際会議開催数で同17.4倍、国際評価トップレストラン数で同10倍と、開放性でも差を広げたことに触れ、「東京は、観光、娯楽、仕事、衣食住全般で訪れる人の多目的行動を満足させ、加えて交流経済のシンボルであるIT輻射力も集中していることから、交流経済の場として極めて秀でた」と分析した。

 

パネリストの前田泰宏氏、小手川大助氏、邱暁華氏
セッション1のパネリストの前田泰宏氏、小手川大助氏、邱暁華氏

 この分析を受けて、前田氏は、「人がITツールを用い、様々なライフスタイルを分割所有できる時代になった。求心力のある人物が色々な地域に住んで交流し、発信し、仕事をする。そうした人をベースにさらに人が集まるような交流経済が量を増やす」と述べた。小手川氏は、東京そして日本の役割を展望し、「貿易、軍事、ITの3つが、米中間の大問題となっている中、日本は、中国への理解を米国に促すなど、米中関係をつなぐ橋渡し役を務めることが肝心だ」と訴えた。また、中国に対して、「経済発展のポテンシャルを大きく持つにもかかわらず、金融面が内向きに閉じている国内の現状を改善してほしい」と投げかけた。邱氏は、「交流交易はすなわち人と人との関係構築である」と述べ、大陸、香港、台湾、マカオを含めると約1500万人もの華人が日本を訪れている一方、日本人の中国渡航が未だ少ない実情を取り上げ、「百聞は一見に如かずだ。実際に訪れてみる事で、中国への認識と実情との隔たりを埋められる。一方通行でない交流交易を進めるためにも、大勢の日本人の中国訪問を歓迎したい」と呼びかけた。

 

尾崎寛直氏、和田篤也氏、小林一美氏、張仲梁氏
セッション2に登壇する尾崎寛直氏、和田篤也氏、小林一美氏、張仲梁氏。

 周教授は、「多様性と開放こそが交流経済の必要条件」とし、マサチューセッツ工科大学(MIT)に赴任していた2007年当時、エネルギー革命に向けてMITが世界中から国籍、出身、背景の異なるエネルギーの専門家をハイスピードで集めたことを目の当たりにした経験を紹介、「MIT自体に大きな魅力があったからこそ人材が集まった。多様性と開放に加えて、都市も拠点も個人も、自分自身を魅力ある存在として高めていくことが、交流経済を形作る」と総括した。

 「地域循環共生圏」がテーマのセッション2では、司会の尾崎寛直同大学准教授が、「地域が自らもつ風土、食、文化を売りにし、イノベーションを続け、外の社会に繋がりグローバルに繋がることを、どう引っ張るのか」と問題提起した。

 和田篤也環境省大臣官房政策立案総括審議官は、グローバルリスクである地球温暖化問題の、50年後100年後を見据えた解決構想として、環境省が描いた大絵図を示しながら説明。地域循環共生圏について、「住民が自分たちの目線でオーダーメードの計画を作り、自律分散型再生可能エネルギーシステムの構築、防災、観光、交通、健康など様々な分野で、独自のビジネスを行う。資源・資金・人の循環と自然との共生をコンセプトにし、得意不得意分野を他地域とのネットワークで補い、技術で支えることを目指す。そうしたステージに今後入っていく」と展望した。

 神奈川県横浜市は、2015年のパリ協定、国連の持続可能な開発目標SDGsを受け、日本の大都市としては初めて地球温暖化対策実行計画「Zero Carbon Yokohama」を掲げ、街づくりに取り組んでいる。同市の小林一美副市長は、「地域循環共生圏」の大都市モデルの事例を紹介。具体的には、持続可能なライフスタイルを子供達に伝えるエコスクールの開催、新横浜一帯に集積するIT企業と連携した次世代のエネルギー自給システムの構築、小・中学校での蓄電池設置による災害時非常用電源の確保など「モデル活動を相次いで実施し、CO2削減を具体的に示している。これを継続して行うことが大事だ」と述べた。また、再生可能エネルギーに関する横浜市と東北の自治体との取り組みを紹介し、国や他の自治体との防災、福祉、教育面での実践的連携の重要性に言及。横浜市が石油精製、火力発電などいわばCO2排出産業に税収、雇用とも支えられている実情のなかで、「脱炭素経済に向けてどう新しい産業構造や市民社会を作っていくか、また、税金を環境対策にどう回すかが課題だ」と述べた。

 中国国家統計局元司長の張仲梁南開大学教授は、京津冀メガロポリスを事例に中国の現状について説明した。同メガロポリスは北京、天津といった巨大で近代的な都市がある一方、周辺の河北省は経済的に遅れを取っている。「北京や天津からの経済的な波及効果が望めないことにより河北省は鉄鋼産業に特化し、深刻な大気汚染を発生させた。結果、北京にも多大な環境被害をもたらした」とし、メガロポリスの発展が中国都市化政策の基本となっている中で、今後目指すべきは「メガロポリス内部の協調発展である」と力説した。

 横浜など大都市と比べ人口や財源が少ない小さな自治体の現状をどう考えるかについて、和田氏は「地域循環共生圏の芽が小さな自治体にも様々出ている」とした上で、「共生圏を支える地域の人材育成を図るため、プラットフォーム作りを環境省で立ち上げる」と宣言した。

 海外との交流激増の時代に即した都市作りに関しては、小林氏が「魅力ある街、環境に配慮した街作りをすれば、観光客が来る。企業が来て、雇用も増え、税収も増す良い循環ができる。そうした循環と、従来から市を支えて来た基幹産業との関係作りを、市民とともに考える。脱炭素を目指す動きを提示しながら課題解決に向けて、国と連携して実施していく」と決意を述べた。小林氏はまた、20年前に実施したゴミ削減30%運動により、当初予想の半分の年月で目標を超える43%削減を実現し、ゴミ焼却工場を二カ所閉鎖、年間20億円のコスト削減と、大きな成果をあげた横浜市の事例を紹介、「のべ1万回に及ぶ住民説明会を開き、市民や企業がゴミ問題を我が事として行動するようになった。私たちはできる、という意識が結果に繋がった」と振り返った。

 張氏は、「中国での環境政策に携わる仲間が、海外の実情から学び、国内の取り組みに生かしている。中国人の海外渡航が増え、実際の交流から優れた思考を受け入れることが、変革をもたらしている」と力説、和田氏も「交流がキーワードだ。交流を契機にプロジェクトを作り、地域の銀行と手をつないで財源不足を補い、現場に密着した技術を導入するアプローチで、動き出すことができる」と強調した。

 

懇親会
懇親会での交流

 シンポジウム終了後は、日中双方のパネリストを囲み、参加者による懇親会が開かれた。

 席上、楊偉民氏は、「私の仕事は生態環境保護につながりのあるものが増えた。本日のシンポジウム参加で、人と人との交流を増やしたいと思った。自分のふるさと、そして世界を美しいものにして行きましょう」と呼びかけた。元環境事務次官の南川秀樹日本環境衛生センター理事長は、「日中が世界の環境政策をリードする時代が来る」と展望し、乾杯の挨拶をした。

 歓談に次いで挨拶した大西隆豊橋技術科学大学学長は、「中国で大都市の時代が幕開けた約20年前に出会って以来のお付き合いの楊さんの話しを聞きたいと駆けつけた」と歓迎し、環境、グローバリゼーション、都市化の課題への日中間協力の重要性を述べた。西正典元防衛次官は、シンポジウムの席上議論された「米中関係の通訳として日本が役割を果たす」意義に改めて言及し、日中合作の進展に期待した。駐日中国大使館を代表して阮湘平公使参事官が、「生態文明重視を掲げる中国と日本との環境保護の面での交流を続けて行きましょう」と述べた。横山禎徳東京大学EMP特任教授は、「交流経済は観光客だけでなく、日常で人が行き来できるようになると一層効果が上がる」と提起し、小島明政策研究大学院大学理事は、環境問題解決は日中共同のミッションであり、「パッション(情熱)とアクション(行動)で共同作業していこう」と続けた。

 シンポジウムで分析資料として多用された中国都市総合発展指標の日本語版『中国都市ランキング』の出版元、NTT出版の長谷部敏治社長は、周教授が責任者となって日中共同で開発した同書の内容について、「中国の都市分析に留まらず、東京大都市圏を始め日本の都市の分析を盛り込んでいる」と、アピールした。前多俊宏エムティーアイ社長は、「中国と日本の人と人との交流から生まれるものの大きさを実感した」と、シンポジウムの成功を祝った。

 閉会挨拶に立った周教授は、楊氏、中井氏とともに肩を並べて立ち「私たち3人は義兄弟と言ってもいいほど大切な仲間。20年間度々顔を合わせ、大きな問題について膝付き合わせて議論し合い、実践してきた」と力説、環境、経済、社会問題の統合的解決の土台は個人と個人の交流にこそある、と述べて会を締めくくった。関口和代同大学教授が総合司会を務めた。

 

中国網日本語版(チャイナネット)2019年1月31日

 


【出版パーティ】「中国都市総合発展指標」日本語版が出版。中国指標の海外初デビュー

 中国国家発展改革委員会発展計画司と雲河都市研究院が共同編纂した中国都市総合発展指標(以下、〈指標〉)日本語版が2018年6月、日本全国で発売された。指標の中国語版はすでに2016年版と2017年版が出版後、各界から高く評価されており、本書は中国の都市を評価する指標としては、国際社会初登場となる。

 〈指標〉日本語版中国都市ランキング−中国都市総合発展指標(NTT出版社)は、全カラーで、中国295の地級市以上都市を全て網羅した巨大な情報量を、グラフィックに再現している。指標は「3×3×3」項目で構成されている。すなわち環境、社会、経済の3つの軸を立て、それぞれまた3つの中項目に分け、さらにそれを3つの小項目に細分化した。最新の統計データだけではなく、衛星リモートセンシングデータやビッグデータも活用、133項目の指標データをもとに都市を全面的に分析している。

■ 各界第一人者が大勢来場


 中国都市ランキング−中国都市総合発展指標出版に伴い、記念パーティが7月19日、東京で行われた。海江田万里衆議院議員・民主党元党首杉本和行公正取引委員会委員長・元財務事務次官福川伸次東洋大学理事長・元通産事務次官森本英香環境事務次官ら、日本の官界・政界、産業界・学術界の第一人者が大勢お祝いに駆けつけた。

 開会挨拶をした南川秀樹元環境事務次官は、周教授の指標作成への情熱とリーダーシップを讃え、指標出版を祝った。

開会挨拶をする南川秀樹元環境事務次官

 安斎隆セブン銀行特別顧問・元会長は、「都市は多角的に、分度器で図るようにして見なければならない。この指標を元に競い合うことが都市の発展を支えるだろう」と展望した。

乾杯挨拶をする安斎隆セブン銀行特別顧問・元会長

 中国からは3人の祝辞が代読された。楊偉民中国人民政治協商会議常務委員・中国共産党中央財経領導小組弁公室元副主任が、「指標は、日中両国学術研究の結晶。環境、社会、経済の三つの角度から中国の都市を捉え、その発展の成果と代価を評価した点で、また中国の都市化の経験と教訓を論理的にまとめ、総括した点で、更に中国と世界の都市化の道のりを探索した点で重要な意義を持つ」とし、「中国の都市化への理解はすなわち中国を理解することだ。日本語版出版で日本の皆さまが中国の都市化を理解し、中国の数十年来の変遷への認識を深める上で、一つの道筋が与えられる」と述べた。

 徐林中国城市和小城鎮改革発展センター主任・中国国家発展改革委員会発展計画司元司長は、「周教授と私の二人で発起人となって作成した指標の目的は、都市の発展状況をGDPだけでなく全面的に評価し、それにより各都市が活路を見出し易くすることにあった」と紹介。「今後20年、中国は更に2億人を超える人びとが農村から都市部に入り、多くの都市がメガシティ、そしてメガロポリスになる。このプロセスで、中国は日本の成功に誠実に学ぶことが必要だ」と述べた。

 杜平中国第13次五カ年計画専門委員会秘書長・中国国家信息センター元常務副主任は、「従来の中国の都市化について、今まさに客観的に総括する時だ」とし、「中国は都市化によりもたらされた環境汚染など深刻な大問題に果敢に取り組んでいく必要があり、この点、中国国家発展改革委員会発展計画司と雲河都市研究院が共同で作り上げた指標は、非常に大きな意味がある。本書の客観性、国際性、学術性、権威性は中国の今後の都市発展に、絶えず大きな影響力を示していく。大勢の日本の皆さんが中国都市をより理解し、日中協力の機会が広がることを確信している」と述べた。

 メッセージではまた山本和彦森ビル元副社長が、「この指標に関わった者の一人として、指標が今後更に進化、発展し日本、中国にとってより良い都市とは何か、どうしたら作れるのかの研究と実践が進むことを長年都市開発、まちづくりに関わる者として期待している」と述べた。

左から竹岡倫示・日本経済新聞社専務執行役員、横山禎徳・東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム特任教授、大西隆・豊橋技術科学大学学長、周牧之・東京経済大学教授

■ セミナーで指標解説


 続いて、「中国都市総合発展指標は何故必要なのか?」と題したセミナーが開かれ、大西隆豊橋技術科学大学学長・日本学術会議元会長は、「指標は想像を絶する勢いで進む中国都市化を分析した処方箋である」と紹介し、「経済、環境、社会のバランス良い発展、新旧の文化を大切にした発展への知恵袋になって欲しい」と期待した。

セミナー会場の様子

 指標の経済、環境、社会の3×3×3構造の原案を考えた横山禎徳東京大学EMP特任教授は、「都市は、生活、産業、学問などのインターリンケージの集積である」と述べ、それを示すのが指標であり、都市をどうデザインするかが重要で、指標が大いに活用できると述べた。

 指標編著者の周牧之東京経済大学教授は、膨大なデータから整合性ある使えるデータを見極め、整理した指標作成の苦労の一端を披露した。その上で指標の、「人口密度」「水資源」「輻射力」など数多くの情報を盛り込み作成した図表を示しながら中国都市のパフォーマンスを解説。「中国のメガロポリス化が進む中、指標で、中国の都市のビヘイビア(Behavior)の変革を促したい」と述べた。

セミナー会場の様子

 司会を務めた竹岡倫示日本経済新聞社専務執行役員は、以前自身が関わった日本経済新聞社による企業評価指標が、「利益追究にのみ傾いた経営でバブルをもたらした日本企業の在り方を変えた」と紹介しつつ、「この中国都市ランキングは、中国経済の細胞たる都市の改革を促すであろう」と強調した。

周牧之・東京経済大学教授による閉会挨拶

■ 指標への絶賛と期待


 席上、挨拶に立った福川伸次は「指標には今後、お笑いや美術市場、美味しいレストランなど文化分野で、都市の状況を盛り込み、AI技術を駆使して分析し、都市の魅力の多様化に繋げて欲しい」と期待した。

祝辞を述べる福川伸次東洋大学理事長・元通産事務次官

 杉本和行氏は「指標には中国の都市の持つ課題が提示された」と高く評価した。

祝辞を述べる杉本和行公正取引委員会委員長・元財務事務次官

 森本英香氏は、「膨大なデータを一枚の図にして多数提供した。中国の行方を見定める指標として学ぶところが多い。これは世界の環境問題の解決を、日中でリンクして進めるきっかけになる」と力説した。

祝辞を述べる森本英香環境事務次官

 中国大使館の阮湘平公使参事官は、「改革開放40周年、日中平和友好条約40周年の節目に出版された、さながら人間ドックの“都市版”とも言えるこの指標が、定期的に中国の都市発展上、警鐘を鳴らす存在であって欲しい」と述べた。

祝辞を述べる阮湘平・中国大使館公使参事官

 古川実日立造船相談役・元会長は、「先日、深圳市を訪問したところ連日素晴らしい青空が広がっていた。深圳はまさに中国都市ランキング環境No.1の通りの都市であった」とし、同社のゴミ焼却炉、肥料製造など環境関連技術を紹介し、「引き続き中国の環境改善に貢献したい」と決意を表明した。

祝辞を述べる古川実日立造船相談役・元会長

 新井良亮ルミネ相談役は、「指標は、環境、経済、社会の三つの視点で都市を見たときの、人びとや企業が考えるべきことを提示した」と述べた。

祝辞を述べる新井良亮・ルミネ相談役

 宮島和美ファンケル副会長執行役員・元会長は「中国の広大さを実感させられる295都市を全て網羅した」と、同指標の重要さと有益性に言及した。

祝辞を述べる宮島和美・ファンケル副会長執行役員・元会長

 武田信二東京放送ホールディングス会長は、「この指標は、現代中国の都市思想の拠り所になりうる」と絶賛。

祝辞を述べる武田信二・東京放送ホールディングス会長

 森本章倫早稲田大学教授は、「指標を使い、共に中国と日本の役に立つ研究を周先生と一緒に進めて行きたい」と述べた。

祝辞を述べる森本章倫・早稲田大学教授

 島田明日本電信電話副社長は、「中国語版指標を手に取った時、これの日本語版があるといいねという話になった。それが実現した」と喜びを語り、「データ解析などの手段で、日本と中国が一緒に発展する手伝いをさせて頂きたい」と語った。

祝辞を述べる島田明・日本電信電話副社長

 前多俊宏エムティーアイ社長は、「周教授は10数年前からメガロポリス発展戦略、都市化など今の中国の状態や課題を言い当ててきた。指標のランキングそのものがメッセージであり、これから10年後の中国、そして世界に色々な影響を与えるとものとなる」と讃えた。

祝辞を述べる前多俊宏・エムティーアイ社長

 中井徳太郎環境省総合環境政策統括官は、「地球全体と人間とが折り合いの付いていない現在、持続可能性をどう追求するかを見極めて実行する時期にきている。この視点で、指標が3×3×3の構造で可視化した中国の都市発展を日中協同で進めていきたい」とパーテイを締めくくった。

祝辞を述べる中井徳太郎・環境省総合環境政策統括官
パーティ会場の様子

中国網日本語版(チャイナネット)」2018年7月23日

中国都市総合発展指標2018

1. 総合ランキング


北京が3年連続で総合ランキング第1位、上海が第2位、深圳が第3位

 2016年、2017年と同様に総合ランキングトップ5都市は依然として北京、上海、深圳、広州、天津となった。首位の北京は、社会ランキングにおいて圧倒的に優勢で、空気環境の質がさらに改善されたことで、「環境」大項目のパフォーマンスも向上した。総合ランキング第2位の上海は、経済ランキングにおいて首位の座を保持した。「環境」大項目の「空間構造」中項目指標も上海が全国第1位を維持した。総合ランキング第3位の深圳は、「環境」「社会」「経済」の3つのランキングにおいて、それぞれ全国第1位、第8位、第3位となり、比較的バランスのとれた発展をしている。総合ランキング第4位の広州は、社会ランキングにおいて第3位で深圳よりも順位が高くなっている。第5位の天津は、「環境」大項目が第21位で2017年に比べて改善されている。杭州は2017年より順位を1つ上げ全国第6位、重慶は第7位に後退した。成都は2017年の第10位から順位を上げ2018年は第8位、南京は第10位であった。武漢は第9位に返り咲き、蘇州は2017年の第8位から第11位に転落した。

中国都市総合発展指標2018 総合ランキングトップ30都市
中国都市総合発展指標2018 総合ランキング1位 – 30位
中国都市総合発展指標2018 総合ランキング31位 – 150位
中国都市総合発展指標2018 総合ランキング151位 – 298位

2. 環境大項目ランキング


深圳は3年連続で環境ランキング第1位、三亜は第2位、海口は第3位を保持

 深圳は3年連続で環境ランキング第1位を獲得し、三亜と海口は2017年と同様、それぞれ第2位、第3位を保った。

 環境ランキング第4位の普洱と第5位の北京は、いずれも2017年と比べ大きく順位を上げている。特に北京の「空間構造」中項目が全国第3位となったと同時に、2017年に比べて空気汚染が大幅に改善された。北京だけではなく、空気の質が大幅に改善された他の都市、例えば福州や広州なども「環境」大項目でのパフォーマンスが、各々相対的に向上した。

 廈門は第6位を維持している。広州と上海は第7位、第8位であり、2017年と比較していずれも3つ順位を落としている。福州と重慶は第9位、第10位となり、2017年より各々1つ順位を下げている。2017年にトップ10都市に入っていた蘇州と珠海は第15位、第18位と2018年は残念ながらトップ10都市にランクインできなかった。

中国都市総合発展指標2018 環境ランキングトップ30都市
中国都市総合発展指標2018 環境ランキング1位 – 30位
中国都市総合発展指標2018 環境ランキング31位 – 65位
中国都市総合発展指標2018 環境ランキング66位 – 100位

3. 社会大項目ランキング


北京、上海が3年連続で第1位、第2位、広州は第3位を保持

 北京と上海は3年連続で第1位、第2位を獲得し、広州は2017年と同様に第3位であった。

 首都という性質上、北京は、「社会」大項目の「ステータス・ガバナンス」「伝承・交流」「生活品質」の3つの中項目指標でいずれも他の都市と比類ない優位性をもっている。上海は「社会」大項目の3つの中項目指標で第2位を獲得している。広州の「生活品質」中項目は第3位、「ステータス・ガバナンス」中項目は第5位となった。

 社会ランキングの第4位は杭州、第5位は天津であり、2017年に比べそれぞれ1つ順位を上げた。逆に、重慶は2つ順位を落とし第6位となった。成都は第7位で「伝承・交流」中項目指標は2017年より2つ順位を上げた。深圳は同中項目で1つ順位を後退させ第8位であった。武漢の「生活品質」中項目指標が向上し、これに伴い社会ランキングは2017年より2つ順位を上げ、第9位となった。第10位は南京で2017年と比べ2つ順位を下落させた。前年度第10位であった西安は残念ながら2018年は第11位となり、トップ10都市にランクインできなかった。

中国都市総合発展指標2018 社会ランキングトップ30都市
中国都市総合発展指標2018 社会ランキング1位 – 30位
中国都市総合発展指標2018 社会ランキング31位 – 65位
中国都市総合発展指標2018 社会ランキング66位 – 100位

4. 経済大項目ランキング


上海が3年連続第1位を保持、北京は第2位、深圳は第3位

 上海は疑いの余地なく、3年連続で経済ランキングの首位に輝いた。北京が第2位、深圳は第3位となった。

 上海は「経済」大項目の「経済品質」と「発展活力」の両中項目指標で全国第1位に輝いた。北京は「都市影響」中項目指標で全国第1位を獲得した。深圳は「経済品質」と「発展活力」の両中項目指標で全国第3位、「都市影響」中項目指標では全国第4位になった。

 広州、天津、蘇州は、それぞれ第4位、第5位、第6位であり、2017年のランキングと変化がない。成都と杭州は第7位、第8位となり、いずれも2017年より順位を1つ上げている。重慶は第9位で2017年と比べると順位を2つ落とした。武漢は第10位で経済ランキングのトップ10位内に舞い戻った。2017年の経済ランキングトップ10都市にランクインしていた南京は第11位となり、残念ながら今回は追いつけなかった。

中国都市総合発展指標2018 経済ランキングトップ30都市
中国都市総合発展指標2018 経済ランキング1位 – 30位
中国都市総合発展指標2018 経済ランキング31位 – 65位
中国都市総合発展指標2018 経済ランキング65位 – 100位

中国都市総合発展指標2017

1. 総合ランキング


総合ランキングで北京が首位、上海が第2位、深圳が第3位

 北京、上海、深圳はそれぞれ「社会」「経済」「環境」の三大項目において全国のトップを占めている。
 北京は「社会」大項目において「生活品質」「伝統・交流」「ステータス・ガバナンス」の3つの中項目で第1位を誇る。上海は、「経済」大項目中「経済品質」「都市影響」および「環境」大項目中「空間構造」の3つの中項目で第1位である。深圳は「環境」「経済」「社会」の三大項目が、それぞれ第1位、第3位、第7位で比較的バランスの取れたパフォーマンスを見せている。しかし、北京と上海は「環境」大項目において多くの解決すべき課題があることが、各指標から見られる。
 広州と天津は総合ランキング第4位、第5位で昨年と同位である。両都市は「経済」「社会」2つの大項目で各々特色があるが、天津は「環境」大項目で奮わず、広州の下位に帰した。重慶、杭州、蘇州、南京、成都は、それぞれ第6位から第10位となった。

中国都市総合発展指標2017 総合ランキングトップ30都市
中国都市総合発展指標2017 総合ランキング1位 – 30位
中国都市総合発展指標2017 総合ランキング31位 – 150位

2. 環境大項目ランキング


環境ランキングは深圳が第1位を保持、三亜、海口がそれぞれ第2位、第3位

 深圳の「環境」大項目が第1位の理由として、高水準の都市化、都市交通の利便性の高さ、高密度な人口、コンパクトな空間構造が挙げられる。新興臨海型大都市として、深圳は「環境」「社会」「経済」の三大項目で相対的にバランスがとれている。
 「環境」大項目の第2位から第10位までの都市は、三亜、海口、広州、上海、廈門、珠海、福州、重慶、蘇州である。「環境」大項目ランキングトップ10都市の中で重慶と蘇州は、長江沿いの都市であり、その他8都市は臨海都市である。臨海、そして長江沿いの都市は、改革開放後の大交流、大交易時代に急速な経済発展を遂げただけでなく、交通の利便性と生態資源にも恵まれ、開放と交流、そして空間構造と環境品質のパフォーマンスが優れている。

中国都市総合発展指標2017 環境ランキングトップ30都市
中国都市総合発展指標2017 環境ランキング1位 – 30位
中国都市総合発展指標2017 環境ランキング31位 – 150位

3. 社会大項目ランキング


社会ランキングでは北京は首位、上海、広州がそれぞれ第2位、第3位

 北京は首都ということもあり、「社会」大項目の優位は他の都市とは比べることができないほど明確だ。上海は、「社会」大項目において「生活品質」「伝統・交流」「ステータス・ガバナンス」の3つの中項目ですべて第2位である。広州は「生活品質」中項目の第3位を除き、他の中項目は第4位となっている。
 重慶、杭州、天津、深圳、南京、成都、西安は、「社会」大項目でそれぞれ第4位から第10位である。
 「社会」大項目上位10都市は、直轄市、省都、計画単列市に集中している。深圳は改革開放によって経済特区として発展した新興都市であり、その他9都市は悠久の歴史を湛え、なかでも北京、杭州、南京、西安の4都市が、かつて王朝の古都であった。
 注目すべきは、珠江デルタメガロポリス、長江デルタメガロポリス、京津冀メガロポリスと成渝メガロポリスの4大メガロポリスの中心都市が「社会」大項目の上位9位を占めていたことである。

中国都市総合発展指標2017 社会ランキングトップ30都市
中国都市総合発展指標2017 社会ランキング1位 – 30位
中国都市総合発展指標2017 社会ランキング31位 – 150位

4. 経済大項目ランキング


経済ランキングでは上海、北京、深圳がそれぞれ第1位、第2位、第3位

 上海は長江デルタメガロポリスと長江経済ベルトのエンジンとして、「経済」大項目の首位の座を堅持した。北京は「経済品質」と「都市影響」の2つの中項目を上海に譲ったが、「発展活力」中項目では第1位である。「経済」大項目第3位の深圳は「経済品質」「発展活力」「都市影響」の3つの中項目が各々第3位となった。広州、天津、蘇州、重慶、成都、杭州、南京は、「経済」大項目でそれぞれ第4位から第10位である。
 珠江デルタメガロポリス、長江デルタメガロポリス、京津冀メガロポリスと成渝メガロポリスの4大メガロポリスの中心都市が「経済」大項目の上位10位を総嘗めにした。

れに対して成都は二位下げて第9位へと滑落、武漢はトップ10外の第11位へと下がった。

中国都市総合発展指標2017 経済ランキングトップ30都市
中国都市総合発展指標2017 経済ランキング1位 – 30位
中国都市総合発展指標2017 経済ランキング31位 – 150位

中国都市総合発展指標2016

1. 総合ランキング


総合ランキングで北京が首位、上海が第2位、深圳が第3位

  北京が総合ランキングで上海を抑えて第1位となったのは、「社会」大項目のパフォーマンスで上海を大きく上回ったことによる。しかし、北京は「経済」大項目で上海と比べてやや遜色があり、「環境」大項目のパフォーマンスでは上海より大きく下回っている。
 深圳は総合ランキングで北京、上海に続く第3位となった。深圳の優位性は「環境」大項目と「経済」大項目に表れている。特に「環境」大項目では深圳がランキング第1位を獲得した。新興都市である深圳は、「社会」大項目のパフォーマンスでやや遜色がある。
 広州は総合ランキングで第4位、天津は第5位となった。両都市は「社会」大項目と「経済」大項目で各々特色があり、広州は「環境」大項目のパフォーマンスで天津に秀でている。
 蘇州、杭州、重慶、南京と武漢は第6位から第10位であり、「社会」大項目と「経済」大項目において、5都市はほぼ上位10位内に入っている。しかし「環境」大項目では、最も順位の高い蘇州でも、ランキングは第20位に留まっている。

中国都市総合発展指標2016 総合ランキングトップ20都市
中国都市総合発展指標2016 総合ランキング1位 – 20位

2. 環境大項目ランキング


環境ランキングは深圳が堂々第1位、寧徳、フルンボイルがそれぞれ第2位、第3位

  深圳は「環境」大項目で首位となった。環境の各中項目指標のパフォーマンスでは、「空間構造」は第3位、「環境品質」は第10位、「自然生態」は第26位である。
 寧徳は「環境」大項目で第2位である。福建省にある寧徳はあまり知られていない都市ではあるが、気候は穏やかで、「水資源量」や「森林面積率」、「空気質指数」のいずれの指標も飛び抜けて高い。
 内モンゴル自治区フルンボイルは「環境」のランキングで第3位である。北部全域で「環境」大項目の上位20位入りした唯一の都市。森林、草原、空気の清々しさが際立っている。
 三亜、上海、南平、三明、汕尾、麗江、福州がそれぞれ第4位から第10位までの都市である。
 注目すべきは、総合ランキング上位10都市で、深圳と上海だけが「環境」大項目のトップ10に入ったことである。

中国都市総合発展指標2016 環境ランキングトップ20都市
中国都市総合発展指標2016 環境ランキング1位 – 20位

3. 社会大項目ランキング


社会ランキングでは北京は首位、上海、天津がそれぞれ第2位、第3位

 北京と上海は「社会」大項目で第1位と第2位であった。「伝承・交流」中項目では北京は上海に秀で、「社会ガバナンス」中項目では上海が北京を超えている。「生活品質」中項目では両都市は伯仲している。
 天津、杭州、広州、重慶、南京、蘇州、武漢と成都が、「社会」ランキングで第3位から第10位までの都市である。この8都市の偏差値の差はそれほど大きくはなく、偏差値が最大の天津が69.4で、最小の成都が65.5となっている。
 「伝承・交流」中項目指標は天津、広州、重慶が優勢で、「生活品質」中項目では杭州、蘇州が秀でている。

中国都市総合発展指標2016 社会ランキングトップ20都市
中国都市総合発展指標2016 社会ランキング1位 – 20位

4. 経済大項目ランキング


経済ランキングは上海首位、北京と深圳がそれぞれ第2位、第3位

 上海と北京が「経済」大項目で第1位、第2位。「経済品質」と「発展活力」の2つの中項目では上海が秀でているが、「都市影響」指標では、北京が突出した首位である。
 深圳、広州、天津と蘇州は「経済」大項目で第3位から第6位である。深圳は「経済品質」と「発展活力」の両中項目指標で上位であり、広州は「都市影響」指標でのパフォーマンスが目をひく。
 杭州、重慶、南京、成都は「経済」大項目で第7位から第10位となった。この4都市の偏差値に大きな違いはないが「経済品質」中項目では重慶がより優れて第4位である。「都市影響」指標では杭州と成都が比較的よく、各々第5位、第9位となった。

中国都市総合発展指標2016 経済ランキングトップ20都市
中国都市総合発展指標2016 経済ランキング1位 – 20位

【フォーラム】〈中国都市総合発展指標2018〉 フォーラム

〈中国都市総合発展指標2018〉フォーラムにて

 中国国家発展委員会発展戦略和計画司と雲河都市研究院が主催する「中国都市総合発展指標2018フォーラム」が2018年12月27日、北京・中国科学院学術会堂で開催された。フォーラムでは中国都市総合発展指標2018報告書が発表された。報告書は環境・社会・経済という3つの軸から、298にのぼる中国のすべての地級市以上の都市を評価した。

 同指標は中国国家発展委員会発展戦略和計画司と雲河都市研究院が共同で開発した。報告書の特徴の1つは、中国の都市化の現状に鑑み、毎年メインテーマを定めて報告書を公表することにある。2016年のテーマはメガロポリス発展戦略、2017年は中心都市発展戦略、2018年は大都市圏発展戦略に焦点を絞った。2016年から中国都市総合発展指標におけるすべての地級市以上の都市のランキングは公表している。

 フォーラムではまず、中国都市総合発展指標2018総合ランキング、そして「環境」、「社会」、「経済」三大項目ランキングを発表した。


中国都市発展の質的向上のキーはDID


 中国都市総合発展指標専門家委員長の周牧之東京経済大学教授は、報告書を発表し、中国都市化の特徴として、各機能が高度に大都市に集中していることを取り上げ、解説した。

 周牧之氏はさらに、報告書が独自に導入した「人口集中地区(DID)」という概念を使用し、中国都市発展の質を分析した。「中国では人口規模・密度が都市の環境およびインフラに及ぼす負荷を過度に強調しており、高密度人口が都市発展活力の重要な基礎であるとの認識に欠けている。中国は今後この誤った認識を正し、DIDの規模と質の向上を通じて都市の活力を高めるべきだ」と指摘した。

 報告書は2000〜2016年の中国都市化の重要指標を分析した。これによると、同期間に中国の実質GDPは約4.3倍に、都市部市街地面積は約2.8倍に膨らんだ。しかし、DID人口は僅か20%しか増加しなかった。周牧之氏は「土地の都市化のスピードが人口の都市化のそれをはるかに上回っていた」と説明した。

 またこの期間中、中国の1人当たり実質GDPは約3.9倍となった。GDP単位当たりのエネルギー消費量は40%減少し、GDP単位当たりのCO2排出量は30%減少した。しかし1人当たりのエネルギー消費量が大幅に増加し、1人当たりの電力消費量は4.3倍になった。その結果、CO2排出量が約3.1倍に激増し、中国は世界最大のCO2排出国になった。周牧之氏は「中国は経済発展と都市建設のクオリティを高める必要がある」と指摘した。

北京 VS 東京


 中国都市総合発展指標のもう1つの特徴は、都市の国際比較を可能としたことにある。

 報告書は人口、GDP、CO2排出量、PM2.5など指標について、東アジア2大都市圏である北京都市圏(北京)と東京都市圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)を比較分析した。それによると、北京市の面積は、東京都市圏の約1.2倍であるが、常住人口とDID人口はいずれも東京都市圏の約60%に留まる。北京のGDP規模は東京都市圏の3割程度で、1人当たりGDPも半分前後となっている。しかし北京のGDP当たりエネルギー消費量は東京都の7.4倍で、単位当たりGDPのCO2排出量は東京都市圏の4.7倍となっている。その結果、人口とGDPの規模で東京都市圏を大きく下回る北京だが、CO2排出量はその1.2倍となった。

 周牧之氏は「東京都市圏と比べると、北京は都市圏発展戦略の実施を通じ、DID空間構造、経済構造、ライフスタイルを改善し、資源効率を高めるべきである」と話した。

都市を理解するフレームワーク


 上海浦東新区管理委員会で初の主任を務めた趙啓正中国国務院新聞弁公室元主任はフォーラムへメッセージを寄せた。「報告書は都市を理解する新たな理念とフレームワークを提供した。これは中国の市長にとって極めて役立つ参考書だ」と評価した。

 趙啓正氏はまたメッセージの中で、人の健康を多くの重要指標で測るのと同じように、都市という「大きな体」も指標で測るべきだとした。

 趙啓正氏はまた、「今日の中国都市建設は、中国都市総合発展指標が提供する理念、合理性と総合性の枠組みを必要としている。これは時代の要請だ」と述べた。

都市のハイクオリティ発展を促す指標へ


 中国都市総合発展指標専門家委員会の首席専門家、中国共産党中央財経領導小組弁公室元副主任の楊偉民氏がフォーラムに出席し、基調講演した。楊偉民氏は、環境・社会・経済という3つの軸から都市の発展を評価する同指標を、中国都市の健康状況を見極める総合的な「健診報告」にたとえ、「どの都市が比較的健康で、どの都市がどういった問題を抱えているかが分かる。その意味では指標は、都市の進むべきディレクションを示した」と述べた。

 楊偉民氏は、中国におけるハイクオリティ発展を論じた上で、ハイクオリティ発展を目指した都市間の競争を促す指標が必要とされ、中国都市総合発展指標はすでにこうした機能を備えている」と述べた。楊氏はさらに、同指標を中国都市のハイクオリティな発展を検証する指標体系として明確に位置付けなければならないとし、中国国家発展改革委員会発展戦略和計画司に、そのことを上級指導機関へ報告すると同時に、各都市へも中国都市総合発展指標を推薦すると指示した。

「楽譜」の特徴と今後の展開


 周其仁北京大学教授は、中国都市総合発展指標を都市発展の「楽譜」にたとえ、各都市の市長らはこの「楽譜」を読み込む力を高めることが大切だと指摘した。

 中国統計局元局長の邱暁華氏は、同指標を中国都市発展の羅針盤、年鑑、成績表そして診断表でもあるとし、指標の製作と発表を続けていくことの意義を強調した。

 中国国土資源部(省)元副部長の胡存智氏は、「3×3×3構造」に着目し、指標体系の簡潔さを評価した。また同指標のデータの中で、衛星リモートセンシングデータやビッグデータを取り入れたことの意義を力説した。

 中国国家戦略新興産業発展委員会秘書長の杜平氏も、中国都市総合発展指標を指標構造、データ選定、指標開発、国際比較など4つの特徴から分析した。同指標を先見性と戦略性を持ち、ハイクオリティの発展を求める中国の都市にとって実用性の高い政策・計画ツールであると讃えた。

 さらに、中米グリーンファンド会長の徐林氏、中国科学院創新発展研究センター主任の穆栄平氏、人民出版社副社長の李春生氏、中国国家統計局社会科学技術文化産業司司長の張仲梁氏北京政治協商会議副秘書長の李昕氏らが、同指標の今後の展開について議論した。

 中国国家発展委員会発展戦略和計画司副司長の周南氏が司会を務め、各省庁関係者、都市問題専門家およびメディア関係者ら約50人がフォーラムに出席した。