海口:「気候快適度」が冴える中心都市【中国中心都市&都市圏発展指数2020】

 海口市は、「中国中心都市&都市圏発展指数2020」の総合第35位にランクインした。同市は2019年度より順位を1つ上げている。

 〈中国中心都市&都市圏発展指数〉は、〈中国都市総合発展指標〉の派生指数として、4大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる36の中心都市の評価に特化したものである。同指数は、これら中心都市を、全国297の地級市以上の都市の中で評価し、10大項目と30の小項目、116組の指標からなる。包括的かつ詳細に、中国中心都市の高品質発展を総合評価するシステムである。

 海口市は、海南省の省都で、「ココナッツシティ」とも呼ばれる港湾都市である。同市は、北宋時代に開港して以来、千年の歴史を有している。海口は海南島の一部である本島と海淀島、新部島などの離島からなり、陸地面積は2,297平方キロメートル(沖縄県と同程度)。2021年現在、常住人口は約291万人で全国では174位である。GDPは前年比11.3%増の約2058億元(約41兆円、1元=20円換算)で中国の都市の中で150位である。

 海口市および海南島は熱帯に位置し、自然に恵まれた臨海都市である。年間平均気温は23.8度であり、冬も寒くない快適な気候である。「気候快適度」は全国6位と、中心都市では最も順位が高い。空気も良く、大気汚染の状況を評価する「空気質指数(AQI)」は全国7位という高順位に輝いている。

 全長131kmのゴールデンコーストは、ヤシ、マングローブ、クレーター火山などの珍しい自然景観や、美しいビーチが点在する観光ベルトである。しかしながら、同市の「海外旅行客」は全国で46位、「国内観光客」は同167位と、全国平均を下回っている。海南島の南部に位置する中国屈指のリゾート都市・三亜市に比べ、観光都市としての実績はかなり劣っている。

 その理由として、低密度な都市開発、不動産開発への過度な依存、自動車交通に偏る都市構造などが挙げられる。

 また、中心都市としての輻射力の脆弱さも否めない。同市は、海南省GDPの約3分の1を占めているにも関わらず、「輻射能力」大項目は全国で46位と中心都市ではワースト5位である。

 一方、同市の広域交通機能は高い。「コンテナ取扱量」は全国で20位、「空港利便性」は同13位と高い。こうした広域交通機能は、海南島という中国最大級の離島の繁栄を支えている。

 海口市は非常に魅力的なポテンシャルを有しており、アジアを代表するような都市へと成長できる可能性を秘めている。機会があれば、ぜひ足を運んでいただきたい都市である。


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中国中心都市&都市圏発展指数2020
中国中心都市&都市圏発展指数2019
中国中心都市&都市圏発展指数2018
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石家荘:鉄道により生まれた大都市【中国中心都市&都市圏発展指数2020】

 石家荘市は、「中国中心都市&都市圏発展指数2020」の総合第31位にランクインした。同市は2019年度より順位を1つ下げている。

 〈中国中心都市&都市圏発展指数〉は、〈中国都市総合発展指標〉の派生指数として、4大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる36の中心都市の評価に特化したものである。同指数は、これら中心都市を、全国297の地級市以上の都市の中で評価し、10大項目と30の小項目、116組の指標からなる。包括的かつ詳細に、中国中心都市の高品質発展を総合評価するシステムである。

 石家荘市は、20世紀初頭は人口僅か578人の小さな村であったが、1902年に京漢鉄道(北京-武漢)の開通に伴い、同地に駅が設置されたことから、都市としての歴史が始まった。その後、中国における鉄道輸送の「南北交通の要衝」として大発展を遂げてきた。いまや河北省の省都として、中国三大メガロポリス「京津冀(北京・天津・河北)メガロポリス」における重要な中心都市の一つとなっている。2021年現在、総面積は14,530平方キロメートル(福島県よりやや大きい程度)、常住人口は約1,120万人で全国では13位である。GDPは約6,490億元(約13兆円、1元=20円換算)で中国の都市の中で40位である。鉄道により生まれた都市として、「鉄道利便性」は、全国24位である。

 同市は、北京から南西に約280キロメートルで首都北京に最も近い省都である。また、天津から西に約260キロメートルの位置にある。二つの中国を代表する都市に近接していることから、その恩恵を受ける一方、二大都市の光の影に隠れた側面も持つ。例えば、省都でありながら石家荘市には代表的な高等教育機関が乏しい。「世界トップクラス大学指数」では、同市は39位と中心都市のなかでは振るわない一方、同指標1位の北京と9位の天津に、多くの優秀な大学生が吸収されている。

 同市は、中国における穀物、野菜、肉、卵、果物の主要生産地の一つであり、国家認定の小麦生産基地として「北方の穀倉」とも呼ばれ、北京と天津の二大都市の胃袋を支えている。同市の「第一次産業GDP」は、全国24位と平均値を大きく上回っている。

 一方、河北省は、鉄鉱石の産地として、また唐山などの港から鉄鉱石の輸入可能な立地を生かし、近年、世界最大規模の鉄鋼産業集積を作り上げた。省都としての石家荘も、「中国都市鉄鋼業輻射力」では、全国22位という成績を収めている。そのため、国内有数の大気汚染都市ともなっている。大気汚染の状況を評価する「空気質指数(AQI)」では、ワースト4位という不名誉な順位で、中心都市の中で最も大気汚染が深刻な都市となった。

 河北省は、広大な平地を有し、歴史的に遊牧民族が元々いた農耕民族と混在して農耕活動を行なった地域である。ゆえに、人口密度が高く、省都としての石家荘も一千万人を超える巨大な人口を抱える。そのため同市の「一人当たりGDP」は全国144位にとどまっている。

 北京と天津という二大都市の近隣都市として、石家荘市が独自の存在感を出すことができるか。同市の行方は、京津冀メガロポリスの成長を占う上でも、注目のポイントである。


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中国中心都市&都市圏発展指数2020
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南昌:人民解放軍の発祥地【中国中心都市&都市圏発展指数2020】

 南昌市は、「中国中心都市&都市圏発展指数2020」の総合第30位にランクインした。同市は2019年度より順位を1つ上げている。

 〈中国中心都市&都市圏発展指数〉は、〈中国都市総合発展指標〉の派生指数として、4大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる36の中心都市の評価に特化したものである。同指数は、これら中心都市を、全国297の地級市以上の都市の中で評価し、10大項目と30の小項目、116組の指標からなる。包括的かつ詳細に、中国中心都市の高品質発展を総合評価するシステムである。

 南昌市は、江西省の省都であり、同省の政治、経済、文化、科学、教育の中心地である。同市は、長江中流の中心都市の一つであり、2200年以上の歴史を有する中国を代表する歴史文化都市でもある。

 2021年現在、同市の総面積は7,195平方キロメートル(岡山県と同程度)、GDPは約6,656億元(約13.3兆円、1元=20円換算)で、中国の都市の中で40位となっている。2021年の常住人口は約644万人で全国では59位の位置につけている。

 同市には、中国磁器の産地として有名な景徳鎮市や、古来より長江下流の一大交易都市として栄えてきた九江市が隣接している。江西省のイメージは、その2都市のイメージが強いため、南昌市の存在感は影が薄くなってしまう。同市の特徴は、「特徴がないことが特徴」とも言えるだろう。

 さる事ながら、同市は、観光都市としても著名である。景勝地を多く有し、中国3大楼閣に数えられる「滕王閣」や、国内で最も大きい淡水湖である「鄱陽湖」などが著名である。同市は、「三川五湖」と呼ばれる水資源に恵まれ、市域の約3割は水域が占めており、豊富な水系に囲まれた景観が、多くの観光客を楽しませている。

 また、同市は1927年8月1日の「南昌蜂起」で、人民解放軍発祥の地としても名高い。近年、中国では中国共産党の革命史をたどる「レッドツーリズム(紅色旅游)」が盛んであり、同市は共産党に関する史跡が多く、これを目当てにした観光客も多い。こういった背景から、同市の「国内旅行客数」は全国18位という成績を稼ぎ出している。

 新中国建国後、省都としての南昌市には、高等教育機関が多く設けられてきた。本指標の大項目「文化教育」を構成する「高等教育指数」は全国19位であり、そのうち、「大学生数」は全国9位、「大学教員数」は全国12位である。国内トップクラスの大学は少ないものの、膨大な数の大学生が学んでいる。

 冷戦時代に毛沢東が提唱した「三線建設」によって、南昌市では数多くの工業関連のプロジェクトが行われた。その恩恵もあり、同市は、国内最初の航空産業発祥の地となり、また省内で最大の工業都市として自動車の製造を始めとする最先端の産業にも力を入れている。


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太原:資源都市となった古き交易都市【中国中心都市&都市圏発展指数2020】

 太原市は、「中国中心都市&都市圏発展指数2020」の総合第34位にランクインした。同市は2019年度より順位を1つ下げている。

 〈中国中心都市&都市圏発展指数〉は、〈中国都市総合発展指標〉の派生指数として、4大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる36の中心都市の評価に特化したものである。同指数は、これら中心都市を、全国297の地級市以上の都市の中で評価し、10大項目と30の小項目、116組の指標からなる。包括的かつ詳細に、中国中心都市の高品質発展を総合評価するシステムである。

 太原市は、中国の重要なエネルギー・重工業基地である山西省の省都である。別名「晋陽」とも呼ばれ、九つの王朝の都として二千年以上の歴史を持つ国家歴史文化都市である。2021年現在、6区、3県、1県級市を管轄し、総面積は6,988平方キロメートル(高知県と同程度)、GDPは約5,122億元(約10.2兆円、1元=20円換算)で中国の都市の中で56位となっている。常住人口は約540万人で全国では80位である。

 同市は、北は万里の長城を挟んで内モンゴル自治区に、東は北京の西側に位置する河北省と、南は黄河を挟んで河南省と、西は北上した黄河を挟んで陝西省に接している。そのような立地から、同市は古来より、遊牧民族と農耕民族の交易都市として栄えてきた。

 山西省出身の商人たちは、「晋(山西の略称)商」と呼ばれ、中国で大いに活躍していた。晋商の拠点である太原市は、中国北部の重要な商業都市として発展してきた。晋商は、遊牧民族と農耕民族双方を支配下に置いた清王朝時代に最も栄えた。彼らは、手形をベースとした金融システムを確立し、全国に拠点を設けた。その勢力は、モスクワにも及んだ。その名残もあり、太原市の「中国都市金融輻射力」は全国20位と、いまなお高い金融の力を保持している。

 しかし新中国建国後、山西省は豊富な石炭資源をベースに経済のモノカルチャー化が進み、太原市は資源都市へと変貌していった。同市自身も現在、「中国都市石炭採掘業輻射力」は全国11位であり、中心都市の中では最も順位が高い。かつては商業・金融そして多彩な文化で輝いた同市は石炭経済に依存するようになった。「資源の呪い」の典型事例と言ってよいだろう。

 中国の電力は、およそ6割を石炭火力発電に依存する。その多くが山西省産の石炭を利用している。太原市内も石炭をベースにした産業が多く、その影響もあり、同市の「中国都市PM2.5指数」は全国ワースト13位、「中国都市二酸化炭素排出量」はワースト20位と、環境パフォーマンスは悪い。脱炭素の潮流を受け、カーボンニュートラルへと大きく舵を切った中国において、今後は石炭依存からの脱却が本格化していくことは間違いない。同市が如何にモノカルチャーから脱却し、新産業に根ざした都市へと転向できるか、要注目である。

 悠久の歴史から、市内には多くの歴史遺産が残されている。世界遺産の「平遥古城」をはじめ、晋寺、天龍山、双塔寺など多くの景勝地や文化財を抱えている。また、同市は日本でも愛好者が多い「刀削麺」の発祥地としても著名である。刀削麺は西安市の名物という印象が強いが、発祥は太原市である。こうした歴史文化遺産は同市の次なる発展のきっかけになるかもしれない。


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貴陽:ビックテックが群がる西南の中心都市【中国中心都市&都市圏発展指数2020】

 貴陽市は、「中国中心都市&都市圏発展指数2020」の総合第29位にランクインした。同市は2019年度より2つ順位を下げている。

 〈中国中心都市&都市圏発展指数〉は、〈中国都市総合発展指標〉の派生指数として、4大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる36の中心都市の評価に特化したものである。同指数は、これら中心都市を、全国297の地級市以上の都市の中で評価し、10大項目と30の小項目、116組の指標からなる。包括的かつ詳細に、中国中心都市の高品質発展を総合評価するシステムである。

 貴州省の省都である貴陽市は、同省の政治、経済、文化、科学、教育の中心地であると同時に、中国南西部における交通の要衝である。同市は、名峰・貴山の南側に位置することから「貴陽」と名づけられた(古代中国では、山の北は「陰」、 南は「陽」と言う)。かつて、同市は竹が豊富に産出され、古代中国の五絃の楽器「筑」の産地として有名だったことから、略して「筑」とも称されている。また、緑が豊富で風光明媚な土地柄から「森の都」とも呼称され、中国初の「国家森林都市」にも指定されている。

 2021年現在、同市の総面積は8,034平方キロメートルを有し(兵庫県と同程度)、GDPは約4,312億元(約8.6兆円、1元=20円換算)で、中国の都市の中で52位となっている。2020年末の常住人口は約599万人に至り、全国では65位の位置につけている。一方、常住人口成長率は3.4%と、全国18位に位置し、近年、中心都市の中でも人口増が著しい都市である。

 同市は、亜熱帯モンスーン気候に属し、海抜約1100メートルの山間盆地に位置することから、1年を通じて気候は温暖、年間平均気温は15.3度である。夏の平均気温は23.2℃、最高気温は平均25~28℃、最も暑い7月下旬でも平均気温は23.7℃に過ぎず、最高気温が30℃を超える日数は少ない。避暑地として最高な気候を有することから、2006年政府から中国初の「避暑の都」に指定されている。

 同市は、気候の快適性もさる事ながら、観光都市としても著名である。市内の殆どをカルスト地形が占めることから、非常に豊富な観光資源も有している。「紅楓湖」、「開陽峡谷生態公園」など、山、川、峡谷、湖、洞窟、滝、原始林などを特色とした高原特有の雄大な自然景観が、次々と人々を感動に誘う。また、市内には名跡も多く、「陽明洞」、「青岩古鎮」、「息烽集中営旧址」、「甲秀楼」や「黔霊山」、「青岩古鎮」、「香紙溝」などはいずれも古代中国文化の趣を漂わせている。多彩な少数民族の風情も内外の観光客にとっては魅力的である。同市の「国内旅行客数」は全国4位とトップクラスの成績を稼ぎ出している。

 同市は、中国南西部における陸上交通の要衝として、本指標の大項目「広域中枢機能」は全国16位であり、そのうち、「航空輸送」は全国15位、「陸路輸送」は全国10位である。

 近年、貴陽市は、デジタル経済における最先端の都市として脚光を浴びている。現在、同市には、アップルやテンセントを始めとして、国内外のビッグテック企業のデータセンターが相次いで建設されている。

 貴陽市、ないしは貴州省は、中国の中でも山地が特に多い地域であり、地盤の安定性から地震が極めて少ない地域である。また、標高が高く、年間を通じて冷涼な気候なため、サーバー冷却コスト削減につながる。また、水資源が豊富なため、水力発電による電気代が安価である。このように、同市は、データセンターの設置に極めて適した環境を有する地理的優位性を備えている。

 2014年に貴陽と安順にまたがる貴安新区が国家級新区に指定され、2015年には、中国唯一の「ビッグデータ先導試験区」として認定されている。

 同市は、鉱物採掘と観光が中心的な産業であったが、ビッグデータ産業を主流とする発展にかじを切っている。今では、ビッグデータ都市の代名詞となるまでに成長を見せ、最新の「IT産業輻射力」は全国19位にまで躍進している。深圳のようなデジタルバレー都市としての発展を遂げるか、今後の貴陽市の動きは要注目である。


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中国中心都市&都市圏発展指数2020
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ハルビン:中国最北の中心都市【中国中心都市&都市圏発展指数2020】

 ハルビン市は、「中国中心都市&都市圏発展指数2020」の総合第28位にランクインした。同市は2019年度より1つ順位を上げている。

 〈中国中心都市&都市圏発展指数〉は、〈中国都市総合発展指標〉の派生指数として、4大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる36の中心都市の評価に特化したものである。同指数は、これら中心都市を、全国297の地級市以上の都市の中で評価し、10大項目と30の小項目、116組の指標からなる。包括的かつ詳細に、中国中心都市の高品質発展を総合評価するシステムである。

 黒龍江省の省都であるハルビン市は、中国東北地域の中核都市の1つであり、中国で最も北に位置する中心都市である。2021年現在、ハルビン市の総面積は5万3,100平方キロメートルを有し、北海道の面積の約6割強に相当する。GDPは約5,352億元(約10.7兆円、1元=20円換算)で、中国の都市の中で48位となっている。2021年末の常住人口は約989万人に至る一方、前年から人口が約13万人流出しており、2年連続で人口が減少している。

 ハルビン市は、北海道最北端の稚内市とほぼ同じ緯度に位置し、冬の気候は極めて厳しい。本指数の「気候快適度」でも、同市の順位は286位と、中心都市の中で最も順位が低い。ハルビンの気候は、夏と冬の寒暖差が非常に大きい典型的な大陸性気候である。冬は長く夏は短い。年平均降水量は569.1mmで、降水は主に6月から9月に集中し、年間降水量の60%は夏季の期間が占めている。冬季は非常に乾燥しており、降雪もほとんどない。そのため、ハルビンは氷の町と言われている。四季がはっきりしており、1月の平均気温は約-19℃、夏の7月の平均気温は約23℃である。過去最低気温は、-37.7℃(1985年1月26日)を記録した。

 ハルビン市は、その極寒さを活用し、1985年から氷の彫刻展「ハルビン氷祭り」を毎年1〜2月に開催している。その規模と華やかさから、今ではカナダのケベック、日本の札幌と並び、「世界三大雪まつり」のひとつに数えられている。

 黒龍江省の土壌は、有機物の含有量が多い、いわゆる「黒土」であり、農業に非常に適している。黒龍江省に広がる大平原は、「世界有数の肥沃な黒土地帯」と称される。そのためハルビンの第一次産業も非常に盛んである。〈中国都市総合発展指標〉の「農産業輻射力2020」では、ハルビン市は全国第4位であり、中心都市の中では最も順位が高い。 

 同市に属する県級都市・五常市は、中国米の最高級ブランド「五常大米」の産地である。五常大米の中でも、香り米の「稲花香」は、「2018中国第1回国際米フェスティバル」において、日本のコシヒカリと並んで金賞を受賞している。肥沃な土地、年間の大きな気温差、豊富な水という地理・気候条件を有するハルビンは、中国国内の中でも、水田耕作に非常に適した都市である。なお、「稲花香」は、日本をルーツに持つ品種である。中国から日本に伝わった稲作文化が、巡りに巡って中国に回帰し、新中国で最も著名なブランド米となっていることは、歴史の因果ともいえよう。

 ハルビンは高等教育機関も多く立地している。2021年現在、市内には総合大学が50校立地し、なかでもハルビン工業大学等が名高い。「中国中心都市&都市圏発展指数2020」大項目「文化教育」では17位だが、それを構成する「高等教育指数」は12位、「世界トップクラス大学指数」は10位となっている。また、大項目「輻射能力」を構成する「高等教育輻射力」は10位である。これらは東北地域で最も高い成績である。高等教育機関に支えられ、ハルビンは文化人排出度合いを示す「文化人排出指数」が15位、「優秀人材育成指数」は12位に入っている。

 さまざまな歴史と地理的条件により、ハルビンは中華文明と西洋文化が融合し、エキゾチックで美しい都市を形成している。同市は、中国の歴史文化都市、観光都市として有名である。特に、ロシアとの関係は深く、市内にはロシア文化の影響が色濃い。市内にはロシア建築様式の建造物が数多く残され、ロシア料理のレストランも数多い。

 新中国建国後、ハルビンは重化学工業の一大基地として発展してきたが、それにも当時のソ連からの援助が欠かせなかった。現在、同市の製造業は沿海部の都市に圧迫されている。しかし今後のロシア情勢の行方によっては、ロシアとの天然ガスパイプラインの中継基地である同市が、安いロシア産の天然ガスや石油をベースに中国東北地域発展の発火点となる可能性もあり得る。中国最北の中心都市が、ある意味、非常にホットな都市となっている。


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中国中心都市&都市圏発展指数2020
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長春:中国東北最大の自動車産業基地【中国中心都市&都市圏発展指数2020】

 長春市は、「中国中心都市&都市圏発展指数2020」の総合第26位にランクインした。同市は2019年度の順位を維持した。

 〈中国中心都市&都市圏発展指数〉は、〈中国都市総合発展指標〉の派生指数として、4大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる36の中心都市の評価に特化したものである。同指数は、これら中心都市を、全国297の地級市以上の都市の中で評価し、10大項目と30の小項目、116組の指標からなる。包括的かつ詳細に、中国中心都市の高品質発展を総合評価するシステムである。

 吉林省の省都である長春市は、中国東北地域の中核都市の1つであり、重要な産業基地である。2021年現在、長春市の総面積は2万4,592平方キロメートル(秋田県と新潟県を足した面積と同等)を有しGDPは約7,103億元(約14.2兆円、1元=20円換算)を達成、前年比6.2%増となった。2021年末における長春の常住人口は約909万人にのぼり、人口1,000万人クラスのメガシティにあと一歩の人口規模まで近づいている。

 長春市は、北海道の札幌市とほぼ同じ緯度にあるものの、冬の気候は札幌よりも厳しい。一般に、長春における気候の特徴は、春は乾燥して風が強く、夏は短い。秋は晴れて暖かく、冬は長く厳しい。年平均気温は4.6℃で、1970年には最低気温-36.5℃を記録した。

 長春は、戦前から工業基地として発展してきた。新中国で最も早く自動車工業基地が建設され、「東方のデトロイト」とも呼ばれている。「中国都市自動車産業輻射力2020」では、上海に次ぐ第2位の実力を備え、国内有数の自動車メーカー「第一汽車」を生んだ。詳しくは、下記の記事「【ランキング】自動車大国中国の生産拠点都市はどこか? 〜2020年中国都市自動車産業輻射力ランキング」を参照されたい。

 長春は高等教育機関も多く立地している。吉林大学や人民解放軍航空隊航空大学が名高い。「中国中心都市&都市圏発展指数2020」大項目「文化教育」では長春は21位だが、それを構成する「高等教育指数」は15位、「世界トップクラス大学指数」は16位となっている。また、大項目「輻射能力」を構成する「高等教育輻射力」は16位である。

 高等教育機関に支えられ、長春は大項目「イノベーション・起業」を構成する「両院院士指数(「両院」は中国科学院と中国工程院を示し、両院に所属する高い研究能力を有する研究者を「両院院士」と呼ぶ。両院院士指数はその人員規模を示した指数である)」が、9位に入っている。


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昆明:最も気候が快適な歴史文化都市【中国中心都市&都市圏発展指数2020】

 昆明市は、「中国中心都市&都市圏発展指数2020」の総合第24位にランクインした。同市は2019年度の順位を維持した。

 〈中国中心都市&都市圏発展指数〉は、〈中国都市総合発展指標〉の派生指数として、4大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる36の中心都市の評価に特化したものである。同指数は、これら中心都市を、全国297の地級市以上の都市の中で評価し、10大項目と30の小項目、116組の指標からなる。包括的かつ詳細に、中国中心都市の高品質発展を総合評価するシステムである。

 雲南省の省都である昆明市は、中国西南地域の重要な中心都市の一つであり、重要な観光・貿易都市である。昆明市は、ベトナム、ラオス、ミャンマーと国境を接しており、古来より一大国際交易拠点であった。昆明市は、7区、3県、1県級市、3自治県を擁し、総面積は約21,013平方キロメートル(秋田県と岐阜県を合計した総面積に匹敵)である。2021年現在の常住人口は約852万人であり、漢族のほかにイ族、白族等25の少数民族が居住している。GDPは722.5億人民元(約14.5兆円、1元=20円換算)に達している。

 昆明市は中国を代表する歴史文化都市であり、紀元前278年に雲南王国が成立して同市に都を置き、765年に南詔国が都を設けた。

 昆明は海抜約1,900メートルの高原にあり、平均気温14.5℃と年間を通して気温差が少なく、常に春のような気候から、「春城」と称されている。また、一年中花が咲き乱れているため「花都」とも呼ばれている。「中国中心都市&都市圏発展指数2020」における「生態環境」の中項目「環境品質」を構成する「気候快適度」では全国第5位で、中心都市全36都市の中でトップである。

 昆明市は、三方を山に囲まれ、南は淀川湖に接し、美しい湖畔の風景が広がっている。市の周辺にも、天然のカラフルなパレットのような「東川紅土地」や、世界的にも珍しいカルスト台地の「石林風景区」が広がり、さまざまな秘境が多くの観光客を中国全土から呼び寄せている。「中国中心都市&都市圏発展指数2020」における「開放交流」の中項目「交流実績」を構成する「国内観光客数」と「国内観光収入」では、ともに第7位という高順位を獲得している。

 しかし、国内観光客で賑わう一方、「海外観光客数」は第205位、「国際観光収入」は第186位と成績が振るわず、インバウンドの誘致は観光政策の大きな課題となっている。

 昆明市は交通の要所でもあり、広域インフラとして航空、鉄道、高速道路などの交通網が張りめぐらされている。特に航空輸送の能力は高く、「中国中心都市&都市圏発展指数2020」における「広域中枢機能」の中項目「航空輸送」では、第7位と高順位だった。昆明の長水国際空港は、中国でも有数の国際空港の一つとなっており、2020年の「空港旅客数」は全国第6位であった。詳しくは、下記の記事(【ランキング】中国で最も空港利便性が高い都市はどこか?〜2020年中国都市空港利便性ランキング)を参考にされたい。


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大連:中国東北部の玄関口【中国中心都市&都市圏発展指数2020】

 大連市は、「中国中心都市&都市圏発展指数2020」の総合第23位にランクインした。同市は2019年度より順位がいきなり5位も下降した。大項目でみると、「都市圏実力」、「輻射能力」、「広域中枢機能」、「開放交流」、「文化教育」といった経済・社会を代表する指標が軒並み順位を落としており、総じて総合順位が下降する結果となった。

 〈中国中心都市&都市圏発展指数〉は、〈中国都市総合発展指標〉の派生指数として、4大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる36の中心都市の評価に特化したものである。同指数は、これら中心都市を、全国297の地級市以上の都市の中で評価し、10大項目と30の小項目、116組の指標からなる。包括的かつ詳細に、中国中心都市の高品質発展を総合評価するシステムである。

 大連市は遼寧省に属する計画単列市・副省級市であり、中国東北地域を代表する港湾都市である。渤海湾と黄海に面した遼東半島に位置し、東は黄海、西は渤海、南は山東半島、北は東北平原と三方を海に囲まれた地形を有する。大連市の総面積は12,574平方キロメートル(新潟県と同程度)。2021年の常住人口は約745万人であり、遼寧省では省都の瀋陽市に次ぐ規模を誇る。2021年のGDPは前年比8.2%増の約7826億元(約15.7兆円、1元=20円換算)を達成した。

 大連市は、近代史の中で幾度も戦禍を被ってきた。第一次アヘン戦争、第二次アヘン戦争では、イギリス軍が大連周辺に侵攻し、日清・日露戦争では大連市は主戦場となった。

 大連港は世界的に有名な不凍港で、1万トン以上のバース (荷役を行う港湾施設)40基を含む70基以上のバースを有し、世界160以上の国・地域の300以上の港と貿易・輸送を行っている。まさしく中国東北地域の玄関口である。

 「中国中心都市&都市圏発展指数2020」における「広域中枢機能」の中項目「水路輸送」では、第9位という高順位に位置している。実際、コンテナ取扱量は中国国内で第9位、世界全体では第25位という成績を誇っている。詳しくは、下記の記事を参考にされたい(【ランキング】世界で最も港湾コンテナ取扱量が多い都市はどこか? 〜2020年中国都市コンテナ港利便性ランキング)。


中国中心都市&都市圏発展指数

中国中心都市&都市圏発展指数2020
中国中心都市&都市圏発展指数2019
中国中心都市&都市圏発展指数2018
中国中心都市指数2017

瀋陽:中国東北部最大の中心都市【中国中心都市&都市圏発展指数2020】

 瀋陽市は、「中国中心都市&都市圏発展指数2020」の総合第22位にランクインした。同市は2019年度より順位が1位下降した。

 〈中国中心都市&都市圏発展指数〉は、〈中国都市総合発展指標〉の派生指数として、4大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる36の中心都市の評価に特化したものである。同指数は、これら中心都市を、全国297の地級市以上の都市の中で評価し、10大項目と30の小項目、116組の指標からなる。包括的かつ詳細に、中国中心都市の高品質発展を総合評価するシステムである。

 遼寧省の省都である瀋陽市は、中国東北地域最大の経済、文化、交通の中心都市である。市内を流れる瀋水(渾河)の北部に位置することから、「瀋陽」と名付けられた。

 瀋陽市は、平野部が優勢で、山や丘陵は南東部に集中している。瀋陽市の緯度は日本の函館に相当し、気候は湿潤大陸性気候で、最高気温は34.6℃、最低気温は-30.6℃と極端な温度差がある。季節風の影響を受け、四季がはっきりしている。

 瀋陽市は、鉄鉱石や石炭などの豊富な資源に恵まれ、鉄鋼産業、機械工業などの重化学工業を中心に発展してきた中国有数の工業地帯である。しかしグローバルサプライチェーンの展開に遅れを取り、長江デルタ、珠江デルタなど新興工業地帯との競争に追いついていない。そのため、産業の地盤沈下が著しい。

 2022年現在、瀋陽市は10区、2県、1県級市を管轄し、総面積は12,860平方キロメートル(新潟県と同程度)、2021年のGDPは7,249.7億元(約14.5兆円、1元=20円換算)で全国第33位、常住人口は911.8万人で全国第31位。

 瀋陽市は中国を代表する歴史文化都市でもある。同市は、清王朝発祥の地で、2300年以上の歴史を有する。1625年、満州族の王朝である後金(のちの清)の都として清朝皇帝太祖ヌルハチが瀋陽市に都を建設し、1644年に清朝が北京に遷都されるまで、瀋陽市は国都とされ、盛京と呼ばれた。太祖ヌルハチが建設した故宮やその墓である東陵は、当時の建物がそのまま残され、博物館となっている。故宮、東陵に加え北陵という3つの世界文化遺産がある。市内には他にも1,500以上の歴史文化の名所があり、塔・寺院群などがひしめいている。

 しかし、これだけの観光資源を有しながら、「中国中心都市&都市圏発展指数2020」の中項目「交流実績」は全国37位、そのうち、「国内観光客」は全国54位と成績は振るわない。

 瀋陽市政府は、近年、観光産業などサービス業に力を入れ、第三次産業へと産業構造の転換を図っている。


中国中心都市&都市圏発展指数

中国中心都市&都市圏発展指数2020
中国中心都市&都市圏発展指数2019
中国中心都市&都市圏発展指数2018
中国中心都市指数2017