【コラム】高度成長からハイクオリティ発展へシフトする中国経済/邱暁華・中国国家統計局元局長


邱 暁華
マカオ都市大学経済研究所所長、中国国家統計局元局長、経済学博士


 改革開放以降、中国経済の持続的な高度成長によるキャッチアップぶりは世界中から注目を集めてきた。経済規模はイタリア、カナダ、フランス、イギリス、ドイツ、日本を相次いで超え、2010年にアメリカに次ぐ第2位となった。しかしここにきて中国経済をとりまく環境は大きく変化し、これまで高度成長を支えてきたものが、制約要因となって、中国経済の成長は鈍化している。中国経済はいま、ハイクオリティの発展へとギアチェンジする時期に来ている。


1. ハイクオリティ発展へとシフトする意義

 中国共産党第19回党大会が、「我が国経済はすでに高度成長の段階からハイクオリティ発展段階へとシフトしている。いままさに発展モデルをチェンジし、経済構造を高度化し、成長原動力を転換する大事な時期に来ている。現代化経済体系の建設は、この転換ポイントを乗り越える切実な要求であり、我が国発展の戦略目標である」 と提起した。この判断は、転換期にある中国経済にとっては重要な意味をもつ。

 改革開放40年、長きにわたる高度成長は人々の生活水準を大幅に向上させた。世界銀行の統計によると、中国の1人当たりGDPは1978年の僅か156米ドルから、2017年には8,826米ドルへと膨らんだ。

 しかし、粗放型の高度成長は、エネルギー浪費、汚染蔓延、格差拡大などの問題をもたらした。さらに、この間、労働力、環境資源、土地、資金、為替レートなどの要素コストも大幅に増大した。

 その意味では、借金漬けの成長、低コスト労働力への依存、資源とエネルギー消耗などの従来型成長は、すでに持続不可能となっている。

 中国経済を高度成長からハイクオリティ発展へシフトさせていくことが、重大な政策転換である。この転換は、中国経済の持続発展の要請によるものであり、今後長期にわたる発展戦略である。


2. 中国経済ハイクオリティ発展に関わる5つの要因

 ハイクオリティな発展には、まず考え方を変えなければならない。数量優先からクオリティ第一また効率優先へと考えを改め、産業構造の高度化、環境保護、社会の発展などを重視しなければならない。発展モデルも粗放型から集約型へ、要素投入型からイノベーション駆動型へと、外需主導から内需主導へ転換することである。そのために現在、中国経済のハイクオリティ発展に関わる以下5つの要因を見直すことが必要である。

 第一は人的資本である。中国の人口年齢構成の変化を見ると、高度成長を支えてきた人口ボーナスはなくなりつつある。中国国家統計局のデータによると、2012年〜2018年、中国の労働年齢人口とそれが総人口に占める比重はともに下がり続けた。結果、この7年間で、労働年齢人口は約2,600万人減少した。この現実を直視する必要がある。

 第二はイノベーションである。これまでの経済成長は、資源投入を中心とする粗放的なものであり、今後イノベーションを中心とするものにシフトしていかなければならない。

 第三は制度改革である。これまでの高度成長の中で、制度疲労も起こっている。制度改革が中国のさらなる発展にとって喫緊の課題となっている。

 第四は、対外開放である。対外開放はこれまで中国の発展に大きな役割を果たしてきた。今後も一層の開放が求められる。

 第五は、環境問題である。粗放型成長が凄まじいエネルギー消費と汚染とをもたらしている。大気汚染、水質汚染、土壌汚染などが極めて深刻である。こうした成長方式を根底から改めるべきである。


3. いかにしてハイクオリティ発展への移行を実現できるか

 高度成長からハイクオリティ発展への移行は、マクロ政策、地域政策、制度改革などにおいて、多大な努力を必要とする。具体的には、以下の7つが重点となる。

 第一は、マクロ経済環境の平穏さを保つこと。経済発展にとって最重要なことは経済環境の平穏さである。大きな起伏を避けることが前提条件となる。クオリティ優先は成長をやめてしまうことを意味しない。合理的な成長スピードが必要である。経済運営においては、安定した経済成長を保つことが肝要となる。

 第二は、人的資本の向上である。国連のデータによると2016年に中国の中等教育および大学教育への進学率は、それぞれ77%、48%であった。これは、世界の平均水準より高いものの、先進諸国と比べるとなお大きなギャップがある。例えば同年、アメリカの中等教育および大学進学率は、それぞれ95%、86%に達した。2012年以降、中国のGDPに占める財政性教育経費の比率は連続して4%を超えていた。ただし、アメリカの同7%と比較すると差は大きい。今後、教育への投入を強化し、あらゆるレベルの教育水準を向上させていかなければならない。

 第三は、イノベーション駆動成長である。イノベーションは、発展を牽引する第一原動力である。中国の人口ボーナスが下がり続ける中、イノベーションによる生産性の向上や資源環境問題の改善などが期待される。そのためには、基礎研究を重視すると同時に応用研究にも取り組み、人材育成にもっと力を入れなければならない。

 第四は、環境保護である。中国では2007年に、1万元当たりのエネルギー消費量は、0.6トン標準石炭になった。これは、改革開放初期と比べ77.2%も下がった。ただし、いま中国は世界最大の二酸化炭素排出国であり、単位GDP当たりの二酸化炭素排出量は日本の5倍、アメリカの3.3倍にも上る。そのため、環境重視の発展モデルと生活様式への転換を急がなければならない。

 第五は、地域の協調発展と郷村振興である。ともに豊かになることが社会主義の本質である。そのために、農村の土地制度改革、農業の現代化などを通じた農村振興を図るべきである。また、地域格差を是正するための努力も欠かせない。

 第六は、制度改革を加速することである。国有企業の改革、知財保護の強化、市場参入の緩和など時代に要請される制度改革を加速しなければならない。

 第七は、対外開放である。国際環境の要請に応じて、輸入を拡大し、貿易均衡を促し、輸出製品の高付加価値を図り、サービス貿易を育成することなどを通じて、さらなる対外開放を推し進めていくことが重要である。


プロフィール

邱 暁華(Qiu Xiaohua)

 1958年生まれ。アモイ大学卒業後、国家統計局で処長、司長、局長を歴任。その間、安徽省省長補佐、全国政治協商会議委員、全国青年連合会副主席、貨幣政策委員会委員などを務めた。現在、マカオ都市大学経済研究所所長。経済学博士。

 主な著書に、『中国的道路:我眼中的中国経済』(2000年、首都経済貿易大学出版社)、『中国経済新思考』(2008年、中国財政経済出版社)。

(『環境・社会・経済 中国都市ランキング 2018―大都市圏発展戦略』に収録