【専門家レビュー】フラットではない中国をリアルに/張仲梁・中国国家統計局社会科学技術文化産業司司長

張 仲梁

中国国家統計局社会科学技術文化産業司司長


(一)
 2005年に海外から北京に戻った周牧之教授が、私に『The World is Flat』という本をくれた。
 周教授はこの本はアメリカで評判を呼んでおり、「世界は平らになった」という観点が非常に面白いと言う。個人は国家や会社に代わって世界の主人公たりうるようになってきた。能力と想像力さえあれば、世界中のすべての資源にアクセスすることができる。世界は小さくなった。科学技術と通信の領域は電光石火で進歩を遂げ、全世界の人々がかつてないほど相互に接近している。
 次いで、話題を呼んだアメリカの映画があった。一人のアメリカ人がインドへ行き、自分の仕事を将来的に奪うだろうインド人を訓練する葛藤を描いた映画の、その背景はグローバリゼーションである。ますます多くのアメリカ企業が業務を海外へ移転し、インドや中国の安価な労働力を利用した。世界はまさに平らになり、アメリカの高度はゆっくりと下り、インドや中国が高速でのし上がった。
 この映画の名前も「The World is flat」だ。

(二)
 その後10年が過ぎた。
 世界の構造は大きく変化した。
 なかでも中国の勃興は最も目を見張るものであった。
 中国のGDPは2006年の2.75兆ドルから2016年に11.2兆ドルへと増長し、その経済規模も世界第2位へと躍進して久しい。
 近年、ニューヨーク、パリ、東京の観光スポットやブランドショップで、最も頻繁に目にするのが中国人観光客の一群である。2015年に中国人の海外旅行客は1.35億人にのぼり世界第1位となった。

(三)
 10年前、BRICs4カ国は、投資家を大いに興奮させた。しかし現在、ブラジルとロシアは経済停滞の中で喘ぎ、新興国の栄光も色あせた。
 過去10年間で、一つまた一つと「失敗」国家が現れた。これらの国は経済停滞に見舞われただけでなく、社会不穏にも悩まされている。
 アメリカのメディアによる「最も失敗した30カ国」リストがある。これを見た後の感想はといえば、「確かにこの30カ国は失敗した。しかしもっと失敗した国がこれ以外にまだある」。
 実際、過去10年間で、中国など数少ない国がグローバリゼーションの中で大きな収益を上げることができた。一方で相当数の国が大変な代償を払った。世界は平らになったのではなく、凸凹はむしろさらに進んだ。

(四)
 周教授は「過去の10年間、日本では東京大都市圏だけが166.4万人も人口が増えた。これに対して他の数都市は微増で、ほとんどの都市が人口減少状態にある」と紹介した。
 「過去の10年で人類の経済活動はさらに大都市に集中した。こうした大都市は世界で最も優秀な人材、経済資源、最有力企業を集められる」と、周教授は強調した。

(五)
 周教授は、中国の凸凹も進んだと述べている。
 周教授と彼のチームが作り上げた〈中国都市総合発展指標〉はこれをリアルに表現している。
 同〈指標〉では、偏差値を用いて都市の各方面のパフォーマンスを表現している。
 たとえば「医療輻射力」項目では、偏差値が60以上の都市は、22都市であり、なかでも北京、上海の偏差値は100にも達している。これに対して、偏差値が45以下の都市は27都市もある。これは激しい凸凹である。
 「人口流動」項目では、偏差値60以上の都市、つまり外部から人口が大量に流入した都市は16都市ある。なかでも3都市が偏差値100に達している。これに対して偏差値が45以下の都市、すなわち人口が大量に流出した都市は46都市もある。これもまた不均衡である。
 同指標を立体的に表現するグラフは数多くある。こうした立体図の中には、目を見張るような山峰があり、一方で深く沈む峡谷もあった。しかも山峰はさらに輝きを増し、峡谷は谷底深く落ち込み続けているのだ。こうした状況は決して軽視できない。

(六)
 周教授は、不動産市場は中国都市の凸凹状況をよく映し出していると言う。
 10年前、ほとんどの都市の不動産価格は上がり続けた。もちろん価格上昇幅は、一部の都市は大きく、一部の都市は小さかった。しかし現在、一部の都市の不動産価格が上がり続けるのに対して、一部の都市は停滞もしくは下落している。
 不動産価格の上昇と下落は、都市の浮き沈みを表している。その背景には、さまざまなパフォーマンスの違いがある。都市競争時代にあって、ある都市は邁進し、ある都市は停滞し、ある都市は転落している。

(七)
 『The World is Flat』で、著者フリードマンは幼い頃に両親が常々彼に言っていた言葉を振り返っている。「トーマス、ご飯は残さず食べなさい。忘れないでね、中国人はいま飢えに喘いでいるのよ」。
 〈中国都市総合発展指標〉は、この言葉と同様なことを語っている。
 現在はフラットの時代ではなく、凸凹時代である。

(八)
 凸凹道には、道標が必要である。
 周牧之教授の〈中国都市総合発展指標〉は、斬新な道標を指し示してくれている。


(『環境・社会・経済 中国都市ランキング ー中国都市総合発展指標』に収録


プロフィール

張 仲梁(Zhang Zhongliang)

 1962年生まれ。中国管理科学研究中心副研究員、日本科学技術政策研究所研究員、CAST経済評価中心執行主任、中国経済景気観測中心主任、中国国家統計局統計教育中心主任、中国国家統計局財務司司長を歴任、2018年から中国国家統計局社会科学技術文化産業司司長。
 中華全国青年連合会委員、PECC金融市場発展中国委員会秘書長、中国経済景気月報雑誌社社長、中国国情国力雑誌社社長など兼務を経て、現在、中国市場信息調査業協会副会長を兼任。