【ランキング】中国で最も空港利便性が高い都市はどこか?〜2020年中国都市空港利便性ランキング

雲河都市研究院

■ 2020年中国の航空輸送は旅客が激減、貨物は微減


 2020年、新型コロナウイルス禍で打撃を最も受けた業界のひとつは、航空輸送である。特に、長引く国際旅行規制の影響により、中国の航空旅客数は2019年より36.6%も減少した。幸い、中国は新型コロナウイルスの流行を逸早く制圧し、国内航空輸送量は早期に回復したため、欧米各国や日本などと比べ、航空旅客数減少幅は比較的小さかった。

 航空旅客数に比べ、2020年中国の航空貨物取扱量は6%減にとどまった。これはコロナ禍でも物流が活発に行われ、製造業サプライチェーンも迅速に回復したことを示している。

■ 中国で最も空港利便性が高かった都市は?


 交通ハブ機能は、都市にとって極めて重要な機能であり、他の中枢機能を強化・増幅する基盤となる。中国都市総合発展指標では、空港機能を評価する「空港利便性」を採用し、例年各都市でモニタリングを実施している。

 「空港利便性」は、その都市における空港のアクセスおよび空港処理機能を指数化した指標であり、都市中心部から空港までの直線距離、空港旅客数、空港貨物取扱量、年間フライト数、遅延率、滑走路距離等のデータを合成し、独自に利便性を算出している。

 「2020年中国都市空港利便性ランキング」上位10都市は、上海、北京、広州、深圳、成都、重慶、昆明、西安、杭州、廈門であり、いずれも中心都市である。同上位10都市の順位は、2019年度から不動であった。

■ 中国都市空港利便性ランキングトップ30都市


 「2020年中国都市空港利便性ランキング」の11位から30位都市は、鄭州、南京、海口、貴陽、長沙、青島、天津、三亜、瀋陽、武漢、ウルムチ、ハルビン、大連、済南、南昌、太原、寧波、フフホト、蘭州、南寧であり、海南島のリゾート地・三亜を除き、すべて中心都市であった。東京経済大学の周牧之教授は「コロナ禍の影響により国際旅行が中断され、国内旅行が中心となり、観光名所を抱える鄭州、貴陽、長沙、三亜等の都市が順位を上げた」と見ている。

図1 2020年中国都市空港利便性ランキングトップ30都市

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

■ 中心都市に空港機能が集中


 「2020年中国都市空港利便性ランキング」のトップ5都市が全国空港旅客数に占めるシェアは28.1%に、トップ10都市は45.5%に、トップ30都市は77.4%にも達している。中国の航空旅客輸送は中心都市に集中している。

図2 2020年中国都市における空港旅客数の集中度

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

 一方、「2020年中国都市空港利便性ランキング」のトップ5都市が全国空港貨物取扱量に占めるシェアは56.8%に、トップ10都市は70.6%に、さらにトップ30都市は91.7%にも達している。このうち、深圳、杭州、鄭州、南京、長沙、済南、南昌の7都市では、空港貨物取扱量が2019年より増加した。周牧之教授は、「航空旅客輸送と比較して、航空貨物が中心都市に集中する傾向がさらに顕著だ」と指摘している。

図3 2020年中国都市における空港貨物取扱量の集中度

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

IT産業の発展に空港利便性は不可欠


 雲河都市研究院は中国の全297地級市以上の都市の空港利便性、コンテナ港利便性、鉄道利便性といった交通中枢機能と、製造業輻射力とIT産業輻射力の相関関係を分析した。図4で示すように、製造業輻射力との相関関係が最も深いのはコンテナ港利便性である。その相関係数は、0.65に達し、「強い相関関係」を示している。それに対して、製造業輻射力と空港利便性との相関関係は弱く、その相関係数は0.48しかなかった。

 製造業輻射力と真逆に、IT産業輻射力と空港利便性との相関関係が強く、その相関係数は0.65に達している。

 周牧之教授は、「航空輸送はグローバルサプライチェーンの重要な基盤であると同時に、人の流れを支える基盤でもある。交流経済の代表格のIT産業の発展は、航空輸送の支え無しには成り立たない」と分析している。

図4 2020年中国都市空港利便性と都市各産業輻射力との相関関係分析

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

メガロポリスも内陸拠点都市も空港利便性が重要


 図5は「空港利便性」を地図化したものであり、ひとつの空港からすべての都市に対して計算を行った結果を、トップ10都市について可視化した。矢印の色、長さ、太さは利便性の大きさを示し、値が大きくなるほど矢印の色が赤く、太くなり、値が小さくなるほど色が青く、細くなるようグラフィック処理した。

 周牧之教授は、「中国の航空輸送は、京津冀(北京・天津・河北)、長江デルタ、珠江デルタの三大メガロポリスにかなり集中していると同時に、成都、重慶、昆明、西安など内陸の拠点都市の発展を支える最も重要な交通基盤となっている」と解説する。

図5 2020年中国都市空港利便性ランキングトップ10都市分析図

出典:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』より作成。

日本語版『【ランキング】中国で最も空港利便性が高い都市はどこか?〜2020年中国都市空港利便性ランキング』(チャイナネット・2022年10月27日掲載)