ハルビン市は、「中国中心都市&都市圏発展指数2020」の総合第28位にランクインした。同市は2019年度より1つ順位を上げている。
〈中国中心都市&都市圏発展指数〉は、〈中国都市総合発展指標〉の派生指数として、4大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる36の中心都市の評価に特化したものである。同指数は、これら中心都市を、全国297の地級市以上の都市の中で評価し、10大項目と30の小項目、116組の指標からなる。包括的かつ詳細に、中国中心都市の高品質発展を総合評価するシステムである。
黒龍江省の省都であるハルビン市は、中国東北地域の中核都市の1つであり、中国で最も北に位置する中心都市である。2021年現在、ハルビン市の総面積は5万3,100平方キロメートルを有し、北海道の面積の約6割強に相当する。GDPは約5,352億元(約10.7兆円、1元=20円換算)で、中国の都市の中で48位となっている。2021年末の常住人口は約989万人に至る一方、前年から人口が約13万人流出しており、2年連続で人口が減少している。
ハルビン市は、北海道最北端の稚内市とほぼ同じ緯度に位置し、冬の気候は極めて厳しい。本指数の「気候快適度」でも、同市の順位は286位と、中心都市の中で最も順位が低い。ハルビンの気候は、夏と冬の寒暖差が非常に大きい典型的な大陸性気候である。冬は長く夏は短い。年平均降水量は569.1mmで、降水は主に6月から9月に集中し、年間降水量の60%は夏季の期間が占めている。冬季は非常に乾燥しており、降雪もほとんどない。そのため、ハルビンは氷の町と言われている。四季がはっきりしており、1月の平均気温は約-19℃、夏の7月の平均気温は約23℃である。過去最低気温は、-37.7℃(1985年1月26日)を記録した。
ハルビン市は、その極寒さを活用し、1985年から氷の彫刻展「ハルビン氷祭り」を毎年1〜2月に開催している。その規模と華やかさから、今ではカナダのケベック、日本の札幌と並び、「世界三大雪まつり」のひとつに数えられている。
黒龍江省の土壌は、有機物の含有量が多い、いわゆる「黒土」であり、農業に非常に適している。黒龍江省に広がる大平原は、「世界有数の肥沃な黒土地帯」と称される。そのためハルビンの第一次産業も非常に盛んである。〈中国都市総合発展指標〉の「農産業輻射力2020」では、ハルビン市は全国第4位であり、中心都市の中では最も順位が高い。
同市に属する県級都市・五常市は、中国米の最高級ブランド「五常大米」の産地である。五常大米の中でも、香り米の「稲花香」は、「2018中国第1回国際米フェスティバル」において、日本のコシヒカリと並んで金賞を受賞している。肥沃な土地、年間の大きな気温差、豊富な水という地理・気候条件を有するハルビンは、中国国内の中でも、水田耕作に非常に適した都市である。なお、「稲花香」は、日本をルーツに持つ品種である。中国から日本に伝わった稲作文化が、巡りに巡って中国に回帰し、新中国で最も著名なブランド米となっていることは、歴史の因果ともいえよう。
ハルビンは高等教育機関も多く立地している。2021年現在、市内には総合大学が50校立地し、なかでもハルビン工業大学等が名高い。「中国中心都市&都市圏発展指数2020」大項目「文化教育」では17位だが、それを構成する「高等教育指数」は12位、「世界トップクラス大学指数」は10位となっている。また、大項目「輻射能力」を構成する「高等教育輻射力」は10位である。これらは東北地域で最も高い成績である。高等教育機関に支えられ、ハルビンは文化人排出度合いを示す「文化人排出指数」が15位、「優秀人材育成指数」は12位に入っている。
さまざまな歴史と地理的条件により、ハルビンは中華文明と西洋文化が融合し、エキゾチックで美しい都市を形成している。同市は、中国の歴史文化都市、観光都市として有名である。特に、ロシアとの関係は深く、市内にはロシア文化の影響が色濃い。市内にはロシア建築様式の建造物が数多く残され、ロシア料理のレストランも数多い。
新中国建国後、ハルビンは重化学工業の一大基地として発展してきたが、それにも当時のソ連からの援助が欠かせなかった。現在、同市の製造業は沿海部の都市に圧迫されている。しかし今後のロシア情勢の行方によっては、ロシアとの天然ガスパイプラインの中継基地である同市が、安いロシア産の天然ガスや石油をベースに中国東北地域発展の発火点となる可能性もあり得る。中国最北の中心都市が、ある意味、非常にホットな都市となっている。
中国中心都市&都市圏発展指数2020
中国中心都市&都市圏発展指数2019
中国中心都市&都市圏発展指数2018
中国中心都市指数2017