太原市は、「中国中心都市&都市圏発展指数2020」の総合第34位にランクインした。同市は2019年度より順位を1つ下げている。
〈中国中心都市&都市圏発展指数〉は、〈中国都市総合発展指標〉の派生指数として、4大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる36の中心都市の評価に特化したものである。同指数は、これら中心都市を、全国297の地級市以上の都市の中で評価し、10大項目と30の小項目、116組の指標からなる。包括的かつ詳細に、中国中心都市の高品質発展を総合評価するシステムである。
太原市は、中国の重要なエネルギー・重工業基地である山西省の省都である。別名「晋陽」とも呼ばれ、九つの王朝の都として二千年以上の歴史を持つ国家歴史文化都市である。2021年現在、6区、3県、1県級市を管轄し、総面積は6,988平方キロメートル(高知県と同程度)、GDPは約5,122億元(約10.2兆円、1元=20円換算)で中国の都市の中で56位となっている。常住人口は約540万人で全国では80位である。
同市は、北は万里の長城を挟んで内モンゴル自治区に、東は北京の西側に位置する河北省と、南は黄河を挟んで河南省と、西は北上した黄河を挟んで陝西省に接している。そのような立地から、同市は古来より、遊牧民族と農耕民族の交易都市として栄えてきた。
山西省出身の商人たちは、「晋(山西の略称)商」と呼ばれ、中国で大いに活躍していた。晋商の拠点である太原市は、中国北部の重要な商業都市として発展してきた。晋商は、遊牧民族と農耕民族双方を支配下に置いた清王朝時代に最も栄えた。彼らは、手形をベースとした金融システムを確立し、全国に拠点を設けた。その勢力は、モスクワにも及んだ。その名残もあり、太原市の「中国都市金融輻射力」は全国20位と、いまなお高い金融の力を保持している。
しかし新中国建国後、山西省は豊富な石炭資源をベースに経済のモノカルチャー化が進み、太原市は資源都市へと変貌していった。同市自身も現在、「中国都市石炭採掘業輻射力」は全国11位であり、中心都市の中では最も順位が高い。かつては商業・金融そして多彩な文化で輝いた同市は石炭経済に依存するようになった。「資源の呪い」の典型事例と言ってよいだろう。
中国の電力は、およそ6割を石炭火力発電に依存する。その多くが山西省産の石炭を利用している。太原市内も石炭をベースにした産業が多く、その影響もあり、同市の「中国都市PM2.5指数」は全国ワースト13位、「中国都市二酸化炭素排出量」はワースト20位と、環境パフォーマンスは悪い。脱炭素の潮流を受け、カーボンニュートラルへと大きく舵を切った中国において、今後は石炭依存からの脱却が本格化していくことは間違いない。同市が如何にモノカルチャーから脱却し、新産業に根ざした都市へと転向できるか、要注目である。
悠久の歴史から、市内には多くの歴史遺産が残されている。世界遺産の「平遥古城」をはじめ、晋寺、天龍山、双塔寺など多くの景勝地や文化財を抱えている。また、同市は日本でも愛好者が多い「刀削麺」の発祥地としても著名である。刀削麺は西安市の名物という印象が強いが、発祥は太原市である。こうした歴史文化遺産は同市の次なる発展のきっかけになるかもしれない。
中国中心都市&都市圏発展指数2020
中国中心都市&都市圏発展指数2019
中国中心都市&都市圏発展指数2018
中国中心都市指数2017