中国の新たな質の生産力、世界経済の新たなチャンスに 東京経済大学周牧之教授

編者ノート:

 今年、中国の国会に相当する全国人民代表大会「全人代」の報告の中で、質の高い生産力による経済成長の推進に、国際社会の大きな関心が集まっている。東京経済大学の周牧之教授は中国網(チャイナネット)の取材に応じ、「中国はさらに高品質な発展へ向けて大きな一歩を踏み出した。これは中国経済のモデル転換及び高度化の将来性を示すもので、世界経済に新たなチャンスをもたらす」と述べた。


(一)中国の半導体産業、大発展の時期到来


 半導体産業は世界経済発展の重要な柱だ。周氏は、中国の半導体産業が大発展期を迎えたとし、「中国の半導体産業はスタートが遅れ、ハイエンド半導体はかつて長い間輸入に依存していた。しかし政府は積極的な支援策を打ち出し、関連企業が取り組みを続けてきた。世界最大規模の中国半導体市場の需要も相まって、中国の半導体産業は猛成長している」と述べた。

 日本はかつて世界最大の半導体大国だったが、その後徐々に衰退した。周氏はこれについて、「投資リスクへの過度な忌避が原因で、巨額の半導体投資が持続しなかった」との見方を示した。「日本の半導体産業はムーアの法則が駆動する発展のリズムについていけなくなった」とし、「日本はいまも世界の半導体産業チェーンにおける多くの分野で優位性を維持している。日中両国は本来半導体産業における協力の可能性が少なくないが、米国主導の半導体技術封鎖により多くの制限が生じている」と指摘した。

(二)中国のAI産業、「世界2強」に躍進


 AI産業は現在、世界の科学技術革命の中核を成している。これはイノベーション駆動型の経済発展モデルへの転換、新興産業の発展及びデジタル経済の発展につながる。中国はAI技術への投資と研究開発を強化し、AIと経済の融合発展を促している。

 周氏によると、「中国はAIの社会浸透率が世界各国の中でもトップクラスに高い。米国との間にまだ一定の開きはあるものの、AI技術の研究開発投入、ビッグデータ、応用などの面で高い実力を示しており、中国と米国は「世界2強」と呼べる。これはハイテクに対する中国政府の開放度を反映しており、新しい物事への中国社会全体の許容度も示している」という。

(三)中国のEV自動車が大きく発展


 中国の自動車産業は近年躍進している。特に2023年、中国の自動車輸出台数は初めて日本を超え、世界一になった。これについて周氏は、「中国自動車産業はEVというチャンスを掴み、バッテリー、モーター、電気制御、自動運転などの中核分野だけでなく、EV完成車の研究開発や生産でも高い国際競争力を手にした。EVを代表とする中国自動車産業の輸出は始まったばかりで、中国自動車産業は今後数年でさらに強い輸出力を見せるだろう」と述べた。

 中国のEVが急発展する一方、日本の自動車業界とメディアからはその見通しを懸念する声が後を絶たない。周氏はこれについて、「EV発展の将来性を読み誤っているためだ。また、ガソリン車を中心とする日本自動車メーカーによる一種のガソリン車擁護の宣伝攻勢と言っていい」と解説した。

(四)越境ECサイト、海外進出モデルを変える


 周氏は、中国越境ECサイト「SHEIN」と「Temu」の日本市場での進展にも注目している。報道によると、Temuは2023年7月に日本市場に上陸後、ユーザー数が毎月220万人のペースで増加し、強い勢いを示している。Temuの日本ユーザー数は2024年1月に1,500万人を突破した。

 周氏は、「中国の越境ECサイトはビジネスモデルのイノベーションにより伝統的な小売り業界の壁を打破し、海外市場と中国製造を直接つなげた。海外の消費者により便利で割安且つ多様な選択肢をもたらした。中国越境ECサイトの日本での発展は、両国の産業チェーンのさらなる融合を促しており、両国の経済協力に新たなチャンスをもたらしている」と述べた。

(五)イノベーティブスタートアップ企業による快進撃


 イノベーティブスタートアップ企業は、現在の世界経済発展の重要なエンジンだ。周氏は、「今日の世界における企業発展のロジックは完全に変わった。高い技術力を持ち創業精神を持つイノベーティブスタートアップ企業が新種として、世界経済を率いパラダイムシフトを起こす主要勢力になっている。現在の世界の時価総額トップ10企業のうち、8社がイノベーティブスタートアップ企業だ。これらの企業のうち最も古いのは1975年創業のマイクロソフトで、最も新しいのは2004年創業のフェイスブックだ」と述べた。

 周氏は、日米中3カ国の時価総額トップ100企業を分析し、「中国のトップ100社のうち1980年以降の創業は82社。対照的に、米国は32社で日本は5社のみ。中国のトップ企業の若年化とハイテク化の傾向は顕著で、今後に期待できる」と展望した。

 周氏は、「日本企業のトップ100社のうち21世紀創業はゼロだ。日本の大企業の官僚化により、投資リスクの大きな新規事業に消極的になりがちだ。対照的に、中国企業トップ100社のうち21世紀創業は25社にのぼり、イノベーションに積極的だ」と指摘した。

 周氏は最後に、「海外メディアには最近、中国経済の衰退論が見られるが、中国の新たな質の生産力にこそ注目し、いまが中国との経済・貿易協力でウィンウィンの発展を実現する好機と捉えるべきだ」と力説した。


【日本語版】
チャイナネット『中国の新たな質の生産力、世界経済の新たなチャンスに 東京経済大学周牧之教授』(2024年3月7日)

【中国語版】
中国網『东京经济大学教授周牧之:蓬勃发展的中国新质生产力是世界经济的新机遇』(2024年3月7日)

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