■ 編集ノート:雲河東京国際シンポジウム「中国企業の新たなチャレンジ:イノベーション、集積、海外進出」が2024年12月1日、東京オペラシティで開催された。雲河都市研究院主催、中国インターネット情報センターがメディアサポート。
北京大学国家発展研究院の周其仁教授、米中グリーンファンドの徐林会長、北京希肯琵雅国際文化発展股份有限公司の安庭会長、北京師範大学一帯一路学院の林惠春教授が登壇し、中国企業の海外進出の過去と現在について議論した。

■ 林惠春:中国企業家の海外事業展開を後押し
企業海外進出は、中国企業、ひいては社会の発展にとってどのような意味があるか?
第一に、海外進出の実践者として私が申し上げると、従事するソフトウェア業界には、内在的な要求があった。第二に、私は海外進出の受益者であり、個人だけでなく私の会社も海外進出を通じて国際的な視野を広げ、事業を発展できた。第三に、私は海外進出の提唱者でもあり、グローバル化の下、企業の国際的な視野と事業は不可欠だと痛感し、「CEO国際移動教室」を設立、中国の企業家たちを率いて50カ国以上の国と地域を見学してきた。企業家の視野を広げ、彼らの海外事業の展開を推進している。
改革開放から40数年経過し、中国が達成した最大の成果の一つは、対外貿易と製造業が世界第1位になったことだ。これは、中国の国際化の進展を示している。では、なぜ近年、中国企業の海外進出が話題になっているのか?中国企業の海外進出をどう定義するのか?それは、中国企業、さらには中国社会の発展にとってどのような重要性があるのかについて議論したい。

■ 周其仁:製造から投資、管理の力量まで問われる海外進出
海外進出は、かつての国内市場から輸出への転換と比べはるかに困難を伴う。
2019年に中国企業トップ500と米国企業トップ500の国際比較データが発表された。それによると、中国トップ500の海外売上高比率が20%未満であったのに対し、米国トップ500は60%を超えている。
広東省佛山の美的集団は中国最大の民間メーカーだ。同社売上高は3,400億元で、そのうち海外売上高比率は41%(1,300億元)だった。海外製造事業による収益は250億元に達し、海外に18の生産拠点を設立している。
美的の当初の経営モデルは、中国の工場で生産し、輸出を通じて製品を世界中に販売するものだった。なぜ美的は海外に生産拠点を設立することを決めたのか?彼らは、「中国から世界へ」から「地域から地域へ」の戦略転換にあると説明した。
市場が拡大し、進出地域が遠くなるにつれ、輸送コスト、関税、現地化ニーズなどの新たな制約要因が生じた。 さらに、美的の経営を引き継いだ同社の方洪波会長は、生産数量の追求を単なる目標とせず、品質向上に重点を置く方針を打ち出した。彼は美的の製品ラインの半分を削減し、高付加価値製品に集中した。
さらに、美的は海外に生産拠点を設立し、現地の大手販売代理店や消費者を工場に招待することにした。これにより、消費者の品質への理解が深まるだけでなく、ブランド構築にも寄与している。
美的の創業者である何享健は、早くから「国内の同業他社と争わず、海外市場に進出する」と提唱していた。
2005年にベトナムにチームを派遣し、2006年には現地に新工場を建設した。これは関税への対応だけでなく、製品を米国市場にアクセスするためだ。
中国の対外開放は、まず「輸入」から始まり、次に「輸出」へと進む。中国製品の輸出が一定水準に達すると、さまざまな問題に直面する。これらの問題にどう対応すべきか?過去、製品が輸出されると、それ以降は私たちの責任外となり、残りの業務は仲介業者や海外企業が独自に処理していた。現在、企業は製造能力、投資、管理を海外に移転する必要がある。この転換は、かつての国内市場から輸出への転換よりもはるかに困難であり、特に、ターゲット市場が中国よりも後進の国・地域である場合は、企業や企業家に対してより複雑で厳しい要求が課せられる。

■ 安庭:高成長する文化産業は、「輸入」と「海外進出」が両輪
文化産業の「輸入」と「進出」は相互に補完し合い、両輪の役割を果たしている。
私は文化産業に従事しており、文化産業の「輸入」と「海外進出」は相互補完的で並行して進むべきだと考えている。中国政府は健全な文化産業と市場の整備を提唱し、重大な文化産業プロジェクトを牽引する戦略を実施し、中華文化の海外展開を推進している。
昨年の全国人民代表大会期間中、北京は「演芸の都」の目標を掲げ、4つの中心都市建設の一環として、演芸が北京の首都としての文化影響力を大幅に向上させることを目指した。
中国国家統計局のデータによると、2012年以来、中国の文化産業の付加価値は18,071億元から2020年には44,945億元に増加し、年平均成長率は12.1%で、GDPの成長率を大幅に上回っている。文化産業のGDPに占める割合は3.36%から4.43%に増加している。 これらのデータは、文化産業が活況を呈しており、関連産業の発展を牽引するだけでなく、国民経済発展の新たなエンジンとなっていることを示す。
文化産業の貢献、特に海外への発信という観点から見ると、その成果は顕著であり、発信力や影響力はますます高まっている。2012年から2022年にかけて、全国の文化産業の企業数は3.6万社から6.5万社に増加し、年間営業収入は56億元から119億元に増加、発展の質も着実に向上している。
「文化強国戦略」の積極的な推進に伴い、私が属している興行業界がこの戦略の砦となりまた先駆者となるべきだと考えている。

■ 徐林:中国企業の海外進出は既に大きな流れに
企業の海外進出という傾向はすでに明らかであり、逆転は不可能である。私は長年政府で政策立案に携わってきた。中国がなぜこの段階に至ったのかをマクロ政策の観点から考察したい。
過去、中国は全方位の対外開放を推進すると主張してきた。全方位とは、「海外からの企業誘致」だけでなく、「海外進出」も意味し、その目的は国内と国際の2つの市場、および2つの資源をより有効に活用することだ。実際、過去長い間、中国は輸出を主体としていた。
中国はWTO加盟後、完成品の輸出において顕著な成果を上げた。WTO加盟20周年の際、商務部(省)はWTO交渉に参加した私たちに回顧録の執筆を依頼した。この時、私は過去20年間で中国が米国とEUから得た貨物の貿易黒字は6兆ドルに上ることに気付いた。今後この数字はさらに積み上がるだろう。毎年米国との貿易黒字は4,000億~5,000億ドルを維持しているためだ。このような状況が続くと様々な問題が生じる。果たして世界はこうした状況を受け入れられるだろうか?

昨年10月に米国を訪問し、ピーターソン研究所を訪問した際、同研究所に所属する韓国産業通商資源部元長官と意見交換した。同氏は、中国の現在の貿易モデルは、小国であれば問題はないかもしれないが、中国は規模が大きすぎるため、世界が耐えられないほどになっており、中国は変化しなければならないと述べた。
現在、アメリカが中国貿易に対して取っている姿勢は、対中貿易の巨大な赤字に端を発している。これまでこのような状況を容認できた国は、おそらく米国だけだった。米国はドルを発行することで貿易赤字を転換できるが、他の国にはその手段がないからだ。したがって、中国の輸出モデルは、ある段階まで進んだ時点で行き詰まり、持続不可能になるだろう。
浙江省台州市の上場企業である水晶光電は、光学センサーの製造に特化しており、製品の70%をアップルに販売している。近年、アップルは水晶光電に対し、「China+1」を実施するよう要求した。つまり、中国以外にも生産拠点を設置する必要があるということだ。なぜこのような要求がされたのか?先ほど周其仁教授がおっしゃったように、この要求は潜在的なリスクに対応するためだ。アップルは水晶光電に非常に依存しているが、サプライチェーンの安定に影響を与えるような問題を望んでいない。そのため、アップルは水晶光電にベトナムで新たな生産ラインを設立するよう要求した。この要求は水晶光電にとっては受動的だが、実際に問題が発生した場合、企業には代替案が用意されている。このような予防的かつ代替的な海外進出の要求は、現在ますます一般的になっている。これは、中米関係や中国と欧米諸国間の地政学が、企業の意思決定に深刻な影響を与えていることを反映している。
一方、企業の生産経営やサービスの観点から見ると、例えば電子製品の場合、企業は海外展開が必要だ。これらの企業は製品を販売するだけでなく、アフターサービスを提供し、市場ニーズへの迅速な対応が求められる。すべての部品と生産が中国に集中している場合、製品輸出量が増加すると、海外市場での修理やメンテナンスのニーズに迅速に対応することが困難になる。海外に生産拠点を設置し、現地で充実した部品供給エコシステムを構築できれば、変化に柔軟に対応できる。
企業が進出する必要性を、マクロ、ミクロ、そして企業レベルまで整理することができる。企業や業界によって出発点やニーズは異なるかもしれないが、この傾向は明確であり、逆転することはあり得ない。

この記事の中国語版は2024年12月26日に中国網に掲載され、多数のメディアやプラットフォームに転載された。
■ WEB掲載記事
【日本語版】
チャイナネット『海外進出した中国企業、現地社会に溶け込むのが肝心=中米グリーンファンドの徐林会長』(2025年5月15日)
チャイナネット『企業を主体としたグローバル化を=北京大学国家発展研究院の周其仁教授』(2025年5月15日)
チャイナネット『製造から投資、管理の力量まで問われる海外進出=北京大学国家発展研究院の周其仁教授』(2025年5月15日)
チャイナネット『高成長する文化産業は「輸入」と「海外進出」が両輪=北京希肯琵雅国際文化発展股份有限公司の安庭会長』(2025年5月15日)
チャイナネット『近年、日本市場に進出する中国企業が増加=中国駐日本大使館の郭旭傑経済参事官』(2025年5月15日)
チャイナネット『中国企業の海外進出は世界を再構築=周牧之教授』(2025年5月16日)
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【刊行によせて】周牧之:新型コロナウイルス禍と国際大都市の行方
【論文】周牧之:二酸化炭素:急増する中国とピークアウトした日米欧