雲河都市研究院
■ 編集ノート:中国国家発展改革委員会発展戦略和計画司と雲河都市研究院が共同で開発した「中国都市総合発展指標2016」の公表以来、雲河都市研究院は毎年、中国の地級市及びそれ以上の297都市を対象に、「中国都市総合発展指標」を発表している。同指標は経済・社会・環境という三つの軸で中国の都市を包括的に評価するもので、9年目の今年は、世界の大都市を比較、中国の一線4都市の顕著な成長に焦点を当て、その課題を分析し、今後を展望した。

恒例の「中国都市総合発展指標2024」は2025年末に発表された。北京は総合ランキングにおいて9年連続で、全国297の地級以上都市のトップの座を揺るぎなくした。上海が第2位、深圳が第3位、広州が第4位となった。これら一線4都市のパフォーマンスは突出し、そのGDP合計は全国の12.7%を占めた。

「中国都市総合発展指標」は総合ランキング偏差値に基づき、都市を一線都市、準一線都市、二線都市、三線都市に分類している。総合ランキング偏差値は、経済、環境、社会の3つの大項目偏差値の合計を300とする。偏差値が200以上と定義された一線都市はわずか北京、上海、深圳、広州の4都市である。
中国都市の経済規模は、すでに世界のトップクラスに成長した。2024年の一線4都市のうち、上海、北京、深圳が世界の都市GDPランキングにおいてトップ10入りを果たした。その順位は、上海が第5位、北京は第6位、深圳は第10位で、広州は第14位となった。
世界の都市GDPランキングトップ10は、米国(ニューヨーク、ロサンゼルス、ヒューストン)と、中国(上海、北京、深圳)が3都市ずつ占め、日本(東京)、フランス(パリ)、英国(ロンドン)、シンガポールが1都市ずつ入った。都市数とその経済規模の両面で、中米都市間大競争の構図が鮮明となっている。
本稿は「中国都市総合発展指標2024」発表の第一弾として、資本市場で大きな存在感を持つニューヨーク、東京、ロンドンの三大国際都市をベンチマークに、中国一線4都市のパフォーマンスを比較分析する。

1.強大な企業力が一線都市を世界トップクラスへ
中国都市の台頭の背後には、中国企業の飛躍がある。「フォーチュン」世界500企業のうち、本社を北京に置く企業は52社に達した。東京の29社、ニューヨークの16社、ロンドンの13社を大きく上回り、北京は世界で「フォーチュン」500企業本社の集積度が最も高い都市となった。これは、中国企業の力強い発展と、大手国有企業が首都に集中する傾向を表している。上海には「フォーチュン」500企業が12社、深圳と広州にはそれぞれ8社と6社あった。一線4都市に集積する「フォーチュン」500企業は合計78社で、世界全体の15.6%を占めた。
各国の上場企業時価総額トップ100企業数を見ると、東京は日本の時価総額トップ100企業のうち73社で、突出した集中度を示した。ロンドンはイギリス同企業のうち64社、ニューヨークは米国同企業のうち15社を集めている。北京、深圳、上海はそれぞれ中国の時価総額トップ100企業の39社、15社、12社を有する。これにより、日本とイギリスの高い一極集中度と比べ、大国である米国と中国では高時価総額企業の分布がより多中心化していることが見られる。

数だけでなく、企業の時価総額においても中国都市は際立っている。各国の時価総額トップ100企業が所在する都市別総額を見ると、最も高いのはニューヨークの同15社である。これに続くのが北京で、同39社の時価総額合計はニューヨークの88%に達し、東京(同73社)の1.1倍、ロンドン(同64社)の1.3倍、深圳(同15社)の2.6倍、上海(同12社)の5.6倍となる。中国一線4都市のトップ企業はすでに世界の主要都市の企業と時価総額で競えるまで成長している。
未上場で評価額10億米ドルを超えるユニコーン企業は、都市の経済活力を測る重要な指標である。「Hurun Report」に基づくユニコーン企業数では、ニューヨークが119社で最多、北京が78社と続く。上海65社、ロンドン49社、深圳35社、広州24社で、東京は7社と最少である。
ユニコーン企業の評価額総額では、北京がこれら都市の中で最高となり、ニューヨークの1.6倍、上海の2.5倍、ロンドンと深圳の3倍、広州の3.5倍、東京の43.8倍に達した。中国一線都市におけるイノベーティブ企業の勢いは非常に強い。

中国一線4都市の企業は、世界で経済力が最も強い都市と肩を並べる企業力を有するだけでなく、国内における集中度も際立っている。一線4都市に集まる「フォーチュン」世界500強企業78社は、中国同123社の63.4%を占める。上海・深圳・香港・北京のメインボードに上場する企業の31.3%も、一線4都市に集中する。中国でのユニコーン企業の一線4都市への集中度はさらに53.1%に達する。
企業時価総額から見ても、中国の時価総額トップ100企業の総額は全国上場企業時価総額の52.4%を占める。さらに、中国の時価総額トップ100企業の時価総額のうち、78.4%が一線4都市に集中している。
東京経済大学の周牧之教授は「中国の改革開放とIT革命はタイミングが高度に一致し、多くのイノベイティブ企業の成長をもたらした。第14次五カ年計画でイノベーション駆動が重視されたことで、電気自動車、新エネルギー、新素材、半導体、AIなどの分野で多くのイノベイティブなテック企業が急成長した。一線4都市はこの発展の潮流を担い、世界トップクラスの大都市へと躍進するとともに、長江デルタ、珠江デルタ、京津冀の三大メガロポリスを大発展させた」と指摘している。

2.三大国際科学技術イノベーションセンターの台頭
『中華人民共和国国民経済・社会発展の第14次五カ年計画および2035年までの長期目標綱要』は、北京・上海・粤港澳大湾区の国際科学技術イノベーションセンター建設を加速し、世界的影響力を有する科学技術拠点の形成を支持することを明確に打ち出している。
三大国際科学技術イノベーションセンターの中核として、一線4都市は顕著な成果を示し、すでに世界的な影響力を備えた科学技術ハブとなっている。
質の高い大学はイノベーションを支える重要な基盤である。「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション 世界大学ランキング2025」の世界トップ500校を見ると、これらの都市の中ではロンドンが11校で最多、北京6校、上海5校、広州と東京が各3校、深圳とニューヨークが各2校となっている。

高度な研究機関も科学技術を支える主要な基盤である。「ネイチャー・インデックス」世界研究機関トップ500を見ると、北京は20カ所を有し最多で、上海9カ所、広州8カ所、ニューヨークとロンドンが各7カ所、東京が3カ所、深圳が2カ所となっている。
企業もイノベーションの重要な担い手である。「EU産業R&D投資スコアボード」における企業R&D投資世界トップ2000の研究開発投資を見ると、北京は東京をわずかに上回り最多で、深圳の1.6倍、ニューヨークの2.6倍、上海の3.3倍、ロンドンの4.8倍、広州の12.2倍に相当する。

強力な基盤と莫大な投資がもたらす成果は驚異的である。世界知的所有権機関「2025グローバル・イノベーション・インデックス報告書」の科学出版物論文数では、北京が世界最多であり、上海・蘇州クラスターの1.6倍、深圳・広州・香港クラスターの1.7倍、東京・横浜クラスターの2.9倍、ニューヨークの4.4倍、ロンドンの5.8倍に上る。
各研究分野で論文引用数上位1%に入る研究者は、国際的なリーダーシップを示す指標である。クラリベイト・アナリティクスのデータによれば、北京は世界最多であり、ロンドンの3倍、ニューヨークの3.7倍、上海の4.8倍、広州の9.3倍、深圳の17.1倍、東京の20.2倍となっている。中国の一線4都市が多くの分野で国際的影響力を持つ研究者を抱えている。
世界知的所有権機関「2025グローバル・イノベーション・インデックス報告書」のPCT特許出願数を見ると、東京・横浜クラスターが世界最多であり、深圳・広州・香港クラスターの1.1倍、北京の2.7倍、上海・蘇州クラスターの3.2倍、ニューヨークの9.9倍、ロンドンの19.4倍に達している。深圳・広州・香港クラスターは東京・横浜クラスターに迫る勢いを見せている。
周牧之教授は「『第14次五カ年計画』期間において、中国一線4都市はイノベーションにおける投資と成果が爆発的に拡大し、三大国際科学技術イノベーションセンターの原型を確立した。これにより中国は世界最先端の科学技術分野で成果を上げ続け、製造業サプライチェーンで全方位の優位性をほぼ確立させた」と指摘している。

3.資本市場の発展とビジネス環境の改善
情報技術を始めとするテクノロジーの急速な発展は、学際的な協働を加速させ、産業チェーン・技術チェーン・資金チェーンの国際的な協働を促し、多数の新興産業と新興企業を誕生させている。この潮流の中、資本市場は企業発展を支える役割をますます強めている。とりわけイノベーティブ企業の成長は、証券市場とベンチャーキャピタルの支援なしには成り立たない。
主要証券取引所上場企業の時価総額合計を見ると、NYSEとNASDAQを有するニューヨークは世界最大であり、上海の8.1倍、東京の9.2倍、深圳の12.6倍、ロンドンの17倍に相当する。上海証券取引所はすでに東京を上回り、深圳証券取引所はロンドンを上回った。

世界知的所有権機関「2025グローバル・イノベーション・インデックス報告書」のベンチャーキャピタル取引件数を見ると、これらの都市の中ではニューヨークが最多であり、ロンドンの1.1倍、上海・蘇州クラスターの1.3倍、深圳・広州・香港クラスターの1.6倍、北京の1.7倍、東京・横浜クラスターの2.2倍で、中国一線4都市におけるベンチャーキャピタルの活発さが解る。
活発なイノベーションと起業には、開放性の高い相互学習の場が欠かせない。国際会議は交流と知の刺激が起こり得る重要な場である。ICCA「ビジネス分析—国家・都市ランキング」によれば、ロンドンは国際会議の開催件数においてこれらの都市の中で最多であり、東京の1.1倍、ニューヨークの3.5倍、北京の3.8倍、上海の4.7倍、深圳の16.5倍、広州の19.8倍となっている。中国一線4都市は国際会議開催の舞台としてまだ向上の余地がある。
国際航空旅客数を見ると、これらの都市の中ではロンドンが最多であり、東京の3.3倍、ニューヨークの3.4倍、上海の5倍、広州の11.3倍、北京の12.9倍、深圳の34.2倍に達している。中国一線4都市は、国際的な人的往来を支えるプラットフォームとして更なる努力が必要である。
ホテルも国際交流の重要なプラットフォームである。「フォーブス・トラベルガイド」の星付きホテル数を見ると、ニューヨークが最多で、ロンドンを若干上回り、東京の2.2倍、上海の3.4倍、北京の4.3倍、広州の15.7倍、深圳の23.5倍となっている。
雲河都市研究院の研究によれば、世界都市におけるテック産業の発展と高級レストラン数には非常に高い相関が見られ、高級レストランが国際交流の場として不可欠な存在であることを示している。「ミシュランガイド」の星付きレストラン数では、東京が世界最多であり、ロンドンの2.1倍、ニューヨークの2.3倍、上海の3.3倍、北京の5.2倍、広州の8.1倍に相当する。但、美食文化が豊かな中国においては、高級料理店は多種多様であり、「ミシュランガイド」は一つの参考指標に過ぎない。
周牧之教授は「イノベーションは典型的な交流型経済であり、その発展は人と人との交流や刺激に依存する。このため、都市にはより高い開放性と発展環境が求められる」と述べている。
明暁東中国国家発展改革委員会発展戦略計画司元一級巡視員・駐日中国大使館元公使参事官は、「時が経つのは早いもので、『中国都市総合発展指標』の発表はすでに9年連続となった。2024年指標発表の第一弾は多くの注目すべきポイントがある。第一に、一線4都市をニューヨーク、東京、ロンドンといった国際トップクラスの都市と直接比較し、世界のGDP上位10都市の中で米中両国の都市が3都市ずつ占める構図を示した。これにより、中国一線4都市の国際競争力が大きく上昇している状況が明らかにされた」
「第二に、企業力、科学技術イノベーションの主要基盤、資本市場の発展とビジネス環境の改善という三つの側面から分析を展開し、世界トップ500企業数、研究開発投資、PCT特許等のデータで裏付け、一線都市発展のロジックを明らかにし、国内都市の発展に模範的なベンチマークを示している」
「第三に、一線4都市が企業の時価総額、科学技術イノベーションの成果、資本の活発度といった面で達成した成果を示しただけでなく、国際会議の開催件数、航空旅客数、高付加価値サービスといった面での不足にも正面から向き合い、全体の分析は客観的で弁証的だ」と「中国都市総合発展指標2024」の発表を高く評価した。

この記事の中国語版は2025年12月8日に中国網に掲載され、多数のメディアやプラットフォームに転載された。
