寧波:港湾機能をベースとした製造業スーパーシティ【中国中心都市&都市圏発展指数2021】第13位

中国中心都市&都市圏発展指数2021
第13位


 寧波市は中国中心都市&都市圏発展指数2021の総合第13位だった。同市は前年度より順位を1つ下げた。

 〈中国中心都市&都市圏発展指数は、中国都市総合発展指標の派生指数として、4大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる36の中心都市の評価に特化したものである。同指数は、これら中心都市を、全国297の地級市以上の都市の中で評価している。10大項目と30の小項目、116組の指標からなる。包括的かつ詳細に、中国中心都市の発展を総合評価するシステムである。

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〈中国中心都市&都市圏発展指数〉:【36中心都市】北京、上海、深圳、広州、成都、天津、杭州、重慶、南京、西安、寧波、武漢、青島、鄭州、長沙、廈門、済南、合肥、福州、瀋陽、大連、昆明、長春、ハルビン、貴陽、南昌、石家荘、南寧、太原、海口、ウルムチ、蘭州、フフホト、ラサ、西寧、銀川


■ 古くからの一大貿易拠点都市


 寧波は、浙江省の東部に位置する計画単列市であり、中国東部沿岸の重要な港湾都市である。2021年までに、寧波は6つの区、2つの県級市、2つの県を管轄し、総面積は9,816平方キロメートル(青森県と同程度)である。寧波は雨量が多く、亜熱帯モンスーン気候に属し、温暖湿潤で、四季がはっきりしている。

 地理的に、東は舟山群島が点在し、西は紹興市、南は台州市と隣接している。海岸線が長く、その総延長は1,594キロメートルにも達し、大小614の島を有している。

 寧波は7000年前の稲作文化として名高い「河姆渡新石器遺跡」を有し、また秦の時代、徐福の大船団が寧波から出発した伝説がある。唐の時代、寧波はすでに揚州や広州と並ぶ中国三大貿易港の一つとなっていた。

 1127年に南宋が杭州に都を置いた後は、寧波の地理的な重要性が更に高まり、杭州の対外貿易のほとんどを担うようになった。この時代に寧波は、広州、泉州と並ぶ対外貿易の三大港の一つに数えられていた。

 しかし、明朝初頭に、倭寇や海賊対策のため、寧波は重要な海防基地となった。政府から遠洋舶の製造が禁止され、沿海部の貿易が厳しく制限されて寧波の経済発展が後退した。

 1545年に、ポルトガルが寧波で貿易活動を展開しはじめ、最初は密貿易であったが、1567年以後、公的な貿易も行うようになった。その後、オランダやイギリスからも商人が相次ぎやってきて、寧波は再び一大貿易拠点都市となった。

■ 群を抜く港湾能力


 現在、寧波は港湾機能中枢都市の地位をより高め、2021年に寧波―舟山港の年間貨物取扱量は世界で第1位、コンテナ取扱量は世界第3位を誇っている(詳しくは、「【ランキング】世界で最も港湾コンテナ取扱量が多い都市はどこか?」を参照)。

 寧波―舟山港は中国の一大鉄鉱石中継基地、原油・石炭輸送基地、穀物輸送基地である。寧波は240以上の国際航路で、100以上の国・地域とつながっている。

■ 民営経済の活力をベースに


 改革開放以降、寧波経済は活力に満ちている。その原動力は民営経済である。寧波は、中国商人発祥の地とも呼ばれ、上海人の1/4は寧波出身者と言われている。また、寧波は華僑の故郷としても有名で、30万人以上の寧波人が世界50以上の国と地域に居住している。海外の寧波人は、寧波市と世界を結ぶ重要な架け橋となっている。

 2021年末までに、寧波には香港、上海、深圳の三大メインボードに上場する企業が84社立地し、中国で第9位の規模を誇っている。現在、寧波GDPの80%以上が民営経済によって生み出されている。

 2021年、寧波の地域内総生産(GDP)は1兆4,595億元(約29.2兆円、1元=20円換算)で、中国第12位であった。成長率は、前年比8.2 %であった。一人当たりGDPは15万3,922元(約308万円)で、中国第12位だった(詳しくは「【ランキング】世界で最も経済リカバリーの早い国はどこか? 中国で最も経済成長の早い都市はどこか?」を参照)。

■ 人口吸収でメガシティが目前に


 経済成長が人口を吸引し、2021年末の常住人口は約954万人で中国では第22位の人口規模であった。寧波は、流入人口が杭州とほぼ同等で約327万人であり、全国から多くの人口を吸い上げている。よって寧波は中国第11位の人口流入都市となっている。寧波は人口1000万人を超えるメガシティになるのも時間の問題だ。

人口吸収都市

2021年末の常住人口は約954万人で中国第22位であった。人口の流出入を示す「流動人口(非戸籍常住人口)」では、浙江省内11都市のうち9都市は、外部から人口が流入している。寧波は、流動人口が杭州と同等の約327万人の大幅プラスであり、周辺から多くの人口を吸い上げている。よって寧波は中国第11位の人口流入都市となっている。


中国都市総合発展指標2021
第14位


 寧波は〈中国都市総合発展指標2021〉総合ランキング第14位であり、前年度の順位を維持した。

 「経済」大項目は第12位で、前年度の順位を維持した。3つの中項目で「経済品質」は第11位、「発展活力」および「都市影響」は第12位で、3中項目のうちトップ10入りした項目はなかった。小項目では、「広域中枢機能」は第8位、「開放度」は第9位、「経済構造」は第10位と、9つの小項目のうち3項目がトップ10に入った。なお、「経済規模」は第12位、「ビジネス環境」は第13位、「経済効率」は第15位、「イノベーション・起業」は第16位、「都市圏」「広域輻射力」は第19位であった。

 「社会」大項目は第18位で、前年度に比べ順位が1つ下がった。3つの中項目で「生活品質」は第16位、「ステータス・ガバナンス」は第20位、「伝承・交流」は第26位だった。小項目で見ると、9つの小項目のうち、トップ10入りした項目はなかったものの、「居住環境」は第12位、「社会マネジメント」は第13位、「文化娯楽」「消費水準」は第17位と、5項目がトップ20に入った。なお、「生活サービス」は第25位、「人口資質」は第31位、「都市地位」は第32位、「歴史遺産」は第33位、「人的交流」は第34位であった。

 「環境」大項目は第29位で、前年度より順位を4つ上げた。3つの中項目のうち「空間構造」は第28位、「環境品質」は第38位、「自然生態」は第83位であった。9つの小項目のうち、トップ10入りした項目はなかったものの、「環境努力」は第14位、「都市インフラ」は第20位と、2項目がトップ20に入った。なお、「コンパクトシティ」は第26位、「交通ネットワーク」は第38位、「汚染負荷」は第40位、「気候条件」は第71位、「資源効率」は第77位、「自然災害」は第93位、「水土賦存」は第205位であった。


 〈中国中心都市総合発展指標2021〉について詳しくは、メガシティの時代:中国都市総合発展指標2021ランキングを参照。

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CICI2019:第14位  |  CICI2020:第14位  |  CICI2021:第14位


■ 製造業スーパーシティとしての発展


 寧波は、港湾と民間活力をベースに現在、一大製造業スーパーシティに成長した。〈中国都市総合発展指標〉の「中国都市製造業輻射力2020」では寧波は中国で第5位。2021年、同市の工業付加価値は6,298億元(約12.6兆円)を達成し、前年比で11.0%の増加となった。輸出総額も前年比19%増の7,624億元(約15.2兆円)で、中国第5位(詳しくは「【ランキング】中国で最も輸出力の高い都市はどこか?」を参照)。

 製造業の成長に伴い、科学技術への投資も大きく拡大している。〈中国都市総合発展指標〉の「中国都市科学技術輻射力2021」で寧波は中国第9位であり、トップ10にランクインした。「R&D人員」は中国第9位、「特許取得数指数」は中国第16位、「国際特許取得総数」は中国第14位と、科学技術力を測る多くの指標が高い成績を収めている。その結果、市内にユニコーン企業が3社立地し、その企業価値は760億ドル(約10.6兆円)に達している。


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