〈中国中心都市&都市圏発展指数2021〉
第16位
青島市は〈中国中心都市&都市圏発展指数2021〉の総合第16位だった。同市は前年度より順位を1つ下げた。
〈中国中心都市&都市圏発展指数〉は、〈中国都市総合発展指標〉の派生指数として、4大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる36の中心都市の評価に特化したものである。同指数は、これら中心都市を、全国297の地級市以上の都市の中で評価している。10大項目と30の小項目、116組の指標からなる。包括的かつ詳細に、中国中心都市の発展を総合評価するシステムである。
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〈中国中心都市&都市圏発展指数〉:【36中心都市】北京、上海、深圳、広州、成都、天津、杭州、重慶、南京、西安、寧波、武漢、青島、鄭州、長沙、廈門、済南、合肥、福州、瀋陽、大連、昆明、長春、ハルビン、貴陽、南昌、石家荘、南寧、太原、海口、ウルムチ、蘭州、フフホト、ラサ、西寧、銀川
■ 中原の中核都市
鄭州は河南省の省都であり、中原メガロポリスの中核都市である(中原メガロポリスについて詳しくは『中心都市がメガロポリスの発展を牽引:中国都市総合発展指標2022』を参照)。鄭州は河南省の中北部に位置し、北に黄河、西に嵩山がある。東は開封、南は許昌と平頂山、西は洛陽、北は新郷と焦作の各市と接している。市の総面積は7,567平方キロメートル(熊本県と同程度)で、中国人口規模第11位の都市として約1,283万人を抱える。現在、6区5市1県を管轄し、国家級新区1つ、国家級開発区2つ、国家級輸出加工区1つを有している。
同市は温帯大陸性季節風気候に属し、四季がはっきりしている。年間平均気温は約15.4℃、年間降水量は約630mmである。市内には大小124の河川があり、多様な自然地形を有している。
■ 由緒ある文明交流の地
鄭州は中国古代文明・華夏文明の発祥の地として、古来より文明交流の十字路とされてきた。
夏、商、管、鄭、韓の各王朝が鄭州に都を置き、隋、唐、五代、宋、金、元、明、清の各王朝が州を設置してきた。鄭州の中心市街地には、3,600年前の商朝の城壁遺跡(鄭州商城)全長7キロメートルが今も残る。市内には、世界文化遺産が2項目15カ所あり(中国第5位)、国家重点文化遺産保護施設87カ所(中国第3位)、省レベル文化遺産保護施設97カ所、市レベル文化遺産保護施設208カ所、国家レベル無形文化遺産6カ所を有している。他にも、裴李崗文化遺跡(約8,000年前)、大河村遺跡(約5,000年前)、打虎亭漢墓、黄帝故里など、多くの古代文化遺跡が散在している。少林寺のある嵩山を始め、黄河文化公園などの自然文化景観も多くの観光客を引き付けている。鄭州の「国内観光客数」は中国第21位である。
豊かな中原文化は、古代において子産、列子、韓非、杜甫など傑出した人物を輩出している。同市は現在なお「傑出文化人指数」で中国第7位と好成績を誇っている。
■ 鉄道が産んだ大都市
鄭州駅は1904年に設立され、当初はプラットフォーム1つ、平屋2軒、線路4本しかなかった。1953年に鄭州駅が拡張され、鉄道のハブとなった。鉄道の利便性により1954年に河南省の省都が開封から鄭州へ移転された。これが、鄭州が「鉄道が産んだ都市」と言われる由縁である。
鄭州は、東西南北交通の要衝として、航空・鉄道・道路からなる巨大な交通ハブとなっている。鄭州駅は中国鉄道の最大級の旅客中継駅で「中国鉄道の心臓」と呼ばれている。同市の「空港利便性」と「航空輸送」は共に全国第13位であり、「鉄道利便性」に至っては全国第1位を誇っている。(詳しくは『【ランキング】中国で最も空港利便性が高い都市はどこか?』を参照)。
鄭州は一帯一路の重要な結節点都市でもある。2013年に鄭州は中部地区で初めてヨーロッパへ直通する貨物列車―中欧列車を開通させた。過去10年間でユーラシア40カ国の140以上の都市を繋げた中欧列車(中豫号)が、累計750万トンの貨物を輸送した。
〈中国都市総合発展指標2021〉
第19位
鄭州は〈中国都市総合発展指標2021〉総合ランキング第19位であり、前年度より順位を3つ下げた。
「社会」大項目は第14位で、前年度の順位を維持した。3つの中項目で「ステータス・ガバナンス」「伝承・交流」は第14位、「生活品質」は第21位だった。小項目で見ると、「人口資質」は第6位、「歴史遺産」は第10位と2項目がトップ10に入った。また、「文化娯楽」は第13位、「消費水準」は第18位と2項目がトップ20に入った。なお、「都市地位」「生活サービス」は第22位、「人的交流」「居住環境」は第28位、「社会マネジメント」は第39位であった。
「経済」大項目は第17位で、前年度に比べ順位が1つ上がった。3つの中項目で「都市影響」は第14位、「経済品質」は第17位、「発展活力」は第19位で、3中項目のうちトップ10入りした項目はなかった。9つの小項目のうち、トップ10入りした項目はなかったものの、「経済規模」「開放度」「広域中枢機能」は第13位、「広域輻射力」は第14位、「イノベーション・起業」は第19位と、5項目がトップ20に入った。また、「経済構造」「都市圏」は第22位の2項目もトップ30に入った。なお、「ビジネス環境」は第33位、「経済効率」は第43位だった。
「環境」大項目は第107位であった。3つの中項目のうち「空間構造」は第29位、「環境品質」は第163位、「自然生態」は第222位であった。9つの小項目のうち、「環境努力」は第12位、「都市インフラ」は第18位と、2項目がトップ20に入った。なお、「コンパクトシティ」は第29位、「交通ネットワーク」は第32位、「資源効率」は第102位、「自然災害」は第158位、「気候条件」は第187位、「水土賦存」は第210位、「汚染負荷」は第255位であった。
〈中国中心都市総合発展指標2021〉について詳しくは、「メガシティの時代:中国都市総合発展指標2021ランキング」を参照。
CICI2016:第26位 | CICI2017:第21位 | CICI2018:第18位
CICI2019:第16位 | CICI2020:第16位 | CICI2021:第19位
■ ギリシャ一国に匹敵する経済規模
鄭州は中原地区の経済中心地として、2022年のGDPは1兆2,935億元(約25.9兆円、1元=20円換算)に達し、中国第16位の経済規模を誇る。これは世界第54位のイラクのGDPを超え、世界第53位のギリシャのGDPに匹敵する規模である(詳しくは「【ランキング】世界で最も経済リカバリーの早い国はどこか? 中国で最も経済成長の早い都市はどこか?」を参照)。
金融・医療センターとしての機能も高く、鄭州の「金融輻射力」は中国第7位、「医療輻射力」は中国第9位となっている。鄭州には中国初の先物取引所と、中国初の空港経済区がある。
鄭州は中国の主要な研究都市として、「科学技術輻射力」は中国第19位である。複数の国家重点大学が存在し、「高等教育輻射力」は中国第15位と高水準である。「大学学生数」と「高等教育教師数」はいずれも中国第3位である(詳しくは『【ランキング】科学技術大国中国の研究開発拠点都市はどこか?』)。
中心都市としての鄭州は、外部から人々を吸引し成長している。人口の流出入を示す「流動人口(非戸籍常住人口)」では、河南省内17都市のうち16都市は、外へ人口が流出し、その規模は約2,012万人に達している。中でも、周口、信陽、駐馬店の3都市は、中国で最も人口が流出するトップ3都市であり、同3都市だけで約938万人が外部に流出している。これに対して鄭州は、流動人口が約363万人のプラスである。よって鄭州は中国第11位の人口流入都市となっている。
■ iPhone生産とEV産業クラスターの一大拠点
鄭州は、世界最大のApple製品の生産基地として名高い。最近、EV生産にも力を入れている。
鄭州はBYDの中高級車種の重要な生産基地であり、2023年11月、BYDの第600万台目のEVが鄭州で生産された(詳しくは『【ランキング】自動車大国中国の生産拠点都市はどこか?』を参照)。
内陸都市でありながら、鄭州の「製造業輻射力」は中国第20位で高い(詳しくは『【ランキング】中国で最も輸出力の高い都市はどこか?』を参照)。
■ エンタメ都市としての台頭
鄭州のコンテンツ産業も盛んである。2021年、河南衛星テレビの春晩(旧正月を祝う中国の国民的年越し番組)には、ダンス番組「唐宮夜宴」が全国を席巻した。その後、同テレビ局の「端午の不思議な旅」や、水中ダンス番組「祈」も大ヒットした。
「唐宮夜宴」は、河南博物院が所蔵する唐代の舞楽佣から着想を得たことで、河南博物院も注目を集め、多くの観光客が訪れている。
エンタメ都市としても名を上げつつある鄭州は、「文化・スポーツ・娯楽輻射力」で中国第15位であり、「映画館・劇場消費指数」は中国第14位である(詳しくは『【ランキング】世界で最も稼ぐ映画大国はどこか?』を参照)。
■ 黒川紀章設計の市街地が魅力
鄭州東部に建設中の150万人都市「鄭東新区」の設計には、日本を代表する建築家・黒川紀章氏の案が採用されている。「鄭東新区」の設計案は2003年に実施された国際設計コンペによって決定されたもので、黒川氏は計画面積1.5万ヘクタールのマスタープランとCBD地区の詳細設計を担当した。生態回廊や水路都市などの人間と自然との共生といった基本コンセプトが、同市の新市街地の魅力を形作っている。