合肥:イノベーションで飛躍を遂げる中心都市【中国中心都市&都市圏発展指数2021】第18位

中国中心都市&都市圏発展指数2021
第18位


 合肥市は中国中心都市&都市圏発展指数2021の総合第18位だった。同市は前年度より順位を1位上げた。

 〈中国中心都市&都市圏発展指数は、中国都市総合発展指標の派生指数として、4大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる36の中心都市の評価に特化したものである。同指数は、これら中心都市を、全国297の地級市以上の都市の中で評価している。10大項目と30の小項目、116組の指標からなる。包括的かつ詳細に、中国中心都市の発展を総合評価するシステムである。

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〈中国中心都市&都市圏発展指数〉:【36中心都市】北京、上海、深圳、広州、成都、天津、杭州、重慶、南京、西安、寧波、武漢、青島、鄭州、長沙、廈門、済南、合肥、福州、瀋陽、大連、昆明、長春、ハルビン、貴陽、南昌、石家荘、南寧、太原、海口、ウルムチ、蘭州、フフホト、ラサ、西寧、銀川


イラク一国に匹敵の経済規模を誇る


 合肥市は安徽省の省都であり、同省の政治、経済、文化の中心であり、また長江メガロポリスの中核都市でもある(長江デルタメガロポリスについて詳しくは中心都市がメガロポリスの発展を牽引:中国都市総合発展指標2022を参照)。

 同市は、4区・4県・1県級市を管轄し、総面積は11,445平方キロメートルに達し、日本の秋田県と同程度である。亜熱帯モンスーン気候で、四季がはっきりし、気候は穏やかである。「気候快適度」は中国第148位である。

 安徽省設立後350年以上の歴史上、省都となった都市は南京、安慶、合肥、蚌埠、蕪湖など多数あった。1949年の新中国成立時の合肥は、面積わずか5平方キロメートル、人口5万人の小さな都市だったが、紆余曲折を経て1952年に安徽省の省都となった後は目覚ましい発展を遂げた。2022年常住人口が963万人で中国第20位、GDPは約12,013億元(約24兆円、1元=20円で換算)で中国第21位にまで成長した。その経済規模は、世界第54位のイラクのGDPに匹敵する(詳しくは【ランキング】世界で最も経済リカバリーの早い国はどこか? 中国で最も経済成長の早い都市はどこか?を参照)。

 外部から人々を引き入れ成長する合肥は、「流動人口(非戸籍常住人口)」が約154万人の大幅プラスで、中国第27位の人口流入都市となっている。

『三国志』ゆかりの都市


 合肥は、秦の時代から約2,100年の歴史を持つ。『三国志』で曹操と孫権が争った激戦地として知られ、市内には三国時代を彷彿とさせる人気の観光歴史スポット「三国遺址公園」が整備されている。合肥の「国内観光客数」は中国第24位、「海外観光客数」は中国第30位と、省内トップの成績である。


中国都市総合発展指標2021
第24位


 合肥は〈中国都市総合発展指標2021〉総合ランキング第24位となり、前年より順位を3つ下げた。

 「経済」大項目は第21位で、前年に比べ順位が2つ上がった。3つの中項目で、「経済品質」「発展活力」は第22位、「都市影響」は第23位と、3中項目でトップ10入りした項目はなかったものの、すべてがトップ30入りを果たした。9つの小項目のうち、「イノベーション・起業」は第14位、「経済効率」は第18位、「広域輻射力」は第20位、「経済規模」は第21位、「経済構造」「広域中枢機能」は第23位、「開放度」は第25位と、7項目がトップ20に入った。なお、「ビジネス環境」は第32位、「都市圏」は第35位だった。

 「社会」大項目は第24位で、前年度より順位を4つ下げた。3つの中項目で、「ステータス・ガバナンス」は第16位で、同1項目がトップ20に入った。「生活品質」「伝承・交流」は第30位だった。小項目で見ると、「都市地位」は第17位、「人口資質」は第18位、「文化娯楽」は第23位、「人的交流」は第29位と、5項目がトップ30に入った。「消費水準」は第32位、「居住環境」は第33位、「生活サービス」は第36位、「社会マネジメント」は第40位、「歴史遺産」は第180位であった。

 「環境」大項目は第53位で、前年に比べ順位が13位上がった。3つの中項目のうち「空間構造」は第35位、「環境品質」は第98位、「自然生態」は第104位であった。9つの小項目のうち、「都市インフラ」は第16位、「自然災害」は第19位と、2項目がトップ20に入った。「環境努力」は第34位、「コンパクトシティ」は第35位、「交通ネットワーク」は第44位、「資源効率」は第47位、「水土賦存」は第72位、「気候条件」は第139位、「汚染負荷」は第180位であった。


 〈中国中心都市総合発展指標2021〉について詳しくは、メガシティの時代:中国都市総合発展指標2021ランキングを参照。

 

CICI2016:第37位  |  CICI2017:第25位  |  CICI2018:第27位
CICI2019:第26位  |  CICI2020:第21位  |  CICI2021:第24位


科学技術力で飛躍


 合肥が急激な発展を遂げた最大の理由は、科学技術力にある。

 中国科学技術大学(中科大)が1970年、北京から合肥に移転したのが契機となった。現在、合肥には19の大学と約200の政府系科学研究機関が立地し、20万人を超える研究開発要員を擁している。同市の「科学技術輻射力」は中国第13位である(詳しくは【ランキング】科学技術大国中国の研究開発拠点都市はどこか?)。

 合肥の「大学生在校生数」は中国第19位、「世界トップ大学指数」は中国第15位、「高等教育輻射力」は中国第14位である。

家電生産からハイテク製造業へ


 新中国成立初期、合肥の工業と言えば小規模な発電所ひとつしか無かった。1980〜90年代に、合肥は家電産業に力を入れ、美菱(MeiLing)や栄事達(Royalstar)など多くの地元ブランドを育成した。

 合肥の冷蔵庫生産量は2011年に、全国の三分の一、洗濯機は全国の四分の一を占め、青島市等を超えて全国最大の家電生産基地となった。現在、合肥の家電産業の年間生産額は1兆元を超えている。

 家電産業で身を起こした合肥は、後にディスプレイと半導体分野に参入した。2008年、BOEテクノロジーグループ(京東方科技集団)と共同で、中国初の第6世代液晶パネル生産ラインを建設した。この生産ラインは、中国初の32インチ液晶画面を生産した。

 BOEはその後も合肥で第8.5世代(2014年稼働)と第10.5世代生産ライン(2018年稼働)を建設し、投資を続けた。

 現在、合肥は世界最大のディスプレイ生産地の一つに数えられている。

半導体生産基地からEV生産基地へ


 ディスプレイ産業の急成長は、半導体産業の発展を促している。2015年、合肥建投は台湾の力晶積成電子製造(PSMC)と合弁で「合肥晶合集成電路」を設立し、半導体ウエハーの受託生産(ファンドリー)を開始した。2017年には、12インチウエハー製造基地が稼働した。

 合肥は2016年、大手ファブレス半導体メーカーの兆易創新科技(ギガデバイス・セミコンダクター)と協力して、1,500億元(約3兆円)を投じて長鑫存儲技術(CXMT)を立ち上げ、中国本土のメモリチップ製造の空白を埋めた。2019年、CXMTの12インチウエハー工場が稼働し、10ナノメートル級の8GB DDR4の製造を開始した。

 現在、晶合集成、CXMTを筆頭に、280社の半導体関連産業が合肥に集まり、同市を一大シリコンシティに押し上げた。

 合肥の躍進はこれに留まらず、近年はEV関連企業を積極的に誘致し、一大EV生産基地が形成されつつある。

 現在同市の「輸出総額」は中国第31位、「製造業輻射力」は中国第32位であるものの今後、順位の上昇が大いに期待される。合肥は、今後もっとも注目すべき都市のひとつである(詳しくは【ランキング】中国で最も輸出力の高い都市はどこか?を参照)。


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