〈中国中心都市&都市圏発展指数2021〉第2位
上海市は〈中国中心都市&都市圏発展指数2021〉の総合第2位に輝いた。同市は〈中国中心都市&都市圏発展指数〉が2017年に発表されて以来5年連続第2位を維持した。
〈中国中心都市&都市圏発展指数〉は、〈中国都市総合発展指標〉の派生指数として、4大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる36の中心都市の評価に特化したものである。同指数は、これら中心都市を、全国297の地級市以上の都市の中で評価している。10大項目と30の小項目、116組の指標からなる。包括的かつ詳細に、中国中心都市の発展を総合評価するシステムである。
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〈中国中心都市&都市圏発展指数〉:【36中心都市】北京、上海、深圳、広州、成都、天津、杭州、重慶、南京、西安、寧波、武漢、青島、鄭州、長沙、廈門、済南、合肥、福州、瀋陽、大連、昆明、長春、ハルビン、貴陽、南昌、石家荘、南寧、太原、海口、ウルムチ、蘭州、フフホト、ラサ、西寧、銀川
■ 66日間に及んだ長期ロックダウン
上海にとって2022年は新型コロナウイルスに苦しめられた一年であった。3月28日〜6月1日の間ロックダウン(都市封鎖)が実施され、その封鎖期間は66日間に及んだ。2020年の武漢のロックダウンに11日短いだけの長期戦であった。
上海は中国最大の経済規模を誇る国際都市である。その上海で新型コロナウイルスの流行は、2022年1月中旬に始まった。最初は毎日数人の新規感染者が出る程度で、それが2月末まで続いた。しかし、3月初めからは、日々の新規感染者が数十人から数百人にまで急増し、3月下旬には1日あたり千人を超えた。ピークに達した4月28日は、1日で5,487人もの新規感染者が出た。
ロックダウン期間の66日間、上海市でのべ57,486人の陽性感染者が報告され、1日あたり平均871人の新規感染者が出た計算になる。また中国では症状のある新規感染者と別途に、無症状感染者数の集計をしている。上海のロックダウン期間の無症状感染者数は773.7万人に達し、1日あたりでは平均11.7万人となった。
全域でロックダウンを実施した武漢とは違い、上海のロックダウンは部分的に実施された。3月27日に上海市新型コロナ感染予防抑制活動指導グループ弁公室が通知を発表し、3月28日から4月5日まで、黄浦江を境に地区を分割し、PCRスクリーニング検査を実施するとした。公告によると、最初の封鎖地域には浦東、奉賢、金山、崇明の4地区と、閔行区が管轄する2つの街道、松江区が管轄する4つの町が含まれた。その時点での対象面積は約4,000平方キロメートルで、上海市全体の面積の60%以上を占め、対象人口は800万人まで広がった。
その後、ロックダウンはさらに2カ月ほど伸び、6月1日まで長期に至った。ロックダウンの実施により新型コロナ感染状況は一時沈静化されたものの、年末のゼロコロナ政策の解除で再び感染が爆発して医療崩壊も起こり、人的損害が膨らんだ。
結果、新型コロナ感染症は2022年の上海経済に大きな負の影響を及ぼした。
■ 世界に誇る一大商業都市
上海市は中国四大直轄市の1つで、長江デルタメガロポリスの中枢都市である。同市の面積は約6,340平方キロメートルで群馬県とほぼ同じ大きさであり、常住人口は約2,489万人と東京都の人口の約1.8倍の規模を誇る。GDPは4.32兆元(約86.4兆円、1元=20円)で中国の地級市以上の297都市の中で堂々第1位、国別で比較すればそのGDP規模は世界25位であるベルギー一国のGDPを超えている。
世界有数の金融センターに成長した上海浦東エリアは、ほんの20数年前まではのどかな田舎だった。1992年に「浦東新区」に指定されたことを契機として摩天楼が次々と建設され、「中国の奇跡」と讃えられるほど急速に発展していった。
現在、上海市内には証券取引所、商品先物取引所、そして合計8カ所の国家級開発区と、自由貿易試験区、重点産業基地、市級開発区等が設置されている。〈中国都市総合発展指標2021〉の「金融輻射力」においても、上海市は第2位の座に輝いている。
同市の広域インフラ機能も突出しており、本指標の「空港利便性」、「コンテナ港利便性」において上海は第1位となっている。上海虹橋国際空港と上海浦東国際空港を合わせた2021年の旅客輸送者数は約6,500万人に達し、航空貨物は約437万トン取り扱われ、いずれも中国随一の処理能力を持つ。港湾機能では、コンテナ取扱量が世界で12年連続第1位に輝き、その規模は4,703万TEU(20フィートコンテナ1個を単位としたコンテナ数量)(2021年)に達している。
■ G60科学技術イノベーション回廊(G60上海松江科創走廊)で産業振興を
現在、上海をはじめとした長江デルタエリアでは、G60科学技術イノベーション回廊(G60上海松江科創走廊)という目玉プロジェクトが進行している。2016年に発足した同プロジェクトは、米国ボストン周辺のルート128にハイテク企業を集積させたことに因み、高速道路G60の上海市松江区から浙江省金華市までの区間沿いに、イノベーション関連企業を集積させる試みである。その後、構想はさらに松江区から外側へ延びる他の高速道路や高速鉄道の沿線に広がった。現在、同プロジェクトに参加する都市は、上海(松江)、嘉興、杭州、金華、蘇州、湖州、宣城、蕪湖、合肥の9都市に及ぶ。
この9都市の人口、GDPの合計は、それぞれ約5,672万人、約7.4兆元(約147.5兆円、2021年)にも達する。同構想は、9都市における環境、ロボット、自動車部品など基幹産業の連帯的な発展を促すために、産業パークの設置や、金融サービスの提携、人材の交流などの施策を打ち出した。また、長江デルタメガロポリスにおける地域協力のモデルとして、9都市間の通勤、通学、物流などを推し進めるインフラ整備や制度整備なども行っている。
雲河都市研究院は同プロジェクトから要請を受け、「長江デルタG60科学技術イノベーション回廊ハイクオリティ発展指数」、「長江デルタG60科学技術イノベーション回廊一体化発展指数」の両指標を開発、プロジェクトの進捗状況を明らかにすると同時に、その方向性づくりに協力している。
中国各都市の科学技術発展の実態について詳しくは、「【ランキング】科学技術大国中国の研究開発拠点都市はどこか?」を参照されたい。
■ エンターテインメント産業が爆発
所得水準が向上したことにより、中国の消費者の関心はモノ消費からコト消費に向かっている。一例として中国のテーマパーク産業の急激な発展がある。現在、国内には2,500カ所以上のテーマパークがあり、とりわけ5,000万元(約8.5億円)以上を投資したテーマパークは約300カ所もある。2016年6月、中国で初のディズニーパークとなる「上海ディズニーランド」が開園した。総工費は「東京ディズニーシー」の約2倍となる約55億ドル(約6,500億円)、面積は約390ヘクタールで、これも「東京ディズニーランド」(200ヘクタール)の約2倍の広さを誇る。入場者数は開業1年で1,100万人を動員、黒字を実現し、現在も拡張工事が進められている。
映画産業の発展も目覚ましい。2021年における中国の映画市場は、新型コロナウイルスパンデミックに苦しんだ前年の30億ドルから、73億ドルへと急伸した。とくに、2021年の春節(旧正月)に、78.2億元(約1,564億円、1元=20円で計算)の映画興行収入で、同期間の新記録を樹立し、世界の単一市場での1日当たり映画興行収入、週末映画興行収入などでも記録を塗り替えた。
2021年は中国のゼロコロナ政策が最も成功した年であった。人々は普通に映画館に通うことができた。結果、前年度比で中国の映画観客動員数はプラス112.7%と倍増し、中国の映画市場は北米の1.6倍に拡がり、2年連続で世界最大の映画興行市場を維持した。
同年、上海は中国で最も興行収入が高かった都市として、4,970万人の観客数を動員し、25.3億元(約506億円)を稼ぎ出した。
中国の映画市場について詳しくは、「【ランキング】世界で最も稼ぐ映画大国はどこか? 」を参照されたい。
〈中国都市総合発展指標2021〉第2位
上海は6年連続で総合ランキング第2位を獲得した。
上海の「経済」大項目は6年連続で全国第1位を保持している。中項目で見ると、「経済品質」「都市影響」の2つが堂々の全国第1位であった。「発展活力」は第2位であった。小項目では「経済規模」「開放度」「広域中枢機能」の3つが2016年から連続で全国第1位の好成績を収めている。
「社会」大項目で上海は6年連続で全国第1位を保持している。「生活品質」「伝統・交流」「ステータス・ガバナンス」の3つの中項目は、2017年から引き続き全国第2位であった。小項目から見ると、「人的交流」「社会マネジメント」「消費水準」は北京を越え全国第1位を勝ち取った。「都市地位」「文化娯楽」「居住環境」「生活サービス」の4つの小項目指標では、第2位となっている。
「環境」大項目で上海は2020年から1つ順位を上げ、全国第2位となった。3つの中項目指標の中で「空間構造」は首位の座を守ったが、「環境品質」「自然生態」は、それぞれ第20位と第128位であった。小項目指標から見ると、「交通ネットワーク」「都市インフラ」「コンパクトシティ」は全国第2位、「環境努力」は第4位となった。一方で「水土賦存」「気候条件」「自然災害」「汚染負荷」などの小項目のパフォーマンスは芳しくなかった。
〈中国中心都市総合発展指標2021〉について詳しくは、「メガシティの時代:中国都市総合発展指標2021ランキング」を参照。
CICI2016:第2位 | CICI2017:第2位 | CICI2018:第2位
CICI2019:第2位 | CICI2020:第2位 | CICI2021:第2位
■ 上海自由貿易試験区臨港新片区
上海で進む1つの目玉プロジェクトは「上海自由貿易試験区臨港新片区」(以下、新片区)開発プロジェクトである。2019年8月に発足した新片区は、上海中心部から南東へ約70キロメートルに位置し、総面積873平方キロメートルの巨大国家プロジェクトである。
新片区は投資・貿易・資本・輸送・人材の自由化を進め、質の高い外資を誘致し、産業と都市の融合発展を目指す。まずは、スタートエリアとして120平方キロメートルの開発を計画中だ。
新片区には、すでに、テスラ(Tesla)、シーメンス(Siemens)、キャタピラー(Caterpillar)、そして日本からYKKなどの国際的に名高い企業が進出している。
なお、新片区は、上海臨港経済発展(集団)有限公司が開発を担っているが、2019年11月下旬、雲河都市研究院は当該集団と戦略提携を結び、同プロジェクトを支援している。
■ 改革開放40周年を迎える中国と上海
中国は2018年、改革開放40周年を迎えた。この40年間で、中国経済の規模は世界第2位に躍進し、1978年に世界11位だった経済規模が、2009年には日本を抜いて堂々世界第2位に達した。2017年のGDPは12.3兆ドル(約1,381兆円)に膨れ上がり、世界経済全体の約15%を占めるまでに成長した。
改革開放の象徴的な都市は何と言っても「GDP規模」で全国第1位の上海であろう。その上海の中でもとりわけ経済発展を牽引したのが、上海浦東新区である。
1990年から建設が始まった浦東新区は、わずか28年間で、何もなかっただだっ広い畑が高層ビルの立ち並ぶ国際金融センターへと様変わりした。また、全国ではじめて保税区、自由貿易試験区、保税港区が設置され、浦東新区の経済規模は設立以来およそ160倍にまで拡大した。
今後も上海は対外開放拡大の牽引役として、またグローバルシティとして、絶えず新しい活力を放出し続けるだろう。
■ 第15回上海書展(上海ブックフェア)が開催
上海市民に人気の恒例「第15回上海書展(上海ブックフェア)」が2018年8月、上海市政府主催により「上海展覧中心」で開催された。展示面積2.3万 m2という巨大規模で、参加した出版社は500社以上、15万冊の書籍展示に加えて読書イベントが1,000回以上行われ、展覧会での売上は5,000万元(約8.1億円)を記録した。このブックフェアは年々評判を増し、今年は30万人以上の来場者があった。
中国の出版産業は好調である。2016年、中国の書籍小売り市場の規模は701億元(約1.1兆円)で前年比12.3%増の成長であった。そのうち、実店舗での販売規模は336億元(約5,438億円)で前年比2.3%減、 オンラインでの販売規模は365億元(約5,907億円)で前年比30%増であった。2016年に、はじめてオンラインでの書籍販売が実店舗での販売額を超え、特に大型サイトでの書籍販売は年々増加の一途をたどっており、今後もこの勢いは続いていくとみられている。
大手オンライン書籍販売サイト「当当網」の2017年度書籍販売のフィクション部門トップ10には、海外の翻訳書が7作品ランクインした。第1位には太宰治『人間失格』の翻訳本、第2位には東野圭吾『ナミヤ雑貨店の奇蹟』の翻訳本、第10位には同じく東野圭吾の『白夜行』の翻訳本が入り、日本人作家の人気の高さを示した。近年、村上春樹、綾辻行人、新海誠など日本の人気小説が次々と中国語に翻訳され出版されている。中でも東野圭吾は絶大な人気があり、『容疑者Xの献身』『ナミヤ雑貨店の奇蹟』は中国で映画化もされているほどである。マンガやアニメに小説が加わり、日本のコンテンツには中国から熱い視線が送られている。
■ 第1回中国国際輸入博覧会
2018年11月、第1回中国国際輸入博覧会が上海市政府ほかの主催により市内「国家会展中心」で開催された。この博覧会は習近平国家主席肝煎りの一大イベントであり、貿易の自由化と経済のグローバル化を推進させ、世界各国との経済貿易交流・協力の強化を促進するための見本市と位置づけられている。博覧会には100数カ国・地域から出品され、中国内外から15万社のバイヤーが参加した。
世界最大の人口を持ち世界第2位の経済体にまで成長した中国は、消費と輸入が急伸し、すでに世界の第2位の輸入と消費を誇るまでに成長している。今後さらに5年間で10兆ドル以上の商品・サービスを輸入する巨大市場にまで成長することが見込まれている。
その巨大市場の中心地の一つが上海である。上海は世界最大クラスのメガロポリス「長江デルタ」の中心都市であり、巨大な人口と経済規模を兼ね備え、中国国内で最もサービス業が発達している都市の一つであり、いまや世界中の資源が上海に集中していると言っても過言ではない。上海港のコンテナ取扱量は7年連続世界一を記録し、〈中国都市総合発展指標2017〉では「コンテナ港利便性」は全国第1位を獲得。空港の旅客数は1億人を超え、直行便は世界282都市にまで広がり、「空港利便性」も全国第1位を獲得している。内需主導型経済への移行を目指す中国にとって、上海市での同イベントの成功は、今後の中国にとって一つのシンボルとなるだろう。
■ 人口抑制政策
上海市の流動人口(戸籍のない常住人口)は約987.3万人に達し、常住人口の約4割が外からの流入人口となっている。本指標の「人口流動」項目で、上海市は第1位となっている。2015年末時点では、外国人は約17.8万人、日本人は約4.6万人が居留している。短期滞在者も含めると約10万人もの日本人が暮らしており、日系企業も約1万社が上海に居を構えている。
2018年1月、市政府は「上海市都市総体計画(2017—2035年)」を発表した。計画の特徴の1つに人口抑制政策が挙げられる。人口集中による弊害を懸念する同市政府は人口を厳しく抑制し、2020年までに常住人口を2,500万人にまで抑え、2040年までその水準を保つことを打ち出した。上海市政府は以前から人口抑制政策を進めており、同市政府発表によると、2017年末の市内の常住人口は2016年末に比べ約1万人減少した。