〈中国中心都市&都市圏発展指数2021〉
第4位
広州市は〈中国中心都市&都市圏発展指数2021〉の総合第4位に輝いた。同市は4年連続第4位を維持した。
〈中国中心都市&都市圏発展指数〉は、〈中国都市総合発展指標〉の派生指数として、4大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる36の中心都市の評価に特化したものである。同指数は、これら中心都市を、全国297の地級市以上の都市の中で評価している。10大項目と30の小項目、116組の指標からなる。包括的かつ詳細に、中国中心都市の発展を総合評価するシステムである。
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〈中国中心都市&都市圏発展指数〉:【36中心都市】北京、上海、深圳、広州、成都、天津、杭州、重慶、南京、西安、寧波、武漢、青島、鄭州、長沙、廈門、済南、合肥、福州、瀋陽、大連、昆明、長春、ハルビン、貴陽、南昌、石家荘、南寧、太原、海口、ウルムチ、蘭州、フフホト、ラサ、西寧、銀川
■ 開放感溢れる貿易都市
広東省の省都である広州は、同省の東南部、珠江デルタに位置し2000年以上にわたり交易の中心地として繁栄してきた。特に明朝と清朝では数百年にわたって中国対外貿易の唯一の窓口で、世界最大の貿易大国を支えた。
新中国建国後もその交易機能を活かし、厳しい国際環境のなか1957年に始まった広州交易会(中国輸出商品交易会)は一時、中国の輸出の半分までを稼いでいた。
広州の2021年GDPは2.82兆元(約56.4兆円、1元=20円換算)に達し、前年比8.1%の伸びを実現した。これは、北京、上海、深圳に続き中国第4の経済規模である(詳しくは、『【ランキング】世界で最も経済リカバリーの早い国はどこか? 中国で最も経済成長の早い都市はどこか?』を参照)。
2021年広州の常住人口は約1,881万人で、中国第5位となっている。改革開放後、広州は外部から多くの人口を受け入れてきた。広州の戸籍を持たない常住人口、いわゆる「流動人口」は約883万人に達し、中国第3位の規模である。
■ 珠江デルタメガロポリスの交通ハブ
中国政府は広州を中国の重要な総合交通ターミナルと位置づけている。〈中国都市総合発展指標2021〉における陸・海・空の交通パフォーマンスはいずれも全国トップクラスの成績を収めている。
鉄道・道路において、「鉄道利便性」は中国で第5位、「道路輸送指数」は同第3位である。なかでも、広州南駅は中国最大クラスの旅客輸送量を誇る鉄道駅であり、北京―広州高速鉄道、広州―深圳―香港高速鉄道をはじめとした鉄道網の重要なハブ駅となっている。中国の国家戦略「一帯一路」は、広州を国際貨物輸送ハブとし、粤港澳ビッグベイエリアはもちろん、東南アジア、中東、さらには欧州向けの一大交通拠点になることを目指している。
市内の交通インフラ整備は進み、2021年末には市の地下鉄営業距離が合計590キロメートルに達した。この距離は中国で第4位である。
港湾では、「コンテナ港利便性」が中国で第6位、「コンテナ取扱量」が年間2,447万TEU(20フィートコンテナ1個を単位としたコンテナ数量)で、中国第4位、世界第5位である(詳しくは、『【ランキング】世界で最も港湾コンテナ取扱量が多い都市はどこか? 』を参照)。
2018年4月には、広州白雲国際空港の第二ターミナルが運用開始した。同新ターミナルの総面積は65.9万平方メートル(羽田国際空港の約2.8倍)、カウンター数は339カ所。2021年に広州白雲国際空港の利用客4,025万人にのぼり、北京首都国際空港、上海浦東国際空港を抜いて中国第1位となった。郵便貨物取扱量は205万トンに達し、中国で第2位である。〈中国都市総合発展指標2021〉でも広州の「空港利便性」は全国第3位である(詳しくは『【ランキング】中国で最も空港利便性が高い都市はどこか?』を参照)。
■ ずば抜けた都市輻射力
省都としての広州市は、文化、生活、教育などの面で周辺地域にさまざまな都市機能を提供している。珠江デルタメガロポリスの二大中心都市である広州と深圳の「輻射力」を比較すると、広州の優位性が明らかである。
例えば、「医療輻射力」では広州が中国第2位であるのに対して深圳は同23位である(詳しくは『【レポート】新型コロナパンデミック:なぜ大都市医療能力はこれほど脆弱に?』を参照)。
また、「高等教育輻射力」では、広州が中国第4位に対して深圳は同35位。文化・スポーツ・娯楽輻射力」では、広州が中国4位、深圳が同8位となっている。いずれの分野でも広州がより高い順位を獲得している(詳しくは『【レポート】中日比較から見た北京の文化産業』を参照)。
このように、広州は交通インフラ、経済規模、人口規模、教育文化輻射力などの面で優れ、珠江デルタメガロポリスの発展を牽引している。
〈中国都市総合発展指標2021〉
第4位
広州は6年連続で総合ランキング4位を獲得した。
「社会」大項目で、広州は5年連続中国第3位であった。中項目の「ステータス・ガバナンス」「伝承・交流」「生活品質」は、いずれも第3位となった。小項目から見ると、「都市地位」「人口資質」「人的交流」「消費水準」は揃って第3位、「文化娯楽」「居住環境」「生活サービス」は第4位と、9つの小項目のうち、7つの指標がトップ5に入った。なお、「社会マネジメント」は第16位、「歴史遺産」は第21位と全国平均を上回るものの、順位は他の7項目と比較すると目立たない。
広州の「経済」大項目は、6年連続で中国第4位を維持した。3つの中項目の中で「発展活力」「都市影響」は第4位、「経済品質」は第6位となった。9つの小項目のうち、7つの指標がトップ5に入り、その中でも「ビジネス環境」「広域中枢機能」が第3位と優れ、「経済構造」「イノベーション・起業」は第4位、「経済規模」「開放度」「広域輻射力」は第5位となった。なお、「都市圏」は第6位、「経済効率」は第19位となっている。
「環境」大項目で広州は、2017年の中国第2位から第3位に順位を一つ落とした。3つの中項目指標 の中で「空間構造」は第4位を維持したものの、「環境品質」は第24位となり、「自然生態」は第26位に甘んじた。小項目から見ると、「コンパクトシティ」は第3位、「交通ネットワーク」は第4位、「都市インフラ」は第7位と、3項目はトップ10入りしているものの、「資源効率」は第13位、「気候条件」は第19位、「環境努力」は第32位、「汚染負荷」は第86位に留まった。「自然災害」は第166位、「水土賦存」は第227位と、いずれも全国平均を下回った。
広州は、ごく一部の小項目が全国平均を下回っているものの、環境・経済・社会の各項目の成績は非常に高く、トリプルボトムラインのバランスもよく取れている。
〈中国中心都市総合発展指標2021〉について詳しくは、「メガシティの時代:中国都市総合発展指標2021ランキング」を参照。
CICI2016:第4位 | CICI2017:第4位 | CICI2018:第4位
CICI2019:第4位 | CICI2020:第4位 | CICI2021:第4位
■ 粤港澳ビッグベイエリア発展が加速
中国政府は2019年2月に、現在推進中の粤港澳大湾区(広東省・香港・マカオ・ビッグベイエリア)構想の発展計画綱要を発表した。これは中国で初めて香港とマカオを国の地域発展計画に組み入れたものである。同計画は2035年までの長期計画で、対象都市は香港・マカオの2特別行政区と広東省9都市(広州、深圳、珠海、佛山、惠州、東莞、中山、江門、肇慶)の合計11都市となっている。
ビックベイエリアの総面積は5.6万平方キロメートルで、ニューヨーク、サンフランシスコ、東京大都市圏の3つの都市圏を合わせた面積よりも大きい。ビッグベイエリアのGDP総額は2021年、約12.6兆元(約252兆円)に達し、その経済力はすでに韓国の名目GDPを上回り、カナダと同等で、世界第10位の規模に当たる。
ビッグベイエリアは「世界の工場」として、中国で最も開放的で活気に満ちた地域である。産業の発展が加速する中、人口集積も進み、現在の総人口は約8,600万人を超えている。
同計画における広州、深圳、香港、マカオの4つの中心都市の位置づけはそれぞれ異なる。広州は、「国際経済センター」「総合交通ハブ」「科学技術・教育・文化センター」として位置づけられている。
世界最大のベイエリア構想がどう実現していくか、その行方を世界が注目している。
■ 広仏都市圏の形成
〈中国都市総合発展指標2021〉総合ランキング第4位の広州と同21位の仏山は、地理的に隣接し、その人口密集エリアもかなり絡み合っている。行政区画は異なっていても人口密集エリアにつながりのある点で、東京都と千葉、神奈川、埼玉各県との関係に似ている。
中心都市として発展してきた広州と、製造業を中心に成長してきた仏山との一体化は現在進んでいる。
周牧之教授は、早くから広州と仏山を1つの都市圏として整備していくべきだと提唱していた。しかし、つい最近まで中国では都市圏の概念もなく、そういった政策もなかった。
中国国家発展改革委員会は2019年2月19日、「現代化都市圏の育成発展に関する指導的意見」を公布し、初めて都市圏政策を打ち出した。これを追い風に、広州と仏山は行政区域を超えた1つの都市圏としての形成が期待される。
広州と仏山を「広仏都市圏」として捉えた場合、その面積は11,232平方キロメートルで、東京大都市圏(一都三県)の8割程度の大きさになる。その経済規模は、2021年約4.04兆元(約80.8兆円)となり、北京を超えて中国第2位となる。また、常住人口規模は約2,842万人となり、上海と北京を超えて第1位になる。
広仏都市圏の一体化は、地域経済の活性化やインフラ整備、産業の高度化に寄与し、広東省や粤港澳ビックベイエリア構想の重要な要素となると期待されている。
■ 一大国際コンベンションシティ
1957年から始まった「広州交易会(中国輸出入商品交易会)」は、当時中国の輸出の半分を稼ぎ出し、新中国経済の救手になっていた。
広州は今も中国でコンベンション経済が最も活発な都市の1つである。〈中国都市総合発展指標2021〉で、広州は「社会」大項目の「国際会議」で中国第6位、「コンベンション産業発展指数」は同第3位の成績を誇っている。
コンベンション産業は、様々なコンテンツを網羅した高収益の交流経済である。会議、イベント、展示会、フェスティバルは、都市にさまざまな利益をもたらす。
しかし、新型コロナウイルスパンデミックは、国際コンベンションの開催に大きな影響を与えた。2020年以降、多くの国際会議が延期、中止、またはオンライン開催へと切り替わった。国際会議協会(ICCA)によると、2019年に世界で13,269件開催された国際会議は、2020年は763件、2021年は534件と急激に縮小した。
「広州交易会」も例外ではなかった。2020年はオンライン開催となった。ハイテクを駆使し、仮想現実(VR)の展示が世界各地で閲覧できたことで、出展者を維持した。こうした新しい試みは、広州交流経済の新たな展開にもつながるだろう。