【ランキング】中国メガロポリスの実力:〈中国都市総合発展指標〉で評価

雲河都市研究院

編集ノート:中国の社会経済発展をリードする長江デルタ、珠江デルタ、京津冀の3大メガロポリスを始め、中国にはいま大小どれほどの数のメガロポリスが存在しているのか?それらのメガロポリスをどう評価するのか?現在最も実力のあるメガロポリスは?雲河都市研究院は、〈中国都市総合発展指標〉を用いて、メガロポリスの発展に対する総合的な評価を試みた。


 中国政府の計画の中で、「メガロポリスは中国新型都市化の主要な形態」とされている(【メインレポート】メガロポリス発展戦略を参照)。雲河都市研究院は、中国都市総合発展指標2021(以下、〈指標〉)を使い、現行の政府計画での19メガロポリスのうちトップ10のメガロポリスに対して総合的な評価を行い、その実力と課題を評価した。長江デルタ(上海・江蘇・浙江・安徽)、珠江デルタ(広東)、京津冀(北京・天津・河北)、成渝(四川・重慶)、長江中游(湖北・湖南・江西)、粤閩浙沿海(広東・福建・浙江)、山東半島(山東)、北部湾(海南・広西)、中原(山西・安徽・河南)、関中平原(陝西・甘粛)の10メガロポリスは、173の地級市以上の都市(日本の都道府県に相当)を含み、人口とGDPの全国シェアはそれぞれ69.9%と77.7%に達し、中国の社会経済発展の最も主要なプラットフォームとなっている(〈指標2021〉について詳しくは、【ランキング】メガシティの時代:中国都市総合発展指標2021ランキングを参照)

 これについて、中国国務院新聞弁公室元主任の趙啓正氏は、「今回の〈指標〉の一大特徴は、メガロポリスに焦点を当てた分析である。これは、私が長い間〈指標〉研究に期待していたことである。メガロポリスは現在、中国の都市化における主要な形態となっており、長江デルタ、珠江デルタ、京津冀の3大メガロポリスの波及効果は広く認められている。〈指標〉が10メガロポリスの総合力、発展形態、課題に対して行った分析と評価は、メガロポリス政策をどう理解し、都市発展をどう考えるかという点で貴重な価値を持つ。中国の各都市の指導層や社会学者にとって大きな関心と注目を払うべきものである」と称賛する。

1.一人当たりGDP優位指数によるメガロポリスの分類


 一人当たりGDP優位指数(Competitive Advantage Index:一人当たりGDP / 全国一人当たりGDP平均値 × 100)に基づき、10メガロポリスを3つのタイプに分類することができる。すなわち、①一人当たりGDP優位指数が100を大きく上回り、他の地域に比べて強い経済優位性を持つメガロポリス、②指数が100前後のメガロポリス、③指数が100を大幅に下回るメガロポリスの3分類である。

 長江デルタ、珠江デルタ、京津冀の3大メガロポリスの一人当たりGDP優位指数は、それぞれ171、158、124である。すなわち、3大メガロポリスは第1分類に属し、全国におけるこれらGDP総量のシェアは36.6%に達する。強い経済優位性が、全国各地から大勢の人々を引き寄せている。現在、長江デルタ、珠江デルタ、京津冀に住む流動人口(非戸籍の常住人口)は、それぞれ3,186万人、3,909万人、908万人に上る。この3大メガロポリスは、10メガロポリスの中で唯一、人口純流入があるグループである。

 特に、珠江デルタメガロポリスの9つの都市のうち、人口純流出は1都市だけである。最も深圳では、常住人口のうち非戸籍人口の割合が66.3%にも達している。

 長期にわたり大量の人口が流入することで、全国における3大メガロポリス常住人口のシェアは23.5%に達する。周牧之東京経済大学教授は、「3大メガロポリスが中国の発展を牽引しているのは議論の余地がない。いま、中国人口のほぼ4分の1が3大メガロポリスに住んでいる。若年層の移住者のおかげで、珠江デルタと長江デルタの労働力人口(15〜64歳)の比率は、それぞれ72.9%、65.2%に達し、若い人口構造がこの2つの地域に強力な活力を与えている。しかし、京津冀の労働力人口比率は62%であり、全国平均の63.4%を下回る」と指摘している。

 成渝、長江中游(詳しくは、【レポート】中心都市から見た長江経済ベルトの発展を参照)、粤閩浙沿海、山東半島の4つのメガロポリスの一人当たりGDP優位指数は、それぞれ91、103、102、101で、全国平均水準付近を維持し、第2部類に属している。3大メガロポリスの強力な吸引効果のもと、これら4つのメガロポリスは人口純流出地域となっており、成渝、長江中流、粤閩浙沿海、山東半島の人口流失は、それぞれ723万人、781万人、359万人、20万人に達している。

 北部湾、中原、関中平原の3つのメガロポリスの一人当たりGDP優位指数は、全国平均水準よりもかなり低く、それぞれ69、68、73で、第3部類に属している。経済水準の格差が大量の人口流失を引き起こし、北部湾、中原、関中平原の流失人口はそれぞれ521万人、2,474万人、169万人に達している。

図1 〈中国都市総合発展指標2021〉で見た10メガロポリス総合評価

2.中心都市と一般都市の相互作用がメガロポリス発展の鍵


 〈中国都市総合発展指標は、全国297の地級市以上の都市すべてをカバーし、環境、社会、経済の3つの側面から中国の都市の発展を総合的に評価する。882のデータセットで構成された27の小項目、9の中項目、3の大項目から構成されている。〈指標〉では、偏差値を用いて各都市が全国のどの位置にあるかを評価する。偏差値により、さまざまな指標で使用される単位を統一された尺度に変換して比較できる。環境、社会、経済の3つの大項目の偏差値を重ね合わせた総合評価における偏差値の全国平均値は150である。

 各メガロポリスの発展水準の分析を可視化するために、本文では10メガロポリスに含まれる173都市の〈指標2021〉総合評価偏差値をメガロポリスごとに箱ひげ図と蜂群図を重ねて分析し、各メガロポリスの都市総合評価偏差値の分布状況と差異を一目できるようにした。

 箱ひげ図中の横線は、サンプルの中央値、箱の上辺は上位四分位点(75%)、箱の下辺は下位四分位点(25%)、箱本体は50%のサンプル分布を示している。蜂群図は、個々のサンプル分布をプロットした図である。箱ひげ図と蜂群図を重ね合わせることで、サンプルのポジションと全体の分布の双方を示せる。

 図1に示すように、10メガロポリスの総合評価偏差値の中央値では、珠江デルタと長江デルタだけが全国平均値を上回り、中でも珠江デルタのパフォーマンスは長江デルタよりもはるかに高い。

 長江デルタには、上海杭州南京寧波合肥の5つの中心都市がある(詳しくは、「【メインレポート】中心都市発展戦略」を参照)。中心都市の数では中国のメガロポリスの中で最も多い。とくに上海の総合ランキングは中国第2位である。一方、珠江デルタには広州深圳の2つの中心都市しかなく、両都市の総合ランキングはいずれも上海の後方にある。珠江デルタにおけるメガロポリスの中央値が長江デルタよりもはるかに高いのは、仏山や東莞などの一般都市の総合評価が高いことに因る。珠江デルタメガロポリスでは総合評価偏差値が全国平均水準より低い都市は1つしかない。それに対して、長江デルタメガロポリスには、総合評価偏差値が全国平均水準を下回る都市が10もある。

 これについて、深圳市元副市長で香港中文大学(深圳)理事の唐杰氏は、「中国はメガロポリスの発展時代に入った。メガシティと中小都市が空間的に協働することが、経済社会発展の新たなエンジンとなっている」と指摘する。周牧之教授は、「メガロポリスは、中心都市の強さが求められる一方で、多くの一般都市を高い発展水準に引き上げるかどうかも、その発展を評価する重要な指標である」と評している。

 この視点から見ると、京津冀メガロポリスにおける都市の格差はかなり顕著である。総合ランキング中国第1位の北京を筆頭に、直轄市の天津を含むものの、同メガロポリス総合評価偏差値の中央値は、10メガロポリスの中で8位に過ぎない。これは、もう一つの中心都市である石家庄の総合評価パフォーマンスが優れない点と、京津冀メガロポリスのすべての一般都市の総合評価が全国平均水準以下であることが原因である。 

図2 10メガロポリス常住人口比較分析

3.包容性と多様性が都市社会発展の基盤


 人は高きところを目指し、水は低きところへ流れる。中国はいま、人類史上最大規模の人口移動を経験している。10メガロポリスのうち、長江デルタ、珠江デルタ、京津冀は、唯一の人口純流入のグループであり、中国都市化人口移動の第一級の貯水池として全国から大量の人口を受け入れている。

 人口移動の第二級貯水池は中心都市である(詳しくは、「【メインレポート】中心都市発展戦略」を参照)。10メガロポリスに含まれる23の中心都市から見ると、3大メガロポリスの10の中心都市は、当然ながら人口純流入都市である。他の7つのメガロポリスの13の中心都市のうち、12都市は人口純流入であり、地域や周辺から多くの人口を吸引している。広大な地域と膨大な人口を持つ重慶だけは、中心市街地が地域内の過剰人口を吸収できず、人口純流出都市となっている。

 周牧之教授は、「大量の人口流入により、上記の10メガロポリスの23中心都市のうち、すでに14都市が人口一千万人を超えるメガシティに成長した。さらに、寧波、合肥、南京、済南など、人口が900万人を超える特大都市が控えている。これらの都市も近い将来メガシティになることが予想される」と指摘する。

 中国共産党中央財経領導小組弁公室元副主任の楊偉民氏は、「中国共産党第20回全国代表大会では、メガシティと特大都市の発展モデルの変革を加速すると提起された。これは、中国の近代化強国建設における、メガシティと特大都市の発展方向を示すものである。では何を変えるべきなのか?まず、経済発展、人間の全面的な発展、持続可能な発展という「三つの発展」の空間的均衡を促進する必要がある。そこでは、経済発展や都市建設に注力するあまり、人間の全面的な発展と生態環境保護を無視してはならない。〈中国都市総合発展指標〉は、当初から経済、環境、社会の「三位一体」の指標体系で都市発展を評価しており、これは科学的なアプローチである。次に、都市の包容性と多様性を増やし、さまざまな職業人口のバランスを保つ必要がある。ホワイトカラーだけを求めてブルーカラーを拒否し、大学生だけを求めて農民工を拒否すると、都市の発展を損なうことにつながりかねない」と強調している。

図3  10メガロポリス


【中国語版】
チャイナネット「城市群实力:来自“中国城市综合发展指标”的评价」(2023年3月24日)

他掲載多数