成都:美食とエンタメを満喫できる内陸メガシティ【中国中心都市&都市圏発展指数2021】第5位

中国中心都市&都市圏発展指数2021
第5位


 成都市は中国中心都市&都市圏発展指数2021の総合第5位に輝いた。同市は2年連続第5位を維持した。

 〈中国中心都市&都市圏発展指数は、中国都市総合発展指標の派生指数として、4大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる36の中心都市の評価に特化したものである。同指数は、これら中心都市を、全国297の地級市以上の都市の中で評価している。10大項目と30の小項目、116組の指標からなる。包括的かつ詳細に、中国中心都市の発展を総合評価するシステムである。

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〈中国中心都市&都市圏発展指数〉:【36中心都市】北京、上海、深圳、広州、成都、天津、杭州、重慶、南京、西安、寧波、武漢、青島、鄭州、長沙、廈門、済南、合肥、福州、瀋陽、大連、昆明、長春、ハルビン、貴陽、南昌、石家荘、南寧、太原、海口、ウルムチ、蘭州、フフホト、ラサ、西寧、銀川


■ 西部大開発の拠点都市


 四川省の省都・成都は、四川盆地西部に位置し、快適な気候と自然資源に恵まれ、四川省の政治、経済、文化、教育の中心地となっている。2300年の歴史を持ち、古くから「天府の国」と呼ばれている。成都は、四川料理の本場、パンダの生息地、「三国志」の蜀漢の都として日本でも知られている。

 同市の面積は約1.2万 平方キロメートルで新潟県とほぼ同じ大きさである。同市は、現在は「西部大開発」の主要な拠点都市と位置付けられ、「一帯一路」や「長江経済ベルト」など国家戦略の重要な拠点として期待されている。

 ここで、「西部大開発」とは、中国政府が2000年に策定した国家戦略であり、中国の内陸部に位置する西部地域の経済発展を促進し、東部沿海部との経済・社会格差を縮小することを目的としている。この政策は、中国西部の12省・自治区・直轄市を対象としており、「西電東送」、「南水北調」、「西気東輸」、「青蔵鉄道」の四大プロジェクトが主体となっている。この政策により、西部地域のインフラ整備や投資環境の整備、科学教育の発展などが進められ、現在でも継続している。また、大開発は経済発展を沿海部から内陸部へ及ぼす内需振興と同時に、内陸部の余剰雇用の吸収、少数民族地域の安定など社会不安を解消するねらいがあるとされている。

 西部開発政策の下でインフラ整備を進めた結果、成都は「空港利便性」が中国第5位(詳しくは【ランキング】中国で最も空港利便性が高い都市はどこか?〜2020年中国都市空港利便性ランキングを参照)、「鉄道利便性」は第20位となっている。近年の成都の躍進は、インフラ整備が1つの大きな要因となっている。高速道路、鉄道や空港の整備により、広域アクセスが向上し、観光客やビジネス客が容易に訪れることができ、交流経済が活発化しただけでなく、都市間や国際間の物流・貿易も容易にしている。上海等に代表される臨海都市とは異なる内陸メガシティ発展パターンを見せる。

 2021年に成都の常住人口は約2,119万人に達し、中国第4位の規模を誇るメガシティである。「農民工(出稼ぎ労働者)」の主要な流出地である四川省は、同省に属する地級市の18都市中、実に16都市が「人口流出都市」である。その純流出人口は、2021年で合計約1,249万人以上にのぼる。これに対して、同省成都は中国第6位の「人口流入都市」であり、現在約574万人もの非戸籍人口を外部から受け入れている。成都のGDPは四川省全体のGDPのおよそ4割を占め、同省の経済・人口ともに成都に一極集中している。四川省の将来は成都が担っていると言っても過言ではない(中国の人口移動について詳しくは【ランキング】中国メガロポリスの実力:〈中国都市総合発展指標〉で評価を参照)。

■ 都市ブランド構築アクションプラン「三城三都」


 成都は独自の都市ブランドアクションプラン「三城三都」を推し進めている。「三城」とは文化都市、観光都市、スポーツ産業都市を指す。「三都」とは、グルメ都市、音楽都市、コンベンション都市である。2017年に発表されたこのプランは、ソフトパワーを向上させるものである。

 「三都」のひとつ、グルメといえば中国四大料理の「四川料理」であり、これは日本でもなじみが深い。成都は四川料理の発祥地であり、ユネスコに「アジア初めてのグルメ都市」と称された美食の街である。中国都市総合発展指標2021によると、「経済」大項目の指標「レストラン・ホテル輻射力」において中国第4位の成績に輝いている。また、四川料理以外にもマクドナルド、ケンタッキー、ピザハット、スターバックス、ハーゲンダッツなど海外の飲食チェーン店も多く、同指標の「海外飲食チェーン指数」でも中国第8位にランクインした。

 成都は時間が止まったような、ゆったりとした都市である。喫茶店でお茶を飲みながら雑談や麻雀を楽しむ光景がいたるところで見られる。喫茶店は1万軒を超え、スターバックスの数も中西部地区で一番多い。

■ スポーツ産業都市


 上記「三城」の1つ、スポーツ産業も好調である。〈中国都市総合発展指標2021〉によると、「経済」大項目の指標「文化・スポーツ・娯楽輻射力」は、中国第3位にランクインした。

 同市では、スポーツ産業の発展を加速させるために、「成都サッカー改革発展実施計画」、「成都万人フィットネス実施計画」などの政策を相次いで発表し、資金提供、選手の育成、有名スポーツ企業の誘致など、様々な施策を打ち出している。

 また、「成都スポーツ産業活性化発展計画(2020−2025年)」では、同市のスポーツ産業の規模をさらに現行の倍以上の1,500億元(約3兆円、1元=20円換算)へと目標を定めている。

 成都に限らず、中国ではスポーツやフィットネスに対する意識は大幅に高まっている。スポーツ産業は、都市経済はもちろん、都市の魅力やライフクオリティ向上の面でもその重要性を増している。

■ 国際コンベンション都市


 「三城三都」のうち、「三都」の1つはコンベンション都市だ。〈中国都市総合発展指標2021〉によると、成都は、「社会」大項目の指標「国際会議」ランキングは、前年度と引き続き中国第2位に輝いている。同項目の指標「コンベンション産業発展指数」ランキングも、前年度と引き続き中国5位を維持している。

 この躍進ぶりは「三城三都」の政策効果が大きい。現代の経済・文化交流において、コンベンション産業は非常に重要な役割を担っており、経済発展に大きな影響を与えている。成都市政府は、同市を国際コンベンション都市にするため、さまざまな政策を打ち出している。

 同市博覧局は2020年、全国初となる「展示活動管理規範の協調防疫対策」を発表し、大規模展示会の開催における感染症対策マニュアルを示した。2021年には、展示会開催に大規模な補助金を設け、2022年の「国際会議展覧都市成都建設第14次5カ年計画」では、2025年までに、成都を世界に冠たる国際コンベンション都市に成長させると明言している。市政府は、コンベンション産業市場を1,600億元(約3.2兆円)にまで成長させる目標を定めている。主要な展示活動の数は1,200以上、総展示面積は1,450万平方メートル以上との数値目標を掲げている。


中国都市総合発展指標2021
第5位


 成都は2年連続で総合ランキング第5位を維持した。

 「社会」大項目で成都は第4位であり、前年度に比べ2つ順位が上がった。3つの中項目の 中で「伝承・交流」は第4位、「ステータス・ガバナンス」は第6位、「生活品質」は第7位であった。小項目から見ると、成都の「社会マネジメント」「文化娯楽」「居住環境」は第3位、「人的交流」は第4位、「都市地位」は第9位と、9つの小項目のうち、半数以上の5項目がトップ10位内にある。なお、「生活サービス」は第11位、「人口資質」「消費水準」は第14位、「歴史遺産」は第16位であった。

 「経済」大項目で成都は第6位であり、前年度より1つ順位を下げた。3つの中項目の中で「都市影響」は第5位、「発展活力」は第6位、「経済品質」は第8位であった。小項目では、「広域輻射力」は第4位、「ビジネス環境」「都市圏」は第5位、「経済規模」「開放度」は第7位、「経済構造」「イノベーション・起業」は第8位、「広域中枢機能」は第10位と、9つの小項目のうち、1項目を除いた8項目がトップ10位内にある。なお、「経済効率」は第36位であった。

 「環境」大項目で成都は第23位とり、前年度より順位を下げる結果となった。3つの中項目の中で「空間構造」は第10位と良好であるが、「環境品質」は第58位、「自然生態」は第107位と順位が落ち込んでいる。小項目では、「都市インフラ」は第6位、「環境努力」は第7位と、9つの小項目のうち、2項目がトップ10位内にある。トップ10以下は、「交通ネットワーク」が第11位、「コンパクトシティ」が第14位、「資源効率」が第20位、「気候条件」は第107位であった。第69位の「自然災害」、第103位の「水土賦存」、第216位「汚染負荷」は、いずれも全国平均を下回った。

 成都は、社会や経済と比較すると環境の成績は少し劣るものの、西部地域で最も成長する都市として近年順調に総合順位を上げてきている。

CICI2016:第4位  |  CICI2017:第4位  |  CICI2018:第4位
CICI2019:第4位  |  CICI2020:第4位  |  CICI2021:第4位


■ 成都ハイテク産業開発区(高新区)


 「西部大開発」の拠点都市として成都は重慶と同様、市内に国家級のハイテク産業開発区や経済技術開発区などが置かれ、中央政府関係部門からのさまざまなサポートを受け重点的に産業が集積されている。重慶は従来から自動車、石油化学、重電などの重厚長大型産業が集中している。これに対して成都には電子産業、製薬・バイオ産業、IT関連産業などが集積している。

 「成都ハイテク産業開発区」が1988年に発足し、1991年には国家級開発区に認定された。同開発区は成都市の西部と南部に位置する二つの地域からなり、総面積は130平方キロメートル(山の手線内の面積の約2倍)で、そのうち南部地域が87平方キロメートル、西部地域が43平方キロメートルである。南部地域には金融、ソフトウェア開発、BPO関連のサービスを提供する企業が集積し、西部地域はエレクトロニクス産業、バイオ医学産業、IT関連産業などの企業が進出している。同開発区の域内総生産はすでに成都市の約30%を占めている。

 同開発区に支えられた成都の発展は、本指標でその成果を見ることができる。〈中国都市総合発展指標2021〉では、「科学技術輻射力」は中国第10位、「IT産業輻射力」は第5位、「創業板・新三板上場企業指数」は第7位、「特許取得数指数」は第15位となっている。

■ 宵越しの金は持たない一大消費都市


 成都は歴史的に消費が盛んな都市である。「宵越しの金は持たない」という成都人気質は、本指標にも顕著に表れている。〈中国都市総合発展指標2021〉では、成都の「平均賃金」は中国第26位であり、決して突出した状況ではないにもかかわらず、「映画館消費指数」は第4位(詳しくは【ランキング】世界で最も稼ぐ映画大国はどこか? 〜2021年中国都市映画館・劇場消費指数ランキングを参照)、「卸売・小売輻射力」に至っては第3位である。また、「美食の都」と評されるような豊かな食の文化と消費力が合わさった結果、「トップクラスレストラン指数」は第4位、「飲食・ホテル輻射力」も第4位となっている。成都人はファッション感覚にも優れ、世界から相次ぎ同市に進出した高級ブランドにも飛びつき、「海外高級ブランド指数」では上海、北京、杭州に次ぐ第4位に躍り出ている。

 豊かな土地にゆったりと過ごす価値観を持つ成都の人々は、蓄えることより消費を好む社会を築いている。この旺盛な消費市場を狙い、日系を含む外資サービス産業の進出が相次いでいる。 


広州:世界に誇る交易都市【中国中心都市&都市圏発展指数2021】第4位

中国中心都市&都市圏発展指数2021
第4位


 広州市は中国中心都市&都市圏発展指数2021の総合第4位に輝いた。同市は4年連続第4位を維持した。

 〈中国中心都市&都市圏発展指数は、中国都市総合発展指標の派生指数として、4大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる36の中心都市の評価に特化したものである。同指数は、これら中心都市を、全国297の地級市以上の都市の中で評価している。10大項目と30の小項目、116組の指標からなる。包括的かつ詳細に、中国中心都市の発展を総合評価するシステムである。

CCCI2017 | CCCI2018 | CCCI2019 | CCCI2020

〈中国中心都市&都市圏発展指数〉:【36中心都市】北京、上海、深圳、広州、成都、天津、杭州、重慶、南京、西安、寧波、武漢、青島、鄭州、長沙、廈門、済南、合肥、福州、瀋陽、大連、昆明、長春、ハルビン、貴陽、南昌、石家荘、南寧、太原、海口、ウルムチ、蘭州、フフホト、ラサ、西寧、銀川


■ 開放感溢れる貿易都市


 広東省の省都である広州は、同省の東南部、珠江デルタに位置し2000年以上にわたり交易の中心地として繁栄してきた。特に明朝と清朝では数百年にわたって中国対外貿易の唯一の窓口で、世界最大の貿易大国を支えた。

 新中国建国後もその交易機能を活かし、厳しい国際環境のなか1957年に始まった広州交易会(中国輸出商品交易会)は一時、中国の輸出の半分までを稼いでいた。

 広州の2021年GDPは2.82兆元(約56.4兆円、1元=20円換算)に達し、前年比8.1%の伸びを実現した。これは、北京、上海、深圳に続き中国第4の経済規模である(詳しくは、【ランキング】世界で最も経済リカバリーの早い国はどこか? 中国で最も経済成長の早い都市はどこか?を参照)。

 2021年広州の常住人口は約1,881万人で、中国第5位となっている。改革開放後、広州は外部から多くの人口を受け入れてきた。広州の戸籍を持たない常住人口、いわゆる「流動人口」は約883万人に達し、中国第3位の規模である。

■ 珠江デルタメガロポリスの交通ハブ


 中国政府は広州を中国の重要な総合交通ターミナルと位置づけている。中国都市総合発展指標2021における陸・海・空の交通パフォーマンスはいずれも全国トップクラスの成績を収めている。

 鉄道・道路において、「鉄道利便性」は中国で第5位、「道路輸送指数」は同第3位である。なかでも、広州南駅は中国最大クラスの旅客輸送量を誇る鉄道駅であり、北京―広州高速鉄道、広州―深圳―香港高速鉄道をはじめとした鉄道網の重要なハブ駅となっている。中国の国家戦略「一帯一路」は、広州を国際貨物輸送ハブとし、粤港澳ビッグベイエリアはもちろん、東南アジア、中東、さらには欧州向けの一大交通拠点になることを目指している。

 市内の交通インフラ整備は進み、2021年末には市の地下鉄営業距離が合計590キロメートルに達した。この距離は中国で第4位である。

 港湾では、「コンテナ港利便性」が中国で第6位、「コンテナ取扱量」が年間2,447万TEU(20フィートコンテナ1個を単位としたコンテナ数量)で、中国第4位、世界第5位である(詳しくは、『【ランキング】世界で最も港湾コンテナ取扱量が多い都市はどこか?を参照)。

 2018年4月には、広州白雲国際空港の第二ターミナルが運用開始した。同新ターミナルの総面積は65.9万平方メートル(羽田国際空港の約2.8倍)、カウンター数は339カ所。2021年に広州白雲国際空港の利用客4,025万人にのぼり、北京首都国際空港、上海浦東国際空港を抜いて中国第1位となった。郵便貨物取扱量は205万トンに達し、中国で第2位である。中国都市総合発展指標2021でも広州の「空港利便性」は全国第3位である(詳しくは【ランキング】中国で最も空港利便性が高い都市はどこか?を参照)。

■ ずば抜けた都市輻射力


 省都としての広州市は、文化、生活、教育などの面で周辺地域にさまざまな都市機能を提供している。珠江デルタメガロポリスの二大中心都市である広州と深圳の「輻射力」を比較すると、広州の優位性が明らかである。

 例えば、「医療輻射力」では広州が中国第2位であるのに対して深圳は同23位である(詳しくは【レポート】新型コロナパンデミック:なぜ大都市医療能力はこれほど脆弱に?を参照)。

 また、「高等教育輻射力」では、広州が中国第4位に対して深圳は同35位。文化・スポーツ・娯楽輻射力」では、広州が中国4位、深圳が同8位となっている。いずれの分野でも広州がより高い順位を獲得している(詳しくは【レポート】中日比較から見た北京の文化産業を参照)。

 このように、広州は交通インフラ、経済規模、人口規模、教育文化輻射力などの面で優れ、珠江デルタメガロポリスの発展を牽引している。


中国都市総合発展指標2021
第4位


 広州は6年連続で総合ランキング4位を獲得した。

 「社会」大項目で、広州は5年連続中国第3位であった。中項目の「ステータス・ガバナンス」「伝承・交流」「生活品質」は、いずれも第3位となった。小項目から見ると、「都市地位」「人口資質」「人的交流」「消費水準」は揃って第3位、「文化娯楽」「居住環境」「生活サービス」は第4位と、9つの小項目のうち、7つの指標がトップ5に入った。なお、「社会マネジメント」は第16位、「歴史遺産」は第21位と全国平均を上回るものの、順位は他の7項目と比較すると目立たない。

 広州の「経済」大項目は、6年連続で中国第4位を維持した。3つの中項目の中で「発展活力」「都市影響」は第4位、「経済品質」は第6位となった。9つの小項目のうち、7つの指標がトップ5に入り、その中でも「ビジネス環境」「広域中枢機能」が第3位と優れ、「経済構造」「イノベーション・起業」は第4位、「経済規模」「開放度」「広域輻射力」は第5位となった。なお、「都市圏」は第6位、「経済効率」は第19位となっている。

 「環境」大項目で広州は、2017年の中国第2位から第3位に順位を一つ落とした。3つの中項目指標 の中で「空間構造」は第4位を維持したものの、「環境品質」は第24位となり、「自然生態」は第26位に甘んじた。小項目から見ると、「コンパクトシティ」は第3位、「交通ネットワーク」は第4位、「都市インフラ」は第7位と、3項目はトップ10入りしているものの、「資源効率」は第13位、「気候条件」は第19位、「環境努力」は第32位、「汚染負荷」は第86位に留まった。「自然災害」は第166位、「水土賦存」は第227位と、いずれも全国平均を下回った。

 広州は、ごく一部の小項目が全国平均を下回っているものの、環境・経済・社会の各項目の成績は非常に高く、トリプルボトムラインのバランスもよく取れている。

CICI2016:第4位  |  CICI2017:第4位  |  CICI2018:第4位
CICI2019:第4位  |  CICI2020:第4位  |  CICI2021:第4位

■ 粤港澳ビッグベイエリア発展が加速


 中国政府は2019年2月に、現在推進中の粤港澳大湾区(広東省・香港・マカオ・ビッグベイエリア)構想の発展計画綱要を発表した。これは中国で初めて香港とマカオを国の地域発展計画に組み入れたものである。同計画は2035年までの長期計画で、対象都市は香港・マカオの2特別行政区と広東省9都市(広州、深圳、珠海、佛山、惠州、東莞、中山、江門、肇慶)の合計11都市となっている。

 ビックベイエリアの総面積は5.6万平方キロメートルで、ニューヨーク、サンフランシスコ、東京大都市圏の3つの都市圏を合わせた面積よりも大きい。ビッグベイエリアのGDP総額は2021年、約12.6兆元(約252兆円)に達し、その経済力はすでに韓国の名目GDPを上回り、カナダと同等で、世界第10位の規模に当たる。

 ビッグベイエリアは「世界の工場」として、中国で最も開放的で活気に満ちた地域である。産業の発展が加速する中、人口集積も進み、現在の総人口は約8,600万人を超えている。

 同計画における広州、深圳、香港、マカオの4つの中心都市の位置づけはそれぞれ異なる。広州は、「国際経済センター」「総合交通ハブ」「科学技術・教育・文化センター」として位置づけられている。

 世界最大のベイエリア構想がどう実現していくか、その行方を世界が注目している。

■ 広仏都市圏の形成


 中国都市総合発展指標2021総合ランキング第4位の広州と同21位の仏山は、地理的に隣接し、その人口密集エリアもかなり絡み合っている。行政区画は異なっていても人口密集エリアにつながりのある点で、東京都と千葉、神奈川、埼玉各県との関係に似ている。

 中心都市として発展してきた広州と、製造業を中心に成長してきた仏山との一体化は現在進んでいる。

 周牧之教授は、早くから広州と仏山を1つの都市圏として整備していくべきだと提唱していた。しかし、つい最近まで中国では都市圏の概念もなく、そういった政策もなかった。

 中国国家発展改革委員会は2019年2月19日、「現代化都市圏の育成発展に関する指導的意見」を公布し、初めて都市圏政策を打ち出した。これを追い風に、広州と仏山は行政区域を超えた1つの都市圏としての形成が期待される。

 広州と仏山を「広仏都市圏」として捉えた場合、その面積は11,232平方キロメートルで、東京大都市圏(一都三県)の8割程度の大きさになる。その経済規模は、2021年約4.04兆元(約80.8兆円)となり、北京を超えて中国第2位となる。また、常住人口規模は約2,842万人となり、上海と北京を超えて第1位になる。

 広仏都市圏の一体化は、地域経済の活性化やインフラ整備、産業の高度化に寄与し、広東省や粤港澳ビックベイエリア構想の重要な要素となると期待されている。

■ 一大国際コンベンションシティ


 1957年から始まった「広州交易会(中国輸出入商品交易会)」は、当時中国の輸出の半分を稼ぎ出し、新中国経済の救手になっていた。

 広州は今も中国でコンベンション経済が最も活発な都市の1つである。中国都市総合発展指標2021で、広州は「社会」大項目の「国際会議」で中国第6位、「コンベンション産業発展指数」は同第3位の成績を誇っている。

 コンベンション産業は、様々なコンテンツを網羅した高収益の交流経済である。会議、イベント、展示会、フェスティバルは、都市にさまざまな利益をもたらす。

 しかし、新型コロナウイルスパンデミックは、国際コンベンションの開催に大きな影響を与えた。2020年以降、多くの国際会議が延期、中止、またはオンライン開催へと切り替わった。国際会議協会(ICCA)によると、2019年に世界で13,269件開催された国際会議は、2020年は763件、2021年は534件と急激に縮小した。

 「広州交易会」も例外ではなかった。2020年はオンライン開催となった。ハイテクを駆使し、仮想現実(VR)の展示が世界各地で閲覧できたことで、出展者を維持した。こうした新しい試みは、広州交流経済の新たな展開にもつながるだろう。


深圳:中国シリコンバレーになった新興メガシティ【中国中心都市&都市圏発展指数2021】第3位

中国中心都市&都市圏発展指数2021
第3位


 上海市は中国中心都市&都市圏発展指数2021の総合第3位に輝いた。同市は4年連続第3位を維持した。

 〈中国中心都市&都市圏発展指数は、中国都市総合発展指標の派生指数として、4大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる36の中心都市の評価に特化したものである。同指数は、これら中心都市を、全国297の地級市以上の都市の中で評価している。10大項目と30の小項目、116組の指標からなる。包括的かつ詳細に、中国中心都市の発展を総合評価するシステムである。

CCCI2017 | CCCI2018 | CCCI2019 | CCCI2020

〈中国中心都市&都市圏発展指数〉:【36中心都市】北京、上海、深圳、広州、成都、天津、杭州、重慶、南京、西安、寧波、武漢、青島、鄭州、長沙、廈門、済南、合肥、福州、瀋陽、大連、昆明、長春、ハルビン、貴陽、南昌、石家荘、南寧、太原、海口、ウルムチ、蘭州、フフホト、ラサ、西寧、銀川


■「世界の工場」から「中国のシリコンバレー」へ


 深圳市は広東省の南部に位置し、香港に隣接する新興都市である。面積は約1,997平方キロメートルで大阪府と同規模、2021年の常住人口は約1,768万人で中国第6位である。

 深圳市はかつて人口規模わずか3万人の漁村だったが、1980年に中国初の「経済特区」に指定されたことをきっかけに、「中国のシリコンバレー」と呼ばれるまでに飛躍的な発展を遂げた。わずか40年間強で人口は600倍近くに拡大。その世界史上類を見ない発展ぶりは「深圳速度」と称される。2021年のGDPは約3.1兆元(約62兆円、1元=20円換算)に達し、中国国内では第3位の規模となった。国別で比較すれば、これは世界32位のナイジェリアを上回る経済規模である(詳しくは、【ランキング】世界で最も経済リカバリーの早い国はどこか? 中国で最も経済成長の早い都市はどこか?を参照)。

 経済特区に指定されて以来、深圳市は輸出加工拠点として急速に発展し「世界の工場」と称されるまでになった。「中国都市製造業輻射力2021」で深圳は第1位となっている(詳しくは、【ランキング】中国で最も輸出力の高い都市はどこか?を参照)。

 「中国都市製造業輻射力」のトップ10都市は成都を除き、すべて大型コンテナ港を利用できる立地優位性を誇る。深水港、すなわち、大型コンテナ港は、グローバルサプライチェーンを支える基盤である。深圳はコンテナ港の発展も著しく、中国都市総合発展指標2021における「コンテナ港利便性」においても第2位となっている(詳しくは、【ランキング】世界で最も港湾コンテナ取扱量が多い都市はどこか?を参照)。2021年の深圳港のコンテナ取扱量は前年比8.4%増の約2,877万TEUに達し、開港以来最高の取扱量を記録した。世界の港湾別コンテナ取扱量ランキングでも第4位に輝いた。

 「世界の工場」としての地位を築き上げてきた深圳だが、現在では新興ハイテク企業が次々と生まれるイノベーション都市へと脱皮している。「中国都市IT産業輻射力2021」で深圳は第3位に上り詰めた。深圳にはアメリカの対中制裁で有名になった企業が数多く本社を構える。例えば、通信機器の中興通訊(ZTE)と華為技術(ファーウェイ)、そしてウィチャットの親会社の騰訊(テンセント)、ドローンの世界トップシェアを持つDJIである。これらは全て深圳発のITベンチャー企業である。これら企業の群生は、深圳が「世界の工場」たる製造業スーパーシティから、IT産業スーパーシティへと脱皮していることを示している(詳しくは、【ランキング】中国IT産業スーパーシティはどこか?を参照)。

■ “移民都市”


 深圳市は典型的な“移民都市”である。2021年に同市の戸籍を持たない常住人口、いわゆる「流動人口」は、約789万人にも達し、その規模は中国の都市の中で最大である。ちなみに流動人口規模の2位は上海、3位は広州、4位は北京であった。上海と広州では流動人口の常住人口に占める割合は4〜5割前後なのに対し、深圳の同シェアは66.3%に達している。 

 深圳の人口を年齢別で見ると、15歳未満人口(年少人口)は15.1%、15歳以上65歳未満人口(生産年齢人口)は79.5%、65歳以上人口(老年人口)はわずか7.4%である。外部から大量の生産年齢人口を受け入れているゆえに、このような若い人口構成となっている。若い人口構成と“移民都市”としてのバイタリティーが深圳の奇跡をもたらした。

■ 経済規模で広州、香港を超え


 深圳の経済規模は2018年に広州を超え、2019年には香港を超えた。いまや「アジアの奇跡」とも呼ばれる一大IT都市となった。

 しかし、「1人当たりGDP」で見ると、2021年に深圳は約17.4万元(約348万円、1元=20円換算)であるのに対して、香港は約33.6万元(約672万円)となっている。深圳と香港の格差はまだ大きい。なお、深圳は広州の同約15万元(約300万円)を抜いている。

 2017年に「粤港澳大湾区(広東省・香港・マカオのビッグベイエリア)構想」が公表され、深圳、広州、香港の「3都物語」の展開に注目が集まっている。米中競争ムードがヒートアップする中で、国際大交流をベースとするビッグベイエリア構想の行方が取り沙汰されている。

■ 米中貿易摩擦で逆風


 2018年から顕在化した米中貿易摩擦が深圳を直撃している。中国都市総合発展指標2021によると、深圳は「フォーチュントップ500中国企業」第3位、「中国トップ500企業」第3位、「中国民営企業トップ500」第2位、「中国都市製造業輻射力2021」第1位を誇る中国を代表する経済都市である。

 深圳は中国における加工貿易の先駆けの都市であり、輸出額ランキングで20年以上全国第1位の座を守り抜いている。深圳にとって米国は2番目に大きい輸出先であった。輸出型経済で成長してきた深圳は、昨今の米中貿易摩擦や新型コロナウイルスショックの逆風を受けている。

 しかし、こうした危機は、新たなチャンスの訪れとも捉えられる。それは、よりオープンな国際都市になることで実現可能だ。

 深圳が特区になってから40年間、その成果は抜きん出ていた。中国都市総合発展指標2021で同市は「経済」の「ビジネス環境」中項目では第4位、「開放度」中項目で第2位、「社会」の「人的交流」中項目で第5位を勝ち取り、高い開放性や国際性を誇る。

 広域インフラ整備についてもコンテナ港だけでなく「空港利便性」も中国で第4位の立場を築き上げた(詳しくは【ランキング】中国で最も空港利便性が高い都市はどこか?を参照)。

 深圳の、隣接する香港との国際都市としての競演が楽しみである。


中国都市総合発展指標2021
第2位


 深圳は6年連続で総合ランキング第3位を獲得した。

 大項目で深圳のパフォーマンスが最も優れているのは、第1位を獲得した「環境」であった。3つの中項目の中で「空間構造」は第2位、「環境品質」は第8位、「自然生態」では第19位となっている。総合ランキングトップ10都市の多くは、「環境」大項目のパフォーマンスが芳しくない中、深圳は「環境」「社会」「経済」の3つの大項目でバランスの取れた発展パターンを示した。「環境」大項目の小項目を見ると、「コンパクトシティ」は第1位、「資源効率」は第2位、「交通ネットワーク」「環境努力」は第3位であった。しかしながら、人口集積の割に利用可能国土面積が小さく、「水土賦存」小項目が第293位でしかなかった。

 「経済」大項目で深圳は6年連続で第3位を獲得した。中項目の「経済品質」「発展活力」「都市影響」 であった。小項目から見ると、「経済効率」が第1位を勝ち取り、「開放度」「広域中枢機能」は第2位、「経済構造」「イノベーション・起業」「都市圏」「広域輻射力」は第3位、「経済規模」「ビジネス環境」は第4位となり、9つの小項目はすべてトップ4位に入っている。

 「社会」大項目で深圳は、2020年から第5位に順位を1つ下げた。中項目の中で「生活品質」のパフォーマンスは良好で第4位、「ステータス・ガバナンス」は第5位、「伝承・交流」は第7位となった。「社会」大項目の9つの小項目の中で深圳は、8つの小項目指標が全国平均を上回っているが、新興都市であるが故「歴史遺産」だけが第248位と引き離された。

CICI2016:第3位  |  CICI2017:第3位  |  CICI2018:第3位
CICI2019:第3位  |  CICI2020:第3位  |  CICI2021:第3位

■ イノベーション都市を目指して


 近年、深圳はアジアを代表するイノベーション都市としても名声が上がっている。中国都市総合発展指標2021において、「経済」の「イノベーション・起業」小項目は北京、上海に続いて全国第3位であった。大学や研究機関のストックが少ない新興都市にしては快挙である。

 しかしながら、トップ2都市と比較すると同項目の成績には、まだ大きな開きがある。その原因の1つは、やはり大学にある。中国の名門大学のほとんどは、改革開放以前に創立された。一漁村から加工貿易で身を起こし、爆発的な成長を遂げてきた深圳はこれまで、高等教育機関との縁が薄かった。現在は財力を駆使し、大学誘致に励んでいるが、旺盛な人材需要と高等教育キャパシティとのギャップはまだ大きい。「中国都市高等教育輻射力2021」ランキングにおいて同市は35位に甘んじている。

 また、国立の研究機関もあまり立地がなく、北京中関村に国の研究機関が林立するような風景は深圳では見られない。

 それにしても、経済特区としての開放感の中で、全国から集まった人々が研究に励み、次から次へと起業している。ファーウェイや、中興通訊はその代表格だ。深圳のイノベーションは、民間企業中心で進んでいる。

 優秀な人材は成功をつかもうとするだけでなく、生活のクオリティも求める。豊かになったいま、生活の質における深圳の後進性が際立つ。例えば「中国都市医療輻射力2021」のランキングは第23位と、深圳の医療態勢はかなり遅れを取っている。

 新興都市深圳は、これから都市アメニティ(都市の魅力や快適さ)でも勝負に出なければならない(都市アメニティについて詳しくは、【対談】アフターコロナの時代、国際大都市は何処へ向かう? 周牧之 VS 横山禎徳対談、また【コラム】都市のアメニティを参照)。

■ 広深港高速鉄道と港珠澳大橋が開通


 2018年9月、広州・深圳と香港を結ぶ初の高速鉄道「広深港高速鉄道」の香港域内区間が正式に開通した。深圳から香港までは最速で14分、広州から香港までの走行時間も以前の100分から48分へと半分に短縮された。香港は中国本土の高速鉄道網と直接連結し、北京までの所要時間は9時間に短縮した。中国都市総合発展指標2021では深圳の「鉄道利便性」は全国第9位だが、第5位の広州に順位が近づいていくだろう。

 広深港高速鉄道の全面開通により、中国政府が進めている巨大ベイエリア構想「粤港澳大湾区(広東・香港・マカオビックベイエリア)計画」に内包される深圳、広州、香港といった主要都市がすべて高速輸送ネットワークでつながった。これにより、今後エリア内外の人的交流がさらに加速していく。

 同高速鉄道の開通に加え、「港珠澳大橋(香港・珠海・マカオ大橋)」も2018年10月23日開通した。これでベイエリア内の交通ネットワークがさらに強化され、ヒト・モノ・カネ・情報の流れが増大している。中国都市総合発展指標2021ではすでに「広域中枢機能」は深圳が全国第2位、広州が第3位であり、この順位は今後も揺るがないだろう。大ベイエリアでは、「奇跡の発展」を遂げた深圳が牽引役となっている。


上海:中国最大の経済規模を誇る「魔都」【中国中心都市&都市圏発展指数2021】第2位

中国中心都市&都市圏発展指数2021〉第2位


 上海市は中国中心都市&都市圏発展指数2021の総合第2位に輝いた。同市は中国中心都市&都市圏発展指数が2017年に発表されて以来5年連続第2位を維持した。

 中国中心都市&都市圏発展指数は、中国都市総合発展指標の派生指数として、4大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる36の中心都市の評価に特化したものである。同指数は、これら中心都市を、全国297の地級市以上の都市の中で評価している。10大項目と30の小項目、116組の指標からなる。包括的かつ詳細に、中国中心都市の発展を総合評価するシステムである。

CCCI2017 | CCCI2018 | CCCI2019 | CCCI2020

 

〈中国中心都市&都市圏発展指数〉:【36中心都市】北京、上海、深圳、広州、成都、天津、杭州、重慶、南京、西安、寧波、武漢、青島、鄭州、長沙、廈門、済南、合肥、福州、瀋陽、大連、昆明、長春、ハルビン、貴陽、南昌、石家荘、南寧、太原、海口、ウルムチ、蘭州、フフホト、ラサ、西寧、銀川


■ 66日間に及んだ長期ロックダウン


 上海にとって2022年は新型コロナウイルスに苦しめられた一年であった。3月28日〜6月1日の間ロックダウン(都市封鎖)が実施され、その封鎖期間は66日間に及んだ。2020年の武漢のロックダウンに11日短いだけの長期戦であった。

 上海は中国最大の経済規模を誇る国際都市である。その上海で新型コロナウイルスの流行は、2022年1月中旬に始まった。最初は毎日数人の新規感染者が出る程度で、それが2月末まで続いた。しかし、3月初めからは、日々の新規感染者が数十人から数百人にまで急増し、3月下旬には1日あたり千人を超えた。ピークに達した4月28日は、1日で5,487人もの新規感染者が出た。

 ロックダウン期間の66日間、上海市でのべ57,486人の陽性感染者が報告され、1日あたり平均871人の新規感染者が出た計算になる。また中国では症状のある新規感染者と別途に、無症状感染者数の集計をしている。上海のロックダウン期間の無症状感染者数は773.7万人に達し、1日あたりでは平均11.7万人となった。

 全域でロックダウンを実施した武漢とは違い、上海のロックダウンは部分的に実施された。3月27日に上海市新型コロナ感染予防抑制活動指導グループ弁公室が通知を発表し、3月28日から4月5日まで、黄浦江を境に地区を分割し、PCRスクリーニング検査を実施するとした。公告によると、最初の封鎖地域には浦東、奉賢、金山、崇明の4地区と、閔行区が管轄する2つの街道、松江区が管轄する4つの町が含まれた。その時点での対象面積は約4,000平方キロメートルで、上海市全体の面積の60%以上を占め、対象人口は800万人まで広がった。

 その後、ロックダウンはさらに2カ月ほど伸び、6月1日まで長期に至った。ロックダウンの実施により新型コロナ感染状況は一時沈静化されたものの、年末のゼロコロナ政策の解除で再び感染が爆発して医療崩壊も起こり、人的損害が膨らんだ。

 結果、新型コロナ感染症は2022年の上海経済に大きな負の影響を及ぼした。

■ 世界に誇る一大商業都市


 上海市は中国四大直轄市の1つで、長江デルタメガロポリスの中枢都市である。同市の面積は約6,340平方キロメートルで群馬県とほぼ同じ大きさであり、常住人口は約2,489万人と東京都の人口の約1.8倍の規模を誇る。GDPは4.32兆元(約86.4兆円、1元=20円)で中国の地級市以上の297都市の中で堂々第1位、国別で比較すればそのGDP規模は世界25位であるベルギー一国のGDPを超えている。

 世界有数の金融センターに成長した上海浦東エリアは、ほんの20数年前まではのどかな田舎だった。1992年に「浦東新区」に指定されたことを契機として摩天楼が次々と建設され、「中国の奇跡」と讃えられるほど急速に発展していった。

 現在、上海市内には証券取引所、商品先物取引所、そして合計8カ所の国家級開発区と、自由貿易試験区、重点産業基地、市級開発区等が設置されている。〈中国都市総合発展指標2021〉の「金融輻射力」においても、上海市は第2位の座に輝いている。

 同市の広域インフラ機能も突出しており、本指標の「空港利便性」、「コンテナ港利便性」において上海は第1位となっている。上海虹橋国際空港と上海浦東国際空港を合わせた2021年の旅客輸送者数は約6,500万人に達し、航空貨物は約437万トン取り扱われ、いずれも中国随一の処理能力を持つ。港湾機能では、コンテナ取扱量が世界で12年連続第1位に輝き、その規模は4,703万TEU(20フィートコンテナ1個を単位としたコンテナ数量)(2021年)に達している

■ G60科学技術イノベーション回廊(G60上海松江科創走廊)で産業振興を


 現在、上海をはじめとした長江デルタエリアでは、G60科学技術イノベーション回廊(G60上海松江科創走廊)という目玉プロジェクトが進行している。2016年に発足した同プロジェクトは、米国ボストン周辺のルート128にハイテク企業を集積させたことに因み、高速道路G60の上海市松江区から浙江省金華市までの区間沿いに、イノベーション関連企業を集積させる試みである。その後、構想はさらに松江区から外側へ延びる他の高速道路や高速鉄道の沿線に広がった。現在、同プロジェクトに参加する都市は、上海(松江)、嘉興、杭州、金華、蘇州、湖州、宣城、蕪湖、合肥の9都市に及ぶ。

 この9都市の人口、GDPの合計は、それぞれ約5,672万人、約7.4兆元(約147.5兆円、2021年)にも達する。同構想は、9都市における環境、ロボット、自動車部品など基幹産業の連帯的な発展を促すために、産業パークの設置や、金融サービスの提携、人材の交流などの施策を打ち出した。また、長江デルタメガロポリスにおける地域協力のモデルとして、9都市間の通勤、通学、物流などを推し進めるインフラ整備や制度整備なども行っている。

 雲河都市研究院は同プロジェクトから要請を受け、「長江デルタG60科学技術イノベーション回廊ハイクオリティ発展指数」、「長江デルタG60科学技術イノベーション回廊一体化発展指数」の両指標を開発、プロジェクトの進捗状況を明らかにすると同時に、その方向性づくりに協力している。

中国各都市の科学技術発展の実態について詳しくは、【ランキング】科学技術大国中国の研究開発拠点都市はどこか?」を参照されたい。

■ エンターテインメント産業が爆発


 所得水準が向上したことにより、中国の消費者の関心はモノ消費からコト消費に向かっている。一例として中国のテーマパーク産業の急激な発展がある。現在、国内には2,500カ所以上のテーマパークがあり、とりわけ5,000万元(約8.5億円)以上を投資したテーマパークは約300カ所もある。2016年6月、中国で初のディズニーパークとなる「上海ディズニーランド」が開園した。総工費は「東京ディズニーシー」の約2倍となる約55億ドル(約6,500億円)、面積は約390ヘクタールで、これも「東京ディズニーランド」(200ヘクタール)の約2倍の広さを誇る。入場者数は開業1年で1,100万人を動員、黒字を実現し、現在も拡張工事が進められている。

 映画産業の発展も目覚ましい。2021年における中国の映画市場は、新型コロナウイルスパンデミックに苦しんだ前年の30億ドルから、73億ドルへと急伸した。とくに、2021年の春節(旧正月)に、78.2億元(約1,564億円、1元=20円で計算)の映画興行収入で、同期間の新記録を樹立し、世界の単一市場での1日当たり映画興行収入、週末映画興行収入などでも記録を塗り替えた。

 2021年は中国のゼロコロナ政策が最も成功した年であった。人々は普通に映画館に通うことができた。結果、前年度比で中国の映画観客動員数はプラス112.7%と倍増し、中国の映画市場は北米の1.6倍に拡がり、2年連続で世界最大の映画興行市場を維持した。

 同年、上海は中国で最も興行収入が高かった都市として、4,970万人の観客数を動員し、25.3億元(約506億円)を稼ぎ出した。

 中国の映画市場について詳しくは、「【ランキング】世界で最も稼ぐ映画大国はどこか? 」を参照されたい。


中国都市総合発展指標2021〉第2位


 上海は6年連続で総合ランキング第2位を獲得した。

 上海の「経済」大項目は6年連続で全国第1位を保持している。中項目で見ると、「経済品質」「都市影響」の2つが堂々の全国第1位であった。「発展活力」は第2位であった。小項目では「経済規模」「開放度」「広域中枢機能」の3つが2016年から連続で全国第1位の好成績を収めている。

 「社会」大項目で上海は6年連続で全国第1位を保持している。「生活品質」「伝統・交流」「ステータス・ガバナンス」の3つの中項目は、2017年から引き続き全国第2位であった。小項目から見ると、「人的交流」「社会マネジメント」「消費水準」は北京を越え全国第1位を勝ち取った。「都市地位」「文化娯楽」「居住環境」「生活サービス」の4つの小項目指標では、第2位となっている。

 「環境」大項目で上海は2020年から1つ順位を上げ、全国第2位となった。3つの中項目指標の中で「空間構造」は首位の座を守ったが、「環境品質」「自然生態」は、それぞれ第20位と第128位であった。小項目指標から見ると、「交通ネットワーク」「都市インフラ」「コンパクトシティ」は全国第2位、「環境努力」は第4位となった。一方で「水土賦存」「気候条件」「自然災害」「汚染負荷」などの小項目のパフォーマンスは芳しくなかった。

 中国中心都市総合発展指標2021について詳しくは、メガシティの時代:中国都市総合発展指標2021ランキングを参照。

CICI2016:第2位  |  CICI2017:第2位  |  CICI2018:第2位
CICI2019:第2位  |  CICI2020:第2位  |  CICI2021:第2位

■ 上海自由貿易試験区臨港新片区


 上海で進む1つの目玉プロジェクトは「上海自由貿易試験区臨港新片区」(以下、新片区)開発プロジェクトである。2019年8月に発足した新片区は、上海中心部から南東へ約70キロメートルに位置し、総面積873平方キロメートルの巨大国家プロジェクトである。

 新片区は投資・貿易・資本・輸送・人材の自由化を進め、質の高い外資を誘致し、産業と都市の融合発展を目指す。まずは、スタートエリアとして120平方キロメートルの開発を計画中だ。

 新片区には、すでに、テスラ(Tesla)、シーメンス(Siemens)、キャタピラー(Caterpillar)、そして日本からYKKなどの国際的に名高い企業が進出している。

 なお、新片区は、上海臨港経済発展(集団)有限公司が開発を担っているが、2019年11月下旬、雲河都市研究院は当該集団と戦略提携を結び、同プロジェクトを支援している。

■ 改革開放40周年を迎える中国と上海


 中国は2018年、改革開放40周年を迎えた。この40年間で、中国経済の規模は世界第2位に躍進し、1978年に世界11位だった経済規模が、2009年には日本を抜いて堂々世界第2位に達した。2017年のGDPは12.3兆ドル(約1,381兆円)に膨れ上がり、世界経済全体の約15%を占めるまでに成長した。

 改革開放の象徴的な都市は何と言っても「GDP規模」で全国第1位の上海であろう。その上海の中でもとりわけ経済発展を牽引したのが、上海浦東新区である。

 1990年から建設が始まった浦東新区は、わずか28年間で、何もなかっただだっ広い畑が高層ビルの立ち並ぶ国際金融センターへと様変わりした。また、全国ではじめて保税区、自由貿易試験区、保税港区が設置され、浦東新区の経済規模は設立以来およそ160倍にまで拡大した。

 今後も上海は対外開放拡大の牽引役として、またグローバルシティとして、絶えず新しい活力を放出し続けるだろう。

■ 第15回上海書展(上海ブックフェア)が開催


 上海市民に人気の恒例「第15回上海書展(上海ブックフェア)」が2018年8月、上海市政府主催により「上海展覧中心」で開催された。展示面積2.3万 m2という巨大規模で、参加した出版社は500社以上、15万冊の書籍展示に加えて読書イベントが1,000回以上行われ、展覧会での売上は5,000万元(約8.1億円)を記録した。このブックフェアは年々評判を増し、今年は30万人以上の来場者があった。

 中国の出版産業は好調である。2016年、中国の書籍小売り市場の規模は701億元(約1.1兆円)で前年比12.3%増の成長であった。そのうち、実店舗での販売規模は336億元(約5,438億円)で前年比2.3%減、 オンラインでの販売規模は365億元(約5,907億円)で前年比30%増であった。2016年に、はじめてオンラインでの書籍販売が実店舗での販売額を超え、特に大型サイトでの書籍販売は年々増加の一途をたどっており、今後もこの勢いは続いていくとみられている。

 大手オンライン書籍販売サイト「当当網」の2017年度書籍販売のフィクション部門トップ10には、海外の翻訳書が7作品ランクインした。第1位には太宰治『人間失格』の翻訳本、第2位には東野圭吾『ナミヤ雑貨店の奇蹟』の翻訳本、第10位には同じく東野圭吾の『白夜行』の翻訳本が入り、日本人作家の人気の高さを示した。近年、村上春樹、綾辻行人、新海誠など日本の人気小説が次々と中国語に翻訳され出版されている。中でも東野圭吾は絶大な人気があり、『容疑者Xの献身』『ナミヤ雑貨店の奇蹟』は中国で映画化もされているほどである。マンガやアニメに小説が加わり、日本のコンテンツには中国から熱い視線が送られている。

■ 第1回中国国際輸入博覧会


 2018年11月、第1回中国国際輸入博覧会が上海市政府ほかの主催により市内「国家会展中心」で開催された。この博覧会は習近平国家主席肝煎りの一大イベントであり、貿易の自由化と経済のグローバル化を推進させ、世界各国との経済貿易交流・協力の強化を促進するための見本市と位置づけられている。博覧会には100数カ国・地域から出品され、中国内外から15万社のバイヤーが参加した。

 世界最大の人口を持ち世界第2位の経済体にまで成長した中国は、消費と輸入が急伸し、すでに世界の第2位の輸入と消費を誇るまでに成長している。今後さらに5年間で10兆ドル以上の商品・サービスを輸入する巨大市場にまで成長することが見込まれている。

 その巨大市場の中心地の一つが上海である。上海は世界最大クラスのメガロポリス「長江デルタ」の中心都市であり、巨大な人口と経済規模を兼ね備え、中国国内で最もサービス業が発達している都市の一つであり、いまや世界中の資源が上海に集中していると言っても過言ではない。上海港のコンテナ取扱量は7年連続世界一を記録し、〈中国都市総合発展指標2017〉では「コンテナ港利便性」は全国第1位を獲得。空港の旅客数は1億人を超え、直行便は世界282都市にまで広がり、「空港利便性」も全国第1位を獲得している。内需主導型経済への移行を目指す中国にとって、上海市での同イベントの成功は、今後の中国にとって一つのシンボルとなるだろう。

■ 人口抑制政策


 上海市の流動人口(戸籍のない常住人口)は約987.3万人に達し、常住人口の約4割が外からの流入人口となっている。本指標の「人口流動」項目で、上海市は第1位となっている。2015年末時点では、外国人は約17.8万人、日本人は約4.6万人が居留している。短期滞在者も含めると約10万人もの日本人が暮らしており、日系企業も約1万社が上海に居を構えている。

 2018年1月、市政府は「上海市都市総体計画(2017—2035年)」を発表した。計画の特徴の1つに人口抑制政策が挙げられる。人口集中による弊害を懸念する同市政府は人口を厳しく抑制し、2020年までに常住人口を2,500万人にまで抑え、2040年までその水準を保つことを打ち出した。上海市政府は以前から人口抑制政策を進めており、同市政府発表によると、2017年末の市内の常住人口は2016年末に比べ約1万人減少した。


北京:政治・文化・科学技術でひときわ輝く「帝都」【中国中心都市&都市圏発展指数2021】第1位

中国中心都市&都市圏発展指数2021〉第1位


 北京市は、中国中心都市&都市圏発展指数2021の総合第1位に輝いた。同市は「中国中心都市&都市圏発展指数」が2017年に発表されて以来5年連続首位に立った。首都としての実力を見せつけた。

 中国中心都市&都市圏発展指数は、中国都市総合発展指標の派生指数として、4大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる36の中心都市の評価に特化したものである。同指数は、これら中心都市を、全国297の地級市以上の都市の中で評価している。10大項目と30の小項目、116組の指標からなる。包括的かつ詳細に、中国中心都市の発展を総合評価するシステムである。

CCCI2017 | CCCI2018 | CCCI2019 | CCCI2020

〈中国中心都市&都市圏発展指数〉:【36中心都市】北京、上海、深圳、広州、成都、天津、杭州、重慶、南京、西安、寧波、武漢、青島、鄭州、長沙、廈門、済南、合肥、福州、瀋陽、大連、昆明、長春、ハルビン、貴陽、南昌、石家荘、南寧、太原、海口、ウルムチ、蘭州、フフホト、ラサ、西寧、銀川


行政副都心計画と人口抑制政策

 首都・北京市は、中国の政治、経済、教育、文化の中心地であり、四大直轄市の1つである。元、明、清の三大王朝の都として、万里の長城、故宮、頤和園、天壇、明・清王朝の皇帝墓群、周口店の北京原人遺跡、京杭大運河といった7つの世界遺産をもつ北京では、胡同と呼ばれる明・清時代の路地を残した街区等、多くの歴史的建造物が存在している。一方では現代的な高層ビルが次々と建設され、新旧が入り交じった独特の街並みを形成している。2008年には夏季オリンピック、2022年には冬季オリンピックが相次ぎ開催された。北京市の常住人口は2,152万人で、2010年からの4年間で約191万人も増加した。世界屈指のメガシティである。

 世界的に本社機能が最も集中している都市の一つとして北京市は改革開放以降、繁栄を極めてきた。一方で、膨らむ人口が慢性的な交通渋滞や水不足、大気汚染等「大都市病」をもたらした。2017年9月に発表された「北京市総体計画(2016—2035年)」では、人口抑制政策を大々的に打ち出し、市内から一部の人口を市外へ転出させ、同市の常住人口を2,300万人に抑えるとしている。北京市政府は、自ら行政機能を郊外の「行政副都心」に移転させた。

 2017年11月、北京市は、出稼ぎ労働者が多数住むエリアでの火災事件を契機に、違法建築を取り壊すなどして10万人単位の出稼ぎ労働者らを市外へ追い出し、物議を醸した。結果、2017年末の北京市の常住人口は1997年以来、20年ぶりに減少した。その後も北京市の人口抑制政策は引き続いている。

冬季オリンピック開催により、ウィンタースポーツ人口が3億人に

 2022年冬、ゼロコロナ政策の中で北京冬季オリンピックが開催された。〈中国都市総合発展指標2021〉で「文化・スポーツ・娯楽輻射力」全国第1位に輝く北京市では、市民のウィンタースポーツ熱がさらにヒートアップした。

 北京冬季オリンピックは北京だけでなく中国全土でウィンタースポーツの普及に火をつけた。元々ウィンタースポーツが余り普及されなかった中国で、いまやウィンタースポーツを楽しむ人口が3億を超えた。一度の五輪開催によりこれほど多くのウィンタースポーツ人口を増やしたことはかつてなかっただろう。

 中国のウィンタースポーツ産業の全体的な規模は2015年の2,700億元(約5.4兆円、1元=20円で計算)から2020年には6,000億元(約12兆円)と2倍以上の規模に増加し、2025年には1兆元にまで拡大する見込みである。

 2021年初めの時点で、全国には標準的なスケート場が654箇所あり、2015年に比べて3倍以上増加した。屋内外の様々なスキー場も803箇所に上り、2015年に比べて4割増加している。


北京第二国際空港が竣工

 首都・北京では現在、世界最大級の国際ハブ空港の建設が進められている。新国際空港は「北京大興国際空港」、または「北京第二国際空港」と呼ばれる。2019年7月末に完工し、同年9月末に運営を開始した。

 新国際空港は北京市の大興区と河北省廊坊市広陽区との間に建設され、天安門広場から直線距離で46 km、北京首都国際空港から67 km、天津浜海空港から85 kmの位置にある。総投資額は約800億元(約1.3兆円)にのぼる。

 計画では、2040年には利用客は年間約1億人、発着回数は同80万の規模となり、7本の滑走路と約140万 m2のターミナルビル(羽田国際空港の約6倍)が建設される。2050年には旅客数は年間約1.3億人、発着回数は同103万、滑走路は9本にまで拡大予定である。空港には高速鉄道や地下鉄、都市間鉄道など、5種類の異なる交通ネットワークが乗り入れ、新空港が完成すれば、中国最大規模の交通ターミナルになる。空港の設計は、日本の新国立競技場のコンペティションで話題となったイギリスの世界的建築家、ザハ・ハディド氏(2016年没)が設立したザハ・ハディド・アーキテクツが担当しており、空港の規模だけではなく、ヒトデのような斬新なデザイン案も国内外から大きな注目を集めている。

 新国際空港が建設されたのは、北京の空港の処理能力が限界に達していることが背景にある。中国中心都市総合発展指標2021によれば、現在、北京の「空港利便性」は全国第2位であり、旅客数も第2位である。新空港が完成すれば北京は上海から同首位の奪取も視野に入る。京津冀(北京・天津・河北)エリアの一体化的な発展を推進する起爆剤ともなるだろう。

ユニバーサル北京リゾートが開業

 2021年9月、「ユニバーサル北京リゾート」(Universal Beijing Resort)がオープンした。同リゾートは通州文化観光区の中心部に位置している。中心エリアの面積は120ヘクタール、リゾートエリア全体の面積は280ヘクタールにおよぶ世界最大規模のユニバーサルスタジオである。リゾート内にはテーマパーク、デパートやレストラン、ホテルなどの様々なエンターテインメントコンテンツが整備されている。また、中国の豊かな文化遺産を反映したユニークなテーマパークも設けられている。

 2015年11月に起工式が行われ、新型コロナウイルス禍の影響で工事が一時中断していたものの、2021年のオープンに向け急ピッチで工事が進められた。建設ゴミの削減や中水の再利用など、環境に配慮したインフラが設けられたことも注目を集めている。ユニバーサル北京リゾートに直通する地下鉄2路線も開通し、交通利便性も良い。

 2018 年5月付のウォール・ストリート・ジャーナル紙は、中国のテーマパーク産業が米国を抜いて世界一の市場になる時期を2020年と予測した。実際はまだアメリカに及ばないものの、2021年には中国テーマパーク産業の市場規模は367.1億元(約7,342億円、1元=20円)に達した。

 中国中心都市総合発展指標2021では、「社会」大項目中の中項目「文化娯楽」において北京は全国第1位である。ユニバーサル北京リゾートのオープンによって、その地位は、ますます揺るぎないものとなるだろう。


中国都市総合発展指標2021〉第1位


 北京は6年連続で総合ランキング第1位を獲得した。 首都としての強みをもつ北京は、「社会」大項目がダントツ全国第1位である。「社会」大項目の「ス テータス・ガバナンス」「伝承・交流」「生活品質」の3つの中項目は、北京は他の都市と比べ、 飛び抜けて優れている。

 同大項目の9つの小項目の中で北京は、「都市地位」「人口資質」「歴史遺産」「文化娯楽」「居住環境」「生活サービス」の実に6項目で第1位を獲得している。「社会」大項目では58の指標データを採用しており、北京はそのうち24の指標データにおいて全国第1位であった。

 北京の「経済」大項目は、2020年度と同様、第2位である。中項目で見ると、「発展活力」は第1位を獲得した。「経済品質」「都市影響」ではともに上海に遅れ第2位であった。9つの小項目のうち、「経済構造」「ビジネス環境」「イノベーション・起業」「広域輻射力」の4つが第1位となっている。

 「環境」大項目で北京は2020年度と同様、第9位を獲得している。3つの中項目の中で「空間構造」が第3位、「環境品質」が第37位となったものの「自然生態」が依然として遅れをとり 第239位に甘んじている。これは北京が環境保全においていまだ多くの課題を抱えていることを示している。

 中国中心都市総合発展指標2021について詳しくは、メガシティの時代:中国都市総合発展指標2021ランキングを参照。

CICI2016:第1位  |  CICI2017:第1位  |  CICI2018:第1位
CICI2019:第1位  |  CICI2020:第1位  |  CICI2021:第1位


市庁舎が副都心に正式移転

 2019年1月、北京市政府の庁舎が市の中心部から通州区の行政副都心に正式に移転した。副都心は天安門広場から南西約25キロに位置し、すでに市政府の一部機能が移転を終えており、新たな所在地では、移転した当日に業務が始まった。

 北京では首都機能および市の行政機能の一極集中が課題とされ、その是正が議論されてきたが、この度、副都心の建設によって市政府行政機能の分散化が実現した。河北省で建設が進む「雄安新区」もその流れを後押ししている。北京都心、通州副都心、雄安新区、の3エリアを核とし、京津冀(北京・天津・河北)メガロポリスの一体化的な発展を目指している。

 問題は本来、北京市民のための市政府機能が人口集中地区から離れた遠隔地に移され、大きな弊害が起こり得ることである。また、市政府に勤務する人々も、長い通勤時間を強いられる。

 2019年末には通州副都心に直結する地下鉄も試験営業を開始し、2020年3月には、「2020年北京副都心重大工程行動計画」が発表され、総投資額約5,225億元(約7.8兆円、1元=15円として計算、以下同)を費やし、インフラや生活環境の整備など197の重大プロジェクトを推し進めると発表された。 

 北京では人口抑制政策が行われており、〈中国都市総合発展指標2018〉では、北京の「常住人口規模」は全国第3位であったが、2018年の常住人口データでは、2017年に比べて人口は16.5万人減少した。

 現在、東京、ロンドン、パリ、ニューヨークなど世界の大都市の中心部が、再開発によって大きく変貌し「再都市化」が進む中、北京では逆行するように「反都市化」の動きを見せている。

(2018年度日本語版・トップ10都市分析)

2018年は227日が青空に

 北京市の大気汚染が改善しつつある。北京市は2018年、年間で計227日、大気質が基準値をクリアし、青天だった。「重度汚染」の基準を超えた日数は15日まで減少し、3日以上連続で「重度汚染」の日が続かなかったのは、大気汚染の悪化が著しくなった2013年以降、初めてのことであった。

 〈中国都市総合発展指標2018〉では、「空気質指数(AQI)」は第50位で前年度から213位上昇、「PM2.5指数」は第42位で前年度から224位上昇した。

 「PM2.5指数」は、2018年度に年平均濃度が減少したトップ20都市のうち、第1位は北京であり、前年比で40.4%濃度が減少した。第5位の天津は濃度が8.3%改善した。北京に隣接する河北省においても同様の傾向がみられ、河北省は10都市中、4都市が20位以内にランクインした。

 北京に大気汚染をもたらす要因の1つは、周辺の工場群や発電所などから発生する大気汚染物質である。中国当局は工場移転を促し取り締まりを強化し、また燃料の石炭から天然ガスへのシフトを進めることで、以上の成果を上げた。ただし、大気汚染のもう1つの原因は自動車の排気ガスである。排気ガス削減の道のりは依然として遠く、問題はまだ解決の途上にある。

(2018年度日本語版・トップ10都市分析)


京津冀エリアの大動脈「北京大七環」が全線開通

 北京首都エリアの高速環状線、通称「北京大七環(北京七環路)」が2018年に全線開通した。東京の環状七号線は全長約53 kmであるのに対して、「北京大七環」はなんと全長940 kmにものぼる。「北京大七環」の完成によって、北京市内で深刻化する渋滞問題の緩和が期待される。河北省の発表では、全線開通後は、1日あたりの通行量は2.5万台に達した。同環状線の開通は、京津冀エリア、特に北京市の郊外エリアや衛星都市とのネットワークを大いに強化し、物流や人の流れを促進させる。〈中国都市総合発展指標2017〉では、北京市の「道路輸送量指数」は全国第4位であり、「都市幹線道路密度指数」は全国第12位であるが、今後この順位は上がっていくであろう。

(2017年度日本語版・トップ10都市分析)

京津冀協同発展、新首都経済圏、雄安新区

 中国政府は三大国家戦略のひとつとして「(北京・天津・河北)協同発展」を打ち出している。北京の都市輻射力を発展のエンジンとした「新首都経済圏」の構築を目指す構想である。

 2017年4月、中国政府はその一環として、河北省の雄県、容城県、安新県の3県とその周辺地域に「雄安新区」の設立を決定した。雄安新区は中国における19番目の「国家級新区」となり、「千年の計」と位置づけられた習近平政権肝いりのプロジェクトである。雄安新区は北京市から南西約100km、天津市から西へ約100kmに位置し、その計画範囲は、初期開発エリアが約100km2、最終的には約2,000km2(東京都の面積と同程度)にまで達するとされている。雄安新区は北京市の「非首都機能」を移転することで、同市の人口密度の引き下げ、さらには京津冀地域の産業構造の高度化等を目指している。

(2016年度日本語版・トップ10都市分析)

北京市の突出した本社機能とスタートアップ機能

 米『フォーチュン』誌が毎年発表する世界企業番付「フォーチュン・グローバル500」の2017年度版によると、500社にランクインした企業のうち、北京市に本社を置いている企業数は56社もあった。

 企業の内訳を見ると、第三次産業の企業が4分の3を占め、そのうち国有企業は52社、民営企業は4社であった。中国全体では前年より7社多い105社がランクインしており、その半数以上が北京市に本社を置いていることになる。第2位の上海市が8社、第3位の深圳市が6社ということからみても、北京市の本社機能は突出している。

 また、中国フォーチュン(財富)が発表した「フォーチュン・チャイナ500(中国500強企業)」ランキングの2017年度版によると、第1位の北京市には100社、第2位の上海市には31社、第3位の深圳市には25社が本社を置いている。北京市政府は2017年に本社機能をより強くする方針を打ち出しており、同市への本社機能の集約は今後さらに進むであろう。

 また、北京市政府はスタートアップ機能の促進にも力を入れており、同市は今や中国最大のベンチャー企業集積地となっている。2017年に市内で新たに上場した企業数は1450社にのぼり、第2位の上海市の878社と第3位の深圳市の686社の合計にほぼ相当する。北京市政府発表によれば、同市内に拠点を構えるネット系ベンチャー企業の数は、中国全土の約40%を占めている。

(2016年度日本語版・トップ10都市分析)


銀川:イスラム教徒が多く住む西北の中心都市 【中国中心都市&都市圏発展指数2020】第53位

 フフホト市は、中国中心都市&都市圏発展指数2020の総合第53位にランクインした。同市は2019年度より順位を3つ下げている。

 中国中心都市&都市圏発展指数は、中国都市総合発展指標の派生指数として、4大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる36の中心都市の評価に特化したものである。同指数は、これら中心都市を、全国297の地級市以上の都市の中で評価している。10大項目と30の小項目、116組の指標からなる。包括的かつ詳細に、中国中心都市の発展を総合評価するシステムである。

 銀川市は、中国の中でもイスラム教徒が多く住む都市であり、中国唯一の回族自治区寧夏の首都である。現在、3区2県1市を管轄し、総面積は9,025平方キロメートル(鹿児島県と同程度)である。銀川市は多民族都市であり、回族のほか漢族、満州族、モンゴル族、朝鮮族など26の民族が居住している。

 銀川市は中国北西部の寧夏平原の中央部に位置し、東にはオルドス山脈、西にはヘラン山脈がそびえ、市内には黄河が流れている。地形は平坦であり、南西から北東にかけて徐々に傾斜し、平均標高は1,100メートルある。四季ははっきりしており、夏は暑く、冬は寒くなく、年間平均気温は8℃前後である。東部の賀蘭山麓はワイン用ブドウの最良の産地であり、中国の「ボルドー」とも呼ばれる。

 同市は水資源が豊富で、200以上の自然湖がある。一人当たりの湿地面積が全国平均の6倍に及ぶことから、中央政府から「国際湿地都市」に指定されている。

 銀川市の都市としての歴史は1,300年以上あり、かつては、古代西夏王国の首都であった。市内には、宮殿、楼閣、寺院、仏塔、モスク、長城跡など60以上の名所がある。特に、「中国のピラミッド」と呼ばれる西夏古墳群が著名である。

 同市は黄河文明、西夏王国、イスラム文化が混じり合う、多様性に満ちた交流・交易都市である。中国・アラブ諸国博覧会の常設会場にもなっている。

 銀川市は同自治区の中心都市として近年、都市化が急速に進行している。常住人口は288万人、都市化率は81.4%、直近10年間(2011〜2021年)で常住人口は約90万人増えた。大量の移住者により、「生産年齢人口(15〜64歳)率」は69.1%と中国で27位に位置し、人口構成が非常に若い。2021年、銀川市のGDPは2,263億元(約4.5兆円、1元=20円換算)で、中国では137位である。

 中国国務院は、銀川市を「一帯一路」の重要な結節点として、西部大開発戦略の重要なゲートウェイと位置付けている。広域インフラ整備によって同市の「高速道路密度」は現在、中国35位となっている。中央アジアなどへ向かう国際貨物列車も定期的に運行されている。

 市内交通インフラ整備も進んでおり、「都市軌道交通指数」は中国で38位、「一人あたり公共バス利用客数」は中国で5位と高い。

 近年では、都市機能を高めるため、デジタル化にも力を入れており、「デジタル銀川」プロジェクトが進行している。


〈中国中心都市&都市圏発展指数〉:【36中心都市】北京、上海、深圳、広州、成都、天津、杭州、重慶、南京、西安、寧波、武漢、青島、鄭州、長沙、廈門、済南、合肥、福州、瀋陽、大連、昆明、長春、ハルビン、貴陽、南昌、石家荘、南寧、太原、海口、ウルムチ、蘭州、フフホト、ラサ、西寧、銀川

中国中心都市&都市圏発展指数2020
中国中心都市&都市圏発展指数2019
中国中心都市&都市圏発展指数2018
中国中心都市指数2017

西寧:西部大開発の拠点都市【中国中心都市&都市圏発展指数2020】第52位

 フフホト市は、中国中心都市&都市圏発展指数2020の総合第52位にランクインした。同市は2019年度より順位を1つ下げている。

 中国中心都市&都市圏発展指数は、中国都市総合発展指標の派生指数として、4大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる36の中心都市の評価に特化したものである。同指数は、これら中心都市を、全国297の地級市以上の都市の中で評価している。10大項目と30の小項目、116組の指標からなる。包括的かつ詳細に、中国中心都市の発展を総合評価するシステムである。

 西寧市は、青海省の省都で、チベット高原の東玄関口として、中国西北部の中心都市である。現在、5区2県を管轄し、総面積7,660平方キロメートル(宮崎県と同程度)で、2021年における地域内総生産は、前年比8.1%増の1548.8億元(約3.1兆円、1元=20円換算)で、中国では188位である。

 同市は、東西に細長い形をしており、南西部が高く、北東部が低い地形となっている。南は南山、北は北山に囲まれている。海抜2,261メートル(長野県・有明山の標高と同程度)の高原都市で、年間平均降水量は380ミリメートル、年間平均日照時間は約1,940時間、年間平均気温は7.6℃、最高気温は34.6℃、最低気温は-18.9℃で、寒暖差は激しい。夏の平均気温は17〜19℃と過ごしやすい。

 青海省の東部、湟水河(青海省に源を発し甘肅省に流入する黄河上流の重要な支流)の中流域に位置する西寧市は、古代シルクロードや「唐蕃古道(とうはんこどう)」の交易都市として、古来より栄えた。唐蕃古道は、かつて中国中原とチベットを結んだ交易ロードである。唐は唐朝のことを指し、蕃はチベットのことを示す。

 西寧市は、黄土高原とチベット高原の結節点に位置することから、色彩豊かな民俗文化を有する多民族都市である。現在は、漢族、チベット族、回族など多民族が居住している。チベット仏教の聖地・タール寺は、観光名所として名高い。

 2000年から始まった「西部大開発」は同市に大きな発展をもたらしている。西部大開発とは、東部沿海地域と内陸の西部地域の格差を是正し、内陸経済の発展を促す国家政策である。同政策によって、西寧市の空港、鉄道や道路などの広域インフラ整備は急速に進み、経済発展が加速した。その結果、青海省の都市化率は、2000年の34.8%から、2021年には61%に達した。西寧市の人口は、2000年の197.9万から、2021年には247.6万となり、この間、約50万人も増加している。

 青海省は、チベットに続く中国で2番目に草地が多い省である(「【コラム】黄砂襲来に草地を論ず 〜中国都市草地面積ランキング2019〜」を参照)。西寧市は、市内の半分以上の面積が草地である。しかし、上記のコラムでも指摘しているように、中国では乱開発の影響により、草地の減少が大きな環境問題となっている。近年、「主体効能区」政策の実施によって、草地の資源状況が大幅に改善されている。西寧市の豊富な自然資源は現在、観光資源としても注目を集めている。


〈中国中心都市&都市圏発展指数〉:【36中心都市】北京、上海、深圳、広州、成都、天津、杭州、重慶、南京、西安、寧波、武漢、青島、鄭州、長沙、廈門、済南、合肥、福州、瀋陽、大連、昆明、長春、ハルビン、貴陽、南昌、石家荘、南寧、太原、海口、ウルムチ、蘭州、フフホト、ラサ、西寧、銀川

中国中心都市&都市圏発展指数2020
中国中心都市&都市圏発展指数2019
中国中心都市&都市圏発展指数2018
中国中心都市指数2017

ラサ:チベット高原にある小さな中心都市 【中国中心都市&都市圏発展指数2020】第51位

 フフホト市は、中国中心都市&都市圏発展指数2020の総合第51位にランクインした。同市は2019年度より順位を2つ上げている。

 中国中心都市&都市圏発展指数は、中国都市総合発展指標の派生指数として、4大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる36の中心都市の評価に特化したものである。同指数は、これら中心都市を、全国297の地級市以上の都市の中で評価し、10大項目と30の小項目、116組の指標からなる。包括的かつ詳細に、中国中心都市の高品質発展を総合評価するシステムである。

 ラサとは、チベット語で「聖地」を意味する。ラサ市は、チベット自治区の省都であり、同自治区の政治、経済、文化、科学の中心地であるとともに、チベット仏教の聖地でもある。同市は、中国南西部、ヒマラヤ山脈の北、チベット高原の中央にあり、ヤルン・ツァンポ川の支流であるラサ川中流域谷間の平原に位置する。平均標高は3,658メートル、世界で最も標高の高い都市の一つに数えられる。

 ラサの気候は温帯高原気候に属し、冬は長く、夏は涼しく、最高気温は28℃、最低気温は-14℃、年間平均気温は約8℃であり、昼夜の温度差は大きい。新鮮な空気と豊富な日照量に恵まれ、年間日照時間が3,000時間を超えることから、「サンシャインシティ」とも呼ばれている。年間平均降水量は200〜510mmで、一般に6〜9月に集中的に降り、乾季と雨季がはっきりしている。

 市の総面積は2万9,518平方キロメートル(岩手県の約2倍程度)で、そのうち都市部は210平方キロメートル、既成市街地は50平方キロメートルである。現在、3区5郡を管轄している。常住人口は約87万人で中国では281位であり、最も人口規模が小さい中心都市である。ラサには、チベット族、漢族、回族など38の民族が暮らしており、そのうち8割弱をチベット族をはじめとする少数民族が占めている。2021年におけるラサの地域内総生産は、前年比6.7%増の741.8億元(約1.5兆円、1元=20円換算)で、中国では260位である。

 ラサの歴史は古く、7世紀初め、ソンツェン・ガンポ王によってチベット初の統一王国・吐蕃(とばん)の首都として建設されたのが、都市としての始まりである。9世紀に吐蕃国が崩壊した後も、ラサの宗教的な意義は変わらず、現在においても、チベット仏教の中心地となっている。

 その中心となっているのが、「ポタラ宮」である。ポタラ宮は、ソンツェン・ガンポ王とブリクティ王女との結婚を記念して建設されたのが始まりとされ、チベット仏教の象徴である。1649年から1959年までは、ダライ・ラマの冬の宮殿として使用され、それ以降は博物館として公開されている。ポタラ宮殿は、単体建築物としては世界最大級であり、チベットの様式と中原の様式を融合させた独特の建築様式で知られている。ポタラ宮と大昭寺(ジョカン寺)を中心とする1.3平方キロメートルの古代建築群は、1994年にユネスコ世界遺産に登録されている。

 ラサは自然資源に恵まれた都市である。市内における河川の年間平均流量は340億立方メートル、湖の貯水量は200億立方メートル存在し、地下水も豊富で、周辺の氷河や永久雪渓には、大量の固形水が貯留されている。一人当たりの水資源量は、中国の平均レベルを大きく上回り全国6位の規模を誇る。市内には、50種類以上の鉱物資源を有し、コランダム、カオリン、天然硫黄の埋蔵量は中国トップクラスである。冬虫夏草に代表される多様な動植物性薬草も豊富である。

 ラサの水と大気はとても澄んでおり、都市上空の二酸化炭素濃度は1立方メートルあたり0.1ミリグラム以下と、国の基準値を大幅に下回っている。「二酸化炭素排出量」も中国で下から29位と、中心都市では最も二酸化炭素の排出量が少ない。大気中の「PM2.5」は、2021年は8.95マイクログラム・パー・立方メートルであり、中国では6位の清らかさとなっている。なお、同上位5都市もすべてチベット自治区に属する都市である。ラサ川の水には、鉛、亜鉛、銅などの微量金属元素は含まれておらず、川岸の村や町からの汚染もないため、非常に澄んだ水が市内を流れている。

 ラサは、地質景観、翡翠氷河、草原風景、高原湖、気象地熱雲、湿地林など、観光地としても楽しめる自然資源も多い。また、市内には大小200以上の寺院があり、著名な観光スポットが多数存在している。市内に国家級自然保護区2カ所、国家級森林公園2カ所がある。他にも、ラサ雪ドン祭、ジョカン・チベット・オペラ、ラサ・ランマなどの76の無形文化遺産があり、市周辺には、医療効果のある温泉が豊富に存在している。

 ラサは長らく外部との交通アクセスが乏しく、険しい道路や空路に頼る秘境としての性格が強かったが、2006年7月青海省西寧とラサを結ぶ高原鉄道「青蔵鉄道(せいぞうてつどう)」が開通したことにより、都市化が大きく進展した。青蔵鉄道は、総延長1,944キロメートルで世界最高のチベット高原を走る世界でも珍しい高地の鉄道であり、旅客は壮大な車窓の風景を楽しむことができる。交通アクセスが改善した結果、人口流入が加速し、2011年から2021年の年平均人口増加率は4.7%となり、中国で6番目の人口増加都市で、中心都市では、深圳、西安に続いて3番目に人口増加が多い都市となっている。2021年6月にはラサと同自治区内のニンティ市を結ぶ「ラサ・ニンティ鉄道」も開通し、チベット自治区におけるラサの中心的な存在はさらに強まる。

 こうした自然環境や文化遺産に恵まれたラサは、広域交通の整備により、観光都市としても大変な人気を博している。毎年、国内外から大勢の観光客が訪れている。

 


〈中国中心都市&都市圏発展指数〉:【36中心都市】北京、上海、深圳、広州、成都、天津、杭州、重慶、南京、西安、寧波、武漢、青島、鄭州、長沙、廈門、済南、合肥、福州、瀋陽、大連、昆明、長春、ハルビン、貴陽、南昌、石家荘、南寧、太原、海口、ウルムチ、蘭州、フフホト、ラサ、西寧、銀川

中国中心都市&都市圏発展指数2020
中国中心都市&都市圏発展指数2019
中国中心都市&都市圏発展指数2018
中国中心都市指数2017

南寧:ASEANへのゲートウェイ中心都市 【中国中心都市&都市圏発展指数2020】第33位

 フフホト市は、中国中心都市&都市圏発展指数2020の総合第33位にランクインした。同市は2019年度より順位を2つ上げている。

 中国中心都市&都市圏発展指数は、中国都市総合発展指標の派生指数として、4大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる36の中心都市の評価に特化したものである。同指数は、これら中心都市を、全国297の地級市以上の都市の中で評価し、10大項目と30の小項目、116組の指標からなる。包括的かつ詳細に、中国中心都市の高品質発展を総合評価するシステムである。

 南寧市は、ベトナムと国境を接する広西チワン族自治区の省都である。現在、7区、4県、1県級市を管轄し、総面積は22,100平方キロメートル(岐阜県の面積の約2倍、北海道の約4分の1程度)である。南寧市は、悠久の歴史を持ち、チワン族を中心とした多民族が暮らす都市である。2021年現在、常住人口は約883万人で中国では35位である。第7回国勢調査(最新)のデータによると、市の人口は漢民族が48.6%を占め、少数民族の人口は51.5%、そのうち、チワン族は48.7%を占めている。

 南寧市は、トンキン湾の港湾都市である北海市に隣接し、ベトナムの首都ハノイと陸路でつながるなど、ASEAN諸国と地理的距離が近い。このためASEAN諸国との交流拠点として重要な役割を担っている。地域内総生産は約5,121億元(約10.2兆円、1元=20円換算)で、中国では51位である。

 同市は、亜熱帯モンスーン気候に属し、一年中緑に囲まれていることから「緑城」とも称される。年間平均気温は約21.6度で、冬の最も寒い1月の平均気温は12.8度、夏の最も暑い7月と8月の平均気温は28.2度である。「気候快適度」は中国で32位、中心都市36都市の中では、3位という恵まれた環境にある。緑と花が溢れるまちづくりが進められ、都市の緑化率は約40%に達している。年間平均降水量は1304.2mm、平均相対湿度は79%で、高温多湿の気候が特徴である。温暖な気候は多くの農作物に恵みをもたらし、水稲は二期作が可能である。小豆の原産地としても知られる。

 同市は、2000年以上の歴史を有している。古代南寧は百越国の領地であったが、秦代には桂林郡に属し、漢の郁林郡としての管轄を経て、東晋が今の南寧市に晋興県を置いたのが、今日の南寧市の始まりとされている。唐の時代に邕(よう)州が設置され、これが今日の南寧の簡称の起源となった。清代には、広西省に属している。

 市周辺には龍虎山や起鳳山など名所が多く、カルスト地形が造り出す山水画のような風景が観光客を楽しませている。同市の「国内観光客」は中国で11位、「国内観光客収入」は同18位である。

 同市の「空港利便性」は中国で30位(【ランキング】中国で最も空港利便性が高い都市はどこか?を参照)、南寧呉圩国際空港は、ASEAN諸国へのゲートウェイ空港として利用されている。「陸路運輸指数」も同26位で、空・陸の交通機能のポジションは高い。

 石炭、マンガン、アルミニウム、タングステンなど60種類以上の鉱物資源が産出され、水資源も豊富である。こうした天然資源を生かし、アルミ産業、化学産業、パルプ・製紙産業などが盛んである。

 南寧市は、中国華南地域の中心都市として「金融輻射力」は中国で23位、「高等教育輻射力」は同26位、「医療輻射力」は同19位と全国トップ30にランクインしている(【レポート】新型コロナパンデミック:なぜ大都市医療能力はこれほど脆弱に?を参照)。特に、医療リソースは豊富であり、「医者数」は同28位、「三甲病院(最高等級病院)」は同22位である。

 南寧市は、ASEANとの物流、貿易の拠点として、その存在感は年々増している。東アジア地域包括的経済連携(RCEP)も締結された現在、南寧市のポジションは、より重要となってきている。


〈中国中心都市&都市圏発展指数〉:【36中心都市】北京、上海、深圳、広州、成都、天津、杭州、重慶、南京、西安、寧波、武漢、青島、鄭州、長沙、廈門、済南、合肥、福州、瀋陽、大連、昆明、長春、ハルビン、貴陽、南昌、石家荘、南寧、太原、海口、ウルムチ、蘭州、フフホト、ラサ、西寧、銀川

中国中心都市&都市圏発展指数2020
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フフホト: 農耕文化と遊牧文化が混じり合う草原の中心都市 【中国中心都市&都市圏発展指数2020】第46位

 フフホト市は、中国中心都市&都市圏発展指数2020の総合第46位にランクインした。同市は2019年度より順位を1つ上げている。

 中国中心都市&都市圏発展指数は、中国都市総合発展指標の派生指数として、4大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる36の中心都市の評価に特化したものである。同指数は、これら中心都市を、全国297の地級市以上の都市の中で評価し、10大項目と30の小項目、116組の指標からなる。包括的かつ詳細に、中国中心都市の高品質発展を総合評価するシステムである。

 フフホト市は、内モンゴル自治区の省都であり、中国北部地域における重要な中心都市である。フフホト市は自然環境が大変豊かであり、「国家森林都市」にも認定されている。総面積は、17,200平方キロメートル(岩手県と同程度)である。市郊外の北部に連なる陰山山脈には大草原が広がり、牧草地は9,549平方キロメートルにも及び、市面積の半分以上を占めている。大草原には、羊や馬が放牧され、モンゴル族のテント「パオ」が観光客の人気を呼んでいる。2021年現在、常住人口は約350万人で中国では145位、地域内総生産は約3,121億元(約6.2兆円、1元=20円換算)で、中国では99位である。

 同市は、典型的な大陸性気候で、四季の気候変化が顕著であり、年間の気温差も、日中の気温差も大きい。冬は長く、特に1月が最寒で、最低気温は-25~-45℃にも達する。降水量は少なく不均一である。

 フフホトは、2000年以上の歴史を有し、遊牧文明と農耕文明の交易拠点として栄えてきた。同市は、黄土高原と内モンゴル高原の間に位置し、農耕地域と牧畜地域との境界に立地している。市内の南部には農業風景、北部には草原風景が広がり、鮮明な対照をなしている。

 清朝時代は、「綏遠城」と呼ばれていた。1954年、内モンゴル自治区が成立し、フフホトという古来よりの名称が復活し、内モンゴル自治区の省都となった。現在、モンゴル族、漢族、満族、回族、朝鮮族など36民族が集まり住んでいる。

 民族の特色が豊かなフフホトは、観光都市としても名高い。壮大な自然の風景、色彩豊かな民族文化、歴史的なモニュメント、華麗なモンゴルの歌と踊り、モンゴル相撲などが観光客を楽しませている。古代には召城と呼ばれ、召廟(モンゴル族ラマ教の寺院)が多くあったことで知られている。現在、市内には大小50余りの寺院があり、南東部には絢爛豪華な「五重塔」、「硅竹寺」、「銀仏寺」、「北門モスク」、「光華寺」などがある。

 寺院だけでなく市内には、モンゴル族の象徴的な飾りを付けた建物や回族によるイスラム様式の建物が数多く残されている。現在では、歴史的地区の保護や修築によって都市景観の保存をめざした動きが始まっている。

 フフホトは「酪農の都」としても知られ、「伊利」と「蒙牛」という二大ブランドを有し、乳製品が一大産業として育てられている。

 周辺の豊かな石炭資源をベースに市内には多くの発電所が建設されている。発電量は全国24位、中心都市の中では9位を誇り、その電力は周辺都市へ送電されている。電力多消費のデータセンターなども多数誘致している。

 


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