【フォーラム】中井徳太郎:分散型自然共生社会を目指して

ディスカッションを行う中井徳太郎・前環境事務次官

 東京経済大学は2022年11月12日、学術フォーラム「供給サイドから仕掛ける地域共創の可能性」を開催した。和田篤也環境事務次官、南川秀樹元環境事務次官、新井良亮ルミネ元会長をはじめ産学官のオピニオンリーダー16人が登壇し、周牧之ゼミによるアンケート調査をネタに、新しい地域共創の可能性を議論した。中井徳太郎・前環境事務次官がセッション2「地域経済の新たなエンジン」のパネリストを務めた。

 

▼ 画像をクリックすると
第2セッションの動画が
ご覧になれます

学術フォーラム「供給サイドから仕掛ける地域共創の可能性」
セッション2:地域経済の新たなエンジン

会場:東京経済大学大倉喜八郎進一層館
日時:2022年11月12日(土)


■ コロナ世代大学生の高いSDGs意識


周牧之(司会):今回、周ゼミが実施した東京経済大学の学生へのアンケートは、大学生活のほとんどを新型コロナ禍で過ごした学生が対象となった。まさしくコロナ世代の意識調査で、コロナは大半の学生に大きな影響を与えているという調査結果が出た。また、今回の調査で明らかになったのは、学生のSDGsに関する意識の高さだ。SDGs世代とも言えるだろう。さらに驚いたのが将来地方で過ごしたい学生の割合は高かった。地方出身の学生の55.9%が地方で暮らしたいと希望していた。都市出身の学生の17.6%も、地方で暮らしたいと答えた。東京の大学に来て、東京で就職するというかつての構図が変わってきているようだ。これはコロナとSDGsの影響が大きいと思われる。実際、彼らが暮らしたい場所への要望を見ると、都市派にせよ、地方派にせよ、まず挙がるのは生活のしやすさだ。

 都市派は、さらに娯楽と交流に重心を置き、地方派は、自然環境と子育てへの意識が高い。地方の活性化はこうした若い人たちの要望に応え、地域との関係性を強めることが大切なアプローチとなる。これについては、中井さんが提唱する「地域循環共生圏」に私は大いに賛同している。2015年、パリ協定の直後に行われた東経大の国際シンポジウム「環境とエネルギーの未来」では、中井さんと和田さんは共に周ゼミの学生の問題提起に応える形で、環境で地域を元気にする構想を披露された。中井さんと和田さんのご努力で、現在こうした構想は「地域循環共生圏」という政策になった。

 コロナが発生した初年度の2020年、東経大の創立120周年記念シンポジウムでは、中井さんは地域循環共生圏について大西隆先生と共に議論した。今日はこのセッションで、まず中井さん、コロナの世代の若者、地域を元気にする話をいただきたい。

中井徳太郎:周先生から学生のアンケートの紹介があった。学生はまったく「SDGsネイティブ」だというデータが出た。都市と地方でどちらに暮らすかというところで、地方出身者のかなり多くが地方に戻りたいという。

 ただ、全体の数字からいうと65%が都市に住みたい、35%が地方となっている。SDGsに関心あるのがほぼ8割近く、SDGsに対する関心はあるけれども、ではどこに住むかというと、都市に住むほうがやはり生活しやすいと。

 昔よりは地方を選好する方向にいっている。若い世代の意識はSDGsの大事さ、地球の危機など、自然環境をはじめさまざまな危機への問題意識はあるが、いざ自分が暮らすとなると、やはり快適な生活が必要になる。これは非常に正直なところが出ているのではないか。

第2セッション・ディスカッション風景

■「地域循環共生圏」への3つの移行


中井徳太郎:周先生からご紹介いただいたように、「地域循環共生圏」の構想が今、環境政策、サステナビリティ、GX、SXの環境省が提唱している根本的な概念ということになる。ちょっと難しい言葉だが、これはまさしくSDGsができた2015年の前から、環境省が英知を結集して作った概念だ。これには3つの移行があり、3つの切り口で考えるのが分かりやすい。ひとつが脱炭素社会、カーボンニュートラル。この前提として、エネルギーを化石燃料、地下資源に依存して熱帯雨林を伐ったので、CO₂が増えてこの異常気象になっていると科学的にも証明された状況の中で、エネルギーの使い方を地球に負荷が掛からないようにする。このメルクマールはCO₂がもう増えない世界、カーボンニュートラルと、こういうことだ。これを2050年まで達成しようということで、エネルギーを地球の生態系システムからもたらす再生エネルギーとか、さまざまなものを使って、もうCO₂が増えない形で回していこうということだ。

 もうひとつが循環経済、サーキュラーエコノミーという世界になる。これはプラスチックが海に捨てられて大変な問題になっており、2050年には魚の数を超えてしまうぐらいまでプラスチックの量が増えてしまうという推計が出ている深刻さがある。これは同じく化石燃料からプラスチックなどを大量に作り、大量に消費して捨てて、地球は広いから商品にして捨てまくっても大丈夫という発想から、気付いたら地球は有限であって海も有限だったということで、全部がものの繋がりという発想でデザインし直さないとやっていけないことが明確になった。ありとあらゆるものが繋がっているので、「ゴミではない」という考えからすべては「資源である」というぐらいの発想でものをとらえるということだ。

 プラスチック、金属素材、そして生物系のバイオマスがすべてゴミという発想ではなく、今のプラスチックも地上資源としてとらえてペットボトルの再生であったり、さまざまな衣服に変えるケミカルリサイクルの技術もある。鉱山から持ってきて作った金属もリサイクル・リユースする、生ゴミも重油を入れて焼却炉で燃やすような無駄なことはせず、堆肥化することもあるわけだ。したがってリサイクル、リユース、リデュースの3Rに、リニューアブルする、を加えた(4R)循環の仕組みができているかの見方でつねに考えていく。

 さらにもうひとつは、分散型自然共生社会だ。最近では、これからの世界の潮流である「ネイチャーポジティブ」という言い方に変えようというところもある。自然生態系や地の利をあまりにも無視して都市に人口空間を造ったがために、コロナになった今、いま「三密」だとかリスクが高いということで、一気に分散の方向にいった。それがデジタルツールで可能な時代になった。ここでもう一度人間だけでない自然のメカニズム、生態系、生物のさまざまなものと折り合いをつけて、私たちがこのリアルな空間を使っていくという発想で、生命・生き物と調和する。これはもう分散型だ。

 この3つの見方をちゃんと軸に据え、そちらに向いていないものはたぶん駄目、アウトだ。生物、生態系という仕組みに寄り添い、自然の一部であるという発想で、この3つのメルクマールで私たちの地域のことを考えると、都市や地方と分かれてしまったが、身の回りには森里川海の自然の恵みから、エネルギーや食や観光資源や健康になるものが全部ある。デジタル技術などを使い、地産地消・自律分散をネットワーク型でやっていく。これが地域循環共生圏という大きな構想だ。ここは非常に今進み、打ち出してから政策的にも大きな手応えを感じている。

ディスカッションを行う中井徳太郎・前環境事務次官

■ 新しい「豊かな暮らし」の未来像への連携


中井徳太郎:ベースとしては、これは冒頭で和田次官が言ったように、CO₂を減らすとか、循環型にするとか、そのこと自体が目的ではない。そのことによって、私たちが豊かで快適でウェルビーイングを実感できる、そちらが目的であり、そういうことをイメージしないと幾らカーボンニュートラルだ、サーキュラーだ、ネイチャーポジティブだとか言ってもどうにもならない。そこで今は、新しい「豊かな暮らし」という視点で、環境省でいうと「森里川海プロジェクト」のような大きなプロジェクトがある。そういうものが結集してわかりやすい未来像に向かって連携していこうという動きも始めている。

 まさしく今日のテーマは「供給サイドから仕掛ける」ということで、この供給サイドというものがやはりアウトサイドインと言うか、私たちのベースである暮らしや地域の現場であり、日々、その供給したものを受けるサイドが、どういう立ち位置にあってどういうニーズがあるのか。この方向感は、環境省が今、自然共生型のネイチャーポジティブという言い方をしており、ここら辺がまさしくド真ん中、本流だ。

 今日はもうひとつのテーマが集客エンタメ産業ということで、この運動の隊員のようにしてみんなが共有し、供給サイドが仕掛けるターゲットとして、需要サイドの方でこういうことであればみんながハッピーになり、かつその結果、経済事業も回る、そんなところに集客エンタメ産業の未来がある。

■ CO₂を出さない鉄鋼産業へ


周牧之:1985年に私は中国の宝山製鉄所というプロジェクトの担当をやっていた。その時は千葉県にある君津製鉄所をモデルにし、1,000万トンの最新鋭の製鉄所の設備を作ろうとした。その時はいかに国のわずかな予算を使ってこれを実現させるかを精一杯頑張った。当時はまったくCO₂のことは考えなかった。今は、CO₂を出さない製鉄産業をどう作っていくか、まさしく供給サイドからの変革、革命を、どう起こしていくか、だ。中井さんの腕に期待したい(笑)。

中井徳太郎:日本製鉄は2050年カーボンニュートラルをコミットし、橋本社長の陣頭指揮で、本気だ。今、周先生がおっしゃったように、鉄なり金属なりは便利なので、人類はこれを求めてきた。文明の発祥から言うと、レバノン杉を切って鉄文明ができ、金属が便利だとわかり、それが広がれば広がるほどもう森が伐られた。けれど今、2050年カーボンニュートラルを全体でやろうとしているわけで、人類文明のパラダイムシフトというか、大きな文明の転換であり、金属文明と木材・森林の調和ができるかという大きな文脈だと思う。

 それを可能にするには、供給サイドでやはり技術の進歩、石炭などでCO₂が出る形ではない形で鉄を精錬することにトライする技術の開発。それだけではなく、すでに地上に上がった鉄や金属をリサイクルすること、さらに鉄から出てくるスラグは、実は海の中に入れると鉄分などがあるので、藻場が再生できてCO₂を吸収する効果もある。そういうトータルな循環という発想に立ち、鉄を作るプロセス、そういうものが森林と関わったり、海の吸収と関わったり、自然生態系の話と関わったり、またプラスチックという地上資源をまた活用して鉄の作る時の材料に使うなど、いろいろな絡みが出てくる局面になっている。

周牧之:おっしゃる通りだ。これからの大きなうねりを皆さんの想像力と努力で支えなきゃいけない。

第2セッション・ディスカッション風景

■「地域経営」を地域活性化の根幹に


周牧之:今回のアンケートにあったように、学生の町である国分寺では学生がたくさんいるにも関わらず、この地元と若い人たちとの関係性はそれほど強くない。豊かな地域資源があるにもかかわらず、若い人たちはあまり接していない、使っていない。駅に大型の集合施設があっても、そんなに使っていない。結果、地元の国分寺に対する愛着もそれほど強くはない。

 実はこうした現象はおそらく国分寺だけでなく、全国的に起こっている。やはり若い人たちと地元との関係性をいかに強めていくかが、ひとつの地域活性化の根幹に関わる話だと思う。

中井徳太郎:地域経営という形で、長期の視点で、行政や企業だけではなく、みんながそういう発想を持たなければいけないというのはその通りだと思う。先ほどの集客エンタメと絡むと思うが、今の時代は、新井さんがおっしゃったように、根本にみんなが何故こういうものがあるのかとか、こういうものが存在し続けられるのかとか、そういう根本的なテーマについて、これから何十年も生きていく学生の皆さんが頭を使って考え抜くこと、薄っぺらい話でなく真剣に人生をどうするか考えることが必要だ。やはり核になるところが要ると思う。

 また、ぴあさんが集客エンタメという産業の分析をしているとなれば、そこにもちろん哲学が欲しい。スポーツも入って、それが健康寿命を延伸し、地域を繋ぐ。先ほどの3つの分析で人間だけの調和というより、自然生態系すべての文明転換点だから奥深い、根源的な問題だが、その集いの仕掛けが集客エンタメであり得ると思う。環境省の森里川海のプロジェクトでは、フェスもやっている。小川町のフェスは、まさしくオーガニックフェスといって新井さんにも出てもらっており、さまざまな仕掛けをやっている。これは集客エンタメそのもので、いろいろ意識喚起をしている。

 環境省で今、30by30という自然生態系にちゃんと人が関わって維持されているものを認定し、それに企業が取り組んでいたら株の評価になるような「自然共生サイト」の仕組みを考えている。脱炭素の方は100カ所を5年以内に先行地域でやるつもりだ。

周牧之:せっかくのチャンスなので、最後に一言、コロナ世代の学生へのメッセージを送ってください。

中井徳太郎:海や川に入り森に入っていってもいい。本物の生の自然の、気持ちいいとか心地いい風だとか、リアルなところをぜひみんな体験してほしい。毎日水を浴びるのでもいい。まず、リアルな肌の感覚、これを取り戻そう。


プロフィール

中井 徳太郎(なかい とくたろう)/日本製鉄顧問、前環境事務次官

 1962年生まれ。大蔵省(当時)入省後、主計局主査などを経て、富山県庁へ出向中に日本海学の確立・普及に携わる。財務省広報室長、東京大学医科学研究所教授、金融庁監督局協同組織金融室長、財務省理財局計画官、財務省主計局主計官(農林水産省担当)、環境省総合環境政策局総務課長、環境省大臣官房会計課長、環境省大臣官房環境政策官兼秘書課長、環境省大臣官房審議官、環境省廃棄物・リサイクル対策部長、総合環境政策統括官、環境事務次官を経て、2022年より日本製鉄顧問。


■ 関連記事


【フォーラム】学術フォーラム「供給サイドから仕掛ける地域共創の可能性」

【フォーラム】和田篤也:戦略的思考としてのGXから地域共創を

【フォーラム】内藤達也:地域資源の活用で発信力を

【フォーラム】白井衛:エンタメで地域共創を

【フォーラム】吉澤保幸:集客エンタメ産業で地域を元気に

【フォーラム】南川秀樹:コミュニケーションの場としてのエンタメを

【フォーラム】鑓水洋:地域活性化策には明確なコンセプトが求められる

【フォーラム】新井良亮:川下から物事を見る発想で事業再構築

【フォーラム】前多俊宏:ルナルナとチーム子育てで少子化と闘う

【フォーラム】高井文寛:自然回帰で人間性の回復を

【フォーラム】笹井裕子 VS 桂田隆行:集客エンタメ産業の高波及効果を活かした街づくりを

【フォーラム】鑓水洋:地域活性化策には明確なコンセプトが求められる

ディスカッションを行う鑓水洋・環境省大臣官房長

 東京経済大学は2022年11月12日、学術フォーラム「供給サイドから仕掛ける地域共創の可能性」を開催した。和田篤也環境事務次官、南川秀樹元環境事務次官、新井良亮ルミネ元会長をはじめ産学官のオピニオンリーダー16人が登壇し、周牧之ゼミによるアンケート調査をネタに、新しい地域共創の可能性を議論した。鑓水洋・環境省大臣官房長がセッション2「地域経済の新たなエンジン」のパネリストを務めた。

 

▼ 画像をクリックすると
第2セッションの動画が
ご覧になれます

学術フォーラム「供給サイドから仕掛ける地域共創の可能性」
セッション2:地域経済の新たなエンジン

会場:東京経済大学大倉喜八郎進一層館
日時:2022年11月12日(土)


■ エンタメ、デジタル、自然、カーボンニュートラルを起爆剤に


 1990年代半ばに生産年齢人口が下がりはじめて、それから2008年からは総人口が減少している状況が続いているといったことが、もともとの背景としてあろうかと思う。この問題は、意識としては長らく捉えられてきてはいた。だが、これといった解決策がまだ見つかっていない状況というのが正直なところではないかと思う。私自身は山形の出身だが、最近、もともと山形にあった老舗のデパートが立て続けに2つ倒産した。山形はもうデパート不毛地帯となってしまっている。食べ物も大変おいしいし、住みやすいと思っているし、そういう場所だが、過疎や倒産が現実に起こってしまっている。

 もう実行しなければいけないステージに本当に入っている。もう1つ経験から申し上げたいことは、周ゼミの皆さんがちょうど生まれた頃、2000年代前半になるが、熊本県庁に3年ほど出向していた経験がある。その当時から、もはや熊本県は高齢化も相当進んでおり、限界集落といわれるような問題も発生していた。

 実際、これをどう対処するのかといった議論は、既に当時からも行われていた。例えば都市でリタイアした人たちを呼び込むにはどうしたらいいか。そんな議論もしていたが、私自身はやはり今日、学生の皆さんが主張したように、若い人が定着する、呼び込むということがない限り活性化はないだろうと考えている。そのためには周ゼミのアンケートにもあったように、快適な暮らしももちろんだが、やはり働く場所がないと実現できないと考えている。

 したがって働く場があって、快適な暮らしが提供されるような町を目指すというのが、やはり大切なポイントだ。もう1点だけ申し上げると、地域活性化策というのは、実現するには、どんな町にするのかという明確なコンセプトと、一体何が問題で、どう解決するのかという明確な問題意識が求められる。

 これらについて地域の方々のコンセンサスを得なければいけないが、あまりに論点が大きく、明確な指針を打ち出せない状況が続いてきたのではないか。そうした中で今日、まさしくエンタメといった切り口やスポーツ、デジタル、自然、あるいはカーボンニュートラルといったさまざまなツールが提供されている。それぞれが、やはり起爆剤であるというふうに強く思っている。

ディスカッションを行う鑓水洋・環境省大臣官房長

■ カーボンニュートラルを切り口に分散型モデルへ


  私は環境省の人間なので、カーボンニュートラルについて一言申し上げたい。これまでも議論があったが、やはり一つの大きな有効なツールになるだろうと考えている。それはなぜかというと、ひとつは明確な国家目標があるということだ。2050年にはカーボンニュートラルにするという目標があるなかで、地域とか暮らし、それから産業のあり方を含めて抜本的に変えなければいけない。そういったターニングポイントにあるということだ。

 ある意味、一種の危機感が醸成されているということだ。それから、そういった国家目標を実現していくには、これを各地域で実践して実現していかなければいけないということなので、そのカーボンニュートラルといった切り口を用いて地域の課題は何かということを明らかにして、どんな町にするのかということを描くという絶好の機会だろうというように考えている。

 カーボンニュートラルを切り口とする優れた点を私なりに考えると、ひとつは面的な対応が必要なことだ。地域の共生、コンセンサス、これを醸成しなければいけないという考え方に立つということだ。

 それがひとつ。一方的に誰かが進めればいいという話では多分ないということ。それからもうひとつは、さまざまな地域資源は地域によってまちまちだ。熱が利用できるところとか、風力があるところとか。さまざまな地域資源を活用するということなので、さまざまなモデルケースが可能であるということだ。

 金太郎飴にならなくて、多様で分散型のモデルを提示できるという機会が、提供できるといった意味で、それをカーボンニュートラルの切り口にするというのは、大変ある意味優れた手法かなというふうに自分自身は考えている。

ディスカッションを行う登壇者。左から、鑓水洋・環境省大臣官房長、周牧之・東京経済大学教授

■ 大学の果たす役割が非常に重要


 地域と若者の関係性という観点からすると、 私は大学の果たす役割が非常に重要かなと思っている。熊本に勤務していた時期には、一般的に大学が地域貢献するという考え方がまだまだ根付いていなかったと思う。あれだけ知が結集しているところのノウハウを地域貢献に活かさない手はない。したがって、当時経済界とか大学の協力も得て、大学にその地域貢献をする研究拠点みたいなものを作っていただいた経験がある。

 今回このように周ゼミが地域のことを考えて、それを大学としてどういうことができるかという。その一環で。このようなセッションを作られているということは、そういう意味で、地域貢献にこの大学が関わっていきたいという姿勢の表れではないかと思っている。ちょっと偉そうなこと言うが、こういうことはぜひ続けていただければ大変いいと考えている。

 コロナ禍では、これまで経験したことのないような経験を味わっているのは、学生の皆さんだけではない。だが、学生という貴重な時間、機会がコロナに見舞われてしまったということは、やはり我々とはちょっと違うダメージ、インパクトがあるのではないかと思う。とはいえ、人生は長い。本物、リアルの世界にぜひ触れてもらい、自分をまた磨いてもらいたい。あとせっかくなので、こういうゼミで学習されている学生さんだから、環境省のフィーリングとぴったりマッチすると思うので、ぜひ環境省の門を叩いていただきたい(笑)。


プロフィール

鑓水 洋(やりみず よう)/環境省大臣官房長。

 1964年山形県生まれ。1987年東京大学法学部卒業後、大蔵省入省。大蔵省主計局総務課長補佐、熊本県総合政策局長、財務省大臣官房企画官、主計局主計官、財務省大臣官房付兼内閣官房内閣審議官、財務省大臣官房審議官、理財局次長、国税庁次長等を経て、2021年から現職。


■ 関連記事


【フォーラム】学術フォーラム「供給サイドから仕掛ける地域共創の可能性」

【フォーラム】和田篤也:戦略的思考としてのGXから地域共創を

【フォーラム】内藤達也:地域資源の活用で発信力を

【フォーラム】白井衛:エンタメで地域共創を

【フォーラム】吉澤保幸:集客エンタメ産業で地域を元気に

【フォーラム】南川秀樹:コミュニケーションの場としてのエンタメを

【フォーラム】中井徳太郎:分散型自然共生社会を目指して

【フォーラム】新井良亮:川下から物事を見る発想で事業再構築

【フォーラム】前多俊宏:ルナルナとチーム子育てで少子化と闘う

【フォーラム】高井文寛:自然回帰で人間性の回復を

【フォーラム】笹井裕子 VS 桂田隆行:集客エンタメ産業の高波及効果を活かした街づくりを

【フォーラム】新井良亮:川下から物事を見る発想で事業再構築

ディスカッションを行う新井良亮・ルミネ顧問

 東京経済大学は2022年11月12日、学術フォーラム「供給サイドから仕掛ける地域共創の可能性」を開催した。和田篤也環境事務次官、南川秀樹元環境事務次官、中井徳太郎前環境事務次官をはじめ産学官のオピニオンリーダー16人が登壇し、周牧之ゼミによるアンケート調査をネタに、新しい地域共創の可能性を議論した。新井良亮・ルミネ顧問・元会長、JR東日本元副社長がセッション2「地域経済の新たなエンジン」のパネリストを務めた。

 

▼ 画像をクリックすると
第2セッションの動画が
ご覧になれます

学術フォーラム「供給サイドから仕掛ける地域共創の可能性」
セッション2:地域経済の新たなエンジン

会場:東京経済大学大倉喜八郎進一層館
日時:2022年11月12日(土)


■ 「地域共創」はもはや実行の段階、時間的猶予はない


周牧之(司会):学術フォーラム開催に当たって実施した周ゼミによる東経大の学生の意識調査のアンケートの中で中央線沿線の「将来住みたい場所」を聞いてみた。吉祥寺や東京が圧倒的人気だった。あとは三鷹、立川が続いた。しかし、昔人気あった国立が今の若い人たちにはあまり人気がないようだ。もちろん、今回は東京経済大学学生のアンケート結果なので、国立に立地する大学の学生から聞くと答えが違ってくると思うが、中央線を運営するJR東日本の元副社長、またルミネの元社長・会長の新井さんは、このような結果をどうご覧になるか。また新井さんがこれまで手がけてきた地域活性化への取り組みに関しても、ぜひご紹介ください。

新井良亮:私は昭和41年に八王子国鉄の八王子管区の機関助士、機関士、電車運転士として三鷹、中野で電車運転しましたから、ここはすべて知り尽くしている。昭和40年代からこのエリアでずっとお付き合いをしていて、なぜこのように国分寺が学生たちにとって不人気なのかは大変理解しづらい。実は国分寺はホテルメッツ(JR東日本のホテルチェーン)ができたのが、たしか武蔵境と共に初めての第1号だ。さらに、駅付きの託児所(保育所)ができたのも国分寺が第1号。そういう意味では住みやすい町だ。それをどう活用していくのか、もっとポテンシャルを上げていくのかに、関わっていくことが大切なことだ。

 今日の表題は「地域共創の可能性」だ。可能性というより、実行する時期に差し掛かっている、もうそんなに時間的な猶予はないと率直に感じている。供給側と需要側がまさにコミュニケーションをとり、連携しながら何を作り出していくのかがものすごく大切だ。そこに個人なり、組織なり、社会なり、国がどう関わっていくのか。その根幹は個人がどのように強い意志をもって考え、実践をしていくかだ。

 混迷する時代、ビジネスは正解がない。成長していくことがすべての問題を解決するという認識の上に立って、一人ひとりが覚悟をしていくことが大切だ。

第2セッション・ディスカッション風景

■ 鉄道事業におけるターニングポイントとパラダイムシフト


新井良亮:コロナ時代の地方創生ということで、JR東日本とルミネの話をさせていただきたい。パラダイムシフトが始まって産業が一変し、人と金が動かなくなった時代の中で、鉄道の役割を考えると、1987年に新会社(国鉄分割民営化)になって以来35年間黒字で来たのが、コロナになった途端に5,000億円を超える赤字になった。ようやく今年上期は黒字になったが、果たして第8波が来た時にどうするのかという危機的な状況にあるのがひとつ。

 もうひとつは、鉄道が明治5年にスタートしてから150年を迎え、ひとつの産業構造として鉄道はこのままでいいのか、大きなターニングポイントを迎えている。新会社以前に国鉄で採用された人たちがいなくなり新しい世代交代を迎えている。

 さらにもうひとつは、鉄道は技術が進歩しないと成長はないわけで、これから鉄道会社が新しい路線を造ることはもうほとんどない。これ以上、環境を破壊してまでスピードアップすることが、何千億という金を使い5分短縮することに血眼になって取り組むことに、どれほどの価値を見出すのか。

 そうなると、社会でどう妥当性を作っていくのかも含めて考えていかなければならない。鉄道はどうするのか。ひとつはやはり地域との共生・共創をしっかり取り組む。これは限りなく地域貢献をしていくことだ。観光・農業・まちづくりを、経済合理性だけではなく社会妥当性をしっかり作ってやっていくことに尽きる。

 そういう意味ではビジネスは得して、得して、大損をするのではなくて、損して、損して、損して、得を取ると。その得は経済上の損得もあるが、企業としての人徳を含めて考えていかなくてはいけない時代に入っている。駅を考えた時に、ステーションという駅があり、もうひとつはベネフィットする社会益を作る役割をしっかり果たすことが、まさに企業価値として存在理由になる。そのことを会社の中でどれほどオーソライズされ、一人ひとりの社員の心の中に納得性を持たせられるかが大切だ。

 もうひとつ、やはり新しい鉄道ビジョンをどう作るかだ。新しいビジネスを考えると、需要側の問題を、今まで首都圏輸送でやっていたのを都市間輸送に変えていかなければならない。今回、大都市のJRでいえば、都内も含め近郊の輸送はもう100%戻っている。問題は、都市間輸送が4割ぐらいしか戻っていない。赤字の原因を変えていかないと駄目だとなれば、地方にもっと力をつけていかなければならない。県庁がある中核都市は何としても支えていく。そのためのビジネスをやる。そのために人を運び、農業をつけ、環境に対して優しいことを企業として取り組むということではないか。

ディスカッションを行う登壇者。左から、中井徳太郎・前環境事務次官、新井良亮・ルミネ顧問、前多俊宏・エムティーアイ社長、高井文寛・スノーピーク代表副社長

■ 産地の特産物に鉄道事業の強みを活かす


新井良亮:今JRが取り組む施策を紹介すると、新幹線ができて青森市は旧市街地が大変な状況になるということで、旧市街地にリンゴを活用したシードルを作り、農業とタイアップしてさまざまな取り組みをしている。それがフランスで世界有数の1、2位のシードルとして認められ、今13工場、13社が進出し、大変なマーケットを作っている。駅ビルを建て直す中で旧市街地を含め抜本的に見直していく。駅ビルの建った前にシードルの工場があるわけで、新しいまちづくりをしている。

 主要な駅では「のもの」という、農産物を駅の中で販売をしていく取り組みを進めている。今まで新幹線は旅客だけだったのを、旅客だけではなく荷物も運ぶ。やはりこれだけのスペースがあるので、朝採りをそのまま届けて店舗に並べている。

■ ニーズをベースに鉄道資源をさまざま活用する


新井良亮:もうひとつは、北海道などの地方ローカル線が話題になっているが、お客さんが鉄道に乗らないから鉄道をなくすということではなく、鉄道のあり方をもっと考え直していく必要がある。只見線の例では、災害が起きて何年ぶりかに10月1日に運転を再開するが、これは上下分離で、施設を自治体が持ち、運行を鉄道が持つということで、只見線の鉄道は存続させる。おそらくこれは北海道とか四国とかでも活用される。

 あとはBRTだが、被災地の新しいバス路線で鉄道の用地と普通の道路を両方渡れるような形でフリークエンシーを高めていく。エリアへの配車の取り組みをし、その駅から車がない、足がないことがないように利便性を高める。

 新しいビジネスとしては、シェアオフィス。これは建築上問題があるとか、国交省も含めていろいろやったが、可動式にすれば可能だということで認めてもらった。わざわざいろいろなところに出かけなくて済むので、実際、非常に稼働率が高い。隣の西国分寺駅では、スマート健康シティに取り組んでいる。隣でできるのであれば国分寺でもできるというような、ポテンシャルを上げる取り組みをしていったらいい。エンタメもありうるし、ニーズをベースに考えてさまざまな利便性を高めたらいいと思う。

■ もう一度川下から物事を徹底して見ていく


新井良亮:ルミネは今の状況を見ると、2018年ベースではほぼ95%まで来た。対前年比はもう130%になった。それはなぜか。コロナでお客様が来ていないと言うが、買いたいという心はずっと持っておられる。やはり若い女性の購買力はすごい。本当にそういう意味では我々はもっと勉強しなければならない。「供給サイドから」で言えば、ビジネスサイドからもう1回川下から物事を見ていくということだ。

 今、ルミネの中でやろうとしているのは、銀行と同じように「ルミネがなくなる日」を想定して何ができるのか、もう一回考えようということだ。たまたまコロナが来たという問題よりも、平成30年を過ぎた段階で30年企業説があるとすれば、ルミネの企業はもう終わりに近づいている。ビジネスとしてこれでいいのかを考えてもらいたいということだ。

 2つ目は、マーケットを徹底して見ていく。川下から、本当にお客様は何を求めているのか。済んだ過去のことをデータから見るだけでなく、お客様の真実を見た上でマーケットを作っていくことに、我々がどれほどの心血を注いでいけるかだ。

 私たちは、不動産賃貸業をやるつもりはないと明確に宣言している。お客様とショップのスタッフと、賃料をこれだけもらえればいいということでなく、お客様とオーナーさんとWin-Winの関係で、いつも成長していく前提に立って物事を考えている。賃料だけ取れればいいという関係は一切、そこにはない。コロナの時は賃料、最低家賃も全部取っ払った。そういうことも含めて考えていかないと、相手が弱るだけだ。

■ 小売りとは何なのか?何を売っていくのか?


新井良亮:小売業とは、読んで字の通り小さな売り方をしているということ。小売りとは売る場で小さく売っているだけで、大本は大量に作っている。それを小分けして売り、最後、売れなくなったらバーゲンするわけだ。不動産だったら、家だったら訴訟が起きることが小売だったらまかり通るのは、何かお客様を小馬鹿にしていることにもなりかねない。

 やはり需要に見合ったものづくりをしていく。そうするとものづくりをする人が、利が取れる。大量に作らせておいて、叩くだけ叩いて安売りして、原価割までして売っている姿では、ものづくりする次の世代は辞めますということになる。

 そういうことをやるよりも、個を売る、個性を売る。品物の要素はクオリティであり、モノの価値を売っていく。モノの価値を売るとは、言ってみればお客様の価値を見出していく。モノの価値を売っていく人とものづくりの人たちが関わりながら一緒に共創していくことが大切だ。これに今ルミネは取り組んでいる。

■ 文化は金にならない?ビジネスの真髄とは


新井良亮:文明は金になるが文化は金にならないと言われるが、そうではない。われわれはファッション文化、食文化だ。成長し続けなければ課題が解決しないというスタンスで物事を進める。ひとつひとつをきちんと作っていかない限りビジネスにならない。

 男性のビジネススーツは、背広とワイシャツ、靴が何足、何種かあればいい。女性は毎日替える。あるいは時間によって替える。とてつもなく感性が豊かで、その需要は多い。ここにルミネが耐えられるかどうか。お店に来ていただけることが、ビジネスの真髄だ。私たちは、お客様と寄り添っていくという大きな狙いをもってファッション文化、食文化に取り組んでいる。社員の75%が女性で、平均年齢33歳。私は例外中の例外で、こういう人がいるのかと言われる(笑)。でも、まだ若い人だけの世代だけでは社会はまとまらないので、やはりバランス良く、お互いの存在をきちんと認識しながらビジネスで日々を過ごしている。ぜひルミネの取り組みをいろいろ見ていただきたい。「価値づくり」と、「顧客感動形」でお客様に感動を与えて再来店を促している。

ディスカッションを行う新井良亮・ルミネ顧問

周牧之:私と新井さんとの付き合いは長くなった。毎回新井さんの話を伺うと、問題意識の鋭さとビジネスのセンス、実行力に敬服する。

 新井さんは長年、地域との関係性を強める視点に立ったビジネスを心がけている。単年度ではなく、長いスパンに立ち、大局観で地域を経営すべきだと提唱されている。実は2017年の東京経済大学の学術フォーラムでも、新井さんは長期的なスパンで企業が周りとのネットワークを重視する経営が重要だと話した。今回のアンケートにあったように、学生の町国分寺は学生が大勢いるにも関わらず、地元と若い人たちとの関係性はそれほど強くない。豊かな地域資源があるにもかかわらず、若い人たちはあまり接していない、使っていない。駅に大型の集合施設があっても、そんなに使っていない。結果、地元の国分寺に対する愛着もそれほど強くはない。こうした現象はおそらく国分寺だけでなく全国的に起こっている。若い人たちと地元との関係性をいかに強めていくかが、地域活性化の根幹に関わる。

新井良亮:学生の皆さんがニーズを出す前に、学生の皆さんでまず議論してほしい。頭から血を出すぐらい考えないと、新しいアイデアは生まれない。皆さんでそこのところを1歩でも2歩でも先んじることだ。

 企業側も行政側も、そこに商工会議所や自治会が入ってこないのは、お客様という視点が欠けているがゆえだ。供給サイドという違う面から見ると、上から目線だ。学生の若い世代から、あるいはカスタマーというお客様の目線で、町を、全体を見た時にとてつもない経営資源があることを、それぞれが自覚することだ。

周牧之:最後に一言、コロナ世代の学生へのメッセージを送ってください。

新井良亮:人生100年時代と言われている中でのコロナの3年間、自分の人生の中で何を位置づけたのか、自分なりにしっかり考えてほしい。ただ、100年時代を迎えた時の3年間がどれほどの価値があるのかをもう一度、違った意味で考えてほしい。問題は、そこで自分が何をやるのか、社会に対して自分は何を目指していくのか、あるいは社会のために何を役立てるか明確な目標をしっかり持つことだと思う。


プロフィール

新井 良亮(あらい よしあき、)/(株)ルミネ顧問

 1946年生まれ、1966年日本国有鉄道に入社。八王子機関区に勤務しながら夜学に通い中央大学法学部を卒業。JR東日本取締役・事業創造本部担当部長、同常務、同副社長を経て、ルミネ社長、同会長、取締役相談役を歴任。


■ 関連記事


【フォーラム】学術フォーラム「供給サイドから仕掛ける地域共創の可能性」

【フォーラム】和田篤也:戦略的思考としてのGXから地域共創を

【フォーラム】内藤達也:地域資源の活用で発信力を

【フォーラム】白井衛:エンタメで地域共創を

【フォーラム】吉澤保幸:集客エンタメ産業で地域を元気に

【フォーラム】南川秀樹:コミュニケーションの場としてのエンタメを

【フォーラム】中井徳太郎:分散型自然共生社会を目指して

【フォーラム】鑓水洋:地域活性化策には明確なコンセプトが求められる

【フォーラム】前多俊宏:ルナルナとチーム子育てで少子化と闘う

【フォーラム】高井文寛:自然回帰で人間性の回復を

【フォーラム】笹井裕子 VS 桂田隆行:集客エンタメ産業の高波及効果を活かした街づくりを

【フォーラム】前多俊宏:ルナルナとチーム子育てで少子化と闘う

ディスカッションを行う前多俊宏・エムティーアイ社長

 東京経済大学は2022年11月12日、学術フォーラム「供給サイドから仕掛ける地域共創の可能性」を開催した。和田篤也環境事務次官、中井徳太郎前環境事務次官、南川秀樹元環境事務次官、新井良亮ルミネ元会長をはじめ産学官のオピニオンリーダー16人が登壇し、周牧之ゼミによるアンケート調査をネタに、新しい地域共創の可能性を議論した。前多俊宏・エムティーアイ社長がセッション2「地域経済の新たなエンジン」のパネリストを務めた。

 

▼ 画像をクリックすると
第2セッションの動画が
ご覧になれます

学術フォーラム「供給サイドから仕掛ける地域共創の可能性」
セッション2:地域経済の新たなエンジン

会場:東京経済大学大倉喜八郎進一層館
日時:2022年11月12日(土)


■ 年間30万人の妊娠に寄与するアプリ


周牧之(司会)学術フォーラム開催に当たって実施した周ゼミによる東経大の学生の意識調査に関して面白いのは、半分以上は都市の出身の子どもたちですけれども、72%の学生が地方の過疎化が問題だと回答しています。また、実際暮らしたい場所の理由につきましては、都市派にせよ地方派にせよ、子育てのしやすさ・子育て支援が非常に重要なイシューだと意識しています。

 エムティーアイという会社は、女性健康管理のアプリを開発して女性の健康をサポートされています。さらに、少子化問題の解決や子育て支援に関する事業にも取り組んでおられます。地域をベースにした子育て支援の展開について、前多さんから紹介してください。

第2セッション・ディスカッション風景

前多俊宏:アンケートを拝見しても、子育てというのが非常に重要なテーマになっている。

 実際、「供給サイドからの地域共創」というなかでも、子どもというのが非常に重要だと考えられるし、子どもがいないと未来がないわけであって、たくさんの子どもが元気であるということは、地域活性化の基本的な条件だと思っている。弊社は携帯電話とかスマートフォンのアプリなどを作っている会社だが、その中で女性の健康管理をサポートする「ルナルナ」というアプリがある。

 これは生理日管理を基本の機能として作られたもので、もう既に20年以上、ガラケーの時代からこのサービスをスタートして展開しており、日本だけで1,800万ダウンロード(2022年6月時点)もされている。最近は妊娠を目的に使う人が増えてきており、このアプリの利用者の中で約30万人の妊娠に寄与するという状況になっている。これは日本の出生数の3分の1以上に関わっていると考えている。

 ルナルナに蓄積された約300万人分のデータを分析し、一人ひとりが違う周期を持っているので、それを予測するアルゴリズムを開発している。いろいろな大学や研究機関などとも共同研究して、特許や論文などもたくさん出しているが、従来知られている方法と比べると、1.4倍近い妊娠の成功率を実現できている。これは少子化対策に対して非常に貢献できているのではないか。

■ 子育ての不安を解消する母子手帳のアプリ


前多俊宏:しかし、妊活の支援だけでは不十分で、子どもが生まれると、続いては安心して子どもを産んで育てられる環境づくり、子育て支援というのが必要になってくる。

 ただ、この子育てに対する不安や負担は非常に重い。例えば手続きだけをとっても100を超える。市町村によるが、例えばシングルマザーの場合は市役所、区役所に直接行かないとダメなどということもある。2週間以内にシングルマザーが子どもを連れて出世届を出しに行くなどは難しさがある。こんな馬鹿げた制度がたくさんある。こうした手続きをより簡単にしていくということが、我々でもできるのではないか。

 もうひとつは社会の変化、核家族化の進行の結果、子育ての知識や知恵といったものがなくなってしまっている。これら不足している部分の不安などを解消することも、デジタル技術を使ってできるのではないか。

 母子手帳のアプリの「母子モ」というのをスタートしている。8年経っており、約1,700の自治体のうち500、3分の1弱の自治体で使っていただいている。こちらの方も出生数でいうと28万人をカバーしており、こちら側からいっても3人にひとりはお手伝いさせていただいている。

 これは母子手帳なので、妊娠した時から、そして出産して子どもが6歳になるまでこれを使っていただいている。我々の考え方としては「チーム子育て」と呼んでおり、クラウドの技術を使って住民を中心として自治体、行政機関と、それから医療機関、病院やそれから薬局こういったものを繋げることで面倒くさいことをカバーしたり、不安を取り除くようなさまざまなサービスを提供させていただいたりしている。

 その中で、単なる母子手帳の記録だけではなく、2021年から千葉県の市原市で始めた小児予防接種のサービスでは、まず市からQRコードが予防接種のときに行く。このQRコードを読み込むと、まず問診を入力して、そして予約していくだけ。

 6歳になるまで約30本の予防接種を打つので、非常に大変だし、期間を正しく空けていかなければいけないのだが、これがまた難しい。それから順番も難しい。お母さんも大変だし、病院側も間違って時々事故が起きる。こういったものを裏側で全部コントロールしている。QRを読めば、問診票の記入も1回で終わる。1回書くと次は若干の修正で済む。行くとアプリに全部登録が終わっているから、手続きも非常に簡単に病院で終わる。医者がワクチンのロット番号を読み込む。

 打ち終わると、すぐに電子母子手帳の中身がばらっと書き換わるので、非常にお互いに便利になっている。

ディスカッションを行う登壇者。左から、中井徳太郎・前環境事務次官、新井良亮・ルミネ顧問、前多俊宏・エムティーアイ社長、高井文寛・スノーピーク代表副社長

■ 手続きを簡略化して母親へのケアに注力できる仕組みづくり


前多俊宏:もうひとつ北九州市で2022年4月からスタートしたものだが、妊娠すると妊娠届を市役所に出しに行かなければいけないが、その時もいろいろな窓口をたらい回しになるが、それが1回行ったら終わる。スマホから申請や来庁時間の予約もできるので、これはお母さんにとっても職員にとっても、非常に手続きが簡素化する。先ほどの予防接種のアプリの場合も、この妊娠届の場合は、80%以上の人がデジタル化の方にシフトした。

  それ以外に、乳幼児健診のスマホで全部記録を取っていくというのが、2023年度4月からスタートしたりするというようなことで、お母さんが手続きが面倒くさい、不安があるといったものを解消し、職員もその住民のケアに集中できるようになっていく仕組みを提供している。

周牧之:要するに、この「チーム子育て」によって、地域にばらばらに存在していた子育てのステークホルダーが有機的に連携できるようになる。それによって子育てのクオリティや利便性はだいぶ高められる。

■ 人口を増やすということに対する戦い方の徹底


周牧之:今回のアンケートにあったように、東京経済大学が立地する学生の町、国分寺では学生がたくさんいるにも関わらず、地元と若い人たちとの関係性はそれほど強くない。豊かな地域資源があるにもかかわらず、若い人たちはあまり接していない、使っていない。駅に大型の集合施設があっても、そんなに使っていないようで、その結果、地元の国分寺に対する愛着もそれほど強くはない。

 実はこうした現象はおそらく国分寺だけではなく、全国的に起こっていることだ。やはり若い人たちと地元との関係性をいかに強めていくかが、ひとつの地域活性化の根幹に関わる話だと思う。

前多俊宏:地域の魅力という観点では、生活するにあたって細かく面倒な手続きが積み上がってくると、ものすごく不便になり、そこに住むのが面倒になってしまう。そういう摩擦を本当に減らしていかなければならないということと、過疎と闘うという感覚は日本にはない。

 例えば先進国で本当に人口が増えていて出生率が高いのはフランスだが、そのフランスが今年の8月2日に作った法律では体外受精がシングルマザーでもできる。レズビアンでもできる。日本はどうかというと、婚姻を通じて戸籍がちゃんと成立していないと、体外受精は基本的に受け付けないと産婦人科が断る。フランスと比べた場合、過疎というか、人口を増やすということに対する闘い方の徹底ぶりが全然違う。

周牧之:最後に一言、コロナ世代の学生へのメッセージを。

前多俊宏:弊社では、一昨年コロナが始まってすぐに完全テレワークに移して、もうみんな引っ越してどこかに行っちゃった(笑)。もう、こういう変化は始まったら戻らない。だったらその変化の先端まで行って、徹底的に新しい変化した時代のやり方を追求してみるのもいいと思う。


プロフィール

前多 俊宏(まえた としひろ)/エムティーアイ社長

 1965年青森県青森市出身。1987年千葉大学工学部機械工学科卒業、日本アイ・ビー・エムに入社。後に光通信に転じ、1990年に同社の取締役となる。1996年8月にエムティーアイを創業し、同社の代表取締役社長となった。


■ 関連記事


【フォーラム】学術フォーラム「供給サイドから仕掛ける地域共創の可能性」

【フォーラム】和田篤也:戦略的思考としてのGXから地域共創を

【フォーラム】内藤達也:地域資源の活用で発信力を

【フォーラム】白井衛:エンタメで地域共創を

【フォーラム】吉澤保幸:集客エンタメ産業で地域を元気に

【フォーラム】南川秀樹:コミュニケーションの場としてのエンタメを

【フォーラム】中井徳太郎:分散型自然共生社会を目指して

【フォーラム】鑓水洋:地域活性化策には明確なコンセプトが求められる

【フォーラム】新井良亮:川下から物事を見る発想で事業再構築

【フォーラム】高井文寛:自然回帰で人間性の回復を

【フォーラム】笹井裕子 VS 桂田隆行:集客エンタメ産業の高波及効果を活かした街づくりを

【講義】竹岡倫示:流転する国際秩序 ― パクスなき世界―

2022年11月24日 東京経済大学教室にて、竹岡倫示氏(左)VS 周牧之

編集ノート:
 東京経済大学の周牧之教授の教室では、リアルな学びの一環として第一線の経営者やジャーナリスト、官僚らをゲスト講師に招き、グローバル経済社会の最新動向を議論している。十数年来、日本経済新聞社の竹岡倫示氏は毎年のゲスト講義で世界情勢の最新動向を話してきた。2022年11月24日(木)の講義では、漂流する国際秩序、中国共産党大会のねらい、バイデン政権の国家安全保障戦略などについて解説した。


■ 激動する多極世界への移行


 2022年は多くの偉人が旅立った年でもあった。

 まず挙げられるのがミハイル・ゴルバチョフ氏(2022年8月31日逝去、91歳)だろう。旧ソ連で「ペレストロイカ」(立て直し)、「グラスノスチ」(情報公開)と呼ばれる改革を断行、西側との平和共存を目指す「新思考外交」を展開した。旧ソ連最後の指導者として東西冷戦を終結させたほか、ベルリンの壁を1989年に崩壊に導き、東西ドイツ統合に道を開いた。冷戦の終結、中距離核戦力(INF)廃棄条約の調印、共産圏の民主化などを理由に1990年、ノーベル平和賞を受賞した。

 エリザベス英女王(2022年9月8日逝去、96歳)は在位70年7カ月。第2次世界大戦後の英国史をほぼ全て見守った。1952年に25歳で即位した時は、英国が第2次世界大戦に勝利したものの、世界の覇権国の地位を米国に譲りつつあった時期だった。当時の首相はチャーチル氏で、以来、トレス氏まで計15人の首相が仕えた。「君臨すれども統治せず」の伝統の下、政治への直接関与は避けつつ、かつての威光が陰る戦後の英国を一貫して見守ってきた。国民から絶大な支持と尊敬を集め、歴史的な難局では常に国民に寄り添ったメッセージを発し続けた。

 安倍晋三・元首相(2022年7月8日逝去、67歳)は首相通算在任日数が3,188日と最長だった。アベノミクス(大胆な金融政策、機動的な財政出動、民間投資を喚起する成長戦略)を主導したほか、外交面では「地球儀を俯瞰する外交」という理念を掲げ、世界の各地域で日本が主体的な役割を担う外交を展開した。2016年には、自由と民主主義に基づく国際秩序の維持を目的とした「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)構想を提唱。後に米トランプ政権が採用した。集団的自衛権を行使できるようにする安保関連法を成立させた。

 これら冷戦前後を代表する指導者の逝去は、大きな秩序の変化を感じさせる。

 ここで覇権の移り変わりを振り返ってみたい。

 1~2世紀ごろのローマ帝国の五賢帝時代はパクス・ロマーナと呼ばれた。領土内では水道や道路などのインフラが整えられ年が発達、人々は繫栄を謳歌した。13~14世紀のパクス・モンゴリカではモンゴル帝国がユーラシア帝国を支配、東西の交易が盛んになった。19~20世紀初めのパクス・ブリタニカは、産業革命をいち早く進めた英国が経済力と軍事力を背景に、世界に植民地を開いた。そして2度の世界大戦を経て覇権はアメリカへ(パクス・アメリカーナ)。今はパクスなき多極世界、もしくはパクス・シニカ(中華治世)への変動期か?

■ 第20回中国共産党大会の真の意義


 その中国では2022年10月、共産党の指導体制や基本方針を定める最高意思決定機関、党大会が開かれた。続く1中全会(第20期中央委員会第1回全体会議)では、党大会で選ばれた中央委員が最高指導部の政治局常務委員7人、政治局員24人を選出。中央軍事委員会の人事も決定した。

 党大会では冒頭に党トップの総書記(すなわち習近平氏)が過去5年を振り返り、将来を展望する活動報告をする。ここで習氏が何を語ったかは非常に重要な意味合いをもつ。

 過去5年の回顧では、小康(ややゆとりある)社会の全面的完成という第1の100年目標を達成したと強調。また、人民中心の発展思想を貫き、「共同富裕(ともに豊かになる)」が新たな成果を収めたと指摘した。

 続いて、共産党の使命として、社会主義現代化強国の全面的完成という第2の100年の奮闘目標を実現すること。また、2035年までに社会主義現代化を基本的に実現し、今世紀半ばまでに社会主義現代化強国を築くこと。中国式現代化によって中華民族の偉大な復興を全面的に推し進めることを掲げた。これからの5年間は、社会主義現代化国家の全面的な建設が始まる重要な時期であり、最悪の事態も想定した思考を堅持しなくてはいけないと主張した。

 国家建設の方針としては、製造強国・品質強国・宇宙強国・交通強国・インターネット強国・「デジタル中国」の建設を加速すると述べた。ハイレベルの科学技術の自立自強の早期実現を目指すほか、基幹的な核心技術の争奪戦に必ず勝利し、自主イノベーションの能力を高めるとした。台湾を巡っては、平和的統一の未来を実現しようとしているが、決して武力行使の放棄を約束せず、あらゆる必要な措置をとるという選択肢を残した。

2022年11月24日 東京経済大学教室にて、講義を行う竹岡倫示氏

 また、中央宣伝部の孫業礼副部⾧が先進国パターンとの違いを解説したように、「中国式現代化」が強調された。これは以下の5点からなる。

 ① 巨大な人口規模の現代化
 14億人を上回る人口規模や資源・環境上の制約の大きさゆえ、中国の現代化は外国のモデルを踏襲するわけにはいかず、発展の道と推進の方法において自らの特徴を持たねばならない。これほど大規模な人口の現代化は、困難さと複雑さが前例のないもので、その意義と影響も前例のないものとなる。人類社会への多大な貢献でもある。

 ② 全ての人々が共同富裕の現代化
 これは中国の特色ある社会主義制度の本質によって決定づけられるものであり、我々は二極分化のパターンを受け入れるわけにはいかない。

 ③ 物質文明と精神文明の調和のとれた現代化 
 過去の一部の国々の現代化の重大な弊害は、物質主義の過度の膨張であった。

 ④ 人と自然の調和のとれた共生の現代化

 ⑤ 平和的発展の道を歩む現代化
 戦争、植民、略奪などの手段で現代化を実現したかつての一部の国々の道は歩まない。

■ 米国の警戒とバイデン政権の国家安全保障戦略


 米国は中国の長期戦略に警戒を隠さない。その戦略の1つ、「中国製造2025」は中国の先端産業、製造業を世界トップレベルに引き上げる長期計画であり、2015年5月に中国政府が行動綱領を打ち出している。

 目標として2015~25年に製造強国の列に加わり、25~35年に製造強国陣営の中等水準に到達する、35~49年に製造強国の前列に入りグローバル世界を引っ張る技術と産業体系を作り上げることを掲げる。

 米国の警戒の証拠として、米通商代表部(USTR)は、制裁対象候補リストの品目に関して「『中国製造2025』に基づいて特定した」と説明したことが挙げられる。具体的には産業用ロボットや工作機械、航空機・部品、通信衛星、船舶・タンカー、タービン、発電機、農業・林業機械、化学品、超音波診断装置、カテーテルなど医療機器が含まれる。トランプ政権時代の2019年9月には、米中二大貿易大国が平均20%超の高関税をかけ合っていた。

 また、バイデン政権は2022年10月に国家安全保障戦略を発表した。

 ①(中ロを念頭に) 「独裁者は民主主義を弱体化させ、国内での抑圧と国外での強制による統治モデルを広げようとしている」

 ②「我々は、ルールに基づく秩序が世界の平和と繁栄の基礎であり続けなければならないという基本的な信念を共有するいかなる国とも協力する」

 ③ 北大西洋条約機構(NATO)、米英豪の安全保障の枠組み「オーカス」、日米豪印の「クアッド」に触れて、「侵略抑止だけでなく、国際秩序を強化する互恵的な協力の基盤だ。米国や同盟・パートナー国への攻撃や侵略を抑止し、外交や抑止に失敗した場合に国家の戦争に勝利する準備をする」

 ④(台湾について) 『いかなる一方的な現状変更にも反対し、台湾の独立を支持しない。「一つの中国」政策を堅持し、台湾関係法に基づく台湾の自衛力維持を支援する』

■ 「トゥキディデスの罠」は回避できるか?


 これらが骨子となる一方、世界の経済成長の約60%はアジア、30%は中国が寄与しており、単純な対立構造という見方も正確ではない。

 米国はFIVE EYESと呼ばれる米英カナダ豪ニュージーランドの枠組みや、日本やインドが参画するQUAD、米英豪のAUKUSなど、軍事・安全保障の体制を積み重ねている。同時に中国との直接対話も続けている。2022年11月の米中首脳会談は対面では3年5カ月ぶりとなり、衝突回避への対話を継続することで一致した。

 より具体的には衝突回避、気候変動や食糧問題などの課題解決に向けた高官対話の維持、ウクライナでの核兵器使用と仕様の威嚇への反対では一致。台湾問題や米国の輸出規制、中国の人権問題などは相違点として残った。

 今後は「トゥキディデスの罠」をどう回避するかが重みを増す。古代ギリシャ時代の約2500年前、トゥキディデスは台頭するアテネと覇権を握るスパルタの間で長年にわたって戦われた「ペロポネソス戦争」を記録し、「アテネの台頭と、それによってスパルタが抱いた不安が、戦争を不可避にした」と記した。

 新興国が覇権国に取って代わろうとするとき、2国間で生じる危険な緊張の結果、戦争が不可避となる状態を、米ハーバード大学教授で国際政治学者のグレアム・アリソンは「トゥキディデスの罠」と呼んだ。過去500年の歴史で新興国が覇権国の地位を脅かしたケースは16件あり、うち12件が戦争に発展し、戦争を回避できたのは4件だけだったという。


プロフィール

竹岡倫示 (たけおか りんじ)
日本経済新聞社 客員

 1956年生まれ。1980年横浜国立大学経済学部卒、日本経済新聞社に入社後、バンコク支局長、東京本社編集局経済部次長、中国総局長、国際本部アジア担当部長、東京本社編集局次長、常務執行役員、専務執行役員を歴任。


【フォーラム】南川秀樹:コミュニケーションの場としてのエンタメを

ディスカッションを行う南川秀樹・元環境事務次官

 東京経済大学は2022年11月12日、学術フォーラム「供給サイドから仕掛ける地域共創の可能性」を開催、学生意識調査をベースに議論した。和田篤也環境事務次官、中井徳太郎前環境事務次官、南川秀樹元環境事務次官、新井良亮ルミネ元会長をはじめ産学官のオピニオンリーダー16人が登壇し、周牧之ゼミによるアンケート調査をネタに、新しい地域共創の可能性を議論した。南川秀樹・元環境事務次官がセッション1「集客エンタメ産業による地域活性化への新たなアプローチ」のコメンテーターを務めた。

▼ 画像をクリックすると
セッション1の動画が
ご覧になれます


学術フォーラム「供給サイドから仕掛ける地域共創の可能性」
セッション1:集客エンタメ産業による地域活性化への新たなアプローチ

会場:東京経済大学大倉喜八郎進一層館
日時:2022年11月12日(土)


■ 供給サイド自らの「仕掛け」で


 東京経済大学に足を運ぶのは大変久しぶりで、非常に喜んでいる。と言うのは、5 年間、 こちらで客員教授を務め、毎週通っていた。もちろん授業はしっかりやるが、キャンパスの 新次郎池を降りて野川沿いを走るということも日課としていた。元陸上競技選手としても 楽しく過ごすことができた。

 さて、周ゼミ生が「仕掛け」たアンケートに非常に感銘を受けた。アンケートというもの は単純にニーズを調べればいい訳ではない。工夫を積み重ね、提言にまで作り込んでいかな ければならないが、それが十分に果たされていたためだ。

 個人的に観光は非常に重要な産業だと考えている。観光というと遊びのような感覚があ るが、知らない土地に出かけていって交流し、人生を豊かにする機能がある。私事ながら私 は四日市出身で、伊賀生まれの松尾芭蕉は土地の著名人として中学生のころから奥の細道 を暗唱させるなどの活動があった。その芭蕉も江戸にいて俳人として名をなしたにも関わ らず、晩年を旅に過ごし、安穏とせず俳句の革新を目指した。芭蕉すら甘んじることなく磨 かれていった。それが旅のもつ機能だと考えている。

 先日、熱海に足を運んだ。秋、冬にも花火大会を催しているので見に行こうと考えた。花火を鑑賞し、駅前の仲見世通りや一帯がきれいに作り替えられていて、様々な人を呼び込む企画にも事欠かなかった。東京からでも名古屋からでも日帰りでも楽しめる街になっていた。熱海のような街は供給サイドから自ら「仕掛け」、整備していかないと作れない。

 せっかく東経大で議論しているのだから、やはり東経大のためにならなければいけない。さらには、国分寺地域全体として、スポーツなり、エンタメの世界なり、もちろん、バーチャルの世界もあると思うが、より活性化できる仕掛けは何か、国分寺市民であること、あるいは東経大の学生であることが誇りに思える仕掛けは何か、に知恵を出していかなければならない。

第1セッション・ディスカッション風景

スポーツもエンタメもコミュニケーションが大切


 私もスポーツ自身がエンタメの一部だと思っている。ただ、地域にとっては単に人が集まっていればいいのではなくて、そこにいることによって心のコミュニケーションができることが必要だ。2週間前に実は水戸マラソンを走った。8,000人以上の人が集まって、町の中をずっと音を立てながら走り回った。あれこそコミュニケーションだなと強く感じた。

 私自身は毎週、代々木の織田フィールドで走っている。必ず居られるのが目の悪い方が伴走者で一緒に走っている。それから足の悪い方が義足を履いて走っておられる。それで皆さん1人で来ても、一緒に会うと楽しそうに話の輪ができる。とても大事なことだ。それがひとつ大きな生きがいとなっている。その方達と僕もよく話すが、とても明るく、最初来た時に戸惑っていた人が随分変わってきている。とても嬉しい。ただ、それはなかなか陸上ランニング以外の競技では難しいようだ。もっと広げたいと思う。

 スポーツクラブは地域社会の核となる存在だ。例えばスポーツクラブで同じエクササイズをとっている人同士が親しくなり、非常に頻繁にコミュニケーションができ、言ってみれば家庭以外あるいは職場以外のところで仲間ができる。そういったことが大事かと思う。

 現代は、かつてのように農業を通じ、否応なしに地域の中で生きるしかないという世界ではなくなった。そういう意味では仕事を離れ、心が通い、癒せる、コミュニケーションができる仲間を、スポーツクラブなどで得ることは大変貴重だ。それが、実際に可能性があって働いているのかどうかにも関心がある。

 エンタメも同じだ。私自身も寄席が好きでよく寄席に行くが、やはりそういったところでいつも会う人というのは、結構気が合う。そういった場であってほしい。

ディスカッションを行う南川秀樹・元環境事務次官(左)と吉澤保幸・場所文化フォーラム名誉理事(右)

■ 人材育成の場作りを


 最後に人材育成、場所作りを挙げたい。「仕掛け」を作れる人材の育成は欠かせない。今日のフォーラムにも参加したユナイトスポーツは東京五輪の中で、例えばマラソンの開催地が変わるような出来事があるなかで、やり遂げたことは非常に重要なことだ。ここで育った人材は他の所でも活躍できる。また、先ほど挙げたスポーツクラブは大事で、人材にとっては平時の収入源にもなる。

 それから、スポーツもエンタメもその表舞台に立つ人とその舞台を作る人がいて、要はその両方がある。プレーする、それを支える、両方あって初めて大きな大会ができる。両方を経験する人をできるだけ増やしたい。そういう人が企業マインドを持ち、新しい産業を起こすことによってある種の実効性がありアニマルスピリッツのあるアントレプレナーができると私は思う。エンタメもスポーツも、プレーし、支え、の両面から応援していかなければならない。


プロフィール

南川秀樹 (みなみかわ ひでき)
東京経済大学元客員教授、日本環境衛生センター理事長、中華人民共和国環境に関する国際協力委員、元環境事務次官

 1949年生まれ。環境庁(現環境省)に入庁後、自然環境局長、地球環境局長、大臣官房長、地球環境審議官を経て、2011年1月から2013年7月まで環境事務次官を務め、2013年に退官。2014年より現職。早稲田大学客員上級研究員、東京経済大学客員教授等を歴任。地球環境局長の在職中は、地球温暖化対策推進法の改正に力を尽くした。また、生物多様性条約の締約国会議など多くの国際会議に日本政府代表として参加。現在、中華人民共和国環境に関する国際協力委員を務める。

 主な著書に『日本環境問題 改善と経験』(2017年、社会科学文献出版社、中国語、共著)等。


■ 関連記事


【フォーラム】学術フォーラム「供給サイドから仕掛ける地域共創の可能性」

【フォーラム】和田篤也:戦略的思考としてのGXから地域共創を

【フォーラム】内藤達也:地域資源の活用で発信力を

【フォーラム】白井衛:エンタメで地域共創を

【フォーラム】吉澤保幸:集客エンタメ産業で地域を元気に

【フォーラム】中井徳太郎:分散型自然共生社会を目指して

【フォーラム】鑓水洋:地域活性化策には明確なコンセプトが求められる

【フォーラム】新井良亮:川下から物事を見る発想で事業再構築

【フォーラム】前多俊宏:ルナルナとチーム子育てで少子化と闘う

【フォーラム】高井文寛:自然回帰で人間性の回復を

【フォーラム】笹井裕子 VS 桂田隆行:集客エンタメ産業の高波及効果を活かした街づくりを

【フォーラム】吉澤保幸:集客エンタメ産業で地域を元気に

司会を務める吉澤保幸・場所文化フォーラム名誉理事

 東京経済大学は2022年11月12日、学術フォーラム「供給サイドから仕掛ける地域共創の可能性」を開催、学生意識調査をベースに議論した。和田篤也環境事務次官、中井徳太郎前環境事務次官、南川秀樹元環境事務次官、新井良亮ルミネ元会長をはじめ産学官のオピニオンリーダー16人が登壇し、周牧之ゼミによるアンケート調査をネタに、新しい地域共創の可能性を議論した。吉澤保幸・場所文化フォーラム名誉理事がセッション1「集客エンタメ産業による地域活性化への新たなアプローチ」の司会を務めた。

▼ 画像をクリックすると
セッション1の動画が
ご覧になれます


東京経済大学・学術フォーラム
「供給サイドから仕掛ける地域共創の可能性」

会場:東京経済大学大倉喜八郎進一層館(東京都選定歴史的建造物)
日時:2022年11月12日(土)13:00〜18:00


「集客エンタメ産業」という言葉を作ったわけ


 学術フォーラムの「供給サイドから仕掛ける地域共創の可能性」、そのセッション1として「集客エンタメ産業による地域活性化への新たなアプローチ」という話をしたい。この集客エンタメ産業という言葉自身も、実はコロナ禍で生まれてきた言葉だ。

 これまでは、ぴあでいうとライブエンターテインメントという言葉だけを使っていた。今回のコロナによって文字通りの供給サイドが止まったわけだが、そのときに一番悲鳴を上げたのが、先ほど学生の方々がいった映画館で上映できないことだ。スポーツもJリーグも含めて試合ができなくなった。

 これでは困るということで、昨年の正月にJリーグの村井満チェアマンが弊社に来た。何とかしないと、コト消費の権化である集客エンタメ産業、人々の心を支えるものがなくなってしまう。ライブエンターテインメントだけではなく、スポーツ・映画等も含めてさまざまな人々の心を支え、人々が集まる産業としての集客エンタメ産業という言葉を作って、ようやくコロナ禍がある程度平準化する中で、人々がそこに集うような反動増が生まれるぐらいにまた盛り上がってきたというのが、この集客エンタメ産業というものだ。

 供給サイドが止まったことの一番の象徴は、2020オリンピック・パラリンピックだったろうと思う。それから1年遅れて、札幌でマラソンがあった。

 集客エンタメ産業による地域活性化を、どういったアプローチで実現できるだろうか。ぴあ総研と日本政策投資銀行で昨年共同研究をした。地域に及ぼす効果というのは、経済的効果だけではなくて、さまざまな社会的効果がある。

 ぴあは今年創業50周年ということで1972年、映画好きの大学生が起業したベンチャーだった。何もない中で、お金も人脈もない中で、何とか乗り越えて50年やってきた。ぴあのパーパスは「ひとりひとりが生き生きと」という言葉だ。そういう社会を作りたい。一人ひとりが生き生きと、それでみんな豊かになる社会を作りたい。

 これは文字通りSDGsの「誰一人取り残さない」という言葉といわば同値かなと我々は思っている。そういう中で集客エンターテインメントを通じて、どういう豊かな社会を作っていけるのか。ぴあ社全体としての課題であり、集客エンタメ産業の課題でもあると思っている。

 ちょうどこの5月、「集客エンタメ産業による日本再生の意義」と題して300人ぐらいの方に集まってもらい、シンポジウム等を開いた。都倉俊一文化庁長官、元Jリーグの川淵三郎チェアマン等々、お歴々にいろいろな話をしてもらい、金融と集客エンタメ産業の繋がりを中曽宏大和総研理事長にも話してもらった。

第1セッション・ディスカッション風景

■ 集客エンタメ産業で国分寺を魅力的に


 私は過去に国分寺に通ったことがあり、もったいないと思ったのが、国分寺の跡地のスペースだ。副市長が活用して、イベントをやられたのは大変大きな一歩じゃないか。あそこで多分、今、リアルとバーチャルの融合からすると、例えばぴあが始めているXRLIVEは考えられる。アニメのキャラクターとリアルを融合させライブ配信するのだが、ああいった跡地で、テントでもいいから、そういう場所を作れるのではないか。

 国分寺市民あるいは東経大の学生のイベントをやるとか。そういう形でひとつ集客の場を、市から借りて作っていくとか、単なるリアルだけじゃなく、DXを使うともっとできるのではないか。

 自然の中で楽しめる場ができると、自然の豊かさにも気づく。先ほどの周ゼミ学生のアンケートでは、「都会に住みたい」と「地域に住みたい」、「自然の豊かさ」と「娯楽」がまるで代替財のようになっている。こっちができるとこっちができないみたいな世界だが、これがぜひいい補完財のように、一緒に楽しめる場を作ってやることができないか。中央線沿線の中では国分寺は非常にいいポジションにある。なぜなら自然が豊かで、跡地も残っている。それをうまく活用していくといいのではないかと考えている。

ディスカッションを行う南川秀樹・元環境事務次官(左)と吉澤保幸・場所文化フォーラム名誉理事(右)

 前述したシンポジウム「集客エンタメ産業による日本再生の意義」で川淵チェアマンが熱く語ったのは、Jリーグを立ち上げる時に、鹿島アントラーズが手を挙げてきた。その時に3万人規模の世界じゃ無理だろう、鹿島町で町民も地元企業も行政も、そしてリーグもみんな協力し合って、そして5万キャパのスタジアムができたら、Jリーグに入れてあげると言った。絶対に無理だろうと(川淵氏は)思ったのだそうだが、なんとそれを解決してしまった。

 そして今、Jリーグの中で一番地域と密着に動いているのは鹿島アントラーズ。そういう歴史もある。だから、地域で行政と市民と、そして企業が合体していくと、スポーツということを一つのきっかけにできる。さらに、川淵氏はスポーツだけではダメだと。他のエンターテインメントを結びあうことによって、スタジアムを本当に活かす。これはある意味では新結合世界だと思うのだが、そういうことを提唱して動いている。

 なので、絶対にこの国分寺で解決策は出てくるだろうと思っている。一例として、里山スタジアム構想を紹介する。元日本代表の岡田武史氏が10年かけているプロジェクトだが、岡田氏はコミュニティをつくりたいのだと。さまざまな文化、芸術、食、農業、さらには福祉の場。これを作りたいと。だから、社会福祉法人の方々、足の悪いリハビリをしないといけないような方々が集まれる場所もスタジアムの横に作ると。これが実は目的だといっている。

 フットボール事業は一つのコアの事業だが、次世代教育、地方創生をハイブリッドでやって、今治にあるが、今治にとらわれないコミュニティづくりだと語っている。

 さらにもう一つだけ。スタジアム、エンターテインメントは極めて環境負荷が小さい産業である。だから、同時に成長の分野でもある。2030年あるいは2050年を目指す中で、特に脱炭素も含めた産業としての意味で、ぜひもり立てていきたい。

■ すべての老若男女が集える場作りを


 スポーツでは、障がい者スポーツが今後、極めて大事になると感じている。元財務次官の真砂靖氏が理事長を務める、全国盲ろう者協会という組織がある。盲ろう者がスポーツをする、喜びを得る機会は非常に限られている。何とかもっとサポートできないか。障がい者スポーツを地域活性化に絡められないか。SDGsとして抜け落ちてしまうのが、本当の弱者の方々である。この方々が健常者と一緒にどうやって結びあうか。それを地域の活性化の中に織り込んでいく必要がある。

 オリパラの事務総長だった武藤敏郎氏が、今後日本で国際的なイベントを成功させるための必要条件を3つ挙げている。ひとつはそのイベントがサステナビリティに合致しているかどうか。ふたつにはダイバーシティアンドインクルージョンに合致しているかどうか。そして三つ目にはジェンダー平等であるか。それによってすべての老若男女が集まって、集える場所を作り、そして集える繋がりを作る。それが集客エンタメ産業の意義だと思っており、場を提供するのが地域ではないのかと、強く感じている。これは地域創生をしていくために必要な条件ではないかと思う。


プロフィール

吉澤 保幸(よしざわ やすゆき)
場所文化フォーラム名誉理事、ぴあ総研(株)代表取締役社長

 1955年新潟県上越市生まれ、東京大学法学部卒。1978年日本銀行に入行、日本銀行証券課長など歴任。2001年ぴあ(株)入社、現在同社専務取締役。
 場所文化フォーラム代表幹事、ローカルサミット事務総長などを歴任し、地域の活性化に尽力。
 主な著書に『グローバル化の終わり、ローカルからのはじまり』(2012年、経済界) 等。


■ 関連記事


【フォーラム】学術フォーラム「供給サイドから仕掛ける地域共創の可能性」

【フォーラム】和田篤也:戦略的思考としてのGXから地域共創を

【フォーラム】内藤達也:地域資源の活用で発信力を

【フォーラム】白井衛:エンタメで地域共創を

【フォーラム】南川秀樹:コミュニケーションの場としてのエンタメを

【フォーラム】中井徳太郎:分散型自然共生社会を目指して

【フォーラム】鑓水洋:地域活性化策には明確なコンセプトが求められる

【フォーラム】新井良亮:川下から物事を見る発想で事業再構築

【フォーラム】前多俊宏:ルナルナとチーム子育てで少子化と闘う

【フォーラム】高井文寛:自然回帰で人間性の回復を

【フォーラム】笹井裕子 VS 桂田隆行:集客エンタメ産業の高波及効果を活かした街づくりを

【コラム】周牧之:中国のメガロポリス政策につながった開構研での下積み

周牧之 東京経済大学教授

『UEDレポート 研究所が歩んで来た半世紀をふりかえる』、一般財団法人 日本開発構想研究所、2022年

編集ノート:財団法人日本開発構想研究所は1972年7月に設立され、今年2022年に50周年を迎えた。日本の国土政策、東京湾臨海地域開発などにおいて数多くの知的貢献を果たした。同研究所の50周年記念で発行されたレポート『研究所が歩んで来た半世紀をふりかえる』に東京経済大学の周牧之教授が寄稿し、若き日の下積み時代と中国の都市化政策における日中政策協力について回顧した。


 大学院修士課程を終える時、私の政策研究志向をあと押ししようと、東京経済大学の増田祐司教授が日本開発構想研究所を紹介してくださった。

 中国の国土政策、都市政策へ私が多少なりとも力を果たせたとすれば、それは日本開発構想研究所で経験した調査活動から得られた知の蓄積が土台になったことに間違いはない。

1.東京湾臨海部調査で受けた刺激


 阿部和彦さんが増田先生とは東京大学の同窓だったこともあり、1991年4月、私はたいへん温かく研究所に迎えられた。

 開構研で、「臨海工業地域活性化戦略事業」、「川崎臨海部産業整備調査」、「東京湾地域における総合利用と保全に関する調査」、「東京湾南西地域総合再生計画調査」、「東京湾超長期ビジョン策定基礎調査」、「川崎臨海部将来像の在り方に関する調査」、「京浜臨海部再編整備調査」など東京湾関連調査に参加したことが、私の後の研究活動に大きな影響を及ぼした。とりわけ臨海部の企業を数多くヒアリングし、「工場等制限法」のもとでも企業が歯を食いしばるようにして湾岸部にへばりついていた理由をリアルに聞けたことが、大変刺激的だった。   

 中国機械工業部(省)で、新日鉄の君津製鉄所をモデルにした宝山製鉄所プロジェクトに携わっていた私は、臨海部の立地メリットに関心が高かった。宝山製鉄所建設にあたり長江入り江の臨江部に何故立地するかの論争があり、一時期、建設がストップさせられた程であった。開構研での調査は、臨海部における産業集積の性格と重要性を理解するまたとない経験であった。後年私が珠江デルタ、長江デルタ、京津冀など中国の臨海部でグローバルサプライチェーンをベースとした大集積の形成を前提とする「メガロポリス政策」を提唱したのは、まさにこうした調査から得られた確信があったからだ。

 当時はデータベースのソフトもようやく使えるようになった時期で、「桐」という名のデータベースソフトを使い、日経テレコムの新聞検索を利用し東京湾臨海部の企業動向をデータベース化した。これによって臨海部の動きがはっきりわかるようになった。この経験で、私は基礎情報のデータベース化の重要性を強く意識するようになった。後年、中国の297都市をすべて網羅する評価システム『中国都市総合発展指標』を作った遠因のひとつだと思う。

 Windowsが発売され、Word、123、エクセルなどのソフトが普及し始めたころだ。開構研のレポート作成はまだ、専用のワープロでタイピストに打っていただく状況だった。研究所の中で初めてパソコンでレポートを仕上げたのはおそらく私だっただろう。パソコンに大変詳しい杉田正明さんに助けていただきながら取り組んだことが、懐かしく思い起こされる。最新のカラー液晶付き折りたたみ式のパソコンも購入していただいた。しかし重さが10キロを超えていたため携帯用といっても自宅には一度しか持って帰れなかった(笑)。

 開構研で仕事をしながら週に一度東京経済大学に行き、野村昭夫教授へレジュメを出して指導を受ける生活を送っていた。こうした生活を3年ほど続け、博士論文の最終仕上げのために退職した。『メカトロニクス革命と新国際分業―現代世界経済におけるアジア工業化』と題した博士論文を、日本の臨海工業地帯における産業変遷の研究をベースに、東アジアの工業化の性格が情報革命に触発された新国際分業のもと展開されたとする仮説でまとめた。同論文は1997年、ミネルヴァ書房で出版し、日本テレコム社会科学賞奨励賞を受賞した。

『メカトロニクス革命と新国際分業』

周牧之著『メカトロニクス革命と新国際分業―現代世界経済におけるアジア工業化』(ミネルヴァ書房、1997年)

2.楽しかった開構研の日々


 開構研所在地だった霞が関、虎ノ門、日比谷周辺での昼食時は、さまざまなテーマで議論した。仕事後も杉田さんは若い所員を集めて勉強会を開いていた。日本経済、世界情勢の話から、マルクスなど古典を含む経済書の読書会まで、実に幅が広かった。しかしその勉強会のメンバーは次々と脱落し、最後まで残ったのは杉田さんと私だけだった(笑)。

 新橋あたりでの秋山節雄さん、大場悟さん、本多立志さんとの飲み会も大変楽しかった。情緒あふれる飲み屋さんで延々と続く話……意識朦朧のなか帰宅したものだ。

 毎年行われていた研究所の所員旅行にも同行させていただいた。浦東開発が始まったころに行った上海で阿部さんが、著名な哲学者であられるご尊父阿部吉雄先生のご著書を、私の父に手渡してくださった。ふるさと中国を離れ留学後も引き続き日本で暮らす私のことを、父は「阿部さんとお目にかかって安心した」と喜んでいた。

 私の結婚を祝う会を杉田さんの呼びかけと名司会、そして開構研所員の皆さま全員のご参加で、開いていただいた。大変心温まる嬉しい会だった。おかげさまで銀婚式も超えて、我が家の日中関係はいまだ磐石です(笑)!

 理事長の本城和彦先生には結婚祝いとして霞が関ビル最上階のレストランで妻共々ご馳走にあずかった。本城先生は、国際協力事業団(JICA)が中国で実施した初めての地域総合開発調査「海南島総合開発計画調査」の団長を務められた。後に私は中国で実施された同スキームの2回目の「江西省九江市総合開発計画調査」に関わり、その後同スキームの「吉林省地域総合開発計画調査」を始め、「中国中小都市総合開発ガイドライン策定調査」、「中国郷村都市化実験市調査」、「中国西部地域中等都市発展戦略策定調査」など案件形成と実施を、実質主導した。

 開構研初代理事長の向坂正男氏は、改革開放政策実施直後、中国政府の要請で大来佐武郎氏、下河辺淳氏とともに中国に数多くの経済政策や国土政策のアドバイスをされた。私が開構研に入った時はすでに鬼籍に入られていた向坂氏との面識はない。振り返れば中国の国土政策には開構研に繋がるさまざまな方が関わった。

3.中国メガロポリス政策作りへの協力


 1992年に財団法人国際開発センターから中国調査の手伝いの誘いを受けた際、阿部さんが快く承諾してくださったことが、私がODAの仕事に携わるきっかけとなった。博士号取得後、国際開発センターで中国の都市化政策調査を実施した折、開構研の関係者の皆様に大きな力添えをいただいた。

 開構研で知り合った今野修平大阪産業大学教授は、私が中国で取り掛かった都市化調査に数多くのアドバイスをし、現地調査やシンポジウムに度々参加してくださった。今野先生は、私がメガロポリス政策を打ち立てる時の一番の相談相手だった。メガロポリス政策は、今野先生との議論から生まれたといっても過言ではない。

1999年10月6日江蘇省現地調査にて左から今野修平、周牧之

 JICA中国都市化調査の集大成として主編した『城市化―中国現代化の主旋律(Urbanization―Theme of China’s Modernization)』(湖南人民出版社、2001年)に今野先生は阿部さんと共に寄稿された。中国の都市化に関する今野先生と私との対談は拙著『托起中国的大城市群(Megalopolis in China)』(世界知識出版社、2004年)に掲載した。

『城市化―中国現代化の主旋律』と中国メガロポリス戦略イメージ図

周牧之主編『城市化:中国現代化的主旋律 (Urbanization: Theme of China’s Modernization)』(湖南人民出版社、2001年)

 今野先生のご紹介でお目にかかった星野進保元経済企画事務次官にもさまざまな薫陶を受けた。星野先生の事務所に何度も呼ばれて議論を重ね、しばしばご馳走にまでなった。私が企画したシンポジウムにも幾度もご登壇いただいた。星野先生、今野先生との議論から、私は確信を持ってメガロポリス政策を提案することができた。私が主編した『大転折(The Transformation of Economic Development Model in China )』(世界知識出版社、2005年)には星野先生、塩谷隆英元経済企画事務次官がともに寄稿してくださった。

『托起中国的大城市群』と『大転折』

左:周牧之著『鼎―托起中国的大城市群(Megalopolis in China)』(世界知識出版社、2004年) 、右:周牧之編著『大転折―解読城市化与中国経済発展模式(The Transformation of Economic Development Model in China)』(世界知識出版社、2005年)

 拙著『中国経済論―高度成長のメカニズムと課題』(日本経済評論社、2007年)には、星野先生、楊偉民中国国家発展改革委員会副秘書長らと私の「中国メガロポリスの発展と東アジア経済」と題したディスカッションを掲載した。

『中国経済論』日本語版と中国語版

左:周牧之著『中国経済論―高度成長のメカニズムと課題』(日本経済評論社、2007年)、右:周牧之著『中国経済論―崛起的机制与課題 (The Chinese Economy: Mechanism of its rapid growth)』(人民出版社、2008年)

 アンチ都市化政策が採られていた中国で、都市化政策そしてメガロポリス政策を進めるべく政策提案を打ち立てることは実に大変だった。JICA中国事務所の櫻田幸久所長の全面的な支援を受け、于光遠元中国社会科学院副院長ら大御所のバックアップで、中国国家発展改革委員会の楊朝光地区経済司副司長、杜平国土開発与地区経済研究所長らとともに綿密な調査を重ねた。2001年9月3日、同7日に、中国国家発展改革委員会と日本国際協力事業団の主催で、上海と広州の二カ所で「中国都市化フォーラムーメガロポリス発展戦略」を大々的に開催した。

2001年9月3日「中国都市化フォーラムーメガロポリス発展戦略」上海会場

 清成忠男法政大学総長、伊藤滋早稲田大学教授、増田先生、阿部さん、林孝二郎元国土庁大都市圏整備課長らも日本から駆けつけ登壇された。シンポジウム後、メガロポリス政策が一夜にして中国の政策議論の的になった。

China faces challenges in urbanization

2001年9月3日「中国都市化フォーラムーメガロポリス発展戦略」開催当日、チャイナデイリー掲載の周牧之:China faces challenges in urbanization

 その後、メガロポリス戦略については五カ年計画策定担当の中国国家発展改革委員会計画司(局)楊偉民司長との間で現地調査、議論及び専門家会議を重ねた。とくに財務省、国際協力銀行、日中産学官交流機構の協力を得て開かれた「都市創新ワークショップ」の東京会議、北京会議、長江船上会議や、日中産学官交流フォーラム「転換点に立つ中国経済と第11次五カ年計画」、「中国のメガロポリスと東アジア経済圏」で、国土政策における日本専門家を大勢集め、中国国家発展改革委員会発展計画司と、メガロポリス政策に関する意見交換を頻繁に持った。

産学官交流機構フォーラム報告書

報告書『都市創新ワークショップ議事録』、『日中産学官交流フォーラム:転換点に立つ中国経済と第11次五カ年計画』、『都市創新ワークショップ:中国のメガロポリス・ビジョンとインフラ構想研究会(長江船上会議)』、『日中産学官交流フォーラム:中国のメガロポリスと東アジア経済圏』

 上記のワークショップやシンポジウムに日本側から星野進保元経済企画事務次官、福川伸次元通商産業事務次官、保田博元財務次官、塩谷隆英元経済企画事務次官、林正和元財務次官、佐藤嘉恭元中国大使、安斎隆セブン銀行社長、大西隆東京大学教授、寺島実郎日本総合研究所会長、小島明日本経済研究センター会長、船橋洋一朝日新聞社コラムニスト、横山禎徳マッキンゼー元東京支社長、生源寺眞一東京大学教授、森地茂運輸政策研究機構運輸政策研究所所長、石田東生筑波大学教授、谷内満早稲田大学教授、田近栄治一橋大学教授、矢作弘大阪市立大学教授、加藤和畅釧路公立大学教授、城所哲夫東京大学助教授、木南章東京大学助教授、小手川大助財務省関東財務局長、田中修内閣府政策統括官付参事官、鵜瀞由己財務省財務総合政策研究所次長、麻生良文同研究所総括主任研究官、西沢明国土交通省国土情報整備室長、進和久全日本空輸元専務取締役、杉田正明日本開発構想研究所主幹研究員、新屋安正日本設計企画部長、大谷一朗経済政策コンサルタントらが参加し、お知恵をいただいた。中国側から現在副首相を務める劉鶴中央財経領導小組副主任をはじめ、朱之鑫中国国家発展改革委員会副主任、楊偉民同委員会発展計画司長ら大勢の政策責任者が参加した。これだけの専門家を動員した高密度の政策交流は、日中の歴史上初めてだった。

「日中産学官交流フォーラム−中国のメガロポリスと東アジア経済圏」

2006年5月11日「日中産学官交流フォーラム−中国のメガロポリスと東アジア経済圏」にて、上段左から福川伸次、楊偉民、保田博;第二段左から星野進保、杜平、塩谷隆英;第三段左から船橋洋一、周牧之、寺島実郎;第四段左から中井徳太郎、朱暁明、佐藤嘉恭;下段左から大西隆、小島明、横山禎徳

 こうした日中政策協力において、後に金融庁長官を務めた畑中龍太郎財務省大臣官房文書課長の指示を受け大変な尽力をされた中井徳太郎東京大学教授(当時財務省から出向、後に環境事務次官)の名を特記しておきたい。楊偉民氏、中井徳太郎氏、私の三人の固い友情はいまも引き続いている。楊偉民氏は現在も中国経済政策をまとめるキーパーソンの一人として活躍されている。

2019年1月26日【シンポジウム】『「交流経済」×「地域循環共生圏」—都市発展のニューパラダイム』懇親会にて左から中井徳太郎、楊偉民、周牧之

 2006年から施行の第11次五カ年計画で、メガロポリス戦略が打ち出され、中国は都市化の時代へと舵を切った。五カ年計画が空間計画に踏み込んだことで、中国国家発展改革委員会発展計画司が都市化政策を所管することとなった。楊偉民氏はさらに、「主体功能区」という中国の国土計画の原型を作り上げ、それを同司の所管とした。私の、「発展戦略和計画司」と改称された同司との交流は今日まで続き、『中国都市総合発展指標』を共同開発し、毎年発表している。

『中国都市ランキング−中国都市総合発展指標』

4.ユーラシアランドブリッジ構想から長江航路浚渫提案へ


 中国のメガロポリス戦略には、集約化経済社会、流動化社会、市民社会、持続発展可能社会というビジョンを掲げた。同調査にあたり、モデルとして「江蘇省都市化発展戦略」を策定した。これは中国で初めて省単位で策定された都市化発展戦略であった。長江下流を包む江蘇省は、グローバルサプライチェーン型産業集積形成のポテンシャルが最も高い地域であった。同戦略の中の提案は江蘇省のさまざまな計画に取り上げられた。

「江蘇省都市化発展戦略」における長江デルタメガロポリスイメージ図

周牧之主編『城市化:中国現代化的主旋律 (Urbanization: Theme of China’s Modernization)』(湖南人民出版社、2001年)

 杉田正明さんは専門家として複数の中国調査に参加し、たくさんのお知恵をいただいた。長江沿いの港湾開発調査にあたり杉田さんと議論し、江蘇省南京から入江までの航路について「マイナス12.5メートルまで浚渫する」提案をしたことを特記したい。私たちは長江の下流地域を「湾」として開発すべきであると考えていた。中国政府はこの提案を受け、マイナス12.5メートルの浚渫という大工事を実施し、今日の長江デルタメガロポリスの基礎を打ち立てた。

 江蘇省鎮江市のニューシティマスタープラン策定にも、杉田さんは参加した。大西隆先生を始め大勢の日本の専門家が現地に訪れ、お力添えをいただいた。路面電車をベースとした敷地面積220平方キロメートル、人口100万人規模のスマートシティ計画は高い評価を得て、中国の都市計画の手本となった。

江蘇省鎮江市のニューシティマスタープラン

 今野先生、阿部さんと向かった中国現地調査では、あわやという体験もした。遼寧省営口港で、止まっていた超特大ダンプカーが、私たちが乗る車が後方にいるのに気づかず、急発進でバックし始めた。ダンプカーに潰される寸前に車から逃げ降り、間一髪のところで大事故から免れた。

 1990年代末には、カスピ海から中国沿岸部までパイプラインで天然ガスや石油を運ぶことを念頭に、日本と中国の大型協力案件として、欧州から日本に至るユーラシア大陸横断の広域インフラ (ガス・石油パイプライン、鉄道、道路、光ファイバー網等)整備と沿線開発を進める構想を打ち立てた。「現代版シルクロード(絹の道)」といえるこの構想が進めば、エネルギー資源や食糧の輸送が効率化でき、それらの世界的な需給ひっ迫も防げると考えた。1999年4月1日付日本経済新聞の経済教室欄に『現代版「絹の道」、構想推進を―欧州から日本まで資源の開発・輸送で協力―』とした私の署名文書が掲載され、大きな反響を呼んだ。その直後、下河辺淳先生から「大変いい構想だ。航空路の話も是非加えるように」との鋭いご指摘をいただいた。その後のランドブリッジ構想や、メガロポリス戦略には空港の重要性を鑑みるようにした。

現代版「絹の道」構想推進を

周牧之『現代版「絹の道」、構想推進を―欧州から日本まで資源の開発・輸送で協力―』、日本経済新聞経済教室、1999年4月1日

 改革開放政策を打ち出した直後の中国で、経済政策を指揮した谷牧副首相は、国土事務次官時代の下河辺淳先生と交流があった。この交流から中国で国土計画を作る動きが生まれた。国土司(局)が中国国家建設委員会に出来、後に計画委員会へ移り、いまの中国国家発展改革委員会の地域経済司に繋がった。そうした動きの中で、中国政府はJICAに「海南島総合開発計画調査」を要請した。中国の改革開放政策には実に多くの日本の政策メーカーが貢献した。

結び


 恩師の増田祐司先生は東京経済大学から東京大学そして島根県立大学へ移られ、北東アジア地域研究センターのトップとして第一線で活躍された。日本、中国や韓国でさまざまな調査、研究にご一緒させていただいた。北京でのフォーラムに出てくださったあと、ホテルで朝まで飲んでお話ししたことが昨日のように思い浮かぶ。先生が島根県立大学を退職されるとき、私は米国ボストンに滞在していた。東京に戻ってきてから、増田先生を慕い敬う方々と一緒に、東京での先生の知的活動場となる研究所づくりに動き始めた矢先、先生ご逝去の悲報を受けた。

 いまでも、大学院生だった当時、午後の暖かい日が差す大学の図書館でばったり会ったときの増田先生の笑顔が目に浮かぶ。あの日、増田先生は私の目の前で開構研の阿部さんに電話をかけ、私を紹介してくださった。あの瞬間こそが、開構研とのご縁の始まりであった。

2001年9月7日「中国都市化フォーラムーメガロポリス発展戦略」広州会場にて。左から林孝二郎、阿部和彦、増田祐司、周牧之

(肩書きは当時)


【参考文献】

周牧之著『メカトロニクス革命と新国際分業―現代世界経済におけるアジア工業化』(ミネルヴァ書房、1997年、第13回日本テレコム社会科学賞奨励賞を受賞)

周牧之『現代版「絹の道」、構想推進を―欧州から日本まで資源の開発・輸送で協力―』(『日本経済新聞』経済教室欄、1999年4月1日)

周牧之主編『城市化:中国現代化的主旋律 (Urbanization: Theme of China’s Modernization)』(湖南人民出版社、2001年)

周牧之著『鼎―托起中国的大城市群(Megalopolis in China)』(世界知識出版社、2004年)

周牧之編著『大転折―解読城市化与中国経済発展模式(The Transformation of Economic Development Model in China)』(世界知識出版社、2005年)

議事録『都市創新ワークショップ:東京会議』(日中産学官交流機構、2005年3月18日)

議事録『都市創新ワークショップ:北京会議』(日中産学官交流機構、2005年7月23~24日)

報告書『日中産学官交流フォーラム:転換点に立つ中国経済と第11次五カ年計画』(日中産学官交流機構、2005年11月7日)

報告書『中国経済研究会』(日中産学官交流機構、2005年11月9日)

報告書『中華人民共和国西部地域中等都市発展戦略策定調査専門家活動報告書』(国際協力機構、2006年1月)

報告書『日中産学官交流フォーラム:中国のメガロポリスと東アジア経済圏』(日中産学官交流機構、2006年5月11日)

報告書『都市創新ワークショップ:中国のメガロポリス・ビジョンとインフラ構想研究会(長江船上会議)』(中国国家発展改革委員会、日中産学官交流機構、2006年7月22~24日)

周牧之著『中国経済論-高度成長のメカニズムと課題』(日本経済評論社、2007年)

周牧之著『中国経済論-崛起的机制与課題 (The Chinese Economy: Mechanism of its rapid growth)』(人民出版社、2008年)

周牧之、楊偉民共編著『第三個三十年―再度大転型的中国(The Third Thirty Years: A New Direction for China)』(人民出版社、2010年)

周牧之、徐林共編著『中国城市総合発展指標2016(China Integrated City Index 2016)』(人民出版社、2016年)

周牧之、陳亜軍、徐林共編著『中国城市総合発展指標2017(China Integrated City Index 2017)』(人民出版社、2017年)

周牧之、徐林共編著『中国都市ランキング―中国都市総合発展指標』(NTT出版、2018年)

周牧之、陳亜軍、徐林共編著『中国都市ランキング2017―中心都市発展戦略』(NTT出版、2018年)

周牧之、陳亜軍共編著『中国城市総合発展指標2018(China Integrated City Index 2018)』(人民出版社、2019年)

周牧之、陳亜軍共編著『中国都市ランキング2018―大都市圏発展戦略』(NTT出版、2020年)

Zhou Muzhi, Chen Yajun, Xu Lin (2020.6) China Integrated City Index ― Megalopolis Development Strategy, Development Strategy of Core City, Pace University Press.


プロフィール

周 牧之(しゅう ぼくし)/東京経済大学教授

1963年生まれ。(財)日本開発構想研究所研究員、(財)国際開発センター主任研究員、東京経済大学助教授を経て、2007年より現職。財務省財務総合政策研究所客員研究員、ハーバード大学客員研究員、マサチューセッツ工科大学(MIT)客員教授、中国科学院特任教授を歴任。〔中国〕対外経済貿易大学客員教授、(一財)日本環境衛生センター客員研究員を兼任。

【専門家レビュー】明暁東:〈中国都市総合発展指標2020〉から見た新型コロナパンデミック下の中国都市発展

明暁東

中国国家発展改革委員会発展戦略和計画司元一級巡視員、中国駐日本国大使館元公使参事官


〈中国都市総合発展指標2020〉英語版 2022年1月7日付中国国務院新聞弁公室HPで発表

 2021年12月28日、雲河都市研究院が中国都市総合発展指標2020を発表した。2020年を振り返ると、世界を席巻する新型コロナウイルスパンデミックや世界経済の深刻な不況などの影響に直面しながらも、中国は都市の強靭性を盾に新型コロナ蔓延の予防・制圧と、経済社会発展の両面で、大きな成果を上げた。中国都市総合発展指標2020は、地級市およびそれ以上の都市(日本の都道府県に相当)の297都市における感染症対策と経済回復の実績を、多角的なデータで客観的に評価した。同指標で新型コロナウイルパンデミック前後の都市のパフォーマンスを比較すると、以下のような知見が得られる。


1.トップランナー構成は安定


 中国都市総合発展指標2020の総合ランキングでは、都市の発展を環境・社会・経済の3つの側面から分析・評価している。2020年の総合ランキングでは、トップ10から11位に転落した武漢とトップ10に入った蘇州を除き、トップ30都市は2019年とほぼ変わらない。

   これら30都市は、中国GDPの43%をも創出し、中国の経済成長を牽引するトップランナーである。新型コロナウイルスショックにより、中国経済は“一時停止”したものの、トップランナーとしてのこれら30都市に大きな浮き沈みはなく、成長を維持し、中国発展のエンジンとして重要な役割を果たした。


2.都市環境が引き続き改善


 中国都市総合発展指標2020環境大項目ランキングは、都市の自然生態、環境品質、空間構造を評価している。2020年の環境大項目ランキングでは、2019年と比較してトップ30の構成に大きな変化は見られない。ナクチュは33位から22位に、泉州は35位から28位に、中山は36位から29位に上昇し、蘇州、宝山、三明は30位以内から外れた。

   カーボンピークアウトとカーボンニュートラルという国家目標を達成するべく、各都市は新型コロナの影響を克服しながら、産業構造の調整、空間構造の最適化、グリーンエコノミーの推進に取り組んでいる。そのため、ランキング上位の都市はいつ下位都市に抜かれてもおかしくない状況にある。都市の環境改善への努力は、中国全土の生態環境改善に直に寄与している。


3.都市ガバナンスは着実に向上


 中国都市総合発展指標2020社会大項目ランキングは、都市のステータス・ガバナンス、伝承・交流、都市生活を評価している。新型コロナウイルスパンデミックにより、都市のガバナンスは厳しい挑戦に立たされた。2020年の社会大項目ランキングでは、2019年と比較してトップ30の構成に大きな変化は見られない。珠海は23位から31位に下がり、南昌は33位から25位に上昇してトップ30入りを果たした。コロナ禍で最も厳しい試練に晒された武漢は9位から16位に下がった。

   新型コロナパンデミック初期、各都市はロックダウン対策を講じ、一時的な影響を受けたものの、都市住民の生活はいち早く正常化した。新型コロナ禍にあって、都市運営で一時的に厳しい措置が余儀なくされたものの、新型コロナを制圧したことでこうした措置は短期間で解除され、都市の生活クオリティ、文化娯楽に深刻な影響は及ぼさなかった。


4.都市経済は順調に回復


 中国都市総合発展指標2020経済大項目ランキングは、都市の経済規模だけでなく、経済構造や効率性も評価している。2020年経済大項目ランキングで、トップ30にランクインした都市は、2019年と比較してほぼ変わりはない。珠海だけが30位から32位に下がり、温州は31位から28位に上昇した。

   中国の都市は新型コロナウイルスパンデミックの影響を克服し、安定した経済成長を維持している。中国経済はすでに構造高度化の局面にあり、新型コロナ禍はこのプロセスを加速した。中国の発展フレームワークは国内循環を主軸とし、国内外の「双循環」が相互に促進する段階に至り、都市は新たな発展段階における構造高度化を進めている。

   さらに〈中国都市総合発展指標2020〉のいくつかの具体的な指標データからは、以下のような知見が得られる。


5.都市のレジリエンス(回復力)を存分に発揮


   2020年中国各都市の新型コロナウイルス新規感染者数(海外輸入感染症例と無症状例を除く)において、最も感染者数が多かった10都市は、初期に新型コロナウイルスパンデミックに見舞われた武漢とその周辺に集中した。且つ中国全土新規感染者数の80.8%はこの10都市に集中した。中国は、およそ1カ月余りでこれら都市での感染拡大を抑え、約2カ月で1日当たりの新規感染者数を1桁にとどめ、約3カ月でゼロ・コロナ状態にした。

   最も感染者数が多かった11位から20位都市の中には、全国におけるGDP規模トップ10都市である上海、北京、深圳、広州、成都、重慶、杭州のほか、ハルビン、長沙、南昌、合肥、ウルムチ、寧波、温州、蚌埠、南陽などの省都や地域経済の中心都市が含まれた。なかには何度もウイルスに襲われた都市もあった。

   最も感染者数が多かった1位から20位の都市の医療リソースを、「中国都市医療輻射力2020」で見ると、北京、成都、上海、広州、杭州、武漢の6都市が同輻射力トップ10に入り世界の大都市にも匹敵する医療機関や医療従事者の厚みを持っている。

   しかし、恵まれない都市も多い。最も感染者数が多かった1位から20位の中で、湖北省に属する12都市を見ると、武漢を除く11都市は医療リソースが少ない。例えば孝感、黄岡、随州、信陽、南陽の5都市は「中国都市医療輻射力2020」で200位以降だった。荊州、鄂州、襄陽、黄石、荊門、咸寧の6都市は100位~200位にあった。 

   こうした状況に鑑み、中国では全国で医療派遣が実施された。医療輻射力の強い都市が弱い都市を支援し、すべての都市に科学的な予防と医療を実施できるリソースを迅速に行き届かせた。よって、いち早く生産活動の再開を実現し、市民生活を取り戻した。

   中国は、感染症制御と経済復興を両立させ、新型コロナウイルスパンデミック以来、主要国で初めて経済成長を実現した。中国の都市の強靭な回復力と活力を見せつけた。

6.陸空海輸送はコロナ対策と経済回復を保障


 「中国都市空港旅客取扱量2020」と「中国都市航空貨物取扱量2020」のランキングを見ると、空港旅客取扱量と航空貨物取扱量のトップ10都市はほぼ一致している。これら10都市は、中国の空港旅客取扱量の45%、航空貨物取扱量の72.8%を占め、中国における航空輸送の主要拠点都市となっている。

   「中国都市港湾コンテナ取扱量2020」トップ10都市は、上海、寧波、深圳、広州、青島、天津、廈門、蘇州、営口、大連であり、この10都市で中国港湾コンテナ取扱量の70.8%を占めている。新型コロナウイルス感染拡大期には、ロックダウンにより一時生産がストップしたことがあったものの、各主要都市では、陸空海輸送を駆使し、緊急物資輸送を円滑に実施した。

   中国交通運輸部(省)のデータによると、2020年の中国港湾貨物取扱量は145億5000万トンに達し、前年比4.3%増となった。国際貿易および産業サプライチェーンの安定化を保障した。

7.デジタルエコノミーが急成長


 「中国都市IT輻射力2020」ランキングのトップ 10 都市は、北京、上海、深圳、杭州、広州、成都、南京、福州、武漢、廈門である。いずれも中国で最も経済的に発展した都市であり、多くの上場IT企業及び従業員を有し、ITインフラが充実している。新型コロナウイルスパンデミックにより行動が制限された時期もあったが、新鋭のITインフラと豊富なIT人材を活用し、中国でオンラインショッピング、在宅勤務、オンライン会議、クラウド展示会などが急速に普及した。都市のデジタル経済は大きく成長し、産業経済のDX化が加速した。

   新型コロナ禍でも、ECは小売消費を押し上げ、越境ECは対外貿易を安定させた。中国国家統計局によると、2020年中国ネット通販売上高は11兆7, 601億元に達し、前年比10.9%増となった。このうち、物品のネット通販売上高は9兆7,590億元で14.8%増となり、中国の社会消費財小売総額の24.9%を占め、前年同期比4.2ポイントもアップした。

   中国税関総署のデータによると、2020年における中国の越境EC輸出入は31.1%増加した。なかでも輸出が1兆1,200億元で40.1%増、輸入が5,700億元で16.5%増となった。新型コロナパンデミックが国際貿易を揺さぶる中、越境ECは貿易を安定化させる重要な力になってきている。

本稿英語版2022年1月11日付中国国務院新聞弁公室HPで発表

日本語版『〈中国都市総合発展指標2020〉から見た新型コロナパンデミック下の中国都市発展』(チャイナネット・2022年3月3日掲載)

中国語版『明晓东:从《中国城市综合发展指标2020》看疫情中城市发展』(中国网・2021年12月31日掲載)

英語版『City development amid COVID-19 from the perspective of China Integrated City Index 2020』(China.org.cn・2022年1月11日掲載、中国国務院新聞弁公室HP・2022年1月11日掲載)

【コラム】横山禎徳:都市デザインの発展段階説

横山 禎徳

東京大学総長室アドバイザー、マッキンゼー元東京支社長


 都市の歴史は長い。少なくとも7000年の経験の蓄積がある。これまでに、考えられるほとんどの都市形態が試されたといっていいだろう。都市をデザインするアプローチも進歩してきた。しかし、必ずしも十分ではない。時代からくる制約も大いにあったのだが、都市の活動を組み立てるという視点から重要な考え方が欠けているのではないかと思う。ここで、筆者が新しい発想に基づいた時代の要求に対応するために最も望ましいと思うアプローチを提案してみたい。

 都市のデザインには発展段階説が当てはまると考えられる。実体論的段階、機能論的段階、構造論的段階、そして、筆者が提案するソフトウェア論的段階である。

 実体論的段階とは、形の美しい都市はいい都市だという議論である。中世のヨーロッパには「理想都市」と呼ばれた都市が存在した。現代でもスイスには多角形のきれいな形をした城塞都市が残っている。しかし、誰が考えてもすぐわかるように、形と都市の質とは直接関係はない。実際、それらの「理想都市」は汚れた不衛生な都市であった。また、ペストなどの疫病にも無防備であった。それだけでなく、形自体が閉じていて、都市のダイナミックな発展を阻害した。すなわち、スタティックな発想である。

 今から考えると、素朴なアプローチである。しかし、こういう都市デザインの考え方が現代に全くなくなったわけでもない。例えば、ブラジルの首都、ブラジリアは飛び立たんとする鳥か飛行機の形をしている。最近、ドバイで開発された高級住宅地域のパーム・ジュメイラは空からみると、ヤシの木のような形をしていて美しい。実際にその地域を訪れた印象では、住んでみたいという気持ちが湧いてこない、殺風景な住宅街であった。

 形が美しいだけでは不十分だ、機能が伴っていないといけないという考えが当然出てくる。それが機能論的段階である。都市の機能とは何か、それは、住む、働く、遊ぶという三つの機能だというのが20世紀前半のCIAM(近代建築国際会議)の考え方であった。その思想影響を受けたと考えられるのが、オーストラリアの首都、キャンベラである。基本形は実体論的段階で幾何学模様の組み合わせであるが三つの機能を湖のある地形を生かしながら美しく配置した。

 しかし、一旅行者としての現地の印象は、建設を開始して何十年もたっているにもかかわらず、魅力ある都市への自発的な展開はまだまだのようだった。都市活動の自由な発想は人が動き回ることから出てくることが多いのだが、歩行者にもそれほどフレンドリーでもないことが、その展開を遅らせているようにも感じた。例えば、国会議事堂の一般参観者に対してオープンな雰囲気とその地下にある巨大で閑散とした駐車場の対比が印象的であった。車に頼らないとアプローチがむつかしい設計になっているのだ。

 次に、当然、それらの機能をどのように人間の活動を生かすように配置するのかというアプローチが必要となってくる。すなわち、構造論的段階である。幾何学模様では人が生活する都市の自発性と活気を作り出すことがむつかしいことも分かった。それではどういう形、あるいは構造が望ましいのだろうか。もっとも基本的で普遍的な形であり、様々な都市生活者の活動を受け入れる自由度のある碁盤の目の形は都市の構造として古代から現代までよく使われてきた。ローマの都市、長安や京都、そしてニューヨークのマンハッタンの街区、近年では、ル・コルビジェがデザインしたインドのチャンディガールがある。

 道路を境界とした機能の配置、すなわち、ゾーニングを計画し実行することで、都市の活動をコントロールできるし、あるいは、都市活動をデザインする人間の能力の限界を感じたのか、1kmのグリッドを決めただけで何も計画せず、ダイナミックな都市活動の自律展開に任せた、英国のミルトンキーンズのような大胆な発想も可能である。

 しかし、一時期マンハッタンでは犯罪が多発したことがあったが、その理由を碁盤の目構造をした道路網のせいにすることはできないであろう。もっと別の理由があったのである。当時のリンゼー市長が私服の警官を大量に増やすことで犯罪は減少した。構造論的アプローチだけでは都市生活の質を確保するデザインはできなかったのである。そして、こんごでてくるであろ、これまで経験しなかった新しく多様な課題に対応することはできそうもないのである。

 ではどうするか。それは、筆者の提案するソフトウェア論的段階のアプローチを活用することである。すなわち、都市はその形態の裏に多種の「社会システム」の重層構造で成り立っているという考え方である。誰でもすぐにわかるのは電力供給システム、上下水システム、交通システム、情報・通信システム、医療・衛生システム、治安システム等である。これらはすべてシステムを作動させるオペレーティング・システム・ソフトウェア(OSS)がデザインされている。これらのシステムが都市に備わっていないと都市は機能しないことは明白だ。

 このような当たり前のことも、近年やっと広く認識されるようになった。筆者が40年以上前、ハーバード・デザイン・スクールのアーバン・デザイン学科にいた当時はまだ、タウンスケープとかアーバニティとか都市形態の考え方が主流であり、「都市のソフトウェア」という概念は明確でなかった。教授陣も建築家出身がほとんどであり、そこから転身して「アーバン・デザイナー」としての職能を確立しようとしている段階であった。そのころ、日本のある文芸評論家が「建築家が都市をデザインするのは、万年筆メーカーが小説を書くようなものだ」と皮肉ったが、そういわれても仕方がない面があった。

 アーバン・デザイナーも発展途上であっただけでなく、「アーバンはデザインできない。デザインできるのはアーバン・システムなのだ」ということもわかっていなかった。従って、それらのアーバン・システムをデザインするのがアーバン・システム・デザイナーであり、アーバン・システムを活用するのがシティ・マネージャー、アーバン・マネージャーだという概念も出来上がっていなかったのだ。それから数十年経ち、アーバン・システム・デザインという考え方が段々と出来上がりつつあるように思う。

 都市は「触れて目に見える」フィジカルなシステムから「触れなくて目に見えない」社会習慣や文化に至る大量なレイヤーが重なった複合的システムで出来上がっている。そして、これまで経験したことのないような新しい課題が時代とともに出現している。空気汚染、大量のごみ・廃棄物の処理、集中豪雨や経験のないほど高い気温、そして、これは過去にもあったのかもしれないが、よりグローバルな形で今回のCOVIT-19のような疫病の蔓延などが出てきている。これらの課題に対して新たな「社会システム」をデザインし実施することが強く求められる時代になってきているといえる。

 その課題解決のためには担当部署という「箱」と施設というハードウェアを作る前に、まずOSSをまずデザインすることだ。東京都の地下にある巨大な雨水貯蔵空間も「集中豪雨時対応排水システム」に必要なハードウェアである。

 今後必要が高まってくる都市システムのサブシステムとしての各種の「社会システム」をデザイン能力が都市をデザインする職能の必要条件になってくるであろう。すなわちソフトウェア論的段階の都市デザインのアプローチである。


プロフィール

横山 禎徳 (よこやま よしのり)

 1942年生まれ。東京大学工学部建築学科卒業、ハーバード大学デザイン大学院修了、マサチューセッツ工科大学経営大学院修了。前川國男建築設計事務所を経て、1975年マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社し、同社東京支社長を歴任。経済産業研究所上席研究員、産業再生機構非常勤監査役、福島第一原発事故国会調査委員等を歴任し、2017年より県立広島大学経営専門職大学院経営管理研究科研究科長。

 主な著書に『アメリカと比べない日本』(ファーストプレス)、『「豊かなる衰退」と日本の戦略』(ダイヤモンド社)、『マッキンゼー 合従連衡戦略』(共著、東洋経済新報社)、『成長創出革命』(ダイヤモンド社)、『コーポレートアーキテクチャー』(共著、ダイヤモンド社)、『企業変身願望−Corporate Metamorphosis Design』(NTT出版)。その他、企業戦略、 組織デザイン、ファイナンス、戦略的提携、企業変革、社会システムデザインに関する小論文記事多数。