合肥:イノベーションで飛躍を遂げる中心都市【中国中心都市&都市圏発展指数2021】第18位

中国中心都市&都市圏発展指数2021
第18位


 合肥市は中国中心都市&都市圏発展指数2021の総合第18位だった。同市は前年度より順位を1位上げた。

 〈中国中心都市&都市圏発展指数は、中国都市総合発展指標の派生指数として、4大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる36の中心都市の評価に特化したものである。同指数は、これら中心都市を、全国297の地級市以上の都市の中で評価している。10大項目と30の小項目、116組の指標からなる。包括的かつ詳細に、中国中心都市の発展を総合評価するシステムである。

CCCI2017 | CCCI2018 | CCCI2019 | CCCI2020

 

〈中国中心都市&都市圏発展指数〉:【36中心都市】北京、上海、深圳、広州、成都、天津、杭州、重慶、南京、西安、寧波、武漢、青島、鄭州、長沙、廈門、済南、合肥、福州、瀋陽、大連、昆明、長春、ハルビン、貴陽、南昌、石家荘、南寧、太原、海口、ウルムチ、蘭州、フフホト、ラサ、西寧、銀川


イラク一国に匹敵の経済規模を誇る


 合肥市は安徽省の省都であり、同省の政治、経済、文化の中心であり、また長江メガロポリスの中核都市でもある(長江デルタメガロポリスについて詳しくは中心都市がメガロポリスの発展を牽引:中国都市総合発展指標2022を参照)。

 同市は、4区・4県・1県級市を管轄し、総面積は11,445平方キロメートルに達し、日本の秋田県と同程度である。亜熱帯モンスーン気候で、四季がはっきりし、気候は穏やかである。「気候快適度」は中国第148位である。

 安徽省設立後350年以上の歴史上、省都となった都市は南京、安慶、合肥、蚌埠、蕪湖など多数あった。1949年の新中国成立時の合肥は、面積わずか5平方キロメートル、人口5万人の小さな都市だったが、紆余曲折を経て1952年に安徽省の省都となった後は目覚ましい発展を遂げた。2022年常住人口が963万人で中国第20位、GDPは約12,013億元(約24兆円、1元=20円で換算)で中国第21位にまで成長した。その経済規模は、世界第54位のイラクのGDPに匹敵する(詳しくは【ランキング】世界で最も経済リカバリーの早い国はどこか? 中国で最も経済成長の早い都市はどこか?を参照)。

 外部から人々を引き入れ成長する合肥は、「流動人口(非戸籍常住人口)」が約154万人の大幅プラスで、中国第27位の人口流入都市となっている。

『三国志』ゆかりの都市


 合肥は、秦の時代から約2,100年の歴史を持つ。『三国志』で曹操と孫権が争った激戦地として知られ、市内には三国時代を彷彿とさせる人気の観光歴史スポット「三国遺址公園」が整備されている。合肥の「国内観光客数」は中国第24位、「海外観光客数」は中国第30位と、省内トップの成績である。


中国都市総合発展指標2021
第24位


 合肥は〈中国都市総合発展指標2021〉総合ランキング第24位となり、前年より順位を3つ下げた。

 「経済」大項目は第21位で、前年に比べ順位が2つ上がった。3つの中項目で、「経済品質」「発展活力」は第22位、「都市影響」は第23位と、3中項目でトップ10入りした項目はなかったものの、すべてがトップ30入りを果たした。9つの小項目のうち、「イノベーション・起業」は第14位、「経済効率」は第18位、「広域輻射力」は第20位、「経済規模」は第21位、「経済構造」「広域中枢機能」は第23位、「開放度」は第25位と、7項目がトップ20に入った。なお、「ビジネス環境」は第32位、「都市圏」は第35位だった。

 「社会」大項目は第24位で、前年度より順位を4つ下げた。3つの中項目で、「ステータス・ガバナンス」は第16位で、同1項目がトップ20に入った。「生活品質」「伝承・交流」は第30位だった。小項目で見ると、「都市地位」は第17位、「人口資質」は第18位、「文化娯楽」は第23位、「人的交流」は第29位と、5項目がトップ30に入った。「消費水準」は第32位、「居住環境」は第33位、「生活サービス」は第36位、「社会マネジメント」は第40位、「歴史遺産」は第180位であった。

 「環境」大項目は第53位で、前年に比べ順位が13位上がった。3つの中項目のうち「空間構造」は第35位、「環境品質」は第98位、「自然生態」は第104位であった。9つの小項目のうち、「都市インフラ」は第16位、「自然災害」は第19位と、2項目がトップ20に入った。「環境努力」は第34位、「コンパクトシティ」は第35位、「交通ネットワーク」は第44位、「資源効率」は第47位、「水土賦存」は第72位、「気候条件」は第139位、「汚染負荷」は第180位であった。


 〈中国中心都市総合発展指標2021〉について詳しくは、メガシティの時代:中国都市総合発展指標2021ランキングを参照。

 

CICI2016:第37位  |  CICI2017:第25位  |  CICI2018:第27位
CICI2019:第26位  |  CICI2020:第21位  |  CICI2021:第24位


科学技術力で飛躍


 合肥が急激な発展を遂げた最大の理由は、科学技術力にある。

 中国科学技術大学(中科大)が1970年、北京から合肥に移転したのが契機となった。現在、合肥には19の大学と約200の政府系科学研究機関が立地し、20万人を超える研究開発要員を擁している。同市の「科学技術輻射力」は中国第13位である(詳しくは【ランキング】科学技術大国中国の研究開発拠点都市はどこか?)。

 合肥の「大学生在校生数」は中国第19位、「世界トップ大学指数」は中国第15位、「高等教育輻射力」は中国第14位である。

家電生産からハイテク製造業へ


 新中国成立初期、合肥の工業と言えば小規模な発電所ひとつしか無かった。1980〜90年代に、合肥は家電産業に力を入れ、美菱(MeiLing)や栄事達(Royalstar)など多くの地元ブランドを育成した。

 合肥の冷蔵庫生産量は2011年に、全国の三分の一、洗濯機は全国の四分の一を占め、青島市等を超えて全国最大の家電生産基地となった。現在、合肥の家電産業の年間生産額は1兆元を超えている。

 家電産業で身を起こした合肥は、後にディスプレイと半導体分野に参入した。2008年、BOEテクノロジーグループ(京東方科技集団)と共同で、中国初の第6世代液晶パネル生産ラインを建設した。この生産ラインは、中国初の32インチ液晶画面を生産した。

 BOEはその後も合肥で第8.5世代(2014年稼働)と第10.5世代生産ライン(2018年稼働)を建設し、投資を続けた。

 現在、合肥は世界最大のディスプレイ生産地の一つに数えられている。

半導体生産基地からEV生産基地へ


 ディスプレイ産業の急成長は、半導体産業の発展を促している。2015年、合肥建投は台湾の力晶積成電子製造(PSMC)と合弁で「合肥晶合集成電路」を設立し、半導体ウエハーの受託生産(ファンドリー)を開始した。2017年には、12インチウエハー製造基地が稼働した。

 合肥は2016年、大手ファブレス半導体メーカーの兆易創新科技(ギガデバイス・セミコンダクター)と協力して、1,500億元(約3兆円)を投じて長鑫存儲技術(CXMT)を立ち上げ、中国本土のメモリチップ製造の空白を埋めた。2019年、CXMTの12インチウエハー工場が稼働し、10ナノメートル級の8GB DDR4の製造を開始した。

 現在、晶合集成、CXMTを筆頭に、280社の半導体関連産業が合肥に集まり、同市を一大シリコンシティに押し上げた。

 合肥の躍進はこれに留まらず、近年はEV関連企業を積極的に誘致し、一大EV生産基地が形成されつつある。

 現在同市の「輸出総額」は中国第31位、「製造業輻射力」は中国第32位であるものの今後、順位の上昇が大いに期待される。合肥は、今後もっとも注目すべき都市のひとつである(詳しくは【ランキング】中国で最も輸出力の高い都市はどこか?を参照)。


廈門:魅力あふれる貿易拠点都市【中国中心都市&都市圏発展指数2021】第17位

中国中心都市&都市圏発展指数2021
第17位


 廈門市は中国中心都市&都市圏発展指数2021の総合第17位だった。同市は前年度の順位を維持した。

 〈中国中心都市&都市圏発展指数は、中国都市総合発展指標の派生指数として、4大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる36の中心都市の評価に特化したものである。同指数は、これら中心都市を、全国297の地級市以上の都市の中で評価している。10大項目と30の小項目、116組の指標からなる。包括的かつ詳細に、中国中心都市の発展を総合評価するシステムである。

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〈中国中心都市&都市圏発展指数〉:【36中心都市】北京、上海、深圳、広州、成都、天津、杭州、重慶、南京、西安、寧波、武漢、青島、鄭州、長沙、廈門、済南、合肥、福州、瀋陽、大連、昆明、長春、ハルビン、貴陽、南昌、石家荘、南寧、太原、海口、ウルムチ、蘭州、フフホト、ラサ、西寧、銀川


■ 小さくても輝く海上の花園


 廈門市は、福建省の東南端に位置する副省級市、計画単列市であり、経済特区に指定された中国南東部沿岸の重要な中心都市である。また、粤閩浙沿海(広東・福建・浙江)メガロポリスの中核都市である(粤閩浙沿海メガロポリスについて詳しくは中心都市がメガロポリスの発展を牽引:中国都市総合発展指標2022を参照)。

 同市の総面積は1,701平方キロメートルに過ぎず、中国297地級及びそれ以上の都市(日本の都道府県に相当)のうち、下から四番目の294位の大きさである。省都の福州市と比較すると、約七分の一の大きさである。なお、47都道府県で最も面積が小さい香川県の面積が1,877平方キロメートルであり、廈門は香川県より1割程度小さい。

 一方、常住人口は約531万人で中国第82位、「人口密度」は1平方キロメートル当たり3,121人で中国第4位の高密度都市である。

 廈門は福建省の沿海部に位置し、漳州市、泉州市と接している。亜熱帯モンスーン気候で、年平均気温が21℃、温和かつ多雨の気候を享受する美しい臨海都市である。「気候快適度」は中国第24位である。

 同市は多くの島嶼を有し、風光明媚な景観に恵まれ、古来より「海上花園」とも呼ばれている。

■ 五口通商から経済特区へ


 廈門は600年以上の歴史を持つ廈門港を有し、宋朝以来、泉州港の補助港口としての役割を果たしていた。元朝で軍港に変貌し、明朝には商業貿易の拠点として躍進を遂げた。鄭成功父子の時代には、海外貿易の中心港となり、茶の輸出で一大拠点となった。1684年には清の海関が設置され、廈門港が正口の一つとされた。康熙年間には、福建出洋の総口となり、福州や泉州を凌ぐ地位を確立した。

 1842年、南京条約の締結により、廈門は広州、福州、寧波、上海と並び「五口通商」の一つに数えられた。貿易の窓口として、教会、病院、学校、外国銀行などが建設され、早くから西洋文化に染められた稀有な都市でもある。

 1980年、厦門は深圳、珠海などと共に経済特区に指定された。以来、急速な発展を続けている。

■ ウズベキスタン一国に匹敵する経済規模


 2022年、廈門のGDPは7,803億元(約15.6兆円、1元=20円換算)に達し、福建省内で福州市、泉州市に次ぐ第三位の経済規模である(詳しくは【ランキング】世界で最も経済リカバリーの早い国はどこか? 中国で最も経済成長の早い都市はどこか?を参照)。

 その経済規模は、中国第31位であり、世界第58位のウズベキスタンのGDPに匹敵する。「一人当たりGDP」の成績はさらに良く、中国第19位と福建省内で最も高い。

 廈門の「人口自然増加率」は中国第4位で、2015〜2022年の平均増加率は12.1‰と極めて高い。非戸籍常住人口を示す「流動人口」では、廈門は約245万人に達し、中国第17位の人口流入都市となっている。結果、同市の「生産年齢人口率」は中国第9位であり、その数値は72.9%と圧倒的であり、若い活力に溢れている。

■ 深水港を盾にしたスーパー製造業都市


 廈門市は深水港を盾に港湾機能を強化してきた。2022年に漳州港を含む廈門港のコンテナ取扱量は1,243.47万TEUを達成し、中国第7位にランクインした(詳しくは、【ランキング】世界で最も港湾コンテナ取扱量が多い都市はどこか?を参照)。同年の貨物取扱量は2.19億トンで、世界第14位である。

 廈門の製造業も高度に発展し、中国第11位の「製造業輻射力」の実力を持つスーパー製造業都市となった(詳しくは【ランキング】中国で最も輸出力の高い都市はどこか?を参照)。

 さらにIT産業も発展を遂げており、「IT産業輻射力」は中国第12位である。

 産業発展の背後には研究開発への投資が欠かせない。廈門の「科学技術輻射力」は中国第20位である(詳しくは【ランキング】科学技術大国中国の研究開発拠点都市はどこか?)。

 現在、同市は中国政府が推進する「一帯一路」における21世紀海上シルクロードの戦略的要衝都市となっている。また同市は、アジアとヨーロッパを結ぶ「中欧班列(ユーラシア横断鉄道)」にも接続している。


中国都市総合発展指標2021
第13位


 廈門は〈中国都市総合発展指標2021〉総合ランキング第13位であり、前年度より順位を1つ下げた。

 「環境」大項目は第6位で、前年度に比べ順位が2つ下がった。3つの中項目のうち「空間構造」は第6位、「環境品質」は第14位、「自然生態」は第72位と、2項目がトップ20に入った。9つの小項目のうち、「コンパクトシティ」は第5位、「交通ネットワーク」は第7位と2項目がトップ10に入った。また、「汚染負荷」は第21位、「環境努力」は第22位、「資源効率」は第30位と、3項目がトップ30に入った。なお、「都市インフラ」は第32位、「気候条件」は第45位、「自然災害」は第229位、「水土賦存」は第294位であった。

 「社会」大項目は第15位で、前年度より順位を2つ下げた。3つの中項目で、「生活品質」は第13位、「伝承・交流」は第15位と、2項目がトップ20に入った。「ステータス・ガバナンス」は第23位だった。小項目で見ると、「人的交流」「消費水準」は第11位、「居住環境」「生活サービス」は第15位、「人口資質」は第16位と、5項目がトップ30に入った。なお、「都市地位」は第34位、「社会マネジメント」は第41位、「歴史遺産」は第43位、「文化娯楽」は第52位であった。

 「経済」大項目は第19位で、前年度に比べ順位が1つ下がった。3つの中項目で、「発展活力」は第16位、「都市影響」は第17位、「経済品質」は第26位と、3中項目のうちトップ10入りした項目はなかったものの、すべてトップ30入りを果たした。9つの小項目のうち、「広域中枢機能」は第9位でトップ10入りした。また、「ビジネス環境」は第11位、「経済効率」は第13位、「開放度」は第15位、「イノベーション・起業」は第22位、「広域輻射力」は第23位、「経済構造」は第25位、「都市圏」は第28位と、7項目がトップ20に入った。なお、「経済規模」は第45位だった。


 〈中国中心都市総合発展指標2021〉について詳しくは、メガシティの時代:中国都市総合発展指標2021ランキングを参照。

CICI2016:第16位  |  CICI2017:第12位  |  CICI2018:第12位
CICI2019:第12位  |  CICI2020:第12位  |  CICI2021:第13位


■ 鼓浪嶼-建築とピアノの島


 鼓浪嶼は廈門市の沖合に浮かぶ面積2平方キロメートル未満の島で、廈門の都市発展をものがたっている。清朝末期には、鼓浪嶼に公共租界が設けられた。その為、多くの西洋建築や「騎楼」と呼ばれる華僑による建築物が残され、「万国建築博物館」と称される。2017年に「鼓浪嶼国際歴史社区」は世界文化遺産に正式登録された。

 建築だけでなく、西洋音楽も植え付けられた。鼓浪嶼には600台を超えるピアノがあり、世界最古のスクエアピアノや最初で最大のアップライトピアノを保有する専門博物館があるだけでなく、数多くのピアノ演奏者や音楽家を輩出している。鼓浪嶼が生んだ音楽家たちは毎年音楽祭で故郷に戻り、各種コンサートを開いている。

■ 華僑文化 – 騎楼


 廈門は西洋の文化を受け入れただけでなく、華僑がもたらした東南アジアの文化も色濃く残している。中でも南洋の風情漂う騎馬楼建築が際立っている。

 騎楼建築は、「南洋貿易」に密接に関連している。近代、南洋貿易の拡大で福建省から多くの人々が「南洋」と呼ばれる東南アジアへ渡った。騎楼は帰郷した華僑によって建設された。騎楼の大規模建設は1920〜30年代に集中している。騎楼は典型的な外廊式建築で、通り側には商店が並び、廊下は日よけと雨避けの機能を果たし、背街側には民家が立ち並ぶ。

 特に旧市街区や中山路には、1920年代の騎楼が多数残り、百年の歴史文化を誇る街として、観光客を魅了している。

■ 観光都市発の新世代コーヒーチェーンブランド – ラッキンコーヒー(瑞幸咖啡)


 廈門の観光業は福建省で最も成功し、国内外からの観光客が、2019年には1億人を超えた。新型コロナウイルスの影響により大きな打撃を受けたものの、2022年の訪問者数は2019年の64.6%まで回復している。

 近年この観光都市から、ラッキンコーヒーという革新性に富んだコーヒーチェーンが生まれた。2023年9月、白酒の茅台とのコラボレーションによる「醤香ラテ」の全国発売が大きな話題を呼んだ。初日に542万杯以上が売れ、売上高は1億元を超えた。廈門に本部を置くこの企業は、2017年に北京銀河SOHOで初の店舗を開業し、その後わずか18カ月でアメリカのナスダック(NASDAQ)に上場した。2020年6月には財務不正問題で退場を余儀なくされたものの、退場から21カ月で黒字化を実現し、逆境を乗り越えた。

 ラッキンコーヒーは、スターバックスと違い、カフェにある社交の場を提供せず、座席もなく、限られた空間で一日に数百杯を売り上げる。ラッキンコーヒーは消費者がアプリやミニプログラムを通じて注文し、店舗で受け取る「インターネットコーヒー」のモデルを確立し、オンラインとオフラインのハイブリッドを実現し、成功している。

 2023年10月末時点で、ラッキンコーヒーの国内店舗数は1万3,000店を超えた。店舗数、営業収入において、20年以上中国市場で事業を展開するスターバックス・チャイナを上回る。

 2023年、ラッキンコーヒーは、全世界のユニコーン企業1,360社の中で130位にランクインし、評価額は400億ドルに達している。

 起業精神旺盛な廈門の「ユニコーン企業」は中国第18位となっている。盛んな飲食業と観光業により、「ホテル飲食業輻射力」は中国第8位と、トップ10入りを果たしている。


鄭州:iPhone生産とEV産業クラスターとしての中原メガシティ【中国中心都市&都市圏発展指数2021】第16位

中国中心都市&都市圏発展指数2021
第16位


 青島市は中国中心都市&都市圏発展指数2021の総合第16位だった。同市は前年度より順位を1つ下げた。

 〈中国中心都市&都市圏発展指数は、中国都市総合発展指標の派生指数として、4大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる36の中心都市の評価に特化したものである。同指数は、これら中心都市を、全国297の地級市以上の都市の中で評価している。10大項目と30の小項目、116組の指標からなる。包括的かつ詳細に、中国中心都市の発展を総合評価するシステムである。

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〈中国中心都市&都市圏発展指数〉:【36中心都市】北京、上海、深圳、広州、成都、天津、杭州、重慶、南京、西安、寧波、武漢、青島、鄭州、長沙、廈門、済南、合肥、福州、瀋陽、大連、昆明、長春、ハルビン、貴陽、南昌、石家荘、南寧、太原、海口、ウルムチ、蘭州、フフホト、ラサ、西寧、銀川


中原の中核都市


 鄭州は河南省の省都であり、中原メガロポリスの中核都市である(中原メガロポリスについて詳しくは中心都市がメガロポリスの発展を牽引:中国都市総合発展指標2022を参照)。鄭州は河南省の中北部に位置し、北に黄河、西に嵩山がある。東は開封、南は許昌と平頂山、西は洛陽、北は新郷と焦作の各市と接している。市の総面積は7,567平方キロメートル(熊本県と同程度)で、中国人口規模第11位の都市として約1,283万人を抱える。現在、6区5市1県を管轄し、国家級新区1つ、国家級開発区2つ、国家級輸出加工区1つを有している。

 同市は温帯大陸性季節風気候に属し、四季がはっきりしている。年間平均気温は約15.4℃、年間降水量は約630mmである​​​​。市内には大小124の河川があり、多様な自然地形を有している。

■ 由緒ある文明交流の地


 鄭州は中国古代文明・華夏文明の発祥の地として、古来より文明交流の十字路とされてきた。

 夏、商、管、鄭、韓の各王朝が鄭州に都を置き、隋、唐、五代、宋、金、元、明、清の各王朝が州を設置してきた。鄭州の中心市街地には、3,600年前の商朝の城壁遺跡(鄭州商城)全長7キロメートルが今も残る。市内には、世界文化遺産が2項目15カ所あり(中国第5位)、国家重点文化遺産保護施設87カ所(中国第3位)、省レベル文化遺産保護施設97カ所、市レベル文化遺産保護施設208カ所、国家レベル無形文化遺産6カ所を有している。他にも、裴李崗文化遺跡(約8,000年前)、大河村遺跡(約5,000年前)、打虎亭漢墓、黄帝故里など、多くの古代文化遺跡が散在している。少林寺のある嵩山を始め、黄河文化公園などの自然文化景観も多くの観光客を引き付けている。鄭州の「国内観光客数」は中国第21位である。

 豊かな中原文化は、古代において子産、列子、韓非、杜甫など傑出した人物を輩出している。同市は現在なお「傑出文化人指数」で中国第7位と好成績を誇っている。

■ 鉄道が産んだ大都市


 鄭州駅は1904年に設立され、当初はプラットフォーム1つ、平屋2軒、線路4本しかなかった。1953年に鄭州駅が拡張され、鉄道のハブとなった。鉄道の利便性により1954年に河南省の省都が開封から鄭州へ移転された。これが、鄭州が「鉄道が産んだ都市」と言われる由縁である。

 鄭州は、東西南北交通の要衝として、航空・鉄道・道路からなる巨大な交通ハブとなっている。鄭州駅は中国鉄道の最大級の旅客中継駅で「中国鉄道の心臓」と呼ばれている。同市の「空港利便性」と「航空輸送」は共に全国第13位であり、「鉄道利便性」に至っては全国第1位を誇っている。(詳しくは【ランキング】中国で最も空港利便性が高い都市はどこか?を参照)。

 鄭州は一帯一路の重要な結節点都市でもある。2013年に鄭州は中部地区で初めてヨーロッパへ直通する貨物列車―中欧列車を開通させた。過去10年間でユーラシア40カ国の140以上の都市を繋げた中欧列車(中豫号)が、累計750万トンの貨物を輸送した。


中国都市総合発展指標2021
第19位


 鄭州は〈中国都市総合発展指標2021〉総合ランキング第19位であり、前年度より順位を3つ下げた。

 「社会」大項目は第14位で、前年度の順位を維持した。3つの中項目で「ステータス・ガバナンス」「伝承・交流」は第14位、「生活品質」は第21位だった。小項目で見ると、「人口資質」は第6位、「歴史遺産」は第10位と2項目がトップ10に入った。また、「文化娯楽」は第13位、「消費水準」は第18位と2項目がトップ20に入った。なお、「都市地位」「生活サービス」は第22位、「人的交流」「居住環境」は第28位、「社会マネジメント」は第39位であった。

 「経済」大項目は第17位で、前年度に比べ順位が1つ上がった。3つの中項目で「都市影響」は第14位、「経済品質」は第17位、「発展活力」は第19位で、3中項目のうちトップ10入りした項目はなかった。9つの小項目のうち、トップ10入りした項目はなかったものの、「経済規模」「開放度」「広域中枢機能」は第13位、「広域輻射力」は第14位、「イノベーション・起業」は第19位と、5項目がトップ20に入った。また、「経済構造」「都市圏」は第22位の2項目もトップ30に入った。なお、「ビジネス環境」は第33位、「経済効率」は第43位だった。

 「環境」大項目は第107位であった。3つの中項目のうち「空間構造」は第29位、「環境品質」は第163位、「自然生態」は第222位であった。9つの小項目のうち、「環境努力」は第12位、「都市インフラ」は第18位と、2項目がトップ20に入った。なお、「コンパクトシティ」は第29位、「交通ネットワーク」は第32位、「資源効率」は第102位、「自然災害」は第158位、「気候条件」は第187位、「水土賦存」は第210位、「汚染負荷」は第255位であった。


 〈中国中心都市総合発展指標2021〉について詳しくは、メガシティの時代:中国都市総合発展指標2021ランキングを参照。

 

CICI2016:第26位  |  CICI2017:第21位  |  CICI2018:第18位
CICI2019:第16位  |  CICI2020:第16位  |  CICI2021:第19位


■ ギリシャ一国に匹敵する経済規模


 鄭州は中原地区の経済中心地として、2022年のGDPは1兆2,935億元(約25.9兆円、1元=20円換算)に達し、中国第16位の経済規模を誇る。これは世界第54位のイラクのGDPを超え、世界第53位のギリシャのGDPに匹敵する規模である(詳しくは「【ランキング】世界で最も経済リカバリーの早い国はどこか? 中国で最も経済成長の早い都市はどこか?を参照)。

 金融・医療センターとしての機能も高く、鄭州の「金融輻射力」は中国第7位、「医療輻射力」は中国第9位となっている。鄭州には中国初の先物取引所と、中国初の空港経済区がある​。

鄭州は中国の主要な研究都市として、「科学技術輻射力」は中国第19位である。複数の国家重点大学が存在し、「高等教育輻射力」は中国第15位と高水準である。「大学学生数」と「高等教育教師数」はいずれも中国第3位である(詳しくは【ランキング】科学技術大国中国の研究開発拠点都市はどこか?)。

 中心都市としての鄭州は、外部から人々を吸引し成長している。人口の流出入を示す「流動人口(非戸籍常住人口)」では、河南省内17都市のうち16都市は、外へ人口が流出し、その規模は約2,012万人に達している。中でも、周口、信陽、駐馬店の3都市は、中国で最も人口が流出するトップ3都市であり、同3都市だけで約938万人が外部に流出している。これに対して鄭州は、流動人口が約363万人のプラスである。よって鄭州は中国第11位の人口流入都市となっている。

■ iPhone生産とEV産業クラスターの一大拠点


 鄭州は、世界最大のApple製品の生産基地として名高い。最近、EV生産にも力を入れている。

 鄭州はBYDの中高級車種の重要な生産基地であり、2023年11月、BYDの第600万台目のEVが鄭州で生産された(詳しくは【ランキング】自動車大国中国の生産拠点都市はどこか?を参照)。

 内陸都市でありながら、鄭州の「製造業輻射力」は中国第20位で高い(詳しくは【ランキング】中国で最も輸出力の高い都市はどこか?を参照)​。

■ エンタメ都市としての台頭


 鄭州のコンテンツ産業も盛んである。2021年、河南衛星テレビの春晩(旧正月を祝う中国の国民的年越し番組)には、ダンス番組「唐宮夜宴」が全国を席巻した。その後、同テレビ局の「端午の不思議な旅」や、水中ダンス番組「祈」も大ヒットした。

 「唐宮夜宴」は、河南博物院が所蔵する唐代の舞楽佣から着想を得たことで、河南博物院も注目を集め、多くの観光客が訪れている。

 エンタメ都市としても名を上げつつある鄭州は、「文化・スポーツ・娯楽輻射力」で中国第15位であり、「映画館・劇場消費指数」は中国第14位である(詳しくは【ランキング】世界で最も稼ぐ映画大国はどこか?を参照)。

■ 黒川紀章設計の市街地が魅力


 鄭州東部に建設中の150万人都市「鄭東新区」の設計には、日本を代表する建築家・黒川紀章氏の案が採用されている。「鄭東新区」の設計案は2003年に実施された国際設計コンペによって決定されたもので、黒川氏は計画面積1.5万ヘクタールのマスタープランとCBD地区の詳細設計を担当した。生態回廊や水路都市などの人間と自然との共生といった基本コンセプトが、同市の新市街地の魅力を形作っている。


長沙:エンタメ・グルメのニューメガシティ【中国中心都市&都市圏発展指数2021】第15位

中国中心都市&都市圏発展指数2021
第15位


 青島市は中国中心都市&都市圏発展指数2021の総合第15位だった。同市は前年度より順位を1つ上げた。

 〈中国中心都市&都市圏発展指数は、中国都市総合発展指標の派生指数として、4大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる36の中心都市の評価に特化したものである。同指数は、これら中心都市を、全国297の地級市以上の都市の中で評価している。10大項目と30の小項目、116組の指標からなる。包括的かつ詳細に、中国中心都市の発展を総合評価するシステムである。

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〈中国中心都市&都市圏発展指数〉:【36中心都市】北京、上海、深圳、広州、成都、天津、杭州、重慶、南京、西安、寧波、武漢、青島、鄭州、長沙、廈門、済南、合肥、福州、瀋陽、大連、昆明、長春、ハルビン、貴陽、南昌、石家荘、南寧、太原、海口、ウルムチ、蘭州、フフホト、ラサ、西寧、銀川


「星城」長沙


 長沙市は湖南省の省都であり、「星城」と称される。同市は東に江西省の宜春、萍郷、西に娄底、益陽、南に株洲、湘潭、北に岳陽と隣接し、長江中流域の重要な地域中心都市である。また、米どころ・魚どころである。北京を始めとする中国の都市は長い歴史の中で、さまざまな理由により都市の中心地が変動してきた。そうした中、長沙は、三千年にわたって都市の位置が変わらない「楚漢名城」である。

 長沙の総面積は11,819平方キロメートルにおよび、15のニューヨーク、11の香港、6つの深圳に相当する広さである。中国国内では第157位の規模であり、日本では秋田県と同等の大きさである。

 2022年末の常住人口は1,042万人で、ニューヨークを上回り、スウェーデンの全人口を超えるメガシティである。中国国内では第16位の人口規模である。

 同年のGDPは1.4兆元(約20.8兆円、1元=20円換算)に達し、中国第15位の経済規模がある。これはスリランカのGDPに匹敵する規模である(詳しくは「【ランキング】世界で最も経済リカバリーの早い国はどこか? 中国で最も経済成長の早い都市はどこか?を参照)。

歴史の深さ、継続する文脈、名人の輩出


 長沙は、その長い歴史と豊かな文化資源で知られる。特に、「岳麓書院」は、宋、元、明、清の四つの王朝を経て、現在の湖南大学につながり、世界で最も古い高等教育機関の一つとして人材を輩出し続けている。毛沢東を始め曽国藩、左宗棠ら中国の近代史を形作った偉人が岳麓書院から大勢出ている。まさに岳麓書院正門に掲げられた「惟楚有才,于斯為盛(楚に人材あり、ここに集まる)」という対聯の通りである。

 現在、長沙には23の大学と37の専門学校から成る60の高等教育機関がある。湖南大学、中南大学、国防科学技術大学、湖南師範大学の4校は、国家重点大学「211大学」に含まれ、うち3校は「985大学」に名を連ねる名門校である。

 現在、同市の高等教育能力の高さを示す「高等教育輻射力」は中国第7位である。

 歴史上、長沙生まれ或いは長沙で活躍した傑出人物は数多い。前漢の思想家・文学家である賈誼、唐代の書家・文学家の欧陽詢。近代では画家・齊白石、辛亥革命先駆者の黄興、蔡鍔、文学者の周立波、周楊ら多くの著名人を生んでいる。

 同市は現在なお「傑出文化人指数」で中国第13位、「傑出人材輩出指数」で中国第22位と、好成績を誇っている。

人 材に活躍の場を与える長沙は、外からも人々を吸引し成長している。人口の流出入を示す「流動人口(非戸籍常住人口)」では、湖南省内13都市のうち12都市は、外へ人口が流出し、その規模は約845万人である。これに対して長沙は、流動人口が約264万人の大幅プラスである。よって長沙は中国第14位の人口流入都市となっている。

 住宅価格を低く抑える政策も独特である。中国の省都の中でも長沙の住宅価格は最も低い水準にある。これも、長沙の人口吸入力になっている。長沙は現在、「幸福感都市認定指数」で、杭州、成都と並び、中国第1位の都市である。


中国都市総合発展指標2021
第15位


 長沙は〈中国都市総合発展指標2021〉総合ランキング第15位であり、前年度の順位を維持した。

 「社会」大項目は第13位で、前年度に比べ順位が1つ下がった。3つの中項目で「生活品質」は第12位、「ステータス・ガバナンス」は第13位、「伝承・交流」は第17位だった。小項目で見ると、「居住環境」は第9位とトップ10に入った。また、「消費水準」は第12位、「生活サービス」は第13位、「文化娯楽」は第14位、「人口資質」は第15位、「人的交流」は第18位、「都市地位」は第19位と、6項目がトップ20に入った。なお、「社会マネジメント」は第26位、「歴史遺産」は第97位であった。

 「経済」大項目は第16位で、前年度に比べ順位が1つ上がった。3つの中項目で「経済品質」は第15位、「発展活力」は第17位、「都市影響」は第18位で、3中項目のうちトップ10入りした項目はなかった。9つの小項目のうち、トップ10入りした項目はなかったものの、「イノベーション・起業」は第13位、「ビジネス環境」「広域輻射力」は第14位、「経済構造」「広域中枢機能」は第17位、「経済規模」は第18位、「開放度」は第20位、と、7項目がトップ20に入った。なお、「経済効率」は第21位、「都市圏」は第25位と2項目もトップ30内に入り、同市の経済力は各指標ともにバランス良かった。

 「環境」大項目は第25位で、前年度より順位を5つ上げた。3つの中項目のうち「空間構造」は第25位、「環境品質」は第26位、「自然生態」は第105位であった。9つの小項目のうち、「資源効率」は第5位と、トップ10入りした。また、「環境努力」は第11位、「都市インフラ」は第15位と、2項目がトップ20に入った。なお、「交通ネットワーク」は第23位、「コンパクトシティ」は第30位、「自然災害」は第35位、「気候条件」は第97位、「水土賦存」は第184位、「汚染負荷」は第193位であった。


 〈中国中心都市総合発展指標2021〉について詳しくは、メガシティの時代:中国都市総合発展指標2021ランキングを参照。

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バラエティのリーダー・湖南衛星テレビ


 「湖南衛星テレビ」は、もともと「湖南テレビ局」という名称であったが、1997年に衛星放送を開始して以来、「湖南衛星テレビ」として知られるようになった。マンゴーを模したロゴから「マンゴーチャンネル」という愛称で親しまれ、現在では湖南文化や長沙を象徴する存在となっている。

 このテレビ局は、常に新しい分野を切り開き、全国の他のテレビ局の一歩先を進んでいる。番組の視聴率は、省レベルの衛星テレビ局の中で常にトップを走っている。20年以上にわたって人気を博している「快楽大本営」や、オーディション番組の「スーパーガール」など、多数のヒットバラエティ番組やエンターテイメント作品が生まれた。これらの番組は、SNSで話題となり、特に「スーパーガール」や「快楽男声」は、20年前から中国の若い消費層にトップレベルのエンターテイメントを提供している。

 湖南衛星テレビは、人気バラエティ番組を多数製作するだけでなく、優れた司会者、俳優、歌手を輩出している。何炅、汪涵、謝娜、李宇春など人気タレントが名を連ねている。

 エンタメ都市として名高い長沙は、「文化・スポーツ・娯楽輻射力」で中国第12位であり、「映画館・劇場消費指数」は中国第11位である(詳しくは『【ランキング】世界で最も稼ぐ映画大国はどこか?』を参照)。

■ グルメとインフルエンサーの都市


 長沙は現在、「インフルエンサー都市」と呼ばれる。長沙は優れた自然環境と、長い歴史と文化を背負った美食の都市でもある。湖南衛星テレビの積極的な宣伝が功を奏し、湖南料理が、全国的に根を張り巡らせた。SNSの時代となり、大勢のインフルエンサーが長沙の食の魅力を広げている。

 長沙には、小龍蝦(ザリガニ)、臭豆腐、米粉(ビーフン)といった、独特で多様なグルメが存在する。中国一辛いと言われる「湖南料理」が、多くの観光客を魅了している。ミルクティー業界のスタバとも言われる「茶顔悦色」が2013年に設立され、長沙の新しいグルメの象徴的な存在となった。

 長沙は眠らないエンタメ都市としても有名であり、ナイトエコノミーが、多くの観光客を引き寄せている。

 交通の便も観光都市長沙へのアクセスを容易にしている。「鉄道利便性」が中国第7位、「空港利便性」が中国第15位と、交通の便が高いことも魅力のひとつとなっている(詳しくは【ランキング】中国で最も空港利便性が高い都市はどこか?を参照)。

 観光都市・長沙の「卸売・小売輻射力」は中国第13位、「ホテル・レストラン輻射力」は中国第18位である。

■ 強い機械産業を持つ


 長沙はソフトパワーだけでなく、製造業も優れている。長沙には、三一重工、中聯重科、鉄建重工、山河智能といった世界トップクラスの機械製造企業を擁している。長沙の「製造業輻射力」は中国第36位である(詳しくは「【ランキング】中国で最も輸出力の高い都市はどこか?を参照)。

 併せて、研究開発も活発であり、「科学技術輻射力」は、中国第15位である。国家を代表する研究者の排出数を示す「中国科学院・中国工程院院士指数」は第15位と、ここでも人材の豊富さを窺わせる(詳しくは『【ランキング】科学技術大国中国の研究開発拠点都市はどこか?』)。


青島:中国北方で第3位の経済規模を誇る国際交易拠点【中国中心都市&都市圏発展指数2021】第14位

中国中心都市&都市圏発展指数2021
第14位


 青島市は中国中心都市&都市圏発展指数2021の総合第14位だった。同市は前年度の順位を維持した。

 〈中国中心都市&都市圏発展指数は、中国都市総合発展指標の派生指数として、4大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる36の中心都市の評価に特化したものである。同指数は、これら中心都市を、全国297の地級市以上の都市の中で評価している。10大項目と30の小項目、116組の指標からなる。包括的かつ詳細に、中国中心都市の発展を総合評価するシステムである。

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〈中国中心都市&都市圏発展指数〉:【36中心都市】北京、上海、深圳、広州、成都、天津、杭州、重慶、南京、西安、寧波、武漢、青島、鄭州、長沙、廈門、済南、合肥、福州、瀋陽、大連、昆明、長春、ハルビン、貴陽、南昌、石家荘、南寧、太原、海口、ウルムチ、蘭州、フフホト、ラサ、西寧、銀川


■ 山東半島の国際港湾都市


 青島は、山東省に属する計画単列市で、中国の主要な港湾の一つであり、国際的な海運業の中心地である。

 同市は、山東半島の南東、黄海の東に位置し、総面積は11,293平方キロメートル(秋田県と同等)で中国第163位、7つの区と3つの県級市を管轄している。

 青島は、海岸沿いの丘陵都市であり、全長816.98キロメートルに及ぶ海岸線は優美な曲線を描き、大小さまざまな島が点在している。市の地形は東部が低く、西部が高い傾向にある。南北の両端は盛り上がっており、中央部は凹んでいる。全体として、山地が総面積の15.5%を占め、丘陵が2.1%、平野が37.7%、低地が21.7%を占める。

■ 避暑地として人気の青島


 青島は温帯夏雨気候に属し、海洋の影響を強く受け、四季がはっきりと分かれている。夏季は湿度が高く降雨が多いが、厳しい暑さはない。そのため、避暑地としても人気がある。春と秋は短く、冬季は風が強く寒さは厳しいが、降雪は年10日程度と少ない。冬季の影響により、「気候快適度」は中国第185位となっている。「降雨量」は中国第190位である。

 風光明媚な景観により、観光・保養地としても名高い。「青島」の名は、市内に豊富に存在する常緑樹の景色にちなんで付けられた。

■ 租界の歴史


 青島は、屈指の歴史文化都市であり、道教の発祥地とされている。

 青島の膠州湾は唐宋時代以降、北方の重要な港となった。青島が最初に租借地となったのは1897年であり、当時、ドイツが青島とその周辺地域を占領した。翌1898年、ドイツと清朝との間で「膠澳租界条約」が締結され、青島はドイツの租借地となり、これが青島租界の始まりとなった。

 ドイツは青島を東洋における重要な軍事基地かつ商業中心地と位置づけ、都市開発を積極的に行った。また、ドイツの文化や技術が導入され、それが現在の青島の建築様式や世界的に知られる「青島ビール」などに影響を与えている。ドイツ占領時代の建物の多くは今も保存され、青島の風景の一部を形成している。その街並みの優美さから当時は「東洋のベルリン」と称されていた。

 第一次世界大戦勃発後、1914年に日本がドイツに宣戦布告し、青島は日本によって占領された。第二次世界大戦後、青島は1945年に中国に返還された。新中国成立後、青島は中国の重要な工業都市と港湾都市として発展し、今日の姿に至っている。

■ 中国北方の製造業スーパーシティ


 青島は中国北方の重要な経済中心地の一つである。2021年青島の地域内総生産(GDP)は1兆4,137億元(約28.3兆円、1元=20円換算)に達し、中国第13位であった。中国北方では北京、天津に次ぐ第3位の経済規模を誇る。一人当たりGDPは13万7,827元(約276万円)で、中国第91位だった(詳しくは【ランキング】世界で最も経済リカバリーの早い国はどこか? 中国で最も経済成長の早い都市はどこか?を参照)。

 青島は製造業基地として存在感が大きく、「製造業輻射力」は中国第13位である。山東省内第2位の煙台は中国第24位に留まっているため、省内で圧倒的な順位を誇っている。特に家電産業では、ハイアール等、中国有数の企業が青島市に拠点を置いている(詳しくは【ランキング】中国で最も輸出力の高い都市はどこか?を参照)。

■ 渤海湾の巨大貿易地


 青島は港湾都市としての存在が大きい。世界130カ国以上の地域と450以上の港との間で貿易が行われており、コンテナ取扱量は世界第5位に名を連ねている。「コンテナ港利便性」も中国第5位である(詳しくは【ランキング】世界で最も港湾コンテナ取扱量が多い都市はどこか?)を参照)。

 2021年における青島の輸出入総額は前年比32.4%増の8,498億元(約17兆円)で、中国第9位であった。うち輸出総額は前年比27.0%増の4,921億元(約9.8兆円)で、中国第11位。輸入総額は前年比40.7%増の3,577億元(約7.2兆円)で、中国第10位であった。輸出入ともに、青島は山東省内トップの規模を誇る。

 また、青島は日本とのビジネス関係が深く、対日輸出額は中国第2位であり、対日輸入額は中国第3位である。特に、野菜・水産物等の食品関連の対日輸出が大きなウエイトを占めている。

■ 国際的な総合交通ハブ


 青島は港湾だけでなく、空港、高速鉄道、高速道路を軸とした総合交通運送システムの構築も進めている。

 2021年8月12日には、39年間青島市民を支えてきた青島流亭空港が閉鎖され、山東省初の4F級空港である青島膠東国際空港が開業した。〈中国都市総合発展指標〉の「空港利便性」項目で青島は中国第17位、航空旅客数も同第15位である。いずれも山東省内では第1位である(詳しくは【ランキング】中国で最も空港利便性が高い都市はどこか?を参照)。

 鉄道では、〈中国都市総合発展指標〉の「鉄道利便性」は中国第23位、「高速鉄道便数」も第23位で、「準高速鉄道便数」は第30位であった。これらいずれの指標も山東省内第1位である。

■ 山東省の最大人口吸収都市


 2021年末の常住人口は約1,026万人で中国第13位、山東省内では第1位であった。人口の流出入を示す「流動人口(非戸籍常住人口)」では、山東省内16都市のうち9都市は、外へ人口が流出している。これに対して青島は、流動人口が約170万人の大幅プラスであり、周辺から多くの人口を吸い上げている。よって青島は中国第26位、省内第1位の人口流入都市となっている。


中国都市総合発展指標2021
第16位


 青島は〈中国都市総合発展指標2021〉総合ランキング第16位であり、前年度の第17位から、順位が1つ上がった。

 「経済」大項目は第13位で、前年度より順位が1つ上がった。3つの中項目で「都市影響」は第13位、「経済品質」は第14位、「発展活力」は第15位で、この3項目のうちトップ10入りした項目はなかった。小項目では、「広域中枢機能」は第7位と、9つの小項目のうち1項目がトップ10に入った。なお、「経済規模」は第14位、「経済構造」「イノベーション・起業」は第15位、「ビジネス環境」「広域輻射力」は第16位、「開放度」は第17位、「都市圏」は第27位、「経済効率」は第33位であった。

 「社会」大項目は第17位で、前年度に比べ順位が2つ上がった。3つの中項目のうち「伝承・交流」は第18位、「ステータス・ガバナンス」「生活品質」は第19位だった。小項目で見ると、「社会マネジメント」は第9位と、9つの小項目のうち1項目がトップ10に入った。なお、「人的交流」は第15位、「文化娯楽」「生活サービス」は第16位、「消費水準」は第21位、「居住環境」は第24位、「人口資質」は第25位、「都市地位」は第35位、「歴史遺産」は第115位であった。

 「環境」大項目は第77位で、3つの中項目のうち「空間構造」は第33位、「環境品質」は第132位、「自然生態」は第144位であった。9つの小項目のうち、「都市インフラ」は第10位と、1項目がトップ10に入った。なお、「自然災害」は第12位、「環境努力」は第16位、「交通ネットワーク」は第31位、「コンパクトシティ」は第43位、「水土賦存」は第134位、「資源効率」は第153位、「汚染負荷」は第161位、「気候条件」は第177位であった。


 〈中国中心都市総合発展指標2021〉について詳しくは、メガシティの時代:中国都市総合発展指標2021ランキングを参照。

 

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■ 一大観光都市


 青島はその美しい海岸線と歴史的な建築物で知られ、多くの観光客を引きつけている。主な観光地には、青島海洋世界、青島動物園、青島科学技術博物館、青島ビール博物館、八大峡公園などがある。特に海外からの観光客が多く、〈中国都市総合発展指標〉の「海外観光客」で、青島は第10位と、第15位の済南を上回り、山東省内で最も高い順位である。

■ ヨットと映画ロケの聖地


 青島は豊かな文化遺産と活気あるエンタメを持つ都市である。〈中国都市総合発展指標〉の「文化・スポーツ・娯楽輻射力」は中国第18位である。市内には、青島大劇院、青島市図書館、青島市美術館など、多くの文化施設を有する。「博物館・美術館」は中国第16位、「動物園・植物園・水族館」は中国第19位、「公共図書館蔵書数」は中国第32位である。

 また、青島は映画の都としても知られ、映画ロケ地を多く持ち、映画祭や音楽祭も多数開催されている。その影響もあり、青島の〈中国都市総合発展指標〉における「映画館・劇場消費指数」は中国第20位であり、山東省内で最も順位が高い(詳しくは【ランキング】世界で最も稼ぐ映画大国はどこか?を参照)。

 スポーツにおいても、青島は多くのスポーツイベントを開催している。青島は2008年の北京オリンピックのヨット競技の会場となり、その後も多くの国際的なヨット大会が開催されており、いまや中国におけるヨットの聖地となっている。また、青島はプロサッカーチーム、青島中能の本拠地でもある。〈中国都市総合発展指標〉の「スタジアム指数」は中国第8位と、トップの規模を誇る。

■ 科学技術・本社機能・高等教育


 青島は近年では科学技術の発展にも注力している。〈中国都市総合発展指標〉の「科学技術輻射力」で同市は中国第18位と、省内トップの実力を有する。「特許取得数指数」は中国第10位と全国トップ10に入る成績を誇り、「R&D要員」は第18位、「R&D支出指数」は第19位に躍進している(詳しくは【ランキング】科学技術大国中国の研究開発拠点都市はどこか?)。ただし、「中国都市IT輻射力」は第34位と、第14位の済南に水をあけられており、今後の発展が望まれている(詳しくは【ランキング】中国IT産業スーパーシティはどこか?を参照)。

 同市は屈指の交流交易機能を活かし、本社機能の立地も進んでいる。「メインボード上場企業」は中国第18位と済南の第27位を上回る。ユニコーン企業は4社立地している。

 また、青島には多くの有名な大学と研究所が立地している。青島科技大学、中国海洋大学、青島大学など、多くの学生がこれらの教育機関で学んでいる。

 〈中国都市総合発展指標〉の「高等教育輻射力」で青島は中国第17位と山東省内トップクラスの成績を誇る。


寧波:港湾機能をベースとした製造業スーパーシティ【中国中心都市&都市圏発展指数2021】第13位

中国中心都市&都市圏発展指数2021
第13位


 寧波市は中国中心都市&都市圏発展指数2021の総合第13位だった。同市は前年度より順位を1つ下げた。

 〈中国中心都市&都市圏発展指数は、中国都市総合発展指標の派生指数として、4大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる36の中心都市の評価に特化したものである。同指数は、これら中心都市を、全国297の地級市以上の都市の中で評価している。10大項目と30の小項目、116組の指標からなる。包括的かつ詳細に、中国中心都市の発展を総合評価するシステムである。

CCCI2017 | CCCI2018 | CCCI2019 | CCCI2020

〈中国中心都市&都市圏発展指数〉:【36中心都市】北京、上海、深圳、広州、成都、天津、杭州、重慶、南京、西安、寧波、武漢、青島、鄭州、長沙、廈門、済南、合肥、福州、瀋陽、大連、昆明、長春、ハルビン、貴陽、南昌、石家荘、南寧、太原、海口、ウルムチ、蘭州、フフホト、ラサ、西寧、銀川


■ 古くからの一大貿易拠点都市


 寧波は、浙江省の東部に位置する計画単列市であり、中国東部沿岸の重要な港湾都市である。2021年までに、寧波は6つの区、2つの県級市、2つの県を管轄し、総面積は9,816平方キロメートル(青森県と同程度)である。寧波は雨量が多く、亜熱帯モンスーン気候に属し、温暖湿潤で、四季がはっきりしている。

 地理的に、東は舟山群島が点在し、西は紹興市、南は台州市と隣接している。海岸線が長く、その総延長は1,594キロメートルにも達し、大小614の島を有している。

 寧波は7000年前の稲作文化として名高い「河姆渡新石器遺跡」を有し、また秦の時代、徐福の大船団が寧波から出発した伝説がある。唐の時代、寧波はすでに揚州や広州と並ぶ中国三大貿易港の一つとなっていた。

 1127年に南宋が杭州に都を置いた後は、寧波の地理的な重要性が更に高まり、杭州の対外貿易のほとんどを担うようになった。この時代に寧波は、広州、泉州と並ぶ対外貿易の三大港の一つに数えられていた。

 しかし、明朝初頭に、倭寇や海賊対策のため、寧波は重要な海防基地となった。政府から遠洋舶の製造が禁止され、沿海部の貿易が厳しく制限されて寧波の経済発展が後退した。

 1545年に、ポルトガルが寧波で貿易活動を展開しはじめ、最初は密貿易であったが、1567年以後、公的な貿易も行うようになった。その後、オランダやイギリスからも商人が相次ぎやってきて、寧波は再び一大貿易拠点都市となった。

■ 群を抜く港湾能力


 現在、寧波は港湾機能中枢都市の地位をより高め、2021年に寧波―舟山港の年間貨物取扱量は世界で第1位、コンテナ取扱量は世界第3位を誇っている(詳しくは、「【ランキング】世界で最も港湾コンテナ取扱量が多い都市はどこか?」を参照)。

 寧波―舟山港は中国の一大鉄鉱石中継基地、原油・石炭輸送基地、穀物輸送基地である。寧波は240以上の国際航路で、100以上の国・地域とつながっている。

■ 民営経済の活力をベースに


 改革開放以降、寧波経済は活力に満ちている。その原動力は民営経済である。寧波は、中国商人発祥の地とも呼ばれ、上海人の1/4は寧波出身者と言われている。また、寧波は華僑の故郷としても有名で、30万人以上の寧波人が世界50以上の国と地域に居住している。海外の寧波人は、寧波市と世界を結ぶ重要な架け橋となっている。

 2021年末までに、寧波には香港、上海、深圳の三大メインボードに上場する企業が84社立地し、中国で第9位の規模を誇っている。現在、寧波GDPの80%以上が民営経済によって生み出されている。

 2021年、寧波の地域内総生産(GDP)は1兆4,595億元(約29.2兆円、1元=20円換算)で、中国第12位であった。成長率は、前年比8.2 %であった。一人当たりGDPは15万3,922元(約308万円)で、中国第12位だった(詳しくは「【ランキング】世界で最も経済リカバリーの早い国はどこか? 中国で最も経済成長の早い都市はどこか?」を参照)。

■ 人口吸収でメガシティが目前に


 経済成長が人口を吸引し、2021年末の常住人口は約954万人で中国では第22位の人口規模であった。寧波は、流入人口が杭州とほぼ同等で約327万人であり、全国から多くの人口を吸い上げている。よって寧波は中国第11位の人口流入都市となっている。寧波は人口1000万人を超えるメガシティになるのも時間の問題だ。

人口吸収都市

2021年末の常住人口は約954万人で中国第22位であった。人口の流出入を示す「流動人口(非戸籍常住人口)」では、浙江省内11都市のうち9都市は、外部から人口が流入している。寧波は、流動人口が杭州と同等の約327万人の大幅プラスであり、周辺から多くの人口を吸い上げている。よって寧波は中国第11位の人口流入都市となっている。


中国都市総合発展指標2021
第14位


 寧波は〈中国都市総合発展指標2021〉総合ランキング第14位であり、前年度の順位を維持した。

 「経済」大項目は第12位で、前年度の順位を維持した。3つの中項目で「経済品質」は第11位、「発展活力」および「都市影響」は第12位で、3中項目のうちトップ10入りした項目はなかった。小項目では、「広域中枢機能」は第8位、「開放度」は第9位、「経済構造」は第10位と、9つの小項目のうち3項目がトップ10に入った。なお、「経済規模」は第12位、「ビジネス環境」は第13位、「経済効率」は第15位、「イノベーション・起業」は第16位、「都市圏」「広域輻射力」は第19位であった。

 「社会」大項目は第18位で、前年度に比べ順位が1つ下がった。3つの中項目で「生活品質」は第16位、「ステータス・ガバナンス」は第20位、「伝承・交流」は第26位だった。小項目で見ると、9つの小項目のうち、トップ10入りした項目はなかったものの、「居住環境」は第12位、「社会マネジメント」は第13位、「文化娯楽」「消費水準」は第17位と、5項目がトップ20に入った。なお、「生活サービス」は第25位、「人口資質」は第31位、「都市地位」は第32位、「歴史遺産」は第33位、「人的交流」は第34位であった。

 「環境」大項目は第29位で、前年度より順位を4つ上げた。3つの中項目のうち「空間構造」は第28位、「環境品質」は第38位、「自然生態」は第83位であった。9つの小項目のうち、トップ10入りした項目はなかったものの、「環境努力」は第14位、「都市インフラ」は第20位と、2項目がトップ20に入った。なお、「コンパクトシティ」は第26位、「交通ネットワーク」は第38位、「汚染負荷」は第40位、「気候条件」は第71位、「資源効率」は第77位、「自然災害」は第93位、「水土賦存」は第205位であった。


 〈中国中心都市総合発展指標2021〉について詳しくは、メガシティの時代:中国都市総合発展指標2021ランキングを参照。

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■ 製造業スーパーシティとしての発展


 寧波は、港湾と民間活力をベースに現在、一大製造業スーパーシティに成長した。〈中国都市総合発展指標〉の「中国都市製造業輻射力2020」では寧波は中国で第5位。2021年、同市の工業付加価値は6,298億元(約12.6兆円)を達成し、前年比で11.0%の増加となった。輸出総額も前年比19%増の7,624億元(約15.2兆円)で、中国第5位(詳しくは「【ランキング】中国で最も輸出力の高い都市はどこか?」を参照)。

 製造業の成長に伴い、科学技術への投資も大きく拡大している。〈中国都市総合発展指標〉の「中国都市科学技術輻射力2021」で寧波は中国第9位であり、トップ10にランクインした。「R&D人員」は中国第9位、「特許取得数指数」は中国第16位、「国際特許取得総数」は中国第14位と、科学技術力を測る多くの指標が高い成績を収めている。その結果、市内にユニコーン企業が3社立地し、その企業価値は760億ドル(約10.6兆円)に達している。


西安:一帯一路で甦る古都長安のパワー【中国中心都市&都市圏発展指数2021】第12位

中国中心都市&都市圏発展指数2021
第12位


 西安市は中国中心都市&都市圏発展指数2021の総合第12位に輝いた。同市は前年度より順位を1つ下げた。

 〈中国中心都市&都市圏発展指数は、中国都市総合発展指標の派生指数として、4大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる36の中心都市の評価に特化したものである。同指数は、これら中心都市を、全国297の地級市以上の都市の中で評価している。10大項目と30の小項目、116組の指標からなる。包括的かつ詳細に、中国中心都市の発展を総合評価するシステムである。

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〈中国中心都市&都市圏発展指数〉:【36中心都市】北京、上海、深圳、広州、成都、天津、杭州、重慶、南京、西安、寧波、武漢、青島、鄭州、長沙、廈門、済南、合肥、福州、瀋陽、大連、昆明、長春、ハルビン、貴陽、南昌、石家荘、南寧、太原、海口、ウルムチ、蘭州、フフホト、ラサ、西寧、銀川


■ 西北地域の最大都市


 西安は陝西省の省都で、中国西北地域の政治・経済・文化の中心地である。古くは長安や鎬京と呼ばれ、関中平原メガロポリスの中心都市となっている。2021年末現在、西安市は11区と2郡を管轄し、東西は204キロメートル、南北は116キロメートルにわたり、面積は10,752平方キロメートル(岐阜県と同程度)で中国第170位である。

 西安は紀元前11世紀からから約2,000年の間、秦、漢、隋、唐など13の王朝の都として栄えてきた。1981年に国連教育科学文化機関(ユネスコ)が選定した世界十大古都の一つに数えられている。西安は中華文明の重要な発祥地であり、シルクロードの起点でもある。

■ 豊かな自然資源の恵み


 西安は中国の北西部、関中平野の中央に位置し、北は渭河、南は秦嶺山脈に囲まれ、地理的な境界が明確な都市である。8つの河川が潤すことから、古くから「八水繞長安」と評されている。

 市内の海抜変化は大きく、中国で最も高度差が激しい地域である。秦岭山脈の海抜は2,000〜2,800メートルで、中でも最南西部にある太白山の最高峰は海抜3,867メートルあるのに対して、渭河平原の海抜は400〜700メートルとなっている。

 秦岭山脈には、高山の灌木草地、針葉樹林、針広葉混交林、落葉広葉樹林などの自然植生タイプが垂直に分布している。秦岭山脈は野生植物資源の宝庫であり、138科681属2224種の野生植物が存在し、中国の種子植物の重要な遺伝資源庫の一つである。また、野生動物資源も多く生息し、哺乳類55種、鳥類177種が含まれ、その中にはジャイアントパンダ、金絲猴、扭角羚秦岭亜種、スマトラカモシカ、オオサンショウウオ、黒鶴、白冠長尾雉、血雉、金雞などの希少動物も含まれている。自然生態系と珍種動植物資源を保護するため、3つの国家級自然保護区が設けられている。西安の「国家公園・保護区・景観区指数」は中国第21位である。

 西安は暖温帯の半湿潤大陸性季風気候に属し、寒暖、乾湿の差があり、四季がはっきりしている。年平均気温は13℃、年降水量は600-650ミリメートルで、その大部分が夏季に集中している。「気候快適度」は中国第173位、「降雨量」は中国第195位である。

■ 内陸部の一大消費地


 2021年における西安の地域内総生産(GDP)は1兆688億元(約21.4兆円、1元=20円換算)で、中国第24位であった。成長率は、前年比4.1%増、過去2年の平均成長率は4.6%であった。その中で、第一次産業GDPは308億元(約6,160億円)で6.1%増、第二次産業GDPは3,585億元(約7.2兆円)で0.9%増、第三次産業GDPは6,794億元(約13.6兆円)で5.7%増であった。一人当たりGDPは8万3,689元(約167万円)で、中国第91位だった(詳しくは【ランキング】世界で最も経済リカバリーの早い国はどこか? 中国で最も経済成長の早い都市はどこか?を参照)。

 住民消費価格(CPI)は前年比1.7%上昇し、商品小売価格は1.4%上昇した。新築住宅の販売価格は7.5%上昇し、中古住宅の販売価格は6.3%上昇した。

 企業の小売売上動向を示す社会消費品零售総額は4,963億元(約9.9兆円)で、前年比0.8%増であった。その中で、内訳がわかる限度額以上企業の小売売上高は2,420億元(約4.8兆円)で、前年3.8%減少した。

 西安の消費力は西北部地域で群を抜いて高く、「国際トップブランド指数」では深圳、広州などを抑えて中国第5位にランクインしている。

■ 内陸部三大貿易地の一つ


 2021年における西安の輸出入総額は前年比26.5%増の4,400億元(約8.8兆円)で、中国第19位であった。うち輸出総額は前年比33.0%増の2,362億元(約4.7兆円)で、中国第22位。輸入総額は前年比19.8%増の2,038億元(約4兆円)で、中国第18位であった。これは成都、鄭州に続く内陸都市としての好成績である(詳しくは【ランキング】中国で最も輸出力の高い都市はどこか?を参照)。

 外資利用額(実行ベース)は87億ドル(約1.2兆円、1ドル=140円換算)で、前年比13.5%増であった。

■ 一大人口吸収都市


 2021年末の常住人口は約1,316万人で中国第9位であった。人口の流出入を示す「流動人口(非戸籍常住人口)」では、陝西省内10都市のうち9都市は、外へ人口が流出している。これに対して西安は、流動人口が約317万人の大幅プラスであり、周辺から多くの人口を吸い上げている。よって西安は中国第12位の人口流入都市となっている。

■ 西北地域における航空、鉄道の中枢


 西安は中国西北部の重要な交通ハブを担っている。その機能は一帯一路政策によってさらに強化されている。

 中国都市総合発展指標の「空港利便性」項目で西安は中国第9位、航空旅客数も第9位である(詳しくは【ランキング】中国で最も空港利便性が高い都市はどこか?を参照)。

 「鉄道利便性」は中国第18位、「高速鉄道便数」も第18位で、「準高速鉄道便数」は第4位であった。


中国都市総合発展指標2021
第12位


 西安は〈中国都市総合発展指標2021〉総合ランキング第12位であり、前年度の第13位から、順位が1つ上がった。

 西北地域の中心都市として「社会」大項目は第8位で、前年度に比べ順位が2つ上がった。3つの中項目で「伝承・交流」は第5位でトップ10入りし、「ステータス・ガバナンス」は第11位、「生活品質」は第15位だった。小項目で見ると、「歴史遺産」は第2位、「社会マネジメント」は第6位、「人的交流」は第7位、「文化娯楽」は第10位と、9つの小項目のうち7項目がトップ10に入った。なお、「都市地位」「居住環境」は共に第11位、「人口資質」は第12位、「生活サービス」は第18位、「消費水準」は第22位であった。西安市内に最高等級病院「三甲病院」は26カ所で、その規模は中国第9位である。医療従事者は12.3万人で、そのうち医師は4.3万人と中国第12位の規模を持つ。

 「経済」大項目は第14位であり、前年度に比べ順位が1つ上がった。3つの中項目で「発展活力」は第11位、「都市影響」は第16位、「経済品質」は第20位で、3項目のうちトップ10入りした項目はなかった。小項目では、「広域輻射力」は第9位と、9つの小項目のうち1項目がトップ10に入った。なお、「ビジネス環境」「イノベーション・起業」は第12位、「開放度」は第14位、「経済規模」は第15位、「広域中枢機能」は第16位、「経済構造」は第20位、「都市圏」は第24位、「経済効率」は第88位であった。

 「環境」大項目は第76位で、3つの中項目のうち「空間構造」は第15位、「環境品質」は第151位、「自然生態」は第212位であった。9つの小項目のうち、トップ10入りした項目はなかったものの、「コンパクトシティ」は第16位、「環境努力」は第17位、「交通ネットワーク」は第18位、「都市インフラ」は第19位と、4項目がトップ20に入った。

 なお「資源効率」は第93位、「自然災害」は第160位、「気候条件」は第176位、「水土賦存」は第187位、「汚染負荷」は第241位であった。2021年のPM2.5年間平均濃度は41マイクログラム/標準立方メートルで、前年比19.6%減少しているものの、全国順位は第260位と芳しくない。二酸化炭素の排出量も多く、その規模はワースト27位と落ち込んでいる。西安市政府はその現状を打破するため、環境改善に向けた努力に多くのリソースを注いでおり、「環境努力指数」は第9位と善戦している。


 〈中国中心都市総合発展指標2021〉について詳しくは、メガシティの時代:中国都市総合発展指標2021ランキングを参照。

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■ 中国トップクラスの観光都市


 西安は中国屈指の観光地である。市内には現在、秦始皇陵、兵馬俑、大雁塔、小雁塔、唐長安城の大明宮遺跡、漢長安城の未央宮遺跡、興教寺塔などの世界遺産があり、その他にも西安城壁、鐘楼・鼓楼、華清池、終南山、大唐芙蓉園、陝西歴史博物館、碑林などの著名な観光地を有している。その結果、中国都市総合発展指標の「世界遺産」において、西安は中国第5位、「無形文化財」は第6位、「重要文化財」は第10位と高順位を誇る。

 こうした文化遺産に魅了された観光客が毎年大勢国内外から同市を訪れている。中国都市総合発展指標の「国内観光客」で、西安は第11位、「国内観光収入」は第16位となっている。

■ 文化・娯楽都市としての輝き


 内外の観光客を惹きつけているのは、文化遺産だけではない。西安は文化・娯楽も盛んな都市である。中国都市総合発展指標の「文化・スポーツ・娯楽輻射力」で中国第6位となっている。

 文化面では、市内には博物館(民間のものを除く)が136館あり、「博物館・美術館指数」は中国第8位、「動物園・植物園・水族館」は中国第10位である。公立図書館は14カ所あり、毎年合計217.5万人が利用し、その蔵書量は中国第2位を誇る。コンベンション産業の発展度合いを示す「展覧業発展指数」は中国第14位であった。

 娯楽面では、「映画館・劇場消費指数」が中国第11位である。スポーツ面では、「スタジアム指数」は第100位に甘んじているものの、西安からはオリンピック金メダリストが4名排出され、「オリンピック金メダリスト指数」は中国第20位となった。

■ 名門大学が数多く立地


 新中国成立以来、西北の中心地である西安に、多くの大学が置かれた。西安交通大学、北西理工大学、西安電子科技大学など7つのトップクラスの大学が立地している。

 中国都市総合発展指標の「高等教育輻射力」で西安は中国第6位を誇り、高等教育機関(大学・専門学校)は63校で、学生は78.4万人で中国第7位。

 大学が数多くあることで、西安は人材輩出の豊富さを示す「傑出人物排出指数」で中国第9位に輝いている。また、国家を代表する研究者の排出数を示す「中国科学院・中国工程院院士指数」は第4位と、中国トップクラスの順位である。他方、住民の教育水準を示す「人口教育構造指数」も第7位である。


武漢:新型コロナウイルス禍と最初に対峙したメガシティ【中国中心都市&都市圏発展指数2021】第11位

中国中心都市&都市圏発展指数2021
第11位


 武漢市は中国中心都市&都市圏発展指数2021の総合第11位に輝いた。同市は前年度より順位を2つ上げた。

 〈中国中心都市&都市圏発展指数は、中国都市総合発展指標の派生指数として、4大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる36の中心都市の評価に特化したものである。同指数は、これら中心都市を、全国297の地級市以上の都市の中で評価している。10大項目と30の小項目、116組の指標からなる。包括的かつ詳細に、中国中心都市の発展を総合評価するシステムである。

CCCI2017 | CCCI2018 | CCCI2019 | CCCI2020

〈中国中心都市&都市圏発展指数〉:【36中心都市】北京、上海、深圳、広州、成都、天津、杭州、重慶、南京、西安、寧波、武漢、青島、鄭州、長沙、廈門、済南、合肥、福州、瀋陽、大連、昆明、長春、ハルビン、貴陽、南昌、石家荘、南寧、太原、海口、ウルムチ、蘭州、フフホト、ラサ、西寧、銀川

中部地域の最大都市


 湖北省の省都、武漢は中国中部地域の最大都市であり、新型コロナウイルスの試練に最初に向き合った都市として近年、国際的な注目を浴びた。

 武漢の総面積約は8,569平方キロメートルで広島県とほぼ同じ。その広大な総面積の4分の1が、琵琶湖の面積の約3.3倍となる水域である。

 近代の武漢は中国東西軸の長江と、南北軸の鉄道大動脈が交差する立地を背景に発展してきた。故に、交通のハブ機能が発達している。〈中国都市総合発展指標〉の「空港利便性」項目では中国第20位、航空旅客数は第11位である(詳しくは【ランキング】中国で最も空港利便性が高い都市はどこか?を参照)。「高速鉄道便数」は中国第9位で、「準高速鉄道便数」は第2位であった。

 2004年から新型コロナウイルス・パンデミック直前の2019年までの15年間、武漢のGDPは年平均12%を超える成長を実現した。2021年のGDPは約1兆7,717億元(約35.4兆円、1元=20円換算)で中国第9位、1人当たりGDPは12万9,805元(約260万円)となった(詳しくは【ランキング】世界で最も経済リカバリーの早い国はどこか? 中国で最も経済成長の早い都市はどこか?を参照)。

 武漢は、面積は湖北省の5.6%にすぎないものの、同省全体のGDPの約38.3%を占めている。2021年に湖北省における武漢の輸出額と輸入額のシェアは、それぞれ57.1%、80.6%に達している(詳しくは【ランキング】中国で最も輸出力の高い都市はどこか?を参照)。

ロックダウンでコロナ感染拡大を封じ込む


 武漢は新型コロナウイルスショックに世界で最初に向き合った都市であった。武漢は〈中国都市総合発展指標〉の「医療輻射力」ランキングで全国第7位の都市である。27カ所の三甲病院(最高等級病院)を持ち、医師約4万人、看護師5.4万人と医療機関病床9.5万床を擁する。しかしながら、武漢のこの豊富な医療能力が、新型コロナウイルスの打撃により、一瞬で崩壊した(詳しくは【レポート】新型コロナパンデミック:なぜ大都市医療能力はこれほど脆弱に?を参照)。

 よくも悪くも中国の医療リソースは中心都市に高度に集中している。武漢は1千人当たりの医師数は4.9人で全国の水準を大きく上回る。武漢と同様、医療の人的リソースが大都市に偏る傾向はアメリカや日本でも顕著だ。ニューヨーク州の1千人当たりの医師数は4.6人にも達している。東京都は人口1千人当たりの医師数が3.3人で、これは武漢より少なく、ニューヨークと同水準にある。

 しかし、武漢、ニューヨークはその豊かな医療リソースをもってしても、新型コロナウイルスのオーバーシュートによる医療崩壊を防ぎきれなかった。2020年末までは、中国の新型コロナウイルス感染死者数累計の83.5%が武漢に集中していた。その多くが医療機関への集中的な駆け込みによる集団感染や医療崩壊による犠牲者だと考えられている(詳しくは【ランキング】ゼロコロナ政策で感染拡大を封じ込んだ中国の都市力 〜2020年中国都市新型コロナウイルス新規感染者数ランキングを参照)。

 武漢は2020年1月23日からの2カ月半にわたる都市封鎖(ロックダウン)で難局を切り抜けた。ゼロコロナ政策によって普段の日常を取り戻した。

 新型コロナウイルス禍と最初に対峙した都市が、医療リソースの豊富な武漢だったのは、ある意味、不幸中の幸いだったかもしれない。武漢における教訓は、新型コロナウイルス感染症に関する数多くの研究論文として昇華され、世界中でかつてない勢いで「知の共有」が進んでいる。

図 武漢ロックダウン期間における新規感染者数・死亡者数

出典:中国湖北省衛生健康委員会HPなどにより雲河都市研究院作成。

全土から集まった医療支援


 新型コロナウイルスのオーバーシュートが発生した当時、武漢に中国全土から多くの支援が集まった。感染者数の爆発的増大で、多くの医療スタッフも院内感染に巻き込まれ、医療従事者の大幅な不足状況が発生した。これに対処するため中国各地から大勢の医療従事者が応援に駆けつけ、その数は4.2万人にも達した。

 病床数の不足については、国の支援で、新型コロナウイルスの専門治療設備の整う「火神山病院」と「雷神山病院」という重症患者専門病院を10日間で建設し、前者で1,000床、後者で1,600床の病床を確保した。このほかに、武漢は体育館16カ所を軽症者収容病院に改装し、素早く1.3万床を確保し、軽症患者の分離収容を実現させた。これによって先端医療リソースを重症患者に集中させ、病床不足は解消された(当時の武漢の取り組みについて詳しくは「【論文】ゼロコロナ政策 Vs ウイズコロナ政策を参照)。

 こうした措置が武漢の医療崩壊の食い止めに繋がった。感染地域に迅速かつ有効な救援活動を施せるか否かが、新型ウイルスを封じ込める鍵となる。しかし、すべての国がこうした力を備えているわけではない。ニューヨーク、東京の状況からみても、医療リソースがかなり整う先進国でさえ救援動員はなかなか難しいことが分かる。

人口引き留め政策


 武漢は約1,365万人の常住人口を抱え、中国第8位の都市人口規模を持っている。人口の流出入を示す「人口流動(非戸籍常住人口)」では、湖北省内12都市のうち10都市で、人口が他都市へ流出している。これに対して武漢は、流動人口が約317万人の大幅プラスにあり、全国で第13位の人口流入都市となっている。

 一方、武漢は89の大学、95の科学研究所、130万人弱の大学生を抱えながら、大卒者のうち同市に残る者は5分の1にも満たない。そこで、2017年、武漢市政府は向こう5年間で大卒者100万人を同市内に引き留めるプロジェクトを発表した。これにより、同市の大卒者は市場価格を2割下回る値段で住宅を購入できるか、あるいは市場価格を2割下回る価格で住宅を借りられる。さらに、最低年収の設定、就職の斡旋、起業のサポートなど「大卒者に最も友好的な都市」へ向けたさまざまな政策を打ち出した。経済のグローバル化と知識集約型産業が進展していくなかで、中国の各都市間の人材の育成と獲得競争が激しくなっている。


中国都市総合発展指標2021
第11位


 武漢は〈中国都市総合発展指標2021〉総合ランキング第11位であり、前年度の順位を維持した。

 「社会」大項目は第11位であり、前年度に比べ順位が6つ上がった。3つの中項目で「ステータス・ガバナンス」は第7位、「生活品質」は第9位、「伝承・交流」は第11位と、3項目のうち2項目がトップ10入りした。小項目で見ると、「都市地位」「人口資質」「社会マネジメント」「人的交流」「消費水準」は第8位、「居住環境」「生活サービス」は第10位と、9つの小項目のうち7項目がトップ10に入った。なお、「文化娯楽」は第12位、「歴史遺産」は第35位であった。

 「経済」大項目は第11位であり、前年度の順位を維持した。3つの中項目で「経済品質」「都市影響」は第10位、「発展活力」は第14位で、3項目のうち2項目がトップ10入りした。小項目では、「都市圏」は第8位、「イノベーション・起業」は第9位、「経済規模」「広域輻射力」は第10位と、9つの小項目のうち4項目がトップ10内に入った。「経済構造」は第11位、「開放度」「広域中枢機能」は第12位、「ビジネス環境」は第19位、「経済効率」は第29位であった。

 「環境」大項目は第15位となり、前年度に比べ順位が12位も上がった。3つの中項目の中で「空間構造」は第5位、「環境品質」は第72位、「自然生態」は第124位と、3項目のうち1項目がトップ10に入った。小項目では、「交通ネットワーク」は第5位、「コンパクトシティ」「都市インフラ」は第8位と、9つの小項目のうち、3項目がトップ10入りした。「資源効率」は第18位、「環境努力」は第46位、「水土賦存」は第123位、「気候条件」「自然災害」は第126位、「汚染負荷」は第204位であった。


 〈中国中心都市総合発展指標2021〉について詳しくは、メガシティの時代:中国都市総合発展指標2021ランキングを参照。

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青山長江大橋の建設


 武漢は、長江と漢江によって「武昌」「漢口」「漢陽」という3つの地域(武漢三鎮)に分けられる。3つの地域間を多くの橋がつなぎ、大都市の大動脈として機能している。1957年10月、全国で初めて長江の両岸をつないだのは武漢長江大橋であった。2020年末には両岸をつなぐ11本目の青山長江大橋が開通した。都市インフラに積極的に投資してきた武漢は、橋の建設を進め、橋の数が増えるごとに都市の一体化も進んだ。

 〈中国都市総合発展指標2021〉によると、武漢は「環境」の「固定資産投資規模指数」が中国第5位である。「橋の武漢」と称されるように、橋の景観は武漢に多彩な表情をもたらしている。

中国で3番目に高いビル「武漢緑地中心」を建設


 世界中で超高層ビルの建設ラッシュが起こっている。高層建築ブームの先頭をいく中国で近年最も注目されているのが、2011年から建設が始まった「武漢緑地中心(Wuhan Greenland Center)」である。竣工予定は2023年末で、総投資額は300億元(約6,000億円)以上になるという。完成すると高さ595メートル、延床面積約300万平方メートルの、世界で7番目に高いビルとなる。ブルジュ・ドバイや上海金茂タワーなど、世界で最も有名な超高層ビルの設計を数多く手がける建築設計チーム「Adrian Smith + Gordon Gill Architecture」が担当した。五つ星ホテル、高級ショッピングモール、オフィス、高級マンションを備えた超高層複合都市を目指している。

 世界の建築専門家らが編集する「高層ビル・都市居住評議会(CTBUH)」のレポートによると、中国は超高層ビルの竣工面積が最も多い国となっている。現在、世界で建設された超高層ビルトップ100のうち、43棟が中国にある。


重慶:「三線建設」「西部開発」「一帯一路」で力を付けた直轄市【中国中心都市&都市圏発展指数2021】第9位

中国中心都市&都市圏発展指数2021
第9位


 重慶市は中国中心都市&都市圏発展指数2021の総合第9位に輝いた。同市は前年度より順位を1つ下げた。

 〈中国中心都市&都市圏発展指数は、中国都市総合発展指標の派生指数として、4大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる36の中心都市の評価に特化したものである。同指数は、これら中心都市を、全国297の地級市以上の都市の中で評価している。10大項目と30の小項目、116組の指標からなる。包括的かつ詳細に、中国中心都市の発展を総合評価するシステムである。

CCCI2017 | CCCI2018 | CCCI2019 | CCCI2020

 

〈中国中心都市&都市圏発展指数〉:【36中心都市】北京、上海、深圳、広州、成都、天津、杭州、重慶、南京、西安、寧波、武漢、青島、鄭州、長沙、廈門、済南、合肥、福州、瀋陽、大連、昆明、長春、ハルビン、貴陽、南昌、石家荘、南寧、太原、海口、ウルムチ、蘭州、フフホト、ラサ、西寧、銀川

■ 戦時首都だった重慶


 重慶は長江上流に位置し、上海の約2,500キロメートル西南にある直轄市である。同市は長江と嘉陵江という2本の河川が合流する地点に開け、山や川の入り組んだ高低差の激しい地形を持つ。市内の標高差は220メートル近くもあり、長い階段が街の随所に見られる独特の風景をつくりだしている。重慶は北海道に相当する8.2万平方メートルの面積に約3,212万人という世界の都市の中で最大の人口規模を抱える。夏季の気候が高温多湿であるため、南京市、武漢市と並び三大「かまど」と言われている。

 重慶は長い歴史を持つ都市であり、『三国志』の「蜀」に属する地として日本でも有名である。1891年に開港し、中国西南部における近代化の拠点となった。1937年から1946年までは中華民国政府の「戦時首都」が置かれ、日中戦争時代の中国の心臓部であった。

■ 最も若い直轄市


 四川盆地南東部に位置する重慶は、中国西南部の中心都市であり、中国の最も若い「直轄市」である。重慶の名は第二次大戦時に「戦時首都」として世界に知られるようになった。1949年の新中国成立後、重慶は一旦、中央直轄市となったが、1954年に四川省に編入された。1983年に「計画単列市(日本の政令指定都市に相当)」に昇格し、1997年には再び四川省から分離して北京、上海、天津に次ぐ直轄市となった。

 「直轄市」とは、省と同格で、他の都市よりも強い行政権限を持っている。重慶には日本の総領事館も設置されている。

 面積や人口において、重慶は中国最大の都市である。市下には13市区、4市、18県、5自治区があり、広大な土地には都市や農村、自然環境など豊富で多様な空間が混在している。

 重慶は、古来より水運で栄え、重要な交通の要所であった。三峡ダムの完成後は、1万トン級の船舶も直接重慶まで航行できるようになった。現在、「コンテナ取扱量」は中国第34位にまで成長し、内陸都市としては好成績を上げている(詳しくは【ランキング】世界で最も港湾コンテナ取扱量が多い都市はどこか?を参照)。

 鉄道や空港を含む広域インフラも整備され、重慶の空港利便性は中国第6位で、極めて高い(詳しくは【ランキング】中国で最も空港利便性が高い都市はどこか?を参照)。

「三線建設」から「西部開発」へ、そして「一帯一路」


 内陸都市の発展は、国家的な戦略推進が欠かせない。重慶は、毛沢東時代の「三線建設」で工業力を蓄え、改革開放後は「西部大開発」政策でインフラ整備を強化し、現在は「一帯一路」政策で海外とのリンケージを強めている。

 重慶には2010年、中国国内3番目の国家級新区「重慶両江新区」が設置された。同年、内陸港唯一の保税区も整備された。2017年には貿易や投資などの規制緩和を重点的に進める「自由貿易試験区(重慶自貿区)」が開設され、国際貿易都市としての性格を強めている。現在、重慶から貴州、広西チワン自治区を経由してシンガポールまでをつなぐ物流ルートが開通し、「一帯一路」構想における一大国際交流交易拠点としての発展が期待されている。

 直轄市となって以来の20年間、重慶市のGDPは年平均12.0%の成長率を達成した。2021年に重慶のGDPは2兆7,894億元(約55.8兆円、1元=20円換算)で中国第5位の規模に達したが、1人当たりGDPは8万6,832元(約174万円)で中国第79位に留まり、同じ西部地域の中心都市である成都の同9万3,983元(約188万円)には及ばない(詳しくは【ランキング】世界で最も経済リカバリーの早い国はどこか? 中国で最も経済成長の早い都市はどこか?を参照)。

 重慶を拠点とする「メインボード上場企業」は、中国第11位の67社に達している。

■ 人口流出都市


 2021年における人口の流出入を示す「人口流動(非戸籍常住人口)」で、重慶は中国全土297地級市以上の都市でワースト8位であった。流出人口は207万人にも達した。すなわち札幌市と同規模の人口が戸籍を移さずに市外へ流れている。中国の経済規模トップ30の都市の中で、重慶は唯一人口流出都市となっている。重慶には広大な農村エリアがあり、中心市街地が吸収しきれないほどの膨大な農村人口を抱えているからである。

 農村部では収入も低く雇用の機会も少ないため、億単位の出稼ぎ労働者(農民工)が、重慶や四川省、河南省、安徽省、貴州省といった内陸部から、沿海部の大都市に流出している。戸籍制度のもとで人口は「農村戸籍」と「都市戸籍」に分けられ、出稼ぎ労働者のほとんどは農村戸籍である。農村戸籍から都市戸籍への転換は厳しく制限され、都市部で農村戸籍者は教育や福祉、就職の機会などにおいて多くの不利益を被っている。

 中国国務院は2014年、戸籍制度改革に乗り出し、現在、戸籍制度そのものが緩和されつつある。


中国都市総合発展指標2021
第7位


 重慶は〈中国都市総合発展指標2021〉総合ランキング第7位であり、前年度の第6位から、順位が1つ下がった。

 「経済」大項目は第7位であり、前年度の順位を維持した。3つの中項目で「経済品質」は第4位、「都市影響」は第7位、「発展活力」は第10位で、3項目すべてがトップ10入りを果たした。小項目では、「経済規模」は第3位、「都市圏」は第4位、「経済構造」「ビジネス環境」は第6位、と、9つの小項目のうち4項目がトップ10入りした。ただし、「イノベーション・起業」は第11位、「広域輻射力」は第12位、「広域中枢機能」は第14位、「開放度」は第18位、「経済効率」は第68位であった。

 「社会」大項目は第9位であり、前年度に比べ順位が2つ下がった。3つの中項目で「ステータス・ガバナンス」は第4位、「伝承・交流」は第9位、「生活品質」は第14位と、3項目のうち2項目がトップ10入りを果たした。小項目で見ると、「社会マネジメント」は第4位、「都市地位」「文化娯楽」は第5位、「歴史遺産」は第6位、「生活サービス」は第9位、「人口資質」は第10位と、9つの小項目のうち6項目がトップ10入りした。なお、「居住環境」は第13位、「人的交流」は第17位、「消費水準」は第30位であった。

 「環境」大項目は第12位となり、前年度に比べ順位が6つも上がった。3つの中項目の中で「自然生態」は第6位、「環境品質」は第17位、「空間構造」は第9位と、3項目のうち1項目がトップ10入りした。小項目では、「水土賦存」「環境努力」は第2位、「都市インフラ」は第3位と、9つの小項目のうち、3項目がトップ10入りした。なお、「資源効率」は第33位、「コンパクトシティ」は第45位、「交通ネットワーク」は第55位、「汚染負荷」は第80位、「気候条件」は第96位、「自然災害」は第295位であった。


 〈中国中心都市総合発展指標2021〉について詳しくは、メガシティの時代:中国都市総合発展指標2021ランキングを参照。

 

CICI2016:第8位  |  CICI2017:第7位  |  CICI2018:第6位
CICI2019:第5位  |  CICI2020:第6位  |  CICI2021:第7位


■ 一大観光都市


 重慶は中国屈指の観光都市である。〈中国都市総合発展指標2021〉によると、「社会」大項目の指標「国内旅行客」は中国第9位、「海外旅行客」は第28位である。「世界遺産」は中国第2位にランキングされた。「環境」大項目の「国家公園・保護区・景観区指数」が中国第2位であった。豊かな自然と文化遺産の調和ある観光資源が、国内外から多くの観光客を魅了している。  

 しかし、観光業の成績で見ると、重慶とライバル都市である成都とは、様相を異にする。2021年の観光客数および観光収入では、成都が重慶に優った。成都の国内観光客数は2億500万人、海外観光客数は25.4万人、国内観光収入は3,085億元、国際観光収入は1.4億ドルに達した。一方、重慶の国内観光客数は1億7,546万人、海外観光客数は5.1万人、国内観光収入は1,076億元、国際観光収入は0.7億ドルと、いずれも成都に及ばなかった。

 観光産業を考える際、重要な点は、観光客にいかにその都市で消費をしてもらうかである。〈中国都市総合発展指標2021〉で各産業の輻射力で両都市を比較すると、その実態が見えてくる。都市の購買吸引力を示す「経済」大項目の指標「卸売・小売輻射力」で、重慶は第6位、成都は第3位という結果で、成都の方が消費者にとってはより魅力的なショッピング都市であった。また、都市の飲食業やホテルの吸引力を示す同大項目の指標「飲食・ホテル輻射力」では、重慶は第14位、成都は第4位となり、歴然たる差を見せつけた。

■ 「横向き摩天楼」という新しいランドマーク


 2019年9月、重慶に新たなランドマーク「ラッフルズシティ(来福士広場)」が誕生した。ラッフルズシティは、長江と嘉陵江が合流する朝天門広場に位置し、総工費38億ドル(約4,066億円)を投じた巨大プロジェクトである。敷地面積は9.2ヘクタール、総床面積は112万平方メートルであり、23万平方メートルのショッピングモール、16万平方メートルのオフィス、1,400戸の住宅、ホテルなどの機能を兼ね備えている。

 スケールは巨大で、イスラエルの建築家モシェ・サフディ氏が設計した外観は、驚く程の奇抜さである。敷地内には8棟の高層ビルが林立し、南側にある6棟は高さ250メートル、北側の2棟は350メートルを誇る。注目すべきは、長さ300メートル以上の橋形建築物「ザ・クリスタル(水晶連廊)」である。「横向き摩天楼」とも呼ばれる通路は、高層ビル4棟を接続し、高層ビル群を三次元の「帆」のように見立てている。2020年5月には、この連結部分もオープンし、地上250メートルの「世界一高い」空中通路が話題を集めている。

■ SNSで一大人気スポットとなった「洪崖洞」


 重慶には名跡が多く存在する。市の南部に位置する「洪崖洞」は、地元の伝統的な建築様式「吊脚楼」を採用して再建された商業施設である。全長約600メートル、総面積は6万平方メートルで、「国家4A級旅遊景区」に指定された屈指の観光地である。GWなどの連休初日には数万人以上が訪れるほど人気で、その理由は、中国発祥の人気スマートフォン・アプリ「抖音(TikTok)」の口コミ効果とされている。

 「洪崖洞」が日本の大ヒットアニメーション映画『千と千尋の神隠し』の舞台「湯屋」に「酷似している」との投稿が「抖音」に上がったことから、美しい「洪崖洞」の夜景を捉えた動画も多数投稿されるようになり、若者の間で瞬く間に大きな話題を呼んだ。中国の観光名所がSNSという新たな手段によって次々と再発見されている好例である。

■ 中国西部最大の旅客輸送ターミナル「重慶西駅」


 重慶西駅が2018年1月に完成し、重慶市と貴州省貴州市を結ぶ鉄道「渝貴鉄路」が同時に開業した。「渝貴鉄路」は全長347キロメートルで、営業最高時速は200キロメートルである。この鉄道は、中国の成渝地区(成都と重慶の間の地区)と西南地区から華南・華東地区に至る高速鉄道ルートを形成し、重慶・貴州間の移動時間が大幅に短縮された。地域の交通利便性がさらに向上し、沿線の中小都市の発展や観光資源開発を牽引している。

 起点となる重慶西駅は、中国西部最大の旅客ターミナルで、完成した第1期の建築面積は約12万平方メートルに及び、年間利用客数4,000万人のキャパシティを持つ。2018年の春運(旧正月前後の帰省ラッシュに伴う特別輸送体制)の期間中、1日あたりの旅客数は10.3万人を記録し、旅客数が10万人を突破した大型旅客輸送ターミナルとなった。

 〈中国都市総合発展指標2021〉では、重慶の「鉄道利便性」は中国第25位であるが、今後の順位上昇が期待される。

■ 世界有数の自動車生産基地


 中国は現在、世界最大の自動車大国である。2022年に中国の自動車生産台数は約2,702万台で世界第1位であり、その世界シェアは31.8%を誇っている。

 重慶も、中国有数の自動車生産基地の一つであり、2022年の同市の自動車生産台数は約210万台に達した。〈中国都市総合発展指標2021〉では、重慶の「自動車産業輻射力」は中国第3位である(詳しくは【ランキング】自動車大国中国の生産拠点都市はどこか?を参照)。

 重慶の「1万人当たり自家用車保有量」は全国第114位とかなり低いが、都市としての全体規模で見ると自家用車保有量は中国第3位の約442万台である。

 一方、重慶の自動車産業は、ライバルである上海や長春に比べると、一車両あたりの生産額が低いことが課題となっている。そのため、同市はEVやスマートカーへの研究開発を進めている。その結果、直近3年間で重慶のEV車生産台数は、2020年の43,200台から、2021年には前年比252.1%増の152,200台、2022年には前年比140%増の365,200台へと急増している。


南京:知識産業化が進む「十朝都会」【中国中心都市&都市圏発展指数2021】第8位

中国中心都市&都市圏発展指数2021
第8位


 南京市は中国中心都市&都市圏発展指数2021の総合第8位に輝いた。同市は前年度より順位を1つ上げた。

 〈中国中心都市&都市圏発展指数は、中国都市総合発展指標の派生指数として、4大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる36の中心都市の評価に特化したものである。同指数は、これら中心都市を、全国297の地級市以上の都市の中で評価している。10大項目と30の小項目、116組の指標からなる。包括的かつ詳細に、中国中心都市の発展を総合評価するシステムである。

CCCI2017 | CCCI2018 | CCCI2019 | CCCI2020

〈中国中心都市&都市圏発展指数〉:【36中心都市】北京、上海、深圳、広州、成都、天津、杭州、重慶、南京、西安、寧波、武漢、青島、鄭州、長沙、廈門、済南、合肥、福州、瀋陽、大連、昆明、長春、ハルビン、貴陽、南昌、石家荘、南寧、太原、海口、ウルムチ、蘭州、フフホト、ラサ、西寧、銀川

 南京は江蘇省の省都であり、同省の政治、経済、科学技術、教育、文化の中心である。長江の入江から380キロメートルに位置し、長江下流の南岸に面しているポジションから、南京には古くから王朝の都が数多く設けられてきた。「南京」とは「南の都」という意味で、面積は6,587平方キロメートル、栃木県と同程度の規模である。

 最初に南京に都を構えたのは、約2,800年前、春秋時代の呉国である。その後、東晋、六朝、南唐、明といった王朝が南京を帝都と定め、「十朝都会」と呼ばれた。太平天国や中華民国統治時代にも都となっていた。14世紀から15世紀にかけては、世界最大の都市として栄華を誇った。

 南京は、古来より戦略的な要所とされていた。そのため、同市には今も立派な城壁がそびえ立っている。明の時代には、全長約35キロメートル(山手線の1周分に相当)、高さ14〜21メートル、13の城門という巨大な城壁が市内を囲むように建設された。

知識産業化が進む南京


 2021年に南京のGDPは1兆6,355億元(約32.7兆円、1元=20円換算)に達し、中国で第10位、1人当たりGDPは173,560元(約347万円)で中国第7位となった(詳しくは【ランキング】世界で最も経済リカバリーの早い国はどこか? 中国で最も経済成長の早い都市はどこか?を参照)。

 南京の経済規模では同省内の蘇州(中国第6位)に劣るものの、省都としての立場を活かし、教育・科学技術の集積と人材ストックをベースにした知識産業を発展させている。中国の科学技術分野の最高研究機関である中国科学院と技術分野の最高機関である中国工程院のメンバーの輩出度合いを示す「中国科学院・中国工程院院士指数」は中国第3位で、研究開発人材の蓄積が実に分厚い。

 従業員数を比較するとそれは顕著である。例えば、製造業の従業員数は南京が約40万人、蘇州が約182万人であり、蘇州は工業都市としての側面が強い(詳しくは【ランキング】中国で最も輸出力の高い都市はどこか? を参照)。対照的に、IT関係の従業員数は南京が約18.7万人、蘇州が約4.1万人である。特に南京はソフトウェア産業において、北京、上海、成都、深圳、広州に続く中国で6番目の規模を持つ(詳しくは、【ランキング】中国IT産業スーパーシティはどこか?を参照)。但し、研究開発要員数は南京が約12.9万人、蘇州が約15.9万人であり、蘇州の研究開発要員数が南京を上回る。かつては南京の科学技術力が蘇州より高かったが、いま製造業スーパーシティ蘇州が工業力をベースに、科学技術力を高めている(詳しくは「【ランキング】科学技術大国中国の研究開発拠点都市はどこか?」を参照)。

 「平均賃金」においては、南京は中国第7位、蘇州は同第18位である。高度人材の行き先としては、南京の方が蘇州より好まれているようだ。

製造業スーパーシティ蘇州に勝る省都南京の中心都市機能


 製造業スーパーシティ蘇州に経済規模で抜かれたとはいえ南京は、中心都市としての力がなお強い。南京は文化教育都市として名高く、市内には南京大学、東南大学、南京師範大学など、創立100年以上の歴史を持つ名門大学が肩を並べ、国から重点的に経費が分配される「国家重点大学(211大学)」は8校も有する。「中国都市高等教育輻射力」は南京が中国第3位で、蘇州が同第30位である。

 「中国都市文化・スポーツ・娯楽輻射力」では、南京が中国第5位、蘇州が同第13位(詳しくは【レポート】中日比較から見た北京の文化産業を参照)。ただし、「映画館・劇場消費指数」では南京が中国第12位、蘇州が同第9位となっており、若者の多い蘇州が南京を上回る(詳しくは【ランキング】世界で最も稼ぐ映画大国はどこか?を参照)。

 医療面においては、「中国都市医療輻射力」は南京が中国第8位と、蘇州の同第34位を大きく引き離している(詳しくは【レポート】新型コロナパンデミック:なぜ大都市医療能力はこれほど脆弱に?を参照)。

 南京は中国の一大交通ハブでもある。「空港利便性」では南京が中国第13位、蘇州が同第191位(詳しくは【ランキング】中国で最も空港利便性が高い都市はどこか?を参照)。「鉄道利便性」では南京が堂々の中国第1位、蘇州市が同第10位である。

 他方、上海、深圳、香港のメインボード(主板)市場に上場している企業の総数(2021年末)は、南京は92企業で中国第7位、蘇州は108企業で同第6位であり、本社機能では蘇州に抜かれた。


中国都市総合発展指標2021
第8位


 南京は〈中国都市総合発展指標2021〉総合ランキング第8位であり、前年度の第7位から、順位が1つ下がった。

 「社会」大項目は第7位であり、前年度に比べ順位が2つ下がった。3つの中項目で「生活品質」は第4位、「ステータス・ガバナンス」「伝承・交流」は第8位と、3項目すべてがトップ10入りを果たした。小項目で見ると、「歴史遺産」「消費水準」は第4位、「人口資質」は第5位、「生活サービス」は第6位、「都市地位」「居住環境」は第7位、「文化娯楽」は第9位、「人的交流」は第10位と、9つの小項目のうち8項目がトップ10入りした。なお、「社会マネジメント」は第17位であった。「社会」の成績は、全体的に高い結果となった。

 「経済」大項目は第10位であり、前年度の順位を維持した。3つの中項目で「都市影響」は第8位、「経済品質」「発展活力」は第9位で、3項目すべてがトップ10入りを果たした。小項目では、「経済効率」は第2位、「イノベーション・起業」「広域中枢機能」は第6位、「広域輻射力」は第7位、「経済構造」は第9位、「ビジネス環境」は第10位と、9つの小項目のうち6項目がトップ10入りした。なお、「経済規模」は第11位、「都市圏」は第16位、「開放度」は第19位であった。「経済」の成績は、各項目ともに全体的に高かった。

 「環境」大項目は第7位となり、前年度に比べ順位が2つ下がった。3つの中項目の中で「空間構造」は第9位とトップ10入を果たしたが、「環境品質」は第39位、「自然生態」は第157位であった。小項目では、「交通ネットワーク」は第6位、「都市インフラ」は第9位、「環境努力」は第10位と、9つの小項目のうち、3項目がトップ10入りした。なお、「コンパクトシティ」は第11位、「資源効率」は第31位、「自然災害」は第88位、「汚染負荷」は第126位、「気候条件」は第134位、「水土賦存」は第194位であった。

 〈中国中心都市総合発展指標2021〉について詳しくは、メガシティの時代:中国都市総合発展指標2021ランキングを参照。

CICI2016:第9位  |  CICI2017:第9位  |  CICI2018:第10位
CICI2019:第9位  |  CICI2020:第7位  |  CICI2021:第8位


ユネスコ「文学都市」


 2019年10月、ユネスコは、新たに66の都市を「ユネスコ創造都市ネットワーク」として選出し、南京がアジアで3番目、中国では初となる「文学都市」に選ばれた。

 2004年、ユネスコは「創造都市ネットワーク」を設立した。文学、映画、グルメ、デザインなどの7分野に分け、世界の都市間でパートナーシップを結び、国際的なネットワークを作っている。2022年末には世界295の都市が参与している。中でも「文学都市」は現在、42都市が選出されている。その多くは欧米の都市が占め、アジアでは、南京の他に韓国の富川と現州、パキスタンのラホール、インドネシアのジャカルタが選出されている。残念ながら、「文学都市」ではまだ日本の都市は選出されていない。

 〈中国都市総合発展指標2021〉によると、南京は「社会」項目の「傑出人物輩出指数」、「傑出文化人指数」ランキングでそれぞれ中国第4位、第5位である。古来より文化資源が豊富で、文人が多く集った。中国最初の詩歌の評論「詩品」が南京で編まれたほか、中国最初の文学評論の「文心雕龍」が編さんされ、最初の児童啓蒙書「千字文」、現存最古の詩文総集「昭明文選」などが、南京で誕生した。中国初の「文学館」も南京に設立された。

 「紅楼夢」、「本草網目」、「永楽大典」、「儒林外史」に代表されるように、南京にゆかりのある中国古典作品は1万作以上ある。

 魯迅、巴金、朱自清、兪平伯、張恨水、張愛玲など近代の文豪も南京とつながりが深い。アメリカのノーベル文学賞受賞作家、パール・バックは、代表作「大地」を南京で創作した。

 「文学都市」の選出には、出身作家数など以外にも、文学を育む都市の環境も重視され、出版文化、書店文化、図書館の整備、市民の読書量なども評価対象である。南京は〈中国都市総合発展指標〉の「公共図書館蔵書量」ランキングで中国第10位にランクインした。

 CNN、BBCなどから「世界で最も美しい書店」と評価された「南京文学客庁」といった24時間営業の書店は、新たな文化スポットとして、市民に人気が高い。市内の公園、観光スポット、デパート、ホテル、地下鉄などに無料の読書スペースが150カ所以上設けられ、読書文化を盛り上げている。

人材争奪戦に励む


 南京の豊かな文化の香りは、市民の教育水準の高さに因るものが大きい。〈中国都市総合発展指標2021〉において、市民の教育水準を示す「人口教育構造指数」は中国第6位である。

 中国も日本と同様、労働者人口の増加がピークを過ぎ、高齢化社会が迫る中、都市の発展のカギを握る有能な若手人材の争奪戦が、全国の都市間でヒートアップしている。

 中国では2022年の大学卒業生が前年比167万人増の1,076万人と、初めて1,000万人を超え、過去最高を更新した。この中で注目されたのは、北京の大学・大学院卒業生28.5万人のうち、修士・博士課程の大学院卒業生数が、全国で初めて学部の卒業生数を超えたことである。他の都市でも同様の傾向が見られ始め、中国の名門大学である上海交通大学、華東師範大学、西安交通大学でも、大学院の卒業生数が学部生を上回る現象が起きている。南京の名門校である南京大学においても、2022年卒業者は9,563人で、そのうち学部卒業生は33%で全体の三分の一となった。

 南京市政府は、大学卒業生という高度人材の若者たちをそのまま市内に定住させるために、市内定住のハードルを低くし、家賃補助や起業補助を普及するなど、さまざまな政策を打ち出している。南京市政府の積極的な取り組みが、人材育成や都市発展において他の都市にも影響を与え、全国的な人材争奪戦の激化が続くと予想される。

中国三大博物館のひとつ南京博物院


 古都・南京には、中国三大博物館のひとつ「南京博物院」がある。北京故宮博物院、台湾故宮博物院と肩を並べる存在となっている。

 南京博物院には、「南遷文物」といわれる元は北京故宮博物院にあった文物を所蔵している。日中戦争の戦火を避けるため、1933年、北京故宮博物院から木箱で2万個といわれる大量の文物が南京博物院(当時は中央博物院)に移送された。南京に戦火が及ぶと、文物は重慶に移されたが、戦後再び南京に戻った。だがその後国共内戦の混乱の中、3千箱が台北に運ばれ、7千箱が北京の故宮博物院に戻された。現在、台北の故宮博物院が所蔵する至宝はこのときに運ばれた文物である。大陸に残った物のうち1万箱が南京博物院にあり、「南遷文物」と呼ばれる。

 〈中国都市総合発展指標2021〉では南京は「社会」項目の「博物館・美術館」ランキングは中国第10位であり、市内には一級の博物館が5館、二級は4館、三級は5館、無級は48館の合計62館が存在している。南京訪問の際は、名勝見物と併せて博物館巡りを行えば、より中国の歴史文化への理解が深まるだろう。