周牧之  東京経済大学教授
▷CO2 関連論文①:周牧之『世界の二酸化炭素排出構造と中国の課題』  ▷CO2 関連論文②:周牧之『二酸化炭素:急増する中国とピークアウトした日米欧』 2 関連論文③:周牧之『アメリカ vs. 中国:成長と二酸化炭素排出との関係から見た異なる経済水準』  
1. 中国都市CO2 排出量ランキング  中国の国土の中で、経済活動が行われる主なエリアは地級市[1] [2] 2 排出構造を知るには、都市レベルでの実態把握が必要であるが、これまでそのような分析は難しかった。本論は、〈中国都市総合発展指標 〉 2 排出に関する実態分析に挑む。〈中国都市総合発展指標 〉 [3]  
 〈中国都市総合発展指標 〉 2 排出状況をモニタリング[4] 2 排出量トップ30都市を示している。同ランキングのトップ10都市は、上海、北京、天津、蘇州、広州、唐山、ハルビン、寧波、青島、重慶となった。また、11位から30位は、東莞、無錫、済南、鄭州、徐州、台州、長春、棗荘、張家口、太原、保定、オルドス、武漢、大慶、南通、西安、南京、フフホト、杭州、深圳であった。これら30都市は中国CO2 の32.6%を排出している。その排出規模は、世界第3位のインドの排出量の1.3倍にあたる。 
 同トップ10都市に限って見ると、そのCO2 排出量は中国全体の16.2%を占める。その排出規模は、世界第4位のロシアの排出量の1.1倍に当たり、日本の排出量の1.6倍に相当する。 
 その意味では、同30都市のCO2 排出構造を分析することには大きな意味がある。 
図1 中国都市CO2 排出量2019ランキング トップ30 出所:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』データセットより作成。  2.CO₂排出量トップ30都市のグルーピング分析  中国CO2 排出量トップ30都市は三つのグループに分類できる。一つは直轄市や省都などから成る中心都市[5] [6] 2 を大量に排出する産業が盛んなエネルギー・重化学工業都市である。その分類には、上海のように中心都市であると同時に沿海部の製造業スーパーシティでもあり、鉄鋼産業もかなりの規模を有するなど、複数の性質を有し、重複している都市がある。 
(1)中心都市 
 中国CO2 排出量トップ30都市のうち、中心都市としては上海、北京、天津、広州、ハルビン、寧波、青島、重慶、済南、鄭州、長春、太原、武漢、西安、南京、フフホト、杭州、深圳の18都市が数えられる。人口と経済の大集積地として、生活水準の高い中心都市が、CO2 排出においても大きな存在となっている。 
(2)製造業スーパーシティ 
 〈中国都市総合発展指標 〉 「中国都市製造業輻射力 」  
 図2が示すように、「中国都市製造業輻射力2020 」 [7] 2 排出量ランキング2019[8] 2 排出においても大きなプレイヤーになっている。 
 ちなみに「中国都市製造業輻射力2020 」 2 排出量ランキング2019」のトップ30には入っていないものの、33位と42位となっている。 
図2 中国都市製造業輻射力2020ランキング トップ30 出所:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』データセットより作成。  (3)エネルギー・重化学工業都市 
 「中国都市CO2 排出量ランキング2019」のトップ30都市には、石油、石炭の産地、または電力、鉄鋼、石油化学などCO2 を大量に排出する産業が盛んな、エネルギー・重化学工業都市が多い。本論では『中国都市総合発展指標』の中の「都市発電量」、「都市鉄鋼産業輻射力」、「都市石炭鉱業輻射力」などの指標を使い、これらエネルギー・重化学工業都市の実態を分析する。 
① 中国都市発電量ランキング2020 
 火力発電はCO2 を大量に排出する産業である。〈中国都市総合発展指標 〉 [9]  
 図3が示すように、「中国都市発電量ランキング2020」のトップ30都市は順に、楡林、宣昌、オルドス、浜州、蘇州、銀川、上海、嘉興、重慶、深圳、福州、天津、寧波、包頭、煙台、淮南、麗江、成都、唐山、聊城、昭通、陽江、通遼、フフホト、済寧、大連、徐州、ウランチャプ、西寧、寧徳である。 
 中国CO2 排出量トップ30都市のうち、上記ランキングでトップ30入りした電力生産基地としてオルドス、蘇州、上海、重慶、深圳、天津、寧波、唐山、フフホト、徐州の10都市が数えられる。これらの都市において石炭火力が大量のCO2 を排出している。 
 ちなみに「中国都市発電量ランキング2020」ランキングのトップ10入りの楡林、宣昌、浜州、銀川、嘉興は、「中国都市CO2 排出量ランキング2019」のトップ30には入っていないものの、楡林31位、嘉興44位、浜州78位、銀川84位となっている。宣昌は三峡ダムでの水力発電がメインとなっているためCO2 の排出量は少ない。 
図3 中国都市発電量2019ランキング トップ30 出所:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』データセットより作成。  ② 中国都市鉄鋼産業輻射力 2020 
 鉄鋼産業は製造業の中で最もCO2 を排出している産業である。〈中国都市総合発展指標 〉 「中国都市鉄鋼産業輻射力2020 」 「中国都市鉄鋼産業輻射力2020 」  
 中国CO2 排出量トップ30都市のうち、上記ランキングでトップ30入りした鉄鋼生産基地として唐山、天津、蘇州、無錫、済南、武漢、太原、上海、南京の9都市が数えられる。これらの都市の鉄鋼産業が大量のCO2 を排出している。 
 ちなみに「中国都市鉄鋼産業輻射力2020 」 2 排出量ランキング2019」のトップ30には入っていないものの、邯鄲38位、常州41位、包頭110位、本渓203位となっている。 
図4 中国都市鉄鋼産業輻射力2020ランキング  トップ30 出所:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』データセットより作成。  ③ 中国都市 石炭鉱業輻射力 2020 
 中国の一次エネルギーは著しく石炭に偏っている。現在なお、一次エネルギーに占める石炭の割合は、56%に達している。これは、中国のエネルギー消費量当たりCO2 排出量(エネルギー炭素集約度)を悪化させ、CO2 を大量に排出する構造要因となっている。また、中国では、石炭の産地で火力発電し、消費地に送電する政策を長年採っている。故に石炭産地の都市はCO2 を大量に排出する傾向がある。 
 〈中国都市総合発展指標 〉  
 図5が示すように、「中国都市石炭鉱業輻射力2020」ランキングの上位30都市は順に、済寧、オルドス、大同、晋城、長治、呂梁、楡林、晋中、陽泉、臨汾、太原、朔州、淮南、銀川、淮北、鄭州、唐山、泰安、忻州、三門峡、徐州、鶴壁、咸陽、棗荘、畢節、焦作、フルンボイル、延安、銅川、烏海であった。同30都市が排出するCO2 は、中国全体の13.9%に相当する。 
 中国都市CO2 排出量トップ30都市のうち、上記ランキングでトップ30入りした石炭鉱業基地としてオルドス、太原、鄭州、唐山、徐州、棗荘の6都市が数えられる。またCO2 排出量ランキングトップ30入りの大慶は、石油鉱業都市として名高い。これらのエネルギー産業都市が大量のCO2 を排出している。 
 ちなみに「中国都市石炭鉱業輻射力2020」ランキングのトップ10入りの済寧、大同、晋城、長治、呂梁、楡林、晋中、陽泉、臨汾は、「中国都市CO2 排出量ランキング2019」のトップ30には入っていないものの、大同57位、晋城61位、済寧70位、長治82位、楡林93位、臨汾114位、晋中121位、呂梁124位、陽泉239位となっている。 
図5 中国都市石炭鉱業輻射力2020ランキング  トップ30 出所:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』データセットより作成。  3.CO₂ 排出量トップ30都市の6大要素分析  中国CO2 排出量トップ30都市について、前述したCO₂排出評価6大要素、すなわちエネルギー消費量当たりCO2 排出量(エネルギー炭素集約度)、GDP当たりエネルギー消費量(エネルギー効率)、GDP当たりCO2 排出量(炭素強度)、一人当たりGDP、人口の規模、一人当たりCO2 排出量から分析する。 
(1)エネルギー消費量当たりCO2 排出量(エネルギー炭素集約度)(2019年) 
 中国CO2 排出量トップ30都市について、「エネルギー消費量当たりCO2 排出量」[10]  
 また、11位から30位までは、大慶、東莞、フフホト、西安、太原、寧波、蘇州、上海、鄭州、済南、徐州、青島、無錫、広州、唐山、杭州、重慶、南京、武漢、深圳であった。 
 CO2 排出量トップ30都市全体のエネルギー消費量当たりCO2 排出量平均は2.590(t-CO2 /TCE)で、中国全国平均の1.986(t-CO2 /TCE)をはるかに上回る。なお、同30都市の中で全国平均を上回った都市は、23都市ある。他方、深圳、武漢、南京、重慶、杭州、唐山、広州、無錫、青島の7都市は全国平均を下回った。 
図6 中国CO2 排出量トップ30都市における エネルギー消費量当たりCO2 排出量分析図(2019年) 
出所:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』データセットより作成。  (2)GDP当たりエネルギー消費量(エネルギー効率) 
 中国CO2 排出量トップ30都市について、「GDP当たりエネルギー消費量」をみると、トップ10都市は、唐山、棗荘、大慶、フフホト、張家口、太原、オルドス、徐州、武漢、ハルビンであった。これらはすべて資源都市あるいはエネルギー産業や素材産業に傾斜している都市でもある。 
 また、11位から30位までは、南京、保定、青島、済南、重慶、無錫、寧波、東莞、杭州、鄭州、蘇州、広州、上海、天津、西安、深圳、台州、南通、長春、北京であった。 
 CO2 排出量トップ30都市のGDP当たりエネルギー消費量平均は0.551(TCE/万元)で、全国平均の0.569(TCE/万元)を下回る。しかし上記トップ10都市のGDP当たりエネルギー消費量は全国平均を上回った。なお、同11位から30位までの20都市のGDP当たりエネルギー消費量は全国平均を下回った。つまりこれら中心都市や製造業スーパーシティはCO2 を大量に排出するものの、エネルギー効率パフォーマンスは全国平均より良い。 
図7 中国CO2 排出量トップ30都市における GDP 当たりエネルギー消費量分析図(2019年) 出所:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』データセットより作成。  (3)GDP当たりCO2 排出量(炭素強度) 
 中国CO2 排出量トップ30都市について、「GDP当たりCO2 排出量」をみると、トップ10都市は、張家口、棗荘、大慶、フフホト、保定、オルドス、ハルビン、太原、台州、唐山であった。これらトップ10都市は台州を除いてすべて中国北部の内陸地域に属する地方都市であり、石炭・石油、鉄鉱石の採掘を中心とした資源都市でもある。これら都市では火力発電、鉄鋼や石油・石炭製品などの素材産業が盛んである。 
 また、11位から30位までは、長春、徐州、天津、済南、青島、東莞、寧波、蘇州、西安、南通、無錫、鄭州、上海、北京、広州、南京、重慶、武漢、杭州、深圳であった。 
 CO2 排出量トップ30都市のGDP当たりCO2 排出量平均は1.491(t-CO2 /万元)で、中国全国平均の1.043(t-CO2 /万元)よりはるかに高い。なお同30都市中で全国平均を上回った都市は、16都市ある。他方、深圳、杭州、武漢、重慶、南京、広州、北京、上海、鄭州、無錫、南通、西安、蘇州、寧波の14都市は、全国平均を下回る。これら中心都市や製造業スーパーシティの炭素強度パフォーマンスは、全国平均より良い。 
図8 中国CO2 排出量トップ30都市における GDP 当たりCO2 排出量分析図(2019年) 出所:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』データセットより作成。  (4)一人当たりGDP 
 中国CO2 排出量トップ30都市について、「一人当たりGDP」をみると、トップ10都市は、無錫、北京、オルドス、南京、蘇州、深圳、上海、杭州、広州、寧波市であった。オルドスという資源都市を除く他9都市が製造業スーパーシティと中心都市である。 
 また、11位から30位までは、南通、武漢、青島、済南、天津、鄭州、唐山、東莞、フフホト、徐州、台州、太原、重慶、西安、大慶、長春、ハルビン、棗荘、張家口、保定であった。 
 中国CO2 排出量トップ30都市の一人当たりGDP平均は106,490(元/人)で、中国全国平均の72,568(元/人)よりはるかに高い。なお、30都市で全国平均を上回った都市は、26都市にのぼる。他方、ハルビン、棗荘、張家口、保定の北方4都市は、大量のCO2 を排出するものの一人当たりGDPが全国平均を下回った。 
図9 中国CO2 排出量トップ30都市の 一人当たりGDP 分析図(2019年) 出所:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』データセットより作成。  (5)人口規模 
 中国CO2 排出量トップ30都市について、「人口規模」をみると、そのトップ10都市は、重慶、上海、北京、広州、深圳、天津、西安、蘇州、鄭州、武漢であった。四大直轄市をはじめとする中心都市や、改革開放後人口が膨らんだ製造業スーパーシティである。 
 中国で市街地人口が1000万人を超えメガシティ(超大都市)として指定されている上海、北京、深圳、重慶、広州、成都、天津の7都市の中で、6都市が上記のトップ10都市に入っている。 
 さらに、常住人口で図る中国都市人口規模ランキングで、トップ30都市は、重慶、上海、北京、成都、広州、深圳、天津、西安、蘇州、鄭州、武漢、杭州、臨沂、石家荘、東莞、青島、長沙、ハルビン、南陽、温州、仏山、邯鄲、寧波、濰坊、合肥、南京、保定、済南、徐州、長春であった。このランキングの中で、重慶、上海、北京、広州、深圳、天津、西安、蘇州、鄭州、武漢、杭州、東莞、青島、ハルビン、南京、保定、済南、徐州、長春の19都市が、CO2 排出量トップ30にも名を連ねた。 
 上記の分析から、都市の人口規模がCO2 排出量に大きく影響していることがわかる。CO2 排出量トップ30都市の常住人口合計は3.3億人に達し、中国全人口の23.5%を占める。 
 また、人口規模が全国平均水準を下回るオルドス、大慶、フフホト、棗荘、張家口の5都市はすべて北方の地方資源都市で、人口は少ないものの大量にCO2 を排出している。 
図10 中国都市CO2 排出量トップ30都市の 人口規模分析図(2020年) 出所:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』データセットより作成。  (6)一人当たりCO2 排出量 
 中国CO2 排出量トップ30都市について、「一人当たりCO2 排出量」をみると、トップ10都市は、オルドス、大慶、フフホト、棗荘、張家口、太原、蘇州、唐山、無錫、天津であった。蘇州、無錫という二つの製造業スーパーシティを除き、他は中国北部内陸地域に属する石炭、石油そして鉄鉱石を産出する地方都市である。それら都市では火力発電及び鉄鋼や石油・石炭製品などの素材産業が盛んである。 
 また、11位から30位までは、台州、寧波、青島、北京、東莞、上海、長春、ハルビン、済南、南通、徐州、南京、広州、鄭州、保定、西安、杭州、武漢、重慶であった。 
 CO2 排出量トップ30都市全体の一人当たりCO2 排出量平均は13.7(t-CO2 /人)で、全国平均は、7.4(t-CO2 /人)のほぼ2倍にも達している。なお、30都市中で全国同平均を上回った都市は、26都市に及ぶ。他方、重慶、深圳、武漢、杭州の4都市は、全国同平均を下回った。 
図11 中国CO2 排出量トップ30都市における 一人当たりCO2 排出量分析図(2019年) 出所:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』データセットより作成。  4.中国のCO2 問題への取り組みは都市の本気度による  本論は、中国の都市を網羅したCO2 に関する分析で、排出量トップ30都市のCO2 排出構造を、グルーピング分析や6大要素分析を通じて明らかにした。こうした分析で、都市のCO2 排出には人口規模や生活水準そして産業構造が複雑に絡んでいることが明らかになった。CO2 排出量トップ30都市の中には、膨大な人口を抱える中心都市でありながら、上海、天津、武漢に代表されるように、製造業スーパーシティやエネルギー・重化学工業都市の顔も見せる都市が多い。また、深圳、蘇州、東莞、無錫、寧波、青島、南通のように輸出産業をベースに、製造業スーパーシティとして膨大な人口を吸引して猛成長する都市がある。さらに、唐山のような石炭や鉄鉱石の鉱業をベースに、世界最大の鉄鋼シティに成長した都市がある。大慶のように油田をベースに、一大石油化学シティに成った街もある。オルドス、棗荘、フフホト、徐州に代表されるように、石炭鉱業をベースに火力発電基地となった都市もある。 
 その意味では、中国都市のCO2 問題には、都市問題、産業問題、エネルギー問題の三つの軸が絡んでいる。 
 都市問題として、ライフスタイル向上や公共交通の徹底などによる都市構造の進化が、重要となってくる。また、建築物の省エネルギーも一つ大きな課題である。低温地域にCO2 排出量が多いのは、建築物の断熱性問題から生じている。過去20年間、急ピッチで進んできた中国の都市化は、これらの問題にまだ対応しきれていない部分が多い[11]  
 また、産業問題では、世界に冠たる製造業スーパーシティにおける産業構造の高度化を、一層進める必要がある。加えて、石炭・石油鉱業、発電や鉄鋼産業、そして石油化学を始めとするエネルギー・重化学産業の効率化、省エネルギー化も急ぐべきだろう。 
 さらに、エネルギー構造問題として、石炭に偏重するエネルギー産業構造を大きく変え、再生エネルギーへのシフトも欠かせない。 
 図12は2000-2019年の20年間における中国CO2 排出量トップ30都市のCO2 排出量の増加率を示している。同じ製造業スーパーシティで蘇州、無錫はこの間のCO2 排出量が其々613%増、485%増となったのに対して、深圳は同128%増にとどまった。つまり深圳は、CO2 排出量の少ない成長モデルを見せた。中心都市の中でも西安、上海、杭州、南京、寧波、鄭州、天津、北京、武漢、重慶などはCO2 排出量を200% 以上増やした。これに対して広州はより少ないCO2 排出量の増加の中で長期にわたる成長を実現させた。 
図12 中国CO2 排出量トップ30都市のCO2 排出量増加率(2000-2019年) 出所:雲河都市研究院『中国都市総合発展指標2020』データセットより作成。   中国都市のトップである書記や市長は選挙で選ばれるのではなく、実績に基づいて抜擢される。これまでGDPが重要な実績であったため、各都市は経済成長を第一に競い合っていた。近年、PM2.5 などの環境問題も実績に加わったため、都市レベルにおける環境対策が急速に進んだ。CO2 問題について一般市民は、従来なかなか実感できず、数字化もされてこなかった。『中国都市総合発展指標』における「都市CO2 排出量ランキング」でのCO2 問題の見える化、また本論のような中国全都市のCO2 排出構造に関する分析は、意義が大きい。CO2 問題への取り組みが目に見える実績となれば、都市の取り組みの本気度も上がるだろう。 
 CO2 問題に取り組む中国の本気度は、中国の都市の本気度にかかっている。都市問題、産業問題、エネルギー問題での努力を重ねることで、中国はようやく「2060年までにカーボンニュートラルを目指す」公約の達成が可能となる。 
(本論文では栗本賢一、甄雪華、趙建の三氏がデータ整理と図表作成に携わった) 
[1]  
[2] 
[3]  環境・経済・社会 中国都市ランキング2018―〈大都市圏発展戦略 〉』、NTT出版、2020年10月10日を参照。 
[4]  2 排出量は、人為的CO2 排出量データセット「ODIAC」の推定値を使用している。ODIACデータセットは、人為的CO2 排出量を全世界カバーし、約1kmメッシュ(3次メッシュ)で構成され、2000年1月から2019年12月(最新)まで毎月公開されている。『中国都市総合発展指標』では、地理情報システム(GIS)を用いて、年・都市別データに加工・集計している。CO2 排出量は、2000年からODIACデータセットについて、詳しくは、ODIACホームページ(https://db.cger.nies.go.jp/dataset/ODIAC/ )(最終閲覧日:2022年10月12日)を参照。 
[5]  
[6]  
[7]  Japanese.China.org.cn 、2022年9月22日(http://japanese.china.org.cn/business/txt/2022-09/22/content_78433666.htm)(最終閲覧日:2022年10月19日)を参照。 
[8]  2 排出量データは、2019年が最新である。本論では、中国都市製造業輻射力など他のデータを、CO2 排出量データと比較する際、データを2019年に合わせず、最新のデータを使用する。 
[9]  
[10]  2 排出量データを組み合わせることで、エネルギー消費量当たりCO2 排出量を推計している。 
[11]  環境・経済・社会 中国都市ランキング2018―〈大都市圏発展戦略 〉』、NTT出版、2020年10月10日、pp170-241を参照。 
 本論文は、周牧之論文『都市から見た中国の二酸化炭素排出構造と課題―急増する中国とピークアウトした日米欧―』より抜粋したものである。『東京経大学会誌 経済学』、317号、2023年。