【刊行によせて】周南:現代化都市圏を育成、新型都市化を推進

周 南

中国国家発展改革委員会発展戦略和計画司副司長


 中国の改革開放が始まってすでに40年過ぎた。この40年の成就の一つは、疑いなく都市化である。40年の間に、中国の都市化率は17.9%から、59.8%へ大幅に上昇した。都市人口も1.7億人から8.1億人にまで一気に増えた。都市建成区面積は7,438平キロメートルから5.6万平方キロメートルにまで拡大した。しかし近年、都市が両極化する趨勢も表れてきた。〈中国都市総合発展指標2018〉では、順調に発展する都市を確認することができると同時に、“大都市病”、そして人口流出による“収縮都市”もうかがえる。これは、従来拡張志向で突っ走った都市発展モデルが、最早通用しなくなったことの現れである。

 先進諸国ではロンドン、パリ、ニューヨーク、東京などを代表とする、周辺の地域を含んだ都市圏が形成されて久しい。それは、高度に集積する人口が、中心都市における各種のコストを押し上げ、一部の産業と都市機能が行政区画を超えて外へと押し広がり、中心都市と組み合わさって発展した圏域である。数多くの先進国が、都市圏の発展を促すための計画や法案を制定した。例えばイギリスは早くも1940年代から大ロンドン計画に着手し、21世紀になっても、その第4回目の空間発展戦略計画を制定した。日本は1956年から5度にわたり首都圏基本計画を制定した。政策に導かれ、これら都市圏は、グローバル経済における最も効率のよい、イノベーション活力に満ちた地域となっている。中国の都市化も、高速の発展からクオリティ重視の発展へシフトする中、都市圏の形成を促していくのは一種の必然である。

 2019年2月、中国国務院(政府)の同意のもと、中国国家発展改革委員会は「現代化都市圏育成発展に関する指導的意見」(以下「意見」)を公布した。「意見」は、都市圏の発展が問題意識を鮮明にし、中心都市と周辺との連携発展を重視し、新しい体制づくりに着手し、インフラ整備の一体化を図り、産業の分業を進め、市場の統一を促し、生態環境の連携保護などに取り組むことを求めた。

 「意見」はまた、2022年までにインフラ整備の一体化レベルを大幅に向上させ、生産要素の流通を阻害する障壁を基本的に取り除き、都市機能を補完し合う空間構成を明確にし、環境と調和した住みやすい都市圏の建設を目標とする。2035年には国際的に影響力をもつ都市圏をいくつか作り上げると明記した。

 都市圏の育成には、域内インフラの整備が前提である。「意見」は、メガロポリス内部のメガシティあるいは輻射機能をもつ大都市を中心に、1時間の通勤圏を基本範囲とする都市空間を都市圏として定義した。

 通勤は都市圏の主な特徴の一つで、交通インフラが通勤の前提条件となる。中国では高速道路、高速鉄道、橋梁などの整備が世界でも注目されている。しかし、都市圏における交通網の整備はまだ多くの問題を抱えている。例えば、行政エリアを超える通勤鉄道の整備が遅れている。都市境界にまたがる道路整備も、途切れるなどの問題が多発している。都市圏建設には交通という要を捉え、都市圏交通網の連結性を強化するため、行政エリアを超えた計画、建設、管理の一体化を進めることが大切である。

 都市圏の育成には、域内の分担が肝心である。現在、中国では都市圏の中心都市と周辺との社会経済連携は緊密さに欠けている。2017年、深圳中心部と周辺との人口流動規模は、1日平均12万人回でしかない。しかもこれは中国の都市圏の中では最大規模である。これに対して、東京都市圏内の三県が東京都に通勤する人数は1日平均86万人に達している。

 中国の大部分の都市圏において中心都市と周辺との間は、相互投資規模が50億人民元にも達していない。その原因は、中国では中心都市と周辺との間で分業が進まず、地方の保護主義のもとで、労働力、資本、科学技術などの流動を制約する障壁が多いことにある。

 都市圏建設においては、地方の保護主義を改め、統一市場の妨げを除去することが必要である。他方、都市圏内で中心都市と周辺のそれぞれの特色を鮮明に打ち出し、分業分担を推し進めていくべきである。都市圏育成においては、教育、医療などの公共サービスの均質化も図らなければならない。中国では、行政エリアによって公共サービスの差異が大きい。複数の行政エリアを含む都市圏においては、圏域内の公共サービスの均質化が大きな課題となる。

 都市圏建設は、生態圏の建設でもある。圏域内の地域が共同で環境保護の計画、法案を編成し、グリーンネットを構築し、生態環境の連携保護に取り組み、その品質を高めていくことだ。

 都市圏には、エリアとして、都市と農村双方が存在する。人口としては、都市戸籍と農村戸籍の人々双方が存在している。圏内の、都市と農村の連携発展を図り、また都市戸籍と農村戸籍との人々の間で公共サービスなどにおける差異をなくしていくことが欠かせない。

 都市圏の育成は新型都市化建設の新しい課題である。理論から実践まで探求し続けなければならない。政府の後押しが必要となるが、あくまで市場の主導で進めるべきである。海外の経験に照らせば、都市圏の形成には数十年の時間がかかる。中国でも焦らず時間をかけて、努力を重ねていくことが肝要である。

 中国の地域発展は不均衡で、都市圏の発展段階の差異も大きい。どのような都市が都市圏発展の条件を兼ね備えているのか。都市圏の発展はどのような特色が活かされるべきなのか。これらについては、中国都市総合発展指標の中で答えが見つかるだろう。


プロフィール

周 南 (Zhou Nan)

 1962年生まれ。中国国家発展改革委員会にて、「第8次五カ年計画」以来5度にわたり五カ年計画の編成に直接携わった。近年、農村戸籍人口の市民化推進、またメガロポリスおよび都市圏建設、都市と農村の融合発展などの政策を担当している。『国家新型都市化報告』(2017年版、2018年版)編纂。

(『環境・社会・経済 中国都市ランキング 2018―大都市圏発展戦略』に収録

【刊行によせて】周牧之:世界経済のパラダイムシフトと大都市化

中国都市総合発展指標2017日本語版・発刊にあたって

周牧之
東京経済大学教授

 

 20世紀が「都市化の世紀」であるなら、21世紀はまさに「都市の世紀」、ひいては「大都市の世紀」である。
 20世紀、世界の都市人口は2.5億人から、10倍増の28億人にまで膨れ上がった。20世紀は地球規模での「都市化の世紀」と位置づけられよう。都市化率は猛然と高まり、都市化のスピードは勢いを増した。
 世界の都市人口は2008年、初めて農村人口を超え、地球は正真正銘の「都市惑星」となった。国連の予測によれば、世界人口は2050年に90億人に達し、都市人口は60億人を超えると見られている。

1.急激に進む大都市化、メガシティ化


 さらに注目すべきは、1980年代から急激に進んだ大都市化の潮流である。1980年から2015年までの35年間、人口が100万人以上増えた都市が全世界で何と274都市を数えた。その中で人口が250万人以上増えた都市が92都市、500万人以上増えた都市は35都市、さらに1,000万人以上増えた都市は11都市もあった。この間、同274都市で7.8億人もの人口が増えた。人類はかつてない勢いで大都市に集まった。
 今日、世界には1,000万人以上の人口を抱えるメガシティが29都市ある。この大半は1980年以降、急速に人口が膨れ上がってできたものである。この29都市のうち19都市が臨海型都市、8都市が内陸部に位置する首都で、2都市が内陸部の地域中心都市であった。臨海部あるいは首都などの中心都市であることが、都市経済巨大化の要であることを示している。
 大都市の爆発的発展は、世界経済のパラダイムシフトによって生まれた。1980年代以降、情報革命とグローバリゼーションとが相まって、異なる技術、異なる産業、異なる領域の間での大融合が起こった。同時にそれは、国と国、都市と都市、都市と農村の大融合も起こった。大融合は大変革を生み、大変革は大発展を引き起こした。交流と交易の上に立った融合と変革は、大都市を急速に発展させた。国民経済はまさにこの大融合によってその役割を弱め、これに対して大都市はグローバル化の波に乗り、世界経済の新しい主役として登場してきた。とりわけ沿海都市と行政センター都市は、その開放性、交通利便性そして各種のセンター機能をもって、大融合、大変革、大再編の大舞台となった。

2.中国の都市大発展は世界経済のパラダイムシフトの産物


 世界の大都市化、メガシティ化の時期は、ちょうど中国の改革開放期と重なった。上述の1980年から2015年までの間、中国で人口が100万人以上増えた都市が72に達し、世界の同様の都市の3分の1を占めた。その中で250万人以上増加した都市は中国で30都市を数え、これも世界のおよそ同3分の1を占めた。人口が500万人以上増えた都市は中国で12都市となり、これも世界の3分の1を超えた。都市人口が1,000万人以上増加したのは中国で5都市にのぼる。
 この間、中国の都市人口は3.8億人増加し、同時期、世界の都市人口増加分の3割を占めた。中国で人口が250万人以上増加した30都市の合計人口増加数は1.7億人に達し、同時期の世界同92都市の人口増加総量の3割を占めるに至った。
 さらに注目すべきは、中国の都市で人口が250万人以上増えた30都市(上海、北京、深圳、広州、重慶、天津、東莞、仏山、南京、成都、武漢、杭州、蘇州、西安、廈門、鄭州、汕頭、青島、ハルビン、中山、昆明、大連、長沙、瀋陽、済南、寧波、ウルムチ、南寧、合肥、福州)が、ことごとく首都、直轄市、省都など行政センター都市および沿海地区に集中していたことである。
 言うなれば、中国の急速な都市化、大都市化、メガロポリス化は世界の趨勢と高度に一致し、世界経済のパラダイムシフトの産物と言っても過言ではない。

3.イノベーションと起業の条件


 イノベーションと起業は、交流交易経済の大融合と大変革の時代に繁栄を生み出す重要なアプローチである。上場企業数はイノベーションと起業の進展を測る一つの重要な指数として捉えられる。筆者は〈中国都市総合発展指標2017〉を利用して、中国の地級市以上の297都市を対象とし、上海・深圳・香港の3証券取引所のメインボードに上場する企業数と都市の交通中枢機能、開放交流状況、各輻射力(都市の、ある機能を外部が利用する度合い)などとの相関関係を分析した。
 相関分析は、二つの要素の相互関連性の強弱を分析する手法である。「正」の相関係数は0—1の間で、係数が1に近いほど二つの要素の間の関連性が強い。中でも0.9—1の間は「完全な相関」、0.8—0.9は「非常に強い相関」、0.6—0.8は「強い相関」とする。
 分析の結果、上場企業と空港の利便性、コンテナ港の利便性、鉄道の利便性との相関係数は各々、0.79、0.7、0.66であった。つまり上場企業数と都市の各交通中枢機能とは「強い相関」にあった。
 また、上場企業と貨物輸出・輸入、実行ベース外資導入額、海外旅行客との相関係数は各々0.83、0.74、0.71に達した。つまり上場企業数と都市対外交流の各ファクターとは「強い相関」あるいは「非常に強い相関」にあった。
 さらに、上場企業と金融業輻射力、IT産業輻射力、卸売・小売輻射力、飲食・ホテル輻射力、科学技術輻射力、文化・スポーツ・娯楽輻射力、高等教育輻射力との相関係数は各々0.97、0.93、0.89、0.88、0.88、0.86、0.84に達した。すなわち上場企業数と都市の各輻射力との間にはっきりした「非常に強い相関」あるいは「完全な相関」があった。ここでの輻射力とは、産業の広域影響力を評価する指標である。輻射力が高いことは、当該産業の外部への輸出・移出力が高いことを示す。
 以上のことから、上場企業と交通中枢機能、開放交流、都市輻射力といった数多くの要素との間に、極めて強い相関関係があることがわかった。都市機能が豊富多彩なことが、企業の成長に大きな影響を与えている。つまり、都市における多種多様な要素の融合こそが、新時代の繁栄の基礎を形作っているのだ。
 当然ながら、豊富で強大な都市機能は、都市人口を膨れ上がらせる。上場企業数とDID(人口集中地区)人口規模との相関係数は、0.85にまで高まり、「非常に強い相関」を示している。
 もっとも、都市人口規模の膨張は、都市の積載力にかかわってくる。インフラ整備や都市マネジメント能力のレベルアップにより、都市は人口密度と人口規模の積載力を大幅に伸ばすことができる。1都3県から成る東京大都市圏を例にとると、1950年前後に1,000万人口を突破した同大都市圏は、環境汚染、交通渋滞、住宅不足、インフラ未整備などの「大都市病」に悩まされ、深刻な「過密」問題が起こった。これを受けて日本政府は人口と産業の東京一極集中の阻止を図る一連の政策措置を採り、一時は東京からの遷都さえ取り沙汰された。しかしながら、インフラ整備と都市マネジメント能力が上がり、都市としての積載力が大幅に高まったことで、東京大都市圏の人口規模は今や世界最大で3,800万人となった。同時に「大都市病」もほとんど弾け飛んだ。

4.決め手は都市の智力水準


 とはいえ、世界各地にまだまだ「過密」問題で苦しむ大都市が沢山ある。例えばインドのニューデリー、ムンバイ、メキシコのメキシコシティ、エジプトのカイロ、バングラデシュのダッカ、パキスタンのカラチ、ナイジェリアのラゴス、ブラジルのリオデジャネイロなど発展途上国のメガシティは、巨大なスラム街を抱えたままにある。
 同じような大規模人口を有していても、都市のパフォーマンスはまったくかけ離れている。これは都市発展にかかわる「智力水準」の格差ゆえであろう。都市智力とは、都市計画、インフラ整備、交通システム、エネルギーシステム、環境対策、そして富の分配などを含む都市のマネジメントとガバナンス能力である。
 このような問題意識をもとに、中国都市総合発展指標は世界経済のパラダイムシフトと都市発展メカニズムを研究し、さらに膨大なデータ指標を用いて都市を評価することで、中国の都市「智力」アップにつなげたい。

5.〈中国都市総合発展指標2017〉の特色


 大都市化、メガロポリス化の本質は、すなわち中心都市の競争にある。都市のセンター機能の強化により、人、企業の吸引力と積載力を高めることが、中心都市の競争力を高める肝心要である。中国都市総合発展指標2016のメインレポートでは、「メガロポリスの発展戦略」に焦点をあてたが、続く中国都市総合発展指標2017では、「中心都市の発展戦略」をテーマとする。
 また、同2017同2016のフレームワークを継承した上、衛星リモートセンシングデータとビックデータの採用を増やし、指標の数を133から175へと大幅に増やした。評価システムとして一層の進化を目指した。
 さらに、同2016はトップ20都市のランキングだけを公表していたのに対して、同2017では150都市のランキングを一気に公表し、読者の中国都市の分析をより広範囲にした。
 このように進化した同2017が、都市センター機能の評価を通して、中心都市の発展を促し、世界に広がる大都市、メガシティ間競争において、参考となる指針を示すことができるよう願っている。

【刊行によせて】中井徳太郎:生態環境社会への移行に寄与


中井 徳太郎
環境事務次官


 気候変動・地球温暖化の影響が深刻化し、猛暑や豪雨、巨大ハリケーンなどによる人的・物的災害が大きな経済・社会的負担となり、異常気象を日々実感する状況が地球全体に及んでいる。2015年、国際社会は地球エコシステムと人類社会の未来への危機感を共有し、2つのエポックメーキングな合意に至った。すなわち、21世紀中に脱炭素化を実現し地球温暖化を2℃までにくい止める目標を掲げるパリ協定と、「環境・経済・社会」の17の目標を掲げ2030年までにその統合的達成を目指す国連の持続可能な開発目標(SDGs)である。

 2018年4月、我が国が閣議決定した第5次環境基本計画では、パリ協定とSDGsという世界の大潮流を受け止め、目指すべき脱炭素でSDGsを実現するサステナブルな経済・社会の姿として「地域循環共生圏」を提唱し、これが実現する真に持続可能な循環共生型の社会である「環境・生命文明社会」を目指すとしている。

 「地域循環共生圏」とは、情報通信技術をはじめテクノロジーをフル活用し、各地域において再生エネルギーや衣食住を支える地域資源の活用をすることで自立・分散型の地域を形成しつつ、地域の特性に応じた人的・物的資源を補完し支え合うネットワークをつくりだすことで、脱炭素でサステナブルな循環共生型の経済・社会構造を目指すものである。森里川海といった自然資本に支えられ、水の循環系に象徴される自然のエコシステムの一部として人類は生存しているという原点にまで立ち返って、この人類生存の基盤であるエコシステムが、テクノロジーの有効活用によりそのポテンシャルを発揮し、いかに健全でありうるかという視点で地域や経済・社会をとらえ直すものである。循環・共生という生命・生態系の基本原理すなわち自然界の摂理に人類活動が調和することにより、地下資源依存型の大量生産・大量消費・大量廃棄の経済から脱却し、結果的に脱炭素が達成されることになる。日本の産業界はテクノロジーが切り拓く調和型の未来社会Society5.0を提唱しているが、「地域循環共生圏」とはSociety5.0が描くスマート・テクノロジーの展開を地域において具体化するものに他ならない。この「地域循環共生圏」に向かった経済・社会の資源配分シフトが今後数十年規模で起こるであろうし、またそれを加速しなければならない。そしてこのシフトこそが世界の新たな成長の原動力となるであろう。中国では一足先に「生態文明建設」を国家方針として掲げたが、我が国からの「環境・生命文明社会」の創造、それを具体化する「地域循環共生圏」はまさしくこれと軌を一にしており、今後日本から世界に発信していくこととしている。

 パリ協定により、今世紀後半には従来通りには化石燃料を燃やせない時代が到来するというコンセンサスが共有される中で、すでに脱炭素でSDGsを実現するサステナブルな経済・社会を目指したビジネスの潮流が世界において主流化し、産業構造、経済・社会システムの転換が始まっている。そして、これを金融面で牽引しているのが、ESG投資の顕著な拡大である。2015年のパリ協定とSDGsの採択以降、ESG投資は世界で急拡大をしている。日本のESG投資が世界に占めるウエイトはまだ小さいものの直近の2年で2.4倍になった。またこの文脈で大手の金融機関や機関投資家が石炭関連投融資から撤退するダイベストメントも広がっている。このような資金の流れの潮流により、脱炭素でサステナブルな経済・社会に沿ったビジネスが成長すると同時に、これに逆行するビジネスは、資金調達等が困難になってきている。また、主要なグローバル大企業が、事業活動に必要なエネルギーを全て再生エネルギーで賄うことを目指すRE100に参画してきており、参画企業数は今後さらに増えていくと見られる。この動きはサプライチェーン全体での動きになりつつあり、調達先となる地域の企業で環境経営に優れたところにはグローバル大企業からも注文が入る一方で、環境面で遅れた企業はサプライチェーンから外されるということが現実になってきている。

 21世紀は本書『中国都市ランキング』が指摘するように「大都市の世紀」である。グローバルな資源獲得、生産、流通上の便益や効率性を求めての競争の結果、本書の研究対象である中国をはじめ、世界においては人口移動とビジネスの集中が都市化をもたらした。都市機能の充実が更なる大都市化につながり、周牧之教授が早くから着目してきたようにメガロポリス化は世界の必然の趨勢であった。そのプロセスが進む中で世界は気候変動や資源枯渇をはじめとした環境制約に直面した。今やこの環境制約に目覚めることで人類の文明パラダイムの転換が起きつつある。今後の都市においては、脱炭素化とSDGsの要請を受けて、都市のサステナブルなエコシステムの構築が最重要課題となり、それへの移行こそが新たな成長をもたらすであろう。「環境、社会、経済」の三大項目で構成される本書の〈中国都市総合発展指標〉が「生態環境」を広義に評価し、指標化によりその質的充実度を促す役割を担うことは極めて重要である。

 SDGsの国連での採択以前から、都市化という大潮流の中でいかに生態環境調和を実現するかという問題意識を持ち、周牧之教授を統括プロデューサーに、我が国環境省と中国国家発展改革委員会発展計画司の協力プロジェクトとして、環境、社会、経済のトータルな観点で都市を評価することを研究してきた。その研究がベースになり、〈中国都市総合発展指標〉がサステナブルな経済・社会への移行に寄与すべく発展していることを心から喜びたい。


プロフィール

中井 徳太郎 (なかい とくたろう)

1962年生まれ。大蔵省(当時)入省後、主計局主査などを経て、富山県庁へ出向中に日本海学の確立・普及に携わる。財務省広報室長、東京大学医科学研究所教授、金融庁監督局協同組織金融室長、財務省理財局計画官、財務省主計局主計官(農林水産省担当)、環境省総合環境政策局総務課長、環境省大臣官房会計課長、環境省大臣官房環境政策官兼秘書課長、環境省大臣官房審議官、環境省廃棄物・リサイクル対策部長、総合環境政策統括官を経て、2020年より環境事務次官。

(『環境・社会・経済 中国都市ランキング 2017―中心都市発展戦略』に収録

【刊行によせて】陳亜軍:発展する都市と発展する指標


陳 亜軍
中国国家発展改革委員会発展計画司司長、管理学博士


 世界は「フラットではない」。アメリカ、EU、日本を代表とする先進国は世界経済の中で主導的な地位を占め、大多数の発展途上国は従属的地位にある。こうした「不均衡」は、一国の中でも見られる。世界銀行の『2009年世界発展報告』は、都市を単位に地域発展の差異を図解し、その驚くべき格差を示した。例えば、東京大都市圏は世界最大の“都市”で、人口は3,800万人にも達し、3.6%の国土面積で日本の32.3%のGDPを生み出している。また日本全国の上場企業の58.2%、科学技術者の68.7 %、そして特許取得数の60.6%がこの大都市圏に集中している。大都市は内外から人材、資金、企業を吸収し、急激に膨張している。これに対して他の地方都市の発展は相対的に不十分で、都市間の格差は時に国家間の格差さえ超える勢いで広がっている。

 この意味では、中国もまた「フラットではない」。

 中国では「黒河・騰衝線(胡煥庸線)」 [1] 東南側に位置する43%の国土に、なんと94%の人口が集中している。これに対して、国土の57%に当たる西北地域にはわずか6%の人しか住んでいない。これが中国の空間構造の最も基本的な特徴である。

 また、「胡煥庸線」東南側でさえ、内部の差異は顕著で、都市と農村、そして都市間においてその発展水準の格差は極めて大きい。

 2016年、上海の常住人口は2,419万人で1人当たりGDPは約11.4万元であったのに、安徽省の省都合肥の常住人口が786万人で1人当たりGDPは約8万元、貴州省の省都貴陽の常住人口は469万人で1人当たりGDPは僅か約6.8万元である。3都市の人口規模および1人当たりGDPの格差は極めて大きい。しかし、これは省都以上の中心都市の比較であり、中心都市とその他の地方都市とを比較すると、その格差は尚、著しい。

 もちろん、GDPという単一的な指標による描写だけでは人を納得させることはなかなか難しい。願わくば、都市発展の実態をしっかり反映できる総合的な指標が必要である。数多くの領域の差異を整理し、より総合的に都市の差異を反映させる指標であることが望ましい。こうした指標は、都市の現状を知り、ビジョンを描き、そして公共政策を導入することに役立つ。

 中国国家発展改革委員会発展計画司と雲河都市研究院が協力して開発した中国都市総合発展指標は、まさしく先駆的な都市総合指標である。

 同指標は、都市発展の国際的経験に鑑み、環境、社会、経済を3つの主軸に都市を評価する。それによって中国の都市をより環境に優しく、彩りある社会につなげ、イノベーティブな産業活動を促せるよう期待したい。

 中国都市総合発展指標は指標を用いて、都市発展の水準を評価し、データを活用して都市発展の方向を探る目的で開発された。都市発展は、動態的過程で、それに影響が及ぶ要素はきわめて複雑であり、さまざまな評価手法が有り得る。同指標はこれに一石を投じるものである。

 今後、進む情報化が「不均衡」をさらに複雑化させるだろう。ビックデータや人口知能など現代技術が都市発展構造に与える影響もさらに広がる。

 中心都市は、最新技術開発と応用における優位性でその集約趨勢はさらに強まるであろう。中小都市も、情報技術を利用し、その低コスト空間における優位性を活かせる道を見つけられるよう願いたい。

 その意味では、中国都市総合発展指標が、都市発展における変化に対してリアリティのある追跡を行うことが重要な意味を持つ。

 中国では将来、個々の都市の単独発展よりは、都市が連携するメガロポリス的な発展がメインになるだろう。情報ネットワークと交通インフラ整備によって、都市間におけるさまざまな機能の共有が進んでいく。中国都市総合発展指標の評価対象は個々の都市より、メガロポリスへと重点を移していくだろう。

 都市の発展メカニズムの変化に応じて、中国都市総合発展指標も進化していく。


[1] 黒河・騰衝線とは、中国東北部国境の黒竜江省黒河市から、西南部国境の雲南省保山市騰衝市まで、地図上で引いた線で、中国人口分布の極端な偏りを示す。中国の人口地理学者・胡煥庸が 1933年に提唱した。璦琿・騰衝線、あるいは提唱者の名をとって胡煥庸線とも呼ばれる。


プロフィール

陳 亜軍Chen Yajun

 1965年生まれ。国家産業政策や中長期計画制定に長年携わり、第10次五カ年計画〜第14次五カ年計画を立案する主要メンバーである。また「成渝メガロポリス発展計画」などのメガロポリス発展計画を立案するメンバーでもある。

(『環境・社会・経済 中国都市ランキング 2017―中心都市発展戦略』に収録

【刊行によせて】徐林:中国の発展は都市化のクオリティ向上で


徐 林
中米グリーンファンド会長、元中国城市和小城鎮改革発展センター主任、元中国国家発展改革委員会発展計画司司長


 都市化は、過去40年における中国経済社会高速発展の原動力の一つである。なぜなら都市化の本質は構造改革であり、都市と地域の制約を超え、人口の流動性と再配置が促されるからである。改革開放以来、中国は人類史上最もハイスピードな都市化を経験した。40年間で、中国の都市化率は年平均1%ポイント向上してきた。その結果、現在、都市化率は57.4%に達し、都市の常住人口は7.9億人に膨れ上がった。

 2017年に開催した中国共産党第19回全国代表大会は、中国がすでに高度成長からハイクオリティな発展にシフトする段階にあると宣言した。ハイクオリティな発展には、ハイクオリティな都市化と都市発展が必要である。その意味では今後なお、都市化は中国のさらなる発展の重要なエンジンとなる。

1.問題と挑戦

 中国の急速な都市化の中で、軽視できない問題も数多く累積している。

(1)数多くの都市常住人口が市民化されず、都市内部で二元構造が発生

 目下、中国では農村から都市へ移動した人口が約2.7億人に達し、また戸籍の移動を伴わない都市間移動の人口も8,000万人以上いる。問題なのは、戸籍制度が障害となり、こうした人々が居住都市で市民待遇を受けられず、単なる労働力として利用され、社会的に公平な福祉の待遇を受けられないまま差別されていることである。彼らは事実上、中国の都市発展に多大な犠牲を強いられている。都市繁栄の背後には、こうした人々の辛酸、犠牲、そして諦めがある。非戸籍住民にとって都市には市民感覚が持てず、生活の安定感を欠いている。

(2)拡がる都市空間の非効率利用

 中国の多くの都市では、数多くの工業園区、新区そしてニューシティが計画されている。過剰な開発がゴーストタウン、旧市街地の空洞化などの問題をもたらしている。これまで「土地の都市化が人口の都市化」より進んだことで、都市の土地利用率を低下させてきた。こうした傾向をもたらした地方財政における土地売買への依存などについて真剣に改革していく必要がある。

(3)過剰なインフラ整備

 野心的な都市計画は往々にして過大なインフラ投資を生む。過剰なインフラ整備は、現在、中国の地方政府の債務負担を増大させる大きな要因となっている。

(4)都市の開放性と寛容性の欠如

 中国では大規模人口のマネージメントに対する憂慮から、都市の人口規模が大きくなればなるほど開放性と寛容性が低くなる現象がある。このような開放性と寛容性を犠牲にするような都市のマネージメントは、都市の活力と創造力を弱めている。

(5)都市計画における先見性の欠如

 中国では都市計画における先見性が欠如している。人口予測は過小であったり過大であったりする場合が多く、都市建設はそれに翻弄されている。背後には、都市発展のメカニズムに対する理解のなさがある。

(6)産業構造転換の遅れ

 中国では、計画経済時代に作り上げられた工業都市と資源開発型都市が多数ある。これらの都市では産業構造の転換が遅れ、産業力の低下に伴い、人口が外部へと流出し、衰退の危機にさらされている。

2.方向性と施策

 中国の都市化と都市発展のクオリティの向上をはかるには、下記の方向性と施策が必要だ。

(1)農村からの移動人口の市民化

 中国共産党第19回全国代表大会では、農村からの移動人口の市民化の加速を明確に求めた。すべての都市がこの施策に基づき、すでに都市で安定して就業し暮らしている農村からの移動人口に対し、都市戸籍登録をするかしないかを自主的に選ぶ権利を与えるべきである。

 人口流動が主として経済の遅れた地域から経済発展地域へと進むことから、移動人口の市民化は、中国経済の空間分布と人口の空間分布の最適化をはかることから始まる。ゆえに数多くの農村人口が都市に移動し、多彩な現代文明の薫陶を受け、子女の教育条件が改善されれば、中国人口の質的向上と現代化とに大いに役立つであろう。

(2)都市産業の強化

 都市は絶えまない産業高度化を通して持続発展を可能とする。ただし、これは政府が直接産業に投資することを意味するものではない。政府がなすべきことは、インフラ整備や人材育成を含むビジネス環境の整備である。

(3)都市マネージメントの改善

 都市社会は市民社会である。この意味では、都市マネージメントに住民参画を促すべきである。これは都市の開放性と寛容性そして吸引力の根源となる。現在、世界で最も活力があり、イノベーティブな都市はすべて開放的で寛容性のある都市である。中国も例外ではない。なぜイノベーティブな人材と企業が深圳に集積するかというと、深圳が移民都市であり、中国の他の都市と比べて、より開放性と寛容性を備えているからである。

(4)メガロポリス主体の都市空間作り

 メガロポリスを主体とした大中小都市を協調発展させる都市空間作りを進めるべきである。そのために都市計画の理念、制度、方法の改革を加速しなければならない。メガロポリスのフレームワークの中で、個々の都市の経済産業、インフラ整備、生態保護、社会生活などを総合的にとらえ、最適化を図るべきである。

(5)新たな都市インフラ整備融資制度

 都市インフラ整備は膨大な投資を必要とする。現在、中国の多くの都市ではインフラ整備における融資困難と、都市の債務リスクの双方を抱えている。その原因の一つは、都市インフラ建設の規模が過大で、投資規模と債務規模を拡大したことにある。もう一つは、有効な投融資メカニズムの欠如である。ゆえに、都市インフラ整備における新しい投融資制度の開発が必須である。

(6)都市建築の品質向上

 中国は40年間で都市化率を40%引き上げた。各都市で建築物が雨後の筍のように立ち並んでいる。世界でも例を見ない巨大な建設ラッシュが中国で起こっている。しかし現在、建築物の品質問題も露呈している。ゆえに中国は都市建築の品質向上を急がなければならない。建築設計と工事標準を迅速に改め、建築物の耐久年数を上げ、低炭素かつ省エネを標準とすべきである。

3.〈中国都市総合発展指標〉の意義

 上述したように、都市化と都市発展のクオリティは極めて総合的な概念である。この問題に取り掛かるにあたり、私たち中国国家発展改革委員会発展計画司は東京経済大学の周牧之教授が率いる雲河都市研究院と協力し、中国都市総合発展指標を開発した。中国の地級市以上の297都市を統一された指標システムによって評価し、総合的に都市発展クオリティをはかることができた。

 もちろん、指標体系自身も都市評価を通じて議論し改善し続けるべきであろう。最も大切なのは、こうした評価の継続である。それによって、都市の発展クオリティを年毎にシステマティックに観測できると同時に、時間軸に沿って都市発展の歴史も記録できる。


プロフィール

徐 林Xu Lin

 1962年生まれ。南開大学大学院卒業後、中国国家計画委員会長期計画司に入省。アメリカン大学、シンガポール国立大学、ハーバード・ケネディスクールに留学した。中国国家発展改革委員会財政金融司司長、同発展計画司司長を歴任。2018年より現職。
 中国「五カ年計画」の策定担当部門長を務め、地域発展計画と国家新型都市化計画、国家産業政策および財政金融関連の重要改革法案の策定に参加、ならびに資本市場とくに債券市場の管理監督法案策定にも携わった。また、中国証券監督管理委員会発行審査委員会の委員に三度選ばれた。中国の世界貿易機関加盟にあたって産業政策と工業助成の交渉に参加した。

 編書:『環境・社会・経済 中国都市ランキング—中国都市総合発展指標』(2018年、NTT出版、周牧之と共編著)、『中国城市総合発展指標2016』(2016年、人民出版社〔中国〕、周牧之と共編著)。

(『環境・社会・経済 中国都市ランキング 2017―中心都市発展戦略』に収録

【刊行によせて】安斎隆:わくわく感を与える〈中国都市発展指標〉


安斎 隆
東洋大学理事長、セブン銀行元会長


 中国都市総合発展指標日本語版『中国都市ランキング』を手にして、「よくぞかくも斬新なアイデアから生み出されたものだ」と感心し、しばらくすると「当然あってしかるべき研究成果」であり、これからは多くの企業が真剣にこの書を参考にして進出先の選定にあたり、若い学生たちは就職先を選ぶ時の手がかりの一つにするのではないか、との印象をもった。さらに重要なことは指標対象となった都市の行政は、総合指標の改善を目指すのか、特色ある都市発展のために力を入れるべきテーマを絞るのかという、新しい試みが生まれるであろうと、わくわく感を与えてもらった。

 ところで私は、鄧小平氏が登場していよいよ中国の改革開放路線が始まろうとしていたとき、ある中国人の国際政治研究者が中国の将来に向けて為政者が自戒すべきことの第一として、「巨象も流砂に倒れる」ということをいつも念頭においておくことを挙げられたのを記憶している。同氏の主張には、流砂になるリスクは自国の人民のみならず、周辺諸国にもあると指摘していた。

 その後40年間、中国は激動する世界の政治経済に翻弄されながらも、この戒めから逸れることなく顕著な前進を遂げてきた。とくに経済面では、改革開放路線の下で1990年代から2010年までの成長は著しく、GDPで日本を抜き米国に次ぐ世界第2の大国となった。もちろん歴史を遡れば18世紀ごろまでの、経済が農業主体であった時代には中国が世界第1位の経済大国であった。その後産業革命による技術の発展、分業化・工業化の進展、貿易の活発化により世界の成長センターは欧州、米国へと移っていった。この経済発展は都市化をもたらし、都市化が経済成長をさらに促していった。まさしく農業時代にはほとんど見られなかった経済成長が実現したのは、工業化と都市化の賜物でもある。遅ればせながら中国の世界経済大国への復帰も、この路線に乗るものであった。

 しかしこの経済成長は国民経済の厚生上大きな問題を引き起した。公害であり、自然災害の増大等の環境破壊であり、農山村地域と都市地域との貧富の格差拡大、それが誘発する働き手人口の大移動、住居・教育・医療問題のひずみ等である。とくに短期間に高度成長を実現してきた国ほどその問題は深刻なものとなった。まず日本がそうであったし、中国はその日本に輪をかけるほど直面する課題が大きい。国土が広大な中国にとって、地域間の成長や所得の格差をならし、均衡ある発展に導くことは至難である。全体の成長速度を抑えれば格差のより深刻な拡大を抑え込むことはできても、そこからは格差是正の芽は生まれてこない。国家の資金配分機能や国有企業、国有銀行の活用も考えられるが、そうした政策の常態化はモラルハザードを生み、経済の効率性を阻害し、自立的な都市の発展に逆行するであろう。

 結局は冒頭でも述べたように本書の報告に沿って、各都市当局が競争的に次回の指標改善の努力を続けることではなかろうか。なお医療や教育分野について指標に加えたことも特に評価に値すると思うと同時に、わが国にも本書の共同研究者のようなチャレンジ精神を持った人材がでてくることを切望する。


プロフィール

安斎 隆(あんざい たかし)

1941年生まれ。1963年日本銀行入行。新潟支店長、電算情報局長、経営管 理局長、考査局長を経て1994年理事。アジア通貨危機に直面しアジア各国を奔走。1998年日本長期信用銀行頭取。2000 年8月イトーヨーカ堂顧問、2001年4月アイワイバンク銀行(現セブン銀行)代表取締役社長。全国に24,000 台超のATMサービスを実現。2010年6月より現職。

(『環境・社会・経済 中国都市ランキング ー中国都市総合発展指標』に収録。肩書は当時

【刊行によせて】大西隆:中国都市の姿を多角的に明らかに


大西 隆
豊橋技術科学大学学長、元日本学術会議会長、東京大学名誉教授


 

 中国が人口大国であることは日本人の誰もが認識しているだろう。しかし、一人っ子政策の効果もあって、2030年には中国の人口はピークを迎える。その前に、2020年代にはインドに国別人口世界第1位の座を明け渡すと国連は予測している。一方で、中国の都市人口の割合は、国連予測の終年である2050年まで上昇の一途をたどり、都市人口数のピークとなる2045年には10.5億人に達する。2015年から2045年の間に、総人口はほぼ横ばいであるものの、都市人口は2.7億人増加する。つまり、中国では、人口そのものは安定に向かいつつも、農村から都市への人口移動が中国の人々、社会、そして国土や環境に大きな影響を与え続けることになる。

 中国都市総合発展指標が注目されるのは、こうした都市化のうねりが何をもたらしているのかを、総計133の指標で多角的に明らかにしているからである。都市化=農村から都市への人口移動と先に述べたが、それは必ずしも妥当な表現とは言えない。なぜなら、都市であっても、上海市や北京市のように常住人口が戸籍人口を大幅に上回る人口流入都市がある一方で、常住人口が戸籍人口を下回る人口流出都市があるというように都市から都市への人口移動も起こっているからである。中国の都市は、都市化に伴う問題に直面するとともに、かつて筆者が日本の都市で指摘した逆都市化、すなわち都市人口の減少に伴う問題を抱える都市があるという複雑な様相を呈している。

 こうした状況の下では、都市を、誰にとってもより豊かで、住みやすく、持続的なものとするための都市政策は、1つのタイプに限定されるべきではない。さらなる都市化の過程にある都市における都市政策と、人口流出に伴う空洞化などに対処しなければならない都市におけるそれとは自ずから目的や内容が異なるからである。

 中国都市総合発展指標は、それぞれの都市の現状を、数字によって示すことを目的としている。そのことを通じて、都市が抱えている問題、解決するべき課題が浮かび上がってくる。すでに中国版が提供され、都市政策のあり方に関する種々の議論を起こしていると聞く。特に、環境、社会、経済という大きく3つに分けた分野で、多数の個別指標を、都市ごとに、可能な限り統一的に掲載しているので、都市の居住環境、社会状況から、経済的な発展に至るまで、各都市の位置を知り、比較しつつ考えることができるというエビデンスベースの都市政策立案に大きな貢献をなすと期待できる。

 日本と中国は、文字通り一衣帯水の関係にあり、相互に訪問する機会も多く、それぞれの都市を舞台にしたビジネス活動も今後さらに盛んになる。したがって、日本の企業や研究者にとっても、中国をより深く知ることは大きな関心事であろう。これまで、多くの日本人にとっては、中国を知るとはその長い歴史を知り、日本に与えてきた様々な影響を理解することが中心であったかもしれない。

 しかし、本指標は、こうした歴史的理解とは少し異なる切り口、すなわち現代の中国都市社会を客観的に把握する格好の手段を与えてくれる。特に、第2次大戦後の、いや改革開放以降の約40年間において、都市を中心に展開されてきた中国の急速な工業化・近代化が、どのような都市社会を形成してきたのかを理解することは、現代中国を理解するうえで不可欠である。可能な限り統一的にデータを収集、作成するという、種々の困難を伴う画期的な試みによって、本書はこのテーマに挑戦した。本書を通じて、日本人の中国理解がより深まることを期待したい。


プロフィール

大西 隆(おおにし たかし)

 1948年生まれ。1980年東京大学工学系研究科博士課程を修了(都市工学専攻)、工学博士。長岡技術科学大学助教授、アジア工科大学院助教授、MIT客員研究員、東京大学工学部助教授等を経て、1995 年から2013年3月まで東京大学大学院工学系研究科教授、その間同先端科学技術研究センター教授、2013年5月から東京大学名誉教授、2013年4月から2014年3月まで慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科特別招聘教授。また、2011年10月から2017年9月まで日本学術会議会長。2014年4月から豊橋技術科学大学学長、2015年から2年間、一般社団法人国立大学協会副会長、現同理事。2011年10月から2017年9月まで、内閣府総合科学技術・イノベーション会議議員。専門分野は、国土計画、都市計画。

 主な著作に、『逆都市化時代』(2004年、単著、学芸出版社)、『都市を構想する』(2004年、共編著、鹿島出版会)、『東日本大震災 復興への提言−持続可能な経済社会の構築』(2011年、共編著、東京大学出版会)、『東日本大震災—復興まちづくり最前線』(2013年、共編著、学芸出版社)、『日本経済 社会的共通資本と持続的発展』(2014年、共著、東京大学出版会)など。

(『環境・社会・経済 中国都市ランキング ー中国都市総合発展指標』に収録。肩書は当時

【刊行によせて】武内和彦:生態都市建設と都市総合発展指標


武内 和彦
東京大学国際高等研究所サステイナビリティ学連携研究機構機構長・特任教授、中央環境審議会会長、国際連合大学元上級副学長


 都市化が急激に進む中国においては、都市の低炭素化と持続可能な経済発展とをいかに両立させていくのかが大きな課題である。エネルギーの消費が急激に増加し、CO2の排出が世界最大規模になった中国では、居住環境の劣化、交通環境の悪化、水質の汚濁、大気の汚染等、さまざまな問題が生じている。また拡大する都市は生態系に悪影響を及ぼし、生物多様性の減少や、自然資本の劣化をもたらしている。

 中国をはじめ急激に成長するアジア都市では、地球環境問題への対応と地域の環境汚染改善を一体的に考える新しいスキームが求められる。私は、エネルギーの低炭素化(Energy)、水質・大気改善、適正廃棄物処理などの地域環境の改善(Environment)、都市と自然の共生(Ecosystem)を統合的に捉える3Eネクサスのアプローチによる生態都市の創造を提唱している。中国都市総合発展指標は、こうした3Eネクサスに示されるような、グローバルな視点とローカルな視点を融合させ、国際社会に対しても大きなインパクトをもつ統合的な都市指標である。

 3Eネクサスの考え方を踏まえると、都市の持続可能な発展のためには、三つの大きな社会のビジョンを目指し、それらを統合化させるアプローチをとることが重要である。

 一つ目は低炭素社会で、エネルギーの低炭素化と気候変動の緩和を進めるとともに、地域の水質・大気環境改善との同時達成を目指すものである。とくに成長するアジア都市では、依然としてエネルギー利用が拡大しており、再生可能エネルギーへの大転換やエネルギー効率の飛躍的な向上を図らない限り持続可能性は保証されない。

 二つ目は循環型社会で、天然資源と廃棄物量を最小化し、リデュース、リユース、リサイクルの原則で資源を循環的に利用することにより持続可能性を高めていこうとするものである。アジア都市では、都市内の資源循環を進めるとともに、建築物やインフラストラクチュアーの更新においても、資源の循環利用を進める必要がある。

 三つ目は自然共生社会で、人間と自然がお互いに相乗効果を生み出すことができるような社会をつくりあげていこうというものである。アジア都市の周辺部では、森林や農地などの良好な農村環境が維持される必要がある。都市は、そうした農村環境が提供する生態系サービスを享受する一方、農村に対してさまざまな支援を行っていくことで、両者のバランスが取れた豊かな自然共生社会をつくりあげていくことができる。

 その多くがデルタに位置するアジア巨大都市は、とりわけ気候変動による海面上昇、豪雨・洪水などの極端気象の多発などにより、深刻な被害を受ける可能性が高い。上記3つの社会像の統合による持続可能な社会を目指すことは、こうした被害を軽減するための気候変動適応策としても重要であると考えられる。そうした問題意識を行政や市民と共有し、着実に対策を講じ、その成果をモニタリングしていく必要がある。

 その際、非常に複雑な都市システムを俯瞰的・統合的に捉えることが、行政や市民の理解を促すうえで重要となる。都市を支える人工資本とともに、人的資本や自然資本にも注目し、各都市の現状を捉え、そのあるべき持続可能な将来像に導いていく必要がある。

 本書が扱う中国都市総合発展指標は、持続可能な開発の三側面である環境、社会、経済を大項目に据え、発展活力、生活品質、自然生態などの中小項目を置いて、中国の都市を評価するとともに、その発展の方向性を具体的に示すものである。

 中国都市総合発展指標のもう1つの大きな特徴は、表現力に富んだグラフィックを多用することで膨大な情報をわかりやすく提示していることである。このような指標の「見える化」により、中国都市化の現状や各都市の抱える問題と今後のあり方についての認識が高まり、持続可能な都市発展に貢献すると期待される。


プロフィール

武内 和彦(たけうち かずひこ)

 1951年生まれ。東京都立大学助手、東京大学農学部助教授、同アジア生物資源環境研究センター教授を経て、1997年より2012年まで同大学院農学生命科学研究科教授。2012年より同高等研究所サステイナビリティ学連携研究機構機構長・教授。2008年より国際連合大学副学長、2013年より同上級副学長、国際連合事務次長補を併任。日本学術会議副会長、中央環境審議会長、公益財団法人地球環境戦略研究機関理事長、国際学術誌 Sustainability Science(Springer Japan) 編集委員長などを兼任。

 主な著作に、『環境時代の構想』(2003年、東京大学出版会)、『ランドスケープエコロジー』(2006年、朝倉書店)、『地球持続学のすすめ』(2007年、岩波ジュニア新書)、『サステイナビリティ学4生態系と自然共生社会』(2010年、共編著、東京大学出版会)、『世界農業遺産 注目される日本の里地里山』(2013年、祥伝社新書)、『日本の自然環境政策 自然共生社会をつくる』(2014年、共編著、東京大学出版会)など。

(『環境・社会・経済 中国都市ランキング ー中国都市総合発展指標』に収録。肩書は当時

【刊行によせて】楊偉民:全く新しい視点で中国都市の発展状況を評価する

楊 偉民

全国人民政治協商会議常務委員、中国共産党中央財経領導小組弁公室元副主任


 中国国家発展改革委員会発展計画司と雲河都市研究院が共同研究制作した中国都市総合発展指標は、中国における都市の発展状況を全く新しい視点でまとめ上げた報告書であり、正に総合的で発展的な都市評価指標である。これまでのように経済発展の成果を見るだけでは、都市の発展を語るには十分ではない。その意味では社会、環境の指標が欠けていれば、たとえ経済面の指標が多数あったとしても、都市を総合的に評価できたとは言えない。

 都市の発展には、空間における均衡発展の理念と原則の確立が欠かせない。空間における均衡発展とは、都市という空間の中で、人口(社会)、経済、環境資源という三者間の均衡を実現することである。都市空間における均衡発展の理念と原則の確立は、人間と自然との調和のとれた都市化をはかるために重要な意義を持つ。

 現在、一部地域における生態環境の悪化は、当該都市の人口規模や生活水準を向上させるための経済開発が、当該地の環境資源のキャパシティを超え、都市空間における均衡が崩れたゆえである。経済発展のみを優先させるあまり、「発展権」に基づいた経済開発が横行し、生態環境の悪化をもたらしている。


 生態環境が一旦破壊されると、退耕還林(耕作を中止し耕地を元の林に戻す)、退牧還草(放牧をやめ、草地を元に戻す)、水土流失(土壌の流失)対策、風砂被害対策、砂漠化防止対策などの「生態環境対策事業」に膨大な資金を投じなければならない。また、渇水や環境悪化が人々の生活に影響を及ぼすたびに、遠隔地送水事業、汚染対策事業に奔走することになる。

 実際、中国の一部の都市では現在、「都市病」が蔓延している。都心部の過密化、住宅価格の高騰、著しい交通渋滞、充満するスモッグなどに苦しめられている。

 中国都市総合発展指標は、環境、社会、経済の3つの視野で都市の発展を評価し、都市空間における均衡発展を重視する真の意味での都市の総合発展評価である。このような都市発展評価は、まさしく科学的かつ包括的な評価であり、中国の都市の持続的な発展に大きく寄与する。


 これまでの30年間、中国では数億の人口が農村から都市に流入した。今後さらに数億の人口が都市に流入するであろう。これは今後中国が直面する最大の圧力である。その人口大移動によって最も影響を受けるのは生態環境である。その意味では中国のこれからの都市発展は、煌めく星空、美しい河川、朗らかな鳥の声を犠牲にする経済規模の拡大や道路の拡張、高層ビルの林立であってはならない。

 中国の都市は、生態文明の理念を堅持し、生態環境を重視する都市発展を進めなければならない。土地、水、エネルギー等の資源を節約し、自然へのダメージを最小限に抑えなければならない。生態安全を重視し、森林・湖沼・湿地などの環境生態空間の比重を増やし、さらには汚染物質の排出総量を減らすことも肝要である。

 中国都市総合発展指標は、応用可能な環境、社会、経済指標を体系的に示している。各都市は自らの指標を精査し、どの分野で滞りがあるかを見出し、改善に向けて努力すべきである。中国都市総合発展指標はただの評価指標ではなく、都市の今後進むべき道を指し示すものでもある。


(『環境・社会・経済 中国都市ランキング ー中国都市総合発展指標』に収録


プロフィール

楊 偉民 (Yang Weimin)

 1956年生まれ。中国国家発展改革委員会計画司司長、同委員会副秘書長、秘書長を歴任。中国のマクロ政策および中長期計画の制定に長年携わる。第9次〜第12次の各五カ年計画において綱要の編纂責任者。中国共産党第18回党大会、第18回3中全会、同4中全会、同5中全会の報告起草作業に参与した。同党中央第11次五カ年計画、第12次五カ年計画、第13次五カ年計画提案の起草に関わるなど、重要な改革案件に多数参画した。

 主な著書に、『中国未来三十年』(2011年、三聯書店(香港)、周牧之と共編)、『第三の三十年:再度大転型的中国』(2010年、人民出版社、周牧之と共編)、『中国可持続発展的産業政策研究』(2004年、中国市場出版社編著)、『計画体制改革的理論探索』(2003年、中国物価出版社編著)。

【専門家レビュー】杜平:何故いま〈中国都市総合発展指標〉か?

杜 平

中国国家信息センター元常務副主任、中国第13次5カ年計画専門家委員会秘書長、中国国家戦略性新興産業発展専門家諮詢委員会秘書長


1. 新型都市化における〈中国都市総合発展指標〉の意義

 中国で都市化といえば古い課題でもあり、また新しい課題でもある。古い課題についていうと、中国の都市化は始まってすでに40年経過した。この間、都市化率は17%から56%に増加し、流動人口は億単位を超え、中国は農業大国から工業大国への転換を果たした。
 新しい課題についていうと、「新型都市化」をどう進めていくかに尽きる。例えば、新型都市化と工業化、情報化、農業現代化を、どう効果的に協調発展させていくか。また、都市の発展を、工業化優先から、どうサービス業の発展、快適居住重視、環境配慮へと転換させていくのか。また、都市の計画、建設、管理において、どうスマート化、数字化していくか、などがある。こうした新しい課題は、中国都市化の新段階における挑戦である。
 長年にわたる中国都市化の実践において、各種の指標に関する研究成果は、都市化の政策策定や計画づくりに、様々な影響を及ぼした。特に今回が第3回目の発表となった中国都市総合発展指標2018は、国内外で好評を博している指標システムである。同指標は、中国の政策担当省庁、地方政府、学界および経済界に重要な参考と啓発を与え続けている。

2. これからの中国は都市化が鍵

 中国は膨大な人口を抱え、地域間格差も激しい。地域の協調発展における都市の役割は大きい。協調発展には、各国の経験と教訓を吸収し、中国の地域経済発展の道筋を探求しなければならない。
 中国はいま、都市化からもたらされるエネルギーを希求すると同時に、都市発展の効率とクオリティも求めている。そのためには、「都市と農村との連携発展」や、「郷村振興」などの政策を進めると同時に、都市発展、特に大都市圏の発展を強化していくべきである。
 総じて、中国のような人口と国土の規模が大きい国では、都市発展の水準は地域ないし国の発展を左右する。中国の経済社会が新たなステージに立ったいま、都市化がその運命の鍵を握っている。

3. 都市発展の計量的な評価で、ハイクオリティな発展を

 中国の中央および地方政府は長年、都市の発展のために、様々な戦略や、計画を策定し、実施してきた。もちろん、これらの戦略や計画は、一定の効果を上げた。しかし、中国の都市における発展の持続可能性や経済効率、そして市民の満足度において、多くの課題を残している。例えば、人口の集約よりは土地の開発を重視する「中国式都市発展」、行政エリアの合併や新区の乱立による安易な都市域の拡大、工業優先によってもたらされる生態環境破壊などだ。
 そうしたことに鑑み、中国の都市の発展を計量的に評価し、各都市の実情を把握し、これまでの都市化の課題を整理し、ハイクオリティな発展モデルへの転換を促す必要に迫られている。
 中国都市総合発展指標の開発者は、長年にわたり開発に真摯に取り組み、個人的な利益を省みず、中国都市の総合発展における評価システムを構築した。中国都市化において、この意義は大きい。同指標の今後の影響力の更なる拡大に期待したい。

4. 〈中国都市総合発展指標〉の四大特徴

 中国都市総合発展指標の独自の長所について私なりにまとめてみた。
 一つは、データの欠陥と歪みの問題を解決したことである。これまで中国での指標研究のほとんどは、統計データやアンケートデータにしか使えなかった。これらデータの設計、採集、集計から来るデータの欠陥と歪みは問題が大きかった。そのため、指標研究自体もなかなか良い成果を上げられなかった。
 相対して、中国都市総合発展指標の開発者は、指標データ源を統計データのみならず、インターネット・ビックデータ、衛星リモートセンシングデータへと創造的に広げた。さらに、システム的にバランス良くこれらのデータを指標化した。
 結果、同指標では、データ源の約30%は統計データ、約30%が衛星リモートセンシングデータ、約40%がインターネット・ビックデータとなっている。これによって、統計データで生じる歪みを是正することができた。さらに、これまで統計データではカバーしきれなかったエリアも数字化できるようになった。
 こうした努力によって、中国都市総合発展指標が都市を評価するために必要なデータは、質量ともに確保できた。
 二番目に、中国都市総合発展指標の「3×3×3構造」が挙げられる。中国春秋時代の思想家老子は、「一から二が生まれ、二から三が生まれ、三から万物が生まれる」という宇宙観を説いた。都市という複雑かつ巨大なシステムをはかる指標の「3×3×3構造」はこのような思想にもマッチしている。
 中国都市総合発展指標は、そのデザイン理念、指標間のロジック、システムにおいて、実に簡潔かつ合理的である。環境、社会、経済という3つの大項目を立て、9つの中項目、そして27の小項目を置き、785のデータで定量化した。
 よって、同指標は都市の変化を趨勢として捉えると同時に、細部までの変化も網羅する。これは都市の現状や課題を明らかにし、戦略や政策の策定を大いに助ける。
 三番目は、中国都市総合発展指標がこれまで中国にはなかった指標を開発し、都市発展の趨勢を促す手立てとなったことである。例えば、「DID人口」を用いて、都市発展の規模と質を見極めた。また、「輻射力」という概念を提起し、都市の外部への影響力を様々な分野から検証できた。さらに輻射力と都市機能との相関関係の分析により、各産業がそれぞれ求める都市の機能を明らかにした。
 四番目は、国際比較である。中国都市総合発展指標は中国だけでなく、海外の都市も評価可能となっている。よって、例えば、北京と東京両大都市圏の比較がリアルにできることで、中国の都市発展の目標が一層定まった。
 上述したように、中国都市総合発展指標は先見性と戦略性を持ち、ハイクオリティの発展を求める中国の都市にとって実用性の高い政策・計画ツールである。


プロフィール

杜 平 (Du Ping)

 1956年生まれ。1982年以来、中国国家発展和改革委員会(元国家計画委員会)地域協力計画局、地域総合計画司、国土地域司、国土開発和地区経済研究所、国務院西部開発弁公室総合組(局)に勤務。処長、所長、司長を経て、国家信息センター常務副主任。中国地理学会理事、中国地域経済学会常務理事、中国科学和科学技術政策学会副理事長、中国人力資源開発研究会副会長および中国科学院資源和地理研究所、浙江大学および中国政法大学客員教授を兼任。

(『環境・社会・経済 中国都市ランキング 2018―大都市圏発展戦略』に収録