一国の経済規模に匹敵する中国の都市:「中国都市総合発展指標2022」経済ランキング

雲河都市研究院

編者ノート:
中国の都市が現在、「国家に匹敵する富を持つ」と言われるのはなぜか。なぜメガロポリスの推進を「新型都市化」政策の中核に据えるのか。〈中国都市総合発展指標2022〉の経済ランキングが発表された。雲河都市研究院が一連のデータを用いて経済大項目トップ10都市および一線准一線メガロポリスの実力を解説する。


1.一国の富に匹敵する経済規模を持つトップ10都市


 経済大項目でトップ10にランクインした都市は、「一国の富に匹敵する経済規模」を有している。〈中国都市総合発展指標2022〉(以下、〈指標2022〉)によると、上海、北京、深圳、広州、成都、蘇州、杭州、重慶、天津、南京がトップ10に名を連ねている。2021年と比べ都市そのものの変化はなかったが、成都が第6位から第5位へ、杭州が第8位から第7位へと順位を上げた。蘇州は第5位から第6位、重慶は第7位から第8位へと後退した。

 明暁東中国国家発展和改革委員会発展戦略和計画司元一級巡視員・中国駐日本国大使館元公使参事官は、「〈指標2022〉経済大項目のトップ20にはすべての一線都市と准一線都市そして7つの二線都市が含まれる。これら都市は中国経済の主要な成長極である。経済大項目は、227組のデータから成る経済規模、経済構造、経済効率、ビジネス環境、開放度、イノベーション・起業、都市圏、広域中枢機能、広域輻射力の9つの小項目、そして経済品質、発展活力、都市影響の3つの中項目にもとづいて評価された」と指摘する。

 周牧之東京経済大学教授は「経済規模から見ると、上海はサウジアラビア、深圳はイラン、杭州はノルウェー、成都はコロンビア、蘇州はマレーシア、杭州はチリ、重慶はエジプト、天津はフィンランド、南京はルーマニアに匹敵する。つまり、経済ランキングトップ10都市の経済規模は、世界経済ランキングのトップ20位から47位の国のそれに匹敵するようになった。トップ10都市の合計経済規模は、中国GDPの22.6%、世界GDPの4.7%を占め、世界第4位のドイツを超え第3位の日本に接近している」と語る。

 〈指標2022〉は総合偏差値で、中国の地級市以上の297都市(日本の都道府県に相当)を一線、准一線、二線、三線都市に分類し、19のメガロポリスを一線、准一線、二線、三線メガロポリスに定義した(詳しくは中心都市がメガロポリスの発展を牽引:中国都市総合発展指標2022を参照)。本稿では、〈指標2022〉経済ランキングの発表に合わせて、2022年における一線、准一線メガロポリスの主要な経済パフォーマンスに焦点を当てて分析した。

2.中国の社会経済発展をリードする三大メガロポリス


 北京、上海、深圳、広州の4つの一線都市が牽引する長江デルタ、珠江デルタ、京津冀(北京・天津・河北)の三大一線メガロポリスは、中国社会経済発展の最大のエンジンである。

 2022年、中国GDPに占める長江デルタ、珠江デルタ、京津冀の比重はそれぞれ20%、8.6%、7.5%に達した。三大メガロポリスは中国GDPの36.2%を創出した。名目GDP成長率は2021年に比べ、長江デルタ、珠江デルタ、京津冀はそれぞれ5.1%、4.1%、4.4%であった。

 同年、中国人口に占める長江デルタ、珠江デルタ、京津冀の割合はそれぞれ11.8%、5.5%、6.2%であった。三大メガロポリスには全人口の23.5%が集中している。2021年に比べ、長江デルタの常住人口は0.4%増加したが、珠江デルタ、京津冀はそれぞれ0.4%、0.3%減少した。新型コロナ禍で三大メガロポリスにおける非戸籍常住人口が減少した。

 2022年、中国輸出総額に占める長江デルタ、珠江デルタ、京津冀の比率はそれぞれ35.4%、21.3%、5.2%であった。三大メガロポリスは全国輸出の61.9%を生み出し、特に長江デルタと珠江デルタは中国輸出産業の最大の牽引役となっている。2021年に比べ、長江デルタ、珠江デルタの輸出増加率はそれぞれ10%、5.9%に達したが、京津冀は0.3%減少した。

 同年、中国コンテナ取扱量に占める長江デルタ、珠江デルタ、京津冀の割合はそれぞれ35.4%、22.6%、8.8%であった。三大メガロポリスは全国港湾のコンテナ取扱量の66.8%を占めている。

 三大メガロポリスの活力の源は企業にある。2022年、上海・深圳・香港・北京の四大メインボード上場企業数において、長江デルタ、珠江デルタ、京津冀の全国に占める割合はそれぞれ33.3%、14.2%、13.9%であった。中国メインボード上場企業の61.4%が三大メガロポリスに集中している。

 同年、上海・深圳・香港・北京の四大メインボード上場IT企業数において、長江デルタ、珠江デルタ、京津冀の全国に占める割合はそれぞれ27.4%、19%、30.3%に達した。中国メインボード上場IT企業の76.7%が三大メガロポリス、特に京津冀と長江デルタに集中している。

 2022年、中国特許取得件数に占める長江デルタ、珠江デルタ、京津冀の割合はそれぞれ27.8%、17.9%、8.6%であった。全国の特許取得件数の54.3%が三大メガロポリスで創出されている。

 同年、深圳・香港創業板上場企業数において、長江デルタ、珠江デルタ、京津冀の全国に占める割合はそれぞれ13.9%、37%、19.9%であった。中国創業板上場企業の70.8%が三大メガロポリスに集中している。

 2022年、新三板上場企業数において、長江デルタ、珠江デルタ、京津冀の全国に占める割合はそれぞれ29.6%、13.4%、17.3%であった。中国新三板上場企業の60.3%が三大メガロポリスに集中している。

 同年、ユニコーン企業数において、長江デルタ、珠江デルタ、京津冀の全国に占める割合はそれぞれ40.6%、19.2%、26.5%であった。中国ユニコーン企業の86.3%が三大メガロポリスに集中している。

 周牧之教授は、「三大メガロポリスは、日本のGDPの1.5倍、人口の2.7倍、輸出規模の2.9倍、コンテナ取扱量の8.8倍にまで成長した。巨大化する中国メガロポリスが中国だけでなく世界の経済をも牽引している」と指摘する。

3.キャッチアップする准一線メガロポリス


 成渝(四川・重慶)、長江中游(湖北・湖南・江西)、粤閩浙沿海(広東・福建・浙江)、関中平原(陝西・甘粛)の四つの准一線メガロポリスは、中国社会経済発展の中核を担っている。

 2022年、中国GDPに占める成渝、長江中游、粤閩浙沿海、関中平原の比重はそれぞれ6.6%、9.2%、6.9%、2.2%であった。四つの准一線メガロポリスは、全国GDPの24.9%を創出している。名目GDP成長率は2021年に比べ、成渝、長江中游、粤閩浙沿海、関中平原はそれぞれ5%、7.2%、7.8%、8.9%であった。なかでも関中平原の成長率が最大だった。

 同年、中国人口に占める成渝、長江中游、粤閩浙沿海、関中平原の割合はそれぞれ7.4%、8.8%、6.7%、2.9%であった。四つの准一線メガロポリスに全国25.8%の常住人口が集中している。2021年に比べ、成渝、長江中游、粤閩浙沿海の常住人口はそれぞれ0.9%、0.1%、0.1%増加したが、関中平原は0.6%減少した。

 2022年、中国輸出総額に占める成渝、長江中游、粤閩浙沿海、関中平原の比重はそれぞれ4.7%、5%、7.5%、1.3%であった。四つの准一線メガロポリスは、全国輸出の18.5%を生み出している。2021年に比べ、成渝、長江中游、粤閩浙沿海、関中平原の輸出はそれぞれ5.1%、26.4%、15%、16.4%増加した。

 同年、中国港湾コンテナ取扱量に占める成渝、長江中游、粤閩浙沿海の割合はそれぞれ0.5%、1.8%、7.2%であった。成渝、長江中游は、長江の水運によるもので、関中平原は内陸立地で水運輸送がほとんど無かった。准一線メガロポリスは、全国の港湾コンテナ取扱量の9.5%を担っている。

2022年、上海・深圳・香港・北京の四大メインボード上場企業数に占める成渝、長江中游、粤閩浙沿海、関中平原の全国に占める割合はそれぞれ4.9%、5.5%、6.1%、1.4%であった。准一線メガロポリスには中国メインボード上場企業の17.9%が立地している。

 同年、上海・深圳・香港・北京の四大メインボード上場IT企業数において、成渝、長江中游、粤閩浙沿海、関中平原の全国に占める割合はそれぞれ2.6%、3.6%、6.2%、0.7%であった。准一線メガロポリスには中国メインボード上場IT企業の13.1%が立地している。中でも粤閩浙沿海における上場IT企業の発展ぶりが目立っている。

 2022年、中国特許取得件数に占める成渝、長江中游、粤閩浙沿海、関中平原の割合はそれぞれ4.6%、6.8%、6.9%、1.8%であった。准一線メガロポリスは全国特許取得件数の20.1%を創出している。

 同年、深圳・香港創業板上場企業数において、成渝、長江中游、粤閩浙沿海、関中平原の全国に占める割合はそれぞれ3.9%、6.2%、5.3%、1.6%であった。准一線メガロポリスには中国創業板上場企業の17%が立地している。

 2022年、新三板上場企業数において、成渝、長江中游、粤閩浙沿海、関中平原の全国に占める割合はそれぞれ3.9%、6.3%、6%、1.9%であった。中国新三板上場企業の18.1%が准一線メガロポリスに立地している。

 同年、ユニコーン企業数において、成渝、長江中游、粤閩浙沿海、関中平原の全国に占める割合はそれぞれ3.8%、3.8%、1.6%、0.3%であった。中国ユニコーン企業の9.5%が准一線メガロポリスに立地している。

4.引き続きメガロポリスを主体として推進


 明暁東氏は、「〈指標2022〉は、878のデータセットを駆使した権威性をもって中国の297の地級市以上の都市と19のメガロポリスに「線引き」を行った。これにより中国の都市及びメガロポリスに初めて客観的な分類基準を提供した。一線メガロポリスには、中国の三分の一以上のGDP、四分の一人口、多数の上場企業及びスタートアップ企業が集中している。一線メガロポリスはまさしく人口と経済の集中地域であり、中国の主要な貿易拠点とイノベーションの源泉である。准一線メガロポリスは一線メガロポリスの重要な背後地として、その発展を支えている」と述べている。

 杜平中国国家信息センター元常務副主任は、「〈指標2022〉が7年間継続して中国の都市発展を評価する専門的な報告書として発表されたことで、都市間比較だけでなく、都市自身の時系列比較にも貴重なベンチマークが提供された」とコメントしている。

 楊偉民中国共産党中央財経領導小組弁公室元副主任は、「〈指標2022〉が中国都市を一線、准一線、二線、三線都市に区分したと同時に、中国メガロポリスの発展状況をもクラス分けした。〈指標2022〉経済大項目から見ると、長江デルタ、珠江デルタ、京津冀の三大メガロポリスは持続的な発展を続けており、成渝、長江中游、粤閩浙沿海、関中平原の四つの准一線メガロポリスが追い上げを見せている。これらの「3+4」メガロポリスには、中国経済の60%以上、人口の約50%が集中し、この傾向は将来も続く。第11次五カ年計画で定めた「メガロポリスを都市化推進の主体形態とする」方針の先見性は明らかである。関連部門及び地方政府は、引き続きメガロポリスを主体として推進するべきだ」と総括した。


【中国語版】
中国網『中国城市综合发展指标2022经济大项排名出炉
』(2023年12月15日)

【英語版】
China.org.cnDynamics of strongest Chinese megalopolises: Economic rankings of China Integrated City Index 2022(2023年12月29日)

China Daily「Dynamics of strongest Chinese megalopolises: Economic rankings of China Integrated City Index 2022」(2023年12月29日)

他掲載多数 

合肥:イノベーションで飛躍を遂げる中心都市【中国中心都市&都市圏発展指数2021】第18位

中国中心都市&都市圏発展指数2021
第18位


 合肥市は中国中心都市&都市圏発展指数2021の総合第18位だった。同市は前年度より順位を1位上げた。

 〈中国中心都市&都市圏発展指数は、中国都市総合発展指標の派生指数として、4大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる36の中心都市の評価に特化したものである。同指数は、これら中心都市を、全国297の地級市以上の都市の中で評価している。10大項目と30の小項目、116組の指標からなる。包括的かつ詳細に、中国中心都市の発展を総合評価するシステムである。

CCCI2017 | CCCI2018 | CCCI2019 | CCCI2020

 

〈中国中心都市&都市圏発展指数〉:【36中心都市】北京、上海、深圳、広州、成都、天津、杭州、重慶、南京、西安、寧波、武漢、青島、鄭州、長沙、廈門、済南、合肥、福州、瀋陽、大連、昆明、長春、ハルビン、貴陽、南昌、石家荘、南寧、太原、海口、ウルムチ、蘭州、フフホト、ラサ、西寧、銀川


イラク一国に匹敵の経済規模を誇る


 合肥市は安徽省の省都であり、同省の政治、経済、文化の中心であり、また長江メガロポリスの中核都市でもある(長江デルタメガロポリスについて詳しくは中心都市がメガロポリスの発展を牽引:中国都市総合発展指標2022を参照)。

 同市は、4区・4県・1県級市を管轄し、総面積は11,445平方キロメートルに達し、日本の秋田県と同程度である。亜熱帯モンスーン気候で、四季がはっきりし、気候は穏やかである。「気候快適度」は中国第148位である。

 安徽省設立後350年以上の歴史上、省都となった都市は南京、安慶、合肥、蚌埠、蕪湖など多数あった。1949年の新中国成立時の合肥は、面積わずか5平方キロメートル、人口5万人の小さな都市だったが、紆余曲折を経て1952年に安徽省の省都となった後は目覚ましい発展を遂げた。2022年常住人口が963万人で中国第20位、GDPは約12,013億元(約24兆円、1元=20円で換算)で中国第21位にまで成長した。その経済規模は、世界第54位のイラクのGDPに匹敵する(詳しくは【ランキング】世界で最も経済リカバリーの早い国はどこか? 中国で最も経済成長の早い都市はどこか?を参照)。

 外部から人々を引き入れ成長する合肥は、「流動人口(非戸籍常住人口)」が約154万人の大幅プラスで、中国第27位の人口流入都市となっている。

『三国志』ゆかりの都市


 合肥は、秦の時代から約2,100年の歴史を持つ。『三国志』で曹操と孫権が争った激戦地として知られ、市内には三国時代を彷彿とさせる人気の観光歴史スポット「三国遺址公園」が整備されている。合肥の「国内観光客数」は中国第24位、「海外観光客数」は中国第30位と、省内トップの成績である。


中国都市総合発展指標2021
第24位


 合肥は〈中国都市総合発展指標2021〉総合ランキング第24位となり、前年より順位を3つ下げた。

 「経済」大項目は第21位で、前年に比べ順位が2つ上がった。3つの中項目で、「経済品質」「発展活力」は第22位、「都市影響」は第23位と、3中項目でトップ10入りした項目はなかったものの、すべてがトップ30入りを果たした。9つの小項目のうち、「イノベーション・起業」は第14位、「経済効率」は第18位、「広域輻射力」は第20位、「経済規模」は第21位、「経済構造」「広域中枢機能」は第23位、「開放度」は第25位と、7項目がトップ20に入った。なお、「ビジネス環境」は第32位、「都市圏」は第35位だった。

 「社会」大項目は第24位で、前年度より順位を4つ下げた。3つの中項目で、「ステータス・ガバナンス」は第16位で、同1項目がトップ20に入った。「生活品質」「伝承・交流」は第30位だった。小項目で見ると、「都市地位」は第17位、「人口資質」は第18位、「文化娯楽」は第23位、「人的交流」は第29位と、5項目がトップ30に入った。「消費水準」は第32位、「居住環境」は第33位、「生活サービス」は第36位、「社会マネジメント」は第40位、「歴史遺産」は第180位であった。

 「環境」大項目は第53位で、前年に比べ順位が13位上がった。3つの中項目のうち「空間構造」は第35位、「環境品質」は第98位、「自然生態」は第104位であった。9つの小項目のうち、「都市インフラ」は第16位、「自然災害」は第19位と、2項目がトップ20に入った。「環境努力」は第34位、「コンパクトシティ」は第35位、「交通ネットワーク」は第44位、「資源効率」は第47位、「水土賦存」は第72位、「気候条件」は第139位、「汚染負荷」は第180位であった。


 〈中国中心都市総合発展指標2021〉について詳しくは、メガシティの時代:中国都市総合発展指標2021ランキングを参照。

 

CICI2016:第37位  |  CICI2017:第25位  |  CICI2018:第27位
CICI2019:第26位  |  CICI2020:第21位  |  CICI2021:第24位


科学技術力で飛躍


 合肥が急激な発展を遂げた最大の理由は、科学技術力にある。

 中国科学技術大学(中科大)が1970年、北京から合肥に移転したのが契機となった。現在、合肥には19の大学と約200の政府系科学研究機関が立地し、20万人を超える研究開発要員を擁している。同市の「科学技術輻射力」は中国第13位である(詳しくは【ランキング】科学技術大国中国の研究開発拠点都市はどこか?)。

 合肥の「大学生在校生数」は中国第19位、「世界トップ大学指数」は中国第15位、「高等教育輻射力」は中国第14位である。

家電生産からハイテク製造業へ


 新中国成立初期、合肥の工業と言えば小規模な発電所ひとつしか無かった。1980〜90年代に、合肥は家電産業に力を入れ、美菱(MeiLing)や栄事達(Royalstar)など多くの地元ブランドを育成した。

 合肥の冷蔵庫生産量は2011年に、全国の三分の一、洗濯機は全国の四分の一を占め、青島市等を超えて全国最大の家電生産基地となった。現在、合肥の家電産業の年間生産額は1兆元を超えている。

 家電産業で身を起こした合肥は、後にディスプレイと半導体分野に参入した。2008年、BOEテクノロジーグループ(京東方科技集団)と共同で、中国初の第6世代液晶パネル生産ラインを建設した。この生産ラインは、中国初の32インチ液晶画面を生産した。

 BOEはその後も合肥で第8.5世代(2014年稼働)と第10.5世代生産ライン(2018年稼働)を建設し、投資を続けた。

 現在、合肥は世界最大のディスプレイ生産地の一つに数えられている。

半導体生産基地からEV生産基地へ


 ディスプレイ産業の急成長は、半導体産業の発展を促している。2015年、合肥建投は台湾の力晶積成電子製造(PSMC)と合弁で「合肥晶合集成電路」を設立し、半導体ウエハーの受託生産(ファンドリー)を開始した。2017年には、12インチウエハー製造基地が稼働した。

 合肥は2016年、大手ファブレス半導体メーカーの兆易創新科技(ギガデバイス・セミコンダクター)と協力して、1,500億元(約3兆円)を投じて長鑫存儲技術(CXMT)を立ち上げ、中国本土のメモリチップ製造の空白を埋めた。2019年、CXMTの12インチウエハー工場が稼働し、10ナノメートル級の8GB DDR4の製造を開始した。

 現在、晶合集成、CXMTを筆頭に、280社の半導体関連産業が合肥に集まり、同市を一大シリコンシティに押し上げた。

 合肥の躍進はこれに留まらず、近年はEV関連企業を積極的に誘致し、一大EV生産基地が形成されつつある。

 現在同市の「輸出総額」は中国第31位、「製造業輻射力」は中国第32位であるものの今後、順位の上昇が大いに期待される。合肥は、今後もっとも注目すべき都市のひとつである(詳しくは【ランキング】中国で最も輸出力の高い都市はどこか?を参照)。


廈門:魅力あふれる貿易拠点都市【中国中心都市&都市圏発展指数2021】第17位

中国中心都市&都市圏発展指数2021
第17位


 廈門市は中国中心都市&都市圏発展指数2021の総合第17位だった。同市は前年度の順位を維持した。

 〈中国中心都市&都市圏発展指数は、中国都市総合発展指標の派生指数として、4大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる36の中心都市の評価に特化したものである。同指数は、これら中心都市を、全国297の地級市以上の都市の中で評価している。10大項目と30の小項目、116組の指標からなる。包括的かつ詳細に、中国中心都市の発展を総合評価するシステムである。

CCCI2017 | CCCI2018 | CCCI2019 | CCCI2020

 

〈中国中心都市&都市圏発展指数〉:【36中心都市】北京、上海、深圳、広州、成都、天津、杭州、重慶、南京、西安、寧波、武漢、青島、鄭州、長沙、廈門、済南、合肥、福州、瀋陽、大連、昆明、長春、ハルビン、貴陽、南昌、石家荘、南寧、太原、海口、ウルムチ、蘭州、フフホト、ラサ、西寧、銀川


■ 小さくても輝く海上の花園


 廈門市は、福建省の東南端に位置する副省級市、計画単列市であり、経済特区に指定された中国南東部沿岸の重要な中心都市である。また、粤閩浙沿海(広東・福建・浙江)メガロポリスの中核都市である(粤閩浙沿海メガロポリスについて詳しくは中心都市がメガロポリスの発展を牽引:中国都市総合発展指標2022を参照)。

 同市の総面積は1,701平方キロメートルに過ぎず、中国297地級及びそれ以上の都市(日本の都道府県に相当)のうち、下から四番目の294位の大きさである。省都の福州市と比較すると、約七分の一の大きさである。なお、47都道府県で最も面積が小さい香川県の面積が1,877平方キロメートルであり、廈門は香川県より1割程度小さい。

 一方、常住人口は約531万人で中国第82位、「人口密度」は1平方キロメートル当たり3,121人で中国第4位の高密度都市である。

 廈門は福建省の沿海部に位置し、漳州市、泉州市と接している。亜熱帯モンスーン気候で、年平均気温が21℃、温和かつ多雨の気候を享受する美しい臨海都市である。「気候快適度」は中国第24位である。

 同市は多くの島嶼を有し、風光明媚な景観に恵まれ、古来より「海上花園」とも呼ばれている。

■ 五口通商から経済特区へ


 廈門は600年以上の歴史を持つ廈門港を有し、宋朝以来、泉州港の補助港口としての役割を果たしていた。元朝で軍港に変貌し、明朝には商業貿易の拠点として躍進を遂げた。鄭成功父子の時代には、海外貿易の中心港となり、茶の輸出で一大拠点となった。1684年には清の海関が設置され、廈門港が正口の一つとされた。康熙年間には、福建出洋の総口となり、福州や泉州を凌ぐ地位を確立した。

 1842年、南京条約の締結により、廈門は広州、福州、寧波、上海と並び「五口通商」の一つに数えられた。貿易の窓口として、教会、病院、学校、外国銀行などが建設され、早くから西洋文化に染められた稀有な都市でもある。

 1980年、厦門は深圳、珠海などと共に経済特区に指定された。以来、急速な発展を続けている。

■ ウズベキスタン一国に匹敵する経済規模


 2022年、廈門のGDPは7,803億元(約15.6兆円、1元=20円換算)に達し、福建省内で福州市、泉州市に次ぐ第三位の経済規模である(詳しくは【ランキング】世界で最も経済リカバリーの早い国はどこか? 中国で最も経済成長の早い都市はどこか?を参照)。

 その経済規模は、中国第31位であり、世界第58位のウズベキスタンのGDPに匹敵する。「一人当たりGDP」の成績はさらに良く、中国第19位と福建省内で最も高い。

 廈門の「人口自然増加率」は中国第4位で、2015〜2022年の平均増加率は12.1‰と極めて高い。非戸籍常住人口を示す「流動人口」では、廈門は約245万人に達し、中国第17位の人口流入都市となっている。結果、同市の「生産年齢人口率」は中国第9位であり、その数値は72.9%と圧倒的であり、若い活力に溢れている。

■ 深水港を盾にしたスーパー製造業都市


 廈門市は深水港を盾に港湾機能を強化してきた。2022年に漳州港を含む廈門港のコンテナ取扱量は1,243.47万TEUを達成し、中国第7位にランクインした(詳しくは、【ランキング】世界で最も港湾コンテナ取扱量が多い都市はどこか?を参照)。同年の貨物取扱量は2.19億トンで、世界第14位である。

 廈門の製造業も高度に発展し、中国第11位の「製造業輻射力」の実力を持つスーパー製造業都市となった(詳しくは【ランキング】中国で最も輸出力の高い都市はどこか?を参照)。

 さらにIT産業も発展を遂げており、「IT産業輻射力」は中国第12位である。

 産業発展の背後には研究開発への投資が欠かせない。廈門の「科学技術輻射力」は中国第20位である(詳しくは【ランキング】科学技術大国中国の研究開発拠点都市はどこか?)。

 現在、同市は中国政府が推進する「一帯一路」における21世紀海上シルクロードの戦略的要衝都市となっている。また同市は、アジアとヨーロッパを結ぶ「中欧班列(ユーラシア横断鉄道)」にも接続している。


中国都市総合発展指標2021
第13位


 廈門は〈中国都市総合発展指標2021〉総合ランキング第13位であり、前年度より順位を1つ下げた。

 「環境」大項目は第6位で、前年度に比べ順位が2つ下がった。3つの中項目のうち「空間構造」は第6位、「環境品質」は第14位、「自然生態」は第72位と、2項目がトップ20に入った。9つの小項目のうち、「コンパクトシティ」は第5位、「交通ネットワーク」は第7位と2項目がトップ10に入った。また、「汚染負荷」は第21位、「環境努力」は第22位、「資源効率」は第30位と、3項目がトップ30に入った。なお、「都市インフラ」は第32位、「気候条件」は第45位、「自然災害」は第229位、「水土賦存」は第294位であった。

 「社会」大項目は第15位で、前年度より順位を2つ下げた。3つの中項目で、「生活品質」は第13位、「伝承・交流」は第15位と、2項目がトップ20に入った。「ステータス・ガバナンス」は第23位だった。小項目で見ると、「人的交流」「消費水準」は第11位、「居住環境」「生活サービス」は第15位、「人口資質」は第16位と、5項目がトップ30に入った。なお、「都市地位」は第34位、「社会マネジメント」は第41位、「歴史遺産」は第43位、「文化娯楽」は第52位であった。

 「経済」大項目は第19位で、前年度に比べ順位が1つ下がった。3つの中項目で、「発展活力」は第16位、「都市影響」は第17位、「経済品質」は第26位と、3中項目のうちトップ10入りした項目はなかったものの、すべてトップ30入りを果たした。9つの小項目のうち、「広域中枢機能」は第9位でトップ10入りした。また、「ビジネス環境」は第11位、「経済効率」は第13位、「開放度」は第15位、「イノベーション・起業」は第22位、「広域輻射力」は第23位、「経済構造」は第25位、「都市圏」は第28位と、7項目がトップ20に入った。なお、「経済規模」は第45位だった。


 〈中国中心都市総合発展指標2021〉について詳しくは、メガシティの時代:中国都市総合発展指標2021ランキングを参照。

CICI2016:第16位  |  CICI2017:第12位  |  CICI2018:第12位
CICI2019:第12位  |  CICI2020:第12位  |  CICI2021:第13位


■ 鼓浪嶼-建築とピアノの島


 鼓浪嶼は廈門市の沖合に浮かぶ面積2平方キロメートル未満の島で、廈門の都市発展をものがたっている。清朝末期には、鼓浪嶼に公共租界が設けられた。その為、多くの西洋建築や「騎楼」と呼ばれる華僑による建築物が残され、「万国建築博物館」と称される。2017年に「鼓浪嶼国際歴史社区」は世界文化遺産に正式登録された。

 建築だけでなく、西洋音楽も植え付けられた。鼓浪嶼には600台を超えるピアノがあり、世界最古のスクエアピアノや最初で最大のアップライトピアノを保有する専門博物館があるだけでなく、数多くのピアノ演奏者や音楽家を輩出している。鼓浪嶼が生んだ音楽家たちは毎年音楽祭で故郷に戻り、各種コンサートを開いている。

■ 華僑文化 – 騎楼


 廈門は西洋の文化を受け入れただけでなく、華僑がもたらした東南アジアの文化も色濃く残している。中でも南洋の風情漂う騎馬楼建築が際立っている。

 騎楼建築は、「南洋貿易」に密接に関連している。近代、南洋貿易の拡大で福建省から多くの人々が「南洋」と呼ばれる東南アジアへ渡った。騎楼は帰郷した華僑によって建設された。騎楼の大規模建設は1920〜30年代に集中している。騎楼は典型的な外廊式建築で、通り側には商店が並び、廊下は日よけと雨避けの機能を果たし、背街側には民家が立ち並ぶ。

 特に旧市街区や中山路には、1920年代の騎楼が多数残り、百年の歴史文化を誇る街として、観光客を魅了している。

■ 観光都市発の新世代コーヒーチェーンブランド – ラッキンコーヒー(瑞幸咖啡)


 廈門の観光業は福建省で最も成功し、国内外からの観光客が、2019年には1億人を超えた。新型コロナウイルスの影響により大きな打撃を受けたものの、2022年の訪問者数は2019年の64.6%まで回復している。

 近年この観光都市から、ラッキンコーヒーという革新性に富んだコーヒーチェーンが生まれた。2023年9月、白酒の茅台とのコラボレーションによる「醤香ラテ」の全国発売が大きな話題を呼んだ。初日に542万杯以上が売れ、売上高は1億元を超えた。廈門に本部を置くこの企業は、2017年に北京銀河SOHOで初の店舗を開業し、その後わずか18カ月でアメリカのナスダック(NASDAQ)に上場した。2020年6月には財務不正問題で退場を余儀なくされたものの、退場から21カ月で黒字化を実現し、逆境を乗り越えた。

 ラッキンコーヒーは、スターバックスと違い、カフェにある社交の場を提供せず、座席もなく、限られた空間で一日に数百杯を売り上げる。ラッキンコーヒーは消費者がアプリやミニプログラムを通じて注文し、店舗で受け取る「インターネットコーヒー」のモデルを確立し、オンラインとオフラインのハイブリッドを実現し、成功している。

 2023年10月末時点で、ラッキンコーヒーの国内店舗数は1万3,000店を超えた。店舗数、営業収入において、20年以上中国市場で事業を展開するスターバックス・チャイナを上回る。

 2023年、ラッキンコーヒーは、全世界のユニコーン企業1,360社の中で130位にランクインし、評価額は400億ドルに達している。

 起業精神旺盛な廈門の「ユニコーン企業」は中国第18位となっている。盛んな飲食業と観光業により、「ホテル飲食業輻射力」は中国第8位と、トップ10入りを果たしている。


中心都市がメガロポリスの発展を牽引:「中国都市総合発展指標2022」

雲河都市研究院

編者ノート:
中国で最も発展している都市はどこか?最も発展しているメガロポリスはどこか?〈中国都市総合発展指標2022〉の総合ランキングが発表された。雲河都市研究院は、この総合ランキングの偏差値を用いて、全297都市を一線都市、准一線都市、二線都市、三線都市に定量的にランク分けし、さらに全19メガロポリスについて総合的な評価と分類を行った。


 〈中国都市総合発展指標2022〉総合ランキングが発表された。北京は7年連続で総合ランキングの首位、上海が第2位、深圳が第3位となった。

 趙啓正中国国務院新聞弁公室元主任は、「2022年、厳しい国際環境と新型コロナウイルス禍の困難な中、中国経済は安定した成長を遂げた。〈中国都市総合発展指標〉は、中国都市の発展成果を国際的に示している」と評価する。

 明暁東中国国家発展和改革委員会発展戦略和計画司元一級巡視員・中国駐日本国大使館元公使参事官は、「2022年は中国にとって非常に特別な年であった。中国の経済は、国際環境と新型コロナウイルスの不利な影響を克服し、安定した成長を実現した。〈中国都市総合発展指標2022〉総合ランキングは、中国経済成長の状況と都市の総合発展状況が反映されている。前年と比較して、北京、上海、深圳、広州、成都、杭州、重慶、南京、蘇州という総合ランキング上位9都市のメンバーと順位に変化はない。これは、中国の経済成長センターに変化がないことを示している。中国経済の中核となるこれらの都市は、2022年にコロナ禍の再燃やサプライチェーンの不安定に耐え、経済社会の持続的な発展を保ち、中国経済の総量を120兆元の新たな高みに押し上げた。総合ランキング上位10都市の中で、唯一新たにランクインした第10位の武漢は、新型コロナウイルス・パンデミック初期の衝撃を克服し、再びトップ10に戻ってきた」と指摘した。

1.中国の一線都市、准一線都市、二線都市はどこか?


 一線都市、二線都市がどこかについては、中国でさまざまな意見や議論があり、きちんとした定義や基準は存在しない。楊偉民中国共産党中央財経領導小組弁公室元副主任は、「現在の一線、二線都市といった言い方には、一定のルールがなく、厳格な定義もなく、主に住宅価格で区分されている」と指摘する。

 この状況を踏まえ、878のデータセットを用いて、全国297の地級以上都市を環境・社会・経済の3つの次元で総合的に定量評価する〈中国都市総合発展指標〉(以下、〈指標〉)は今年、中国全土における都市ランクの分類を試みた。

 〈指標〉は、評価方法に「偏差値」の概念を用いるため、各都市が各指標で全国でどの立ち位置にあるかを相対的に反映できる。統計、衛星解析データ、ビックデータなどさまざまな指標に用いられる異なる単位を、偏差値という統一の尺度に変換したゆえ比較可能となった。

 総合評価の偏差値は、環境・社会・経済の3つの大項目の偏差値を合計し、最大300で、全国平均値は150となる。

 〈指標〉では、合計偏差値200以上の都市を「一線都市」、175〜200の都市を「准一線都市」、150〜175の都市を「二線都市」、150未満の都市を「三線都市」と定義する。

 この基準によると、一線都市は北京、上海、深圳、広州の4都市で、特に北京と上海の2大メガシティの偏差値が際立っている。

 准一線都市には成都、杭州、重慶、南京、蘇州、武漢、天津、廈門、西安の9都市が含まれる。これらの都市は将来、一線都市に昇格する可能性が高い。

 二線都市は、21の地域中心都市を含む43都市で、とくに寧波、長沙、青島、東莞、福州など都市の偏差値が、175に近い。将来、准一線都市に昇格する可能性がある。

 総合評価の偏差値が全国平均値以下の三線都市は合計で241都市ある。このなかにはフフホト、銀川、西寧など3つの省都市が含まれている。

 趙啓正氏は「総合ランキングの偏差値で一線都市、准一線都市、二線都市、三線都市を量的にランク分けすることで、都市の分類基準を明確にし、都市の比較分析にあたっての困難を一気に解消した」と述べる。

2.中国発展の最大エンジンは三大メガロポリス


 メガロポリスは、中国新型都市化の主たる形態である。第14次五カ年計画綱要では、中国全土で19のメガロポリスを計画した。

 「高度化するメガロポリス」として、京津冀(北京・天津・河北)、長江デルタ(上海・江蘇・浙江・安徽)、珠江デルタ(広東)、成渝(四川・重慶)、長江中游(湖北・湖南・江西)の5メガロポリスを取り決めた。

 「発展するメガロポリス」には、山東半島(山東)、粤閩浙沿海(広東・福建・浙江)、中原(山西・安徽・河南)、関中平原(陝西・甘粛)、北部湾(海南・広西)の5メガロポリスを指定した。

 「育成するメガロポリス」としては、哈長(吉林・黒龍江)、遼中南(遼寧)、山西中部(山西)、黔中(貴州)、滇中(雲南)、呼包鄂榆(陝西・内モンゴル)、蘭州—西寧(甘粛・青海)、寧夏沿黄(寧夏)、天山北坡(新疆ウイグル)の9メガロポリスを取り決めた。

 19メガロポリスには、35の国家中心都市や地域中心都市が集中し、中国のGDPの88%、常住人口の81.9%を占めている。

 メガロポリスの発展をいかに評価するか?雲河都市研究院は〈指標2021〉発表時、上位10メガロポリスの評価を試みた。今年はさらに全19メガロポリスの評価を実施した。

 各メガロポリスの発展水準をより直感的に分析するために、本文では、19メガロポリスに属する223の都市の〈指標2022〉総合ランキング偏差値を、メガロポリス別に「箱ひげ図」と「蜂群図」を重ねて分析し、メガロポリスにおける都市総合ランキング偏差値の分布状況と差異を可視化した。

 箱ひげ図中の横線は、サンプルの中央値、箱の上辺は上位四分位点(75%)、箱の下辺は下位四分位点(25%)、箱本体は50%のサンプル分布を示している。蜂群図は、個々のサンプル分布をプロットした図である。箱ひげ図と蜂群図を重ね合わせることで、サンプルのポジションと全体の分布の双方を示せる。

 明暁東氏は「19メガロポリス総合ランキングの箱ひげ蜂群図の分析から、メガロポリスの中心都市の極化が明らかであり、発展地域ほどその中心都市は全国における立ち位置が高い」と指摘する。

 確かに、中心都市はメガロポリスの核である。北京、上海、深圳、広州の4つの一線都市は、すべて長江デルタ、珠江デルタ、京津冀にある。これらの三大メガロポリスを「一線メガロポリス」と称することができる。三大メガロポリスには、中国の36.2%のGDP、23.5%の常住人口が集中している。三大メガロポリスの1人当たりGDPは全国平均の1.54倍に達し、大量の外来人口を引き付け、非戸籍常住人口は7,802万人にのぼる。三大メガロポリスは、中国の経済社会発展を牽引する最大のエンジンであることは疑いようがない。

3.中国の准一線、二線、三線メガロポリス


 准一線都市を地域中心都市として牽引するメガロポリスには、成渝、長江中游、粤閩浙沿海、関中平原があり、「准一線メガロポリス」と称することができる。4つの准一線メガロポリスは、中国のGDPの24.9%を生み出し、常住人口の25.7%が集中、中国の四分の一の経済と人口を有している。しかし、4つの准一線メガロポリスの1人当たりGDPは全国平均の0.97倍に過ぎず、人口流出地域であり、合計で1,801万の人口が流出している。また、関中平原は、西安のみを中心都市とする単一エンジンのメガロポリスである。

 二線都市を地域中心都市として牽引するメガロポリスには、山東半島、北部湾、中原、哈長、遼中南、山西中部、黔中、滇中、蘭州―西寧、天山北坂があり、「二線メガロポリス」と称することができる。10の二線メガロポリスは、中国のGDPの24.8%を生み出し、常住人口の31.4%が集中し、中国の四分の一の経済規模と三分の一の人口を有する。そのうち、遼中南、山西中部、滇中、蘭州―西寧、天山北坂の5つのメガロポリスは、合計で666万人の非戸籍常住人口を吸収している。しかし山東半島、北部湾、中原、哈長、黔中の5つのメガロポリスは合計で3,715万の人口を流出している。二線メガロポリスの中には、中原、山西中部、黔中、滇中、天山北坂などは、単一のエンジンのメガロポリスである。

 呼包鄂榆、寧夏沿黄は、三線都市を地域中心都市として牽引するメガロポリスであり、「三線メガロポリス」と称することができる。2つの三線メガロポリスは、GDPと常住人口の全国での比重はそれぞれ2%と1.3%に過ぎない。規模こそ小さいが、三線メガロポリスの1人当たりGDPは三大メガロポリスに近く、全国平均の1.53倍に達している。故に、合計231万の流動人口を引き寄せている。2つの三線メガロポリスとも、単一エンジンメガロポリスである。

 東京経済大学の周牧之教授は、「総合偏差値を用いて都市ランクを定量的に定義し、それに基づいてメガロポリスの発展状況を分析することは、〈指標〉の新たな試みであり、都市やメガロポリスのポジションをより客観的に理解するための参考になる」と期待している。

 趙啓正氏は、「〈指標〉を用いてメガロポリスを総合的に分類するアプローチは、革新的な視点である」と評価している。

 明暁東氏は、「今回の〈指標2022〉の発表が早まり、隔年ではなく前年の中国都市の総合発展状況を点検することが出来た。特に〈指標〉の適用領域が拡大し、経済社会生活や環境の多くの側面に及ぶことは注目に値する。都市の総合比較からメガロポリスの総合比較分析、国際トップブランドの消費傾向比較から二酸化炭素排出分析、産業構造比較からグローバルイノベーションクラスター分析などに至るまで、〈指標〉は無限の応用可能性を持っている」と述べる。

 趙啓正氏は、「〈指標2022〉は比較研究の特色をさらに発揮し、都市比較だけでなく、メガロポリスの比較も行われ、各メガロポリスのビジョンを考案するための着眼点を提供している」と強調した。

 楊偉民氏は、「中国経済は巨大経済体としての強靭さを持つ。その強靭さの空間的な担い手は、超大都市、特大都市である。雲河都市研究院の〈中国都市総合発展指標2022〉は、この強靭さを裏付けている。特に創造的なのは、〈指標2022〉が、878の指標を「偏差値」で統一された尺度にし、中国の都市を一線、二線、准二線、三線都市に定量的にランク付したことである。これで一気に中国における都市のランク付の混乱を解決した。〈指標2022〉は、「健康診断報告書」として、都市およびメガロポリスの健康状態を「ランク」で明らかにしている」と総括した。


【中国語版】
中国網『
中心城市引领城市群发展:中国城市综合发展指标2022』(2023年11月30日)

【英語版】
China.org.cn「
China Integrated City Index 2022: Core cities lead development of megalopolises」(2023年12月5日)

中国国務院新聞弁公室(SCIO)「China Integrated City Index 2022: Core cities lead development of megalopolises」(2023年12月5日)

China Daily「China Integrated City Index 2022: Core cities lead development of megalopolises」(2023年12月8日)

他掲載多数

鄭州:iPhone生産とEV産業クラスターとしての中原メガシティ【中国中心都市&都市圏発展指数2021】第16位

中国中心都市&都市圏発展指数2021
第16位


 青島市は中国中心都市&都市圏発展指数2021の総合第16位だった。同市は前年度より順位を1つ下げた。

 〈中国中心都市&都市圏発展指数は、中国都市総合発展指標の派生指数として、4大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる36の中心都市の評価に特化したものである。同指数は、これら中心都市を、全国297の地級市以上の都市の中で評価している。10大項目と30の小項目、116組の指標からなる。包括的かつ詳細に、中国中心都市の発展を総合評価するシステムである。

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〈中国中心都市&都市圏発展指数〉:【36中心都市】北京、上海、深圳、広州、成都、天津、杭州、重慶、南京、西安、寧波、武漢、青島、鄭州、長沙、廈門、済南、合肥、福州、瀋陽、大連、昆明、長春、ハルビン、貴陽、南昌、石家荘、南寧、太原、海口、ウルムチ、蘭州、フフホト、ラサ、西寧、銀川


中原の中核都市


 鄭州は河南省の省都であり、中原メガロポリスの中核都市である(中原メガロポリスについて詳しくは中心都市がメガロポリスの発展を牽引:中国都市総合発展指標2022を参照)。鄭州は河南省の中北部に位置し、北に黄河、西に嵩山がある。東は開封、南は許昌と平頂山、西は洛陽、北は新郷と焦作の各市と接している。市の総面積は7,567平方キロメートル(熊本県と同程度)で、中国人口規模第11位の都市として約1,283万人を抱える。現在、6区5市1県を管轄し、国家級新区1つ、国家級開発区2つ、国家級輸出加工区1つを有している。

 同市は温帯大陸性季節風気候に属し、四季がはっきりしている。年間平均気温は約15.4℃、年間降水量は約630mmである​​​​。市内には大小124の河川があり、多様な自然地形を有している。

■ 由緒ある文明交流の地


 鄭州は中国古代文明・華夏文明の発祥の地として、古来より文明交流の十字路とされてきた。

 夏、商、管、鄭、韓の各王朝が鄭州に都を置き、隋、唐、五代、宋、金、元、明、清の各王朝が州を設置してきた。鄭州の中心市街地には、3,600年前の商朝の城壁遺跡(鄭州商城)全長7キロメートルが今も残る。市内には、世界文化遺産が2項目15カ所あり(中国第5位)、国家重点文化遺産保護施設87カ所(中国第3位)、省レベル文化遺産保護施設97カ所、市レベル文化遺産保護施設208カ所、国家レベル無形文化遺産6カ所を有している。他にも、裴李崗文化遺跡(約8,000年前)、大河村遺跡(約5,000年前)、打虎亭漢墓、黄帝故里など、多くの古代文化遺跡が散在している。少林寺のある嵩山を始め、黄河文化公園などの自然文化景観も多くの観光客を引き付けている。鄭州の「国内観光客数」は中国第21位である。

 豊かな中原文化は、古代において子産、列子、韓非、杜甫など傑出した人物を輩出している。同市は現在なお「傑出文化人指数」で中国第7位と好成績を誇っている。

■ 鉄道が産んだ大都市


 鄭州駅は1904年に設立され、当初はプラットフォーム1つ、平屋2軒、線路4本しかなかった。1953年に鄭州駅が拡張され、鉄道のハブとなった。鉄道の利便性により1954年に河南省の省都が開封から鄭州へ移転された。これが、鄭州が「鉄道が産んだ都市」と言われる由縁である。

 鄭州は、東西南北交通の要衝として、航空・鉄道・道路からなる巨大な交通ハブとなっている。鄭州駅は中国鉄道の最大級の旅客中継駅で「中国鉄道の心臓」と呼ばれている。同市の「空港利便性」と「航空輸送」は共に全国第13位であり、「鉄道利便性」に至っては全国第1位を誇っている。(詳しくは【ランキング】中国で最も空港利便性が高い都市はどこか?を参照)。

 鄭州は一帯一路の重要な結節点都市でもある。2013年に鄭州は中部地区で初めてヨーロッパへ直通する貨物列車―中欧列車を開通させた。過去10年間でユーラシア40カ国の140以上の都市を繋げた中欧列車(中豫号)が、累計750万トンの貨物を輸送した。


中国都市総合発展指標2021
第19位


 鄭州は〈中国都市総合発展指標2021〉総合ランキング第19位であり、前年度より順位を3つ下げた。

 「社会」大項目は第14位で、前年度の順位を維持した。3つの中項目で「ステータス・ガバナンス」「伝承・交流」は第14位、「生活品質」は第21位だった。小項目で見ると、「人口資質」は第6位、「歴史遺産」は第10位と2項目がトップ10に入った。また、「文化娯楽」は第13位、「消費水準」は第18位と2項目がトップ20に入った。なお、「都市地位」「生活サービス」は第22位、「人的交流」「居住環境」は第28位、「社会マネジメント」は第39位であった。

 「経済」大項目は第17位で、前年度に比べ順位が1つ上がった。3つの中項目で「都市影響」は第14位、「経済品質」は第17位、「発展活力」は第19位で、3中項目のうちトップ10入りした項目はなかった。9つの小項目のうち、トップ10入りした項目はなかったものの、「経済規模」「開放度」「広域中枢機能」は第13位、「広域輻射力」は第14位、「イノベーション・起業」は第19位と、5項目がトップ20に入った。また、「経済構造」「都市圏」は第22位の2項目もトップ30に入った。なお、「ビジネス環境」は第33位、「経済効率」は第43位だった。

 「環境」大項目は第107位であった。3つの中項目のうち「空間構造」は第29位、「環境品質」は第163位、「自然生態」は第222位であった。9つの小項目のうち、「環境努力」は第12位、「都市インフラ」は第18位と、2項目がトップ20に入った。なお、「コンパクトシティ」は第29位、「交通ネットワーク」は第32位、「資源効率」は第102位、「自然災害」は第158位、「気候条件」は第187位、「水土賦存」は第210位、「汚染負荷」は第255位であった。


 〈中国中心都市総合発展指標2021〉について詳しくは、メガシティの時代:中国都市総合発展指標2021ランキングを参照。

 

CICI2016:第26位  |  CICI2017:第21位  |  CICI2018:第18位
CICI2019:第16位  |  CICI2020:第16位  |  CICI2021:第19位


■ ギリシャ一国に匹敵する経済規模


 鄭州は中原地区の経済中心地として、2022年のGDPは1兆2,935億元(約25.9兆円、1元=20円換算)に達し、中国第16位の経済規模を誇る。これは世界第54位のイラクのGDPを超え、世界第53位のギリシャのGDPに匹敵する規模である(詳しくは「【ランキング】世界で最も経済リカバリーの早い国はどこか? 中国で最も経済成長の早い都市はどこか?を参照)。

 金融・医療センターとしての機能も高く、鄭州の「金融輻射力」は中国第7位、「医療輻射力」は中国第9位となっている。鄭州には中国初の先物取引所と、中国初の空港経済区がある​。

鄭州は中国の主要な研究都市として、「科学技術輻射力」は中国第19位である。複数の国家重点大学が存在し、「高等教育輻射力」は中国第15位と高水準である。「大学学生数」と「高等教育教師数」はいずれも中国第3位である(詳しくは【ランキング】科学技術大国中国の研究開発拠点都市はどこか?)。

 中心都市としての鄭州は、外部から人々を吸引し成長している。人口の流出入を示す「流動人口(非戸籍常住人口)」では、河南省内17都市のうち16都市は、外へ人口が流出し、その規模は約2,012万人に達している。中でも、周口、信陽、駐馬店の3都市は、中国で最も人口が流出するトップ3都市であり、同3都市だけで約938万人が外部に流出している。これに対して鄭州は、流動人口が約363万人のプラスである。よって鄭州は中国第11位の人口流入都市となっている。

■ iPhone生産とEV産業クラスターの一大拠点


 鄭州は、世界最大のApple製品の生産基地として名高い。最近、EV生産にも力を入れている。

 鄭州はBYDの中高級車種の重要な生産基地であり、2023年11月、BYDの第600万台目のEVが鄭州で生産された(詳しくは【ランキング】自動車大国中国の生産拠点都市はどこか?を参照)。

 内陸都市でありながら、鄭州の「製造業輻射力」は中国第20位で高い(詳しくは【ランキング】中国で最も輸出力の高い都市はどこか?を参照)​。

■ エンタメ都市としての台頭


 鄭州のコンテンツ産業も盛んである。2021年、河南衛星テレビの春晩(旧正月を祝う中国の国民的年越し番組)には、ダンス番組「唐宮夜宴」が全国を席巻した。その後、同テレビ局の「端午の不思議な旅」や、水中ダンス番組「祈」も大ヒットした。

 「唐宮夜宴」は、河南博物院が所蔵する唐代の舞楽佣から着想を得たことで、河南博物院も注目を集め、多くの観光客が訪れている。

 エンタメ都市としても名を上げつつある鄭州は、「文化・スポーツ・娯楽輻射力」で中国第15位であり、「映画館・劇場消費指数」は中国第14位である(詳しくは【ランキング】世界で最も稼ぐ映画大国はどこか?を参照)。

■ 黒川紀章設計の市街地が魅力


 鄭州東部に建設中の150万人都市「鄭東新区」の設計には、日本を代表する建築家・黒川紀章氏の案が採用されている。「鄭東新区」の設計案は2003年に実施された国際設計コンペによって決定されたもので、黒川氏は計画面積1.5万ヘクタールのマスタープランとCBD地区の詳細設計を担当した。生態回廊や水路都市などの人間と自然との共生といった基本コンセプトが、同市の新市街地の魅力を形作っている。


長沙:エンタメ・グルメのニューメガシティ【中国中心都市&都市圏発展指数2021】第15位

中国中心都市&都市圏発展指数2021
第15位


 青島市は中国中心都市&都市圏発展指数2021の総合第15位だった。同市は前年度より順位を1つ上げた。

 〈中国中心都市&都市圏発展指数は、中国都市総合発展指標の派生指数として、4大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる36の中心都市の評価に特化したものである。同指数は、これら中心都市を、全国297の地級市以上の都市の中で評価している。10大項目と30の小項目、116組の指標からなる。包括的かつ詳細に、中国中心都市の発展を総合評価するシステムである。

CCCI2017 | CCCI2018 | CCCI2019 | CCCI2020

〈中国中心都市&都市圏発展指数〉:【36中心都市】北京、上海、深圳、広州、成都、天津、杭州、重慶、南京、西安、寧波、武漢、青島、鄭州、長沙、廈門、済南、合肥、福州、瀋陽、大連、昆明、長春、ハルビン、貴陽、南昌、石家荘、南寧、太原、海口、ウルムチ、蘭州、フフホト、ラサ、西寧、銀川


「星城」長沙


 長沙市は湖南省の省都であり、「星城」と称される。同市は東に江西省の宜春、萍郷、西に娄底、益陽、南に株洲、湘潭、北に岳陽と隣接し、長江中流域の重要な地域中心都市である。また、米どころ・魚どころである。北京を始めとする中国の都市は長い歴史の中で、さまざまな理由により都市の中心地が変動してきた。そうした中、長沙は、三千年にわたって都市の位置が変わらない「楚漢名城」である。

 長沙の総面積は11,819平方キロメートルにおよび、15のニューヨーク、11の香港、6つの深圳に相当する広さである。中国国内では第157位の規模であり、日本では秋田県と同等の大きさである。

 2022年末の常住人口は1,042万人で、ニューヨークを上回り、スウェーデンの全人口を超えるメガシティである。中国国内では第16位の人口規模である。

 同年のGDPは1.4兆元(約20.8兆円、1元=20円換算)に達し、中国第15位の経済規模がある。これはスリランカのGDPに匹敵する規模である(詳しくは「【ランキング】世界で最も経済リカバリーの早い国はどこか? 中国で最も経済成長の早い都市はどこか?を参照)。

歴史の深さ、継続する文脈、名人の輩出


 長沙は、その長い歴史と豊かな文化資源で知られる。特に、「岳麓書院」は、宋、元、明、清の四つの王朝を経て、現在の湖南大学につながり、世界で最も古い高等教育機関の一つとして人材を輩出し続けている。毛沢東を始め曽国藩、左宗棠ら中国の近代史を形作った偉人が岳麓書院から大勢出ている。まさに岳麓書院正門に掲げられた「惟楚有才,于斯為盛(楚に人材あり、ここに集まる)」という対聯の通りである。

 現在、長沙には23の大学と37の専門学校から成る60の高等教育機関がある。湖南大学、中南大学、国防科学技術大学、湖南師範大学の4校は、国家重点大学「211大学」に含まれ、うち3校は「985大学」に名を連ねる名門校である。

 現在、同市の高等教育能力の高さを示す「高等教育輻射力」は中国第7位である。

 歴史上、長沙生まれ或いは長沙で活躍した傑出人物は数多い。前漢の思想家・文学家である賈誼、唐代の書家・文学家の欧陽詢。近代では画家・齊白石、辛亥革命先駆者の黄興、蔡鍔、文学者の周立波、周楊ら多くの著名人を生んでいる。

 同市は現在なお「傑出文化人指数」で中国第13位、「傑出人材輩出指数」で中国第22位と、好成績を誇っている。

人 材に活躍の場を与える長沙は、外からも人々を吸引し成長している。人口の流出入を示す「流動人口(非戸籍常住人口)」では、湖南省内13都市のうち12都市は、外へ人口が流出し、その規模は約845万人である。これに対して長沙は、流動人口が約264万人の大幅プラスである。よって長沙は中国第14位の人口流入都市となっている。

 住宅価格を低く抑える政策も独特である。中国の省都の中でも長沙の住宅価格は最も低い水準にある。これも、長沙の人口吸入力になっている。長沙は現在、「幸福感都市認定指数」で、杭州、成都と並び、中国第1位の都市である。


中国都市総合発展指標2021
第15位


 長沙は〈中国都市総合発展指標2021〉総合ランキング第15位であり、前年度の順位を維持した。

 「社会」大項目は第13位で、前年度に比べ順位が1つ下がった。3つの中項目で「生活品質」は第12位、「ステータス・ガバナンス」は第13位、「伝承・交流」は第17位だった。小項目で見ると、「居住環境」は第9位とトップ10に入った。また、「消費水準」は第12位、「生活サービス」は第13位、「文化娯楽」は第14位、「人口資質」は第15位、「人的交流」は第18位、「都市地位」は第19位と、6項目がトップ20に入った。なお、「社会マネジメント」は第26位、「歴史遺産」は第97位であった。

 「経済」大項目は第16位で、前年度に比べ順位が1つ上がった。3つの中項目で「経済品質」は第15位、「発展活力」は第17位、「都市影響」は第18位で、3中項目のうちトップ10入りした項目はなかった。9つの小項目のうち、トップ10入りした項目はなかったものの、「イノベーション・起業」は第13位、「ビジネス環境」「広域輻射力」は第14位、「経済構造」「広域中枢機能」は第17位、「経済規模」は第18位、「開放度」は第20位、と、7項目がトップ20に入った。なお、「経済効率」は第21位、「都市圏」は第25位と2項目もトップ30内に入り、同市の経済力は各指標ともにバランス良かった。

 「環境」大項目は第25位で、前年度より順位を5つ上げた。3つの中項目のうち「空間構造」は第25位、「環境品質」は第26位、「自然生態」は第105位であった。9つの小項目のうち、「資源効率」は第5位と、トップ10入りした。また、「環境努力」は第11位、「都市インフラ」は第15位と、2項目がトップ20に入った。なお、「交通ネットワーク」は第23位、「コンパクトシティ」は第30位、「自然災害」は第35位、「気候条件」は第97位、「水土賦存」は第184位、「汚染負荷」は第193位であった。


 〈中国中心都市総合発展指標2021〉について詳しくは、メガシティの時代:中国都市総合発展指標2021ランキングを参照。

CICI2016:第18位  |  CICI2017:第15位  |  CICI2018:第15位
CICI2019:第15位  |  CICI2020:第15位  |  CICI2021:第15位


バラエティのリーダー・湖南衛星テレビ


 「湖南衛星テレビ」は、もともと「湖南テレビ局」という名称であったが、1997年に衛星放送を開始して以来、「湖南衛星テレビ」として知られるようになった。マンゴーを模したロゴから「マンゴーチャンネル」という愛称で親しまれ、現在では湖南文化や長沙を象徴する存在となっている。

 このテレビ局は、常に新しい分野を切り開き、全国の他のテレビ局の一歩先を進んでいる。番組の視聴率は、省レベルの衛星テレビ局の中で常にトップを走っている。20年以上にわたって人気を博している「快楽大本営」や、オーディション番組の「スーパーガール」など、多数のヒットバラエティ番組やエンターテイメント作品が生まれた。これらの番組は、SNSで話題となり、特に「スーパーガール」や「快楽男声」は、20年前から中国の若い消費層にトップレベルのエンターテイメントを提供している。

 湖南衛星テレビは、人気バラエティ番組を多数製作するだけでなく、優れた司会者、俳優、歌手を輩出している。何炅、汪涵、謝娜、李宇春など人気タレントが名を連ねている。

 エンタメ都市として名高い長沙は、「文化・スポーツ・娯楽輻射力」で中国第12位であり、「映画館・劇場消費指数」は中国第11位である(詳しくは『【ランキング】世界で最も稼ぐ映画大国はどこか?』を参照)。

■ グルメとインフルエンサーの都市


 長沙は現在、「インフルエンサー都市」と呼ばれる。長沙は優れた自然環境と、長い歴史と文化を背負った美食の都市でもある。湖南衛星テレビの積極的な宣伝が功を奏し、湖南料理が、全国的に根を張り巡らせた。SNSの時代となり、大勢のインフルエンサーが長沙の食の魅力を広げている。

 長沙には、小龍蝦(ザリガニ)、臭豆腐、米粉(ビーフン)といった、独特で多様なグルメが存在する。中国一辛いと言われる「湖南料理」が、多くの観光客を魅了している。ミルクティー業界のスタバとも言われる「茶顔悦色」が2013年に設立され、長沙の新しいグルメの象徴的な存在となった。

 長沙は眠らないエンタメ都市としても有名であり、ナイトエコノミーが、多くの観光客を引き寄せている。

 交通の便も観光都市長沙へのアクセスを容易にしている。「鉄道利便性」が中国第7位、「空港利便性」が中国第15位と、交通の便が高いことも魅力のひとつとなっている(詳しくは【ランキング】中国で最も空港利便性が高い都市はどこか?を参照)。

 観光都市・長沙の「卸売・小売輻射力」は中国第13位、「ホテル・レストラン輻射力」は中国第18位である。

■ 強い機械産業を持つ


 長沙はソフトパワーだけでなく、製造業も優れている。長沙には、三一重工、中聯重科、鉄建重工、山河智能といった世界トップクラスの機械製造企業を擁している。長沙の「製造業輻射力」は中国第36位である(詳しくは「【ランキング】中国で最も輸出力の高い都市はどこか?を参照)。

 併せて、研究開発も活発であり、「科学技術輻射力」は、中国第15位である。国家を代表する研究者の排出数を示す「中国科学院・中国工程院院士指数」は第15位と、ここでも人材の豊富さを窺わせる(詳しくは『【ランキング】科学技術大国中国の研究開発拠点都市はどこか?』)。


【講演】周牧之:誰が中国を養っているのか?

周牧之 東京経済大学教授

2023年10月10日「第四回世界食学フォーラム」で講演を行う周牧之教授。

編者ノート:
ロシア・ウクライナ戦争は、世界の食糧価格に大きな変動を引き起こし、食糧危機が国際社会で再び注目を集めるトピックとなった。東京経済大学の周牧之教授は2023年10月、中国海南省・海口で開催の「第四回世界食学フォーラム」で講演を行い、世界食糧事情について詳説した。誰が世界そして中国を養っているのか。世界の食糧貿易の罠は何か。中国の農業生産性が最も高い地域はどこか。そして中国は将来、食糧問題にどう取り組むべきか。

1.誰が世界を養っているか


 今から半世紀前の1972年、ローマクラブという欧米のエリートが集まる学術団体がレポート『成長の限界』を公開した。戦後の世界的な人口の急増に警鐘を鳴らしたこのレポートは、このままでは地球が持続的な人口増加を支えることができないとの主張で、大きな関心を集めた。

 現実はしかしまるで逆の結果となった。その後の半世紀で、アジアとアフリカの両地域における人口の爆発的な増加で、世界人口は倍増した。ところが、食糧問題は『成長の限界』で警告されたような危機には陥らなかった。世界の食糧生産量は当該人口を養うだけでなく、余裕さえ持っていた。

 なぜ世界の食糧生産は持続的に増加できたのか。データ分析から見ると、1961年から約60年間、世界の穀物耕地面積はわずか14%しか増加していない。耕地の拡大による増加はそれほど大きくない。この間、世界の人口は158%増加したのに対して、世界の穀物総生産量は250%増加した。地球が急増する人口を養えたのは、穀物生産の増加速度が、人口増加速度を上回った為だ。

 では、何が世界の食糧生産量の持続的な増加を実現したのか。その答えは、耕地面積の増加ではなく、「単収(単位面積当たりの穀物収穫量)」の増加にあった。過去60年間で、世界の穀物収穫量、つまり一定の耕地面積当たりの穀物生産量は207%も増加した。

 何が単収をこれほど大幅に増加させたのか。それは、農薬や化学肥料の大量投入、灌漑や道路などの農業インフラ施設の普及、農業の組織化や機械化、そして品種改良など農業技術の向上である。これらは、すべて「緑の革命」と呼称される。まさに「緑の革命」が食糧生産量を増やし、今日の膨大な人口を養った。

2.食糧貿易の罠


 「緑の革命」は、世界の食糧生産能力に南北格差をもたらした。世界銀行は、世界の各国を所得別に低所得、低中所得、高中所得、高所得の4つのグループに分けている。雲河都市研究院によれば、所得が高い国ほど農業の生産性が高く、高所得国と低所得国の間の農業の労働生産性の格差は49倍にも達した。「緑の革命」により、自然条件に依存していた農業は、高資本・高技術投入の「資本集約型産業」へと変わった。農業にきちんと投資ができる国・地域が、農業の高収益を実現できる。これは、世界の食糧問題を考える際に重視すべき視点である。

 食糧生産能力の南北格差が、先進国が発展途上国へ食糧輸出をするという奇妙な現象をもたらしている。現在、世界最大の農産物輸出国はアメリカであり、3位はオランダ、4位はドイツである。一方、最大の農産物輸入国は中国である。多くの発展途上国が、農産物の純輸入国となっている。農産物貿易の優位性は、土地、水、気候などの自然資源に依存するだけでなく、農業の生産性にも大きく左右される。

 生産性の低い発展途上国にとって、食糧輸入は人々を飢餓から救うものの、安価な輸入農産物はこれらの国の農業の破壊にもつながる。世界には今なお約8億人が飢餓の危機に瀕し、その多くは農業の生産性が低く、先進国から安い食糧輸入の影響を受ける国の人々である。アフリカの多くの国々がそうした犠牲に晒されている。

3.『誰が中国を養うのか』の衝撃


 1995年、アメリカの学者レスター・ブラウンはレポート『誰が中国を養うのか』を発表し、14億の中国人口の養い手を問うて、中国の巨大な食糧需要が世界の食糧供給に脅威をもたらすと指摘した。

 同レポートは当時、中国政府にも高い関心を持たれた。しかしその後、中国の食糧問題は大事には至らなかった。現在、中国の主食、すなわち米と小麦はほぼ自給を維持している。

 では、誰が中国を養っているのか。データ分析から見ると、1961年から約60年間、中国の穀物耕地面積はわずか12%しか増えなかった。一方、中国の人口は118%増加した。これに対して、中国の穀物生産量は491%増加し、食糧生産の増加率は人口増加率を大きく上回った。これは「緑の革命」のお陰である。

 この間、世界の穀物単収、すなわち単位面積当たりの穀物収穫量は207%増加したのに対し、中国の穀物単収は430%も増加した。これは、中国が「緑の革命」の優等生であることを示している。

 1960年は、中国の1人当たりの一日摂取カロリーが最も少なかった年であった。現在その数値は当時の2.3倍になった。国産の主食で中国の膨大な人口を養っている。

4.世界最大の飼料穀物輸入国


 満腹するだけでなく、食の質も重要である。その意味では肉の供給も欠かせない。現在、中国は一人当たり年間肉の消費量が62kgに達し、世界平均の同42kgを大きく上回り、日本の同54kgも超えている。改革開放以来、中国の食肉生産量は約8倍も増加した。中国人の肉消費はすでに高い水準に達している。

 しかし、中国の食肉生産を支える飼料は、輸入に大きく依存している。前述したように、中国は世界最大の農産物輸入国であり、特に大豆、トウモロコシ、高粱、大麦などの飼料用穀物で世界最大の輸入国である。例えば、中国の大豆輸入量は、現在全世界の約80%を占めている。中国による大豆輸入の60%はブラジルから、32%はアメリカからである。また、中国によるトウモロコシ輸入は、世界の約22%を占めている。中国のトウモロコシの輸入の72%はアメリカから、26%は戦争中のウクライナからである。

 農産物貿易の大きな問題の一つは、様々な理由で価格が大きく変動することである。特に、ロシアのウクライナ侵攻をはじめとする各種の紛争が食糧貿易に与える影響は非常に大きい。食糧価格変動の最大の被害者は、発展途上国である。例えば、最近、多くのアフリカの指導者がウクライナやロシアを訪問し、対話による戦争の早急解決を求めている。これは、アフリカが双方から安定した食糧供給の再開を望むからである。

5.中国の農業生産性が最も高い地域はどこか


 中国は食糧問題にどう取り組むべきだろうか。中国には297の地級市以上の都市があり、雲河都市研究院は、これらの都市すべての農業生産性、すなわち「耕地面積当たりの第一次産業GDP」を比較分析した。

 その結果、中国で農業生産性が最も高い30の都市は、三明、竜岩、福州、寧徳、舟山、汕頭、南平、漳州、楽山、麗水の順に並ぶ。11位から30位までの都市は、茂名、莆田、潮州、長沙、株洲、三亜、台州、肇慶、海口、巴中、儋州、萍郷、杭州、紹興、寧波、黄山、掲陽、泉州、広州、仏山である。トップ30位の都市はすべて南部に位置している。その中には、福州、長沙、海口、杭州、広州など、省会(省政府所在地)大都市も多く含まれている。

 「緑の革命」は農業生産性の南北格差をもたらし、資金や技術の面での投入力が高い地域で、農業がより発展する。農業生産性のランキングは、この現象が中国でも顕著であることを示している。もちろん、農業生産性に影響を与える要因には、気候、土地資源、水資源、農作物の品種などもあろう。しかし、北部に比べ、南部が農業により多くの投資をしていることは見逃せない。

 換言すれば、北部の農業には、まだ大きな収益向上の余地がある。農薬や化学肥料に過度に依存せず、よりスマートに、より高度な技術を用いて農業をするならば、北部の農業には大きな可能性がある。私はこうした取り組みを「新・緑の革命」と呼びたい。

 中国は、主食の問題を自給自足で解決した。さらに飼料用穀物を大幅に増産し、世界の食糧貿易への負荷を緩和する必要がある。そのため、農業への投資を大幅に増やし、農業を高生産性、高品質、高収益の産業に昇格させる必要がある。「新・緑の革命」を通じて、人々をただ満腹させるだけでなく、安全で豊かで健康的な食を保障しなくてはならない。

6.開発輸入の重要性


 今から25年前の1990年代末、私は、ユーラシアに跨る国際協力プロジェクトの企画に参加した。冷戦終結後、中央アジア地域には多くの資源がアクセス可能となった。私は、ユーラシア大陸を横断するインフラ建設で日中協力を提案し、中央アジアのエネルギーと食糧を上海や連雲港に運び、それを日本や韓国など東アジアの国々と共有する構想をした。

 同構想はカスピ海から中国沿岸部に至るガス・石油パイプライン、鉄道、高速道路、光ファイバー網の整備を含み、「ユーラシアランドブリッジ構想」と呼ばれた。主な目的は、中国そして東アジアの発展に必要とされるエネルギー資源や食糧の安定供給を図り、来るべき世界の需給ひっ迫を緩和することであった。 

 私は1999年4月1日、『現代版「絹の道」、構想推進を―欧州から日本まで資源の開発・輸送で協力―』とのタイトルで日本経済新聞に記事を寄稿し、このプロジェクトを公開、国際的な注目を集めた。

 同構想の核心は、輸出先の安定した供給能力の開発を前提とした「開発輸入」というコンセプトである。食糧貿易やエネルギー貿易において、最大の課題はその変動性を最小限にすることである。開発輸入とは、輸入国と輸出国が共同で投資し、長期的な協力を通じて変動性を低減する概念である。上記構想は、ユーラシア大陸における石油や天然ガス資源と、膨大な穀倉地帯の潜在的な可能性に鑑み、国際共同参画の開発輸入を進め、中国及び東アジアのエネルギー及び食糧の安定供給を計るものであった。当時未だエネルギーも食糧も純輸出国だった中国が、将来、一大輸入国に転じると私は予測した。

 同構想の国際協力において江沢民政権と小渕恵三政権の間に一時、日中両国の同意が得られたものの、その後日本の参加は見送られた。しかし構想の予測が見事に当たり、中国はエネルギーそして食糧の一大輸出国に転じた。中国から中央アジア方面へのパイプラインの建設も着々と進んでいる。

 「開発輸入」のコンセプトは、その後中国が提唱する「一帯一路」にも取り入れられた。

 今日、このフォーラムには40以上の国・地域から参加者が集まっている。一部は食糧を輸入する国から、一部は輸出する国から来ている。互いに協力し合って開発輸入を活用し、世界の食糧問題を真に解決するよう期待したい。

「第四回世界食学フォーラム」会場写真。

【日本語版】『周牧之:誰が中国を養っているのか?』(チャイナネット・2023年12月8日)

【中国語版】『周牧之:谁在养活中国?』(中国網・2023年10月30日)

【英語版】『Who is feeding China?』(China.org.net・2023年11月15日)

 

【講演】周牧之:建設業はEVに続き、大変革を遂げるか?

周牧之 東京経済大学教授

2023年10月13日、「2023長沙国際グリーン・スマート建設および建築産業化博覧会&世界建設業フォーラム」で講演を行う周牧之教授。

編者ノート:
なぜ、グローバリゼーションは進むのか。なぜ、中国にはメガロポリスが出現したのか。電気自動車業(EV)が急速に発展したのはなぜか。東京経済大学の周牧之教授は2023年10月、湖南省長沙市で開催された「2023長沙国際グリーン・スマート建設および建築産業化博覧会&世界建設業フォーラム」での講演において、これらの問題の背後にあるロジックを「ムーアの法則」駆動という概念を用いて解説し、建設業の未来の発展について展望した。

1.「ムーアの法則」駆動時代


 湖南大学の卒業生として、今日、母校主催のフォーラムに参加できることは、非常に嬉しい。

 私は湖南大学でオートメーションを学んだお陰で、現在は経済学を研究しているが、ITがベースになっている。1980年代初め、湖南大学での学生時代、私が最も感銘を受けた書籍は『第三の波』であった。この本は未来の情報社会を想像し、興奮させられた思い出がある。40年後に振り返ると、『第三の波』の予測の多くは現実となっている。

 自ら「未来学者」と名乗っていた著者、アルヴィン・トフラーは、なぜ正確に未来を予測できたのか。彼の予測には「ムーアの法則」というロジックがあった。1965年に発表された「ムーアの法則」は、半導体のトランジスタ数が18カ月で倍増し、半導体の価格が半減すると主張した。その後、人類社会は「ムーアの法則」に駆動され、これまでにない速度で進化してきた。

 半導体の絶え間ない進化に伴い、多くの製品やサービスが生まれた。パーソナル・コンピュータ、携帯電話などのハードウェアから、Eメール、ウェブページ、検索エンジンなどのネットワークサービス、Facebook、WeChat、Twitterなどのソーシャルメディア、YouTube、Netflix、TikTokなどのOTTサービス、iTunes、アマゾン、淘宝、SHEINなどのオンラインショッピングプラットフォーム、ビットコインなどの仮想通貨、ChatGPT、自動運転などのAI応用…これらはすべて過去には存在しなかった。強調すべきは、これらの新しい製品やサービスを生み出したのは、主にスタートアップ企業であることだ。革新的なイノベーションで新しいビジネスモデルを考え、新たな市場を提供するスタートアップ企業が世界の変革的な大発展をリードしてきた。私は、人類のこの発展段階を「ムーアの法則駆動時代」と定義したい。

2.新工業化の三大仮説とメガロポリス発展戦略


 35年前、日本へ経済学を学びに行った時、筆者の研究課題はアジアの新工業化をどう説明するかにあった。第二次世界大戦後、多くの国・地域が独立したが、途上国が工業化を成し遂げた例はなかった。しかし、1980年代に突如「アジアの四小龍」と呼ばれる国・地域が現れた。当時、世界中の経済学者が制度や文化などの面からこの現象を説明しようとしたが、明確な解答は得られなかった。

 私はこの現象を工学のバックグラウンドから捉え、これは「ムーアの法則」が工業化の過程に波及した表れだと考えた。私は博士論文で、中国を含む東アジアの工業化を三つの仮説から説明した。

 二番目の仮説は、電子産業を「ムーアの法則」によって駆動された最初の産業ととらえ、その特殊性が途上国の工業化に大きく寄与した、というものである。半導体が登場する前の電子産業は非常に小さかったが、「ムーアの法則」に駆動されて急速に発展し、1980年代には世界で最大規模の産業の一つになった。私の研究で、電子産業は貿易の度合いが非常に高い産業で、かつ人件費の安い途上国で立地する志向が強いと解った。この電子産業のサプライチェーンの拡張が、アジアの四小龍および中国の工業化を押し上げた。

 三番目の仮説は、半導体の浸透により、ますます多くの産業が「ムーアの法則」との関連性を強め、電子産業のように高い貿易率を持つグローバルサプライチェーン型産業に変貌する、というものである。30年後の今日、「ムーアの法則」と世界の貨物輸出額を相関分析すると、両者の「完全相関」関係が見て取れる。つまり、半導体のコストパフォーマンスが向上するにつれて、多くの産業が「ムーアの法則」駆動型産業となり、世界貿易が加速度的に増加した。今、世界貿易ボリュームの70%は2000年以降に新たに生まれた。これがグローバリゼーションの根底にあるロジックである。

 以上三つの仮説に基づいて、私は22年前、中国三大メガロポリスを予測した。それは、珠江デルタ、長江デルタ、京津冀(北京・天津・河北)において、三つの巨大なグローバルサプライチェーン型産業集積が起こり、その上に中国経済社会を牽引する三大メガロポリスが形成されるというものであった。

 2001年、中国国家発展計画委員会、日本国際協力機構(JICA)、中国日報社、中国市長協会と共同で「中国都市化フォーラム—メガロポリス発展戦略」を開催し、メガロポリス発展の重要性を大々的に主張した。この主張は、当時まだアンチ都市化時代にあった中国で、都市化そしてメガロポリス化の突破口を開いた。

 2001年からの22年間で、中国の都市人口は倍増し、市街地の面積は3倍となり、GDPは11倍となった。大量の人口が珠江デルタ、長江デルタ、京津冀に流入し、メガロポリスはすでに中国の現実となっている。

3.EVの三大革命


 2009年、私は新華社の『環球』雑誌に『日本:電子王国の崩壊?』と題したコラムを書き、当時盛んだった日本の電子産業が衰退すると予言した。今日、かつて世界で首位だった日本の半導体、家電、パーソナルコンピュータ、携帯電話、液晶、太陽電池などの産業が日本で弱体化し、あるいは消失した。

 2010年には『トヨタの真の危機』と題したコラムで、「旧来の産業環境と生産モデルで頂点に達したトヨタは、やがてテスラやBYDなど新興電気自動車メーカーの衝撃を受ける」と予測した。この予言は、13年後の今日、現実となった。

 現在の電気自動車はどのような状態にあるのか?今年上半期において、全世界で最も売れた電気自動車のトップ20モデルのうち、中国のEVメーカーが13モデルを占め、トップ20モデル売上台数の57%に上った。同じ期間に、世界で最も多くの電気自動車を販売したトップ20のメーカーで中国は8社を占め、トップ20メーカー売上台数の49%に達した。EVは自動車産業の競争メカニズムを変え、中国を世界最大の自動車輸出国に押し上げた。

 世界のメインボードに上場する62社の自動車メーカーの中で、特に注目すべきは、テスラとBYDの2つの電気自動車企業である。前者は主力工場が中国にあり、後者は中国企業そのものである。テスラは世界の自動車企業時価総額で第一位、BYDは第三位である。両社の合計で、世界の62社の自動車大手の時価総額の41%を占めている。

 電気自動車は三つの大きな革命を引き起こしている。第一はエネルギー革命で、自動車のエンジンを無くしただけでなく、自動車の再生可能エネルギー利用をスムーズにした。第二はAI革命であり、自動運転技術が自動車の在り方を根本的に変えた。第三は製造革命であり、従来の燃料車の部品は約3万個あったが、EVはエンジンを無くしたことで、部品数を三分の一減らした。テスラはさらに残りの部品を半減させた。これは自動車製造プロセスにおける革命である。

4.スタートアップ企業の牽引


 EVにおける三大革命は、「ムーアの法則」が自動車分野に波及した結果である。では、「ムーアの法則」が建設分野にも波及可能かというと、それは建設分野に強力なスタートアップ企業が現れるかどうかにかかっている。先に述べたように現在、「ムーアの法則」駆動時代を牽引するのはスタートアップ企業である。イノベーションと創業が鍵である。自動車産業の大変革を起こしたテスラとBYDの両社ともスタートアップ企業である。

 1989年、日本経済が最も華やかだった時代に、世界の時価総額ランキングトップ10企業のうち7社が日本企業であったが、そのリストにスタートアップ企業は無かった。同リストで最もイノベイティブなIBMは既に100歳に近かった。それに対して今、世界の時価総額ランキングトップ10を見ると、アップル、マイクロソフト、グーグル、アマゾン、エヌビディア、テスラ、フェイスブック、TSMCと、スタートアップ企業が8社も占めている。その中で、最古参は1975年設立のマイクロソフトで、最年少は2004年設立のフェイスブックである。

 企業競争の論理は完全に変わり、スタートアップ企業という新種がパラダイムシフトを牽引している。

5.建設業が抱える三大課題


 では、建設業が直面する問題は何か?私は三つの根本的な問題があると考えている。一つ目は建築物の高いエネルギー消費であり、二つ目は建築物の短い寿命であり、三つ目は建築プロセスの低効率と高コストである。建設業貿易の度合いの低さが高コストの一因である。

 新型コロナパンデミック前の中国では、3年間のコンクリート消費量がアメリカの過去100年の総消費量の1.5倍に相当した。2017年の中国のセメント生産量は、世界の他の国々の総量の1.4倍に等しかった。量的に言えば、中国の建設業は確かに栄光の時を経験した。

 建築物の寿命は短く、建てるのも多ければ、取り壊すのも多い。2020年の中国の建設ゴミは30億トンにも上り、中国の都市ゴミの30%から40%に相当する。また、中国の建設ゴミの資源化利用率は非常に低く、わずか5%に過ぎない。

 東京の経験からは別の問題が見て取れる。2010年の東京の二酸化炭素排出量のうち、建築物から53%、運輸部門から33.7%、産業部門からが10.9%を占めていた。東京は省エネルギーとCO2排出量削減を比較的うまく行っている都市であり、10年間の努力により2021年までに運輸部門と産業部門からのCO2排出量の占める割合はそれぞれ16.5%と7.2%に抑えられた。それに反して、建築物からの割合は73%に上昇している。一大エネルギー消費センターとしての建築物は、省エネルギーとCO2排出量削減に大きな遅れをとっている。

6.建設業も「ムーアの法則」型産業に


 現在、世界のメインボードには98社の建設会社が上場している。しかし、同98社の、世界のメインボード企業時価総額の全体に占める割合はわずか0.7%に過ぎない。

 また、これら98社の時価総額に占める中国企業の割合は13%であり、アメリカの30%やフランスの15%には及ばない。沸騰する世界最大の建設市場中国がトップクラスの建設企業を生み出していないのは奇妙な現象である。日本に目を向けると、同国の時価総額上位50社の中にそもそも建設企業は存在しない。

 上記の一連の数字は、世界最大の産業の一つである建設業が、革命的なイノベーションの欠如により、資本市場に低く評価されていることを示している。

 現在、世界の1,178社ユニコーン企業の中に建設会社は見られず、建設分野ではスタートアップ企業の飛躍を未だ見ない。

 建設業の道のりはまだ長い。建設コストを大幅に削減し、建築物のエネルギー消費を大幅に下げ、建物のエネルギー自給自足を実現し、人々がより快適で高品質な生活を送れるようにする必要がある。

 最後に今一つ予言を述べたい。建設業も「ムーアの法則」駆動型産業になると私は考えている。低炭素革命、材料革命、工業化と貿易化の革命、この三つの革命が建設業に新たな未来を切り開くに違いない。これが中国で率先して実現され、さらに土木建築で知られる母校湖南大学がこの革命の旗手となることを期待したい。


【日本語版】『周牧之:建設業はEVに続き、大変革を遂げるか?』(チャイナネット・2023年11月17日)

【中国語版】『周牧之:建筑业能否继电动汽车之后蝶变?』(中国網・2023年11月2日)

【英語版】Will construction industry transform?(China.org.cn・2023年11月15日)

 

青島:中国北方で第3位の経済規模を誇る国際交易拠点【中国中心都市&都市圏発展指数2021】第14位

中国中心都市&都市圏発展指数2021
第14位


 青島市は中国中心都市&都市圏発展指数2021の総合第14位だった。同市は前年度の順位を維持した。

 〈中国中心都市&都市圏発展指数は、中国都市総合発展指標の派生指数として、4大直轄市、22省都、5自治区首府、5計画単列市からなる36の中心都市の評価に特化したものである。同指数は、これら中心都市を、全国297の地級市以上の都市の中で評価している。10大項目と30の小項目、116組の指標からなる。包括的かつ詳細に、中国中心都市の発展を総合評価するシステムである。

CCCI2017 | CCCI2018 | CCCI2019 | CCCI2020

 

〈中国中心都市&都市圏発展指数〉:【36中心都市】北京、上海、深圳、広州、成都、天津、杭州、重慶、南京、西安、寧波、武漢、青島、鄭州、長沙、廈門、済南、合肥、福州、瀋陽、大連、昆明、長春、ハルビン、貴陽、南昌、石家荘、南寧、太原、海口、ウルムチ、蘭州、フフホト、ラサ、西寧、銀川


■ 山東半島の国際港湾都市


 青島は、山東省に属する計画単列市で、中国の主要な港湾の一つであり、国際的な海運業の中心地である。

 同市は、山東半島の南東、黄海の東に位置し、総面積は11,293平方キロメートル(秋田県と同等)で中国第163位、7つの区と3つの県級市を管轄している。

 青島は、海岸沿いの丘陵都市であり、全長816.98キロメートルに及ぶ海岸線は優美な曲線を描き、大小さまざまな島が点在している。市の地形は東部が低く、西部が高い傾向にある。南北の両端は盛り上がっており、中央部は凹んでいる。全体として、山地が総面積の15.5%を占め、丘陵が2.1%、平野が37.7%、低地が21.7%を占める。

■ 避暑地として人気の青島


 青島は温帯夏雨気候に属し、海洋の影響を強く受け、四季がはっきりと分かれている。夏季は湿度が高く降雨が多いが、厳しい暑さはない。そのため、避暑地としても人気がある。春と秋は短く、冬季は風が強く寒さは厳しいが、降雪は年10日程度と少ない。冬季の影響により、「気候快適度」は中国第185位となっている。「降雨量」は中国第190位である。

 風光明媚な景観により、観光・保養地としても名高い。「青島」の名は、市内に豊富に存在する常緑樹の景色にちなんで付けられた。

■ 租界の歴史


 青島は、屈指の歴史文化都市であり、道教の発祥地とされている。

 青島の膠州湾は唐宋時代以降、北方の重要な港となった。青島が最初に租借地となったのは1897年であり、当時、ドイツが青島とその周辺地域を占領した。翌1898年、ドイツと清朝との間で「膠澳租界条約」が締結され、青島はドイツの租借地となり、これが青島租界の始まりとなった。

 ドイツは青島を東洋における重要な軍事基地かつ商業中心地と位置づけ、都市開発を積極的に行った。また、ドイツの文化や技術が導入され、それが現在の青島の建築様式や世界的に知られる「青島ビール」などに影響を与えている。ドイツ占領時代の建物の多くは今も保存され、青島の風景の一部を形成している。その街並みの優美さから当時は「東洋のベルリン」と称されていた。

 第一次世界大戦勃発後、1914年に日本がドイツに宣戦布告し、青島は日本によって占領された。第二次世界大戦後、青島は1945年に中国に返還された。新中国成立後、青島は中国の重要な工業都市と港湾都市として発展し、今日の姿に至っている。

■ 中国北方の製造業スーパーシティ


 青島は中国北方の重要な経済中心地の一つである。2021年青島の地域内総生産(GDP)は1兆4,137億元(約28.3兆円、1元=20円換算)に達し、中国第13位であった。中国北方では北京、天津に次ぐ第3位の経済規模を誇る。一人当たりGDPは13万7,827元(約276万円)で、中国第91位だった(詳しくは【ランキング】世界で最も経済リカバリーの早い国はどこか? 中国で最も経済成長の早い都市はどこか?を参照)。

 青島は製造業基地として存在感が大きく、「製造業輻射力」は中国第13位である。山東省内第2位の煙台は中国第24位に留まっているため、省内で圧倒的な順位を誇っている。特に家電産業では、ハイアール等、中国有数の企業が青島市に拠点を置いている(詳しくは【ランキング】中国で最も輸出力の高い都市はどこか?を参照)。

■ 渤海湾の巨大貿易地


 青島は港湾都市としての存在が大きい。世界130カ国以上の地域と450以上の港との間で貿易が行われており、コンテナ取扱量は世界第5位に名を連ねている。「コンテナ港利便性」も中国第5位である(詳しくは【ランキング】世界で最も港湾コンテナ取扱量が多い都市はどこか?)を参照)。

 2021年における青島の輸出入総額は前年比32.4%増の8,498億元(約17兆円)で、中国第9位であった。うち輸出総額は前年比27.0%増の4,921億元(約9.8兆円)で、中国第11位。輸入総額は前年比40.7%増の3,577億元(約7.2兆円)で、中国第10位であった。輸出入ともに、青島は山東省内トップの規模を誇る。

 また、青島は日本とのビジネス関係が深く、対日輸出額は中国第2位であり、対日輸入額は中国第3位である。特に、野菜・水産物等の食品関連の対日輸出が大きなウエイトを占めている。

■ 国際的な総合交通ハブ


 青島は港湾だけでなく、空港、高速鉄道、高速道路を軸とした総合交通運送システムの構築も進めている。

 2021年8月12日には、39年間青島市民を支えてきた青島流亭空港が閉鎖され、山東省初の4F級空港である青島膠東国際空港が開業した。〈中国都市総合発展指標〉の「空港利便性」項目で青島は中国第17位、航空旅客数も同第15位である。いずれも山東省内では第1位である(詳しくは【ランキング】中国で最も空港利便性が高い都市はどこか?を参照)。

 鉄道では、〈中国都市総合発展指標〉の「鉄道利便性」は中国第23位、「高速鉄道便数」も第23位で、「準高速鉄道便数」は第30位であった。これらいずれの指標も山東省内第1位である。

■ 山東省の最大人口吸収都市


 2021年末の常住人口は約1,026万人で中国第13位、山東省内では第1位であった。人口の流出入を示す「流動人口(非戸籍常住人口)」では、山東省内16都市のうち9都市は、外へ人口が流出している。これに対して青島は、流動人口が約170万人の大幅プラスであり、周辺から多くの人口を吸い上げている。よって青島は中国第26位、省内第1位の人口流入都市となっている。


中国都市総合発展指標2021
第16位


 青島は〈中国都市総合発展指標2021〉総合ランキング第16位であり、前年度の第17位から、順位が1つ上がった。

 「経済」大項目は第13位で、前年度より順位が1つ上がった。3つの中項目で「都市影響」は第13位、「経済品質」は第14位、「発展活力」は第15位で、この3項目のうちトップ10入りした項目はなかった。小項目では、「広域中枢機能」は第7位と、9つの小項目のうち1項目がトップ10に入った。なお、「経済規模」は第14位、「経済構造」「イノベーション・起業」は第15位、「ビジネス環境」「広域輻射力」は第16位、「開放度」は第17位、「都市圏」は第27位、「経済効率」は第33位であった。

 「社会」大項目は第17位で、前年度に比べ順位が2つ上がった。3つの中項目のうち「伝承・交流」は第18位、「ステータス・ガバナンス」「生活品質」は第19位だった。小項目で見ると、「社会マネジメント」は第9位と、9つの小項目のうち1項目がトップ10に入った。なお、「人的交流」は第15位、「文化娯楽」「生活サービス」は第16位、「消費水準」は第21位、「居住環境」は第24位、「人口資質」は第25位、「都市地位」は第35位、「歴史遺産」は第115位であった。

 「環境」大項目は第77位で、3つの中項目のうち「空間構造」は第33位、「環境品質」は第132位、「自然生態」は第144位であった。9つの小項目のうち、「都市インフラ」は第10位と、1項目がトップ10に入った。なお、「自然災害」は第12位、「環境努力」は第16位、「交通ネットワーク」は第31位、「コンパクトシティ」は第43位、「水土賦存」は第134位、「資源効率」は第153位、「汚染負荷」は第161位、「気候条件」は第177位であった。


 〈中国中心都市総合発展指標2021〉について詳しくは、メガシティの時代:中国都市総合発展指標2021ランキングを参照。

 

CICI2016:第14位  |  CICI2017:第17位  |  CICI2018:第16位
CICI2019:第18位  |  CICI2020:第17位  |  CICI2021:第16位


■ 一大観光都市


 青島はその美しい海岸線と歴史的な建築物で知られ、多くの観光客を引きつけている。主な観光地には、青島海洋世界、青島動物園、青島科学技術博物館、青島ビール博物館、八大峡公園などがある。特に海外からの観光客が多く、〈中国都市総合発展指標〉の「海外観光客」で、青島は第10位と、第15位の済南を上回り、山東省内で最も高い順位である。

■ ヨットと映画ロケの聖地


 青島は豊かな文化遺産と活気あるエンタメを持つ都市である。〈中国都市総合発展指標〉の「文化・スポーツ・娯楽輻射力」は中国第18位である。市内には、青島大劇院、青島市図書館、青島市美術館など、多くの文化施設を有する。「博物館・美術館」は中国第16位、「動物園・植物園・水族館」は中国第19位、「公共図書館蔵書数」は中国第32位である。

 また、青島は映画の都としても知られ、映画ロケ地を多く持ち、映画祭や音楽祭も多数開催されている。その影響もあり、青島の〈中国都市総合発展指標〉における「映画館・劇場消費指数」は中国第20位であり、山東省内で最も順位が高い(詳しくは【ランキング】世界で最も稼ぐ映画大国はどこか?を参照)。

 スポーツにおいても、青島は多くのスポーツイベントを開催している。青島は2008年の北京オリンピックのヨット競技の会場となり、その後も多くの国際的なヨット大会が開催されており、いまや中国におけるヨットの聖地となっている。また、青島はプロサッカーチーム、青島中能の本拠地でもある。〈中国都市総合発展指標〉の「スタジアム指数」は中国第8位と、トップの規模を誇る。

■ 科学技術・本社機能・高等教育


 青島は近年では科学技術の発展にも注力している。〈中国都市総合発展指標〉の「科学技術輻射力」で同市は中国第18位と、省内トップの実力を有する。「特許取得数指数」は中国第10位と全国トップ10に入る成績を誇り、「R&D要員」は第18位、「R&D支出指数」は第19位に躍進している(詳しくは【ランキング】科学技術大国中国の研究開発拠点都市はどこか?)。ただし、「中国都市IT輻射力」は第34位と、第14位の済南に水をあけられており、今後の発展が望まれている(詳しくは【ランキング】中国IT産業スーパーシティはどこか?を参照)。

 同市は屈指の交流交易機能を活かし、本社機能の立地も進んでいる。「メインボード上場企業」は中国第18位と済南の第27位を上回る。ユニコーン企業は4社立地している。

 また、青島には多くの有名な大学と研究所が立地している。青島科技大学、中国海洋大学、青島大学など、多くの学生がこれらの教育機関で学んでいる。

 〈中国都市総合発展指標〉の「高等教育輻射力」で青島は中国第17位と山東省内トップクラスの成績を誇る。


【フォーラム】笹井裕子 VS 桂田隆行:集客エンタメ産業の高波及効果を活かした街づくりを

ディスカッションを行う笹井裕子・ぴあ総研所長(左)と桂田隆行・日本政策投資銀行地域調査部課長(右)

 東京経済大学は2022年11月12日、学術フォーラム「供給サイドから仕掛ける地域共創の可能性」を開催、学生意識調査をベースに議論した。和田篤也環境事務次官、中井徳太郎前環境事務次官、南川秀樹元環境事務次官、新井良亮ルミネ元会長、吉澤保幸場所文化フォーラム名誉理事をはじめ産学官のオピニオンリーダー16人が登壇し、周牧之ゼミによるアンケート調査をネタに、新しい地域共創の可能性を議論した。笹井裕子・ぴあ総研所長と桂田隆行・日本政策投資銀行地域調査部課長がセッション1「集客エンタメ産業による地域活性化への新たなアプローチ」のパネリストを務めた。

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東京経済大学・学術フォーラム
「供給サイドから仕掛ける地域共創の可能性」

会場:東京経済大学大倉喜八郎進一層館
日時:2022年11月12日(土)13:00〜18:00


■ コロナ禍で大打撃を受けたライブエンターテインメント市場


笹井裕子:弊社は2000年から2025年まで、ライブエンターテインメント市場規模の時系列推移の数字を作り続けてきた。

 ライブエンターテインメント市場は、実は政府の統計のようにきちっとしたものがなく、自分達でチケットぴあの販売実績や、情報誌ぴあでやってきた公演の開催情報などのデーターベースをもとに、チケットが何枚ぐらい売れ、その総額がどのくらいになるのか推計をしてきた。

 ライブエンターテインメント市場は2000年から2019年コロナ前まで、好調に推移してきた。特に2011年の東日本大震災後の8年間、わりと世の中が停滞していた時期にも年平均成長率が8.3%とかなり健闘していた。それが、コロナの影響で2020年、一時期はほとんどの公演活動が自粛、ストップした。年間で見ると、コロナ禍前は6295億円。ライブエンターテインメント市場は音楽とステージの合計であり、その8割のマーケットが消失した。

 その中で、何とか持ちこたえながら、イベントの収容人数や政府の制限が徐々に段階的に解除され、緩やかに、遅々としながら回復に向かって動いた。そして2021年の数字が、3072億円。これもコロナ禍前のまだ半分だ。2022年1月から12月までのデータの推計ではかなり戻ってきた。先ほどの学生さん達のアンケートでも、この反動増があるとの前向きな受け取りがあり、勇気をもらった気持ちだ。

 それでもやはり感染状況が厳しい状況もあり、まだまだライブエンターテインメント、イベント、集客エンタメに足を運ぶのに漠然と不安を抱いている方々もいらっしゃるのでまだ8割だ。2023年こそはコロナ禍前の水準に戻るという推計を出した当時は、ちょっと楽観的過ぎるという声を一部聞いたが、今見るとそれほど楽観的でもない。今後の感染状況など何とも言えない部分はあるものの、実現可能な数字ではないか。

エンタメ産業は「不要不急」なのか?


笹井:2020年の最初の段階では、この集客エンタメ産業は「不要不急」の筆頭のように言われ、その中の産業に身を置いている側としてかなり傷ついたところがあった。いや、そうではないと声を挙げたいということもあり、2022年5月、ぴあ総研主催でシンポジウムを開催した。「集客エンタメ産業による日本再生の意義」と題し、文化庁の都倉俊一長官、元Jリーグの川淵三郎チェアマンらにご登壇いただき、日本の集客エンタメ産業の重要性や、日本社会にどれだけ意義があるかをご議論いただいた。

 その一部として、今日一緒にご登壇いただいている日本政策投資銀行の桂田さんと「集客エンタメ産業の社会的価値と新たな地域貢献のあり方」の共同調査について報告をした。

■ 「集客エンタメ産業」の市場規模、経済波及効果


笹井:そもそも集客エンタメ産業とは、私どものぴあ総研では、コンサートや演劇、映画、スポーツイベント等の興行の場に、鑑賞・観戦等を主な目的として観客をその興行の開催場所に集める産業、と一旦定義をしている。ゆえに集客エンタメ産業というと、先ほどのライブエンターテインメント市場に加え、スポーツや映画なども入るので、もう少し大きな規模になるとご理解いただきたい。

 さらに音楽、ステージ、映画、スポーツという4ジャンルに加えて、例えば花火大会で有料の観客席を設けるなど、4ジャンルに入らないその他のイベントもいろいろ行われており、そういったものを含めると、入場料収入、チケット代の合計は、コロナ禍前の数字で1兆1,000億円ぐらいと推計している。

 また、そういったイベント開催に伴う直接需要として、入場料の横にその他の欄を設けているが、入場料とその他を合わせると、入場料の約4倍、4兆9,300億円になる。さらに経済波及効果を考えると、直接需要と波及効果を合わせて13兆500億円になり、入場料売り上げの10倍ぐらいの経済波及効果はあると考えらえる。実は日本経済にとって微々たる産業ではない、と思っている。

 さて、コロナ禍でどのような影響を受けたかについて、日本政策投資銀行で出された数字では、都道府県別イベント合計の経済損失額という直接損失で1.6兆円、波及効果を含めると3兆円の損失となった。もともと大都市が中心の産業、市場であるため、大都市において損失額が大きくなっている。

 ただし実際、より重要なのは、都道府県別の県内総生産への影響度で、大都市以外のその他の地域において大きなダメージが出た。先ほどは単に市場規模、市場規模と言ったが、やはり地方においてはこの県内の総生産影響度により大きなダメージがあったことをお伝えしたい。

■ 「地域に集める」「地域に繋げる」「地域を育てる」社会的価値


笹井:以上、市場規模、経済波及効果の話をしたが、我々の共同調査では集客エンタメ産業の重要性はそれに留まらず、社会的価値を明示することが主題であった。集客エンタメ産業の社会的価値ということで、「地域に集める」「地域に繋げる」「地域を育てる」の3つの社会的価値で整理し、共同調査を行った。

 まずは、地域内外から人を集める、モノ・金・テクノロジーを集積する。地方で大型のフェスを開催すると、何十万人という人が一気に集まる。大規模のアリーナドームの公演で、何万人という人が一日、一夜にして集まることもある。

 次に、その集める効果を地域の中に繋げていく。例えば、地域におけるソーシャル・キャピタルの向上や、シビックプライドの醸成など効果もあるのではないか。そして3番目は、地域を育てる部分で、住民の健康寿命の延伸や、心を豊かにする効果もある。人が生きていく上で衣食住が足りているだけではなく、やはり心身を健全化することが大切だ。さらに、若い世代の健全な成長にも寄与すると考え、整理している。

■ 製造業撤退後のオープンスペースの活用策


桂田隆行:今日ご登壇の皆様のようにスポーツ界、エンタメ業界については専門ではないが、銀行員のポジションでスポーツ分野をもう9年くらい長く担当している。私どもの銀行がスポーツというテーマで主張しているコンセプトとして、「スマートメニュー」という名を提唱している。

 私どもの銀行は、もともと設備投資分野に資金を出す銀行で、きっかけは9年前、各地域において製造業系の工場が相次いで撤退し各地域で大きな土地が空いてしまった課題が発生した時に、それを何でリカバーしたらいいかという話が企業立地の観点から私どもの部署に飛び込んできた。そこで、スタジアムアリーナが整備されれば、スポーツというコンテンツと相まって地域活性化になり、中心市街地にも貢献すると考え、東京ドームシティのイメージに基づく概念を提唱した。

 これは当時、私にスポーツというテーマをご示唆いただいた間野早稲田大学教授からのもので、東京ドームシティを大小はあっても日本中に作り、将来のまちづくりモデルとして海外に輸出できたらいいと、20年前ぐらいからおっしゃっていたのを私どもも9年前ぐらいから絵にした。スポーツ業界の人はよくご存じの通り、そういうものを作れば、交流人口や街中のにぎわい創出、地域のシビックプライド、アイデンティティの醸成になるというように、スタジアムアリーナが地域にもたらす価値を考えている。

 先ほどの地域に「集める、繋げる、育てる」の概念にあったように、集客エンタメ産業の社会的価値ということで取り組んでいたが、エンタメの中にスポーツというテーマも入れていただき、そこに音楽とか文化、芸術とも合わせて集客エンタメ産業としてみると、社会的価値の効果が非常に大きく、種類が増えたと実感した。例えば、教育や健全な成長という精神的な部分にも、今後社会的価値を突き詰めていくと非常に有益ではないかと思う。

 地域の住民や企業が資金を投下していくことで、街中にスタジアムアリーナができれば、ビジターや地域の購買活動という経済的価値の創出、コミュニティ機能の補完という形で貢献できると考えている。

笹井:先ほど周ゼミの学生さんのアンケートでも、地方活性化するためには娯楽、スポーツが必要で、国分寺にそういった娯楽施設がないというご意見があった。必ずしも大規模な施設があることが必須ではなく、そうした施設ができると、そこで日常的に、定常的にイベントが開催されるようになり、そこに他のエリアからも人が集まるという流れができる。ひとつのきっかけとして、大小問わず、街中にアリーナや劇場ができることによって文化芸術の振興や、クリエイティブ産業の支援、コミュニティの形成にも繋がり、それが地域住民や地域の企業にとっても利用されることで、ゆくゆくは税金や資金に繋がり、それがさらに再投下される好循環が生まれると考えている。

ディスカッションを行う笹井裕子・ぴあ総研所長(左)と桂田隆行・日本政策投資銀行地域調査部課長(右)

■ 交流人口・関係人口が生み出す効果


笹井:さらに「交流人口」、「関係人口」を誘発し、その人達が街中で購買行動を行うことで、雇用や所得増加につながり好循環が生まれる。そこから地域の住民はもちろん、今のデジタル社会を考えると、ビジターもその関係人口自体も、ローカルアイデンティティの緩やかな構築やシビックプライドの醸成に貢献できるということも、共同調査の中で検討した。

桂田:日本地図をブラッシュアップして、スポーツ庁に継続的にご提供申し上げていた構想が2020年の時点で90件ぐらいあった(「スポーツ庁スタジアムアリーナ改革について」)。実は、この日本地図を作り始めた2013年は18件しかなかった。僕自身もずっと、この数字が毎年増えていくたびに若干の喜びを感じたが、反省として、スタジアムアリーナという箱だけが増えすぎて、それを担ってくれるコンテンツや人材が育っていないことに気づいた。これは逆に危ないと最近思うようになっている。

■ スポーツをエンタメの括りに入れていく意義


桂田:スタジアムアリーナの整備検討の委員会に入れていただいた時、とある時の国の委員会でスポーツ界の人が「アリーナを整備するために、ライブや音楽の収入をすごく期待している」と言ったら、ライブ音楽業界からの出席者の人が、「スポーツのエゴでアリーナを造るのに何故稼ぎを音楽業界に委ねるのか」と若干喧嘩になったことがあった。スポーツの理由でアリーナを造るのに、それを音楽に寄せるのかと。

 やはり、スポーツとエンタメを分けてはダメで、先ほど吉澤さんもおっしゃったようにエンタメという広いテーマの中にスポーツも取り扱うことだと思う。エンタメの方の知見もいただきながら、スポーツもブラッシュアップし、アイデアももっと一緒に議論する形で、スタジアムアリーナを整備する。集客エンタメ産業という括りの中にスポーツも一緒に入り、経済的な価値だけではなく人の本能に訴えかける社会的な価値を、もっと追求していかなければならないと申し上げたい。

笹井:「スマートメニュー」の発展に関して、いろいろなアイデアが進んでいる。そのひとつが愛媛県今治市でFC今治が掲げている里山スタジアム構想だ。また、スポーツだけでなく演劇においても、「演劇の町」ということで単に演劇を持ってくる劇場を造るだけではなく平田オリザさんが社会生活のさまざまな場面に染み込んだまちづくりを目指す「学校」を作るなど、さまざまな工夫のある活発な動きが地方でいろいろと起こっている。

■ 集客エンタメにまちづくりをリンクさせる


笹井:弊社ぴあで、観光庁の実証実験に寄った形で、スマートフォン向けアプリの「ユニタビ」をリリースした。これはスタジアムに行ってサッカーを見るだけではなくて、ユニフォームを着て町の中をその日一日歩き回って楽しむ。そんなコンセプトに近い。アプリで一日の交通、飲食やお土産などの情報も含めて提供することで町の中での回遊を促すアイデアだ。この「ユニタビ」のアプリのさらなる実証実験や、ここから町にもたらされる社会的価値について、もう少し研究したい。

 ライブエンタメは先ほど申し上げたように、大都市集中なかでも東京集中で、たぶん国分寺にいれば、都内でいろいろ開催されているライブイベントにもわりと気軽に参加し楽しめる環境にあると思う。それはすごくすばらしいことだが、一方で、東京中心の何か画一的な展開を打破する何かがあるといい。

 国分寺ならではの自然環境なのか、人なのか。その地域の特色を活かした発信があり地産地消されるような流れを、小さくてもいいから少しずつ始めてみることだ。



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