【成都】美食とエンタメを満喫できる内陸メガシティ【中国都市総合発展指標】第5位

中国都市総合発展指標2022
第5位



 成都は3年連続で総合ランキング第5位を維持した。

 「社会」大項目で成都は第4位であり、前年度の順位を維持した。3つの中項目の 中で「伝承・交流」は第5位、「ステータス・ガバナンス」は第6位、「生活品質」は第7位であった。小項目から見ると、成都の「居住環境」は第3位、「社会マネジメント」は第4位、「文化娯楽」「人的交流」は第5位、「生活サービス」は第6位、「都市地位」は第9位と、9つの小項目のうち、半数以上の6項目がトップ10位内にある。なお、「人口資質」「消費水準」は第12位、「歴史遺産」は第16位であった。

 「経済」大項目で成都は第5位であり、前年度より1つ順位を上げた。3つの中項目の中で「都市影響」は第5位、「発展活力」は第7位、「経済品質」は第8位であった。小項目では、「広域輻射力」は第4位、「ビジネス環境」「都市圏」は第5位、「開放度」は第6位、「経済規模」「広域中枢機能」は第7位、「経済構造」「イノベーション・起業」は第8位と、9つの小項目のうち、1項目を除いた8項目がトップ10位内にある。なお、「経済効率」は第63位であった。

 「環境」大項目で成都は第13位とり、前年度より順位を大きく上げる結果となった。3つの中項目の中で「空間構造」は第10位と良好であるが、「環境品質」は第51位、「自然生態」は第94位と順位が落ち込んでいる。小項目では、「交通ネットワーク」「都市インフラ」は第7位、「環境努力」「資源効率」は第9位と、9つの小項目のうち、4項目がトップ10位内にある。トップ10以下は、「コンパクトシティ」が第14位、「自然災害」が第58位、「気候条件」は第112位であった。第103位の「水土賦存」、第224位「汚染負荷」は、いずれも全国平均を下回った。

 成都は、社会や経済と比較すると環境の成績は少し劣るものの、西部地域で最も成長する都市として近年順調に総合順位を上げてきている。


■ 西部大開発の拠点都市


 四川省の省都・成都は、四川盆地西部に位置し、快適な気候と自然資源に恵まれ、四川省の政治、経済、文化、教育の中心地となっている。2300年の歴史を持ち、古くから「天府の国」と呼ばれている。成都は、四川料理の本場、パンダの生息地、「三国志」の蜀漢の都として日本でも知られている。

 同市の面積は約1.2万 平方キロメートルで新潟県とほぼ同じ大きさである。同市は、現在は「西部大開発」の主要な拠点都市と位置付けられ、「一帯一路」や「長江経済ベルト」など国家戦略の重要な拠点として期待されている。

 ここで、「西部大開発」とは、中国政府が2000年に策定した国家戦略であり、中国の内陸部に位置する西部地域の経済発展を促進し、東部沿海部との経済・社会格差を縮小することを目的としている。この政策は、中国西部の12省・自治区・直轄市を対象としており、「西電東送」、「南水北調」、「西気東輸」、「青蔵鉄道」の四大プロジェクトが主体となっている。この政策により、西部地域のインフラ整備や投資環境の整備、科学教育の発展などが進められ、現在でも継続している。また、大開発は経済発展を沿海部から内陸部へ及ぼす内需振興と同時に、内陸部の余剰雇用の吸収、少数民族地域の安定など社会不安を解消するねらいがあるとされている。

 西部開発政策の下でインフラ整備を進めた結果、成都は「空港利便性」が中国第5位(詳しくは【ランキング】中国で最も空港利便性が高い都市はどこか?〜2020年中国都市空港利便性ランキングを参照)、「鉄道利便性」は第15位となっている。近年の成都の躍進は、インフラ整備が1つの大きな要因となっている。高速道路、鉄道や空港の整備により、広域アクセスが向上し、観光客やビジネス客が容易に訪れることができ、交流経済が活発化しただけでなく、都市間や国際間の物流・貿易も容易にしている。上海等に代表される臨海都市とは異なる内陸メガシティ発展パターンを見せる。

 2022年に成都の常住人口は約2,127万人に達し、中国第4位の規模を誇るメガシティである。「農民工(出稼ぎ労働者)」の主要な流出地である四川省は、同省に属する地級市の18都市中、実に16都市が「人口流出都市」である。その純流出人口は、2021年で合計約1,249万人以上にのぼる。これに対して、同省成都は中国第6位の「人口流入都市」であり、現在約574万人もの非戸籍人口を外部から受け入れている。成都のGDPは四川省全体のGDPのおよそ4割を占め、同省の経済・人口ともに成都に一極集中している。四川省の将来は成都が担っていると言っても過言ではない(中国の人口移動について詳しくは【ランキング】中国メガロポリスの実力:〈中国都市総合発展指標〉で評価を参照)。

■ 都市ブランド構築アクションプラン「三城三都」


 成都は独自の都市ブランドアクションプラン「三城三都」を推し進めている。「三城」とは文化都市、観光都市、スポーツ産業都市を指す。「三都」とは、グルメ都市、音楽都市、コンベンション都市である。2017年に発表されたこのプランは、ソフトパワーを向上させるものである。

 「三都」のひとつ、グルメといえば中国四大料理の「四川料理」であり、これは日本でもなじみが深い。成都は四川料理の発祥地であり、ユネスコに「アジア初めてのグルメ都市」と称された美食の街である。中国都市総合発展指標2022によると、「経済」大項目の指標「レストラン・ホテル輻射力」において中国第4位の成績に輝いている。また、四川料理以外にもマクドナルド、ケンタッキー、ピザハット、スターバックス、ハーゲンダッツなど海外の飲食チェーン店も多く、同指標の「海外飲食チェーン指数」でも中国第9位にランクインした。

 成都は時間が止まったような、ゆったりとした都市である。喫茶店でお茶を飲みながら雑談や麻雀を楽しむ光景がいたるところで見られる。喫茶店は1万軒を超え、スターバックスの数も中西部地区で一番多い。

■ スポーツ産業都市


 上記「三城」の1つ、スポーツ産業も好調である。中国都市総合発展指標2022によると、「経済」大項目の指標「文化・スポーツ・娯楽輻射力」は、中国第3位にランクインした。

 同市では、スポーツ産業の発展を加速させるために、「成都サッカー改革発展実施計画」、「成都万人フィットネス実施計画」などの政策を相次いで発表し、資金提供、選手の育成、有名スポーツ企業の誘致など、様々な施策を打ち出している。

 また、「成都スポーツ産業活性化発展計画(2020−2025年)」では、同市のスポーツ産業の規模をさらに現行の倍以上の1,500億元(約3兆円、1元=20円換算)へと目標を定めている。

 成都に限らず、中国ではスポーツやフィットネスに対する意識は大幅に高まっている。スポーツ産業は、都市経済はもちろん、都市の魅力やライフクオリティ向上の面でもその重要性を増している。

■ 国際コンベンション都市


 「三城三都」のうち、「三都」の1つはコンベンション都市だ。中国都市総合発展指標2022によると、成都は、「社会」大項目の指標「国際会議」ランキングは、前年度とより順位を上げ中国第1位に輝いている。同項目の指標「コンベンション産業発展指数」ランキングも、前年度と引き続き中国5位を維持している。

 この躍進ぶりは「三城三都」の政策効果が大きい。現代の経済・文化交流において、コンベンション産業は非常に重要な役割を担っており、経済発展に大きな影響を与えている。成都市政府は、同市を国際コンベンション都市にするため、さまざまな政策を打ち出している。

 同市博覧局は2020年、全国初となる「展示活動管理規範の協調防疫対策」を発表し、大規模展示会の開催における感染症対策マニュアルを示した。2021年には、展示会開催に大規模な補助金を設け、2022年の「国際会議展覧都市成都建設第14次5カ年計画」では、2025年までに、成都を世界に冠たる国際コンベンション都市に成長させると明言している。市政府は、コンベンション産業市場を1,600億元(約3.2兆円)にまで成長させる目標を定めている。主要な展示活動の数は1,200以上、総展示面積は1,450万平方メートル以上との数値目標を掲げている。

■ 成都ハイテク産業開発区(高新区)


 「西部大開発」の拠点都市として成都は重慶と同様、市内に国家級のハイテク産業開発区や経済技術開発区などが置かれ、中央政府関係部門からのさまざまなサポートを受け重点的に産業が集積されている。重慶は従来から自動車、石油化学、重電などの重厚長大型産業が集中している。これに対して成都には電子産業、製薬・バイオ産業、IT関連産業などが集積している。

 「成都ハイテク産業開発区」が1988年に発足し、1991年には国家級開発区に認定された。同開発区は成都市の西部と南部に位置する二つの地域からなり、総面積は130平方キロメートル(山の手線内の面積の約2倍)で、そのうち南部地域が87平方キロメートル、西部地域が43平方キロメートルである。南部地域には金融、ソフトウェア開発、BPO関連のサービスを提供する企業が集積し、西部地域はエレクトロニクス産業、バイオ医学産業、IT関連産業などの企業が進出している。同開発区の域内総生産はすでに成都市の約30%を占めている。

 同開発区に支えられた成都の発展は、本指標でその成果を見ることができる。中国都市総合発展指標2022では、「科学技術輻射力」は中国第10位、「IT産業輻射力」は第6位、「創業板・新三板上場企業指数」は第7位、「特許取得数指数」は第13位となっている。

■ 宵越しの金は持たない一大消費都市


 成都は歴史的に消費が盛んな都市である。「宵越しの金は持たない」という成都人気質は、本指標にも顕著に表れている。中国都市総合発展指標2022では、成都の「平均賃金(都市・農村部全体)」は中国第38位(都市部は第10位)であり、決して突出した状況ではないにもかかわらず、「映画館消費指数」は第4位(詳しくは【ランキング】世界で最も稼ぐ映画大国はどこか? 〜2021年中国都市映画館・劇場消費指数ランキングを参照)、「卸売・小売輻射力」に至っては第3位である。また、「美食の都」と評されるような豊かな食の文化と消費力が合わさった結果、「トップクラスレストラン指数」は第4位、「飲食・ホテル輻射力」も第4位となっている。成都人はファッション感覚にも優れ、世界から相次ぎ同市に進出した高級ブランドにも飛びつき、「海外高級ブランド指数」では上海、北京に次ぐ第3位に躍り出ている。

 豊かな土地にゆったりと過ごす価値観を持つ成都の人々は、蓄えることより消費を好む社会を築いている。この旺盛な消費市場を狙い、日系を含む外資サービス産業の進出が相次いでいる。 


【杭州】歴史とハイテクが交差する古都【中国都市総合発展指標】第6位

中国都市総合発展指標2022
第6位



 杭州は2年連続で総合ランキング第6位を維持した。

 「社会」大項目では第7位であり、前年度より1つ順位を下げた。3つの中項目の「生活品質」では第4位、「伝承・交流」は第6位、「ステータス・ガバナンス」は第10位であり、3項目ともトップ10入りを果たした。小項目で見ると、「生活サービス」は第4位、「人口資質」「歴史遺産」「消費水準」は第5位、「都市地位」「文化娯楽」「居住環境」は第6位、「人的交流」は第8位と、9つの小項目のうち、9項目がトップ10位内にある。なお、「社会マネジメント」は第21位であった。「社会」の成績は、全体的に極めて高く、バランスも良い。 

 「経済」大項目は第7位であり、前年度より1つ順位を上げた。3つの中項目の中で「発展活力」は第6位、「経済品質」「都市影響」は第7位であり、3項目ともトップ10入りを果たした。小項目では、「経済構造」は第4位、「イノベーション・起業」は第5位、「広域輻射力」は第6位、「ビジネス環境」は第7位、「経済規模」は第8位、「開放度」は第9位、「広域中枢機能」は第10位と、9つの小項目のうち、7項目がトップ10入りを果たした。なお、「都市圏」は第12位、「経済効率」は第16位であった。「経済」の成績は、各項目ともに全体的に極めて高い結果となった。

 「環境」大項目は第12位となり、前年度より順位を上げる結果となった。3つの中項目の中で「空間構造」は第11位と良好であるが、「環境品質」は第43位、「自然生態」は第66位であった。小項目では、「都市インフラ」は第6位、「交通ネットワーク」は第8位と、9つの小項目のうち、トップ10入りを果たしたのは2項目のみであった。トップ10以下は、「資源効率」は第11位、「環境努力」は第13位、「コンパクトシティ」は第22位、「気候条件」は第71位、「水土賦存」は第92位であった。また、第87位の「自然災害」、第180位の「汚染負荷」は、いずれも全国平均を下回った。

 杭州は、社会や経済と比較すると環境の成績は少し劣るものの、三者のバランスは相対的によく取れている。


長江デルタメガロポリスの中核を担う「地上の楽園」


浙江省の北部に位置する杭州は同省の省都であり、西安、洛陽、南京、北京、開封、安陽、鄭州と並ぶ「中国八大古都」の1つである。「地上の楽園」と称賛されるほど美しい風景が広がり、古くから繁栄している。世界遺産の西湖や京杭大運河をはじめとする有名な観光地が点在し、国内外から多くの観光客を惹きつける観光都市である。中国都市総合発展指標2022の「国内旅行客数」項目では中国第26位、「国内旅行収入」は第16位であった。杭州は長江デルタメガロポリスの主要都市として、GDPは2015年に1兆元の大台を突破し、いわゆる「1兆元クラブ」都市に仲間入りした。2022年に同市のGDPは18,753億元(約37.5兆円、1元=20円換算)に達し、中国では第9位となった。

アリババグループのホームタウン


 中国は現在、世界で最も「キャッシュレス生活」が進んでいると言われ、その牽引役は「Alipay(支付宝)」と「WeChat Pay(微信支付)」の二大サービスである。「Alipay」は、杭州に本拠地を置くアリババグループ(阿里巴巴集団)が提供するオンライン決済サービスである。

 世界最大規模の電子取引で知られるアリババグループは、1999年の設立当時から杭州市内に本社を置き、同市の経済発展を牽引している。

 毎年11月11日に同社が開催するEC販促イベント「独身の日(双十一)」の売上は、1日で約1.1兆元(約22.2兆円)にも上る。同社は、杭州を拠点に世界中の企業や消費者にITサービスを提供し、同市を一大イノベーションシティへと押し上げた。

 アリババは地元のITインフラにも力を入れており、杭州でスマートシティプロジェクト「ETシティブレイン(城市大脳)計画」を推進する。これにより、都市の交通、公共サービス、環境保護などの分野でデジタル技術を活用し、市民の生活の質を向上させている。

メガシティへと成長


 都市経済の成長は全国から多くの若者を惹きつけている。杭州の常住人口は、2019年に1,000万人台に達し、メガシティへの仲間入りを果たした。同市の常住人口は2022年、1,220万人に達し、中国第12位となった。なお、中国には現在、メガシティが17都市存在している(詳しくは、【ランキング】メガシティの時代:中国都市総合発展指標2021ランキング」『中心都市がメガロポリスの発展を牽引:「中国都市総合発展指標2022」を参照。)。

 2019〜2022年の4年間の常住人口の純増は、それぞれ55.4万人、157.6万人、26.8万人、17.2万人と急成長している。また、「流動人口(非戸籍常住人口)」も中国第10位の385.9万人に達した。

 こうした杭州の人口増には、北京、上海が人口抑制政策を取るのに対して、杭州市が人材獲得に積極的である背景がある。

 また、中国都市総合発展指標2022によると、トップクラス人材の集積を表す「傑出人物輩出指数」「中国科学院・中国工程院院士指数」は中国第6位となり、人材の量も質も兼ね備えている。膨大な人口と高度人材の集積が進む杭州は、今後どのような発展を遂げてくのか、国内外の注目を集めている。


スタートアップ都市


 アリババグループホームタウンの効果で、杭州には企業の本社機能が集積している。中国都市総合発展指標2022によると、本社機能を示す「メインボード上場企業」で杭州は広州を抜いて第4位である。同じく、「フォーチュントップ500中国企業」も前年度に引き続き中国第4位を獲得、とりわけ、中国を代表する民営大企業の集積を示す「中国民営企業トップ500」においては前年度同様、全国トップを堅守した。

 背景にあるのは、スタートアップの活力である。中国のスタートアップ都市といえば、北京、上海、深圳というイメージが強い。しかし、杭州の活気はそれらの都市に劣らない。

 ユニコーン企業の集積を示す「ユニコーン企業指数」で杭州は、北京、上海、深圳に続いて広州と同順位の中国第4位という好成績を収めている。ここで、ユニコーン企業とは、評価額10億米ドルを超える未上場企業のことである。2023年、ユニコーン企業は北京に最も多く79社が所在し、第2位の上海には66社、第3位の深圳には33社、第4位の杭州および広州には22社ある。なお、企業価値では第1位の北京に続き、杭州は中国第2位となっている。

 杭州のスタートアップ熱には、アリババの存在が大きい。世界最大級のユニコーン企業「アント・フィナンシャル」を筆頭に、杭州にはアリババが出資する数々のベンチャーが、一大IT経済圏を形成している。その結果、2022年の「メインボード上場企業」で、杭州のIT企業数は中国第4位と高い成績を誇っている(詳しくは【ランキング】中国IT産業スーパーシティはどこか?を参照)。

幸福感溢れる「茶の都」


 杭州は「茶の都」としても名高い。西湖周辺の龍井村を産地とする最高級緑茶「龍井茶」は古くから中国十大銘茶の一つに数えられている。清の乾隆帝が西湖で龍井茶を賞味し、その味を絶賛したエピソードが有名である。毛沢東も周恩来も龍井茶を愛飲し、外国の賓客へのプレゼントにしばしば選んだことで、世界に名を広げた。

 杭州のお茶がおいしい理由の一つは、同地の「水」にある。杭州には西湖に代表されるように水源が豊かで、泉も多い。地元の「虎跑」泉などの名水で入れた龍井茶が贅沢の極みとされている。中国都市総合発展指標2022によると、杭州の年間降水量は約1,500ミリで、「降雨量」は中国第40位である。また、年間平均気温は16℃、茶樹の成長には適した気候である。茶葉が芽を出し続け、摘み取り時期も長く、摘み取り頻度が高いとされる。中でも、春の「清明節」(春分の日から15日後にあたる祝日)の直前に摘む一番茶が最高級で、時の皇帝への献上品とされていた。

 杭州は古くは南宋の都として栄え、江南の美と贅沢を育んだ。国内有数の美術大学の1つ「中国美術学院」がある。美食都市としても名高い。中国都市総合発展指標2022によると、杭州は、「社会」大項目のうち、「世界遺産」は第2位、「海外高級ブランド指数」は第4位、「無形文化財」「海外飲食チェーンブランド指数」「1万人当たり社会消費財小売消費額」は第5位と好成績を誇る(詳しくは【ランキング】誰がラグジュアリーブランドを消費しているのか?を参照)。「経済」大項目においても、「トップクラスレストラン指数」が第6位となっている。

 中国国家統計局と中国中央電視台(CCTV)は毎年、全国から「中国幸福感都市」を10都市選んでいる。杭州はその中で選出累積回数が最多で、中国の「幸福感」ナンバー1都市である。

2023年・第19回杭州アジア競技大会が開催


 アジアのスポーツの祭典「アジア競技大会(アジア大会)」が、2023年9〜10月に杭州で開催された。当初、当大会は2022年に開催される予定であったが、新型コロナウイルスパンデミックの影響で、開催予定が引き伸ばされた。中国では1990年の北京、2010年の広州に次いで3度目の開催となる。

 杭州では2017年から大会組織委員会が本格的に稼働しはじめ、「グリーン・スマート・節約・マナー」の開催理念のもと、インフラ整備をはじめ、大会準備が着々と進行している。

 中国都市総合発展指標2022によると、「スタジアム指数」は中国で第21位、「文化・スポーツ・娯楽輻射力」は第6位となっている。杭州はアジア大会を契機にスポーツ都市としての飛躍を目指している。

 2018年のアジア大会で話題となった競技は多数あったが、特に注目されたのは「eスポーツ」であった。eスポーツとはオンラインゲームの総称であり、格闘ゲーム、シューティング、戦略ゲーム、スポーツゲームなど、ジャンルは多種多様である。2018年大会ではあくまで公開競技としてのみの採用だったが、2023年の杭州大会では、eスポーツの公式種目化が実現し、大会の一つの目玉となっている。アリババホームタウンの杭州で、eスポーツの新たな歴史の幕が開ける。

G20杭州サミットと進むコンベンション産業


 2016年9月、20カ国・地域(G20)首脳会議「G20杭州サミット」が杭州で開催された。2日間にわたり、「革新、活力、連動、包摂の世界経済構築」をテーマに、多岐にわたった議論が各国の参加者の間で交わされた。

 コンベンション産業の経済波及効果は大きく、現在では世界各国がその産業育成に力を入れている。中国政府も、同国を国際コンベンション大国にまで成長させる目標を掲げている。「G20杭州サミット」の開催はその最たる動きである。

 国際見本市連盟(UFI)のレポート『UFI World Map Of Exhibition Venues 2022 Edition』によると、中国の施設屋内展示面積はすでに米国を抜いて世界第1位になった。施設屋内展示面積(2022年末)において、中国は213施設で約1,022万平方メートルとなり世界シェアは25.2%である。アメリカは305施設で約694万平方メートルとなり世界シェア17.1%となっている。中国の面積規模はアメリカの約1.5倍となっている。上位5カ国(中国、米国、ドイツ、イタリア、フランス)が、世界の屋内展示場面積の60%以上を占める。なお、日本は、13施設で約45万平方メートルと世界ランキングで第16位で、中国と日本の規模は約22.7倍の差が開いている。一方、中国のコンベンション産業の発展には会場施設の過剰、低稼働率などの問題も指摘されている。

 中国都市総合発展指標2022によると、杭州の「展示会業発展指数」は中国第6位、「国際学術会議」は第11位となっている。

 杭州市政府は、「第19回アジア競技大会」開催を契機に、観光、レジャー、コンベンションをツーリズム産業発展の三大エンジンとする政策を打ち出し、コンベンション都市としての発展を目指している。


【シンポジウム】索継栓・岩本敏男・石見浩一・小手川大助・周牧之:GXが拓くイノベーションインパクト

■ 編集ノート:東京経済大学は11月30日、国際シンポジウム「グリーントランスフォーメーションにかける産業の未来」を開催した。後援:北京市人民政府参事室、China REITs Forum。メディア支援:中国インターネットニュースセンター。セッション2「GXが拓くイノベーションインパクト」では、周牧之東京経済大学教授、索継栓北京市人民政府参事・中国科学院ホールディングス元会長、岩本敏男NTTデータグループシニアアドバイザー・元社長、石見浩一エレコム社長・トランス・コスモス元共同社長、小手川大助大分県立芸術文化短期大学理事長兼学長・IMF元日本代表理事が両国企業の取り組みと成果を報告し、GX分野での日中協力について展望した。

国際シンポジウム「グリーントランスフォーメーションにかける産業の未来」セッション2会場

■ ムーアの法則駆動時代を駆け抜ける


 司会の周牧之東京経済大学教授は、いまの激動の時代を「ムーアの法則駆動時代」と定義した。インテルの創業者でもあったゴードン・ムーアが1965年、同法則を発表し、半導体集積回路の集積率が18カ月ごとに2倍になり、価格が半減するとした。その後60年間、半導体はほぼ同法則通りに進化し、人類社会を大きく変える数々の新しい製品やサービスを誕生させた。この時代、ハイテク技術を基盤にしたイノベーションが社会発展の原動力となり、産業発展を牽引した。今日議論するテーマGX(グリーントランスフォーメーション)も同様に、テクノロジーの影響を受けて進行していく。これからの社会は、イノベーションが一層重要な役割を果たし、環境負荷の低減やエネルギー効率の向上など、持続可能な社会の実現に向けた技術的な解決策が求められると述べた。

周牧之 東京経済大学教授

 ビデオ動画で参加した索継栓北京市人民政府参事・中国科学院ホールディングス元会長は、中国政府は炭素排出量のピークアウトと炭素ニュートラルの実現を戦略的に進めていると説明した。中国科学院は低炭素技術の開発など、多くの施策を講じてきた。特に注力しているのが、ゼロからイノベーションを生み出す技術の開発だ。二酸化炭素削減に向けて、既存技術の改善だけでなく、新たな技術を創造し、飛躍的に進歩することが求められる。

 中国科学院は、研究機関と企業との連携強化も非常に重視している。基礎技術の開発から重要技術のブレークスルー、さらにはその技術の実証まで、総合的な開発体制を築いてきた。これにより、化石エネルギーの転換、新エネルギー技術、再生可能エネルギー技術の進展など、さまざまな分野で顕著な成果を上げてきた。

索継栓 北京市人民政府参事、中国科学院ホールディングスシニアディレクター、元会長

 索氏は、数々の中国科学院の研究成果を紹介した。例えば、石炭を原料とした合成油という技術開発により、石炭資源の効率的な利用が可能となり、環境への負荷を低減できた。また、リチウム電池をはじめとするエネルギー貯蔵技術の研究に長年取り組んだ結果、現在のリチウム電池産業の発展に大きな影響を与えた。特に、固体リチウム電池の開発は、EV(電気自動車)や電動船舶、ドローン等さまざまな分野での利用が期待される。さらに、ナノ粒子電池の研究も、将来的にエネルギー貯蔵の分野で広く応用されることが予想されている。

 岩本敏男NTTデータグループシニアアドバイザー・元社長は、NTTデータが1988年に独立し、現在では売上高約4.4兆円、従業員数約20万人の規模に成長し、50カ国以上に拠点を持つと述べた。NTTデータの取り組むイノベーションとして、JAXAの衛星データを活用した全世界デジタル3D地図の技術と、バチカン図書館のデジタルアーカイブプロジェクトを紹介した。これらの技術はGX、自然災害復興、インフラ整備、人類の遺産の保全と活用などに役立っている。

岩本敏男 NTTデータグループシニアアドバイザー、元社長

 石見浩一エレコム社長は、同社が創業から38年を迎え、現在ではPCやモバイル周辺機器だけでなく、調理家電やペット家電など、多岐にわたる製品を開発していると詳述。製品の93%が中国で生産されているのに対し、マーケットとしての海外シェアはまだ3%であり、この3年間で20%を達成したいと力説した。そのためには何よりも「人」が大事で良い人材を育成し、企業のビジョンを実現するための取り組みを続けたいと述べた。

 エレコムが取り組むGX活動については、森林再生プロジェクトや太陽光発電の活用、石油由来プラスチックの削減などを説明。また、新ブランド「think ecology」を立ち上げ、環境に優しい素材や再生可能な素材を使用した製品を提供していると紹介した。

パネリストの岩本敏男氏、石見浩一氏

■ 環境対策と産業競争力の両立が鍵


 小手川大助大分県立芸術文化短期大学理事長兼学長・IMF元日本代表理事は環境問題に関連するドイツの政権破綻について解説した。ドイツのリントナー財務大臣が、環境予算とウクライナ支援の継続に強く反対したため、ショルツ首相は11月6日に同財務大臣を解任せざるを得なくなった。その結果、ドイツ政府は機能しなくなり総選挙が行われることになった。しかし現在、勢いがある極右・極左政党は共通してウクライナへの支援に強く反対し、行き過ぎた環境政策を即時に中止すべきだと訴えている。ドイツ主要企業の多くは環境政策が原因で他国へ移転してしまっている。今後ドイツは、環境政策とウクライナ支援よりも、経済の安定を最優先する方向へ進んでいく可能性が高い。その影響が欧州全体、ひいては世界にどのように波及するのかに注視することが必要だ、と強調した。

 これに対して、周氏は、環境対策と国内産業の競争力を両立できるかどうかが、現在、ヨーロッパやアメリカで大きな課題となっているとした。中国では、EVや再生可能エネルギーなど、環境関連産業が急速に発展し、国際競争力を高めることに成功している。これにより、環境対策と産業の競争力が両立できる形になったと述べた。

小手川大助 大分県立芸術文化短期大学理事長兼学長、IMF元日本代表理事

起業家精神が時代を牽引


 続いて周氏は、資本市場における企業評価の変遷を解説した。1989年の世界時価総額ランキングトップ10では銀行、通信、電力などを中心に日本企業が多く占めていたが、2024年現在は、マイクロソフト、アップル、エヌビディア、テスラ、アルファベット、メタ、アマゾンなどテック企業が主導する形になっている。これらテック企業7社すべてがスタートアップ企業だった。その時価総額が現在12兆ドルを超え、「マグニフィセント7」と呼ばれ、圧倒的な存在感を持つ。ムーアの法則に基づく成功は、創造力に支えられたスタートアップ企業が、リスクを取りながら成長していくパターンだ。対照的に、大企業はリスクを取ることが苦手で、新技術の開発や新規事業の立ち上げに消極的になりがちであると指摘する。

 周氏は、アメリカと中国の時価総額トップ100企業の中では1980年代以降に創業した企業が多く、創業者がリーダーシップを発揮して産業の変革を牽引していると言及した。技術力と企業家精神が企業の発展を左右し、特にGX時代においては企業家精神が成長と変革の鍵となると述べた。

 索氏は1984年に設立されたレノボを挙げ、中国科学院と密接に連携し成長した事例を紹介した。レノボは英語のオペレーティングシステムを中国語に変換するイノベーションや、IBMのPC部門の買収、Googleからのモトローラ事業の取得などを通じて世界的な企業に成長した。この成功は、企業家精神とイノベーションへの挑戦を象徴し、中国の産業転換を促進する重要なステップとなった。

 石見氏は過去に200社以上の企業の面倒を見た経験から、成功する経営は「実行」に他ならないと強調した。実行するために必要なのは、計画段階で目標を定めることであり、目標達成に向けどう行動するかを考え続けることだとした。

 具体的には、企業のビジョンの明確化が最重要で、10年後、20年後にどんな企業になりたいかを考えることが、企業の方向性を決定づける。ビジョンがないと、企業文化や戦略も定まらない。マーケットやテクノロジーの変化を意識し、変化に対応できる戦略や戦術を立てることが、企業化精神の一部だと述べた。

 実行力にはリーダーシップが求められる場面も多く、決断が速かったことが成功の鍵となった。特に、ベンチャー企業はスピードが重要で、新製品やサービスを開発し、市場の動向に迅速に対応し、変化し続ける力が不可欠だとし、失敗後の回復力を強くし、失敗を恐れず、復活するために必要なエネルギーと強い意志を持ち続けることだと力説した。

司会の周牧之氏とコメンテーターの小手川大助氏

IOWNで究極のデータセンターGXを


 岩本氏はAIの進化により、データセンターの電力消費はますます増加するとした。AIの学習には大量の電力が必要で、特にエヌビディアのようなGPUを使う処理は非常に高い消費電力を伴う。これに対して、NTTグループは、AI向けのデータセンターの効率化を進める技術を導入している。エネルギー効率を向上させる「IOWN(アイオウン)」という計画がある。これは、光通信技術を使い、従来の電気を使った通信インフラを光に置き換える。光通信は非常に低消費電力であり、遅延が少なく、大容量のデータを効率的に扱うことができるため、今後の通信インフラにおいて大きな役割を果たす。この技術を使うことで、さらにカーボンニュートラルに向けた効率化が進む。これが、GXの将来に向けて重要な役割を果たすと強調した。

 これについて周氏は、今、世界はAIブームで沸騰中だ。しかし、AIは膨大なエネルギーを必要とし、さらにそのエネルギーで発生する熱を冷却するために非常に高いコストがかかる。この問題が驚くべき規模で進行している。すでに「原子力」の復活の議論にまでつながり、原子力ブームを再来させる可能性もある問題だとした。この問題の解決には、IOWNプロジェクトが非常に重要なイノベーションとなる。同プロジェクトは、光技術を活用し、エネルギー消費を最小限に抑え、究極のデータセンターGXを実現できる。この大きなインパクトを持つビッグイノベーションが成功すれば、NTTは再び世界時価総額トップ企業に返り咲くと期待を述べた。

GXにおける日中の協力


 岩本氏は百数十回にわたる中国訪問歴があり現在、NTTデータは中国に約10カ所の拠点を構え、4千人以上の従業員を擁している。中国企業と信頼を持って協力し合えると述べた。将来的にも、中国との関係を深め、ビジネスや文化、そしてGXの交流を促進していく意向を示した。

 石見氏は、中国の製造能力と技術に依存している現実を認識し、中国と協力して世界市場を開拓する必要性を強調し、新たにR&Dセンターを設立して製品検証を進めていると紹介した。GXを進めるうえで、最も大事だと思うのは「協同」だとし、グループ会社や中国の製造パートナーとの協力が不可欠で、目的や具体的な取り組みを共有し、一緒に進めていくことが成功への鍵だとした。アジア市場では、中国と共に新しいビジネスモデルを構築し成長していくことが必要だとし、日中両国が協力してバリューチェーンを構築し、グローバル市場でも競争力を発揮する努力が、最終的にGXの実現に繋がると展望した。

パネリストの石見浩一氏

 小手川氏は、日中関係は地理的に隣接し、経済的にも非常に深い結びつきがあるため、今後も友好的な関係を築いていくことが必要不可欠だとした。日本の背後にはアメリカという大きな影響力を持つ国が存在し、その政治的な立場や方針には、時に理解し難い面もあると述べた。アメリカは常に自国の利益を最優先に考え、ルールや倫理より自国の経済的利益を追求する。これを鑑みれば、今後の日中米関係では、単に表面的な外交政策や交渉にとどまらず、各国の実際の行動と戦略の見極めが求められると述べた。特に、日本と中国、アメリカとの関係は非常に微妙であり、いかにして互いに利益を得るための協力を深めていくかが、今後の鍵となると語った。

 周氏はアメリカという国は、ユーラシア大陸から見て「島国」として位置づけられる。アメリカが行うユーラシア政策は、まさにイギリスのユーラシアパワーを叩くマッキンダーのハートランド論的なものを踏襲している。と同時にアメリカには孤立主義も根深い。トランプの大統領としての再登板は、まさしくそうしたぶれを反映している。GX政策で重要なのは、私たちが何をすべきかをしっかり見据え、そのようなぶれの影響を受けずに実行し続けることだと強調した。

 現在、日本には中国の人々が大勢訪れている。今年だけでも1,000万人前後の中国人観光客が来日している。人と人との交流が続く中で、日中関係に対する憂慮や懸念は自然と薄れていくと信じる。毎年3,000万人、そして5,000万人という規模の中国人の訪日が近い将来に実現すれば、日中関係に関する困難な問題は、全部吹き飛んでしまうだろうと期待した。

シンポジウム当日の東京経済大学キャンパス

■ シンポジウム掲載記事


GX政策の競い合いで地球環境に貢献
http://japanese.china.org.cn/business/txt/2024-12/30/content_117632819.htm

気候変動対策を原動力にGXで取り組む
http://japanese.china.org.cn/business/txt/2025-01/02/content_117641894.htm

GXが拓くイノベーションインパクト
http://japanese.china.org.cn/business/txt/2025-01/02/content_117641551.htm

■ 登壇者関連記事(登壇順)


【コラム】福川伸次:日中関係、新次元への昇華の途を探る 〜質の高い経済社会の実現と新グローバリズムの形成に向けて〜

【フォーラム】鑓水洋:地域活性化策には明確なコンセプトが求められる

【刊行によせて】楊偉民:都市のハイクオリティ発展を促す指標システム

【刊行によせて】楊偉民:全く新しい視点で中国都市の発展状況を評価する

【講演】中井徳太郎:カーボンニュートラル、循環経済、自然再生の三位一体のイノベーション—地域循環共生圏構想

【フォーラム】中井徳太郎:分散型自然共生社会を目指して

【刊行によせて】中井徳太郎:生態環境社会への移行に寄与

【ディスカッション】中井徳太郎・大西隆・周牧之:コロナ危機を転機に 

【ディスカッション】中井徳太郎・安藤晴彦・和田篤也・周牧之:省エネ・再生可能エネルギー社会への挑戦と自然資本

【フォーラム】南川秀樹:コミュニケーションの場としてのエンタメを

【刊行によせて】南川秀樹:中国大都市の生命力の源泉は何か

【コラム】邱暁華:高度成長からハイクオリティ発展へシフトする中国経済

【ディスカッション】小島明・田中琢二・周牧之(Ⅰ):誰がグローバリゼーションをスローダウンさせた?

【ディスカッション】小島明・田中琢二・周牧之(Ⅱ):ユーラシア大陸を視野に入れた米中関係

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【刊行によせて】周牧之:新型コロナウイルス禍と国際大都市の行方

【論文】周牧之:二酸化炭素:急増する中国とピークアウトした日米欧

【論文】周牧之:アメリカ vs. 中国:成長と二酸化炭素排出との関係から見た異なる経済水準

【論文】周牧之:世界の二酸化炭素排出構造と中国の課題

【刊行によせて】徐林:中国の発展は都市化のクオリティ向上で

【対談】小手川大助 vs 周牧之:(Ⅰ)転換点で激動の国際情勢を見つめる

【対談】小手川大助 vs 周牧之:(Ⅱ)複雑な国際情勢をどう見極めるか?

【シンポジウム】南川秀樹・邱暁華・徐林・田中琢二・周其仁:気候変動対策を原動力にGXで取り組む

国際シンポジウム「グリーントランスフォーメーションにかける産業の未来」セッション1会場

■ 編集ノート:東京経済大学は11月30日、国際シンポジウム「グリーントランスフォーメーションにかける産業の未来」を開催した。後援:北京市人民政府参事室、China REITs Forum。メディア支援:中国インターネットニュースセンター。セッション1「GXにおける日中の取り組み」では、南川秀樹日本環境衛生センター理事長・元環境事務次官、邱暁華マカオ都市大学教授・中国統計局元局長、徐林中米グリーンファンド会長・中国国家発展改革委員会発展戦略和計画司元司長、田中琢二IMF元日本代表理事、周其仁北京大学国家発展研究院教授が日中両国のGX分野での政策と成果を報告し、今後の展開について議論した。


南川秀樹・邱暁華・徐林・田中琢二・周其仁:東京経済大学国際シンポジウム「グリーントランスフォーメーションにかける産業の未来」セッション1「GXにおける日中の取り組み」2024年11月30日

■ 「グリーン化」が中国を世界で最も多くの再生可能エネルギー設備を持つ国に


 シンポジウムのセッション1「GXにおける日中の取り組み」は南川秀樹日本環境衛生センター理事長・元環境事務次官の司会で、パネリストの邱暁華氏マカオ都市大学教授・中国国家統計局元局長、徐林中米グリーンファンド会長・中国国家発展改革委員会発展戦略和計画司元司長、田中琢二IMF元日本代表理事と、コメンテーターの周其仁北京大学国家発展研究院教授が登壇した。

 東京経済大学で客員教授を務めていた南川秀樹氏はまず以下の問題提起をした。気候変動の問題は、従来の環境問題とは異なる点がある。過去の環境問題は、誰かが原因を作り、特定の人々が影響を受ける形だった。しかし、気候変動問題は、CO2やメタンを排出する国があれば、その影響は全ての国に均等に及ぶ特徴がある。つまり、原因者と被害者が直接的に結びついておらず、プレッシャーをかけにくい。このような背景下、先日のCOPで発展途上国からは、「CO2を多く排出して経済成長している国々が、なぜ自分たちを支援してくれないのか」という不満の声が上がった。もちろん、中国や日本も積極的に取り組んでいるが、まず中国や日本が排出削減や適応対策をどう進めているのかを世界に向けて発信する必要がある、と述べた。

南川秀樹 日本環境衛生センター理事長、元環境事務次官

 邱暁華氏は中国経済が歩んできた歴史的な変遷について、特に中国が現在直面する「三大変化」に焦点を当てた。三大変化を「デジタル化」「スマート化」「グリーン化」と定義し、各々の中国経済の発展への寄与について説明した。これらの変化が、中国経済の成長に新たなダイナミズムをもたらしていると強調した。

 中国経済が直面する地政学的な課題については特に、アメリカや西洋諸国との経済的・政治的な対立が経済成長に与える影響に関して、発展途上国が直面する地政学的な影響を無視できないとした。

シンポジウム当日の東京経済大学キャンパス

 中国の「グリーン化」について、邱氏は具体的なデータを用いて解説した。中国政府は、2030年にCO2排出のピークを迎え、2060年までに排出量の実質ゼロを目指すと発表し、同目標を実現するためにさまざまな取り組みが進んでいると述べた。特に、再生可能エネルギーの導入拡大、産業構造の転換、循環型経済が促進し、これらの施策が中国の経済成長と環境保護を両立させる鍵となるとした。

 2024年8月末時点で、中国の再生可能エネルギーの発電設備の規模は、全発電能力の40%以上を占めるようになったと紹介し、中国の再生可能エネルギーへの積極的な取り組みが会場に強い印象を与えた。

邱暁華 マカオ都市大学教授、中国統計局元局長

■ 中国ではイノベーションで太陽光発電コストが下がり、政府補助金が不要に


 徐林氏は、中国は、低炭素への転換を「生態文明」という高い政策次元にまで引き上げた国であると強調し、具体的なデータを示しながらその取り組みを紹介した。例えば、過去40年間中国で100万平方キロメートルの緑地が増加した。この面積は、日本の国土面積の約3倍に相当し、中国の環境保護活動がいかに大規模であるかを示している。

 再生可能エネルギーの拡大については、特に風力、太陽光、原子力の発電容量が急増し、中国が世界で最も多くの再生可能エネルギー設備を持つ国になったと述べた。徐は、この進展が中国経済の成長を支え、同時に環境保護に大きな貢献をしていると強調した。

 徐氏は、中国の太陽光発電技術の進歩でコストも下がり、同分野で政府の補助金が不要になり、商業投資の機会が増えていると紹介。従来低炭素への移行はプレッシャーとなっていたが、現在では技術の進展とグリーン電力への投資の成果が相まって経済成長の原動力となり、もはやプレッシャーではなくなっていると力説した。

徐林 中米グリーンファンド会長、中国国家発展改革委員会発展戦略和計画司元司長

 田中琢二氏はIMFでの経験を基に、気候変動問題に対する国際的なアプローチを説明した。日本が直面する環境問題と、その取り組みについては、日本が掲げる温室効果ガス削減目標について言及し、2030年の温室効果ガス削減目標を達成するため2013年の14億トンの CO2を7.6億トンに削減する必要がある。この中で、エネルギー起源のCO2削減が最も重要な部分を占め、特に電力由来のCO2削減が重要なポイントとなっている。電力由来のCO2削減は全体の半分を占めており、再生可能エネルギーの導入が進むことで、この目標を達成することが可能になるとした。

田中琢二 IMF元日本代表理事

 田中氏は、国際的に日本と中国をはじめとする国々が気候変動対策に貢献しつつ、経済成長を実現するため連携を深めていると述べた。特に、日中間では再生可能エネルギー技術の輸出や、カーボンプライシング制度の連携が進み、中国が同分野で実施する非常に先進的な取り組みの経験を参考にしながら、日本も国際的な気候変動対策に貢献することが求められていると、強調した。

 田中氏はまた、日本は再生可能エネルギーの導入拡大や次世代技術の研究開発、特に洋上風力や水素技術、蓄電池製造サプライチェーンの強化や次世代型太陽電池の開発などが重要だとした。さらに、カーボンプライシングや新しい金融手法がGX(グリーントランスフォーメーション)の進展を支える重要な要素であると指摘し、これらの政策が民間投資を引き出し、経済成長と脱炭素化を同時に実現する道筋だと示した。社会的公平性の確保にも触れ、特に影響を受けやすい労働者や地域経済への支援が不可欠であると強調した。気候変動対策が経済的な格差を広げない配慮が、持続可能な社会の実現にとって重要だと述べた。

パネリストの邱暁華氏、徐林氏、田中琢二氏

気候変動対策はやれることからどんどんやっていくことが大事


 コメンテーターの周其仁氏は、中国は環境保護に大きな努力をしているが、その道のりは決して簡単ではないと指摘。中国は経済成長の過程で、大量のエネルギーを消費し、環境を犠牲にしてきたが、今はその成長を持続可能にするために環境重視にシフトしなければならない。それに伴って発展途上国特有の課題をどう乗り越えるかが重要であると強調した。経済的な発展と環境保護のバランスを取るためには、各国が独自の状況を考慮した政策を採る必要があるとした。

周其仁 北京大学国家発展研究院教授

 司会の南川氏は、アメリカの「インフレ抑制法」実施とEU(欧州連合)「国境環境税」の導入議論について取り上げ、環境対策における経済的な保護主義に対して懸念を示した。

 これに対して周氏は、大国のリーダーの中に、気候変動の進行を信じていない人がいるが、それでもなお全球的な協議の実現に向けて、まず大国間で協力の道を模索することが重要だと力説した。人類はこれまで、大きな問題を協議で解決することがなかなか出来なかった。軍事的な問題でも、解決には時間がかかり、多くの命が失われている。気候変動のような長期的で大規模な問題は、さらに難しい課題であり、全球的な協議に対する期待を過度に高く持つのは現実的ではないかもしれない。地道に現実的な解決策を見つけどんどんやっていくことが大切だと述べた。

司会の南川秀樹氏とコメンテーターの周其仁氏

■ シンポジウム掲載記事


GX政策の競い合いで地球環境に貢献
http://japanese.china.org.cn/business/txt/2024-12/30/content_117632819.htm

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【重慶】「三線建設」「西部開発」「一帯一路」で力を付けた直轄市【中国都市総合発展指標】第7位

中国都市総合発展指標2022
第7位



 重慶は中国都市総合発展指標2022総合ランキング第7位であり、前年度の順位を維持した。

 「経済」大項目は第8位であり、、前年度より1つ順位を下げた。3つの中項目で「経済品質」は第5位、「都市影響」は第9位、「発展活力」は第10位で、3項目すべてがトップ10入りを果たした。小項目では、「経済規模」「都市圏」は第4位、「ビジネス環境」は第6位、「経済構造」は第7位と、9つの小項目のうち4項目がトップ10入りした。ただし、「イノベーション・起業」は第11位、「広域中枢機能」「広域輻射力」は第12位、「開放度」は第20位、「経済効率」は第117位であった。

 「社会」大項目は第8位であり、前年度に比べ順位が1つ上がった。3つの中項目で「ステータス・ガバナンス」は第4位、「伝承・交流」は第9位、「生活品質」は第17位と、3項目のうち2項目がトップ10入りを果たした。小項目で見ると、「社会マネジメント」は第3位、「文化娯楽」は第4位、「都市地位」は第5位、「歴史遺産」は第6位と、9つの小項目のうち4項目がトップ10入りした。なお、「人的交流」「生活サービス」は第11位、「居住環境」は第12位、「人口資質」は第14位、「消費水準」は第30位であった。

 「環境」大項目は第15位となり、前年度に比べ3つ順位を下げた。3つの中項目の中で「自然生態」は第17位、「環境品質」は第30位、「空間構造」は第33位と、3項目のうち2項目がトップ30入りした。小項目では、「水土賦存」は第2位、「都市インフラ」は第3位、「環境努力」は第4位と、9つの小項目のうち、3項目がトップ10入りした。なお、「資源効率」は第18位、「交通ネットワーク」は第39位、「コンパクトシティ」は第45位、「気候条件」は第84位、「汚染負荷」は第171位、「自然災害」は第294位であった。

 中国都市総合発展指標2022について詳しくは、中心都市がメガロポリスの発展を牽引:中国都市総合発展指標2022を参照。


■ 戦時首都だった重慶


 重慶は長江上流に位置し、上海の約2,500キロメートル西南にある直轄市である。同市は長江と嘉陵江という2本の河川が合流する地点に開け、山や川の入り組んだ高低差の激しい地形を持つ。市内の標高差は220メートル近くもあり、長い階段が街の随所に見られる独特の風景をつくりだしている。重慶は北海道に相当する8.2万平方メートルの面積に約3,212万人という世界の都市の中で最大の人口規模を抱える。夏季の気候が高温多湿であるため、南京市、武漢市と並び三大「かまど」と言われている。

 重慶は長い歴史を持つ都市であり、『三国志』の「蜀」に属する地として日本でも有名である。1891年に開港し、中国西南部における近代化の拠点となった。1937年から1946年までは中華民国政府の「戦時首都」が置かれ、日中戦争時代の中国の心臓部であった。

■ 最も若い直轄市


 四川盆地南東部に位置する重慶は、中国西南部の中心都市であり、中国の最も若い「直轄市」である。重慶の名は第二次大戦時に「戦時首都」として世界に知られるようになった。1949年の新中国成立後、重慶は一旦、中央直轄市となったが、1954年に四川省に編入された。1983年に「計画単列市(日本の政令指定都市に相当)」に昇格し、1997年には再び四川省から分離して北京、上海、天津に次ぐ直轄市となった。

 「直轄市」とは、省と同格で、他の都市よりも強い行政権限を持っている。重慶には日本の総領事館も設置されている。

 面積や人口において、重慶は中国最大の都市である。市下には13市区、4市、18県、5自治区があり、広大な土地には都市や農村、自然環境など豊富で多様な空間が混在している。

 重慶は、古来より水運で栄え、重要な交通の要所であった。三峡ダムの完成後は、1万トン級の船舶も直接重慶まで航行できるようになった。現在、「コンテナ取扱量」は中国第35位にまで成長し、内陸都市としては好成績を上げている(詳しくは【ランキング】世界で最も港湾コンテナ取扱量が多い都市はどこか?を参照)。

 鉄道や空港を含む広域インフラも整備され、重慶の空港利便性は中国第6位で、極めて高い(詳しくは【ランキング】中国で最も空港利便性が高い都市はどこか?を参照)。

「三線建設」から「西部開発」へ、そして「一帯一路」


 内陸都市の発展は、国家的な戦略推進が欠かせない。重慶は、毛沢東時代の「三線建設」で工業力を蓄え、改革開放後は「西部大開発」政策でインフラ整備を強化し、現在は「一帯一路」政策で海外とのリンケージを強めている。

 重慶には2010年、中国国内3番目の国家級新区「重慶両江新区」が設置された。同年、内陸港唯一の保税区も整備された。2017年には貿易や投資などの規制緩和を重点的に進める「自由貿易試験区(重慶自貿区)」が開設され、国際貿易都市としての性格を強めている。現在、重慶から貴州、広西チワン自治区を経由してシンガポールまでをつなぐ物流ルートが開通し、「一帯一路」構想における一大国際交流交易拠点としての発展が期待されている。

 直轄市となって以来の20年間、重慶市のGDPは年平均12.0%の成長率を達成した。2022年に重慶のGDPは2兆9,129億元(約58.3兆円、1元=20円換算)で中国第4位の規模に達したが、1人当たりGDPは9万650元(約181万円)で中国第79位に留まり、同じ西部地域の中心都市である成都の同9万7,882元(約196万円)には及ばない(詳しくは【ランキング】世界で最も経済リカバリーの早い国はどこか? 中国で最も経済成長の早い都市はどこか?を参照)。

 重慶を拠点とする「メインボード上場企業」は、中国第11位の73社に達している。

■ 人口流出都市


 2021年における人口の流出入を示す「人口流動(非戸籍常住人口)」で、重慶は中国全土297地級市以上の都市でワースト9位であった。流出人口は202万人にも達した。すなわち札幌市と同規模の人口が戸籍を移さずに市外へ流れている。中国の経済規模トップ30の都市の中で、重慶は唯一人口流出都市となっている。重慶には広大な農村エリアがあり、中心市街地が吸収しきれないほどの膨大な農村人口を抱えているからである。

 農村部では収入も低く雇用の機会も少ないため、億単位の出稼ぎ労働者(農民工)が、重慶や四川省、河南省、安徽省、貴州省といった内陸部から、沿海部の大都市に流出している。戸籍制度のもとで人口は「農村戸籍」と「都市戸籍」に分けられ、出稼ぎ労働者のほとんどは農村戸籍である。農村戸籍から都市戸籍への転換は厳しく制限され、都市部で農村戸籍者は教育や福祉、就職の機会などにおいて多くの不利益を被っている。

 中国国務院は2014年、戸籍制度改革に乗り出し、現在、戸籍制度そのものが緩和されつつある。

■ 一大観光都市


 重慶は中国屈指の観光都市である。中国都市総合発展指標2022によると、「社会」大項目の指標「国内旅行客」は中国第57位、「海外旅行客」は第66位である。〈指標2021〉では「国内旅行客」は中国第9位であったが、コロナ禍の影響もあり、順位は大きく落ち込んでいる。「世界遺産」は中国第2位にランキングされ、「環境」大項目の「国家公園・保護区・景観区指数」は中国第1位であった。豊かな自然と文化遺産の調和ある観光資源が、国内外から多くの観光客を魅了している。  

 しかし、観光業の成績で見ると、重慶とライバル都市である成都とは、様相を異にする。2022年の観光客数および観光収入では、成都が重慶に優った。成都の国内観光客数は2億人、国内観光収入は2,042億元(約4兆840億円)に達した。一方、重慶の国内観光客数は5,456万人、国内観光収入は1,063億元(約2兆1,260億円)と、いずれも成都に及ばなかった。

 観光産業を考える際、重要な点は、観光客にいかにその都市で消費をしてもらうかである。中国都市総合発展指標2022で各産業の輻射力で両都市を比較すると、その実態が見えてくる。都市の購買吸引力を示す「経済」大項目の指標「卸売・小売輻射力」で、重慶は第6位、成都は第3位という結果で、成都の方が消費者にとってはより魅力的なショッピング都市であった。また、都市の飲食業やホテルの吸引力を示す同大項目の指標「飲食・ホテル輻射力」では、重慶は第14位、成都は第4位となり、歴然たる差を見せつけた。

■ 「横向き摩天楼」という新しいランドマーク


 2019年9月、重慶に新たなランドマーク「ラッフルズシティ(来福士広場)」が誕生した。ラッフルズシティは、長江と嘉陵江が合流する朝天門広場に位置し、総工費38億ドル(約4,066億円)を投じた巨大プロジェクトである。敷地面積は9.2ヘクタール、総床面積は112万平方メートルであり、23万平方メートルのショッピングモール、16万平方メートルのオフィス、1,400戸の住宅、ホテルなどの機能を兼ね備えている。

 スケールは巨大で、イスラエルの建築家モシェ・サフディ氏が設計した外観は、驚く程の奇抜さである。敷地内には8棟の高層ビルが林立し、南側にある6棟は高さ250メートル、北側の2棟は350メートルを誇る。注目すべきは、長さ300メートル以上の橋形建築物「ザ・クリスタル(水晶連廊)」である。「横向き摩天楼」とも呼ばれる通路は、高層ビル4棟を接続し、高層ビル群を三次元の「帆」のように見立てている。2020年5月には、この連結部分もオープンし、地上250メートルの「世界一高い」空中通路が話題を集めている。

■ SNSで一大人気スポットとなった「洪崖洞」


 重慶には名跡が多く存在する。市の南部に位置する「洪崖洞」は、地元の伝統的な建築様式「吊脚楼」を採用して再建された商業施設である。全長約600メートル、総面積は6万平方メートルで、「国家4A級旅遊景区」に指定された屈指の観光地である。GWなどの連休初日には数万人以上が訪れるほど人気で、その理由は、中国発祥の人気スマートフォン・アプリ「抖音(TikTok)」の口コミ効果とされている。

 「洪崖洞」が日本の大ヒットアニメーション映画『千と千尋の神隠し』の舞台「湯屋」に「酷似している」との投稿が「抖音」に上がったことから、美しい「洪崖洞」の夜景を捉えた動画も多数投稿されるようになり、若者の間で瞬く間に大きな話題を呼んだ。中国の観光名所がSNSという新たな手段によって次々と再発見されている好例である。

■ 中国西部最大の旅客輸送ターミナル「重慶西駅」


 重慶西駅が2018年1月に完成し、重慶市と貴州省貴州市を結ぶ鉄道「渝貴鉄路」が同時に開業した。「渝貴鉄路」は全長347キロメートルで、営業最高時速は200キロメートルである。この鉄道は、中国の成渝地区(成都と重慶の間の地区)と西南地区から華南・華東地区に至る高速鉄道ルートを形成し、重慶・貴州間の移動時間が大幅に短縮された。地域の交通利便性がさらに向上し、沿線の中小都市の発展や観光資源開発を牽引している。

 起点となる重慶西駅は、中国西部最大の旅客ターミナルで、完成した第1期の建築面積は約12万平方メートルに及び、年間利用客数4,000万人のキャパシティを持つ。2018年の春運(旧正月前後の帰省ラッシュに伴う特別輸送体制)の期間中、1日あたりの旅客数は10.3万人を記録し、旅客数が10万人を突破した大型旅客輸送ターミナルとなった。

 中国都市総合発展指標2022では、重慶の「鉄道利便性」は中国第23位であるが、今後の順位上昇が期待される。

■ 世界有数の自動車生産基地


 中国は現在、世界最大の自動車大国である。2022年に中国の自動車生産台数は約2,702万台で世界第1位であり、その世界シェアは31.8%を誇っている。

 重慶も、中国有数の自動車生産基地の一つであり、2022年の同市の自動車生産台数は約210万台に達した。中国都市総合発展指標2022では、重慶の「自動車産業輻射力」は中国第3位である(詳しくは【ランキング】自動車大国中国の生産拠点都市はどこか?を参照)。

 重慶の「1万人当たり自家用車保有量」は全国第114位とかなり低いが、都市としての全体規模で見ると自家用車保有量は中国第3位の約442万台である。

 一方、重慶の自動車産業は、ライバルである上海や長春に比べると、一車両あたりの生産額が低いことが課題となっている。そのため、同市はEVやスマートカーへの研究開発を進めている。その結果、直近3年間で重慶のEV車生産台数は、2020年の43,200台から、2021年には前年比252.1%増の152,200台、2022年には前年比140%増の365,200台へと急増している。


【南京】知識産業化が進む「十朝都会」【中国都市総合発展指標】第8位

中国都市総合発展指標2022
第8位



 南京は中国都市総合発展指標2022総合ランキング第8位であり、前年度の順位を維持した。

 「社会」大項目は第6位であり、前年度に比べ順位が1つ上がった。3つの中項目で「伝承・交流」は第4位、「生活品質」は第6位、「ステータス・ガバナンス」は第11位と、3項目の中で2項目がトップ10入りを果たした。小項目で見ると、「歴史遺産」は第4位、「人口資質」「人的交流」「消費水準」は第6位、「都市地位」「文化娯楽」「居住環境」「生活サービス」は第7位と、9つの小項目のうち8項目がトップ10入りした。なお、「社会マネジメント」は第27位であった。「社会」の成績は、全体的に高い結果となった。

 「経済」大項目は第10位であり、前年度の順位を維持した。3つの中項目で「都市影響」は第8位、「発展活力」は第9位、「経済品質」は第10位で、3項目すべてがトップ10入りを果たした。小項目では、「経済効率」は第6位、「イノベーション・起業」「広域輻射力」は第7位、「広域中枢機能」は第8位、「経済構造」「ビジネス環境」は第9位と、9つの小項目のうち6項目がトップ10入りした。なお、「経済規模」は第12位、「都市圏」は第16位、「開放度」は第17位であった。「経済」の成績は、各項目ともに全体的に高かった。

 「環境」大項目は第17位となり、前年度の順位を維持した。3つの中項目の中で「空間構造」は第9位とトップ10入を果たしたが、「環境品質」は第56位、「自然生態」は第136位であった。小項目では、「交通ネットワーク」は第6位、「都市インフラ」は第8位と、9つの小項目のうち、2項目がトップ10入りした。なお、「コンパクトシティ」は第11位、「環境努力」は第17位、「資源効率」は第33位、「自然災害」は第43位、「気候条件」は第130位、「汚染負荷」は第151位、「水土賦存」は第195位であった。

 中国都市総合発展指標2022について詳しくは、中心都市がメガロポリスの発展を牽引:中国都市総合発展指標2022を参照。


 南京は江蘇省の省都であり、同省の政治、経済、科学技術、教育、文化の中心である。長江の入江から380キロメートルに位置し、長江下流の南岸に面しているポジションから、南京には古くから王朝の都が数多く設けられてきた。「南京」とは「南の都」という意味で、面積は6,587平方キロメートル、栃木県と同程度の規模である。

 最初に南京に都を構えたのは、約2,800年前、春秋時代の呉国である。その後、東晋、六朝、南唐、明といった王朝が南京を帝都と定め、「十朝都会」と呼ばれた。太平天国や中華民国統治時代にも都となっていた。14世紀から15世紀にかけては、世界最大の都市として栄華を誇った。

 南京は、古来より戦略的な要所とされていた。そのため、同市には今も立派な城壁がそびえ立っている。明の時代には、全長約35キロメートル(山手線の1周分に相当)、高さ14〜21メートル、13の城門という巨大な城壁が市内を囲むように建設された。

知識産業化が進む南京


 中国都市総合発展指標2022より、2022年に南京のGDPは1兆6,908億元(約33.8兆円、1元=20円換算)に達し、中国で第10位、1人当たりGDPは198,257元(約397万円)で中国第9位となった(詳しくは【ランキング】世界で最も経済リカバリーの早い国はどこか? 中国で最も経済成長の早い都市はどこか?を参照)。

 南京の経済規模では同省内の蘇州(中国第6位)に劣るものの、省都としての立場を活かし、教育・科学技術の集積と人材ストックをベースにした知識産業を発展させている。中国の科学技術分野の最高研究機関である中国科学院と技術分野の最高機関である中国工程院のメンバーの輩出度合いを示す「中国科学院・中国工程院院士指数」は中国第3位で、研究開発人材の蓄積が実に分厚い。

 従業員数を比較するとそれは顕著である。例えば、製造業の従業員数は南京が約40万人、蘇州が約182万人であり、蘇州は工業都市としての側面が強い(詳しくは【ランキング】中国で最も輸出力の高い都市はどこか? を参照)。対照的に、IT関係の従業員数は南京が約18.7万人、蘇州が約4.1万人である。特に南京はソフトウェア産業において、北京、上海、成都、深圳、広州に続く中国で6番目の規模を持つ(詳しくは、【ランキング】中国IT産業スーパーシティはどこか?を参照)。但し、研究開発要員数は南京が約12.9万人、蘇州が約15.9万人であり、蘇州の研究開発要員数が南京を上回る。かつては南京の科学技術力が蘇州より高かったが、いま製造業スーパーシティ蘇州が工業力をベースに、科学技術力を高めている(詳しくは「【ランキング】科学技術大国中国の研究開発拠点都市はどこか?」を参照)。

製造業スーパーシティ蘇州に勝る省都南京の中心都市機能


 製造業スーパーシティ蘇州に経済規模で抜かれたとはいえ南京は、中心都市としての力がなお強い。南京は文化教育都市として名高く、市内には南京大学、東南大学、南京師範大学など、創立100年以上の歴史を持つ名門大学が肩を並べ、国から重点的に経費が分配される「国家重点大学(211大学)」は8校も有する。中国都市総合発展指標2022より、「中国都市高等教育輻射力」は南京が中国第3位で、蘇州が同第30位である。

 「中国都市文化・スポーツ・娯楽輻射力」では、南京が中国第5位、蘇州が同第13位(詳しくは【レポート】中日比較から見た北京の文化産業を参照)。ただし、「映画館・劇場消費指数」では南京が中国第10位、蘇州が同第9位となっており、若者の多い蘇州が南京を上回る(詳しくは【ランキング】世界で最も稼ぐ映画大国はどこか?を参照)。

 医療面においては、「中国都市医療輻射力」は南京が中国第8位と、蘇州の同第35位を大きく引き離している(詳しくは【レポート】新型コロナパンデミック:なぜ大都市医療能力はこれほど脆弱に?を参照)。

 南京は中国の一大交通ハブでもある。「空港利便性」では南京が中国第10位、蘇州が同第192位(詳しくは【ランキング】中国で最も空港利便性が高い都市はどこか?を参照)。「鉄道利便性」では南京が中国第4位、蘇州市が同第12位である。

 他方、上海、深圳、香港のメインボード(主板)市場に上場している企業の総数(2022年末)は、南京は99企業で中国第7位、蘇州は116企業で同第6位であり、本社機能では蘇州に抜かれた。


ユネスコ「文学都市」


 2019年10月、ユネスコは、新たに66の都市を「ユネスコ創造都市ネットワーク」として選出し、南京がアジアで3番目、中国では初となる「文学都市」に選ばれた。

 2004年、ユネスコは「創造都市ネットワーク」を設立した。文学、映画、グルメ、デザインなどの7分野に分け、世界の都市間でパートナーシップを結び、国際的なネットワークを作っている。2022年末には世界295の都市が参与している。中でも「文学都市」は現在、42都市が選出されている。その多くは欧米の都市が占め、アジアでは、南京の他に韓国の富川と現州、パキスタンのラホール、インドネシアのジャカルタが選出されている。残念ながら、「文学都市」ではまだ日本の都市は選出されていない。

 中国都市総合発展指標2022によると、南京は「社会」項目の「傑出人物輩出指数」、「傑出文化人指数」ランキングでそれぞれ中国第4位、第5位である。古来より文化資源が豊富で、文人が多く集った。中国最初の詩歌の評論「詩品」が南京で編まれたほか、中国最初の文学評論の「文心雕龍」が編さんされ、最初の児童啓蒙書「千字文」、現存最古の詩文総集「昭明文選」などが、南京で誕生した。中国初の「文学館」も南京に設立された。

 「紅楼夢」、「本草網目」、「永楽大典」、「儒林外史」に代表されるように、南京にゆかりのある中国古典作品は1万作以上ある。

 魯迅、巴金、朱自清、兪平伯、張恨水、張愛玲など近代の文豪も南京とつながりが深い。アメリカのノーベル文学賞受賞作家、パール・バックは、代表作「大地」を南京で創作した。

 「文学都市」の選出には、出身作家数など以外にも、文学を育む都市の環境も重視され、出版文化、書店文化、図書館の整備、市民の読書量なども評価対象である。南京は〈中国都市総合発展指標〉の「公共図書館蔵書量」ランキングで中国第7位にランクインした。

 CNN、BBCなどから「世界で最も美しい書店」と評価された「南京文学客庁」といった24時間営業の書店は、新たな文化スポットとして、市民に人気が高い。市内の公園、観光スポット、デパート、ホテル、地下鉄などに無料の読書スペースが150カ所以上設けられ、読書文化を盛り上げている。

人材争奪戦に励む


 南京の豊かな文化の香りは、市民の教育水準の高さに因るものが大きい。中国都市総合発展指標2022において、市民の教育水準を示す「人口教育構造指数」は中国第6位である。

 中国も日本と同様、労働者人口の増加がピークを過ぎ、高齢化社会が迫る中、都市の発展のカギを握る有能な若手人材の争奪戦が、全国の都市間でヒートアップしている。

 中国では2022年の大学卒業生が前年比167万人増の1,076万人と、初めて1,000万人を超え、過去最高を更新した。この中で注目されたのは、北京の大学・大学院卒業生28.5万人のうち、修士・博士課程の大学院卒業生数が、全国で初めて学部の卒業生数を超えたことである。他の都市でも同様の傾向が見られ始め、中国の名門大学である上海交通大学、華東師範大学、西安交通大学でも、大学院の卒業生数が学部生を上回る現象が起きている。南京の名門校である南京大学においても、2022年卒業者は9,563人で、そのうち学部卒業生は33%で全体の三分の一となった。

 南京市政府は、大学卒業生という高度人材の若者たちをそのまま市内に定住させるために、市内定住のハードルを低くし、家賃補助や起業補助を普及するなど、さまざまな政策を打ち出している。南京市政府の積極的な取り組みが、人材育成や都市発展において他の都市にも影響を与え、全国的な人材争奪戦の激化が続くと予想される。

中国三大博物館のひとつ南京博物院


 古都・南京には、中国三大博物館のひとつ「南京博物院」がある。北京故宮博物院、台湾故宮博物院と肩を並べる存在となっている。

 南京博物院には、「南遷文物」といわれる元は北京故宮博物院にあった文物を所蔵している。日中戦争の戦火を避けるため、1933年、北京故宮博物院から木箱で2万個といわれる大量の文物が南京博物院(当時は中央博物院)に移送された。南京に戦火が及ぶと、文物は重慶に移されたが、戦後再び南京に戻った。だがその後国共内戦の混乱の中、3千箱が台北に運ばれ、7千箱が北京の故宮博物院に戻された。現在、台北の故宮博物院が所蔵する至宝はこのときに運ばれた文物である。大陸に残った物のうち1万箱が南京博物院にあり、「南遷文物」と呼ばれる。

 中国都市総合発展指標2022では、南京は「社会」項目の「博物館・美術館」ランキングは中国第10位であり、市内には一級の博物館が5館、二級は4館、三級は5館、無級は48館の合計62館が存在している。南京訪問の際は、名勝見物と併せて博物館巡りを行えば、より中国の歴史文化への理解が深まるだろう。


【シンポジウム】メガロポリス発展を展望:中国都市総合発展指標2023

■ 編集ノート:2024年雲河東京国際シンポジウム「中国企業の新たな旅立ち:イノベーション、集積、海外進出」が2024年12月1日午後、東京オペラシティで開催された。北京市人民政府参事室と雲河都市研究院が共同主催し、中国インターネットニュースセンターがメディアサポートした。


2024年雲河東京国際シンポジウム「中国企業の新たな旅立ち:イノベーション、集積、海外進出」会場

 郭旭傑駐日中国大使館経済参事官と耿新蕾北京市人民政府参事室副主任の挨拶の後、雲河都市研究院が「中国都市総合発展指標2023」を発表した。 北京は8年連続で総合ランキング第1位、上海は第2位、深圳は第3位となった。広州、成都、杭州、重慶、南京、天津、蘇州は総合ランキング第4位から第10位となった。総合ランキング第11位から第30位の都市は、武漢、厦門、西安、長沙、寧波、青島、鄭州、福州、東莞、無錫、済南、珠海、仏山、合肥、瀋陽、昆明、大連、海口、貴陽、温州となった。

 シンポジウムの出席者は、発表された指標について活発な議論を交わした。

周牧之 東京経済大学教授


 「中国都市総合発展指標2023」は、2016年以降、8回目の発表となる。同指標の専門家チームの主要メンバーが東京に集まったこの機会に、メガロポリスの発展について議論し、展望したい。

 中国の第1次から第10次までの五カ年計画はすべて大都市発展抑制を謳っていた。しかし第11次五カ年計画でいきなりメガロポリス発展戦略を採った。これは中国でアンチ都市化政策から都市化促進政策への大きな転換であった。いまや中国国家発展改革委員会が19ものメガロポリスを指定している。

 これらのメガロポリスの発展をどう評価するかが重要な課題となった。また、中国では一線都市など都市分類の定義を巡り様々な説が行き交い混乱している。これらを踏まえ、昨年より中国都市総合発展指標の総合ランキング偏差値に基づき、都市を一線都市、準一線都市、二線都市、三線都市に分類した。さらに 19のメガロポリスに属する223都市の総合評価偏差値の「箱ひげ図」及び「蜂群図」の分析で、各メガロポリスを評価した。今年も引き続き、こうした分析で各メガロポリスの発展を評価する。

周牧之 東京経済大学教授

 総合ランキング偏差値は、経済、環境、社会の3つの大項目偏差値の合計が300である。偏差値が200以上と定義された一線都市はわずか北京、上海、深圳、広州の4都市である。これら一線都市はすべて長江デルタ、珠江デルタ、京津冀の三大メガロポリスに集中している。

“中国都市総合発展指標2023” 都市分類

 偏差値175~200の準一線都市は9つあり、長江デルタ、京津冀、成渝、長江中流、粤闽浙沿海、関中平原などのメガロポリスに分布している。偏差値150~175の二線都市は43あり、広く分布している。偏差値150以下の三線都市は241あり、その中には銀川、西寧、フフホトの3つの中心都市も含まれている。

“中国都市総合発展指標2023” 都市分類 一線都市(4都市)+準一線都市(9都市)

 メガロポリスを評価する際、まず注目すべきは、そのメガロポリスに中心都市がいくつあるか、そしてそれらの中心都市のランキングがどの程度か、ということである。長江デルタには最も多くの中心都市があるが、一線都市は上海のみである。京津冀の一線都市も北京のみである。これに対して珠江デルタには深圳と広州という2つの一線都市がある。しかしいずれも偏差値では北京や上海とはかなり距離がある。

 次に、メガロポリス内各都市の全体的な発展を分析する必要がある。箱ひげ図中の横線は、サンプルの中央値、箱の上辺は上位四分位点(75%)、箱の下辺は下位四分位点(25%)、箱本体は50%のサンプル分布を示している。蜂群図は、個々のサンプル分布をプロットした図である。箱ひげ図と蜂群図を重ね合わせることで、サンプルのポジションと全体の分布の双方を示せる。この分析から、三大メガロポリスのうち、珠江デルタ内部の都市が最もバランス良く発展し、長江デルタがそれに次ぎ、京津冀では中心都市とそれ以外の都市の発展格差が非常に大きいことがわかる。

■ 楊偉民 中国第十三回全国政治協商会議経済委員会副主任


 周牧之教授と私は、長年協力してきた。2001年、周教授は『都市化:中国近代化の主旋律』という本を出版し、中国はメガロポリス発展戦略を採るべきだと提言した。その後、私たちは『第三の三十年』という本を共同主編した。1999年に中国国家発展改革委員会の私の部署が都市化戦略を提唱し、後に「城鎮化」と呼ばれるようになった。 第11次5カ年計画策定時に、私は国家発展改革委員会計画司の司長として、メガロポリス戦略を提案した。当時、指導部は中小都市の発展を望んでいたが、実際には大都市の発展が必要だった。そのバランスを取るため、メガロポリス戦略を打ち出した。実際、私は周教授の著書を読み、メガロポリスの発展という考えに確信を持った。

中国都市総合発展指標2023」報告書

 私は「中国都市総合発展指標」にも一貫して注目してきた。以前、同指標を都市の健康診断書だと述べたことがある。現在、一部の都市や省庁が都市の健康診断報告等に取り組んでいる。しかし、それらは都市建設に偏り、経済問題等まで充分カバーしきれていない。そのため、「中国都市総合発展指標」は環境、社会、経済を網羅し、非常に信頼性が高い。

 中国国家発展改革委員会計画司が何故19のメガロポリスを設定したのか? そこには地域間の政治的なバランスが働いた面がある。しかし今は経済の法則に立ち返る必要がある。 したがって、「中国都市総合発展指標」を用いてメガロポリスの発展を客観的に評価することが大変重要である。

楊偉民 中国第十三回全国政治協商会議経済委員会副主任

■ 邱暁華 アモイ都市大学教授、中国国家統計局元局長


 周牧之教授の「中国都市総合発展指標」には、4つの特徴がある。1つ目の特徴は、包括性である。同指標は経済、社会、環境という3つの大項目、9つの中項目、27の小項目から成る。社会の大項目には文化も含まれるため、中国で現在謳われている経済建設、社会建設、生態文明建設、文化建設についてもカバーしている。その意味では同指標は非常に包括的な都市評価となっている。

 2つ目の特徴は定量性である。同指標は定性的だけでなく定量的な視点も重んじている。使用する878の指標は、統計データ、インターネット・ビックデータ、衛星リモートセンシングデータの3分の1ずつで構成されている。これは、ほぼすべての入手可能なリソースから収集したデータに基づく定量的な評価である。マルチ的な定量手法を用いて、中国297の都市の発展具合を示し、説得力がある。

 3つ目の特徴は継続性である。 「中国都市総合発展指標」の研究はすでに10年以上にわたって続けられている。指標評価を一回きりで終わらせるのではあまり意味がない。継続して実施することに大きな意義がある。周教授による継続的な指標評価は戦略的意義が大きく、国家、企業、国民が都市を理解する上で非常に参考になる。国家は戦略を策定し、企業は事業計画を策定し、個人はどの都市を選択するのかの答えを、すべてこの指標評価から見つけられる。この指標評価は、温度を感じさせるデータによる答えを提供している。 私は、これは都市の辞書であり、中国を理解するための都市の辞書であると思う。

 4つ目の特徴は科学性である。指標評価には、データの比較可能性と入手可能性、そして測定可能性と観察可能性が必要である。これらはすべて科学的手法に依存する。周教授はまさしく科学的手法を的確に用いて都市を定量的、視覚的、継続的に評価している。その結果は信頼性が高い。同研究がもたらす多大な貢献は称賛に値する。

邱暁華 アモイ都市大学教授、中国国家統計局元局長

■ 李国平 北京市人民政府参事、北京大学首都発展研究院院長


 周牧之教授の「中国都市総合発展指標」を発表の現場で議論できることを大変光栄に思う。研究分野が近い為、私はずっと周教授の著書を参照し、「中国都市総合発展指標」の関連研究も様々なルートで入手した。「中国都市総合発展指標」は、指標システムの構築にしろ、データサポートにしろ非常に優れている。評価結果も実態に合致している。

 中国では中心都市の輻射力がますます重要になっている。長江デルタメガロポリスには一線都市は一つしかないが、二線都市が数多くある。全体的な地形や各種条件から判断すると、珠江デルタと比べても長江デルタは依然として比較的有利である。長江デルタはボリュームが大きく、その上流には長江経済ベルトがあり、さらにその上には成都・重慶があり、潜在力が非常に強い。

 北京についてはどうだろうか。北京は総合的な強さでは第1位だが、天津や河北のことを考えると、京津冀メガロポリスの協調的発展が重要になる。北京はイノベーション力に強く、北京がイノベイティブな成長の原動力を発揮できれば、京津冀にも希望が持てる。重要なのは、京津冀の産業チェーンとイノベーションチェーンをいかに効果的に結びつけるかだ。現状では長江デルタや珠江デルタほどの域内連携が京津冀ではまだ十分ではない。

李国平 北京市人民政府参事、北京大学首都発展研究院院長

■ 周其仁 北京大学国家発展研究院教授


 集中とは、皆が非常に混雑した場所に押し寄せることを意味し、経済活動が集まることを求める。「人は高い場所に行く」との諺を借りると、人は大勢の人が集まる場所に行く。多くの人が集まることで多くの問題も生じるが、利益は問題を上回る。さらに、人が集まることから生じる問題は、都市建設や技術によって改善することができる。その意味では対処の仕方次第で、人々の都市集中は、うまくいくケースもあればそうでないケースもある。

 「中国都市総合発展指標」のフレームワークは非常に優れているが、最新の人々の流動性の動向について、ぜひ周教授の視野に入れていただきたい。航空運賃が下がり、ネット通信が発展し、AIが進歩している今、人々は将来も都心で働かなければならないのだろうか?今、人々は離れて暮らしながらオンラインで一緒に仕事ができる。上海のオフィスビルの空室問題は長引く可能性がある。新型コロナパンデミックは、人々に新たなつながり方、暮らし方、仕事の仕方を味わわせた。これは必ず空間的に反映していく。

 鍵となるのは、世界で最も生産性が高く、最も活動的で、最もダイナミックな人々が、現在実際にどのように動いているのか、そして空間的にどう影響を与えているのか? ということである。

周其仁 北京大学国家発展研究院教授

徐林 中米グリーンファンド会長、中国国家発展改革委員会発展戦略和計画司元司長


 都市のガバナンスは、特に注目に値する。「中国都市総合発展指標」に都市のガバナンスの評価を加えることを検討すべきである。都市のガバナンスは、その都市の総合評価に影響を与えるはずだ。 このイシューをデータで客観的に表現することは難しいかもしれないが、国内外の都市の比較で主観的な評価を行うことは可能であろう。

 良い都市は、開放的で、包容力があり、便利でなければならない。そして、そのような都市こそが、より魅力的な都市となる。

徐林 中米グリーンファンド会長、中国国家発展改革委員会発展戦略和計画司元司長

 この記事の中国語版は2024年12月26日に中国網に掲載され、多数のメディアやプラットフォームに転載された。

左からディスカッションを行う周牧之教授、楊偉民氏、邱暁華教授

■ 登壇者関連記事(登壇順)


【刊行によせて】周牧之:新型コロナウイルス禍と国際大都市の行方

【論文】周牧之:二酸化炭素:急増する中国とピークアウトした日米欧

【論文】周牧之:アメリカ vs. 中国:成長と二酸化炭素排出との関係から見た異なる経済水準

【論文】周牧之:世界の二酸化炭素排出構造と中国の課題

【刊行によせて】楊偉民:都市のハイクオリティ発展を促す指標システム

【刊行によせて】楊偉民:全く新しい視点で中国都市の発展状況を評価する

【コラム】邱暁華:高度成長からハイクオリティ発展へシフトする中国経済

 【専門家レビュー】周其仁:生態都市建設と都市総合発展指標

【刊行によせて】徐林:中国の発展は都市化のクオリティ向上で

【武漢】新型コロナウイルス禍と最初に対峙したメガシティ【中国都市総合発展指標】第10位

中国都市総合発展指標2022
第10位



 武漢は中国都市総合発展指標2022総合ランキング第10位であり、前年度に比べ順位が1つ上がった。

 「社会」大項目は第10位であり、前年度の順位を維持した。3つの中項目で「生活品質」は第8位、「ステータス・ガバナンス」は第9位、「伝承・交流」は第11位と、3項目のうち2項目がトップ10入りした。小項目で見ると、「人口資質」は第7位、「都市地位」「消費水準」は第8位、「人的交流」「居住環境」「生活サービス」は第10位と、9つの小項目のうち6項目がトップ10に入った。なお、「文化娯楽」は第11位、「社会マネジメント」は第13位、「歴史遺産」は第35位であった。

 「経済」大項目は第11位であり、前年度の順位を維持した。3つの中項目で「経済品質」は第9位、「都市影響」は第10位、「発展活力」は第11位で、3項目のうち2項目がトップ10入りした。小項目では、「都市圏」は第8位、「イノベーション・起業」は第9位、「経済規模」「広域輻射力」は第10位と、9つの小項目のうち4項目がトップ10内に入った。「経済構造」「開放度」は第11位、「広域中枢機能」は第14位、「ビジネス環境」は第19位、「経済効率」は第26位であった。

 「環境」大項目は第10位となり、前年度に比べ順位が5位も上がった。3つの中項目の中で「空間構造」は第5位、「環境品質」は第52位、「自然生態」は第111位と、3項目のうち1項目がトップ10に入った。小項目では、「交通ネットワーク」「資源効率」は第5位、「コンパクトシティ」は第8位、「都市インフラ」は第9位と、9つの小項目のうち、4項目がトップ10入りした。「環境努力」は第35位、「気候条件」は第119位、「水土賦存」は第121位、「自然災害」は第187位、「汚染負荷」は第229位であった。

 中国都市総合発展指標2022について詳しくは、中心都市がメガロポリスの発展を牽引:中国都市総合発展指標2022を参照。


中部地域の最大都市


 湖北省の省都、武漢は中国中部地域の最大都市であり、新型コロナウイルスの試練に最初に向き合った都市として近年、国際的な注目を浴びた。

 武漢の総面積約は8,569平方キロメートルで広島県とほぼ同じ。その広大な総面積の4分の1が、琵琶湖の面積の約3.3倍となる水域である。

 近代の武漢は中国東西軸の長江と、南北軸の鉄道大動脈が交差する立地を背景に発展してきた。故に、交通のハブ機能が発達している。中国都市総合発展指標2022の「空港利便性」項目では中国第6位、「航空旅客数」は第12位である(詳しくは【ランキング】中国で最も空港利便性が高い都市はどこか?を参照)。「高速鉄道便数」は中国第9位で、「準高速鉄道便数」は第5位であった。

 2004年から新型コロナウイルス・パンデミック直前の2019年までの15年間、武漢のGDPは年平均12%を超える成長を実現した。2022年のGDPは約1兆8,866億元(約37.7兆円、1元=20円換算)で中国第8位、1人当たりGDPは13万7,320元(約275万円)となった(詳しくは【ランキング】世界で最も経済リカバリーの早い国はどこか? 中国で最も経済成長の早い都市はどこか?を参照)。

 武漢は、面積は湖北省の5.6%にすぎないものの、同省全体のGDPの約37.9%を占めている。2021年に湖北省における武漢の輸出額と輸入額のシェアは、それぞれ52.9%、75.3%に達している(詳しくは【ランキング】中国で最も輸出力の高い都市はどこか?を参照)。

ロックダウンでコロナ感染拡大を封じ込む


 武漢は新型コロナウイルスショックに世界で最初に向き合った都市であった。武漢は中国都市総合発展指標2022の「医療輻射力」ランキングで全国第7位の都市である。27カ所の三甲病院(最高等級病院)を持ち、医師約4万人、看護師5.4万人と医療機関病床9.5万床を擁する。しかしながら、武漢のこの豊富な医療能力が、新型コロナウイルスの打撃により、一瞬で崩壊した(詳しくは【レポート】新型コロナパンデミック:なぜ大都市医療能力はこれほど脆弱に?を参照)。

 よくも悪くも中国の医療リソースは中心都市に高度に集中している。武漢は1千人当たりの医師数は4.9人で全国の水準を大きく上回る。武漢と同様、医療の人的リソースが大都市に偏る傾向はアメリカや日本でも顕著だ。ニューヨーク州の1千人当たりの医師数は4.6人にも達している。東京都は人口1千人当たりの医師数が3.3人で、これは武漢より少なく、ニューヨークと同水準にある。

 しかし、武漢、ニューヨークはその豊かな医療リソースをもってしても、新型コロナウイルスのオーバーシュートによる医療崩壊を防ぎきれなかった。2020年末までは、中国の新型コロナウイルス感染死者数累計の83.5%が武漢に集中していた。その多くが医療機関への集中的な駆け込みによる集団感染や医療崩壊による犠牲者だと考えられている(詳しくは【ランキング】ゼロコロナ政策で感染拡大を封じ込んだ中国の都市力を参照)。

 武漢は2020年1月23日からの2カ月半にわたる都市封鎖(ロックダウン)で難局を切り抜けた。ゼロコロナ政策によって普段の日常を取り戻した。

 新型コロナウイルス禍と最初に対峙した都市が、医療リソースの豊富な武漢だったのは、ある意味、不幸中の幸いだったかもしれない。武漢における教訓は、新型コロナウイルス感染症に関する数多くの研究論文として昇華され、世界中でかつてない勢いで「知の共有」が進んでいる。

図 武漢ロックダウン期間における新規感染者数・死亡者数

出典:中国湖北省衛生健康委員会HPなどにより雲河都市研究院作成。

全土から集まった医療支援


 新型コロナウイルスのオーバーシュートが発生した当時、武漢に中国全土から多くの支援が集まった。感染者数の爆発的増大で、多くの医療スタッフも院内感染に巻き込まれ、医療従事者の大幅な不足状況が発生した。これに対処するため中国各地から大勢の医療従事者が応援に駆けつけ、その数は4.2万人にも達した。

 病床数の不足については、国の支援で、新型コロナウイルスの専門治療設備の整う「火神山病院」と「雷神山病院」という重症患者専門病院を10日間で建設し、前者で1,000床、後者で1,600床の病床を確保した。このほかに、武漢は体育館16カ所を軽症者収容病院に改装し、素早く1.3万床を確保し、軽症患者の分離収容を実現させた。これによって先端医療リソースを重症患者に集中させ、病床不足は解消された(当時の武漢の取り組みについて詳しくは「【論文】ゼロコロナ政策 Vs ウイズコロナ政策を参照)。

 こうした措置が武漢の医療崩壊の食い止めに繋がった。感染地域に迅速かつ有効な救援活動を施せるか否かが、新型ウイルスを封じ込める鍵となる。しかし、すべての国がこうした力を備えているわけではない。ニューヨーク、東京の状況からみても、医療リソースがかなり整う先進国でさえ救援動員はなかなか難しいことが分かる。

人口引き留め政策


 武漢は約1,374万人の常住人口を抱え、中国第8位の都市人口規模を持っている。人口の流出入を示す「人口流動(非戸籍常住人口)」では、湖北省内12都市のうち10都市で、人口が他都市へ流出している。これに対して武漢は、流動人口が約431万人の大幅プラスにあり、全国で第9位の人口流入都市となっている。

 一方、武漢は89の大学、95の科学研究所、130万人弱の大学生を抱えながら、大卒者のうち同市に残る者は5分の1にも満たない。そこで、2017年、武漢市政府は向こう5年間で大卒者100万人を同市内に引き留めるプロジェクトを発表した。これにより、同市の大卒者は市場価格を2割下回る値段で住宅を購入できるか、あるいは市場価格を2割下回る価格で住宅を借りられる。さらに、最低年収の設定、就職の斡旋、起業のサポートなど「大卒者に最も友好的な都市」へ向けたさまざまな政策を打ち出した。経済のグローバル化と知識集約型産業が進展していくなかで、中国の各都市間の人材の育成と獲得競争が激しくなっている。

青山長江大橋の建設


 武漢は、長江と漢江によって「武昌」「漢口」「漢陽」という3つの地域(武漢三鎮)に分けられる。3つの地域間を多くの橋がつなぎ、大都市の大動脈として機能している。1957年10月、全国で初めて長江の両岸をつないだのは武漢長江大橋であった。2020年末には両岸をつなぐ11本目の青山長江大橋が開通した。都市インフラに積極的に投資してきた武漢は、橋の建設を進め、橋の数が増えるごとに都市の一体化も進んだ。

 中国都市総合発展指標2022によると、武漢は「環境」の「固定資産投資規模指数」が中国第5位である。「橋の武漢」と称されるように、橋の景観は武漢に多彩な表情をもたらしている。

中国で3番目に高いビル「武漢緑地中心」を建設


 世界中で超高層ビルの建設ラッシュが起こっている。高層建築ブームの先頭をいく中国で近年最も注目されているのが、2011年から建設が始まった「武漢緑地中心(Wuhan Greenland Center)」である。竣工予定は2023年末で、総投資額は300億元(約6,000億円)以上になるという。完成すると高さ595メートル、延床面積約300万平方メートルの、世界で7番目に高いビルとなる。ブルジュ・ドバイや上海金茂タワーなど、世界で最も有名な超高層ビルの設計を数多く手がける建築設計チーム「Adrian Smith + Gordon Gill Architecture」が担当した。五つ星ホテル、高級ショッピングモール、オフィス、高級マンションを備えた超高層複合都市を目指している。

 世界の建築専門家らが編集する「高層ビル・都市居住評議会(CTBUH)」のレポートによると、中国は超高層ビルの竣工面積が最も多い国となっている。現在、世界で建設された超高層ビルトップ100のうち、43棟が中国にある。


【天津】中国北方玄関口の直轄市【中国都市総合発展指標】第11位

中国都市総合発展指標2022
第11位



 天津は中国都市総合発展指標2022総合ランキング第11位であり、前年度から順位を1つ下げた。

 「経済」大項目は第9位であり、前年度の順位を維持した。3つの中項目で「都市影響」は第6位、「発展活力」は第8位であり、この2項目がトップ10入りを果たした。「経済品質」は第12位であった。小項目では、「広域中枢機能」は第5位、「都市圏」は第7位、「ビジネス環境」「開放度」は第8位、「経済規模」は第9位、「イノベーション・起業」は第10位と、9つの小項目のうち、6項目がトップ10入りした。なお、「広域輻射力」は第11位、「経済構造」は第13位、「経済効率」は第109位であった。「経済効率」は、「被扶養人口指数」や「1万人当たり失業者数」の悪化により、順位を大きく下げる結果となった。「経済効率」を除き、「経済」の成績は、各項目ともに全体的に高い結果となった。

 「社会」大項目では第11位であり、前年度の順位を維持した。3つの中項目の中で「ステータス・ガバナンス」は第5位、「生活品質」は第10位、「伝承・交流」は第14位と、3項目のうち1項目がトップ10入りを果たした。小項目で見ると、「都市地位」は第4位、「生活サービス」は第5位、「歴史遺産」は第9位、「人口資質」「文化娯楽」は第10位と、9つの小項目のうち、5項目がトップ10内にある。なお、「居住環境」は第15位、「消費水準」は第20位、「人的交流」は第22位、「社会マネジメント」は第12位であった。「社会」の成績は、全体的に高い結果となった。 

 「環境」大項目は第37位となり、前年度から順位を1つ上げた。3つの中項目の中で「空間構造」は第7位と1項目がトップ10入は果たしたが、「環境品質」は第162位、「自然生態」は第229位であった。小項目では、9つの小項目のうち、「都市インフラ」は第4位、「環境努力」は第8位、「コンパクトシティ」「交通ネットワーク」は第10位と、4項目がトップ10入りした。トップ10以下は、「水土賦存」は第136位、「資源効率」は第154位、「気候条件」は第211位、「自然災害」は第224位、「汚染負荷」は第225位であった。

 天津は、社会や経済と比較して環境のパフォーマンスが劣っている。近年は南の都市の勢いと比べ、社会と経済の成績も下降気味であり、都市間競争の中でやや苦しんでいる。


京津冀メガロポリスの臨海中心都市


 天津市は、中国の四大直轄市の1つであり、北京の玄関口として発展した京津冀(北京・天津・河北)メガロポリスの臨海中心都市である。元、明、そして清王朝時代は、江南から物資を運ぶ大運河の北京への入り口だった。現在は、渤海湾の港としての北京の玄関口となっている。さらに、洋務運動の時代に全国に先駆けて西洋から制度や技術を最も早く取り入れた窓口であった。

 天津市の面積は約11,917平方キロメートルで、日本の秋田県とほぼ同じ面積にあり、2021年の人口は約1,363万人を誇るメガシティである。2022年にGDPは16,311億元(約32.6兆円、1元=20円換算)に達し、中国で第11位の都市となった。

 天津港は、世界第8位のコンテナ取扱量を持つ巨大な港であり、その後背地は、モンゴルやカザフスタンにまで広がる。中国都市総合発展指標2022において、天津の「コンテナ港利便性」は中国第5位になっている(詳しくは、「【ランキング】世界で最も港湾コンテナ取扱量が多い都市はどこか? 〜2020年中国都市コンテナ港利便性ランキング」を参照)。

 このような背景から、天津市には国内外の企業が進出し、多くの産業が集積し、製造業、情報技術、金融サービス、物流、観光などの分野に及んでいる。

ナイトエコノミーの推進


 天津では、サービス業の発展を促進するために、ナイトエコノミー政策を推進している。2018年11月に発表された同政策では、海に面する立地を活かした景観づくりや、東西文化の融合を図ったナイトエコノミー集積地の形成、さまざまな娯楽コンテンツの充実などが打ち出されている。

 中国北方の都市では、夜の営業時間が短いことが一般的である。首都北京ですらレストランの閉店時間が早く、南から北京に来る客の不満が絶えなかった。実際、中国都市総合発展指標2022において、天津の「レストラン・ホテル輻射力」は中国12位と、トップ10圏外になっている。

 計画経済時代、商業都市の面影薄い天津の夜は、長く闇に包まれていた。活気を入れるため打ち出したナイトエコノミー施策には、政府の過剰な介入やインフラ整備中心だとの指摘がある。ナイトエコノミーは本来、市民や事業者が自発的に取り組むことが重要であり、政府の役割は環境整備や支援に留めるべきだという意見も存在する。

 今後、天津市がナイトエコノミーの発展をさらに推進するためには、政府の適切な役割と市民や事業者の自発的な取り組みをバランス良く組み合わせることが重要である。また、地域の特性や文化を生かした独自の魅力を打ち出すことで、ナイトエコノミーが持続的に発展し、地域経済の活性化につながることが期待される。

天津エコシティ:環境配慮型都市開発のモデルと課題


 天津エコシティ(中新天津生態城)は、中国とシンガポールが共同で開発を進める環境配慮型の次世代都市建設プロジェクトである。2007年に建設が開始され、​2025年頃の完成を目指している。​

 同プロジェクトは、天津中心部から40キロ、​北京から150キロメートル離れた場所で開発されており、​天津郊外の約30キロメートルの塩田跡地(浜海新区)に建設されている。2020年までに人口35万、住戸11万戸を建設する予定で、投資額は約500億元である。街の至るところに緑地を設置し、​次世代の廃棄マネジメントシステムの導入も計画されている。​交通に関しては、​自動車の利用を抑制するために、​トラムやバスなどの公共交通を拡充している。​また、​多くのテクノロジー企業や研究機関が拠点を構えている。このような取り組みによって、天津エコシティは環境配慮型都市開発のモデルとして期待されていた。

 しかし、浜海新区全体の開発は遅れが続いており、閑散とした様子から「鬼城(ゴーストタウン)」と揶揄されることもある。さらに、2015年8月に開発区内の危険物倉庫で発生した大規模爆発事故により、天津港の機能が一時的に麻痺状態となり、経済損失額は直接的なものだけで約68.7億元(約1,200億円)にのぼるとされている。

 これらの問題が重なり、天津エコシティや浜海新区の開発は遅れがちとなっているが、今後も環境配慮型都市開発のモデルとして、持続可能な発展に向けた取り組みが求められている。適切な対策や改善策が講じられれば、今後の発展に期待が持てるプロジェクトである。

日中経済・文化交流の歴史と現代の役割


 アヘン戦争後の1860年にイギリスが天津市に租界を置いてから、新中国成立に至るまで日本を含む9カ国が天津市に租界を設立していた。近代日本と中国の最初の接点は上海市と天津市であり、天津市からは華北地域の特産品である「栗」が日本に多く輸出されたことで、「天津甘栗」の名前が馴染みである。

 中国の改革開放後、日本政府は巨額な有償・無償の経済援助を行い、日本企業の対中直接投資も拡大を続け、天津にも多くの日系企業が進出した。

 貿易については、中国の輸入先として2021年、日本は国・地域別で第3位に、金額は1,605億ドル(約22.5兆円、1ドル=140円換算)となった。輸出でも1,575億ドル(約22.1兆円)で同第2位となり、日本は中国にとって重要な貿易パートナーとなっている。中国北方の玄関口としての天津が果たした役割は大きい。

 そうした日中関係を象徴するように、新型コロナウイルス・パンデミック以前の2019年に天津を訪れた外国人は約56万人であった。ちなみに同年に中国を訪れた観光客の出身国のトップ10は順に、日本、オーストラリア、韓国、米国、カナダ、英国、タイ、フィリピン、カンボジア、マレーシアで、日本がトップであった。

国際工業博覧会:製造業からサービス産業への挑戦


 2022年8月、「第18回中国(天津)国際工業博覧会」が開催された。同博覧会は世界三大工業博覧会の1つとされ、今回の博覧会には世界20以上の国と地域から有名企業約千社が一堂に会し、世界中の先進的な設備や技術が展示された。

 天津は清朝末期、「洋務運動」で中国の工業化を牽引する役割を果たしただけではなく、国際的な商業都市としても栄えた。新中国建国後は、計画経済のもとで工業都市に特化した。改革開放以降も工業を中心として発展を遂げてきた。

 その結果、中国都市総合発展指標2022によると、「製造業輻射力」全国ランキングにおいて、天津は第16位を獲得した(詳しくは、「【ランキング】中国で最も輸出力の高い都市はどこか? 〜2020年中国都市製造業輻射力ランキング」を参照)。

 同じ直轄市の中でも北京や上海は国際的な商業都市として、サービス産業の発展が著しい。これに対して、天津はサービス産業の発展が相対的に遅れている。中国都市総合発展指標2022によると、「飲食・ホテル輻射力」ランキングで上海は第1位、北京は第2位であるのに対して、天津は第12位と引き離された。「文化・スポーツ・娯楽輻射力」ランキングでは北京が第1位、上海が第2位に対して、天津は第11位だった。さらに、「卸売・小売輻射力」ランキングでは北京が第1位、上海が第2位、天津は第12位であった。

 近年、中国ではIT産業の発展が目覚ましい。しかし製造業とは異なり、IT産業の発展は、都市の商業環境に大きく左右される。南開大学、天津大学といった名門大学を抱えながら、天津のIT産業の発展は芳しくない。「IT産業輻射力」ランキングは第24位と、直轄市にふさわしくないパフォーマンスを見せた。

ブームが去ったシェア自転車


 かつて中国が自転車王国だった時代、三大国産自転車ブランドの1つが天津産だった。天津ブランドの自転車は、当時若者にとって新婚生活“三種の神器”の1つとして、人気が高かった。

 急激なモータリゼーションにより中国の街で自転車の存在感はだいぶ薄まった。自転車が再び注目を集めたのは、シェア自転車ブームであった。シェア自転車は中国で2015年に誕生し、1年も経たないうちに爆発的に全国に拡大した。北京などの大都市では、街そのものがシェア自転車駐輪場の様相を呈した。

 天津は、シェア自転車ブームに乗って、上海、深圳と並んで三大自転車産地になった。中国北部で最大の自転車生産規模を誇っていた。

 だが、過当競争や放置自転車問題、保証金トラブルなどを理由に、5年経つとシェア自転車ブームは急激に色あせていった。それでも都市交通に自転車を呼び戻した功績は大きい。また、中国経済や文化に「シェア」という概念を持ち込んだことは大きな意味をもつ。

「相声」:天津の伝統文化が再び脚光を浴びる


 近年、中国では再び「相声」ブームが巻き起こっている。相声とは日本の「漫才」に似た中国の伝統的な大衆芸能の一つである。諸説あるが、「相声」はおよそ100年前に北京で生まれたとされ、その後天津で発達し、今や天津を代表する文化となっている。「相声」を含む天津の「無形文化財」は中国都市総合発展指標2022で全国第3位と好成績を誇る。

 一時は低迷した「相声」に再び脚光を浴びせた立役者が、天津出身の相声芸人・郭徳綱である。郭徳綱は伝統的な「相声」を現代風にアレンジし、ユーモアに溢れながらも世相を辛辣に皮肉ることで人々の心をつかんでいる。今や彼の人気は老若男女問わず高く、相声界のフロントランナーとして中国内外で活発な活動を展開している。郭徳綱は2017年夏、日本をはじめて訪れ、東京公演で在日華人らを爆笑の渦に巻き込んだ。好評のため翌2018年に再び東京公演を行い、ファンを増やしている。

 「相声」は2008年に中国の国家無形文化遺産に登録された。天津の歴史的な民俗文化と市民文化の象徴として、天津人の精神の拠り所ともなっている。

浜海新区文化センター:天津が誇る近未来的な図書館と社交空間


 天津市の経済開発区、浜海新区に2017年末、従来の中国の図書館のイメージを覆す公共図書館「浜海新区文化センター」がオープンした。新たなランドマークとなった同センターは、地上6階建てで高さは約29.6 メートル、総面積は3.4万 平方メートルにもおよび、開館時の蔵書数は20万冊で、収蔵能力は120万冊の規模を誇る。

 建物は流線形の近未来的なデザインで構成され、壁沿いには天井から床まで覆う階段状の書架がうねりながら棚田のように連続している。来館者は書棚の横を歩きながら自由に上下階を行き来できる。設計・デザインは、世界的に著名なオランダの建築設計会社「MVRDV」が手がけて話題を呼んだ。

 「浜海新区文化センター」の様子がネットで公開されるやいなや、国内外のさまざまなメディアが取り上げ、米国『タイム』誌は2018年の観光地ランキング「行く価値のある世界100カ所」の中で、「浜海新区文化センター」を映えある第1位にランク付けした。

 「公共図書館蔵書量」全国第9位の天津に相応しい「浜海新区文化センター」には、週末に平均1.5万人が訪れるという。もはや図書館だけの機能にとどまらず、世界中の人々を魅了する21世紀の社交空間としても存在感を増している。

天津進出30周年を迎えた伊勢丹


 日本の老舗百貨店伊勢丹が2023年、天津進出30周年を迎える。1993年オープンした上海淮海路店に続き、同店は中国第2号店である。当時、天津市政府側には、北京、上海に次ぐ中国第三の都市として国際的な百貨店を誘致したいとの意向があり、外資系大型百貨店としては同店が天津市で第1号となった。2013年には浜海新区に天津2号店もオープンしている。

 1992年の中国小売業の開放により、日系百貨店は早い段階から中国市場に進出した。

 参入初期、日系百貨店は売場、商品、販売サービスなどの面で消費者の支持を得て業績を伸ばしたものの、現在では業績不振が続き、撤退を余儀なくされる店も少なくない。中国の百貨店は全体として国内資本のパワーアップも相まって競争が激化し、消費者ニーズの変化や、日系店のeコマースへの対応も後手に回り、大いに苦戦を強いられている。

 伊勢丹も中国内の一部地域では業績が伸び悩んでいるものの、天津での売上は好調である。その強さの理由は、顧客満足度の高さだという。困難な時代を乗り越えていくために顧客情報の丁寧な分析を実施した。常に顧客ニーズに合った商品を展開し、店舗づくり、組織改革、商品開発などあらゆる面で、徹底的な改革を続けている。日本の百貨店が中国都市総合発展指標2022の「卸売・小売輻射力」第12位の天津で善戦を続ける現状は、小売業界の中国展開にひとつの示唆を与えている。


【廈門】魅力あふれる貿易拠点都市【中国都市総合発展指標】第12位

中国都市総合発展指標2022
第12位




 廈門は中国都市総合発展指標2022総合ランキング第12位であり、前年度より順位を1つ上げた。

 「環境」大項目は第4位で、前年度より順位を2つ上げた。3つの中項目のうち「空間構造」は第6位、「環境品質」は第11位、「自然生態」は第61位と、2項目がトップ20に入った。9つの小項目のうち、「コンパクトシティ」は第5位、「交通ネットワーク」は第9位と2項目がトップ10に入った。また、「汚染負荷」は第20位、「都市インフラ」は第23位、「環境努力」は第29位と、3項目がトップ30に入った。なお、「資源効率」は第35位、「気候条件」は第39位、「自然災害」は第219位、「水土賦存」は第295位であった。

 「社会」大項目は第13位で、前年度より順位を2つ上げた。3つの中項目で、「伝承・交流」は第12位、「生活品質」は第13位、「ステータス・ガバナンス」は第16位と、3項目すべてがトップ20に入った。小項目で見ると、「人的交流」は第7位と、1項目だけがトップ10に入った。また、「消費水準」は第11位、「居住環境」は第14位「人口資質」は第15位、「生活サービス」「社会マネジメント」は第19位、「文化娯楽」は第29位と、6項目がトップ30に入った。なお、「都市地位」は第34位、「歴史遺産」は第43位であった。

 「経済」大項目は第19位で、前年度の順位を維持した。3つの中項目で、「発展活力」は第16位、「都市影響」は第17位、「経済品質」は第25位と、3中項目のうちトップ10入りした項目はなかったものの、すべてトップ30入りを果たした。9つの小項目のうち、「広域中枢機能」は第9位、「ビジネス環境」は第10位で、2項目がトップ10入りした。また、「経済効率」は第11位、「開放度」は第15位、「イノベーション・起業」は第22位、「広域輻射力」は第23位、「経済構造」は第24位、「都市圏」は第27位と、6項目がトップ20に入った。なお、「経済規模」は第40位だった。


■ 小さくても輝く海上の花園


 廈門市は、福建省の東南端に位置する副省級市、計画単列市であり、経済特区に指定された中国南東部沿岸の重要な中心都市である。また、粤閩浙沿海(広東・福建・浙江)メガロポリスの中核都市である(粤閩浙沿海メガロポリスについて詳しくは中心都市がメガロポリスの発展を牽引を参照)。

 同市の総面積は1,701平方キロメートルに過ぎず、中国297地級及びそれ以上の都市(日本の都道府県に相当)のうち、下から四番目の294位の大きさである。省都の福州市と比較すると、約七分の一の大きさである。なお、47都道府県で最も面積が小さい香川県の面積が1,877平方キロメートルであり、廈門は香川県より1割程度小さい。

 一方、常住人口は約531万人で中国第82位、「人口密度」は1平方キロメートル当たり3,121人で中国第4位の高密度都市である。

 廈門は福建省の沿海部に位置し、漳州市、泉州市と接している。亜熱帯モンスーン気候で、年平均気温が21℃、温和かつ多雨の気候を享受する美しい臨海都市である。「気候快適度」は中国第24位である。

 同市は多くの島嶼を有し、風光明媚な景観に恵まれ、古来より「海上花園」とも呼ばれている。

■ 五口通商から経済特区へ


 廈門は600年以上の歴史を持つ廈門港を有し、宋朝以来、泉州港の補助港口としての役割を果たしていた。元朝で軍港に変貌し、明朝には商業貿易の拠点として躍進を遂げた。鄭成功父子の時代には、海外貿易の中心港となり、茶の輸出で一大拠点となった。1684年には清の海関が設置され、廈門港が正口の一つとされた。康熙年間には、福建出洋の総口となり、福州や泉州を凌ぐ地位を確立した。

 1842年、南京条約の締結により、廈門は広州、福州、寧波、上海と並び「五口通商」の一つに数えられた。貿易の窓口として、教会、病院、学校、外国銀行などが建設され、早くから西洋文化に染められた稀有な都市でもある。

 1980年、厦門は深圳、珠海などと共に経済特区に指定された。以来、急速な発展を続けている。

■ ウズベキスタン一国に匹敵する経済規模


 2022年、廈門のGDPは7,803億元(約15.6兆円、1元=20円換算)に達し、福建省内で福州市、泉州市に次ぐ第三位の経済規模である(詳しくは【ランキング】世界で最も経済リカバリーの早い国はどこか? 中国で最も経済成長の早い都市はどこか?を参照)。

 その経済規模は、中国第31位であり、世界第58位のウズベキスタンのGDPに匹敵する。「一人当たりGDP」の成績はさらに良く、中国第19位と福建省内で最も高い。

 廈門の「人口自然増加率」は中国第4位で、2015〜2022年の平均増加率は12.1‰と極めて高い。非戸籍常住人口を示す「流動人口」では、廈門は約245万人に達し、中国第17位の人口流入都市となっている。結果、同市の「生産年齢人口率」は中国第9位であり、その数値は72.9%と、廈門には圧倒的に若い活力が溢れている。

■ 深水港を盾にしたスーパー製造業都市


 廈門市は深水港を盾に港湾機能を強化してきた。2022年に漳州港を含む廈門港のコンテナ取扱量は1,244万TEUを達成し、中国第7位にランクインした(詳しくは、【ランキング】世界で最も港湾コンテナ取扱量が多い都市はどこか?を参照)。同年の貨物取扱量は2.2億トンで、世界第14位である。

 廈門の製造業も高度に発展し、中国第11位の「製造業輻射力」の実力を持つスーパー製造業都市となった(詳しくは【ランキング】中国で最も輸出力の高い都市はどこか?を参照)。

 さらにIT産業も発展を遂げており、「IT産業輻射力」は中国第12位である。

 産業発展の背後には研究開発への投資が欠かせない。廈門の「科学技術輻射力」は中国第20位である(詳しくは【ランキング】科学技術大国中国の研究開発拠点都市はどこか?)。

 現在、同市は中国政府が推進する「一帯一路」における21世紀海上シルクロードの戦略的要衝都市となっている。また同市は、アジアとヨーロッパを結ぶ「中欧班列(ユーラシア横断鉄道)」にも接続している。


■ 鼓浪嶼-建築とピアノの島


 鼓浪嶼は廈門市の沖合に浮かぶ面積2平方キロメートル未満の島で、廈門の都市発展をものがたっている。清朝末期には、鼓浪嶼に公共租界が設けられた。その為、多くの西洋建築や「騎楼」と呼ばれる華僑による建築物が残され、「万国建築博物館」と称される。2017年に「鼓浪嶼国際歴史社区」は世界文化遺産に正式登録された。

 建築だけでなく、西洋音楽も植え付けられた。鼓浪嶼には600台を超えるピアノがあり、世界最古のスクエアピアノや最初で最大のアップライトピアノを保有する専門博物館があるだけでなく、数多くのピアノ演奏者や音楽家を輩出している。鼓浪嶼が生んだ音楽家たちは毎年音楽祭で故郷に戻り、各種コンサートを開いている。

■ 華僑文化 – 騎楼


 廈門は西洋の文化を受け入れただけでなく、華僑がもたらした東南アジアの文化も色濃く残している。中でも南洋の風情漂う騎馬楼建築が際立っている。

 騎楼建築は、「南洋貿易」に密接に関連している。近代、南洋貿易の拡大で福建省から多くの人々が「南洋」と呼ばれる東南アジアへ渡った。騎楼は帰郷した華僑によって建設された。騎楼の大規模建設は1920〜30年代に集中している。騎楼は典型的な外廊式建築で、通り側には商店が並び、廊下は日よけと雨避けの機能を果たし、背街側には民家が立ち並ぶ。

 特に旧市街区や中山路には、1920年代の騎楼が多数残り、百年の歴史文化を誇る街として、観光客を魅了している。

■ 観光都市発の新世代コーヒーチェーンブランド – ラッキンコーヒー(瑞幸咖啡)


 廈門の観光業は福建省で最も成功し、国内外からの観光客が、2019年には1億人を超えた。新型コロナウイルスの影響により大きな打撃を受けたものの、2022年の訪問者数は2019年の64.6%まで回復している。

 近年この観光都市から、ラッキンコーヒーという革新性に富んだコーヒーチェーンが生まれた。2023年9月、白酒の茅台とのコラボレーションによる「醤香ラテ」の全国発売が大きな話題を呼んだ。初日に542万杯以上が売れ、売上高は1億元を超えた。廈門に本部を置くこの企業は、2017年に北京銀河SOHOで初の店舗を開業し、その後わずか18カ月でアメリカのナスダック(NASDAQ)に上場した。2020年6月には財務不正問題で退場を余儀なくされたものの、退場から21カ月で黒字化を実現し、逆境を乗り越えた。

 ラッキンコーヒーは、スターバックスと違い、カフェにある社交の場を提供せず、座席もなく、限られた空間で一日に数百杯を売り上げる。ラッキンコーヒーは消費者がアプリやミニプログラムを通じて注文し、店舗で受け取る「インターネットコーヒー」のモデルを確立し、オンラインとオフラインのハイブリッドを実現し、成功している。

 2023年10月末時点で、ラッキンコーヒーの国内店舗数は1万3,000店を超えた。店舗数、営業収入において、20年以上中国市場で事業を展開するスターバックス・チャイナを上回る。

 2023年、ラッキンコーヒーは、全世界のユニコーン企業1,360社の中で130位にランクインし、評価額は400億ドルに達している。

 起業精神旺盛な廈門の「ユニコーン企業」は中国第18位となっている。盛んな飲食業と観光業により、「ホテル飲食業輻射力」は中国第8位と、トップ10入りを果たしている。